Zenigataの機密データ

『その日にきっと何かある』

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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 財団の全施設のカレンダーは毎年1月1日に検査が行われます。SCP-XXX-JPだった場合は回収後、保管されます。このとき、SCP-XXX-JPがつけられた日付を記録してください。収容されたSCP-XXX-JPは申請することで使用が可能です。

説明: SCP-XXX-JPは毎年1月1日に全世界のカレンダーで発生する黒または赤の丸印です。発生する日付はランダムであり、発生条件は不明です。しかし、その年の日付が正確に書かれたカレンダーのみに発生することが判明しています。現在まで確認されたSCP-XXX-JPの冊数は多い年では100冊、少ない年では5冊です。

SCP-XXX-JPを視認した人物(以下、対象)はSCP-XXX-JPがつけられた日に何らかの事象が発生すると強く確信し、その事象を具体的な内容を考えるようになります。この特異性はSCP-XXX-JPが書かれた日付になった瞬間に消失します。実験の結果、SCP-XXX-JPの特異性は思考した結果にまで作用しないことが確認されており、同様に強迫観念を植え付けるようなものでもありません。
例として、対象が2月14日につけられたSCP-XXX-JPを視認していた場合、2月14日に何らかの事象が発生すると確信し、具体的な内容が何であるか考えます。SCP-XXX-JPの影響はここまでです。その後、思考した結果、具体的な事象の発生を確信しますが、その事象に対する思考は各対象に依存します。そのため、「意中の相手からチョコがもらえる」、「バレンタインのカードが送られてくる」、「仕事が早く終わる」等、内容は多岐にわたります1

SCP-XXX-JPはその特異性から長い間発見されてきませんでした。現に財団が発見したのは2001年でしたが、SCP-XXX-JPが関与したと思われる記録で最も古いものは1896年のものです。財団が最初に回収したSCP-XXX-JPは要注意団体の労働施設を襲撃した際に発見されました。発見された時点において、特異性は消失していましたが、未知のミーム効果が存在した痕跡は確認されています。

補遺1: SCP-XXX-JPは要注意団体のデータベースに記録が存在していました。特異性や発見方法等は確認されていますが、発生条件は不明です。しかし、発生地点が捕虜収容所を中心にしていることから、何らかの傾向があるとの指摘もあります。

補遺2: 以下はSCP-XXX-JPの影響下にあったエージェントに行われたインタビュー記録です。

インタビュー記録XXX

対象: エージェント・ドミニク

インタビュアー: エージェント・シスコ

付記: エージェント・ドミニクは要注意団体に拉致され、約3年間捕虜として生活していました。また、インタビューはSCP-XXX-JPの調査を目的にしたものではないことに留意してください。

<録音開始>
シスコ: はじめまして、エージェント・ドミニク。本日はよろしくお願いします。

ドミニク: ああ。こっちもよろしく。

シスコ: 早速ですが、あの場所での体験をお話しください。

ドミニク: ……わかった。

ドミニク: 俺は元々要注意団体に潜入調査を行っていた。だが、裏切り者のせいで捕まって、収容施設に送られた。

ドミニク: つれていかれた場所は、雪原だった。辺り一面雪しかないような場所だ。最低限の施設しかなかった。そこで、延々と穴を掘っていた。

ドミニク: 捕まっていたのは全員財団職員だった。みんな、性別や出身地はバラバラだったが、数日もすれば同じような目をしていたのはよく覚えている。助けは来ないと諦めた目だ。

ドミニク: 毎日毎日同じ作業を繰り返していた。たまにいなくなるやつもいたが、誰も気に止めなかった。そんな余裕なんてなかったし、どうなるかなんてわかっていたからな。

シスコ: 財団に連絡しようとしましたか?

ドミニク: 一通りは試したさ。だが、無理だった。その証拠がこの3年間だ。

ドミニク: 3年間。延々と穴を掘るだけだった。いつか、助けが来ると淡く期待してな。それ以外に変わったことは……。いや。1度だけ異常な出来事があった。ただ、やつらの記録では大量死にすぎないが。

シスコ: 死んだ? そのような施設なら不自然ではないのでは?

ドミニク: 短期間で10分の1になるなんてあると思うか? ただの病気や事故、そして自殺で。まるで示し会わせたかのように。

シスコ: ……不自然、ですね。

ドミニク: ああ。やつらも騒いでいたぐらいだ。何かがおかしいって。元々、生かさず殺さずで働かせ続けようとしていた連中だ。死なせるのは不本意だったはずだしな。

シスコ: 心当たりはありますか?

ドミニク: ……まあな。だが……。

シスコ: どのようなことでも構いません。調査の役に立つはずです。

ドミニク: わかった。少し、話をまとめるから時間をくれ。

シスコ: わかりました。

(5分間の沈黙)

ドミニク: 最初は、カレンダーだった。

シスコ: カレンダー?

