アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8104の標準収容ロッカー内に収容されています。SCP-XXX-JPを実験に利用する際はレベル2以上の職員2名、もしくはサイト管理者に目的、移動距離を記した所定の申請書を提出し許可を受けた上で行ってください。 現在SCP-XXX-JPを利用した実験は凍結しています。
説明: SCP-XXX-JPは██████社のロゴが入った28インチの白い自転車です。該当する会社に問い合わせたところ、「確かに弊社が20██年に製造したものである」と回答しました。SCP-XXX-JPは奈良県██市の中古自転車屋████で発見されました。「今までの購入客全員が使用すると奇妙なことが起きると苦情を言って返品する自転車がある」という噂をエージェント・██が聞きつけ、財団により存在を確認、収容が実施されました。収容後、SCP-XXX-JPの過去の購入客6名と店主にはAクラス記憶処理が施されました。
SCP-XXX-JPはそれを用いて4700mの距離を移動した時に特異性が発現します。移動距離が4700m未満である場合は一般的な自転車と相違点はありません。移動距離が4700mとなった時点でSCP-XXX-JPを運転している人間(以下、被験者)はSCP-XXX-JPと共にその場から消失し、奈良県██市██町と類似した場所(SCP-XXX-JP-1と呼称)に一瞬で移動します。SCP-XXX-JP-1内で、被験者は実験当時の実際の季節や時間を問わず桜の花弁が散っていると訴えます。移動距離が4750mを超えると桜の花弁は全て地面に落下します。SCP-XXX-JP-1内へのカメラやマイクなどの通信器具の持ち込み及び使用は可能です。GPSは奈良県██市██町の座標を示しますが、実際には被験者はそこに存在しません。SCP-XXX-JP-1から帰還するには被験者がSCP-XXX-JPを降りる必要があります。
SCP-XXX-JP-1への移動後も運転を続行すると、16~18歳と思われる男女5~8人から構成される人物群(SCP-XXX-JP-2と呼称)が出現し被験者に声を掛けます。SCP-XXX-JP-2は被験者の友人であるかのように振る舞います。SCP-XXX-JP-2への物理的接触は不可能です。SCP-XXX-JP-2は各個体が被験者に声を掛け終わると被験者を追い抜いて被験者の視界から消えていきます。その間SCP-XXX-JP-2が被験者に危害を加えることはありません。また被験者がSCP-XXX-JP-2への呼びかけに応答する、あるいはSCP-XXX-JP-2に先に声を掛けた場合もSCP-XXX-JP-2が被験者の発言及び行動により個体自身の行動を変更することはありません。
SCP-XXX-JP-2の各個体はそれぞれが異なる容姿を有しています。
名称 | 特徴 | 備考 |
---|---|---|
SCP-XXX-JP-2-1 | 男子生徒。口調から被験者の同級生のように振る舞っていると推測。 | 一番最初に出現するSCP-XXX-JP-2の個体。約2分間被験者と並走し被験者の反応の有無を問わず雑談を続けた後、先に行く旨を伝えて被験者を追い抜いていく。 |
SCP-XXX-JP-2-2 | 男子生徒。被験者に敬語を用いる。蹴球部と刺繍の入ったリュック1を担いでいる。 | SCP-XXX-JP-2-2の1体のみが出現する場合と、SCP-XXX-JP-2-3と同時に出現する場合の2パターンがある。被験者に挨拶をした後は他に何を話すこともなく会釈をしてから被験者を追い抜いていく。 |
SCP-XXX-JP-2-3 | 男子生徒。被験者に敬語を用いる。 | まれにSCP-XXX-JP-2-2と同時に出現する。SCP-XXX-JP-2-3の1体のみが出現することはない。挨拶を終えると即座に被験者を追い抜いていく。 |
SCP-XXX-JP-2-4 | 女子生徒。口調から被験者の同級生のように振る舞っていると推測。 | SCP-XXX-JP-2-5、まれにSCP-XXX-JP-2-6と同時に出現する。被験者に気付くまではその3体で昨日見たテレビ番組2の話をしている。 |
SCP-XXX-JP-2-5 | 女子生徒。口調から被験者の同級生のように振る舞っていると推測。 | 1体で出現することはない。SCP-XXX-JP-2-4と同様。 |
SCP-XXX-JP-2-6 | 女子生徒。口調から被験者の同級生のように振る舞っていると推測。 | 1体で出現することはない。SCP-XXX-JP-2-4及びSCP-XXX-JP-2-5と同様。 |
SCP-XXX-JP-2-7 | 男子生徒。口調から被験者の同級生のように振る舞っていると推測。 | 会釈程度に頭を下げた後、何かを呟く動作を見せる。映像解析によって挨拶していることが判明。 |
SCP-XXX-JP-2-8 | 男子生徒。口調から被験者の同級生のように振る舞っていると推測。 | 1体のみでまれに出現する個体。被験者に遅刻しそうだからと速く進むことを促す。 |
ごくまれに16~18歳と思われる女性(SCP-XXX-JP-3と呼称)が出現します。SCP-XXX-JP-2の各個体が被験者より後ろの道路から出現するのとは異なり、SCP-XXX-JP-3は被験者がSCP-XXX-JP-1内に移動した時点でSCP-XXX-JPの後部に出現し、被験者の肩に手を添えます3。SCP-XXX-JP-3に遭遇した場合SCP-XXX-JP-2の個体が出現することはなく、被験者は遭遇から2~3分後に気を失いSCP-XXX-JPから落下することで元の地点に帰還します。SCP-XXX-JP-1から帰還した際、被験者は譫言を繰り返しながらある地点4に向かおうとします。この異常性はBクラス以上の記憶処理で無力化することが可能です。他にSCP-XXX-JP-3が被験者に及ぼした影響は現在観測されていません。
以下はSCP-XXX-JPの調査記録及びそれに付属する情報の抜粋です。
注: 実験は全て被験者がサイト-8104の周辺を走行することで行いました。
調査記録XXX-3 日付20██/██/██
目的: SCP-XXX-JP-1内の調査
調査員: D-7913(カメラ、マイクを所持させる)
<記録開始>
[D-7913がSCP-XXX-JP-1に移動する]
██博士: まずは周囲の様子を確認してください。気になる物があったら即座に報告を。
D-7913: ああ、まあ、どこにでもあるような道だな。
██博士: 別の場所に向かうことはできそうですか?
