アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JPはサイト-8110の鍵付きの低危険度物品収容ロッカーの中に油の中に入れて収容されています。SCP-XXXX-JPを用いた実験はセキュリティクリアランス3以上の職員一名以上の許可を得たうえで、暴露者はDクラス職員のみに限定してください。
SCP-XXXX-JPに暴露した人は便宜上SCP-XXXX-JP-1、動物はSCP-XXXX-JP-2、その他無生物の場合はSCP-XXXX-JP-3と呼称されます。実験終了後、SCP-XXXX-JP-1に対して、終了するまで監視の目を緩めないでください。24時間、最低1人以上の研究員が彼に直接声を掛けられる距離で観察を継続してください。
SCP-XXXX-JP-1の手には、コミュニケーションをとるためのシグナルシステムが埋め込まれます。
また、SCP-1212-JP-1が素早く状況をまとめるためにメモ用紙とボールペン、そしてSCP-1212-JP-1の傍にはタイプ用のPCが設置されます。
説明SCP-XXXX-JPは普遍的な藍色の折り畳み傘です。フックに引っ掛けるためと見られる輪形の紐が取り付けられています。経年劣化や損傷はそれ相応のものです。外見や構造について特筆すべきことはありません。やや小さめのきわめて一般的な折り畳み傘です。
SCP-XXXX-JPの異常性は人、若しくは腕を持つ生物、人工的に創られたアームを操作できるロボットが、傘を手に持った状態で、SCP-XXXX-JPが雨水に触れた直後に発生します。
海水などの雨水以外の水では異常性は確認されていません。
しかし、雨水由来の地下水や川の水に触れると異常性が確認されました。
SCP-XXXX-JPが雨水に触れた直後、SCP-XXXX-JP-1は雨及び雨水を知覚できなくなる認識災害を引き起こします。
SCP-1212-JP-1は如何なる手段を講じても雨及び雨による影響を認識することは出来ません。
██博士が実験のために用意した天気予報を伝える垂直二足歩行可能なロボット「ひまわりちゃん」を暴露させた場合、天気予報で雨、若しくは雪の予報を立てることが出来なくなりました。
SCP-1212-JPは███川の氾濫によって洪水が発生したことがきっかけで発見されました。███川の氾濫によって3名の方が無くなりましたが、その内の1名、30代男性の様子を不審に思ったエージェント・舟木が調査しました。
その様子は、記録によれば降水量は毎時120mmを超えていたのにも拘らず、堤防の上のジョギングコースにてジョギングを行っており(朝のジョギングは彼の日課だった)、決壊した堤防に達して墜落。そのまま流され、死亡しました。しかしその間、彼は流されながらも溺れているような様子はなく、不自然な動きをしていたという証言がいくつかされ、エージェント・舟木もその奇怪な行動を目撃しています。エージェント・舟木は鞄の中に入っていたSCP-1212-JPを回収することに成功しました。彼の妻及び二人の息子は、SCP-1212-JPの存在を知りませんでした。彼の家族及び目撃者に対して、それぞれに適切なカバーストーリーが流布されました。恐らく、彼はSCP-1212-JPに暴露し、SCP-1212-JP-1となり、激流の中を走っていたと思われます。彼がSCP-XXXX-JPを所有するにあたった経緯は未だに特定されていません。また、調査に当たったエージェント・舟木も暴露してしまい、SCP-1212-JP-1になりました。
インタビュー記録SCP-XXXX-JP 26 - 20██/██/██
対象: D-10943
インタビュアー: █上級研究員
<記録開始>
█上級研究員: では、インタビューを開始する。
D-10843: はあ。(着席する)
(しばらく無言の時間が続く)
D-10943: これは(テーブルの上にあるまだ温かい食事、特に玄米を指差している)
█上級研究員: 君の朝食だよ。これから実験がある。時間も惜しいから食べながら昨夜の実験後の話について詳しく聞きたくてね
D-10943: (暫く目を見開く)いくら俺が[編集済み]だったからって、流石にこれはないんじゃないか? 少なくとも、今まではこんなことなかったぞ。
█上級研究員: 詳しく説明を求める
D-10943: 俺の朝食はこの硬そうな米が主食ってことか?
█上級研究員: つまり、君はこの玄米ご飯が炊飯されていないように見えるというのかね?
