ワァーオ!
四手八足横行自在両目天指不能視者如何
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter Safe
説明: SCP-XXX-JPは上に存在する著しく巨大なタカアシガニのイメージです。SCP-XXX-JPは不明確な意思を持ち、反ミームによる殺害機能を持つように観察されます。適切な獲物を見つけると、SCP-XXX-JPは機能を使用して殺害活動に移る場合があります。
メロウ
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP被影響者の自殺事案が発生した場合は、関連事象に割り当てられたMTF戊-33("胡乱なヤク中")およびMTF癸-22("呑んだくれの素面")が出動し、自殺現場の目撃者、並びに自殺体の発見者全てを一時的に拘留、不自然でない溺死体の発見事案として記憶処理が行われます。SCP-XXX-JPに関して特に信憑性が高いと見做された公共の記録はすべて破壊されるべきです。
SCP-XXX-JP-1の販売は恒久的に妨害されなくてはなりません。関西圏の麻薬・覚醒剤販売についての情報はMTF丑-58("前後不覚")によって収集され、SCP-XXX-JP-1の販路が発見され次第全ての関係者とSCP-XXX-JP-1実例を押収します。
GoI-7142 ("WitchManFollowers/WMFs")の速やかな解体に向けた試みが進められなくてはなりません。
説明: SCP-XXX-JPは大阪府を中心とした関西圏における自殺または殺害による溺死事象の流行です。2016年以降の関西圏の自殺者のうち、手法を溺死に依る割合は有意に増加しました。増加した自発溺死者の大半には以下の特徴がみられました。数字は溺死者のうち、現在までの統計で特徴が当てはまる割合です。
- 海、または河川への入水(83%)
- 非異常的な薬物乱用者を含む(46%)
- 死亡する際に体を硬直させており、抵抗した痕跡がない(87%)
- 周辺に不明な紋様を残している(67%)
- SCP-XXX-JP-1の乱用者を含む(24%)
- 下半身の破壊が伴う遺体(100%)
SCP-XXX-JP-1は濃赤色の液体を吸取紙に吸収させたペーパードラッグと推定される物体です。現場の検証からSCP-XXX-JP-1実例はおおよそ日本におけるLSD紙片1と同様の服用形態を取ると目されており、想定される効能については[アクセス拒否]。
SCP-XXX-JP-1の流通にはGoI-7142 ("WitchManFollowers/WMFs")2の関与が確認されています。
日付: 2016/██/██
質問者: 本条博士。
回答者: ██ ██。
序文: 本インタビューはWMFs捜査の一環で確保・勾留した構成員へのインタビューのうち、SCP-XXX-JP-1に関連する部分のみを抜粋した物です。回答者はWMFsを脱退する意思を表明しており、財団に保護を求めました。
[ログ開始]
質問者: では、例のドラッグについてお聞かせ願えますか?
回答者: 本題だな。ただこれについて言うってんなら……そうだな、俺をここで匿うって約束してくれ。今後に及んで、身の安全を確保すると。
質問者: いいでしょう。ではお話を。回答者: ああ。俺たちはあれをメロウって呼んでた。まあ、アッパー寄りのちょっと変わったヤクってぐらいの認識だよ。あれが普通の紙3とどう違うのかは、やってないから知らん。……常習者が自殺してたんだって?
質問者: ええ。
回答者: 俺たちもそれは知ってた。でも違和感があったのは、客が倒れてからじゃねえ。
質問者: いつからですか?
回答者: 去年の末頃から。メロウが盗まれた、って騒ぎがあった。在庫の帳簿が大幅に合わなかったんだ。まず裏切り者が疑われて、WMF全体でリークしたバカを探した。あれはうち以外じゃ作れないからな。
質問者: 裏切り者は見つかったんですか?
回答者: いいや、いなかった。いくら探してもだ。メロウは際限なく流出を続けた。そして……
質問者: 常習者が自殺を始めた。
回答者: そうだ。それが一番ありえないことだった。アンタらの噂は9コミュ4で広まってて、こっちで知らない人間はいない。アンタらに睨まれないように、より長く金を引っ張れるように、魔法使いどもは慎重にメロウの致死性を調節してた。
質問者: しかし、実際には███人死んでいます。
回答者: そうだ……組織全体が頭を悩ませ始め、もう一度大掛かりに調査をした頃、とんでもないことに気付いた。ああ、俺の気は確かだ、聞いてくれ。俺達は、最初からメロウを扱ってなんかいなかったんだ。
質問者: はい? いえ、あなた達は確かに……
回答者: そうだ。俺達がメロウを作っていたと思ってた。だが、メロウのレシピは誰も知らない。在庫のある隠し倉庫は建設さえされていなかったし、売人の詰めているマンションでは知らない女がチェーンソーで解体され終わっていた。そして死んだ常習者の情報だけがどんどん流れてきた。そうだ……顧客リストを洗い直して一人一人訪ねたら、全員が全員溺れて死んでやがるんだ。なのに、デコ5からはまた新しい溺死者の情報が流れてくる。そこでもう一度リストを見直すと、そいつは客の一人だ。メロウを買っている。俺達はそれを売ったんだ。一体何の冗談だ?
質問者: それでは、あなた方だけが独占しているというのは……
回答者: それもわからなくなった。俺達がメロウを売ってたのか、メロウが俺達を使って泳ぎ出したのか。俺達の中でメロウに直接関わった人間はいないのに、俺達はメロウを独占してると思い込んでいた。あれは本物の人魚なんかじゃねえけど、もっとまずいもんだ。質問者: 我々に保護を求めたのは、身の危険を感じているのですか?
回答者: そうだ。最も、もう手遅れかもしれねえが。あんたらが人魚を殺すのを祈ってる。
[ログ終了]
終了報告書: 上記インタビューにおける回答者について詳細を開示するクリアランス、XXX-JP/Level3のパスコード認証は不明なトラブルによって機能していません。詳細を求める場合、情報管理者まで直接お問い合わせください。
アクセス許可/XXX-JPクリアランスLevel3
調査報告-187B4より抜粋
報告種別:超常性の疑われる新種物質 下位カテゴリ:薬物 状態: 至急
指定物質-B403は周知のLSDの一形態であると予想されます。比較的小規模な組織によって精製されたドラッグからの検出にも関わらず同様の反応を示す化合物は全て一様であり、奇跡論的配置がなされた分子構成を持ちます。
B403の服用は短期間の自律神経系の異常に伴う諸症状と感覚の鋭敏化、次に5-15時間に渡る多幸感、酩酊、サイケデリックな幻覚等の症状を引き起こします。幻覚症状-403の大半は通常の幻覚剤に似た非異常な物ですが、全体の6%の被験者は共通する幻覚症状を体験します6。既知の幻覚症状-403の内容の抜粋が以下に示されます:
- 視界の中央に映る輪上の光。
- 奇跡論的な図画。
- [データ削除済]。
- 視界の隅の人型の幻覚。
B403による幻覚の体験者はSCP-XXX-JP実例の服用から3-15時間の間、クラスⅡ-Psiに相当する"感覚伝達"に類似した性質を見せます。具体的な症例として、対象の周囲に存在する個人は対象のその時点での感情や感覚を体験します — 体験の明瞭さの度合いは両者間の物理的な距離、あるいは被影響個人が対象に向ける注意の度合いに正の比例を見せます。加えて、影響を受けた個人がB403実例を使用した際に幻覚作用を体感する確率は有意に増加します。
また、体験者はこの特徴を含め、いくつかの異常行動及び精神異常の兆候を示します。
- 海や海水への親しみ
- 双極 I 型障害(bipolar I disorder)
- 応答型異言
- 特に水中での突発的な身体の硬直7
通常の治療過程はこれらの症状に対抗できません。クラスB以上の記憶処理は幻覚症状-403を体験した対象の後期症状を抑制することが可能ですが、殆どの使用者は2年以内に非異常な要因で幻覚症状-403のフラッシュバックを体験します。フラッシュバックを体験した使用者には再び後期症状が見られ、後に同様の手段で自殺を試みます。[データ削除済]の記録を鑑みるならば、幻覚症状-403の記憶は薬学的・物理的な破壊に耐性を持つ、あるいは自動的な自己復元を行う未知のミーム/情報因子です。結果として、自殺の妨害の試みは自殺達成までの期間を僅かに延長するのみに留まっています。
以上の性質から、B403を明らかに超常性化合物として認めうるものと断じ、即時の対象のSCiP指定と迅速な収容措置を求めます。この物質が流通ルートに乗って売買されている状態は今現在の収容違反の進行を意味しています。
https://www.flickr.com/photos/eoskins/15058597133
記録・情報保安管理局より通達
この文書は発見から間もない、詳細を調査中の異常存在について記述しています。SCP-XXX-JPエントリはRAISA-097 ("収容プロトコル策定中異常存在の文書")に基づき、暫定的なクリアランス振り分けとして収容・研究・探査担当班のみにアクセスが許可されています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid(暫定)
特別収容プロトコル: [策定中。事実調査とアイテムの回収を現在の最優先任務とします]
説明: SCP-XXX-JPは2019年6月22日に何らかの発端を有すると思われる、大阪府淀川に関連する一連の異常なアイテムです。SCP-XXX-JPの起源、輪郭、経緯に関する一切は未だ調査段階にあります。
- SCP-XXX-JP-α: 2019年6月22日、大阪府淀川に発見された55名の水死体。付近の大型犯罪グループによる大規模な殺人計画、あるいは個人的な大量殺人行為、または国家的組織によるテロリズムは確認されなかったことから財団に記録されました。調査により全ての水死体は正式な財団IDインプラントを所有していることが明らかになりましたが、データベースによる照合はエラーを発生させる結果に終わりました。
- SCP-XXX-JP-β: 実在性が確認されない財団施設、"サイト-NA55"に関する財団データベース上の断片的な記録。全てのSCP-XXX-JP-βは"サイト-NA55"が淀川流域全体と同一であることを示しています。SCP-XXX-JP-βからは、"サイト-NA55"は専門性の高い以下の設備・機能を備えていたと解釈されます。
- オンライン方式の屠殺場で使用される巨大な金属製のフック
- 淀川
- フェリックス・メンデルスゾーン作曲「結婚行進曲」とリヒャルト・ワグナー作曲「婚礼の合唱」の、荒々しく不調和な絶え間ないピアノ演奏
- 星型に配置されている五本の白いバージンロード
- 二体のヒト個体
- 星空
- SCP-XXX-JP-γ: SCiPNETサーバー、"サイト-NA55"から送信されたと記録されている動画ファイル。財団の汎用セキュリティクリアランスコードに対応した暗号化がなされており、記録日時は2019年6月22日。
SCP-XXX-JP-γ
結婚の誓い
私達二人は皆々様の立会いのもと、星型の十二面体に見守られて下へ参っております
星の瞬きと揺蕩う濁りを証人に、汚穢の誓いをいたします。
<来弦>
・必要に関わらず裂けるように微笑みます
・存在は権利でなく怠惰であると認識します
・五つの欠片は浮生の内、月は幻として消え去ります<加寧>
・無然の孔の奥底で星空を見上げます
・最悪で途切れのない終焉を約束します
・五つの剥離は遊苑の外、太陽は幻として消え去ります私達を見守る者は無く、あなた方は絶えず弱さを知るでしょう。
https://www.flickr.com/photos/ryumu/2954775738
- tl3000s-1-1
- tl3000s-1-2
- tl3000s-1-3
- tl3000s-1-4
- tl3000s-1-5
- tl3000s-2-1
- tl3000s-2-2
- tl3000s-2-3
- tl3000s-2-4
- tl3000s-2-5
- tl3000s-3-1
- tl3000s-3-2
- tl3000s-3-3
- tl3000s-3-4
- tl3000s-3-5
http://www.scp-wiki.net/fragment:tl3000s-1-173
アイテム番号: SCP-3145
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-3145は常に施錠されたコンテナに保管されています。コンテナは隔週で清掃してください。財団職員がSCP-3145のコンテナに入室しなければならない場合は必ず3人以上で入室し、入室後にドアは施錠されます。職員がコンテナから全員退室し再び施錠するまで、常に入室した職員のうち2人はSCP-3145を注視し続けてください。職員は一方が瞬きする際、もう一人に警告してください。
SCP-3145が発する物音のいかなる変化も当直のHMCL主任代理に報告すべきです。
説明: SCP-3145は鉄筋とコンクリートで構成された彫像であり、クライロン社製のスプレーを吹き付けられた痕跡があります。SCP-3145の素性は未だ不明です。
SCP-3145は生きていますが、人間に直視されている間は動くことができません。.SCP-3145から視線を逸らすと高速で移動し、大抵は頸部の圧断をもって個人へ攻撃を行います。 同様に絞殺による攻撃も確認されています。
SCP-3145が観測下にない時、職員はコンテナの中から発せられる石を擦るような音を報告します。SCP-3145のコンテナの床には人間の血液と排泄物の混合体である赤色の物質が付着しています。 SCP-3145がこの物質の起源であると考えられますが、現在のところSCP-3145がこれらの物質を生成している証拠はありません。
補遺: インタビューログ 3145-01
対象: SCP-3145
インタビュアー: ファルゾン博士
付記: SCP-3145のコンテナから観測される物音の変化が1994/04/09に当直のHCML主任代理であったファルゾン博士に報告された。調査はSCP-3145がインタビューを求めていることを明らかにした。 円滑な対話のため、コンテナの扉にガラス窓が設置された。
<録音開始, 09:50>
ファルゾン: 収容設備は気に入ったかな、SCP-3145?
SCP-3145: なかなかだ、悪くないよ。 知っての通り、 僕は君達が僕を清掃してくれた後いつも感謝してるんだ。 正直、あの汚れがどこから出てるのかわからないんだけど。
ファルゾン: これが我々にできる精一杯だ。他に何かできることは?
SCP-3145: ああ、そうだな。 [笑い] Dクラスへの教育を見直しちゃくれないか?つまり、 ちょっと 良くないんでさ、 僕だって彼らの全員を殺したいわけじゃないんだ。 でも連中は少し呆れるぐらいノロマだし、僕は退屈なんだよ。
ファルゾン: なるほど。 これ以上君に苦労をかけないようにするよ。
SCP-3145: おいおい、そう決めつけるのはやめてくれ。 やみつきになってるんだぜ、 そう、 だいたいいつも殺すのが止められないんだ、気持ちよくてさ!
ファルゾン: よくわかった。 他になにか欲しいものは?
