(SCP-1629-JPとして投稿済み。)
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██内の100×100mの敷地中央から移動させず、敷地を柵などで覆わないでください。
SCP-XXX-JPに対する切り落とし手順は、現在必要ありません。SCP-XXX-JPから半径10m離れた四方の地点に設置された遠隔監視カメラの映像は、1日1度以上確認を行います。また、定期的に専門職員を派遣して、観察記録を付けるようにします。
SCP-XXX-JPは年月の経過と共に、異常性の変化が起こる可能性があります。報告は担当者に行ってください。SCP-XXX-JPの改定前の特別収容プロトコルは、以下を参照してください。
SCP-XXX-JPはサイト-81██の、厚さ10cmのコンクリートに囲われた、10×10×20mの収用室に収容されています。床には10×10m、厚さ5cmの鉄板が敷かれ、壁の一部に換気口が設置されています。換気口は常に稼働した状態にあります。
機動部隊む-4("庭師")はSCP-XXX-JPを、通常1時間ごとに切り落とします。SCP-XXX-JPの収容に失敗した場合、収容違反を起こした部位を全て切除し、収容室内に収まるようにしてください。
収容室内での引火性の高い服装の着用や、物品の持ち込みは行わないで下さい。収容室内は遠隔監視カメラを設置し、常に監視できるようにします。SCP-XXX-JPに関する実験及び作業は、担当職員の遠隔の指示の元、必ず防護服を着用して行われます。また、収容室内は常に照明を点灯しておき、停電の際はすぐに非常用電源に切り替えてください。
事件記録SCP-XXX-JP事象発生の後、安定した収容方法が確立されました。これによりオブジェクトクラスがSafeに再分類されました。
説明: SCP-XXX-JPは、直径36cmの鉢植えに植えられている、高さ16mのカキノキ(Diospyros kaki)です。遺伝子上は一般的なカキノキと変わりありませんが、その枝葉は本来のカキノキより丈夫で、収容室の隔壁を貫いた記録があります。また判明している樹齢と比較して、異常に高く成長しています。鉢植え自体に異常性は確認されず、所々破損しており、割れ目から出た根に巻きつかれるようにして大部分が覆われています。
SCP-XXX-JPは、枝葉が毎時間2mの視認困難な急成長を起こしています。SCP-XXX-JPを視認して5~7分以上経過すると、対象はその枝葉の成長を視認出来なくなる認識災害を受けます。この認識災害はSCP-XXX-JPを視界から外した状態で、15分程経過することで解除できます。SCP-XXX-JPの継続的な観測は、監視カメラや写真を通してのみ可能です。
収容室内を消灯し、SCP-XXX-JPが暗所に置かれた場合、SCP-XXX-JPの枝葉は毎時間5mの視認困難な急成長を引き起こします。またSCP-XXX-JPの急成長は、偶発的に空気中の酸素濃度の急上昇を起こすことが判明しました。この酸素濃度の急上昇は、作業員が肺の痛み、手足の震え、目眩などの酸素中毒の症状を訴えたことで明らかになりました。換気口はこの後に取り付けられています。
SCP-XXX-JPはこの異常性のため、16m以上の成長、及び収容室の隔壁が破壊される危険性がある場合のみ、枝葉の部分的な切除が許可されています。切除したSCP-XXX-JPの枝葉に異常性は確認されていません。
発見経緯: SCP-XXX-JPは201█/06/30、██県の██高速道路で起きた玉突き事故での、「前を走っていたトラックから何mもある木が倒れてきた」という証言が財団の注目を引き、確保に至りました。苗木を運搬していたトラックの運転手はSCP-XXX-JPを乗せた心当たりが無いと証言しており、SCP-XXX-JPの出所は不明です。発見当時のSCP-XXX-JPの高さは8mでしたが、主柱や枝葉が倒れた衝撃で折れていて、本来の高さは11m前後であったと考えられています。当時██高速道路では約3時間の渋滞が起きており、トラックの停止中に荷台内の暗所で異常性が発生していたと推察されています。SCP-XXX-JPの目撃者にはクラスAの記憶処置が施され、カバーストーリー「居眠り運転」により、問題なく処理されました。
SCP-XXX-JPはその後、植物アノマリー専用のビニールハウスに移されましたが、夜間に前述の異常性によりビニールハウスの破壊を起こし、現在の収容室に収容されました。結果としてSCP-XXX-JPは現在の16mまで成長し、オブジェクトクラスがEuclidに指定されました。