D-10943: (無言で頷く)
レポート:この問答によって、半日も経たずして雨水によって加工されたものも漏れなく認識出来ないことが分かった。但し、認識できなかったのは雨水を用いた加工過程による変化そのものであった。提供された玄米は一般に販売されている██県産の玄米であり、調査の結果、雨水を使用していることが分かった。本来ならば、雨水を認識できないならば、それによって育成された玄米さえ認識できないはずだが、まだそのときではないのだろうか。となれば、エージェント・舟木は早期から食事が影響を受けていたが、これほど早いとは……さらなる調査が必要だ。
実験記録XXXX-JP 7 - 20██/██/██
対象: D-10943
実施方法: 液体の入っているコップを見せた。それぞれ、雨水、雨水から加工した精製水、井戸水、湧水、市販されている天然水、海水、海水淡水化した真水、水素と酸素の燃焼反応によって生じた水、水銀である。
結果: 以下の通りである。
雨水 |
知覚不可能 |
雨水から加工した精製水 |
知覚不可能 |
井戸水 |
知覚可能 |
湧水 |
知覚可能 |
市販されている天然水 |
知覚不可能 |
海水 |
知覚可能 |
海水淡水化した真水 |
知覚可能 |
水素と酸素の燃焼反応によって生じた水 |
知覚可能 |
水銀 |
知覚可能 |
レポート: 認識できる量としては、雨水<海水<燃焼反応によって生じた水、と言ったところだろうか。対象の精神衛生を鑑みて、これからしばらくは対象に対して、海水淡水化した真水を与えるべきである。また、数日後には海水淡水化した真水も認識できなくなることから、燃焼反応によって生じた水を与えることになるだろう。
実験記録XXXX-JP 7 - 20██/██/██
対象: D-10943
実施方法: 雨水を加工した飲料水を飲ませ続け、その経過を観察した。
結果: D-10943はコップの中の飲料水を認識できなかったが、無理やり飲み込み続けた。2Lに達するまで飲み続けた結果、D-10943は眩暈などの水中毒の症状を訴え始め、実験は中断された。
レポート: 死ぬまで水を飲み続けるのではないだろうかとひやひやしたが、水中毒の症状を訴えてよかった。どうやら体は水を認識しているようである。
実験記録XXXX-JP 7 - 20██/██/██
対象: D-10943
実施方法: 雨水から加工された摂氏0℃の氷水にD-10943の腕を突っ込ませた。
付記: D-10943に対して認知テストを行ったがD-10943はビーカーの中の冷水を認識できなかったが、常温状態であるにも関わらず結露しているビーカーに驚いていた。
結果: しばらくするとD-10943の手は凍傷の兆候を見せ始め、D-10043が激しい痛みを訴えたため、実験は中止となった。
レポート: 実験記録XXXX-JP 7の結果を踏まえれば予想通りの結果だ。たとえ雨水を知覚できなくとも、体には直接的な影響を及ぼしている。この影響によって、水が飲めなくなることによる脱水症状による終了は、SCP-XXXX-JP-1が延命を拒まない限り、あり得ないだろう。
インタビュー記録SCP-XXXX-JP 26 - 20██/██/██
対象: D-10943
インタビュアー: ██博士
<記録開始>
█上級研究員: 昨日は立て続けの実験、本当に感謝する。凍傷は大丈夫か?
D-10943: ああ、腫れはかなり引いてきている。まだ少し麻痺しているが、日常生活に支障はない。にしたって、あのビーカーはどういう異常性なんだ? 中に入れた物を冷やしたりするのか?
█上級研究員: その質問には答えられません。今後、我々に答える意思はないことを覚えておいてください。
D-10943: はいはい。
█上級研究員: よろしい。では、何か新しく気付いたことはあるかね?
D-10943: (沈黙)
█上級研究員: これはあくまで定期的なインタビューである。形式的なものだ。特にこれと言ったものがなければそれで今日の君の仕事は終わりだ(席を立とうとする)
D-10943: ……ここは████だったよな?
█上級研究員: ええ、そうだが?