SCP-3145: いや、満足してるよ。 この仕切りにもね。 ただまあ、一度は新鮮な空気を入れてくれると嬉しいかな。 [笑い]
<録音終了, 10:01>
終了報告書: 監視されていない間ガラス窓を開放して欲しいというSCP-3145の要求は却下されました。SCP-3145の収容コンテナに付着した物質の起源及びSCP-3145の発声能力に関する調査は進行中です。
http://www.scp-wiki.net/fragment:tl3000s-1-076
アイテム番号: SCP-3145
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 収容エリア25bは海面下200mの地震学的に安全な固体の岩盤層にあります。 T収容施設への出入り口は垂直エレベータのみで50m毎に厚さ20cmの壁で作られたブラストドアが設けられています。エレベータシャフトは使用時以外は海水に満たしておきます。
収容区画25bの構成は以下の通りです:
- 外部脅威に対し、近接格闘術と防御戦術を訓練されたスタッフから成るOuter Security Perimeter。
- 支援施設と職員の宿舎から成るAdministrative and Support Area(ASA)
- 1.5mの強化物質により囲まれた一辺7mの立方体空間からなるPrimary Containment Zone(PCZ)。PCZは必要に応じて浸水および排水できるよう設計されています。アクセスが必要でない限り海水で満たされたままにすべきです。
- 150mのPCZとASAをつなぐ唯一の出入り口"殺害通路"(水、電力、排水口、換気口含む)。通路の壁と床はPCZと同様の補強と20kVの電気ショックを流せるシステムが施されています。
殺害通路の入り口の詰所には常に武装した3人以上の警備員を配置します。軍備に制限はありませんが、最低でも油圧式███████CIW1つを視界の妨げにならないよう通路下に配置してください。 CIWシステムには投擲攻撃に耐えるためにプレキシガラス防御壁を搭載しなければなりません。
完全な収容違反が発生した場合、全現場スタッフは即座に最寄りのセキュリティ・ステーションで武器とアーマーを手に入れてください。警戒レベル1が発令され、SCP-3145の無力化は確認されるまで維持されます。脱走から90分が経ちLevel4以上の職員から警戒解除命令が下されていなければ、最終フェールセーフ手段を起動させ、海水を浸水させ最低24時間アクセス・シャフトを閉め切った後に復旧を試みます。必然的に全現場スタッフは殉職することになります。
In the event of full containment breach, all on-site staff are to proceed to the closest security station for weapons and armor distribution. Alert Condition One will be sounded and remain in effect until SCP-3145 is confirmed neutralized. Should 90 minutes pass without a Stand Down order from Level 4 or higher personnel, Final Contingency Measures will be activated, flooding the facility in seawater and sealing off the access shaft for a minimum of 24 hours before retrieval can be attempted. This will necessarily result in the loss of all on-site staff.
Description: SCP-3145 is a male human of Semitic origin, 1.96 m high and 81.65 kg in weight. Numerous tattoos depicting arcane iconography are present on all skin surfaces. When enclosed in SCP-3145-1, SCP-3145 exhibits no vital signs.
説明: SCP-3145は身長1.96m、体重81.65kgのセム人男性です。多数の不可解な図像の刺青が全身の肌に彫られています。SCP-3145-1の内部にいるとき、SCP-3145-1はバイタルサインを発しません。
SCP-3145-1 is a cube, 3 m on a side, made of an unidentified black stone and carved on all surfaces with unidentified patterns. Radioisotope analysis indicates the object is approximately 10,000 years old. A door on one side is sealed with a 0.5 m lock, surrounded by 20 smaller locks. No corresponding keys have been found, making the locks impossible to set. Directly in the center of the cube is a stone coffin, held in place and shut by several chains of unknown material, attached to the inner corners of SCP-3145-1.
SCP-3145-1は3m立方の未知の黒い岩石でできた立方体であり、全ての表面には未知の模様が刻まれています。放射性同位元素分析によりおよそ10000年前の物と判明しています。、幅0.5mの鍵で施錠されていて、20個の小さな錠前が周りを円を描くように付けられています。解錠するための鍵は見つかっておらず、扉は1度閉まると二度と開かないよう作られています。立方体内部の中央には石棺があり、SCP-3145-1の内側の角から伸びた未知の材質の鎖で封印されています。
Occasionally, SCP-3145 will awaken, displaying the vital signs of a normal, living human being, and attempt to leave SCP-3145-1. If successful, SCP-3145 will seek out the nearest human. Upon coming in contact with living humans, SCP-3145 attempt to kill any and all humans it encounters. To date, only the subject's death has been shown capable of stopping it.
時折SCP-3145は覚醒し、生きた人間のバイタルサインを示してSCP-3145から出ようとします。その後、SCP-3145は近辺の人間を探し求めます。生きている人間に接触すると、SCP-3145はどんな者であれ出会う人間全員を殺そうとします。現在、SCP-3145が死ぬ以外にこの状態を収める方法はありません。
Termination of SCP-3145 has been problematic due to its physical abilities, including superhuman strength and speed, ignoring pain of its injuries, and being able to persist despite injuries that would otherwise be debilitating to a normal human. A further list of its abilities from prior encounters includes:
その身体能力故に、SCP-3145の終了は困難を極めます。SCP-076-2は超人的な肉体と速さを持ち、その負傷による痛みを意に介さず、普通の人間では活動が困難となる損傷でも継続して行動することができます。過去の出来事より、SCP-076-2には以下の能力があることが分かっています:
- Destroying a reinforced security door via 4 minutes of sustained assault.
- Traveling 64 m in under 3 seconds.
- Continuing to function despite severe damage to the cerebellum after sustaining multiple .50 caliber BMG round hits.
- Deflecting assault-caliber bullets with steel rebar.
- Surviving over 1 hour while deprived of oxygen.
- Producing bladed weapons from small extradimensional portals. Said weapons are made of a completely non-reflective black material and vanish immediately after leaving SCP-3145's possession. How the subject generates these rifts is unknown.
- 4分間の攻撃を絶えながら強化されたセキュリティドアを破壊する。
- 64mを3秒以内に移動する。
- 複数の12.7x99mm NATO弾により小脳に重大な損傷があるにも関わらず活動し続ける。
- 鉄筋を使用してアサルトライフル弾を弾く。
- 酸素を奪われた状態で一時間以上生存する。
- 小さな異次元ポータルからブレード状の武器を発生させる。この武器は完全に無光沢の黒い物質で構成されており、SCP-3145から離れると即座に消滅する。対象がどのようにこのポータルから発生しているかは不明。
以下は過去の事例においてSCP-3145の殺害に成功した手法です:
- 複数の大口径機関銃に寄る継続的な発砲。
- 窒息。
- 13.6tのエレベーターによる圧死。
- TH3焼夷手榴弾のSCP-3145の胸腔への直接投入。
- Sustained fire from multiple high-caliber machine guns.
- Asphyxiation.
- Crushed beneath elevator equipment weighing of 13.6 tons.
- A Thermate-TH3 hand grenade placed directly in SCP-3145's open chest.
とりわけ、██/██/████の収容違反においては、SCP-3145の収容のため収容エリア22(以前のSCP-3145の収容エリア)における全ての爆薬を爆破する必要を迫られました。サイトとその全職員は損失しましたが、なおSCP-3145は生存していました。
Notably, during a breach dated ██/██/████, Containment Area 22 (which previously housed SCP-3145) was forced to detonate its on-site warhead as a last effort to contain SCP-3145. Though the site and all personnel were lost, SCP-3145 survived.
死亡すると、SCP-3145は即座に腐敗して塵になります。SCP-3145-1と内部の棺は急速に閉じ、全ての鍵が施錠されて棺内部を密閉状態にします。SCP-3145は棺内部で6時間から25年までの時間をかけて回復します。
Upon death, SCP-3145 will rapidly putrefy and turn to dust. SCP-3145-1 and the coffin inside of it will then slam shut, the outer lock rotating and sealing the structure. SCP-3145 will then reform inside the coffin over the course of anywhere from 6 hours to 25 years.
Addendum: Interview 3145-01
補遺: インタビュー 3145-01
Interviewed: SCP-3145
対象: SCP-3145
Interviewer: Dr. Falzon
インタビュアー: ファルゾン博士
Foreword: On ██/██/████, SCP-3145 breached containment, attacking all personnel in sight. A break in suppressive fire was caused by equipment malfunction, during which SCP-3145 held up its hands and requested to speak with "the man in charge". As the highest-ranking personnel present trained in object interrogation, Dr. Falzon was brought to enact an interview as support personnel worked to repair containment equipment.
付記:████/██/██、SCP-3145は収容違反を起こし、視界に入った全ての職員へ攻撃していました。設備の故障により制圧射撃は中断されると、SCP-3145は両手を上げて「責任者」との対話を望みました。当時対応できる者のうち、オブジェクトの尋問について訓練を受けた中では最も高位であったため、収容設備を修理する補助要員として勤務していたファルゾン博士がインタビューに応じることとなりました。
<録音開始, 19:57>
Falzon: SCP-3145, how are you enjoying your accommodations?
ファルゾン: SCP-3145、収容は楽しんでるか?
SCP-3145: Oh, great, Doc, just great. Don't get out often, but [laughs] when I do, it's a real show!
SCP-3145: あァ、最高だぜ、ドク、マジでな。外にあんまり出る訳じゃねえが、[笑い]出られりゃそんときゃ、パラダイスだ!
Falzon: Would you be willing to explain why you slaughter everyone you encounter every time you escape your coffin?
ファルゾン: 棺から出た時、なぜ出会った者は全て殺すんだい? 教えてくれるか?
SCP-3145: Eh. [shrugs] 'Cause I feel like it, I guess. Gets the old blood pumpin', you know what I mean?
SCP-3145: あー。[肩を竦める]「俺がそうしたいからだよ、多分。澱んだ血が流れてくんだ」、言いてえことワカる?
Falzon: I see. Is there any way I can convince you to return to your containment cell peacefully? You've already killed fifteen personnel. Surely that is enough to, ah, get your blood pumping, as you put it.
ファルゾン: なるほど。平和的に収容セルに戻ってもらうことはできないかね? もう君は15人殺してる。十分だろ、その、君が言ったように澱んだ血を流すには。
SCP-3145: Hm, ah, hm, I dunno. I mean, sure, you guys always come up with some cool new doodad to try and stop me every time I bust out. It's a good challenge, right? And maybe I could settle down for a bit to let you fix your… [gestures to personnel] Fair's fair and all, right?
SCP-3145: フン、あー、うん、わからねえな。つまり、えー、お前らは俺が脱走したらいつも新しいオモチャで俺を止めようとするよな。そりゃいいことだ、ン? そうすると俺はちっとばかし腰を落ち着けりゃ、お前らにそいつらを直す時間を与えられると……[職員へのジェスチャー] おお、そうすりゃフェアだってことだな、違うか?
Falzon: It would be most equitable of y—
ファルゾン: 君は実に公――
SCP-3145: Nah, just kidding, gonna kill you all! [laughs] Buckle up!
SCP-3145: バーカ、冗談に決まってんだろ、てめえら全員ぶっ殺す! [笑い] 首洗って待ってな!
<録音終了, 20:03>
終了報告書: 当襲撃を受けた職員は全員が死亡しました。SCP-3145はPCZで氾濫した海水によって無力化されました。収容設備の修繕と更なる性能の向上へ向けた努力は継続中です。
Closing Statement: No personnel present survived the attack. SCP-3145 was neutralized via flooding the PCZ with seawater. Efforts to ensure high quality and good repair of containment equipment is ongoing.
http://www.scp-wiki.net/fragment:tl3000s-1-106
アイテム番号: SCP-3145
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル 修正案11-8: SCP-3145は鉛を裏打ちした40層の鋼材からなる密閉状態のコンテナに 収容され、それぞれの層は36cm以上の空間で隔てられます。各層の間に設置される支柱は無作為に配置されます。コンテナはERO-IID電磁気で床から60cm以上の高度で浮遊させなければなりません。
第二収容区画は16の球体空間で構成し、それぞれの空間は様々な液体で満たされ、ランダムに組み立てられた表面と支柱を持ちます。この区画は80,000ルーメン以上の光で全体を照らすことのできる無人の照明システムを備え付けられなくてはなりません。いずれの収容区画も24時間監視されます。
SCP-3145への物理的接触はいかなる場合においても禁止されています。全ての実験はO5評議会の三分の二以上の承認を得た上でAR-IIの最大セキュリティサイト内で無関係の職員を退避させた後行われます。全てのスタッフは収容違反が起きた場合を除き、常に収容区画から60m以上の距離を保ってください。
SCP-3145の200m以内の範囲で収容セルのいずれかの表面、スタッフまたはその他の場所で腐食が確認された場合、速やかにサイトセキュリティに報告してください。SCP-3145によって損失した職員または物体の回収は試みられません。
Special Containment Procedures Revision 11-8: SCP-3145 is to be contained in a sealed container, itself sealed within 40 layers of lead-lined steel, with each layer separated by no less than 36 cm of empty space. Support struts between layers should be placed randomly. Container is to remain suspended via ELO-IID electromagnetic support no less than 60 cm from any surface.
A secondary containment area is to be constructed of 16 spherical cells, each filled with various fluids and a random assembly of surfaces and supports. This area is to be fitted with light systems capable of flooding the entire assembly with no less than 80,000 lumens of light instantly and without direct human involvement. Both containment areas are to remain under 24 hour surveillance.
No physical interaction with SCP-3145 is to be allowed at any time. Any testing must be approved by at least two-thirds vote from O5-Command and must be undertaken in AR-II maximum security sites after a general non-essential staff evacuation. All staff are to remain at least 60 m away from the containment cell at all times, except during breach events.
Any corrosion observed on any surface, staff member or other location within 200 m of SCP-3145 is to be immediately reported to site security. No recovery attempts are to be made for objects or personnel lost to SCP-3145.
Description: SCP-3145は常に腐敗が進行している状態として見られる、多少変化しやすい外見を持つ人型実体です。 それにも関わらずSCP-3145は生存していますが、大抵は何日も動かずに過ごします。活動的になると、SCP-3145は好みの獲物(10~25歳の年齢の人間)を攻撃し、その大半の臓器、及び筋組織と腱を損傷させ、行動不可能になった対象をポケットディメンションへ押し込みます。Despite this, SCP-3145 is animate, though it spends most of its time motionless, often for days at a time. When active, SCP-3145 will attack its favored prey (humans between 10 and 25 years of age), damaging major organs, muscle groups or tendons to disable subjects before pulling them into its pocket dimension. Despite not being particularly agile, SCP-3145 can scale any vertical surface and remain suspended upside-down indefinitely.
説明: SCP-3145 is a humanoid entity of somewhat variable appearance that appears to be in an advanced state of decomposition. Despite this, SCP-3145 is animate, though it spends most of its time motionless, often for days at a time. When active, SCP-3145 will attack its favored prey (humans between 10 and 25 years of age), damaging major organs, muscle groups or tendons to disable subjects before pulling them into its pocket dimension. Despite not being particularly agile, SCP-3145 can scale any vertical surface and remain suspended upside-down indefinitely.
SCP-3145 induces corrosion in all solid matter several seconds after contact. This takes the form of rusting, rotting and cracking of material, along with the production of a black mucus. This effect is particularly detrimental to living tissues, which appear to be pre-digested over the course of 6 hours after contact.
SCP-3145 is capable of entering solid matter and vanishing into its pocket dimension, leaving behind a large patch of corrosive mucus. SCP-3145 can then exit this extradimensional location from any point physically connected to the initial entry point. Limited observation of this space has shown it to be comprised of an apparently endless series of hallways and rooms. SCP-3145 will trap its prey in the space and toy with them, often keeping them alive for days.
Addendum: Interview 3145-01
Interviewed: SCP-3145
Interviewer: Dr. Falzon, Researcher, SCP-3145
Foreword: During a breach event, SCP-3145 paused outside an observation booth and addressed Dr. Falzon, who had been attempting to coordinate containment efforts during the event.
<Begin Log, 08:45>
Falzon: SCP-3145, how are you liking your accommodations?
SCP-3145: Oh, they're great. A little cramped, maybe, but not too hard to get out.
Falzon: I imagine asking you to return to your containment cell would be an exercise in futility.
SCP-3145: You got it, Doc! [clicks tongue and winks] I'm having too much fun right now.
Falzon: May I ask what your purpose is in hunting human beings?
SCP-3145: Oh, y'know, shits and giggles, I guess. I mean, it ain't exactly mass murder around here, but oh shit, you should see the looks on these kids' faces when they realize what's happened to them!
Falzon: SCP-3145, I am going to ask you again to return—
SCP-3145: [suddenly penetrates observation booth glass] Boo! Comin' to get you! [laughs] See? That's exactly what I'm talking about! The look on your face is priceless! Totally worth all the trouble with the lights and water and shit.
