Zenigataの秘密データ

『死は眠る』

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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト81の低脅威度物品保管庫に収容されます。実験等を目的として使用する場合、担当職員に申請してください。

財団外で発生したSCP-XXX-JP-2が発見された場合、すぐに収容してください。経過観察の後に記憶処理を施し、解放します。

説明: SCP-XXX-JPは自殺防止ポスター████枚です。回収時、日本各地に無許可で貼られていました。特に多くのSCP-XXX-JPが回収された地点は自殺者が多いことが判明しています。SCP-XXX-JPは特定の条件を満たした人物に黒い蛇型実体(以下、SCP-XXX-JP-1)を認識させます。

SCP-XXX-JP-1を認識する人物(以下SCP-XXX-JP-2)はその多くが自殺を試みた、もしくは試みようと考えています。しかし、自殺を試みようとした経験がある人物や自殺を考えていると主張する人物にSCP-XXX-JPを見せた場合、必ずしもSCP-XXX-JP-1を認識できるわけではありません。この理由は現在調査中です。

SCP-XXX-JP-1は先述の通り、黒い蛇の姿をした実体です。SCP-XXX-JP-2の報告1では、基本的には全ての人間に1体ずつSCP-XXX-JP-1が取り付いており、生後すぐの幼児にも取り付いています。その姿は個体ごとに異なります。SCP-XXX-JP-1は自身が取り付く人間の身体上を自由に移動します。現在までに周囲の物品に触れる等の行動は報告されているものの、完全に身体から離れたという報告はなされていません。SCP-XXX-JP-1の体は物体を透過するため、SCP-XXX-JP-1に対し危害を加えることはできません。SCP-XXX-JP-1は自身が取り付く人間に関して理解があるような振る舞いを見せます。実験では、取り付いている人間と常に行動をにしていたとしか思えないような結果も複数残されています。SCP-XXX-JP-1は基本的に自身が取り付く人間に対して危害を加えませんが、噛みつく場合があります。SCP-XXX-JP-1に噛みつかれた人間は死亡し、同時にSCP-XXX-JP-1は消失します。

長期間認識し続けたSCP-XXX-JP-2の多くが自身に取り付くSCP-XXX-JP-1を『自身の死』であると認識しています。しかし、そのように考える理由に明確な根拠はありません。また、自身の死であると認識しているにもかかわらず、SCP-XXX-JP-1に対して恐怖を感じていません。全てのSCP-XXX-JP-1は最終的にSCP-XXX-JP-2から認識されなくなります。原因は不明です。

補遺1: 以下は財団で雇用するSCP-XXX-JP-2を用いたSCP-XXX-JP-1の観察において特筆すべき点をまとめたものです。

補遺2: 以下はSCP-XXX-JP-2に行われたインタビュー記録です。
インシデントレポートXXX-JP

対象: 糸識氏

インタビュアー: 星博士

付記: 糸識氏は財団がSCP-XXX-JPの収容初期に偶然発見したSCP-XXX-JP-2です。糸識氏を除いて現在までに財団外で発生したSCP-XXX-JP-2は収容されていません。この理由はSCP-XXX-JPの特異性に起因していると考えられています。

<録音開始>
(SCP-XXX-JPに関する簡単な確認のため省略)

星博士: ……では、お願いします。

糸識氏: はい。……あのときの私は、……死ぬつもりでした。

(糸識氏は星博士に視線を移す)

星博士: ……話しにくい事でしょう。構わず続けてください。

糸識氏: 助かります。私は……、首を吊ろうとしていたんです。彼、黒い蛇を最初に見たのはその時でした。あの時は驚いたせいで叫んでしまいました。それで、近くにいた人に見つかったんです。

星博士: その方にはSCP-XXX-JP-1のことを話しましたか?

糸識氏: もちろんです。でも、すぐに見えていないことはわかりました。むしろ、後ろにかけられたロープの方に注意を向けているようでした。

糸識氏: 私は詮索される前に逃げました。逃げてる間にも何回か死のうとしましたが、その度に彼が邪魔をしてきました。取ろうとしても手や物が体を通り抜けるせいで気づけば家の前でした。その日はそのまま寝たのを覚えています。

糸識氏: 夜中に一度目を覚ましたとき、彼は見張るように私を見ていました。それにどことなく心配しているようにも見えました。なんとなく、『今日はもうしない』と言ったら、安心したのか眠り始めました。

糸識氏: 私は嘘をつきました。風呂桶に水をためてから台所に行って、包丁を手にしました。

糸識氏: でも、また彼が邪魔をしてきた。

糸識氏: 彼は包丁をもった手と逆の手首に巻き付いてきました。そして、顔は私の方を向いていました。私は彼が『止めろ』と言っているように感じました。……それに、震えてもいました。目に涙を浮かべて。包丁で刺されても平気なのは知っているはずなのに。