D-10943: 俺の知る限り、ここは砂漠ではなかったと思うのだが……博士としてはどう思う
█上級研究員: (沈黙)分かりました。では、インタビューを終了します。
レポート: 後の調査で、D-10943は地上に含まれる水分のほとんどを認識できなくなった。結果、サイト内の地上が干からびた大地のように見える認識災害が発生していることが新たに分かった。前回の件よりも異様に早い。このまま異常性が進行するのであれば、█日もしないうちにありとあらゆる水を認識できなくなるだろう。そこに例外があるという考えは早急に消去しなくてはならない。
以下の文書はセキュリティクリアランスレベル2/XXXX以上の権限を持つ者のみ閲覧が可能です。
承認されました。ファイルを取得します。
███川氾濫の際の異常性を調査していたエージェント・舟木が同様の異常性に暴露したことを報告しました。その内容は、水を認識できなくなるというものでした。下記はエージェント・舟木に対するインタビュー記録及び実験記録です。
-
対象: エージェント・舟木
インタビュアー: ██研究員
<記録開始>
██研究員: では、あなたの主張する異常性、及びそれが財団に発見されるまでの経緯についての報告していただきたい、エージェント・舟木。いや、SCP-XXXX-JP-1。
エージェント・舟木: はい。私は███川氾濫の犠牲者の一人の遺品の中の折り畳み傘に触れた際、雨が認識できなくなるという異常性に暴露しました。当初はその異常性に気付くことはなく、偶々、ちょうど良いタイミングで雨がやんだとばかり思っていました。ですが、自宅だけではなく、サイト-8110内で断水していること、そして、他の職員はそれを感じていなかったことから、異常性を報告しました。
██研究員: なるほど、因みに、SCP-XXXX-JPを何らかの操作をしたりしましたか?
エージェント・舟木: いいえ、何もしていません。回収するために触れただけです。勿論、その時は布手袋を装着していました。
██研究員: 直接触れていないのにも拘らず、SCP-XXXX-JPの異常性に暴露したという事ですね。
エージェント・舟木: おっしゃる通りです。まったく、エージェント失格ですね。迂闊でした。
██研究員: 今のところ、ミーム汚染は確認されていませんが、可能性は拭えていません。これからあなたは目下作成中であるSCP-XXXX-JPの特別収容プロトコルにSCP-XXXX-JP-1として組み込まれることになるでしょう。そのことは覚悟してもらいます。宜しいですか。
エージェント・舟木: ああ、暴露に気付いた時から覚悟はしている。……だけど……
██研究員: どうしましたか?
エージェント・舟木: このSCP-XXXX-JPの研究には██も参加してほしい。出来れば主任で、それがだめでも研究助手として参加してほしいんだ。
██研究員: SCP-XXXX-JP-1、このインタビューは公式の記録であり、財団によって保存されます。個人情報を話すようなことは慎んでください。
エージェント・舟木: 済まない██研究員。それで、どうなんだ。
██研究員: 忌憚なき意見を述べるならば、私は上級研究員ではないため、主任は無理でしょう。ですが、助手程度なら……掛け合ってみますが、公算は低いと思いますよ?
その後、██研究員の熱意に押される形で█上級研究員は彼を助手としてSCP-XXXX-JPの研究に招きました。
-
SCP-XXXX-JPはサイト-8110の鍵付きの低危険度物品収容ロッカーの中に乾燥剤と共に収容されています。セキュリティクリアランス3以上の職員一名以上の許可を得たうえで、暴露者はDクラス職員のみに限定してください。
SCP-XXXX-JPに暴露した人は便宜上SCP-XXXX-JP-1と呼称されます。SCP-XXXX-JP-1を収容する際は、横:25cm、奥行き:25cm、高さ:500cmの水槽を海水淡水化した真水で満たしたものを同時に収容してください。また、SCP-1212-JP-1が素早く状況をまとめるためにメモ用紙とボールペン、そしてSCP-1212-JP-1の傍にはタイプ用のPCが設置されます。
-
対象:SCP-XXXX-JP-1
インタビュアー:██研究員
<記録開始>
SCP-XXXX-JP-1: やっぱりお前だったか。そうだと思ったよ。
██研究員: 不用意な発言は控えるようにしてください、SCP-XXXX-JP。
SCP-XXXX-JP-1: はいはい。
██研究員: それでは、まず、あの水槽の水をどれほど認識できますか?
SCP-XXXX-JP-1: 4m弱ってところだな。
██研究員: 一日に1mくらいってところなのか。
SCP-XXXX-JP-1: そうだと思う。指数関数的に増えるとかそういうのじゃなければな。
██研究員: 分かりました。今のところは比例的な状況だと、そう感じるのですね?
SCP-XXXX-JP-1: ああ、そんな感じだ。
██研究員: 食事についてはどうですか?
SCP-XXXX-JP-1: ああ、まったく、ふざけた食事だったよ。米を文字通り産地直送してきたのかと思ったぜ。これからはシリアルで頼むよ。
██研究員: 了解しました。では、インタビューを終了します。
<記録終了>
(実験記録・インタビュー記録省略)
-
対象:SCP-XXXX-JP-1
インタビュアー:██研究員
<記録開始>
██研究員: ではインタビューを始めます。……大丈夫ですか?