事件記録SCP-XXX-JP: 201█/09/14 21:34、SCP-XXX-JPの収容室内が大規模な爆発を起こし、SCP-XXX-JPの収容違反が発生しました。この事件によって機動部隊4名が重度の火傷を負いました。爆発前の監視カメラの映像によると、当時の収容室内では通常通り切り落とし手順が行われていました。SCP-XXX-JPが突如燃え広がる様子が映った直後に、映像は途切れています。
この爆発の原因は収容室内の酸素濃度が高まったことによる、SCP-XXX-JP自身が引火材になった自然発火と考えられます。換気口を用いた換気は当時の酸素濃度の急上昇に追い付いていなかったと考えられ、この状況下でSCP-XXX-JPの異常性が増した理由は不明です。また爆発の規模から、当時の収容室内の酸素濃度は██%に達していたと考えられます。
屋外の監視カメラから以下の映像が回収されています。
[21:34:43] SCP-XXX-JPの収容施設の外壁が瓦解する様子が映っている。炎に包まれたSCP-XXX-JPが爆風で20mほど吹き飛び、開けた敷地に落ちる。落下の衝撃で枝葉の大部分は折れて散らばり、鉢植えは砕けて破片が辺りに散らばった。
[21:38:57] 煙の昇る収容施設から負傷した職員が避難している。SCP-XXX-JPを覆う火が弱まっている。
[21:42:01] SCP-XXX-JPを覆う火は完全に鎮火した。多くの枝葉を失っており、1mほどの主柱が残っているのが確認できる。数名の職員が懐中電灯を持ってSCP-XXX-JPの捜索を開始している。
[21:43:46] SCP-XXX-JPが縮れた根で、収容室とは逆の方向に這い始めた。
[21:47:57] SCP-XXX-JPは収容施設から50mほど離れた地点で動きを止め、その場に根を張り始める。
[21:52:02] 職員達がSCP-XXX-JPを発見して近寄っていく様子。SCP-XXX-JPは1mほどの苗木になっているのが確認できる。
その後、暗所時におけるSCP-XXX-JPの急成長を防ぐために、監視カメラと野外照明器具の設置、機動部隊の再配備が行われました。その間SCP-XXX-JPは移動を行わず、留まっていました。以下は当時の監視記録になります。
記録は████研究員が行いました。
時間: 22:15
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 今の所視認に変化無し。監視カメラの映像に変化無し。この真夜中に今の今まで急成長を起こしていないのは、体の大半を失った影響だろうか。
時間: 23:00
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 今の所視認に変化無し。監視カメラの映像に変化無し。もし今は回復中でも、突然成長し出すかもしれない。
時間: 24:00
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 今の所視認に変化無し。監視カメラの映像に変化無し。
時間: 1:00
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 今の所視認に変化無し。監視カメラの映像に変化無し。
時間: 2:00
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 今の所、視認と監視カメラの映像に変化無し。
時間: 3:00
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 今の所視認に変化無し。監視カメラの映像に変化無し。
時間: 4:00
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 今の所視認に変化無し。監視カメラの映像に変化無し。
時間: 5:00
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 今の所視認に変化無し。監視カメラの映像に変化無し。遂に夜が明けてきたが、何も起こっていない。
時間: 6:00
結果: この時点でのSCP-XXX-JPの高さは1m。
