Zyouon Tamago
評価: 0+x

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP事象の情報を██地方を中心とした救急通信の傍受、各種福祉機関への潜入により収集します。SCP-XXX-JP事象の関係者には適切な記憶処理の実施、必要に応じて長期の監視を行ってください。

説明: SCP-XXX-JP-1は人間が死亡時に黒いシミを残して消失する現象です。
SCP-XXX-JP-1の対象者(以降SCP-XXX-JP-2と表記)の体は死亡後即座に末端より中心部に向かって黒く変色していきます。その際手足の指同士は癒着し、身体表面の凹凸を埋めるように皮膚が緩やかに盛り上がります。その結果SCP-XXX-JP-2の体は曖昧な人型になります。約20秒で全身に変色が及び、塵状に散らばるように消失します。変色の最中にSCP-XXX-JP-2が動いたという証言があるものの財団ではその事象を確認出来ていません。
その場に残る黒いシミは炭化した体組織の一部であると推測されています。
黒いシミは放射性を持ち、█2×10^█キュリーの放射線を常時放出します。この値は一般的な家電から放出される放射線量と同等かそれ以下のため脅威とはみなされません。
財団が確認したSCP-XXX-JP-2全員に以下の共通点があります。

・生年が194█年以前である。
・██地方にルーツを持つ家系の出身である。

その他考察される共通点・傾向は複数存在しますが、有意であるとは見なされていません。その一部を以下に記述します。

・社会的に孤立している。
・記憶障害の診断を受けている、または記憶障害の疑いがあった。
・周囲が認知される程の妄想癖がある。

以上の特徴はSCP-XXX-JP-2が高齢者であるため認知症との区別が困難です。
調査は主に対象者の死後の遺品と遺族インタビューから進められています。

財団は199█年からSCP-XXX-JPの存在を認識しており、200█年に佐賀県嬉野市の病院にて最初の収容は行われました。

20██/09/15 録音記録

録音状況: 自身の祖母であるフミ江氏(SCP-XXX-JP-2)の訪問に来ていた松尾氏が、「祖母が塵になって消えた」と訴え体調不良を起こした。看護師として潜入していたエージェント・██が介抱を行った。

<録音開始>

(重要度の低い会話を割愛)

エージェント・██: お水をどうぞ。大丈夫ですか。

松尾氏: はい、はい、少し、良くなってきました。すみません、床汚しちゃって。

エージェント・██: 大丈夫ですよ。皆さんこういう時は取り乱してしまいますから。

松尾氏: いえ、あの違うんです。確かに祖母が亡くなって辛いんですけど、それじゃなくて、すごい、変だったんです。なんか。

エージェント・██: 変、ってどうしたんですか。大丈夫ですか。

松尾氏: (沈黙し、呼吸が荒くなる)

(過呼吸を起こした松尾氏をエージェント・██が介抱したため割愛)

松尾氏: 祖母が、消えちゃったんです。真っ黒になった後、塵みたいに。頭おかしくなったって、思われちゃいそうなんですけど、本当で、本当なんです。サーって。本当に。

エージェント・██: 大丈夫ですよ。信じますよ。落ち着いてください。

(以下錯乱状態の松尾氏の介抱を行う会話のため割愛)

<録音終了>
報告: 病院関係者・遺族への記憶処理の後、松尾氏を調査のため拘束しました。

20██/09/16 インタビュー記録

対象: 松尾氏

インタビュアー: エージェント・██

付記: 松尾氏への尋問の翌日にインタビューを行いました。

<録音開始>


エージェント・██: おはようございます。ご気分はいかがでしょうか。

松尾氏: 良くなりました。えっと、看護師さんじゃなかったんですか。

エージェント・██: 申し訳ありませんが、関係の無いお話は出来ません。貴方のお祖母様についての質問をさせて頂きます。

松尾氏: 分かりました。

エージェント・██: あなたのお祖母様には不思議な力はあったと思いますか。それともありましたか。

松尾氏: ええ、えっと、そんなのなかったと思います。変な人ではあったけど。

エージェント・██: 変、と思えるところがあったのですか。

松尾氏: 何と言うか、空想家だったんです。悪く言うとちょっとスピってたっていうか。よく自分は違う世界から来たっていう話をしていました。

エージェント・██: それはどのような話でしたか。

松尾氏: ばあちゃんは自分を光の人とかピカ人、とかよく分からないけど、違う。光に包まれて、気がついたら今の自分の中に入っていたとか。

エージェント・██: なるほど、他には何かお祖母様に関する記憶で気になることはありますか。

松尾氏: そうですね、その妄想話の一貫なのですが。あ、あの、僕が昨日めちゃくちゃに動揺した原因の一つでもあるんですけど。僕のひいおばあちゃんの話です。

エージェント・██: はい。

松尾氏: ばあちゃんが眠っているひいばあちゃんの手を握っていたら、突然ひいばあちゃんの体が真っ黒の土の人形みたいになって、次の瞬間に握っていたはずの指先ごと体が消えて無くなったそうなんです。実際にひいばあちゃんは居間に寝ていたはずなのに、家族が見ていないうちに忽然といなくなってそのまま、って感じで失踪したとか。

エージェント・██: なるほど。そのお話は確かに昨日のお祖母様の状況と似ているように思いますね。

松尾氏: えぇ、その話を僕は信じていて、人は死んだらみんなそうなると思っていたんです。流石に今はもう信じていなかったんですけど。昨日のあれで、幼い頃は夜に眠れなくなるほど怖がっていたことを思い出して。自分も寝ている間に消えちゃったらどうしようって。

エージェント・██: 分かりました。少しの休憩の後、お祖母様がしていたお話について追加でインタビューをさせて頂きます。

<録音終了>
報告: 松尾氏は記憶処理の後に解放されましたが、SCP-XXX-JP-2である可能性があるため生涯財団の監視下に置かれます。近親者にもSCP-XXX-JP-2がいる可能性が高く、合わせて調査・監視されます。松尾氏から取った調書と追加インタビューの内容は文書SCP-XXX-JP-Aに記載されています。