SCP-XXXX-JP-1: あ、ああ、ちょっと考え事だ。
██研究員: ここは公式に記録されるインタビューの場です。忌憚なき意見をお願いします。
SCP-XXXX-JP-1: (10秒間沈黙)では、言わせてもらうと、最近何も食べていないことは言ったよな。
██研究員: はい、インタビュー記録SCP-XXXX-JP 4にて、記録されています。
SCP-XXXX-JP-1: 昨日からは遂に水すら飲めなくなった。
██研究員: そうですか。燃焼反応によって生じた水も……ですか……。これからはもっと量を増やしてみましょう。
SCP-XXXX-JP-1: いや、もういい。多少増えたとしても焼け石に水だ。これからは普通の水で結構だ。
██研究員: ……分かりました。そう、伝えて、おきます。
SCP-XXXX-JP-1: おいおい、そんな悲痛になる必要はない。俺はコップの中の空気を飲んでるだけで生きることが出来る。皿の中の空気を食えば猶更のことだ。癌の末期症状ではないんだ。
██研究員: (沈黙)
<記録終了>
-
対象: SCP-XXXX-JP-1
実施方法: 研究員一名の肉眼による直接の監視のもと、SCP-XXXX-JP-1の末期症状を評価する。SCP-XXXX-JP-1付近にはSCP-1212-JP-1が素早く状況をまとめるためにメモ用紙とボールペン、そしてSCP-1212-JP-1の傍にはタイプ用のPCが設置されます。
結果: 実験開始1日目は特に変化がなかった。実験開始2日目、突如SCP-XXXX-JP-1はタイピング記録を取り始めた。
██研究員: おい! SCP-XXXX-JP-1! SCP-XXXX-JP-1! 聞こえてるのか! ██!!
██研究員は何度も大声で声を掛けるも、聞こえたような動作を見せず、記録を取り続けた。SCP-XXXX-JP-1は椅子から転げ落ちた。しかしすぐに立ち上がり、記録を取り始めた。
█上級研究員: 記録の様子がおかしい。██研究員、確認してみてくれ。
██研究員: これは……恐らく、彼はキーボードが見えていません。指がキーボードからずれているのではないでしょうか。
█上級研究員: 事態の解決は可能か?
██研究員: 試せることは試してみます。
SCP-XXXX-JP-1を直接移動させるようにしたものの、頑強にその場を動こうとしなかった。
██研究員: 駄目です! ピクリとも動きません! キーボードを動かしてずれを補正します。
█上級研究員: 了解した。……ずれは解消された。
しかしその後、今度はSCP-XXXX-JP-1は明らかに意図的にタイピング記録をとることを終了した。SCP-XXXX-JP-1がキーボードから手を離し、自身の体を凝視し続けた。
██研究員: SCP-XXXX-JP-1……?
しばし、混乱状態だったSCP-XXXX-JP-1は彼の胸ポケットに収まっていた一本の万年筆を取り出すと、左腕に刺した。SCP-XXXX-JP-1は出血する。だが、その表情は苦痛を伴っておらず、無表情であった。██研究員はSCP-XXXX-JP-1の自傷行動を制止しようと試みたが失敗。その後、SCP-XXXX-JP-1は嘔吐と吐血を繰り返し、出血性ショックによって終了した。
症状は脱水症状と似ていたが、検死の結果、体内の水分量に異常は見られなかった。腕には自傷の跡が以下のように記されていた。
オレハドこダ イタミナイ
-
SCP-XXXX-JPが収容違反を起こしました。██研究員が特別収容プロトコルを違反し、彼は暴露しSCP-XXXX-JP-1になりました。
-
対象: ██研究員
インタビュアー: █上級研究員
<記録開始>
█上級研究員: 何故、いったい何故、収容違反を引き起こしたのですか? あなたは、もしかしたら研究主任の私より熱心にSCP-XXXX-JPを研究していたはずです。その危険性を十分に理解していたのではないですか。
██研究員: (64秒間の沈黙) 許せなかったんです。
█上級研究員: 何が許せなかったのですか? SCP-XXXX-JPがエージェント・舟木の命を結果的に奪ってしまったからですか?
██研究員: (10秒沈黙) それもそうですが、救えなかった私もです。
█上級研究員: あなた方二人は幼いころからの旧知だったと確認しました。関係を聞かせてくれませんか?
