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対認識災害フィルタリングを行った点灯中のSCP-554-JP。

アイテム番号: SCP-554-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-554-JPは認識災害物品収容区画(CASC)標準保管用コンテナの内壁に固定し、半透明のカバーをかけ物理的に電源を抜いた状態で留置します。平時の際の実験/運搬にはセキュリティレベル3以上の担当研究職員および施設管理職員2名の書面での許可が必要です。実験時はバッテリーと指定された専用の変圧器が貸与されます。Dクラス被験者以外の職員が点灯中の実体を直接目視する事は禁止されています。研究有資格者の違反行動は処罰の対象となります。

生存している全ての陽性患者は財団医療施設に隔離入院させ、隔週の健康診断、カウンセリング、第15種ミーム検査(MCT-15)の実施が義務付けられます。知覚症状の新たな変化および/またはその兆候は現場監督者を通して研究チームに報告されます。

説明: SCP-554-JPは英字で「GUNS & AMMO(銃と弾薬)」と書かれた、小銃がモチーフの蛍光ネオンサインです。電源に接続されていない場合、オブジェクトは異常な性質を示しません。電源を入れて100Vの電圧を加えることで点灯し、青色と橙色の可視光線を通常のネオン管と同様に放射しますが、人間が点灯中のSCP-554-JPを直接目視によって観察する試みは、オブジェクトおよび放射される光線の視覚認識が未知の原因により困難となることで阻害されます。被験者は観察中の実体の外観を具体的に説明することができず、「機関銃の連射音」「火薬の臭い」「血と砂利が混ざったような味」などの聴覚/嗅覚/味覚情報に基づく混乱した証言を残します。1

暴露から2日-1週間以上が経過した被験者は、悪阻、食欲不振、睡眠障害、腹部の膨張、生殖器からの分泌物/出血の増加、乳頭および乳輪の変化による母乳の分泌などの妊娠に酷似した症状が表れます。これは対象の性別に関わらず作用し、男性被験者にも同様の症状の発生が確認されています。妊娠検査薬・超音波計測などによる検査及び産婦人科医の診断はいずれも妊娠の事実を否定する結果を示しますが、告知された被験者の殆どはそれに懸念を抱かず、自身が妊娠状態にあるとする一貫した意識を保ちます。2

2009年現在、財団が保護している存命の陽性被験者は7名で、全員が妊娠中期(満16-27週)に相当する偽妊娠の状態で安定しています。その他の暴露者は医療職員の制止を無視して帝王切開と見られる自力での開腹を強行し、その殆どがショック死又は大量出血により失血死しました。認識災害の性質上、遺体の解剖では常に被験者の受精/着床/妊娠の経過を発見できません。

附録455-アルファ 2004/04/21 :

前文: D-455/13(元上級研究職員████ ██博士)はSCP-455-JP研究主任としての地位を濫用し、不正アクセスによって自発的に認識災害作用の影響を受けました。対象は直後に無抵抗でセキュリティ要員に拘束され、財団職員資格の剥奪と同時にサイトの収容房に収監されました。当該項目は事件の2週間後に行われたインタビューの転写記録です。


〈ログ開始〉

インタビュアー: お久しぶりです、D-455/13。あなたを番号で呼ばなければならなくなった事を残念に思います。

D-455/13: 君が気に病む必要はないよ。お互いに今できる仕事をしようじゃないか。

インタビュアー:

D-455/13: コンテナに足を踏み入れたとき、私は財団で初めて遭遇した認識災害実体のことを思い出していた。20年以上も前、後方支援員としてPMTF(管区機動部隊)に配属されていた頃の話だ。[編集済]でファクトリーから押収された物品の一つで、見ると自分をイモムシだと思い込ませる光を放つ懐中電灯だった。笑える話に聞こえるかもしれないが、ベッドで小便を垂れ流しながらキャベツを食べ散らかす嘗ての同僚を見舞いに行くのは良い経験とは言い難い。あの時の彼の眼は今でも頭から離れない。瞬き一つせずこちらを見つめているのに、その焦点は遥かな先、私たちには決して理解できない地点で収束しているように思えた。きっと羽化を望んでいたのだろう。

実体はすぐに異常性質を失ったらしい、元々出来の悪い粗悪品だったと上官に聞かされた。ベッドに並んだ被害者たちも次々に衰弱し、床に散らばった腐った食べ残しと一緒に死んでいった。大抵のアーティファクトが辿る道もこれと同じだ。保管庫に埋もれている大量のAnomalousは、数年で使い物にならなくなってガラクタ同然の代物になる。再分類され、廃棄される。方針が変わった? そうだな、だが以前は今とは違った。

インタビュアー: 話が逸れています。質問に正確に答え──[発言はD-455/13に遮られる]

D-455/13: 455をバッテリーに接続して顔を上げると、前方から飛来した弾丸に撃ち抜かれた。あれは音からして恐らく拳銃弾だったと思う、何年も前に敵の流れ弾が耳元をかすめたときのことを思い出した。私の腹にはそれがしこたま撃ち込まれたので、あまりの痛みに悲鳴を上げてその場に倒れ込んだ、すると頭上で機関銃の連射音と兵士達の雄叫びが聞こえ始めた。戦争が始まったんだ。

インタビュアー: 続けてください。

D-455/13: 私は塹壕の中でのたうち回っていた、皆が鉄条網を飛び越えて進軍を続けているのに、冷たい泥の中でただただ痛みに震える事しかできなかった。それは非常にもどかしい体験だった。今までに感じた事がない悔しさを憶えたが、きっと衛生兵がすぐに駆けつけてくれると自分に言い聞かせて何とか気を保っていた。だが衛生兵は来なかった。代わりに牧師がやって来た。

インタビュアー:

D-455/13: 壊れた神の信徒に財団の認識災害兵器が通用しないのを疑問に思ったことはないかね? 信仰は世界を劇的に変貌させ、嘗て存在していた位相から観測者を引き離す。彼らは自らが正常な世界に辿り着いた事を知る、無神論者が眼に見えるものしか信じないように、彼らも自分自身の認識、解釈を信じるからだ。そこに神がいるという絶対的な認識を。

は私はかの者の不在を確信している、そしてその空白は私が埋めるのだ。

インタビュアー:

D-455/13: どうして私にはかの者の撃鉄の落ちたる音が聞こえないのだろう? どうして何かを信じるということはこれほどまでに恐ろしいのだろう? それは確かにそこにあった、それは今もそこにある、でもこんなに遠く、残響は虚しく、根拠は乏しい、それらは初めから本当に存在したのか、私の中で花開いた狂信者の妄想に過ぎないのか、撃ち込まれた弾丸の質量さえ幻なのか、私には最早断言できない。

いや-私は本当はわかっている、何もわかっていないということをわかっている。知る必要がある、注意深く問う必要がある。

この腹の温もりが真実なのか私にはわからない。この眼であなたを見ない限り、私にはわからない。

〈ログ終了〉


後記: D-455/13はこれ以降財団の全ての協力要請を拒否しました。8ヶ月後、対象の認識災害症状は通常と同様に経過し、自力での腹部の切開を試みましたが、担当人員により制止されました。現在D-455/13は他の存命の陽性被験者と同様に留置されており、自殺防止のために拘束され薬物治療を受けています。

回収ログ 1998/01/10: 81管区で試験的に実行された新規の情報マイニングプロトコル3は、[編集済]周辺地域での過去数年に渡る不審な医療トラブルの増加を割り出しました。渉外工作員の調査の後、SCP-554-JPは[編集済]の繁華街で点灯中に発見/確保され、現地の回収チームによって収容施設に移送されました。