星博士: もしかして、それが自殺を止めた理由ですか。

糸識氏: いえ。その日の自殺はやめましたが、その後で何回かやろうとしました。どうせいつか諦めると思ったんです。でも……。でも、彼は……。

(糸識氏は右腕に視線を向ける)

糸識氏: ……彼は私を信じている。

(数分間の沈黙)

糸識氏: 博士、黒い蛇が各個体で違うことについて話しましたよね。

星博士: ……ええ。

糸識氏: 私が自殺を止めたのは……。彼の体についている傷が、私の体についているものと同じだと気づいたからなんです。たぶん、私が大怪我をすれば彼の体にも同じような跡ができると思ったんです。実際、自殺に失敗して大けがを負ったことがあります。

糸識氏: でも、彼は最後まで私を責めなかった。きっと、『この傷はお前のせいだ』と責めていてくれたら楽だったんでしょう。でも――。

糸識氏: でも、彼はその傷も含めて私を肯定してくれていた。こんな私をです。こんな、私ですら見捨てた私を最後まで見捨てようとしなかった。

糸識氏: ずっと、あの時から、今でも私を肯定してくれている。私を自慢に思ってくれている。

糸識氏: そんな彼を私は失望させたくない。……今はそれが一番怖い。

星博士: 糸識さん、一度落ち着きましょう。

糸識氏: す、すいません。

(糸識氏は水を飲んで興奮を落ち着けているようだった。数分後、インタビューを再開する)

糸識氏: すいませんでした。もう、大丈夫です。

星博士: 気にしないでください。きっと、それだけ大切な存在なんでしょう。私だってそういうことはありますから。

糸識氏: ありがとうございます。

星博士: では、話を変えましょうか。糸識さんはSCP-XXX-JP-1、つまりあなたが彼と呼ぶ存在は何だと思いますか?

糸識氏: 彼はそう……、『私自身の死』だと思います。言外に、ではありますが、そう感じています。

星博士: 怖くはないんですか?

糸識氏: 彼は死であって、死神じゃない。死神だったら、きっと自殺を止めなかったでしょうし。間違っても四六時中私が死なないか見守るなんてことはしないでしょう。

糸識氏: ……自殺を止めてから、彼の仲間をたくさん見てきました。
糸識氏: 自殺する人間の蛇は泣き叫んでいて、死ぬ直前までその人が死なないように足掻いているように見えました。他の蛇たちに助けを求めていて、他の蛇たちも助けようとしていて。死ぬ直前は……。私は……、私は……、あと少しで彼をあんな風に……。

(数分間の沈黙)

糸識氏: ……一番記憶に残っているのは、死んだ祖母の蛇です。祖母が亡くなる直前、今まで見たどの蛇よりも胸を張っていたように見えたんです。誰よりも祖母の生き方を誇っている。そう感じました。

糸識氏: 彼にも、同じように胸を張ってもらいたい。間違ったこともあるが、自慢の相棒だと。最後まで私が生きたことを誇りにしてほしい。だから私はもう死ねません。最後まで、生きていきます。何より――。

星博士: 何より?

糸識氏: 私を見張っていたせいで彼は寝不足ですからね。安心して、眠ってい欲しい。

<録音終了>

追記1: インタビューを行った半年後、糸識氏は『SCP-XXX-JP-1が見えなくなり始めた』と報告してきました。この2週間後、糸識氏はSCP-XXX-JP-1を完全に認識できなくなりました。見えなくなった当初の糸識氏は取り乱した様子でしたが、すぐに現状を受け入れたようでした。財団は糸識氏がSCP-XXX-JP-1を認識できなくなった1か月後に記憶処理を行い、解放しました。現在、糸識氏は財団フロント企業に勤務しています。

追記2: 他のSCP-XXX-JP-2に糸識氏のSCP-XXX-JP-1の様子を報告してもらいました。結果、SCP-XXX-JP-1に不審な点は見当たらず、昼寝をしている時間が増えた以外に変化は確認されませんでした。

評価: 0+x

アイテム番号: SCP-099-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 財団は国連と協力して常に乳幼児の生存率を観測してください。不自然な上昇を観測した場合、住民の健康診断の後にSCP-099-JP用の虫下しを観測地域の住人および哺乳動物に投与してください。その後、その地域で生産された肉及び乳製品から作られた食物は全て回収し、焼却してください。