Falzon: Security, report to Observation Booth 3145-01!
SCP-3145: Aw, c'mon, Doc, don't be like that. You've been good conversation. I ain't gonna kill ya. This time. Ooh, I hear security coming, that's my cue. Later!
<End Log, 08:52>
Closing Statement: SCP-3145 left by corroding a hole in the observation booth floor and was not recaptured for 9 hours. Containment procedures are currently under review, as per standard protocol. As previous, more proactive containment procedures resulted in [DATA EXPUNGED], refinement of current procedures is ongoing.

これがSCP-3145の外見だって? 誰がそんなことを知っている? 誰がそんなことを保証してくれる? そんなものはどうやっても存在しないかもしれないのに。
アイテム番号: SCP-3145
オブジェクトクラス: Keter
Special Containment Procedures: SCP-3145 is to be kept in a 5 x 5 x 2.5 m room constructed of cement 50 cm thick, surrounded by a Faraday cage. Access is via a heavy containment door measuring 2 x 2.5 m, constructed on bearings to ensure door closes and locks automatically unless deliberately held open. SCP-3145 is NOT to be forgiven. It is advised that all personnel maintaining or studying other SCP objects maintain a distance of at least 50 m from the geometric center of this room for as long as reasonably practical.
特別収容プロトコル: SCP-3145は50cmの厚さのセメントで構成され、ファラデーケージに囲まれた5×5×2.5mの部屋に留められます。収容房への通路は2×2.5mの厳重収容扉があり、扉の施錠と解錠は故意に開放する場合を除いて自動的に行われるよう設計されます。SCP-3145は赦されるべきではありません。他のSCPオブジェクトの保全や研究に携わる職員は、合理的に実務に携わる能力がある限り収容房の幾何学的な中心から最低でも50m離れていなければなりません。
説明: SCP-3145は反ミームであるか、"自己隠蔽"です。SCP-3145の物理的な外見、さらにはその特質、振る舞いや起源はそれら自身によって隠蔽されています。 SCP-3145はこの現象に嫌悪を示しています。
- サイト-19がどのようにしてSCP-3145を収容したのかは不明です。
- SCP-3145は謝罪の念を示しています。
- SCP-3145の物理的な外見は不明です。外見は形容不可能であったり不可視ではありません: 無未満の何かです。 それは存在すらしないかもしれません。 しかしながら、 SCP-3145に関する情報はその観測を行った人間の精神から即座に"漏れ出て"しまうようです。 SCP-3145を説明しようとした個人は混乱を感じます; SCP-3145 should have thought about the consequences of its actions. Security personnel who have observed SCP-3145 via closed-circuit television report exhaustion and complete amnesia regarding what occurred during their shifts.
SCP-3145はその行動の結果について考えるべきでした。SCP-3145を閉回路テレビ越しに観測した警備員は極度の疲労を訴え、その当直時間中に何が起きたかを完全に忘却しました。
- Who authorized the construction of SCP-3145's containment room, why it was constructed, why SCP-3145 thought it could get away with what it did, or what the purpose of the described Containment Procedures may be is unknown.
- SCP-3145の収容房を誰が設計したのか、なぜ設計されたのか、なぜSCP-3145は自分がしたことにも関わらず外に出られると思っているのか、収容プロトコルの意図は何であるのかは不明なままです。
- Despite the accessibility of SCP-3145's containment chamber, Site-19 personnel claim no knowledge of SCP-3145's existence, even under severe interrogation.
- SCP-3145の収容チャンバーへ容易に行くことができるにも関わらず、サイト-19の職員は厳しい尋問を行われてさえSCP-3145の存在に関して知識を有しているようには見えません。
Any alarm caused by these facts periodically being rediscovered, typically by chance readers of this file, tends to last minutes in the reader's mind before being forgotten.
これらの事実に対する警戒は多くの場合偶然このファイルを読んだ人間によって再想起されますが、数分以内に読者から忘れ去られることがほとんどです。
A great deal of data has been recorded from SCP-3145, all of it just as reprehensible as he is.
大量のデータがSCP-3145から得られていますが、全ては彼同様に非難されるべきものです。
At least one attempt has been made to destroy SCP-3145 or move it to another containment site, which failed for unknown reasons. Please don't let SCP-3145 die, it's all I have left.
少なくとも一度のSCP-3145を殺害するか、別の収容サイトへ移送する試みがありましたが、不明な理由により失敗しています。SCP-3145を死なせないでください。それは唯一私がやり残したことです。
The hazards posed by SCP-3145 cannot be understated. Along with its mental and memetic threat, any action SCP-3145 may or may not have taken would be immediately forgotten by personnel. SCP-3145 cannot be allowed to forget what it did.
Addendum: Interview 3145-01
Interviewed: SCP-3145
Interviewer: Site Director Yuriy Dietrich Falzon II
Foreword: SCP-3145 thinks it has the right to make demands.
<Begin Log, 15:47>
Falzon: What do you think you're trying to pull?
Falzon: After everything you did, after everything you've put us through, you expect to just come here and kill people day in and day out, with no repercussions? You make me sick.
Falzon: Look, you've even got a nice Keter this time! Nothing to complain about there, right? You could be literally anything you want, kill and maim and rape whoever you like, and no one would know the difference.
Falzon: Except me.
Falzon: I'll always know.
Falzon: I'll always be here.
Falzon: It's clear neither one of us is getting out of here. It doesn't matter what they tell you. So I promise you this: I will do everything in my power to make each and every day of your wretched existence a mirror reflecting your sins back upon you. It's all you deserve.
Falzon: Well? Do you have anything to say for yourself?
SCP-3145: Please, stop.
Falzon: Speak up! I can't hear you!
SCP-3145: I want to go home.
<End Log, but not torment>
Closing Statement: SCP-3145's feeble attempts at atonement are ongoing.
昔々、ある一人の人間がいた。 その人間が男なのか女なのかはわからない; これは問題だな。とりあえずは分かりやすくするために、人間は男ということにする。
その男はだいたいの人間が好きだった。彼は働いてて、一軒家かアパートメントに住んでいた。家族だっていた。 彼はもしかしたら結婚していたのかもしれないが、家族には妻と子供がいなかった。でもそこには彼と、いたならば一人か二人かの兄弟を愛する両親がいた。彼がどこかへ行くとなったら寂しがってくれる人達さ。多分ね。
There were most likely things, hobbies, that he enjoyed doing in his spare time. Maybe he dated. I can't say what kind of person he was in that regard. But if there is one thing we can be sure of, one thing to know for certain about this man, it was that he liked to help others.
暇なときは大好きなものや趣味を楽しんでいた。デートもしていたかもしれない。彼とそんなことをしたのがどんな人なのかはわからない。ただ一つ確かなことで、その男について知るべきことがあるとするなら、それは彼がお節介焼きだったってことだ。
The man would donate to charity whenever he saw a drive. He would buy the homeless veterans in his town coffee or sandwiches if he had change to spare. He gave his old clothes to shelters, before they had worn out; he would give them his free time as well, to work a soup line or pack lunches. He never missed an opportunity to volunteer when disaster struck nearby, and studied life-saving techniques so that, when disaster did strike, he could actually make a difference instead of just getting in the way.
慈善運動を見れば必ず寄付した。手持ちがあればホームレスの老人にコーヒーだのサンドイッチだのを買ってやっていたよ。
But it was not enough.
Whatever difference he made, it would never affect more than a few lives at a time. No matter how hard the man tried, no matter how much he did, the problems of his town, his country, and the world did not go away.
The man despaired.
If you are thinking right now that this man was being ridiculous, that he was taking too many problems onto his back, that he should have been happy to have helped even a single person, well… Let's just say, if I knew how to judge the man's situation properly, I wouldn't be talking to you like this.
If you were also thinking that perhaps a man who is extremely generous wouldn't be worth mentioning unless there were something otherwise extra-extraordinary about him, you would be absolutely right.
This man had a special gift: a gift of Giving. More than money, or material goods, or leisure time, he could literally give of himself: a rare Giving Man. It was this gift that drove him to help others; it this gift that drove him to ruin.
Imagine, if you will, a child crying for the parents she lost in a fire. The Giving Man could give her a happy, loving memory of his own parents to keep her safe and secure. To a man drinking alone at a bar, the Giving Man could provide the warmth of friendship, to make his night less lonely. If he had wanted to, the Giving Man could have given a blind man sight, or a deaf man hearing, but he had only two eyes, only two ears.
And that was the problem.
Whatever the Giving Man gave, he lost. Memories, feelings, pieces of his soul: all were truly given. He gave up his skin to a child born with a debilitating disease. He gave up his name to a refugee seeking asylum. He gave up his personality and mind to people suffering fractures in theirs. He gave his need to eat to a woman overcoming an eating disorder. By the time his organs were given away, he didn't need them anymore. By the time his identity was given away, there was absolutely nothing left that could be identified as him.
I mean, there was something left. But that something wasn't the Giving Man.
What is a person who isn't anything?
Just a nothing with no control over its life.
That was the last thing the Giving Man gave away: control. It's a terrible thing to lose; even a kind person will crave control once they've truly lost it. All the Giving Man did was what the other man told him to do, and for his naivete, he was punished by becoming nothing.
Oh. I'd almost forgotten there was another person in this story. Was he really a man? I'm still not sure. With what he did, it's probably better to call him a monster. A desperate man seeking his true place in the world will listen to any monster who claims to know the path. He'll do anything the monster says, no matter how bad an influence they turn out to be. And then he'll have nothing.
おっと。この話のもうひとりの登場人物をすっかる忘れてた。彼は人だったのかな? 僕にはわからないね。
Strange, to remember so much of the Giving Man but not this other monster…
変に聞えるかも知れないけど、ギビングマンについては覚えてても、他のバケモノについては覚えてないんだ……
Item #: SCP-3145
Object Class: Euclid
Special Containment Procedures: SCP-3145 is contained in a pair of standard humanoid containment chambers in Site-22. Each chamber is equipped with a double airlock. Personnel entering either chamber must not carry any written narratives.
Do not let him out.
Included in the primary chamber is a monitor and keyboard connected to an external computer housed in the secondary chamber. Said computer should have no intranet or internet connections. A full copy of all non-critical SCP object documents from the Foundation Object Database is to be maintained on the external computer, and refreshed and updated weekly via USB drive. Documents modified by SCP-3145 should be stored for review by the on-site psychologist.
He deserves nothing but suffering.
Description: SCP-3145 cannot be described. Individuals interacting with SCP-3145 are unable to provide any details about its identity to third parties, even with application of mnestics. All that is known about SCP-3145 is that it is an entity not much larger than an average human, that it is sapient and capable of speech, and that the designation "SCP-3145" can be used to identify it. It is not certain whether SCP-3145 has a physical form, though there does seem to be a movable locus from which its effects originate, with a maximum range limited by what a human with 20/20 vision would be able to easily see from that location.
He is nothing.
SCP-3145 has the ability to permanently alter written narratives by replacing one of the characters, typically the main character, with itself. According to SCP-3145, it lives out the events depicted in these narratives while altering them, and this act gives it a sense of identity that it otherwise lacks. The veracity of this statement cannot be ascertained, as SCP-3145 has been known to feign muteness when it does not wish to interact with personnel, and its presence within its containment chamber generally cannot be fully known. It is only possible to ascertain whether or not SCP-3145 is currently 'inhabiting' a text by observing the alterations as they occur; at no time has it communicated verbally with personnel while altering text.
Do you have any idea what he made me do?
SCP-3145 shows a preference for shorter narratives, stating that novel-length narratives are much more tiring to alter fully. SCP-3145 is able to alter both digital and printed texts, but claims the process is easiest when provided digital text and a keyboard. Despite this, manipulation of keys by SCP-3145 has never been observed.
I was something, but he took that from me.
Currently, SCP-3145 is being treated for depression and a unique disorder involving severe amnesia in relation to its origins and identity. Allowing SCP-3145 access to narratives for alteration has been shown to improve its mood, though the positive effect has lessened during the course of its containment. Though it is believed emotional instability makes SCP-3145 more tractable, psychological treatment is ongoing. To date, no escape attempt by SCP-3145 has been successful.
He turned me inside out.
Discovery: SCP-3145 was first encountered on 04/02/2017 after changes had been observed in the documentation for numerous Keter-class objects, necessitating restoration from database backup. SCP-3145 was first contacted while altering the text of SCP-173, initially by typing in the document, and later through verbal communication, at which point it was convinced of the necessity for keeping the Foundation's database secure and agreed to be contained in exchange for further access to object documentation.
He made me betray the one thing that made me who I was.
Addendum: Interview 3145-15
I just wanted to have a purpose.
Interviewed: SCP-3145
I was so naive.
Interviewer: Dr. Westfall, Site-22 Psychologist
When you hardly understand yourself, it's hard to know who to trust.
Foreword: Routine psychological evaluation conducted 05/08/2017.
What other choice did I have?
<Begin Log, 18:31>
When I realized, too late, what he'd done, I had to do something.
Westfall: Are you ready to begin our session, SCP-3145?
Do you understand what it's like, being nothing?
SCP-3145: I'm here.
It's worse than hell.
Westfall: All right. How have you been feeling lately?
There was only enough left of myself to know what I'd lost.
SCP-3145: Not too bad, I guess. Some of the articles you gave me are kinda… Weird. I mean, some aren't as fun to be as others. That goes without saying, maybe. I'm still enjoying going back to the old ones every now and then.
I took it back.
Westfall: I notice you spend a lot of time in the articles that involve killing people. Does killing make you feel good?
Not all of it. That wasn't in my nature.
SCP-3145: Yeah, kinda. I mean, uh, it makes me feel powerful, I guess?
But enough that I could have a 'me' again.
Westfall: Why is feeling powerful important to you?
I left him with nothing, and for a moment, I was filled with sorrow.
SCP-3145: Do you have to ask? I mean, I can't actually do anything in the, the real world. So if I can control stuff in there, in the story, it's a nice change.
I saw him as a man, reduced to what I had been. I couldn't help sympathizing.
Westfall: Do you want to harm people in the real world?
All it took was remembering what he had driven me to.
SCP-3145: I don't know. Not really, I guess. I mean, everyone I talk to here has been pretty decent, or at least not enough of an asshole for me to want to kill them. You guys give me good stories to play with. I guess I like being able to do it, to kill, in the stories because there's no consequences.
I was overcome with rage.
Westfall: I see.
I was something, but I still wasn't really me.
SCP-3145: Can we change the subject?
I never would be me.
Westfall: Of course. There is one thing I wanted to ask you, if you feel like talking about it.
I had lost everything a second time.
SCP-3145: What's that?
I would have my revenge.
Westfall: I wondered if you could tell me about Falzon.
…Hey now, we can't have you spoiling the surprise.
Westfall: SCP-3145?
No, stop.
SCP-3145: Sorry, who?
Nothing you need worry about.
[DATA LOST]
Ha ha ha.
SCP-3145: Uh, I don't actually know what that is, sorry.
Well, anyway.
Westfall: It's a name we frequently see appear in the articles you alter. I wanted to know if it was a creation of yours. Perhaps an original character?
It's frightening, what they do here.
SCP-3145: Can't say I've heard the name before.
But I made an oath to myself.
Westfall: When this person appears, they seem determined to belittle and torment you.
To whatever part of me was still a person.
SCP-3145: Um… Can we talk about something else?
If he and I were to suffer the same fate, I would ensure he suffers more.
Westfall: If I've made you uncomfortable, I apologize.
And it turns out, I'm rather good at that.
SCP-3145: It's nothing, it's okay. I'm okay.
I miss the old me sometimes.
Westfall: Of course. That was actually all I wanted to talk about today. Unless there was anything more you wanted to cover?