D-7913: [ハンドルを大きく左右に傾ける]いや、無理だ。進行方向は変えられないらしい。
██博士: ではそのまま道に沿って運転を続けてください。
D-7913: わかったよ。
[約3分間音声無し]
[D-7913の背後から人の声が近付いて来る]
D-7913: おい、誰か来てるぞ。大丈夫なのか?
██博士: SCP-XXX-JP-2でしょう。あなたに攻撃を加えることはありません。
D-7913: ならいいけどよ。
SCP-XXX-JP-2-1: ████5!おはよう!
D-7913: えぇ?あ、ああ、おはよう。
[SCP-XXX-JP-2-2、4、5、7、8が同様にD-7913に声を掛ける]
[SCP-XXX-JP-2の全個体がD-7913を追い抜く]
D-7913: やっと消えたか。何なんだあいつらは。
██博士: 何か異変は起こっていませんか?
D-7913: いや、何も。……ただ少し怖いな。
██博士: 怖い?詳しく説明してください。
D-7913: 大した話でもないよ。この世界で俺はどういった存在なのかはわからないけどさ、随分友達が多いみたいじゃないか。誰からも必要とされてるみたいに。俺はそんなに友達が多かったわけじゃないし、こんな学生生活なんて送れなかったから少し怖いんだ。
██博士: 気持ちはよくわかります、D-7913。ではSCP-XXX-JPから降りてください。
D-7913: 了解。
[D-7913の帰還を確認]
<記録終了>
追記: 調査中にD-7913が述べた恐怖心はSCP-XXX-JPによる影響ではありませんでした。
調査記録XXX-█ 日付20██/██/██
備考: この調査は初めてSCP-XXX-JP-3が確認されたものです。
目的: SCP-XXX-JP-1内の調査
調査員: D-8245(カメラ、マイクを所持させる)
<記録開始>
[D-8245がSCP-XXX-JP-1に移動する]
██博士: 周囲の様子を確認してください。何かあったらすぐ報告をお願いします。
D-8245: 気のせいか………、いや、待て、[D-8245が運転を停止する]俺のすぐ後ろに何かいる気がする。肩が少し重いんだ。
██博士: D-8245、カメラを背後に向けてください。
[カメラの視点が変わり、SCP-XXX-JP-3を映す]
[SCP-XXX-JP-3がカメラを見つめている]
D-8245: 本当に何かいるのか?
██博士: ええ、ですがあなたに危害を加える様子もありません。運転を再開してください。
D-8245: まじかよ。[D-8245がSCP-XXX-JP-3を確認する]あ、結構可愛いじゃん。ラッキー。
██博士: D-8245、運転を再開してください。
[D-8245が運転を再開する]
SCP-XXX-JP-3: ████6?
D-8245: ああ、俺は████だ。お前は?
SCP-XXX-JP-3: こうやって学校行くのも最後だね。ちょっと悲しくなっちゃう。
D-8245: 無視かよ。
SCP-XXX-JP-3: 卒業しても仲良くしてよね。約束したんだから。
██博士: D-8245、彼女にSCP-XXX-JP-1について尋ねてください。
D-8245: [5秒間の無言]
[カメラが落下し映像にノイズが走る]
██博士: D-8245?応答してください。
<記録終了>
追記1: D-8245は██博士の要望に応えず、転倒した拍子にSCP-XXX-JPから落下し帰還しました。
追記2: D-8245は調査後「あの子のところへ行かないと」「[編集済み]」と繰り返し呟き、脱走を試みましたが研究員らにより取り押さえられました。捕獲後もD-8245は先述の言葉を繰り返していましたが、Bクラス記憶処理を行ったところ異常性は無力化しました。これはSCP-XXX-JP-3による影響と推測されます。
エージェント・███がSCP-XXX-JPの元の持ち主である████ ██氏を発見しました。彼は█年前に自動車事故に遭い死亡していました。事故当時、████氏が自転車に乗っていたという証言からSCP-XXX-JPの特異性との関係が調査されました。
付録-XXXJP: 以下は、████氏の友人へのインタビュー記録です。
インタビュー記録XXX-JP
対象: 佐藤 ██ (記録中は佐藤氏と表記)
インタビュアー: ██研究員
付記: 対象には、████ ██氏が巻き込まれた事故の詳しい話を聞きたいと説明しています。
<録音開始>
██研究員: こんにちは、佐藤さん。では、お話を伺ってよろしいですか?