SCP-099-JPの確実な収容案がある場合担当職員に報告してください。

説明: SCP-099-JPはギョウチュウ(学名:Oxyuridae)等複数の遺伝子を掛け合わせて人工的に作成された体長40mm前後、体幅0.1mmの糸状寄生虫です。SCP-099-JPの寄生対象となった哺乳生物(以下、宿主)が生物学的に雌であった場合、宿主の乳房が常識的な範囲で肥大することが確認されています。しかし、乳房が肥大するにはある程度乳腺が発達していなければならず、未成熟個体及び雄の成熟個体では乳房は肥大しません。

SCP-099-JPは寄生箇所である胸において血管に取り付くと自身の体と血管を一体化させます。その後、血管を流れてきた老廃物、不純物、有害物質を吸収し、栄養素および抗菌物質を放出します。その結果、母乳の栄養価が上昇するとともに病気にかかる危険性も低下するため、この母乳を飲んだ生物は健康状態を維持することができます。特に顕著な例としてはSCP-099-JPの生息地域における乳児生存率の上昇が上がられます。宿主自体はSCP-099-JPの影響により健康状態を維持し続け、他種の寄生虫が持つような健康被害は寄生開始最初期の腹痛及び下痢以外に報告されていません。

SCP-099-JPの感染経路は主に乳液もしくは尿を介した感染です。また少数ですが血液による感染も報告されています。SCP-099-JPの卵は非常に小さく、かつ環境の変化に強いため長期間卵の状態で食物の中や土壌に潜伏することが可能です。感染経路では主に母子感染や家畜からの感染2が確認されています。中間宿主には蚊などの吸血生物やニワトリなどの鳥類が挙げられており、汚染された河川から検出された例も存在しています。財団はこれらの感染を防ぐために虫下しの使用及び加工施設や浄水施設の設備強化を奨励していますが、貧困国では内戦や知識の欠如により満足に普及できていないのが現状です。

SCP-099-JPは貧困国における乳幼児の生存率が特に具体的な対策がなされていないにもかかわらず向上し始めたことで財団に注目されました。調査の結果多くの住民の胸にSCP-099-JPが寄生していることが確認されました。その後の調査により、最初の感染は慈善団体の援助によるものだと判明しています。この慈善団体は貧困国にSCP-099-JPが入った食物や家畜用の飼料を援助したものとみられており、代表の生物学者███████氏は現在行方不明です。彼は実業家でもあり、自身の慈善団体に多額の私財を投じていました。

補遺1: ███████氏の息子が所持していた日記(SCP-099-JPの制作動機および関連していると思われる箇所を時系列順に抜粋)

6/28/1976: [編集済]社の████氏と話すことができた。彼は私の計画に賛同してくれたが、どこか商人の顔を覗かせているようにも思えた。だが、何も明確な対策を打たない国連より彼らのような商人の方がよっぽど信用できる。氏の話では来週の会議にこれを提出すると言ってくれた。これがうまくいくことをただ祈るばかりだ。

7/2/1976: 氏の話では会議の反応は上々だったそうだ。話を聞く限りでは私の想像以上に粉ミルクを途上国に配っていくようだ。おそらく、市場拡大の思惑もあるのだろう。これを利用して少しでも子供たちの栄養不足を解消できればいいのだが。

11/17/1976: いよいよ発展途上国に粉ミルクの供給が開始される。正直、ここまで大々的なものになるとは思っていなかった。私も現地に入り、無償で配っていく予定だ。これは些細な活動だが、ここから少しでも広がっていけばきっと世界は良くなっていくはずだ。主よ。どうか見守りください。

5/7/1977: 活動が始まってから半年ほどだ。心なしか栄養不足の子供が減ったように思われる。今日、粉ミルクを与えている母親を見かけた。出産祝いにもらったそうだ。彼女たちの笑顔がこのまま続くことを願うばかりだ。

5/23/1977: 初めて市場を覗いてみた。私たちが配っていた粉ミルクが売られていた。何故だ。

6/12/1977: 知り合いの子供が死んだ。栄養不足からだそうだ。彼女はどうやら粉ミルクを薄めて与えていたらしい。母乳を与えようにも出が悪く、仕方なく与え続けていたと言っていた。私に何かできることは無かったのだろうか。

8/28/1977: 私は人殺しだ。
(この文が書かれていたページには新聞記事が挟まっていた。その内容は主に途上国では清潔な水が得られないために粉ミルクには細菌が繁殖した水を使うしかないというものだった)

10/2/1977: 失敗した。私は何も知らなさ過ぎた。私のせいだ。

(日付が10年飛ぶ)