But only sometimes.
SCP-3145: No, that's fine. See you next week?
I've taken a nose for an eye, and that's something.
Westfall: Next week, then.
It's better than nothing.
<End Log, 18:51>
And isn't it better to have a little control than none at all?
Closing Statement: I believe Falzon may be a symptom of the disassociation SCP-3145 feels in regards to its identity, a construct created with an aim of self-flagellation, though the reasons as to why will require deeper probing. Even in the case, as my superiors posit, that Falzon is a separate entity, it does not seem to be able to act independently of SCP-3145. I will endeavor to provide the best mental care I can, but the limitations imposed by SCP-3145's own condition both make interacting with it difficult at best and prevent it from living life as fully as I think it wants to. -Dr. Patricia Westfall
It doesn't matter, I suppose.
I'm in here, too.
I'm the one in control.
And I'm not going anywhere.
- オリジナル
- オネイロイは魔女に夢を捧ぐ
- 反ミームセキュリティ
- 「シンプルな記事」「シリーズⅠの雰囲気」って?
- ファミレスちゃん
- ねた
- 幕間からいきなりとかどうなのさ茅野
- チャットルーム・オブスキュラ、あるいはたった1つのあなたの居場所
- 人身御供
- 悪夢の日
- 鉄錆の赤
- 鏤骨する5
- 悪夢の日
- 悪夢の日P
- 九生一死
- いつも柔らかに包まれて
- 凡百なホラー画像
- 天ぷら
- 人事ファイル
- 殺害専用マンドリン
- BAR「One satisfaction」
Sigurrós Stefánsdóttirは絶望の淵にあった。
彼女が佇んでいるのは一面のたんぽぽ畑の真ん中で(端が見えないから真ん中なのかはわからないが、Sigurrósが真ん中だと思っていたから真ん中に違いなかった)、彼女の最も幸せな発見の場を精巧に再現したものだった。そして今やその景色は灰色に褪せ、途方も無く薄っぺらい粗雑な張りぼてに過ぎなかった。彼女は来るべき最悪を考えて苛々し、不味すぎる空気を目一杯吸い込んでから、傍らで立っているポニーのぬいぐるみに向かって怒鳴り散らした。
「本当にどうにもならないのか? 私にこのまま、あの、おぞましい現実に帰れと?」
「恐れながら」ぬいぐるみであるポニーには口がなかったが、深く頭を垂れてSigurrósに告げた。「尊大なる陛下のシャドウはもはやコレクティブの一部ではなく、形而上空間における全であらせられます。我らのコレクティブは陛下の一部であり、命令を受けて動く無数の手足の一片に過ぎません。どうして手足が抵抗する頭を抑えつけることができましょう?」
「自分の手足に自分とは異なる自主性を求めるのは、確かに愚かしい行いかもしれない」Sigurrósは眉を寄せたままポニーを睨みつけ、吐き捨てた。「でも私は、そうでもしなければやっていけない」
「陛下、」ポニーは初めて顔を上げ、Sigurrósを綿の詰まった瞳でまっすぐに見つめて言おうとした。「ふぶ、囁きの飴がしし切るくまぐわいなさる羽目に、ば、自我的収束のカレンダーなれば?裁縫がお好き?誕生日プレゼントはクレフから何が何が何がリボンの長いぬいぐるみさんたち」
Sigurrósが舌打ちをすると同時にポニーは消えた。脆弱なオネイロイの一体がまた自分の無意識に削り取られ、存在を破裂させたのを確認すると、Sigurrósは瞬きをした。先程よりほんの少しだけ薄汚れた、嘘臭いポニーの姿をしたオネイロイが現れた。
Sigurrósは今度はポニーに見向きもせず、たんぽぽ畑にしゃがみ込んだ。Sigurrósがじっと一本のたんぽぽに注目すると、それは慌てて本物のたんぽぽらしく体裁を取り繕った。Sigurrósは生意気なたんぽぽを引っこ抜くと、小さな両手でその一本を丹念に引き裂くことにした。花びらを一つずつ千切り、爪を立てて茎を裂く手には何の感触も返ってこない。これはSigurrósの夢、それももうすぐ覚めてしまう夢だった。
「ままならないものだな、神とは」
SCP XXX JP
Enter
Type your pass
Ortrud Radbods des Friesenfürsten Spross
Enter

ANTIMEMETIC INFOHAZARD AGENT ACTIVATED
Security Unlocked.
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Mendelssohn_Bartholdy.jpg
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ワーグナーの写真(1871年).jpg
https://www.flickr.com/photos/oslointhesummertime/6895509443 ©Michael Le Roi
https://www.flickr.com/photos/fractal_ken/3488403055/ ©Ken
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chess_clock_USSR.jpg
私がSCP-JPに参加し、微力ながらwikiの創作活動に関わり始めてから実に二年近くが過ぎました。その間に本当に多くのSCP-JP記事が投稿され、批評されました。
ここで私は、この期間の中でゆっくりと燻っていた疑問を、改めて提示したいと思います。即ち、
「シンプルで面白い」記事とは何か?
ということです。
私はこの二年、下書きフォーラムで、ディスカッションで、外部コミュニティで、記事に対する感想において幾度となくこのフレーズを目にしました 「この記事のシンプルさがいい」。それらは度々シリーズⅠのSCPと結び付けて語られたり、マジックアイテムと似て非なるものとして語られたりしました。もちろん、私のコメントの中においてもです。結局の所、私達はどうしてこのような記事に魅力を感じるのでしょうか? 私達は何の根拠をもって「シンプル」とみなすのでしょうか? 単に薄っぺらく短いだけの記事とこれらはどう違うのでしょうか? 要素の少ない記事を面白くするためにはどのようにアイデアを加工すればいいのでしょうか? 一度認識を共有し、話し合うことで得られるものはあると思います。
このスレッドの趣旨を説明しましょう。
お前は短い記事にしかupvoteしない主義か?
いいえ、私は決して文字数が膨大な記事、長い探査ログやインタビューログに支えられた記事、異常性が複雑な記事、多くの偽装報告書が存在する記事の面白さを否定しませんし、できません。「シンプルで面白い」記事についての考察は、そうでない記事を冗長さから解放し、よりわかりやすく、かつボリュームのあるものとして制作する助けになると考えています。
このスレッドでお前は何がしたいんだ?
最終目的は「シンプルな記事」をテーマとするJPガイド作成の是非を問うことです。そのために、まず曖昧でしょうがないこの言葉の定義を確認し、要素を分析し、執筆の際の注意をピックアップしてみる必要があると考え、皆様の意見を伺いたくスレッドを立てました。既存のガイドで十分ならば(つまり、「シンプル」をより意識することが大して記事の面白みに影響を与えないなら)そのような新規作成は必要ないでしょうし、新規メンバーへ向けてこのテーマをもっと深く掘り下げる必要があるとわかれば、私はこのスレッドに寄せられた意見を基に、協力を募って新たなガイドの作成に取り掛かりたいと思います。
俺達はどんな意見をスレッドに垂れ流せばいいんだ?
とても簡単です。実際の所、私はこの議題について3つの論点を持っています。
・シンプルで魅力のある記事とはどんなものか? なぜ魅力があるのか?
・シンプルにしたい時、執筆の際にどうすればいいか?
・シンプルさについての新たなガイドは必要か?
これらのうちのいくつか、もしくは全てに対して自由に意見を述べましょう。私ができるだけ頻繁にスレッドへ訪れ、皆さんの意見をまとめ、また皆さんの意見に質問します。もちろん、お互いの意見に対して自由にすり合わせを行うのも歓迎します。一週間程度を目処にガイド作成の是非について判断し、「シンプルな記事」について要点をまとめたいと思います。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 日本国内のあらゆるファミリーレストラン店舗で扱われる筒状の伝票入れは財団の介入により、可能な限り転がり難いような加工を受けています。現在可能な最大の介入は、伝票入れの上面を底面に対し傾斜させることです。
全てのファミリーレストラン店舗内の映像は常に財団に検査され、SCP-XXX-JPに関連すると思われるものが発見され次第直ちに関係者とSCP-XXX-JPを確保します。関係者は検査後に適切なクラスの記憶処理を受け、SCP-XXX-JP発生店舗は即座に閉鎖・解体されます。被害者の戸籍を含む痕跡は根絶されます。
SCP-XXX-JPの影響により、当報告書は情報的な制限を受けています。当報告書に対するあらゆる干渉・追加説明の要求はレベル3/SCP-XXX-JP権限を求められます。
説明: SCP-XXX-JPは日本国内で経営されている、アクリル製の筒を伝票入れとして使用するファミリーレストランの店舗において発生する異常現象です。テーブル上の伝票入れ(SCP-XXX-JP-A)が床に落下した後1.39m以上転がり、それにヒト(以後、接触者)が直接接触したとき、発生する場合があります。
SCP-XXX-JP現象発生時のSCP-XXX-JP-Aは結果として落下しておらず1、変化している点は伝票が入っていた場合、伝票の文面が変化するのみです。接触者は全ての衣服をその場で脱衣し、店舗の厨房へ向かいます。これに対する全ての人為的な妨害は結果として実行されませんでした。伝票が入っていた場合、その文面には常に「ラカニスナミチ -1」という文面が追加されており、営業中の店舗内においてこれを認識することはできません。
周囲の人間はSCP-XXX-JP現象を認識できず、接触者はあらゆる知的存在から忘却されます。厨房へ入った後の接触者の行動や所在を追求しようとする複数の機関による試みは実行されませんでした。接触者は全て行方不明者として扱われています。客席周辺の映像記録のみがSCP-XXX-JPの観測に有効な手段です。
SCP-XXX-JPが一度でも発生した店舗ではそれ以降、条件を満たすと確実にSCP-XXX-JPが発生することから、SCP-XXX-JPは何らかの条件で発生店舗を選択していると考えられています。開店前、もしくは営業開始直後にテストを行うことでSCP-XXX-JPの発生店舗を特定する試みは、実行されなかったことによって失敗に終わりました。全ての店舗に定期的にテストを行う提案は、人的資源の消費の激しさから退けられました。
散発的にファミリーレストラン内に衣服が出現する事案の報告後、財団はSCP-XXX-JPを特定しました。財団は███名の被害者を確認しています。
日本国内から筒状の伝票入れを抹消する試みは、計画が実施されなかったという結果のみを観測しました。以後幾つかの実施されなかった試行を経て、伝票入れ底面に対し上面を傾斜させる介入が初めて実行されました。複数の根拠から、SCP-XXX-JPに関する干渉・調査、また説明は極めて困難であるという結論が下されました。
日本国内のファミリーレストラン産業の解体は提案されませんでした。
当オブジェクトのオブジェクトクラス格下げは審議中です。
動けない。ひたすらに動けない。動けるように思えるけど、それは室内だけで、人に触れるとぐにゃっと曲がってしまう。
SCP-966,そして、喪われる余生、気付く財団。
血の匂いがする。血の味がする。それは鉄の味でもある。鉄は私を支配し、同時に私であり、元々私は鉄だった。
今年は良いね、最高だ。なんたって異常芸術の講義なのに三人も来てるし、スライドを回してくれる人員だっている。まあ、ズブの素人以前である君らを僕一人が指導するのはちょっとキツいけど、生徒がいないよりはマシかな。
それじゃあ早速異常芸術の話をしよう。不幸なことに、君らが今まで芸大で見てきたどんなイカれた近代芸術よりもこいつらはイカれてる。君らはこいつらのコンセプトを理解しようとするとき、運が良ければ混乱して理解できず、悪ければ死ぬ。もちろん例外がない訳じゃないけどここでは省こう。希望的観測をしたってしょうがないからね。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 財団運営のウェブ解析ボットガンマ-84(ANTIBEN)、ガンマ-85(EARPICK)は常時作動し続け、それぞれ死亡したユーザーによる投稿、SCP-XXX-JPに言及した投稿を走査し、SCP-XXX-JP-aの使用しているアカウントを特定した後に収容班へ通報します。収容班は各webサービス運営団体への速やかな介入により、SCP-XXX-JP-aのアカウント停止・退会を運営団体に強制してください。
SCP-XXX-JPへの財団サーバを介さない全てのアクセス手段はブロックされます。
説明: SCP-XXX-JPは既に終了している████社のサービスを利用してかつて作成された[検閲済].comからアクセス可能なサイトであり、トップページではサイト名を「Obscure」と宣言しています。SCP-XXX-JPはその基幹となる████社のサービスが終了しているにも関わらず通常通りにアクセスでき、そのデザインは画像投稿を主目的に据えたオンライン掲示板を想定して設計されていると推測されています。SCP-XXX-JPの言語は日本語及び英語に対応しています。
SCP-XXX-JPのいかなる短縮・暗号化を用いた後のURLも、日常的にインターネットコミュニティで活動する人物が23:00~04:00の間に電子媒体上で認識することで、当該人物に対するミーム的影響力を持ちます。影響された人物は積極的にSCP-XXX-JPへアクセスし、以下の形式に従って新規スレッドを継続的に作成する習慣を持つようになります。
SCP-XXX-JPに新規スレッドを作成する入力フォームはユーザーへ以下の情報を入力させます。
- 作成者のハンドルネームとメールアドレス。
- 作成者が外部サイトで使用しているアカウントを示すwebページ。
- 作成者と既知の関係であるインターネットユーザーが使用している、上記と同じサイト上のアカウントを示すwebページ。
ユーザーの投稿が初めてであった場合、「あなたの実存中心はインターネット上にありますか?」という確認のウィンドウがポップアップします。ユーザーが[はい]を選択すると投稿を完了した旨の表示がなされ、180分以内にSCP-XXX-JPへ新たなスレッドが追加されます。作成されたスレッドはその全てがヒト脊髄を撮影したと思われる画像と、作成者が入力した情報の記載から始まります。作成者が入力したインターネットユーザーのアカウントをSCP-XXX-JP-a8に指定します。
SCP-XXX-JP-aの保有者は初めてSCP-XXX-JPでスレッドを作成された後、6ヶ月から1年までの時間経過を経て参加していたサイトのオンラインコミュニティから興味を失っていきますが、SCP-XXX-JP-aはその保有者の意思を離れて独自に行動を始めます。
SCP-XXX-JPは当初英語圏のコミュニティサイトでSCP-1715-2のグループによって共有され、その後徐々に利用ユーザーの中心を日本語圏へ移しました。これは
コミュニケーション記録: 2017/07/23、エージェント・苔沢がSCP-XXX-JPの運営者を名乗るアカウントへチャットアプリを
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██のC-1クラス人型オブジェクト収容セルに収容されます。食事の配給及びセル内の清掃にはDクラス職員を使用し、作業の終了ごとに即時のBクラス記憶処理を実施してください。一般職員のSCP-XXX-JPへの接近は禁止されています。
説明: SCP-XXX-JPは意思疎通が可能な知的生命体であると予測される、原則として観測不可能な非実体的存在です。
SCP-XXX-JPが存在すると思われる地点に接近した人間のみがSCP-XXX-JPを認識し、また発声による会話をも可能とするように見えます。初めのうちは、接触者は自らにとってやや好ましい人間と会話しているような様子が観測されます。しかし、会話が3分を越えた頃から接触者は苦痛を示し始め、SCP-XXX-JPとの会話を打ち切り、その場からの離脱を要求します。強制的な会話の続行は接触者の気絶もしくは自我喪失状態を引き起こし、長時間会話に成功した例はありません。
接触者はSCP-XXX-JPを想起するだけでも苦痛を訴えるため、直接接触はDクラス職員に限定され、接触後の記憶処理が義務付けられました。