ドミニク: そうだ。誰かが持ち込んだカレンダーを見つけたんだ。5月か6月くらいだったと思う。

シスコ: それに何かあったんですか?

ドミニク: いや。単純に赤い丸がしてあっただけだ。12月25日に。

ドミニク: あのときは暖をとるために何か燃やせるものをみんなで探していたんだ。時期的にましとはいえ、寒かったしな。あのカレンダーはロンメルのやつが持ってきた。それで、火にくべる前にどんな絵が描かれているのか見ることにした。娯楽なんて全然無いからな。

ドミニク: おかしいと思うかもしれないが、理由もなく妙に気になったんだ。他のやつらも同じようだった。

ドミニク: どうしてその日に丸がついているのか。誰がつけたのか。すぐにそんな話が始まったよ。ただ、みんながその日に何かあると確信していた。

ドミニク: そのカレンダーはニコラスの物だ。そう誰かが言った。ニコラスはエージェントで、俺たちの中で唯一セキュリティクリアランスレベル3を所持していた男だった。

シスコ: だった?

ドミニク: ああ。カレンダーを見つける数日前に事故でニコラスは死んだ。

ドミニク: ニコラスは財団と接触できていたんじゃないか。それで脱出の計画自体はできていたが、俺たちに伝える前に死んでしまった。その場にいた何人かがそう言い始めて、ほとんどがそう信じるようになった。

シスコ: おかしいとは思わなかったんですか。

ドミニク: 少なくとも俺はそう思った。その日に何かあると確信してはいたが、せいぜいクリスマスだから飯が少しだけ良くなるくらいにしか思ってはいなかった。でも、他のやつらは違った。何でも良いから希望がほしかったように感じた。偽りでも構わないほど追い詰められていたんだな。

ドミニク: 思うに、俺はだから生き残れた。

シスコ: どういうことですか?

ドミニク: ……話を続けよう。カレンダーは見張りに没収されたが、口伝えてこの話はすぐに広まったよ。最初はまともなら信用しないと考えていたが、みんな簡単に信じた。すぐに忘れるとも思ったが、そうはならなかった。

ドミニク: クリスマスまでの我慢だ。クリスマスは家族と過ごせる。それを合言葉にして穴を堀続けた。

ドミニク: 全員の様子は明らかに変わった。何と言うか、生気を取り戻していた。明らかに仕事の効率は上がっていたし、困ったやつがいたら助けもした。死ぬやつは目に見えて減ったし、脱走するやつはいなくなった。何より、下らないジョークで笑えるようになった。こんな風に言うのもあれだが、悪くない生活だった。

ドミニク: だが、それもクリスマスまでだ。

シスコ: 何かあったんですか?

ドミニク: 逆だ。何もなかった。いつもと同じで穴を掘るだけだ。

ドミニク: 最初は日付を間違えたんじゃないかって言っていたな。あそこじゃあ、自分の感覚以外に確かめる術はないから。でも、見張りに聞いたらクリスマスは2日前で、とっくに過ぎていた。

ドミニク: だから次は何かトラブルがあって、遅れているんだと考えた。実際、そういうことはあるからな。

シスコ: でも、来なかった。

ドミニク: そうだ。何もなかった。

ドミニク: 日が経つにつれて、1人また1人と死んでいった。事故、病気、自殺。まるで、クリスマス前のつけを払うみたいに。ただ、脱走者はいなくなった。脱走する前に死ぬからだろうが。

シスコ: あなたはよく生き残れましたね。

ドミニク: だから言っただろ。根拠がない話だったからな。心の底じゃあ信じていなかったんだ。それが運命を分けた。

シスコ: 何か心当たりが?

ドミニク: 考えたんだ。みんながどうしてあそこまで信じたのか。希望が欲しかったのもある。そして、そこに具体的な目標ができたから、あそこまで信じることができたんだと思う。

ドミニク: 例えば、1週間だ。日曜日は月曜日に働かくことを考えて、嫌な気持ちになるだろ。でも、木曜日や金曜日だとあと少しで休みになると考えて、やる気が出る。祝日や長期休暇前だと、あと何日か数えたりするだろ?

シスコ: ええ。

ドミニク: 死んだやつらは、ありもしない休暇のために最後の力を出しきってしまったのさ。命はよく炎に例えられるが、燃料が無くなれば消えるしかない。

ドミニク: あとはそっちの資料に書いてある通りだ。何かあれば、また今度にしてくれ。……なあ、1つだけ良いか?

シスコ: 何でしょうか?

ドミニク: ……俺に違うと言える勇気があったら、結果は変わっていたと思うか?

<録音終了>

追記: SCP-XXX-JPは財団の施設内でも発見されています。現在回収されたSCP-XXX-JPの8割が財団で発見されたものです。SCP-XXX-JPの発生条件との関連性は現在調査中です。