備考:このアーカイブは泡沫 汲による自筆の報告書および各種文書をデータ化したものです。現在、SCP-XXXX-JPにおけるExplained指定の審議が進行中です。
アイテム番号:SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス:Safe
特別収容プロトコル:SCP-XXXX-JPおよびSCP-XXXX-JP-1は環境を安定させた標準的な収容チャンバー内に静置してください。
説明:SCP-XXXX-JPは限りなく正確に、縦2cm、横πcm、高さ1cmの長さを持つ、純度100%の異常性のない金からなる長方形の物体です。SCP-XXXX-JP-1は無理数を含めたすべての長さを計測可能なマイクロメーターの一種です。
(報告書登録日:2001/4/3/登録者:泡沫 汲)
文書XXXX-JP-A:メモ1(登録日:1999/4/3/登録者:泡沫 汲)
復帰早々、この金色をした棒の研究を任されたのだが、回収されたばかりのようで、全情報が一つもない。材質もわからなければ、寸法すら誰も測っていないとは思わなかった。財団の理念上、形を変えてしまうような実験は控えなければならないのだが、手に持ってみて、ある程度硬質なものでできていると考えたので、まずは長さの計測から入ることにした。
文書XXXX-JP-B:実験記録1(登録日:1999/4/4/登録者:泡沫 汲)
試行1
用具:SCP-XXXX-JP、マイクロメーター(小数第 3 位まで有効)
実験内容:マイクロメーターを用いて寸法を計測する。
結果:縦2.000cm、横3.141cm、高さ1.000cm。
試行2
用具:SCP-XXXX-JP、マイクロメーター(小数第 30 位まで有効)
実験内容:マイクロメーターを用いて横の長さを計測する。
結果:横の長さは小数第 30 位までの円周率に正確に合致した。
文書XXXX-JP-C:メモ2(登録日:1999/4/4/登録者:泡沫 汲)
こんな長さを測るだけの作業であっても「実験」扱いでかかなきゃいけないらしい。先に材質を特定すべきだったと思ったが、無事に計測ができた。私が勝手に「横」と決めた辺の長さだが、もしこれが限りなく正確に"π"を測ったものだとしたらとんでもないものである。しかし、正確にπを示してくれる道具がなければ裏付けはとれない。
文書XXXX-JP-D:メモ3(登録日:1999/6/21/登録者:泡沫 汲)
とにかく早くあの棒の真偽を特定したい。最近、無理数を計測できるSCiPが同じ場所から発見されたと聞いて、それならこれの謎も解けるんじゃないかと思い、偉い人に同じ管轄にしてくれるよう意見を提出したのだが、「何が起こるかわからない」とかいう理由で別の人があてがわれ、あの道具自身の研究が先だと言われ見にも行かせて貰えなかった。幸い、収容室は同じサイトの中にある。
文書XXXX-JP-D:メモ3(登録日:1999/12/3/登録者:泡沫 汲)
どうやらわたしはこのSCiPの報告書を書き終えるまで他の仕事を貰えないらしい。私も何か功績が欲しい。あれの有用性を示すためにも「限りなく円周率に近い数値を示すと推測されています」と書くわけにはいかない。
文書XXXX-JP-E:実験記録2(登録日:2000/12/7/登録者:泡沫 汲)
試行3
用具:SCP-XXXX-JP、成分分析計
実験内容:成分分析計を用いて構成成分を計測する。
結果:SCP-XXXX-JPは純度100%の金だった。
文書XXXX-JP-F:メモ4(登録日:2000/12/8/登録者:泡沫 汲)
開発されたばかりの成分分析計を仕入れて使ってみた。現代の実験器具の進歩は眼を見張るものがある。あの棒がただの金だったとは驚きだ。それにしても、あの道具の研究はまだ終わらないのか。こんなどこで開発されたかもよく知らない便利な道具をかんたんに使えるのに、私の目と鼻の先にあるあれはいつになっても使えるようになる気がしない。問題は、私がこの棒にしか配属されておらず、棒の長さを測ることだけに人生を費やすかもしれないことだ。他の仕事が舞い込んできそうもない。
文書XXXX-JP-G:実験記録3(登録日:2000/4/1/登録者:泡沫 汲)
試行4
用具:SCP-XXXX-JP、SCP-XXXX-JP-1(無理数を表示可能)
実験内容:SCP-XXXX-JP-1を用いて横の長さを計測する。
結果:SCP-XXXX-JP-1はπと表示した。
文書XXXX-JP-H:メモ5(登録日:2000/4/2/登録者:泡沫 汲)
こうするのが一番早かった。結局、私はSCP-XXXX-JP-1を盗んでしまった。でも、あの棒の"π"は真だった。私は処分されることだろう。しかし、このささやかな功績は守られる。あとは報告書をとっとと書くだけだ。