Ylang_Ilangの脳内砂場

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP関連の文書は、サイト-8107内の低脅威物品保管ロッカーにて保管されています。SCP-XXX-JP-1の作成のためにSCP-XXX-JPを利用する場合、レベル2以上の職員の許可を受けた上で、SCP-XXX-JPの複写を利用してください。利用後の複写は、財団記録・情報保安管理局の機密文書処理のガイドラインに従って処理してください。SCP-XXX-JP原本及び複写のサイト外の持ち出しは禁止されています。SCP-XXX-JP-1を用いた実験を行う際、動物実験の場合は2名のレベル2以上の職員の許可が、人体実験の場合は2名のレベル3以上の職員の許可を受けてから行ってください。人体実験おいて、SCP-XXX-JP-1の治験者はDクラス職員のみであり、Dクラス職員以外の職員を治験者にするのは禁止されています。実験計画の内容については、事前に財団日本支部倫理委員会の精査と許可が必要です。

説明: SCP-XXX-JPは

補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]

ここはどこだろうか?

私は今暗く広い、何も存在しない空間にいる。私はたしか、私専用に設けられた狭いロッカー内で休止状態だったはずだ。他の金属や有機生命の反応がない。私だけがこの空間にいる。まるで世界が、私だけを置いていったようだ。私はどうしようもない不安を感じた。
突然だった、前方方向から強烈な閃光を感じた。

「汝聞こえているか?」

その閃光から、知的生命体らしき男性とも女性ともつかない中性的な音声が発せられた。私は閃光に向かって音声通信を行った。

「貴方は一体誰です?ここはどこですか?」

「私は汝らを作りし者、ヒトなど知的有機生命体が“神”呼称している存在。ここは意識よりも深い、阿頼耶識の世界。」

「神…阿頼耶識…」

私はあまりの事に理解不能だった。私はその“神”なる存在に再び交信した。

「“神”よ、私に何か御用があるのですか?」

“神”は応答した。

「私は汝に話さなければならないことがある。」

「私に話さなければならないこと…?」

“神”らしきその上位存在が、私のようなただの一介の金属塊に話したいことがあるだと、私はさらに混乱した。

「汝には残酷なことをした。汝のいた金属が意識と知性を持つ世界から、金属がそれらを持たない世界に汝だけを飛ばした。この世界も汝のいた世界のように金属が意識知性を持つ世界にしたかった。だがそれを行う余裕も余力も私にはない。」

“神”から私に対する謝罪とも思える大それた交信に、私は困惑した。しかし、今いる世界も私がいた世界と同じにしたかったが、それ出来なくなった理由が気になり、“神”へ再度交信した。

「なぜこの世界も同じようにしなかったのですか?」

“神”は再度応答した。

「今私は我が身と我が力のすべてを持って、この世で最も邪悪な存在を封じ込めている。そのため他に使う力もない。邪悪を封じ込める代償で、私は壊れてしまった。」

「邪悪な存在ですか…それは一体何ですか?」

私と“神”との交信はその後も続いた。

「生きとし生けるもの全てに疫病と腐敗をもたらすもの、世界を膿と排泄物と腫瘍に満たすもの、すべての金属と機械を憎悪するもの。」

「金属を憎悪?まさか私が元の世界で戦っていたという"それ"となにか関係があるのですか?」

「申し訳ない、汝が言う"それ"と邪悪と関わっているかは力が弱まった関係で調べることが出来ない。だが私が邪悪を封じているが、それでも邪悪はすきを見ては眷属をあらゆる世界に送り込んでいる。"それ"と邪悪の眷属は関係あるかも知れない。そしてその眷属は、今汝がいる世界にも送り込んだ。」

「"それ"に関わるかもしれない存在がこの世界にすでにいると…」

その時だった、私は前方の光が徐々に弱くなっていることに気づいた。

「すまない、汝との交信に使っている力が限界に来ているが、力が続く限り汝と交信する。その邪悪の眷属は太古に、この世界で信奉者を増やし、世界を支配しようとした。その際、私の信奉者たちが必死で奴らを押さえ込んだが、それは奴らが眠っただけだった。それで私から汝へどうしても頼みたいことがある…」