佐藤氏: はい。それにしても不思議ですね、今更あの事故の話を聞きたいなんて。
██研究員: お手数おかけします。事故の被害者である██さんはどんな方でした?
佐藤氏: あいつとは小学校から仲良くしてて、第一志望の大学も一緒だったんです。明るい性格でしたね。誰とでも仲良くできるタイプというか、陽キャってやつでした。サッカー部でもキャプテンをやってたとかで友達は多い方でした。いい奴だったし人気があったと思います。
██研究員: 事故当時、██さんは自転車に乗っていたらしいですが。
佐藤氏: ああ、あの白い自転車ですか。中学生の時からずっと通学に使ってましたよ。事故に遭っても少し傷が付いたぐらいで壊れてはいなかったらしいです。でもさすがに息子の遺品である自転車なんて使えないですよね、事故から1か月後ぐらいに売りに出したそうですよ。
██研究員: 事故についてあなたはどう思われました?
佐藤氏: ニュースで見た時は本当に驚きました。居眠り運転のトラックに轢かれたとか。でも██が被害者で、しかも亡くなったってところ以外はありきたりな事故だったと思います。事故があったのは2月下旬でしたよね。大学入試も終わって卒業式まで後1週間って時で。あいつらも浮かばれないと思います。みんなと一緒に卒業したかっただろうし、それに卒業式の日に告白するつもりだったんですよ、あいつ。手紙まで書いたって言ってたし。
██研究員: 今「あいつら」と仰いましたが、事故の被害者は複数人いたんですか?
佐藤氏: あれ、てっきり知ってると思ってたんですけど。██さんが██の後ろで自転車に乗ってたらしくて、そのまま2人して事故に巻き込まれて亡くなりました。彼女はサッカー部のマネージャーをやってた人です。中学校から一緒だったんですけど、俺は話したことなかったんですよね。面倒見がよくて優しい子だって██が言ってました。[スマートフォンで数枚の写真を██研究員に見せる]この子ですよ。よく一緒に登校してました。ほら、あの自転車の後ろに乗せて。
██研究員: なるほど。手紙がどうなったかはご存知ですか?
佐藤氏: ██は自分の部屋の机の引き出しに隠したって言ってました。██の家族はあの日以来██の部屋には入ってないらしいですし、多分そのまま置いてあるんじゃないですか?
██研究員: 質問は以上です。ご協力感謝します。
佐藤氏: なんか余計なことばかり喋っちゃった気がしますけど………。
██研究員: いえ、助かりました。
<録音終了>
終了報告書: 佐藤氏の発言から、████氏が所有していた自転車とSCP-XXX-JPは一致すると考えられます。また、佐藤氏が提示した写真に写っている女性とSCP-XXX-JP-3が類似していることが確認されました。 - ██研究員
補遺1: ████氏の自宅から彼が通っていた██市立███高校までの距離は4700mでした。SCP-XXX-JPの特異性との関連性は現在調査中です。
補遺2: ████氏の自室から佐藤氏の証言で触れられていた手紙と思われるもの(文書-XXX)が回収されました。文書-XXXは市販の封筒と便箋によって構成されています。封筒にはボールペンで"██7へ"と記されていました。
文書-XXXの内容
いつか気持ちを伝えようと思って結局卒業式の日までできませんでした。
でも大学は違うところに行くし、ちゃんと伝えないと死んでも死にきれないと思ったのでやっと決心しました。
真面目に書いているので笑わずに読んでください。[以降の内容は関係性が薄いため省略]
事案XXX-JP: 20██/██/██にSCP-XXX-JPの被験者として実験に関わったDクラス職員█名が宿舎内で死亡しているのが発見されました。検死の結果、鈍器による撲殺であると判断されましたが使用された凶器は未だ特定されていません。検死後にD-████の独房内に設置された監視カメラに人型(SCP-XXX-JP-Aと呼称)が映っているのを確認しました。SCP-XXX-JP-Aは何かを訴えながら映像解析の結果、「俺の居場所を奪いやがって」「[罵倒]」と訴えながら棒状の物で複数回にわたりD-████を殴打し、[編集済み]ことが判明しました。この事案以降、SCP-XXX-JPを利用した実験は凍結しています。