4/19/1987: 知人から奇妙な男を紹介された。彼はジョンと名乗ったがおそらく偽名だろう。彼はどこぞのNGOに所属しているそうだ。信用していいのだろうか。

6/4/1987: ジョンと話をした。彼は世界は平等でなければならないと私に力説していた。そして、そのためには世界中から貧困をなくすことが大切だとも話してくれた。ここ数年で私は老いた。だが、人の真偽を見抜く力はついたつもりだ。少なくとも、彼は嘘を言っているようには見えなかった。
彼になら私の計画を話してもいいかもしれない。

1/25/1988: ついに研究が始まった。構想段階では何度もジョンとぶつかったが、今ではいい思い出だ。だが、研究はこれからだ。前のようなことがないように進めていかなければ。

3/9/1988: 最近、ジョンはこちらにいることが多いように思う。家族は私がいなくても大丈夫だと自嘲気味に笑っていた。正直なところ家族は大事にしてほしいのだが、彼がいれば研究は著しく進む。それこそ、私が必要ないくらいに。彼ほどの研究者なら有名になっていてもおかしくないはずだ。きっと何かあるのだろう。それか主が私に遣わした天使なのかだ。

4/2/1988: 試作品第一号が完成した。牛で試してみたが胸が異常な大きさになった。これではだめだ。次を試さなければ。

5/27/1988: ジョンという人間を観察していて思ったのだが、彼は自身の正義を妄信する傾向にあるようだ。まるでかつての私を見ているように思えた。ただ、こちらがちゃんとした証拠を出せば自身の過ちを認める柔軟さも持ち合わせている。周囲の人間のことを考えるに、彼が間違えた時は私が止めなくてはいけないだろう。

7/17/1988: いくつかの試作品で動物実験が成功した。喜ばしいことだが次は人体で試さなければならない。危険もある。何人か協力者を集めなければ。

8/2/1988: 実験に参加することになった。最初は不安だったがジョンが背中を押してくれた。不安だった息子のことも彼は面倒を見てくれると約束してくれた。後は自分のすべきことをするだけだ。

11/2/1988: 左目が見えなくなった。不幸なのは腐った眼球が朝食のスクランブルエッグに落ちたことだ。研究所では数少ない娯楽なのに、クソッタレ。

12/24/1988: 今日はクリスマスイブだ。息子と一緒に祝った時のことを思い出す。今でこそ疎遠になったがあの当時は良い家族だった。彼は今の私を何というだろうか。少なくとも、完成させなければロクデナシのままだ。

2/7/1989: ついに右[判読不可]が[判読不可]してし[判読不可]だがいつか慣れ[判読不可]

(以降、███████氏は日記をつけていない)

8/10/1989: 今日の日記は私、ジョンが書いている。君のお父上は最早まともに動くことはできない状態だ。いや、生きているのが不思議な状態と言った方が良い。私ができたのは生命維持と彼の皮膚の上に『完成した』と指で書くことだけだった。
君のお父上は立派な方だった。君からしてみれば何をしているのかわからないロクデナシだったかもしれないが、最後まで戦っていた。だから誇りに思わないでも、軽蔑だけはしないでほしい。彼の友人としての頼みだ。
今の彼は人の形をしていない。いつ発狂しても不自然じゃない。それでも、彼は生きている。正気を保っている。私はこれから彼を治療する。だからもしも彼と会うときは恐れないでやってほしい。君のお父上は我々にしつこく何かを伝えようとしている。おそらく君のことだろう。今は我々の施設に治療しているから、いつでも来てやってほしい。この住所がその治療施設だ。会えることを楽しみにしている。

補遺2: 日記に書かれていた住所は財団の調査により1992年までマナによる慈善財団が管理していた施設が存在していたことが判明しています。また、███████氏の息子は一度だけ氏のもとに訪れており、この時の様子では必死で何かを伝えようとしていたように見えたと主張しています。███████氏の治療を担当していたジョンという名前の男性にそのことを伝えたそうですが、彼の話はまともに聞いてもらえなかったと話していました。

追記1: 財団がSCP-099-JPを根絶したと判断した地域で再度SCP-099-JPが発見されました。土壌に付着していたSCP-099-JPの卵が家畜に侵入し、人に感染したものと思われます。

追記2: SCP-099-JPが確認された地域では人口の急激な増加が発生しています。これにより食糧不足、雇用不足等の典型的な人口増加による問題が多発しています。多くの場合、人口維持のために資源を必要とすることから、その資源をめぐって自国内で紛争もしくは他国へ戦争を仕掛けることになります。この影響はSCP-099-JPが確認されていない地域にも波及していき、結果としてSCP-099-JPは貧困国の拡大とともに生息地を広げていくものと考えられています。