森谷浩輔氏(以下『森谷氏』と呼称)は200█/██/██に病気によって死亡しています。既に火葬され██県の██墓地に埋葬されているのが確認されています。この結果を受けSCP-XXX-JPの遺伝子情報と故森谷氏の遺伝子情報の照合が行われました。死亡から時間が経過していたため確実ではありませんがSCP-XXX-JPと故森谷氏の遺伝子が合一である可能性は73%であるという結果が出ました。以上の結果を受けSCP-XXX-JPの性質の再調査とSCP-XXX-JPにかかわる財団職員以外の森谷氏の死亡情報へのアクセスの一時禁止が命じられました。
SCP-XXX-JPの保有している記憶は財団の調べ得る限り生前の森谷氏の記録から一点を除き相違はありませんでした。自身が病気によって入院していたことは覚えていましたがその後完治したという記憶が捏造され、死亡した事実と齟齬が生じていました。また完治した後の記憶、なぜ記憶を失っていたかについてはSCP-XXX-JPは覚えていないと証言しました。また、笹嶋氏への調査の結果、笹嶋氏に人物誤認の症状が認められました。
2012/02/13、木岐博士によりSCP-XXX-JPの収容初期の写真と現在の写真の比較検証が行われました。結果3回の機械処理を行った写真での比較において、収容初期のSCP-XXX-JPと現在のSCP-XXX-JPの容姿は合致しないことが判明しました。この結果を受け収容初期のSCP-XXX-JPをアルファ体、森谷氏の姿のSCP-XXX-JPをベータ体と区別するように定義付けられました。
写真に写るSCP-XXX-JPは像がぼやけたように認識しにくく、明度や彩度の調整で抽象化を行い何とか別人であると結論を出したが、比較対象がなければ写真と現在のSCP-XXX-JPは同じ容姿だと信じていただろう。 -木岐博士
以上の結果を踏まえ、SCP-XXX-JPへ行ったインタビューがあります、下記インタビューログを確認してください。
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: 木岐博士
付記: 有事に備え鎮圧用の機動部隊を配備します。
<録音開始>
木岐博士:こんにちは、SCP-XXX-JP、今日はお話があってきてもらいました。
SCP-XXX-JP:こんにちは、木岐さん。あ、待って、予想してみる、俺がここから外に出られるって話か?あるいはばあちゃんに会わせてくれるとか、ばあちゃんと再会してからもう会ってねぇからなぁ。
木岐博士:まずはこちらの二枚の写真を見比べてもらえますか。(機械処理されたSCP-XXX-JPの収容初期の写真と森谷氏の写真を手渡す)
SCP-XXX-JP:無視はひどくないか?(写真を受け取る)なんだこれ?人か?画質悪いな……、見比べるって言ったって全然違うじゃないか。
木岐博士:それはあなたの収容初期の写真と森谷浩輔さんの写真です、同じ機械処理にかけてあります。
SCP-XXX-JP:はぁ!?俺が別人だって言いたいのか!?
木岐博士:……森谷浩輔さんは、200█年、██月██日に死亡しています。
SCP-XXX-JP:……は?おい、木岐さん、ふざけてるんじゃないだろうな
木岐博士:(沈黙)
SCP-XXX-JP:おい、おい、冗談、おい、俺は、俺はようやくわかったのに、森谷浩輔だって、俺は、死んでない。死んで
(SCP-XXX-JPが卒倒したためインタビュー続行不能)
<録音終了>
インタビュー終了後、5時間後にSCP-XXX-JPは目覚めました。その際の簡易インタビューでSCP-XXX-JPは森谷氏に関する質問に答えられませんでした。またSCP-XXX-JPの外見もアルファ体へ戻っており、容姿や名前に対する認識障害、すれ違った際に発生する反射的な振り返りの異常性の再発露が確認されました。
以上の経緯を受け、SCP-XXX-JPにはこれまで解明されていない異常性があると予測され、再実験が行われました。
実験記録XXX-7 - 日付2012/02/19
対象: SCP-XXX-JP
実施方法: Dクラス職員を用いた交差実験、Dクラス職員は体を磔にする形で完全に固定し、首は2本の鉄心で回らないように固定する。また交差予想地点には間仕切りを用意し、交差が確認された瞬間Dクラス職員とSCP-XXX-JPの間の視線を物理的に遮断する。
結果: 交差から6時間が経過した辺りから認識の困難であったSCP-XXX-JPの容姿が徐々に認識できるようになり、変化から32分後40代ほどではっきりとした女性の姿となった。
分析: SCP-XXX-JPにインタビューを行った結果、SCP-XXX-JPは高畑██と自称した。またDクラス職員に行ったインタビューの結果高畑██氏は当実験に参加したDクラス職員の妻であり、現在も大切に思っていること、すれ違ったSCP-XXX-JPが高畑██氏に見えたことが判明した。高畑██氏は現在も生存しており、知識や思考などはベータ体に変化したSCP-XXX-JPのものとほぼ合致していた。以上からSCP-XXX-JPはすれ違った際に振り向かなければ振り向かなかった人物にとって重要な人物を対象の生存非生存を問わず外見、知識、人格などを複製するものだと考えられる。