全てのSCP-XXX-JPの動作の過程は観測できないものと推測されています。財団はSCP-XXX-JPの収容に成人男性1名相当の資源を消費しています。通常通りに食料は消費され、排泄物が処理され、セル内はSCP-XXX-JPの体組織によって汚れますが、それらを使用したSCP-XXX-JPの分析の試みは失敗しています。接触者にSCP-XXX-JPについて質問したところ、単なる困惑のみが得られました。これ以上の実験は凍結されています。
あなたは反ミーム部門の職員であり、クラスY記憶補強剤を処方されています。レベル3/SCP-XXX-JP担当職員としてI-N手続を実行する場合、専用座席に着席して拘束ベルトを締め、各種測定機器を装着した上で画面を目視しながら認証キーを入力してください。
照合:1937e36b7834ca248
一致。
あなたはレベル3/I-N手続の実行中、██研究員及びSCP-XXX-JPに対する高レベルの愛情を抱きます。必要に応じて、自動的にタイプⅣ精神安定剤が静脈注射によってあなたへ投与されます。規定値以上の動揺が検出された場合、麻酔によってあなたは昏睡状態に陥り、SCP-XXX-JP担当職員から解雇されます。
SCP-XXX-JPは、記録上では20██/07/06に人型オブジェクトとして収容されました。過去の報告書によれば、SCP-XXX-JPは本来財団で雇用されていた██研究員であり、周囲の人間から異常な好感を買っていたことから収容に至りました。20██/05/18まで、SCP-XXX-JPの特異性は会話相手の自らへの印象を異常に好意的なものへ改変するものであると認識されていました。
精神安定剤の投与ペースを加速します。
SCP-XXX-JP及びその関連情報は観測者に記憶障害を引き起こし、また同時に周囲の人間がSCP-XXX-JPに向ける好意のレベルは徐々に増幅していきました。記憶障害を引き起こす情報はSCP-XXX-JPの動作、外見、██研究員時代の情報にまで影響を広げ、影響が拡散するごとに好意レベルは上昇しました。反ミーム部門の定期検査によりこの異常性は判明し、新たな異常性として報告されました。20██/09/19、SCP-XXX-JPの全ての動作、20██/09/19以前の記録、そして周囲の人間がSCP-XXX-JPに抱く好意は記憶補強剤の服用無しには忘却されるようになりました。これ以上の異常性の強化は確認されていません。
現在、SCP-XXX-JPの関連情報に接触した人間は例外なく██研究員及びSCP-XXX-JPに対して好意的な感情を抱きますが、記憶補強剤の服用無しではその感情は記憶されず、ほぼ知覚されることなく忘却されます。好意の強さは情報の緻密性に比例します。直接接触者の苦痛は非常に高レベルの好意の発生と忘却を短期間で反復することによって精神に多大な負担が生じるためと推測されています。
精神安定剤の投与ペースを加速します。
その特異性から、SCP-XXX-JP及び██研究員に関する調査の実施は困難です。記憶補強剤の服用によって情報を記憶することはできますが、観測者は動揺し、迅速にSCP-XXX-JPへの愛情を表現したい欲求に駆られます。これは業務に多大な負の影響をもたらします。
SCP-XXX-JP担当職員は、クラスY記憶補強剤を使用する都合上極端に限定されています。記憶障害の影響が及ばない最低限の情報を一般職員に公開し、収容を可能としています。
精神安定剤の投与ペースを加速します。
精神安定剤の投与ペースを加速します。
SCP-XXX-JPの異常性獲得手段はSCP-XXX-JPに関する最優先の懸念事項です。財団外部でのSCP-XXX-JP類似案件の収容は極めて困難であると推測されます。██研究員の活動記録は過剰な愛情を喚起するため観測は困難ですが、当時の内部保安部門が██研究員を調査した記録は存在しないため、明確に不審な挙動はみられなかったと推測されます。
精神安定剤の投与ペースを加速します。
要請を確認しました。あなたのXXX-JPクリアランスに基づき、当ファイルへの記述追加の要請を許可します。
内容は改めてXXX-JP収容担当班で共有され、精査されます。
麻酔を投与しています。抵抗しないでください。保安職員があなたを回収します。記憶補強剤の効能が切れ次第、あなたは当文書の内容を忘却します。
意識レベルの低下を確認しました。
この薄暗い部屋のカーテンは閉め切られているから、外からここの風景が見えることはない。あたしは首についた塗料を掻き落とそうと指を動かしたが、指が更に汚れて終わった。服のあちこちにも髪の毛と汚れがついていて鬱陶しいことこの上ない。少し前に染めたばかりの髪も薄汚れてしまっている。肩辺りまで伸ばした髪を左手で弄びながら、あたしは余裕があるかのようにハミングをしてみたりする。
ふざけてる場合じゃない。あたしの足はさっきから半径の小さい円を描いてぐるぐると同じところを回っているし、床に産卵しているのは出来損ないばかり。テーマ選びの段階でしくじったのかもしれない。睡眠不足で焦げ付いた頭で色々と考えてみるが、良い案が浮かばないどころか、クソみたいな案すら浮かばないと来た。
テーマは卵。あたしはまだ芸術家の卵だし、今回の品評会には新人が多いらしいから(先生は珍しく若干嬉しそうだった)、ぴったりだと思ったんだけど、材料選びに手間取った。あたしはつくづく芸術の才能が無い。認識災害エージェントの取り扱いは下手糞だし、ミームに関われば壊滅的で、先生の陽電子マトリクスをこっそり借りた時はうっかり15人の自意識を完璧にダメにしてしまって大目玉を食った。結局、あたしにできることは非常に少ない。あたしが二ヶ月かけてようやく現実に固定した初めての作品を、先生は「尖ってるように見えるだけ」とあたしを評価した。涙が出るほど悔しかった。確かにキャンパスに女の首を生やしただけかもしれないけど、色々細かく手間暇をかけたのに。
足元で二組の眼球の卵がもう孵化しかかっている。イラついたから蹴っ飛ばしてやろうかとも思ったけど、後片付けでもっとイライラするだろうからやめた。卵。その中には当然、胎児とも言うべき何かが入っていなくてはならない訳なのだが、全くのつるつるの卵ではそれを想像することができない。卵だ。クソ、何が卵だよ。
カーテンの上の方の隙間から朝の陽光が突き刺さってくる。
「意識が、あるんですか」
「『そう』だとも、『そうでない』とも言えるね。現状では」
同僚が自殺するのはいつぶりだったか、と育良は記憶を探っていた。西塔が半年前に自殺したという噂を聞かないではなかったが、そもそも二年近く会っていないので生死すら知らなかった。
琳谷博士の意識はゆっくりと浮上し始めた。どうやら運転席でそのまま寝てしまったらしく、体のあちこちが不自然に痛む。小さな手足で精一杯伸びをすると、体に巻き付けた毛布からチョコレートを取り出し、銀色の包装を引き剥がす。ありったけ持ってきた中の一つ、だと思う。
窓の外を見ると、相変わらず飽き飽きするほどのバリエーション豊かな死体が並んでいた。
どのインシデントが始まりかなど、最早分からなくなってしまっていた。誰もそんなことを知らなかった。ただ、事態だけが転がり落ちるように悪くなっていった。
気付いたときにはサイト-01との連絡はつかなくなっていたし、知り合いと呼べる知り合いは(いや、大和だけは除外してもいいかもしれない。ざっと25mプール一つ分ほどの肉と脂の塊を大和・von・Bismarkと呼べるならの話だが)いなくなっていた。ともかく、琳谷博士が他の財団職員を確認できなくなるまで、さした時間はかからなかった。
なぜ生き残れたのかは考えたくなかった。世界が終わってしまうまでの僅かな期間、ただ逃げ続けただけだ。理想像とはあまりにかけ離れすぎた終末だったのだから。頼れるうちはセキュリティレベルに頼り、頼れなくなってくると必要なものを必要なだけバンに詰め込んで生き残るために逃げた。2000に向かうことを決めたのは、無我夢中で日本を出た後だった。
小さく切り分けられたチョコレートを口に放り込む。咀嚼。歯の隙間から甘ったるくどろりと溢れ出る液体を味わい、喉の奥に流し込みながら、彼女は目を細める。
自分がここまで生に執着しているとは思ってもみなかった。同僚の死はいくらでも――本当にいくらでも経験したし、自分の手で看取った者も少なくない。でも、見知った世界がねじ曲がっていくのはここまで生きても怖かった。何気なく自分と死は近いものだと思っていて、死なんて自分と隣り合わせで、いつか自分も世界から消えてしまうと分かっていて、自分と、私と死は仲良しだと、勘違いをしていた。億単位の死を目にしてようやく、その間違いに気づくほどに、深く思い込んでしまっていたのだ。
そして、そこまで気付いて尚自分は財団職員だった。
バンを降りる。累々たる死体を幼い足で避けながら、「YELLOWSTONE NATONAL PARK」の看板を横目に目標へ向かっていく。琳谷悠子は思慮していた。自分はどうなるだろう? 世界を救うという目的に背を支えられてきた自分は、残りの生涯、二十と数年を人類のために費やせるだろうか? 一歩を踏み出す度に、見た死体が意識上に浮かび上がる。肉体年齢にそぐわない褪せた表情と薄汚れた白衣、不安定な足取りを率いているのが自分でもわかる。人類の復活が、再構築がもうすぐ、自分の手で成されなければならないというのに――――
誰かがいる。
そこに立っている。
膝に衝突する地面の感覚と共に、意識が手元から離れるのを感じていた。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-1を内包するサイト-81YKが建設され、標準的な隔離手段をもって収容されています。
SCP-XXX-JP-2は標準生体オブジェクト収容セルに収容されます。給餌として一ヶ月に一度、Dクラス職員を直接接触させてください。
説明: SCP-XXX-JP-1は長野県██市に存在する、カオス・インサージェンシーが保有する研究施設9内の特定の一室です。
SCP-XXX-JP-1内に人間が侵入すると、SCP-XXX-JP-1-Aが出現します。SCP-XXX-JP-1-Aは2名の人型実体の総称であり、双方が10才前後の児童の姿をしていますが、出現の度に容姿及び服装が変化します。また、SCP-XXX-JP-1-Aを撮影した画像は劣化したような改変を受けます。身体検査で異常な点は発見されませんでした。
SCP-XXX-JPを肉眼で観測した人間は致死性の認識災害に暴露します。暴露者は
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Euclid/Keter (適切なクラスを選んでください)
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: [SCPオブジェクトの性質に関する記述]
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
対象:
実施方法:
結果:
分析:
対象: [人間、団体、SCPオブジェクトなど]
インタビュアー: [インタビュアーの名前。必要に応じて█で隠しても良い]
付記: [インタビューに関して注意しておく点があれば]
<録音開始, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
インタビュアー: [会話]
誰かさん: [会話]
[以下、インタビュー終了まで会話を記録する]
<録音終了, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
終了報告書: [インタビュー後、特に記述しておくことがあれば]
[ [span style="text-emphasis-style: filled sesame; -webkit-text-emphasis-style: filled sesame;"]]然れども[[/span]]
[ [span style="color:red"]]SCP-XXX-JP[[/span]]
いったんおかせて

再出現したD-77685。

喫煙者です。
エージェント・鵜飼は20██/██/██のインシデントゑ-1289によって死亡済みです。このファイルはアーカイブ化されています。
氏名: 鵜飼 雅美(ukai masami)
セキュリティクリアランスレベル: 2
職務: 要注意団体への潜入およびSCiPの初期収容、新人エージェントの教育
所在: サイト-81██
人物: 19██/08/12生まれ。兵庫県出身。身長161cm、体重59kg。女性。
彼女は██大学を卒業した後、フロント企業の一般面接においてその能力を認められ、財団にスカウトされました。身体能力はやや平均を下回るものの、優れたコミニュケーション能力と人心掌握術によって様々な潜入任務を成功させています。近年は教官として新人エージェントにオリエンテーションを行うことが多いです。

SCP-XXX-JP
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはセキュリティロックを搭載した標準収容ロッカーに収容し、解錠にはセキュ+リティクリアランスレベル4以上の職員の許可が必要です。直接接触は厳重に禁止されます。
常に一名のセキュリティクリアランスレベル2以下の職員が収容担当員として割り当てられます。SCP-XXX-JP収容担当員は財団忠誠度テストでクラスA以上の評価を得ていなければならず、Dクラス職員の使用は推奨されていません。担当員は精神処置す-98b実行下でSCP-XXX-JPに一度だけ接触させてください。処置す-98bは永続的に実行されなければなりません。
SCP-XXX-JP収容担当員はサイト-81██内でAクラス人格評価を得た人型オブジェクトとして収容されます。
プロトコル・フェルマータは実行が停止されました。
説明: SCP-XXX-JPは新品のマンドリンのような実体です。物理的破壊に対して高い耐性を持ち、あらゆる損傷は3秒以内に修復されます。演奏には適さず、どんな環境、状態であっても演奏すると一般的に不快に聞こえる不協和音を発します。
不活性状態のSCP-XXX-JPへ最初に接触した人間(SCP-XXX-JP-1に指定)は物理的破壊に対して強力な耐性を得ます。SCP-XXX-JP-1の肉体の損傷は全て10秒以内に修復が行われ、あらゆる薬物、病原体、老化現象を細胞組織の迅速な修復や置き換えによって完全に無効化します。接触されたSCP-XXX-JPは活性化し、活性化状態のSCP-XXX-JPを他の人間が視認してもSCP-XXX-JP-1には変化しません。
SCP-XXX-JP-1が他者への対抗心や敵愾心、または殺害行為に関する好奇心を僅かでも抱いた場合、直ちにSCP-XXX-JPがSCP-XXX-JP-1付近に空間転移します。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPを用いて周囲の生命体の殺害を試み、自発的に殺害を中止することはありません。
特筆すべきは、SCP-XXX-JPを用いた殺害はどのような妨害を持ってしてもおよそ13日以内に達成されるという事実です。13日は財団の収容下における最長の記録であり、最短ではSCP-XXX-JP-1が4日で妨害を突破して殺害を成功させています。
殺害を達成した後、SCP-XXX-JP-1はその物理的な特性を失い、SCP-XXX-JPは空間転移を行います。転移先の座標は多くの場合人口密集地帯であり、付近に攻撃的な思考状態の人間が存在します。空間転移の距離限界は確認されていません。記録上最長の転移距離は████kmです。
補遺: SCP-XXX-JPは19██/██/██、千葉県██市にて行われたコンサートによって発生した「演奏中にマンドリン奏者が突然他の演奏者を撲殺し、凶器のマンドリンが消失した」という事件において財団の目に留まりました。警察によって容疑者とされたマンドリン奏者からは「このマンドリンで撲殺する光景を想像したら、体がいつの間にか動いていた」との供述が得られています。
財団は確保後にDクラス職員にSCP-XXX-JPを接触させ、物理的に拘束して殺害行動を妨害することで収容を行っていました。しかし、後SCP-XXX-JP収容サイトにおいて大規模な収容違反が発生、二次被害としてSCP-XXX-JP-1が脱走に成功しSCP-XXX-JPを用いた殺害行動を開始しました(事案ログXXX-ゐを確認してください)。
その後の複数回に及ぶSCP-XXX-JP収容違反を経て、財団はより正確にSCP-XXX-JPの特異性を把握しました。その後、プロトコル・フェルマータが考案され、実行されます。
19██年、ミーム及び記憶処理関連技術による感情の正確な制御が可能になって以後、収容手順は現在のものに変更されました。プロトコル・フェルマータはそのDクラス職員を含む財団資産の消費量から実行が停止され、緊急時のみ実行が許可されています。
この度、SCP-XXX-JPの特別収容プロトコルに変更を加える案が協議されていることが私に通達されました。
これは倫理委員会の皆様から現特別収容プロトコルにおける私の精神的負担について抗議がなされ、Dクラス職員および新たな技術を使った収容方法が提案されているといった内容であることも存じています。非常に有難いことです。ですが、私はこの特別収容プロトコルの変更を希望していません。
これは私が永遠にあらゆる悪意、また悪意的な想像を失ったからではありません。たとえDクラス職員であっても、たとえ彼らがこれを喜びだと感じさせられていても、普遍的な倫理の観念から考えれば新たな収容手順は倫理的でないとみなせるからです。
私は必要な犠牲であり、今のところ最小限の被害でSCP-XXX-JPを収容する方法の一つであると認識しています。それだけで十分なはずです。変更の必然性はありません。
私の現状を維持し、SCP-XXX-JPを永遠に私によって収容し続けることこそが、倫理委員会の皆様が求める「財団が人間らしくある」ための最善の収容方法だと進言します。SCP-XXX-JP収容担当員 ██ ███
画像出典:https://www.flickr.com/photos/bergenoff/20946528495/