分析: 視認、監視カメラの映像共に変化無し。何も起こらなかった。あれだけ厄介だったあの木は、1cmだって伸びなかった。
以降3日間に渡りSCP-XXX-JPへの監視体制が続けられましたが、その間SCP-XXX-JPの異常性は確認されませんでした。監視から3日目に、記録担当の████研究員が夜に野外照明を消灯する提案を出し、これは実行に移されました。その結果、SCP-XXX-JPに暗所時での異常性が確認されなかったことを理由に、監視体制は解除されました。
補遺1: この収容違反事例以降、SCP-XXX-JPの急成長や認識災害は確認されていません。オブジェクトは全ての異常性を失ったと考えられていましたが、SCP-XXX-JPの移動を試みて小型コンテナに移動させた際に、収容室内と同様の異常性が確認されました。結果としてSCP-XXX-JPの高さは2mになりました。
今回の発見に加え、SCP-XXX-JPの異常性は常に、ビニールハウスや収容室などの屋内で発生していたことから、SCP-XXX-JPは暗所ではなく、閉所をトリガーに引き起こされる異常性を持つのではないかと考えられています。SCP-XXX-JPの異常性自体は失われていないと判断され、Safeクラスオブジェクトとして特別収容プロトコルが改定されました。
補遺2: 破壊されたSCP-XXX-JPの鉢植えの破片に、柿の木の写真が付いたラベルが貼られているのを発見しました。ラベルはおそらく破壊耐性を持っていること以外に、紙や印刷インクに異常性は確認されていません。このような名前のプロジェクト団体は確認されておらず、SCP-XXX-JPの異常性との関係性は不明です。
お迎えいただきありがとうございます。どうか、のびのびと成長できる所へ植えてあげてください。この一本が豊かな自然に繋がりますように。
みどりのだいちプロジェクト
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: [SCPオブジェクトの性質に関する記述]
対象: SCP-XXX-JP-2
インタビュアー: [インタビュアーの名前。必要に応じて█で隠しても良い]
付記: [インタビューに関して注意しておく点があれば]
<録音開始, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
インタビュアー: [会話]
SCP-XXX-JP-A: [会話]
[以下、インタビュー終了まで会話を記録する]
<録音終了, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
終了報告書: [インタビュー後、特に記述しておくことがあれば]
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
擬人化系オブジェクトにしたいけどまだ固まってないです。ダメかも
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██内の、低危険度物品収容コンテナに収容されています。SCP-XXX-JPは週に一度、快晴および雨天状態の野外で使用します。悪天候等の問題で野外での使用が困難な場合、セキュリティクリアランス3の職員2名の同伴の下で、天候状態の良い他の収容サイトに運搬して使用します。
説明: SCP-XXX-JPは全長77cm、直径105cm、重量210gの一般的な規格の日傘です。所々に細かな傷や錆びがあり、頻繁に使用されていた事が確認できます。SCP-XXX-JPは、野外で日傘として使用した際に異常性が発現します。SCP-XXX-JPは野外の気象状況に応じて、天候に異なる影響を与えます。この影響は対象を中心とした、半径約4m程度の範囲に限られています。この影響はSCP-XXX-JPを閉じる、または対象とSCP-XXX-JPの接触を終了する事で無くなります。
SCP-XXX-JPは人間が接触した時にのみ、自律性を有します。また接触を終了する事で、自律性は失われます。この自律性による職員の負傷は確認されていません。
SCP-XXX-JPは20██年6月11日、台風██号通過後の██県██町で発見されました。SCP-XXX-JPは付近に滞在していた財団エージェントによって確保されました。台風通過中、及び通過後のSCP-XXX-JPの異常性の目撃者には、クラスAの記憶処置を施しました。事後処理はカバーストーリー「台風の目」、「局地的なお天気雨」により、問題なく収束しました。