これ以降SCP-XXX-JPが人を複製したベータ体はSCP-XXX-JP-βとして区別されます。
実験記録XXX-8 - 日付2012/02/22
対象: SCP-XXX-JP-β
実施方法: SCP-XXX-JP-βと前回の実験で使用したDクラス職員を対面させ、会話させる。
結果: Dクラス職員はSCP-XXX-JP-βに対し激しい嫌悪を示しました。会話を行える状態では無く、すぐに実験は中止となりました。実験中止後、SCP-XXX-JP-βは自失状態になり、3時間後に異常性の発露を確認、SCP-XXX-JP-βからSCP-XXX-JPへ戻ったことが確認され、Dクラス職員へのインタビューでは「あれは██ではない」という回答が得られました。
分析: 同様の実験を行う必要があるが、SCP-XXX-JP-βと対面した場合、対象は元となった人物とSCP-XXX-JP-βを明確に区別でき、なおかつ生理的な嫌悪をSCP-XXX-JP-βから感じるのだろう。そして拒絶されたSCP-XXX-JP-βはSCP-XXX-JPに戻るということも判明した。 -木岐博士
この実験から2週間後、SCP-XXX-JP-βと高畑██氏の遺伝子情報の照合の結果は99%本人であるとなりました。また同様の対面実験が数度行われましたが元となった人物の生存非生存に関わらず、全てのDクラス職員は同様の反応を示し、SCP-XXX-JP-βを拒絶しました。対面までどれだけ期間が長くても短くても対象に拒絶されたSCP-XXX-JP-βは必ず3時間ほどの自失期間を経てSCP-XXX-JPへ戻りました。
おそらくSCP-XXX-JPがSCP-XXX-JP-βに変化し、SCP-XXX-JP-βからSCP-XXX-JPに戻る条件は振り返った振り返らなかったではなく他者からの認識に左右されると考えられる。すれ違い自分の大切な人と誤認し、振り返り誤認であることを確認できれば変化が起こらないように。最初の笹嶋氏の場合は人物誤認の症状によりSCP-XXX-JP-βと森谷氏の区別がつかず誤認だと確認できなかった、もしくは嫌悪感を感じなかったと仮定すれば笹嶋氏のパターンとDクラス実験でのパターンの矛盾をなくせるだろう。 -木岐博士
一連の実験終了後、SCP-XXX-JPが木岐博士への対話を要求し、それを受理した。以下はそのログです。
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: 木岐博士
<録音開始>
木岐博士:こんにちは、(3秒沈黙)SCP-XXX-JP。今日はどうかしましたか?
SCP-XXX-JP:(12秒沈黙)なぁ、俺は誰だ。
木岐博士:……どうしましたか?
SCP-XXX-JP:最近変だ、木岐さんに部屋を連れ出されて、磔にされた人のいる廊下を歩いて、気づいたらここにいる。
木岐博士:その間、何をしていたか思いだ
SCP-XXX-JP:俺が教えてほしい、木岐さん、俺に何をしてるんだ、思い出そうと思えば思い出せる、けどそれは俺の記憶じゃない気がするんだ。
木岐博士:すみません、それにお答えすることはできません。
SCP-XXX-JP:ということは知ってるんだな、(10秒沈黙)信じていたのに。(机を殴打する音)
木岐博士:……恨んでもらって結構です。
SCP-XXX-JP:最近、ふとした時に耳の奥で聞こえるんだ、殺さないでくれ、殺さないでくれって俺じゃない声が。
木岐博士:その声について詳しく聞かせ
SCP-XXX-JP:知らない、わからない、声についても、俺についても。俺は誰なんですか、なんなんですか、木岐さん。
木岐博士:お答えすることは……、(6秒沈黙)……私にもわかりません。
<録音終了>
終了報告書: ベータ体の時期の記憶がないことを不審に思われないように代替記憶を挿入していましたがSCP-XXX-JPはその違和感に気づき私に問いかけてきました、今後SCP-XXX-JPには代替記憶の使用を抑えるべきかもしれません。さらに殺さないでくれという声を聴いたといいます、詳細は不明ですがベータ体への変化に伴いSCP-XXX-JPに悪影響が生じている可能性があります、新たな異常性の発露を阻止するためにも、SCP-XXX-JPの精神状態の悪化を防ぐためにも、今後実験を行わないことを提案します。 -木岐博士
補遺1: 木岐博士からの提言により、今後SCP-XXX-JPへの実験は制限されます。またSCP-XXX-JP-βと元の人物を対面させる実験、SCP-XXX-JPを2名以上の対象と同時にすれ違わせる実験は全て受理されません。
補遺2: 死亡した財団職員の知識の回収のためにSCP-XXX-JPを利用するという提案がなされました、提案が可決、もしくは否決されるまではSCP-XXX-JPの他者を複製するという性質はレベル4クライアンス未満の職員には非公開となります。