██研究員: 私とエージェント・舟木の二人は、同じ村で生まれたんです。最初はタイプが全く違うから会話すらなかったんです。ジョックとナードと言えばいいでしょうか。兎に角、高校に進学するまで、口をきいたりしなかったんです。
█上級研究員: 確か、進学先は██工業高等専門学校でしたね。決して門地から近いとは言えませんが、二人が同じ学校に行ったのは偶然ですか。
██研究員: まったくの偶然ですね。私は当時エージェント・舟木のことを快く思っていませんでしたから、煩わしくも思いました。いじめとかは全くなかったんですけどね。先入観という奴です。奴を毛嫌いしていたんですが、ある時、彼が世界を救うエンジニアになりたいという、小学生でも今どきそんな夢は語らないようなことを全校集会で言ってのけたんです。馬鹿でしょう。だけど、彼はそのための努力を怠らなかった。自分は彼ほど崇高な理想は持っていませんでしたけど、死に物狂いで努力しましたよ。中学まで大した努力もせず、あれほど現実と乖離する物言いをする輩に、負けるわけにはいきませんでした。結果的に、私は何とか勝ち逃げ出来た。5年間、一度も負けなかった。もしかしたら、あの時が私が一番輝いていた時間なのかもしれませんね。
█上級研究員: 財団があなた方二人に声を掛けたのも、その時でしたね。
██研究員: そうです。その時、初めて面と向かって会話しましたよ。
█上級研究員: 関係はどうでしたか?
██研究員: それからは良好な関係が今まで続きました。プライベートで飲みに行ったりして、学校生活での関係とは打って変わったものになりました。
█上級研究員: 分かりました。ですが、あなた自身がSCP-XXXX-JPに暴露した理由を理解しかねます。どうして、こんなことを……収容違反を起こせば、あなたはSCP-XXXX-JPがエージェント・舟木の命を奪ったことを許せるという事ですか。
██研究員: ……特別収容プロトコル。
█上級研究員: えっ?
██研究員: あの特別収容プロトコルには確実に誤りがある。私にはそれを知りえなかったが、誤りは私が証明している。
█上級研究員: 特別収容プロトコルの誤り……。どこに誤りがあったというのでしょうか。
██研究員: 確かに私は当初はSCP-XXXX-JPに暴露しようと、低危険度物品収容ロッカーから無許可で持ち出した。今日は晴れだったから、近場の蛇口を捻った。どうなったと思いますか?
█上級研究員: SCP-XXXX-JP-1、冗長なインタビューは忌避されています。勿体ぶらないでください。
██研究員: 私は、蛇口を捻る前からすでに暴露していたんです。まだ一切の水に触れていなかったのにも拘らず、です。もう一度、異常性の発現について調査する必要があります。手汗、水蒸気、異常性の発現条件はこのくらいでしょうか。兎に角、研究員の私が暴露した時点で、特別収容プロトコルは正常に働いていません。どうか、研究の継続をお願いします。私が実験体でも構いません。
█上級研究員: 了解した。SCP-XXXX-JPの特別収容プロトコルの改訂については後日検討する。
<記録終了>
彼に対する処置として、Cクラス記憶処理及びカバーストーリー「舟木██を殺害」を刷り込み、Dクラス職員への格下げが行われました。
恐るべき事態が発生した。
遂に人を認知できなくなってしまった。
声が聞き取りづらくなってきた辺りで嫌な予感はしていた。
だがこうも早いとは夢想だにしていなかった。
私はこうして今の状況をタイピングしている。
██研究員の声は当然ながら聞こえない。
ついさっきまで隣に—研究員が間違いなくいたのだが、知覚できなくなった。
私に出来ることは、如何なることが起ろうとも、レポートを書き続けることのみだ。
これは██研究員も承知しているから、私がこの行動に出ている真意を理解しているはずだ。
(エージェント・舟木が椅子から転げ落ちる。エージェント・舟木は立ち上がり、そのままタイピングを続けた)
、sdsls。おぢhsぉrちypjs、いdぴfsもdじょyろmslsyys・
dpmpdろfr。ぉ^んp^fplstsyれpjsmsdじょyrdじょ、syys・
お、s。えsysdじょjsyrぉdりぃもyそ@おmmひぢちlpypjsfrぉyろちfstぴls・
(██研究員は彼の腕をずらし、指を元の位置に戻そうと試みたが、エージェント・舟木は一切の動きを見せなかったため、ノートパソコンを動かして事態の収拾にあたった。)
やばい
建物が崩壊していく
いや、幻覚だ幻覚のはずだ
収容違反が多発している。
多分だが水分を持たない物体ばかりだ。
俺が知っている奴だけでもSCP-[編集済み]、SCP-[編集済み]、SCP-[編集済み]の収容違反がここから確認できる。
気付けば俺は砂漠の中で空気を指で叩いている。
本当にここはサイト-8110なのか不安になってきた。
まだそのことは信じている。
袖がない。
己の服を自覚できなくなった。
俺は今裸