201█/06/14、台風██号によって発生した土砂崩れの事故現場から、女性の遺体が発見されたニュースが放送されました。その遺体のは体内の水分の20%が失われており、外見的にも干涸びた状態であったと報道されています。SCP-XXX-JPとの関連性は、前日既に遺体が火葬済みであったために確認不可能です。この他に、当時通行中の3名が骨折や軽傷を負っていますが、SCP-XXX-JPとは無関係と思われます。
以下に実験記録の一部を記します。
実験記録XXX-JP - 1
日付: 201█/06/15
対象: D-XXX-1。20代の女性。
実施方法: 室内でSCP-XXX-JPを開閉する。
結果: 変化無し。
実験記録XXX-JP - 2
日付: 201█/06/15
対象: 同上
実施方法: 天候が晴れの状態で、野外でSCP-XXX-JPを10分間使用する。
結果: 対象がSCP-XXX-JPを使用した数秒後に、対象を中心とした半径約4mの範囲に雨雲が発生し、範囲内の天候が雨に変化した。この際に発生した雨水に異常性は確認されていない。
実験記録XXX-JP - 3
日付: 201█/06/17
対象: D-XXX-2。20代の男性。
実施方法: 天候が雨の状態で、野外でSCP-XXX-JPを10分間使用する。
結果: SCP-XXX-JPを対象に渡す際、SCP-XXX-JPは自律的に動き、持ち手が職員のベルトに引っかかった。その後対象に手渡す事に成功したが、SCP-XXX-JPは手すりやドアノブ等に引っかかり続け、収容室から野外に出るまで、通常5分程度の移動に18分かかった。対象がSCP-XXX-JPを使用した数秒後に、対象を中心とした半径約4mの範囲の雨雲が消失し、範囲内の天候が晴れに変化した。実験開始から30秒後、対象がSCP-XXX-JPの傘下から手を出し、声をあげて即座に手を引いた。実験を中断し身体検査を行なった結果、手首から先の皮膚のひび割れ、血管の収縮、水分と血液の減少が確認された。
追記: 2週間後、D-XXX-2の手首は問題無く回復した。
実験記録XXX-JP - 4
日付: 201█/06/24
対象: D-XXX-3。40代女性。(ゴム手袋と長靴を着用させ、SCP-XXX-JPの傘下から手足を出さないよう指示)
実施方法: 天候が曇りの状態で、野外でSCP-XXX-JPを10分間使用する。
結果: SCP-XXX-JPをD-XXX-3に渡す際、SCP-XXX-JPは自律的に動き、持ち手が対象の手首に引っかかった。以降の移動に問題無し。対象がSCP-XXX-JPを使用した数秒後に、対象を中心とした半径約4mの範囲の空に雨雲が発生し、範囲内の天候が雨に変化した。この際発生した雨水には生物の脂肪、血液が混ざっていた。
追記: 分析の結果、発生した脂肪や血液は人間の物であると判明。
事件記録SCP-XXX-JP: 201█/07/29、SCP-XXX-JPの収容コンテナ内の隙間から、水が発生しているのが発見されました。収容コンテナ内には雨雲らしき気体が充満し、大量の雨水が発生していました。SCP-XXX-JPは半開きの状態でしたが、管理職員がオブジェクトを閉じると同時に、雨雲は消失しました。このとき発生した雨水には複数の種類の木屑が混ざっており、確認されたのは沈香木、ビャクダン、クローブ、鬱金、龍脳樹の5種類です。これらの木屑に異常性は確認されず、資料分を残して廃棄処分しています。事件発生以前に、実験目的以外でのSCP-XXX-JPへの接触は確認されていません。
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ヨウカズ職員のサンドボックス |
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30 Mar 2018 03:23 |
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執筆裏話
平気でネタバレめいた事を言っています。
改稿とかあったら追記しているかも。
半年以上掛けて、大晦日になんとか完成した処女作。ベンチャーコン2018に出そうとして間に合わなかった作品でもあります。テーマは「異常性の誤解」です。
投稿以前のメタタイトルは「命爆発!」、「進化論」。爆発要素はメインじゃないし、そんなに進化論とは関係ない(どんな経緯で思いついたのか謎)ので、今のメタタイトルに。