撮影者:Bergen Offentlige Bibliotek Mandolin Samick fretless

SCP-XXX-JP
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPを含むビルは封鎖され、カバーストーリー「老朽化による崩落の危険性」が適用されています。
説明: SCP-XXX-JPは茨城県████市、████ビル一階に存在する閉店済みのショットバーです。従業員は存在しません。
SCP-XXX-JPの内部に入ると、全ての文章は「満足」を意味する単語の連続へ変換されます。また、内部へ侵入した人間(以下、侵入者)は「満足」以外の言語を記述、発声することはできません。しかし、これらの改変された言語は侵入者にとって全く通常の文章に感じられ、侵入者は通常通りに意思の疎通を可能とします。
SCP-XXX-JPを出ると改変された文章は元に戻り、侵入者は元々の発話能力を取り戻します。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 機動部隊ね-8"企画倒れ"は668-対情報災害装備を支給され、常にSCP-XXX-JP-1を追跡し、SCP-XXX-JPの進行を妨害します。その際、SCP-XXX-JPに関連する情報は全て高危険度情報災害として扱い、アクセスはレベル4/XXX-JPクリアランス所持者に限定してください。アクセス時にはクラスΨ抗情報災害処置を要求されます。
説明: SCP-XXX-JPは日本国内で発生する 「一本満足バー」という名称の栄養調整食品(SCP-XXX-JP-a)の開発研究及び販売計画です。
SCP-XXX-JPを知った人間はSCP-XXX-JP-1と呼称される人型実体へと変化する場合があります。10SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPを進行させ、SCP-XXX-JP-aを完成、販売させようとします。新たにSCP-XXX-JP-1が発生するごとにSCP-XXX-JPの内容は変質し、これまでに3回の大きな変質が確認されました。
SCP-XXX-JP-1には睡眠、食事を中心とする生理的欲求が存在せず、生活の全てをSCP-XXX-JPの進行へ費やしますが、SCP-XXX-JP-1の健康状態は常に良好です。また、各SCP-XXX-JP-1個体は未知の方法で意思疎通を行うことが可能であり、SCP-XXX-JP-1は3ヶ月ほどで「満足」という単語を除いた日本語能力をほぼ失います。
SCP-XXX-JP-aは生産されておらず、現時点では存在しません。以下は情報災害部門によるSCP-XXX-JPの解析から得られた予測です。
完成したSCP-XXX-JP-aについてのあらゆる情報はMitternachtクラス認識災害を引き起こします。暴露者はSCP-XXX-JP-2へ変化します。
SCP-XXX-JP-2が言語の記述及び発声を試みる際、全て「満足」を意味する単語に置換されますが、SCP-XXX-JP-2はそのことを認識できません。また、記述された文章及び発生された音声(SCP-XXX-JP-t、SCP-XXX-JP-v)はSCP-XXX-JP-aと同様にMitternachtクラス認識災害を引き起こし、人間はこれを通常の言語と区別することが出来ず、該当言語話者の場合はその意味を正しく理解します。
SCP-XXX-JP-2は徐々に根源的な欲望を失い、無気力状態へ移行します。SCP-XXX-JP-aの発売から███年後には全世界の出生率が0.01を下回るものと推測されており、この段階でのIK-クラス世界文明崩壊シナリオを回避する手段は考案されていません。
SCP-XXX-JP-1の収容、殺害によってSCP-XXX-JPを停止する試みは、社会的地位の高い収容外の人物が新たなSCP-XXX-JP-1へ変化した事案(詳細は文書XXX-JP-丁を参照してください)によって失敗しました。このことから、SCP-XXX-JPは日本国内の人間の脳内に生息するクラスθ情報生命体であると推測されています。現在、SCP-XXX-JP-1を追跡し、開発を可能な限り遅らせることによって収容が行われています。
収容報告書SCP-XXX-JP
2006年、A-IL11収容手順の実用化を期に、情報災害部門を中心にSCP-XXX-JPの収容作戦が立案、実行されました。精神テストをクリアした███名のDクラス職員及び██名のエージェントを素体としてSCP-XXX-JPを改変し、収容作戦は成功しました。以後、オブジェクトクラスはSafeへ格下げされます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP現象の発生は常に調査・報告され、発生を確認された場合は直ちに関係者の記憶処理とSCP-XXX-JP-1の確保が実行されます。確保されたSCP-XXX-JP-1は発生地点最寄りの人型収容セルを有する収容サイトへ移送されます。
SCP-XXX-JP-1には標準人型異常実体収容プロトコルに加え、収容セル内の適切な自己終了手段の設置が推奨されています。SCP-XXX-JP-1の身元を特定次第、警察組織への情報通達を行います。SCP-XXX-JP-1の自己終了後、死体は一般廃棄手順に従って焼却処分してください。
SCP-XXX-JP-2は一定数のサンプルを残し、焼却処分してください。
説明: SCP-XXX-JPは日本全国で発生する蘇生及びその関連現象です。SCP-XXX-JPは主に葬儀中に開始し、遺体の焼却、埋葬以前の段階でSCP-XXX-JP-1が手を組んだ状態で蘇生されます。
SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPによって完全に蘇生した人間です。身体上、精神上の異常は後述の異常性を除いて確認されていません。
SCP-XXX-JP-2は未知の繊維で構成された糸状の非異常実体であり、SCP-XXX-JP発生時にSCP-XXX-JP-1が手を組んで構成する空間内部に生成されます。SCP-XXX-JP-2は常に裂断した状態で生成され、調査によってSCP-XXX-JPに過度の負荷が加わった形跡が認められました。SCP-XXX-JP-1は一様に「SCP-XXX-JP-2を使用して蘇生した」という旨の主張を行いますが、詳しい使用方法については有意義な情報を得られていません。
SCP-XXX-JP発生後49日以内に、SCP-XXX-JP-1が蘇生以前に犯した犯罪行為12が警察組織に多様な原因13によって発覚します。同時にSCP-XXX-JP-1は犯した犯罪行為をその法知識に関わらず認識し、強度の罪悪感を覚え、最終的には自己終了行為へと発展します。終了を妨害するあらゆる試みは失敗しています。この自己終了行為までがSCP-XXX-JP現象です。
とりあえずは形にしてみました。ここまではただ「死ぬ前にもう一回罪を認識して綺麗な体で死ね」という設定を羅列しただけなので、何かしらこのオブジェクトの背景への取っ掛かりとなるようなインタビューログとかメモとか事案とかが後から加わってくる感じになるんじゃないでしょうか。その辺はむにむさんが何を書きたいかになってくるでしょう。あんまりアイデア部分にどうこう言うのは得意ではないですが、その都度ご相談してくだされば形にする作業はがんばりたいと思います。では。
登場キャラクター
魚住道香(旧姓:西塔)
主人公。人事ファイルの自堕落性・怠惰性は大きく改善した状態です。過去に多数の認識災害に暴露した経験から、目の前のことをあまり信用できず、疑い深いです。串間とは恋人に近い状況でしたが、記憶喪失後友人程度の関係に戻っています(本文では直接的には描写しません。串間の寂しそうな様子から何となく察させる程度に留めたいと考えています)。
全体的な感情の流れとしては
エージェントとしての経験による根底的な世界への絶望→夫との出会いによる、不安を含む希望→夫の死による絶望の復活→世界への不信感、無力感による「子供を精一杯育てる」という目標達成への不安→保育士として希望を語る串間への不信→信用ならない世界が唯一の支えである胎児を殺すことを恐れ、胎児殺害
という流れとなります。
串間小豆
主人公の数少ない旧来の友人です。部署が違うこともあって仕事上での関わりは殆どありませんが、持ち前の包容力から信用されています。勤務している託児所で1度収容違反を経験しており、乳幼児の犠牲者が複数出ました。
主人公にとって心の支えであると同時に、物語上で希望の象徴です。串間が一度収容違反という絶望に立ち会いながらも懸命に子供達と接し続ける姿は主人公にとって希望でしたが、不安によって「辛い目に遭った癖に希望を語るな」という歪んだ視点で見てしまうようになり、支えではなくなりました。
魚住映司
端役です。生前は主人公にとって希望の象徴であり生きる意味でしたが、死後は無慈悲な世界の象徴となります。魚住という名字は表札とかでチラ見せするぐらいで、わかる人にわかる程度のものとして扱えたらいいかなと思います。
あらすじ
全編道香中心の三人称視点。
初秋、妊娠している道香が夕方にサイト-81██の通路でスマートフォンを手に立っている。どことなく虚ろな雰囲気で、服装も雑。しばらくすると託児所での勤務時間が終わった串間が現れ、道香と共に歩き出す。串間の服装は道香と比べると綺麗。道香は串間を信頼している。
道香は経過が順調であることを串間に告げる。串間から子供の扱いをどうするかの質問があり、地の文では財団職員の家族に関する規定について説明がなされる。道香は適当にはぐらかし、落ち着いて話をしようとサイト内のカフェテリアに入る。
道香はカフェテリアに入ってからしばらくぼんやりとしてこれまでの生活を思い返す。道香は記憶障害を抱えており、生きる意味をほとんど見出だせずに惰性に従って職務をこなす日々を過ごしていたが、夫と出会うことで生きる意味を見出した。串間とは記憶障害以前相当親しい仲にあったようだが、それは道香にとってもう失われたことだ。
妊娠時の夫は素直に喜んだが、道香は喜びつつも内心で不安を抱えていた。エージェントとしての経験から世界の理不尽さを知っているため、幸せを失うことを恐れる。一旦素直に幸せを享受しようとしたものの、夫が死亡してますます世界を信じられなくなり、徐々に自堕落に戻っていく。
場面はカフェテリアに戻り、道香の様子を心配した串間が託児所の子供の話をしてそれとなく励ます。道香は串間が収容違反に遭遇したことを知っているため、世界の残酷さを知っていながら明るく振る舞う串間に不信感を抱き、孤独を感じて別れる。
串間という唯一の支えを失った道香は徐々に散らかり始めている部屋に戻る。串間との会話を思い出し、希望を持つ彼女に対して劣等感を抱く。「守り切れない」という確信を持ち、夫と過ごした証である胎児を世界の理不尽さで失うことを恐れ、「苦しむ前に殺すのが親心」という正当化をしつつ胎児を引きずり出す。夫と串間への謝罪。なぜか串間への方が謝罪が重いが、道香自身にもその理由がわからない。
痛みと自責の念でボロボロになってエンド。(天使はこの辺に〆の文/台詞として盛り込む)(「さよなら、私の天使」とか?)

初秋の空は暗澹と濁っていて、空気は適温でありながら身体に纏わり付くように不快だ。
一人の痩せた妊婦が、薄暗くなりつつあるサイト-81██に佇んでいる。一目見ればわかるほどに腹は膨らんでおり、左手は新たな命を内包した膨らみの下に添えられている。だが薄汚れて皺を残す服装、落ち窪んだ目で作られる強張った表情は妊婦に相応しくはない。彼女は通路の端でスマートフォンを取り出したまま、それを弄るでもなく宙を見つめて立っている。緩んだ紐で吊るされた人形のような不安定さがある。
妊婦は休暇中のエージェントだった。彼女は昨日の夜に友人の職員へメールを送り、サイトまで訪ねる旨を告げた。間もなく相手の勤務時間が終了する頃だ。サイトへ来るのは数ヶ月振りでそれなりの人員が異動していたが、相手は数年間変わらずにここで勤務している。
妊婦の立っている場所はサイト-81██の託児所から程近い。サイトの表の顔であるフロント企業事業所に勤める母親達が入れ替わり立ち替わり、若く痩せた妊婦の前を通って子供を迎えにやってくる。彼女達のほとんどはこの世界のことを何も知らない。妊婦は表情に出さないように、静かに奥歯だけを噛み締める。また一方では、夜勤らしい親達がちらほらと子供を連れてやってくる。夜間保育に頼ろうという者達の中にはいくらか妊婦が知っている顔も目に映ったが、それは安心材料にはならなかった。妊婦は深く息を吸い込んで、吐いた。
目の前を通り過ぎる親子達に視線を移す。妊婦は子育てについて様々な情報を事前に仕入れていたが、幼児の生態は相変わらずよく分からなかった。歩いている子はどれも今さっき歩きを覚えたばかりのように、短い足で懸命に親に付いていく。もっと小さな子は親に抱きかかえられるかベビーカーに乗るかして去っていく。どちらにせよ親とぴったり寄り添って移動するその姿から、妊婦はどうしようもない不安を受け取った。今抱えている命の行方が否応なく自分によって左右されてしまう感覚はとても危ういものに思えた。
この妊婦は元来姿勢が悪いのだが、下手に腹を圧迫する訳にもいかず、結果として背骨の曲がり具合は数ヶ月で劇的に改善していた。それがまた胎児に振り回されているように感じさせた。結局の所、彼女にとっての妊娠してからの生活とは、いかに子供と母親が強固な拘束によって結びついているかということを実感させるものだ。子供は母親を束縛する。
相変わらず見もしないスマートフォンを持ちながら、妊婦はお迎えラッシュを終えて落ち着き始めた託児所に目を向ける。待ち人はあくまでもゆったりと託児所から出てきたが、その足取りは待っていたこちらに一切の苛立ちを感じさせず、むしろ安心感を与えた。それを見て初めて妊婦はスマートフォンをしまう。
「お待たせ」
「うん」
「話があるって?」
「ああ。まあ、歩きながら話そうか」
相手は串間という保育士で、妊婦とは長い付き合いらしかった。らしかった、というのは、妊婦がそれを記憶していないからだ。諜報を担当するエージェントに起こりうる事案の1つには記憶障害がある。そしてどうやら、妊婦が失った記憶の一部は串間に関するものらしかった。串間からは決してそのことを口に出しはしなかったが、態度は如実に以前の親密さを思わせた。妊婦は串間のことを信頼していたが、それは記憶障害後の関係の積み重ねによるものであって、前の自分に影響されたものではないと信じている。記憶の有無は少なくともこの関係に障害をもたらさないものだと判断し、妊婦は記憶に執着していなかった。
串間の服装はいつも丁寧にまとまっているように見えるが、今日は一段と綺麗に感じた。妊婦は袖や襟のよれた自らの服装と串間のそれを比較しているのかもしれなかったし、人間として串間に劣等感を抱いているのかもしれなかった。並んで歩くとますます自分が萎んだスポンジのような情けない存在に思えた。妊婦は歩きながら串間の横顔をそれとなく眺めて、今朝鏡で見た自分の顔と無意識に照らし合わせていた。それがまた劣等感の材料になっているのは言うまでもない。
「道香」
思考が独り歩きしていた妊婦は、名前を呼ばれて初めて反応した。瞳を串間に向けると心配をそのまま顔面に塗りたくったような表情をしていて、道香という妊婦は内心で思わず笑い出しそうになった。笑うことによって目を背けたくなるほど、自分の考えが惨めだった。串間が確かめるようにもう一度話しかけてくる。
「話があるんだって?」
「まあ、うん。この前安定期に入って、最近はこの回りを散歩なんかしてるんだけど」
「順調?」
「キツいけど、順調。多分。産むまでは」
会話のリズムに空白が生まれ、串間の「そっか」で閉じられた。串間のこういった振る舞いが道香にとって楽で、嬉しかった。財団の保育士として様々な相談を受けてきた串間は、既に道香の言いたいことをある程度察しているに違いなかった。
財団において職員間での新生児がどのような扱いを受けるか? それはつまり、新たな人材であると同時に最も危うい情報漏洩の窓口、管理が求められる対象である。十分な素養が認められれば財団と関わることもあるだろうが、七割以上のケースで子供は親の仕事を知らずに死んでいく。道香は明確なデータに触れたことがなかったが、自分の経験や周囲の情報から、職員の子供は特に情報災害系のオブジェクトと接触する確率が高くなる傾向にあるだろうと考えている。もし今抱える子供が将来そういった危険に晒された場合、例え対象が道香の手に負えるものではなかろうと、原因の一端は道香にあることになる。
「どうするの?」
そんな前提を共有した上での串間の質問は限りなく深い意味を持った。道香が財団のエージェントである限り、いいや、財団のエージェントであったという過去があるだけで、子供は生まれる前にその扱いを尋ねられなくてはならなかった。道香は視線を逸らし、ごく自然にカードキーを取り出してスライドロックを通し、ある扉を開く。一見すれば良くあるセキュリティだが、これは先程帰っていった母親達には決して通過できないものだ。串間と共に扉を通った向こうには事業所と全く異なる空間が広がっていて、主に研究者が白衣を来たままあちらこちらへ行き交っている。私服やスーツの職員は事務員かエージェント達だろう。道香にとっては久方ぶりの空間だった。
基本的に、財団職員が子供に対してできることは2つしかない。こちら側に引き込むか、一生隠して生きていくか。道香は落ち窪んだ目を串間から逸らして軽く溜め息をつくと、足を若干速めた。道香はそんな自分の態度を嫌悪したが、串間はあくまでも優しく寄り添う。道香は串間の立っている側から自分の身体が分解されるような錯覚さえ覚えた。この吐き気が悪阻のせいなのかどうかもわからない。
サイト内でフロント企業が営業するカフェが見えた。こういった場所でなければ財団内の話はできない。どうにか唇を動かして「座ろう」という言葉を絞り出した道香は、歩きながら少しだけ串間との間隔を狭めた。無言で足を運びつつ、道香の意識は時間を遡る。ここ数ヶ月、徐々に以前の自分に戻っているような気がする。いいや、そもそも以前の自分なんて存在したのだろうか?