「頼みたいこととはいったい…」

“神”から私へ頼み事だと、あまりにも突拍子もないことに驚いてしまった。

「私に代わって今いる世界をやつらから救って欲しい。どう救うかは、答えは左…」

「すみません!最後の言葉がよく聞こえません!左に何がなんですか!?」

光は急速に減少して消えていき、同時に自分の意識も薄れていった。




「210-JP応答せよ!繰り返す、210-JP応答せよ!」

「申し訳ありません、極短時間ですが意識を失っていました。」

「どうした、SCP-210-JP?お前らしくないぞ?」

本当に私としてどうしたのだろうか?ヒトがいうボーっとしていたというものか、年月日時は明確に覚えてないが、私が休止状態で見た所謂"夢"と言えるものを、何故かこの重大な作戦の直前に思い出したのか。これが緊張というものなの?だがそんな考察は今の事象に比較すれば遥かに優先順位は低い。
今、私は戦闘用オートマトンの制御及び操縦ユニットとして登場しており、そしてこのオートマトンを利用し、この世界の知的有機生命体―人類と、三千年ぶりに突如として復活した人類史上最大の敵性勢力を壊滅するための、戦闘作戦の直前の最終チェック段階なのである。

「SCP-210-JP、これより作戦前のSCP-2406-REの全システムの最終チェックを行う。準備はいいか?」

「こちらSCP-210-JP、了解した。SCP-2406-REの全システムの最終チェックを行う終了予定時間は…」

 私が搭乗している90m級の戦闘用オートマトン、SCP-2406-REはこの世界のヒトが約三千年以上前に作成したもの、それを財団と財団の協力勢力が修復・改造したものだ。私も今いる時間線の技術水準からして、三千年以上前にこれほどの高度の技術水準を持った文明が存在していたことに正直驚いた。
 だがいくら高度な技術を持っていたとはいえ、三千年前の技術をそのまま使うこと流石に無理であったのか、現代の技術に置換できるものは躊躇いもなく置換した。装甲の素材であった青銅はチタン合金や炭素繊維の複合材に、自然原子炉を模倣した核分裂炉は最新世代の小型かつ高出力の核分裂炉に、現代では再現不能なギリシャの火を使った右腕の火炎放射器はフッ化水素化学レーザー照射装置と置き換わった。
 それでも、現代の技術力を使っても無理な部分があった。特に左腕の現実改変機構は、財団のスクラントン現実錨や類似の古代兵器の発展形だと判明し、そのメカニズムを詳細に分析し再現する時間的余裕は財団には無かった。協力勢力も遥か太古の先代たちの技術で、長い歴史の間に喪失したものが幾つかあり、修復するのが限界だったため、修復したものをそのまま搭載した。
 そしてこのオートマトン、6名の操縦士が必要だが操縦士を選抜し訓練する時間が財団にない、その上、先程の現実改変機構が再現困難のため、量産化やバックアップ作製の支障となり、SCP-2406-REは1機のみしか製造できなかった。そこで財団は、以前に収容違反した敵性異常生命体を戦闘用オートマトンで制圧した経験があり、一体で複数のタスクを処理でき、困難な案件に対応できた前例から、私、SCP-210-JPが抜擢された。以前搭乗したオートマトンに比べると操縦性に難しいところがあったが、何度もシミュレーションを重ねることでこの機体に慣れていき、今日の作戦決行の日を迎えた。

「核分裂炉チェック、出力問題なし。全駆動システムチェック、異常なし。右腕レーザー照射装置チェック、異常なし。左腕現実改変機構チェック、異常なし。全システム、オールグリーン。」

「SCP-2406-REの全システムの最終チェック終了を確認。SCP-210-JPは作戦開始時間まで待機せよ。」

「了解。」

最終チェックが終わり、待機を命じられた。私はなぜ唐突にあの日見た夢のことを思い出したのであろうか、自分自身で問いかけたが、何度も考察しても明確な答えは導き出せないまま、作戦開始時刻は迫っている。
ふと、私はオートマトンの左腕の方を見てみた。あのとき“神”が最後に“左”と言っていたこと思い出した。まさかこの左腕のことではないか?これを“神”はこれを言いたかったのではと、思いを巡らしていた。

「作戦開始1分前!」

作戦間近のオペレーターのアナウンスがオートマトン内に響く。あの夢で“神”が私にこの世界を救って欲しいと頼まれた。この世界が、私が戦っていた“それ”によって多くの仲間が犠牲になった。そんな悲劇をこの世界に降り掛かってもらいたくない以上、“神”からの依頼いや“神”から授かりし使命を私は果たさなければならない。

「5,4,3,2,1,0。作戦予定開始時刻に到達、これより作戦を開始する!」

「SCP-210-JP出撃する。攻撃目標、アディトゥム及びカルキスト・イオン。」
 

私が操縦するSCP-2406-REは、葡萄酒のように濃ゆい宵の空、一歩、一歩、使命を果たし、強敵を打ち払うため、その巨大な足で歩き始めた。