長い時間をかけて、硬いアスファルトの地面や家の壁に根を張る植物の強さを、何倍にも引き出したのが みどりのだいちプロジェクトです。
彼らについては「行き過ぎた自然保護団体/基本的に自然保護・繁栄の為にしか動かない」としか決まっておりません。おいおい定まればいいな。
彼らから見たこのカキノキのコンセプトは「建築物の破壊とその場の緑化」。付けられていたラベルは「この子以外の草木にも同じ様に接して欲しい」という、彼らなりの祈りになっています。か
所謂メモ落ちになっているのと、この要注意団体でなければいけない要素に欠けているので、なるべく早く改稿したいなと考えています。
2作目にして初tale。投稿までに1ヶ月半ほど掛かりました。1200字掌編企画2019への参加作品。推し記事のtaleはじめてを取りました。
1500文字と間違えて大慌てしたりしつつ、好きな記事の発生過程のヘッカをぶつけました。
あんまり同じ本ばかり掛け合わせると狂ってくるのは、██████氏が読み飽きてきて発想を飛ばし始めるからじゃないかなと。
メタタイトルはスッと決まりましたね。
あまり書く事もないので、収まらずに削った部分を貼っておきます。
私に言わせれば馬鹿げた意見だ。この世に完全なオリジナル作品など存在しない。数多の名作から受けた感動は、作家の欲する表現によって作り変えられる。そもそも私の話が面白くないのであれば、君が指差したその本は売れていないのだ。
登場人物に自論を語らせるのが上手くないので、小馬鹿にしていたと軽く流してしまいました。
(投稿済み)
夜が更けて尚、私は書斎で原稿用紙を前に頭をかいている。本屋ですれ違った学生はこう言っていた。
「この作家の書く話は、名作を組み合わせただけで新鮮味がない」
私はこれを帰り道で小馬鹿にしていたのだが、今の私が何を思っても言い訳ではないのか。私はこのごろ、創作に限界を感じていた。私は今まで収集した名著たちを取り出し、そして静かに項垂れた。どれも私が感動し、参考にしてきた本である。どれも今更組み合わせる要素は残っていない、少なくとも私の頭では。
これらの本は私の価値観を凝り固まらせたのだろうか?いや、行き詰まっているのは私が情報吸収を怠った結果である。好むものだけを手に取り、好むものだけを書き続けた結果である。私は普段見向きしない世界にこそ手を出すべきであり、それに気付くには日が経ち過ぎた。
中身を取り出された本棚はろくに本が残っておらず、歯抜けの棚はなんとも涼しげであった。大層羨ましい。あれだけの空きが私の頭にもあったら、新しい知識をふんだんに取り込む事が出来ただろうか。
わかっている。私は本棚ではない。
だが今日の私は、創造力の限界や焦り、諸々にまいっていたのだろう。眠気か疲労か現実的な思考から離れた脳は、突飛な考えを導き出した。
己の限界を超えたければ己の限界を捨てなければならないと何処かの誰かが言っていた。
それならば『私の頭に本をしまう事が出来たら私は本棚になれるのだろうか』?
冷静であればこんな考えには至らないだろう。しかしこの時の私には本棚になる事が最適解だったのだ。創造性の行き詰まりを打破する近道だったのだ。
私は今日購入した本を両手に持ち、勢いよく額にしまおうとした。しまえない。本の角が目を突いた、鼻を突いた。その時ほんの少しではあったが、私の中に本が入った。
これが限界を超える際の痛みなのだとしたら、あともう少しのはずだ。名高い創作者達が乗り越えた生みの苦しみが、私の場合これだったのだ。生まれたへこみに向かって、本をしまおうとする。しまえない。鼻で息を吸うと鈍く痛んだ。しまおうとする。しまえない。何も見えない。二冊の名作を私の目から脳に読み込む。
私の想い描く形へ! もっと、私の想い描く形へ! 一冊の新たな名作のために!
しまおうとする。しまえない。
何も見えない。
口で息をする。
ようやくしまえた。
赤黒い背表紙が見えた。
息ができない。
ああ……これから私は、私の創作のために生きていけるのだ。
どこかで警察を呼ぶ声がする。
「その後は警察の方々に来て頂きました」
「なるほど……此方は現場に残っていた、旦那様のコレクションです。ここから何か失くなっているものはありますか」
「えっと、黒っぽい表紙の本とか、語学の本とかあったと思います、けど……本当にこれが夫の書斎にあったんですか?」
「それはどういう意味で?」
「どの本も見覚えはあるんですが……確かに見たことがある本は、一冊もないんです」