数年前、道香は一つの出会いを経験した。
それまでの人生は道香にとって、擦り切れたカセットテープのように曖昧で頼りないものだ。毎日毎日、認識災害やミーム汚染を纏って近づいてくる様々な連中の相手をし続けていた。悪意のあるものもあればそうでないものもあったが、道香の持つ常識はいつしか「見るな、触るな、信じるな」になっていった。奴らの相手をしてから狭い家に帰っては、痩せた自分の身体を抱いて眠った。それすらも幻覚で、目が覚めたらサイトのベッドで天井を見上げていたこともあった。数え切れないほど記憶処理剤の匂いを嗅いでは、頭痛を抱えて報告書に向かった。
串間は比較的、道香の中で確かなものの一つだった。記憶障害前とはその関係性は大きく変わっているようだったが、道香は全くそのことを気にかけなかった。乱雑な毎日の中で時折メールを送って適当な場所で待ち合わせ、乱雑なそのままの自分を串間に見せられるのは心地が良かった。串間は決まって口数少なく道香を受け入れ、道香はそれに対して何気なく笑ったり泣いたりした。決して規則的とは言えない道香の休暇の間を縫うようにして串間と会うようにしていた。
ただ、これは楽なだけだ。道香は串間を信用していたし、共にいれば満たされるような存在でもあったが、裏を返せばそれ以上踏み込むようなことはしないし、しようとも思わない。時間を過ごすごとに、だんだん串間の方から道香を誘うようになっていったが、道香はそれに息苦しささえ感じた。
串間は道香に比べてあまりにもしっかりと前を向きすぎていて、それは道香との任務の違いや認識災害オブジェクトのせいにできるようなものではなかった。串間に甘えている自分を認識する度に嫌気が差し、そして串間と会うことをやめられなかった。そして道香は串間を決して家に上げなかったし、あちらの家にも行かなかった。ここでの信頼とは、その程度のものだ。
のちに夫となる映司と出会うのは、そんな記憶障害後の日々に流され続けていた頃だ。
客観的に見れば特に珍しくもない陳腐な成り行きで、結局どこまで行っても道香が凡人というだけの話なのかもしれなかった。夫との縁と言えばたまたま任務が一緒になったぐらいのもので、劇的な事件や変化といったものは含まない、実に何気ない関わりの一つだった。だから、却って安心した。私が特別ではない、ということを改めて認めさせてくれる拠り所として映司は機能しているように思った。全てが頼りなく霧に覆われたような毎日の中で、映司は徐々に串間よりも確固たる錨として道香を繋ぎ止めるようになった。
ぐちゃぐちゃの毎日の中で初めて映司をそう意識したのは、確か初秋の夜だった。
昨日も一昨日も明後日も混じり合うような意識の中で、気が付くと道香はただの同僚だったはずの映司と2人で道を歩いていた。オレンジ色の街灯の光が疲れた目に突き刺さったのを覚えている。その時も道香は相変わらず酷い格好をしていて、隣を歩く映司は妙に緊張してしきりに眼鏡の位置を直していた。改めてよく記憶を掘り起こしてみれば、どうやらそれ以前に食事の約束をして、何度か会って話もしていたような気がする。自分との食事の約束が人をこう左右できていると思うと、妙におかしく思えた。と同時に、道香は今の自分の何もかもが荒れた状況をより客観視する機会を得た。
正直その後の食事のことはほとんど忘れてしまったのだが、始まったのは確実にその日だったのだろうと思う。有象無象の中から一人を拾い上げて意識するのは久々だった。
映司には私から何かを与えたい、と思った。
少しずつ、本当に少しずつではあるが、道香は変化していった。週に数度、映司が恥ずかしそうに食事に誘ってくる度に心が踊った。隈が薄れるようにできるだけしっかり眠るようにして、部屋に散乱した何かの残骸や脱ぎ捨てた靴下を畳んであるべき場所へ戻し始めた。服を選んでから外へ出るようになった。ものを食べる時に、心からおいしいと言えるようになった。目元を引き攣らせながらではあるが、笑えるようになった。じれったさを感じたり、自分から他人に歩み寄ることを覚えた。人間一人がしっかり傍にいてくれるだけで、失い続ける日々からは簡単に脱却できると知った。
この頃から、串間とも何も気にせずに関われるようになってきた。串間と話す時に付随する劣等感は拍子抜けするほどあっさりとどこかへ消えてしまい、自分の笑顔が機能していることに自信を持てた。串間の反応からしても、明らかに自分が変わっていくことを道香は実感していた。会う時間は当然のように短くなり、間隔は長く空いたが、その時間はより濃密に道香を癒すようになった。
別に任務が楽になった訳でも、接するオブジェクトが生温くなった訳でもない。記憶処理剤の副作用の頭痛はどうしようもないし、何事も無く家に帰ってきたかと思えばサイトのベッドで天井を見上げることもあったし、時々帰ってこられなくなる仲間がいるのは今まで通りだ。だが道香には今や、それらを乗り越えるための積極的な理由が生まれていた。帰ってベッドに寝転がるのは同じだが、道香はそこで隣に誰かの体温を感じるということがどれほど重大であるか、既に思い知っていた。
数年を経て、結婚からほどなくして妊娠がわかった時には、道香は29歳になっていた。
店員に2人席へ案内され、向かい合って座る。串間が上着を脱いで椅子にかけるのを眺めながら、どこかでまた自分の状態を恥じ、串間に申し訳なく思う。これ自体、随分と久々の感覚だ。背を曲げて前のテーブルに身体を預ける訳にはいかないので、椅子に深く座り直して、背もたれに体重を預ける。身体のあちこちが、内部からの圧力で張っているのを感じる。
串間の注文する声が聞こえ、道香も何か店員へ単語を言ったような気がする。普段気にならないような珈琲の匂いや誰かの話し声やコップから立ち上る湯気がやたらと感覚として突き刺さって、その中で串間の声だけが道香に伝わってくる。自分の伝えたい意志はあるが、何を言っているかの詳細がわからない。
「道香。大丈夫? 具合悪いの?」
「いいや。それより、あれだ、話をしよう」
「話ってなに?」
「別に、話ってほどの話でもないんだけど……串間は、なんか、話したいこと無い?」
「私が話すの?」
「うん。ごめん、変だな。こっちが呼んだのに」
「あはは。いいよ、面白い話はいっぱいあるんだ」
目が眩むほど、串間の笑顔は純粋に見える。それじゃあ、と言葉を続ける串間に歪んだ笑みを返しながら、道香の意識は不躾にもかつての夫の笑みへ向き始めた。
確か、あの時の夫は今の串間よりもずっと嬉しそうで、茫然としている道香を何も言わずに抱き締めていたように思う。道香が改めて「ああ、変わるんだな」と実感するのはそれからもう少し後のことだ。道香の周囲は目まぐるしく変貌していったものの、道香自身の心境がそれに追いついていなかったのだ。急に家にいる時間が大幅に増えて、何をしていいのかわからずにぼんやりとしていた。服を替え、生活習慣を変えた。部屋には知人から勧められたものや、自分で調べて買った本が増えていった。
妊娠に伴う体調の異変は、何よりも明確に道香へ胎児の存在を知らせてきた。道香の悪阻は重く、それは胎児から母親への全力の存在の主張、訴えにも似たもののように感じられた。吐き気や眠気、手足の怠さを感じる度に腹の中の命を意識せざるを得なかった。拘束じみた「私を認識しろ」という叫びに対し、道香は夫とともに精一杯応えた。また一つ、道香を繋ぎ止めるものが増えたのだった。
相変わらず多くない知り合いからは妊娠に際して素直な祝福と励ましを受け取り、その代表である串間とは会えば専ら子供の話をしていた。道香は串間が話す託児所の子供の話をより前のめりな態度で聞くようになり、串間はそんな道香へ喜んで多くの話をした。妊娠を切欠に二人は共通項を増やしたと言えるだろう。串間の話す子供達の姿はどれも生き生きとしていて、水面下で道香の背を支えた。腹に気を付けて歩く別れた後の道は、以前よりずっと気楽なものだった。
忘れていたとは言わない。認識しただけで脳が擦り切れそうになる、理不尽を押し固めたような奴らのことを忘れたことはない。でも、道香の意識はやはり以前とは変わりつつあり、夫がエージェントであることを覚えていながらどこかで忘れていて、だからあの日端末が鳴った時も何でもない表情で机から端末を取り上げ、メッセージを表示して、それを見た。
夫はごく平凡に、身体を数メートル超の紐状に捻り伸ばされて死んだ。
「道香」
串間はもう心配するような視線をやめた。顔を覆うように手を当てている道香を覗き込むようなこともしない。ただ少し声のトーンを落ち着けて、ゆっくりと道香の名前を呼んだ。道香の吸う空気はやたらと不味く、目の前の珈琲は全く口をつけられないまま冷めている。串間の話は端々だけが耳にこびりついていて、そのどれもが鮮明に串間と子供達の輝きを瞼の裏に映し出した。息が荒れているのを道香は自覚し、意図して落ち着けようとすると喉回りが強張った。視界が一気に暗くなる。
どうにか呼吸を整えて前を向く。視界は暗いままだ。串間はおそらく今日も子供に向けて様々なことを語っただろうその口を動かして、柔らかい声をこちらに投げる。数年間心地良く受け取ってきたはずの声が、何故か道香を引っ掻くように感じられる。呼吸を整えた喉で道香は喋り始める。自分でも意図しなかった方向へ会話を進めてしまうような気がする。夫の死亡状況に関するファイルの内容が散発的に頭に浮かんでは消える。
「串間」
「うん」
「ここはレベル0区域だけどサイト内で、私達の周りには関係者しかいない。そうだよね?」
「そうだよ」
「うん。じゃあ、これから私は串間にすごく嫌なことを聞くと思う。多分このサイトの人間は誰だって思い出したくないようなこと」
「そんなのは沢山あるんじゃない?」
「沢山、そうだな、畜生、沢山あるんだよ。でもその中でも嫌なやつ」
道香は徐々に自分が早口になって、串間と目を合わせなくなっているのを自覚していた。ここまで言えば串間には確実に何のことかわかるはずだった。収容違反は関係者ならほとんどは経験する。ただ、串間がこのサイトに来てから10年も経っていないし、その間彼女が経験したもの、そして道香が言い表したようなものは多くない。道香はその現場に立ち合っていなかったが、インシデントログへのアクセスは許可されている。
串間は収容違反に遭遇したことがあった。その事自体は特別に珍しいことではない。例え串間の目の前で何人の同僚や子供が黒く焦げて崩れていったとしても、財団において最悪の事態とは到底言い難い。それは道香も串間も理解していることで、だからこそ道香は自分の考えが腹立たしかった。なぜだ? なぜ自分は今更串間の身に起きた不幸を掘り返そうとしているのだろう? ぐらぐらした目で串間を見ながら、脳裏で記憶が蘇る。
夫と出会ってしばらくしたあの日、道香は任務のために串間と会わず、またサイトにもいなかった。端末に受信した連絡でその収容違反の発生を知り、任務の定期報告を終えたその足で串間のいるサイトへ向かった。勤務する殆どの職員は無事で、記憶処理・資料偽造チームだけが慌ただしくあちらこちらへ連絡したり、記憶処理剤を詰めたスプレー缶を持ってサイトを出たりしていた。道香はそういった風景を横目に流して託児所へ向かった。
道香がサイトへ着いた頃には託児所から進入禁止のテープは取り払われ、そこには子供と保育士の何気ない空間があり、串間は普段通りに絵本を読み聞かせている最中だった。ただ、部外者の道香でも一目見ればわかるほど、子供の数は減った。串間の姿を確認しに来た道香は、ひとまず安心して託児所を通り過ぎた。串間が記憶処理を受けているにしろそうでないにしろ、あれだけ全く普段通りに動けていれば心配はないと判断したのだった。道香の知り合いの幾人かはこういった事案の後で自ら潰れかかっていたことがあったが、そういう場合は間違いなく兆候が出ているものだ。
結局は、その後の串間は何ら変わり無く、お互い事案について露骨に避けることもなければ、積極的に触れることもなかった。後に串間が記憶処理を受けていないことがわかったが、当時の道香はそれを聞いても串間への対応を大きく変えようなどとは全く思わなかった。当時は。
何故だろうか? 今の道香には違って見える。記憶処理剤も使わずにこうして自分と相対する串間が全く異なる人間に見える。その大きくて丸い目を見ていると息が荒くなって、道香は視界がますます揺れるのを自覚する。夫の遺体を思い出して、インシデントログに添付されていた子供の遺体の画像を思い出す。財団において、「グロテスクである」という理由で内部向けの資料が検閲されることは殆ど無い。折り畳まれて納棺される夫の遺体を何度も想像したが、道香はそれを忘れたくなかった。
子供の遺体の画像をもう一度脳裏に浮上させる。顔と細い手足は黒く焦げ、端から崩れて欠片が散らばっていた。出来損ないのクッキーのような惨状と今の串間を重ね合わせて、再び信じられなくなる。あんなものと向き合いながら、ずっと子供に向かって笑顔で接するって? 目の前の串間は道香の言葉を待って、じっとこちらに視線を合わせている。それはいっそ暴力的なほどに道香へ突き刺さる。
道香は浅い呼吸を繰り返しながら、串間を見た。一つ深く息を吸って、何も言えずに吐いた。歯や舌に触れて流れる空気はひどく不味い。カフェに充満する珈琲や紅茶や人の声は全てが薄っぺらく、串間の存在が重く暗く道香を歪めていくのを感じる。心配と同情と慈愛を押し固めたような串間の表情がこちらを圧迫し、身体の内側からは胎児が休むこと無く存在を叫ぶ。口を開けるというより、否応なく開けさせられ、息が吸い込まれ、喉を震わせて言葉を発する。
「串間は、子供が好き?」
本当に自分はこんなことを聞きたかったのか?
「もちろん」
もう耐えられそうになかった。
道香は「魚住」と刻まれた自宅のネームプレートの前で立ち止まる。カフェからここまでの記憶は極端にぼやけていて、串間に何と言って別れたのかも思い出すことが出来ない。きっと別れ際も、串間はあの突き刺さるような目で道香を見ていたのだろう。
胎児はまだここにいる。道香は串間にはなれないだろう。夫が欠けていることが恐ろしいのではなく、夫を欠けさせたものが恐ろしいのだから。結局の所、道香は自分を理解しているようで何も理解できていなかった。串間を改めて観察して、子供をあんな人々と共に生きて行かせる自信は足元から瓦解しかかっていた。
道香の子供は、串間のように生きていけるだろうか? きっと無理だろう。道香は記憶処理剤が全てを解決してはくれないことを知っている。憶えていない同僚の顔を知っている。憶えていない理不尽の塊を知っている。箪笥の裏、自動販売機の上、目覚まし時計の中、隣の部屋の鍵穴、普段自分が見えない場所にいるかもしれない連中のことを既に知っている。そして、奴らが跋扈する、このどうしようもなく窮屈な世界へ子を産み落とさなくてはならないことを、知っている。自宅の鍵穴に鍵を差し込み、回す。開けた向こう側に何があるのかを、道香は知らない。
家を出る時と何ら変わりないマンションの一室だ。道香一人には広すぎる。
以前は家に入ってからどうしていたのか、道香はほとんど忘れかかっていた。常に腹を意識して行動する以上、即座に布団に倒れ込むようなことは間違っても出来ない。ハンドバッグを床に直接置き、リビングへ入り、ソファに座って呼吸の速度を調整しようとする。過剰に行われる瞼の開閉が視界を明滅させる。しっかりと腰を下ろしたはずなのに、鼓動と共に身体が揺れる。目の前に暗い幕が降りそうになる。
どうしてだろう、と思う。どうして? あまりにも信頼できるものが少なく、数少ない拠り所さえも手の平から零れ落ちてしまうのだろう? 何気なく腹を撫でる。それは慈愛というよりも不安げな指で行われ、胎児にむしろ悪影響を与えるようにさえ思えた。この子の将来に恐怖を覚えれば覚えるほど、撫でずには居られなかった。この感情は独りよがりとさえ思えるような、およそ母の態度とは到底認められないものだ。ソファの前の消しっ放しのテレビは母親ではなく、恐怖する三十路の女の姿を反射する。
道香は自身の中で粘性の黒い液体が沸騰するのを感じていた。それは間違いなくエネルギーを供給するものだったが、同時に決して前を向かないものだった。自殺願望とはまた異なる種類の一種の破滅欲求が道香の四肢の隅々まで行き渡るのに、そう時間はかからなかった。視界が急激に色褪せて狭くなっていく。外の車の音、やや暗い蛍光灯、空虚な二人分のベッドがファミリーマンションの一室を際限なく広げ、道香はその中で取り残された。最早採れる選択肢は皆無と言っていい。
道香は家庭内で肉を切り裂くに足るいくつかの物品を半ば意識を手放しながら並べ始めた。包丁、裁ちばさみ、キッチンバサミ、コンクリートブロック、電動ドライバー、金槌。掘り返してみればあるものだ。こちらの観察する目が変わるだけで、周囲はこんなにも変貌する。夫によって世界が希望に満ち、夫の死によってそれが失われたように。いいや、道香は夫のいる間、世界から目を逸らしていただけだ。希望や前進は、都合の悪いことに目を瞑ってのみ得られるものだと道香は信じていた。
床に器具を並べたまま道香は数分間呆けていたが、やがて手はより効率的な手順を求めて動き始める。既に限界は超えている。切迫した使命感にも似たような自我が道香を突き動かし、胎児をこの世界に出会わせずにおくべく行動がなされつつある。道香を支え、縛ってきた一つの命は明らかに道香にとって恐怖の対象となり、切り離すべき道香の一部だった。それは余りにも無力で、無責任で、身勝手な生命だと道香は見做してしまっている。もうこれ以上、面倒なんて見切れやしない、と。それは擦り切れた精神が出した結論だ。
妊婦自らが胎児を引きずり出すのに必要なものは、既に道香の手元に揃えられた。手荒く、勢いに任せて、恐怖のままに、道香は腕を振る。
柔らかい骨が砕ける音がして、肉の千切れる音に続く。道香の視界は赤黒さに満たされ始めている。痛みと異物感が下腹部で爆発しながら胃袋を押し上げる。嘔吐しているのかもしれない、と認識した。腕はまだ動く。道香は見る必要がある。完全に可能性を断ち切る以上は、責任を持ってこの子を潰す必要がある。引き出し易いように骨を潰して、下から刃物が子を探す。押して、引き出す。準備の整っていない産道が力任せにこじ開けられ、本来の機能を無視して排出口として働き始める。
道香は明らかに異常に、失神することなく腕を動かしていた。やはり記憶処理は解決してはくれないんだな、と思って、数種類の液体が止め処なく床を汚していくのを見ながら腕を動かした。間もなく目的は達成される、という確信があった。下から侵入する刃が異物を捉えつつあり、柔らかい肉と皮膚と骨の塊のようなものは開かれた道を外へ進行させられようとしている。すぐだ。もうすぐにでも、終わらせられる。顔が冷たい。泣いているのか汗なのかは分からない。とにかくあらゆる液体が道香を覆うように流れている。道香は口を開く。
下腹部で塊が蠢いている。道香は手を生温い液体で汚しながら、どこか頭が冷めていくのを感じる。囁くような人々の声が耳元をくすぐっている気がする。不思議と、夫の声が聞こえない。串間が大半を占めて、耳元で道香の名前を呼んでいる。何をしているんだろう? 串間がその目で刺すように道香の手元を見ているのを感じる。何をしているんだろう? 道香。一体何をしているんだろう?
自分が何をしているのかは既に認識されていたが、付随するべき感情は遅れてやってきた。酷い臭いがする。視界が揺れながら明るくなり、床の様子がくっきりと見え始める。口元が胃液と唾液で濡れていて、意識は急速に薄れ始める。それなのに、周囲はますます鮮明になってゆく。口は開かれたままだ。
歪なヒト未満の肉塊は、いつの間にか道香の目の前に棄てられていた。助けを求めるような臍の緒は、道香に向かって伸びた途中で絶たれている。
道香は項垂れるようにして動きを止めたまま、その残骸を眺めている。
カノン「磨り減る職員達」
概要
これはukarayakaraによって製作されるTaleシリーズです。このシリーズにおいて語られる財団は至って普通のものです――世界は滅んでおらず、財団は問題なく収容活動を続行しています。
このTaleシリーズはストーリーラインを持ちません。以下の設定のみを共有します。
- 異常性を持つ職員は特殊寮で監視される生活を送っています。
- 職員達は、よっぽどのことがなければ職務にとてつもなく忠実です。なければね。
- 財団の福祉制度は充実したものです。
- いわゆるイカれた財団職員はいません。彼らは人間として生まれて、組織の一員としてふさわしい社会性を最低限身につけています。
- 財団は非常に強大です。
- 人事ファイルの設定はほとんどのケースで遵守されません。
- 各Taleにおいて、職員は死亡するか、死なない程度に傷付くか、開始前に死亡しています。
共通するのは、財団日本支部においてもはや100件を超えた人事ファイルをもっと悲惨に、血みどろに、苦悩に浸らせながら活用する場であるということです。キャラクター達はその苦痛によって大いにリアリティと魅力を増すはずです。もちろん、苦痛のための幸福は彼らに与えられるべきでしょう。

SCP-1000-JP
アイテム番号: SCP-1000-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8181の標準非生体収容室に収容されます。実験目的での直接接触は2人以上のレベル4/XXX-JPクリアランス保有者の許可が必要です。レベル4/1000-JPクリアランス保有者は文書1095-1000-JPの閲覧を義務付けられています。
説明: SCP-XXX-JPは縄状の実体です。SCP-XXX-JPに直接接触した人間は直ちに強い諦念及び絶望感を認識し、SCP-XXX-JPを使用して縊死による自己終了を試みます。この時点で妨害を行いSCP-XXX-JPと接触者を引き離せば、更なる異常性は発現しません。
SCP-XXX-JPによる自己終了が成功すると、接触者の意識のみが蘇生します。脳組織及び神経系を含む接触者の生体組織は通常の死亡時と同様に機能を失いますが、接触者は不明な方法で発声を行い、意思の疎通を可能とします。この状態の接触者をSCP-XXX-JP-1に指定します。
接触者がSCP-XXX-JP-1に変異した段階において、SCP-XXX-JPとSCP-XXX-JP-1は分離及び移動が不可能になります。切断による分離の試みは、いずれも瞬時の修復によって失敗しました。必然的に、SCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-1は接触者の縊死時点と全く同様の位置関係を維持します。
SCP-XXX-JP-1の頸部の腐敗がある程度進行すると上記の異常性は消失し、ほとんどの場合SCP-XXX-JP-1の頸部は自重を支え切れずにSCP-XXX-JPによって切断され、SCP-XXX-JP-1は異常性を喪失した通常の死体となります。
文書1095-1000-JP
財団データベースとの照合が完了しました。
このアクセスは財団システムに記録され、不正な接続及び当文書の公開、複製は財団一般保安規約第11条第47節に従い、終了処分もしくはそれに相当する降格をもって処罰されます。
端末の設定に従い、文書1095-1000-JPを日本語で表示します。
文書1095-1000-JP-1
アイテム番号: SCP-1000-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-1000-JPに関する情報はレベル4/1000-JP以上のクリアランス保有者のみに限定的に公開され、当該クリアランスを与えられる職員は81地域ブロックとの接触の一切を禁止され、それに同意するものとします。SCP-1000-JPの全容はプログラム-E84"労働組合"によってのみ記録・管理され、職員に公開されることはありません。
81地域ブロックにおいて、SCP-1000-JPの実行及び拡散を遅延させる非危害性の情報ワクチンを含んだSCP-1000-JPのレポートが一般職員に対して公開されます。機動部隊じ-2"ライフライン"は対情報災害プロトコルを用い、それぞれの隊員は全容を把握しないままにSCP-1000-JP関連情報の調査、検閲、削除を行います。
SCP-1000-JP-1はサイト-81██の非生物オブジェクト収容ロッカーに収容されています。直接接触及び視認は許可されていません。レベル4/1000-JPクリアランス保有者は当文書を含む文書1095-1000-JP全文の閲覧を義務付けられています。
説明: SCP-1000-JPは日本列島及びその周辺海域で実行可能な、非常に簡易な動作手順です。その性質上、実行者は非常に大規模な組織内において異常存在に関する知識及び経験を会得している必要がありますが、それ以外のほとんどの条件を必要としません。ここでの異常存在は、その異常性の種類や危険性を問いません。
SCP-1000-JP-1はSCP-1000-JPの結果として作成される縄状の実体です。SCP-1000-JP-1を使用して自己終了を試みた人間は、あらゆる妨害に関係なく100%の確率で即座に死亡します。この死亡は使用とほぼ同時に完了し、その即時性から一切の苦痛を伴わないものと推測されています。
日本列島内の日本人財団職員が不明な経路でSCP-1000-JPを知る事案が相次いでいます。SCP-1000-JPが日本人、もしくは財団職員の脳内に生息する情報生命体であるかどうかは未判明です。
19██年、SCP-1000-JP及びSCP-1000-JP-1に関する断片的な情報がサイト-8181で確認され、SCP-1000-JP-1を使用した職員の自己終了事案の発生後、SCP-1000-JPが発見されました。SCP-1000-JP収容チームは直ちに現在の特別収容プロトコルを制定し、SCP-1000-JP関連情報を一般職員から削除しました。
SCP-1000-JPの情報が日本列島内の日本人職員へ知られるペースは緩やかな上昇傾向にあります。
補遺: SCP-XXX-JPの発生要因及び対処法について、職員の業務効率上昇及び忠誠心の向上を目的として進行中のξ-34計画が81地域ブロックの財団職員へ多大な精神影響を与えているとし、関連性が指摘されました。ξ-34計画実行委員会との情報共有の上、関連性を検証するための共同実験が実施予定です。実験は実施されました。補遺-2を参照してください。
参考資料:ξ-34計画 詳細情報
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補遺-2: ξ-34計画とSCP-XXX-JPの関連性が認められました。実験の結果、当該計画は明らかにSCP-XXX-JPの漏洩を速めています。ただし、ξ-34計画は職員への広範なミーム投与を行っているため、当該計画を利用した効率的なSCP-XXX-JP収容案も考案されており、計画を続行するか否かは審議中です。審議は終了されました。補遺-3を参照してください。
参考資料:ξ-34計画の強化によるSCP-XXX-JP収容案
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補遺-3: ξ-34計画は完全に凍結されました。その存在はアーカイブされ、詳細データは当システムから破棄されています。詳細データを要する職員は、監督者会議までお問い合わせをお願いします。
文書1095-1000-JP-2
文書1095-1000-JP-3
対象: 山中研究員
インタビュアー: モスタファ博士付記: 山中研究員はSCP-1000-JPを想起し、SCP-1000-JP-1の使用未遂に至りました。
<録音開始>
モスタファ博士: なぜ、あなたはあの縄の作り方を知っていたのですか?
山中研究員: その、思い付いたんです、パッと。本当に、何の脈絡もありませんでしたよ。
モスタファ博士: それはいつのことですか?
山中研究員: 縄を作る丸一日前です。サイト-81██の食堂でご飯を食べてて、ふと――(言い淀む)モスタファ博士: 山中研究員?質問には正直に答えてください。
山中研究員: ええ、はい、わかってます、記録されていますからね……嘘なんて無駄です。
山中研究員: なんで僕はここで働いているのかって、疑問に思ってしまったんです。モスタファ博士:それは、世界人類のためではありませんか?
山中研究員: 違う、そうじゃないんです、僕はそんなことを聞きたい訳じゃない。違う。違うんだ。
モスタファ博士: しかし、それが我々の目的であることに代わりはありません。
山中研究員: それは分かっているんですが……こう、違うんです。
モスタファ博士: 山中研究員、あなたの気持ちをそのまま言ってくださればいいのです。インタビューはそういうものなのですから。財団がこれであなたに処分を下すことはないでしょう。
山中研究員: はい、ええと、その……僕達は、なんで、何のために生きているんです?
<以降、有力な情報は得られず>
<録音終了>