totedragon、またの名をと・*てノミ。
Twitter界隈で電波撒き散らしてる(つもりの)人。
物書き畑に足を踏み入れては纏まらない人だが、多分頑張れば出来る、うん。
例えば、何が出来るかな?そもそもちゃんとネタが見付かるかな?
とりあえず、Twitter上で書きかけていたネタから手を付ける予定です。
夏頃にホウセンカの写真撮りに行くか……
――エージェント・不見地
・龍と虎の掛け軸。それぞれを視認すると……(発想不足)
・ある一定の旋律。ハミングする事により対象を影響下に引きずり込む。ハミングを聞いた他の人物も影響下に入りハミングを始める。ただそれだけならSafeだと思われるが、一定数が影響下に入ると現実改変(ネタ練り中、随時追加予定。最大の課題は「唄う草原」との明確な差別化。不可能なら没案)
・如月工務店に関係があると推測される御幣。これを家の棟に飾ると……(やりたいだけのネタ、備忘)
・異常性を有する砂場。これがある公園では遊具による事故が多発し、結果的に遊具の撤去という形で砂場のみが公園に残るという事態になる。なおこの砂場、猫のトイレになったりしないのでめっちゃ綺麗。お口に入れても大丈夫。安心だからがっつり遊んでね!(押し付け)
タイトル案(使うかはともかく思い付いたり語呂が良いもの)
ガントリーヅル(港にあるガントリークレーンのオブジェクト用)
パクパクするよ!金魚草(要・タイトル練り。金魚草の英名が「スナップドラゴン」である事に掛けたタイトルを考えること)
赤と白。紅白の争い。運動会とか歌合戦とか。最終的に源氏と平家の争いに。
戦争に巻き込まれる第三者。お互いの思想良心は、巻き込まれた人間には関係ない。
砲戦花に絡めて作りたい団体(本音)
異常性を有する学習教材を提供する謎の団体。基本的に学校を標的?とする。
「実践教育」をモットーとして、体験型授業を想定した教材を販売ないし試供品配付したりする。
たまに怪我人出たり死人出たりするけど世界滅ぼしたりするオブジェクトは作らない事には留意。あくまで教育の為を考えた組織(成功するとは言ってない)
アイテム番号:SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス:Euclid
特別収容プロトコル:SCP-XXX-JPは天井に焼却設備を備えた耐衝撃・耐熱性の植物収容室にて栽培されます。事象-XXX-1を防ぐ為に、実験目的以外ではSCP-XXX-JP-1とSCP-XXX-JP-2を互いに半径3m
5m15m以内に近づけない様にしなければなりません。
予期せぬ事象-XXX-1が発生した場合、直ちに天井の焼却設備によって収容室内の全個体の焼却を行ってください。オブジェクト保全の為、栽培する個体とは別にSCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2共に十分に選別した種子を低危険度収容室に保管して下さい。
度重なる自家交配の影響で、現在SCP-XXX-JPの個体ごとの異常性に大きな差がある事が確認されています。その為、異常性の確実な固定化を図る目的での交配研究が進められています。
説明:SCP-XXX-JPはホウセンカ(Impatiens balsamina)の一品種とみられる、異常性を持った植物体です。花の色は赤と白の二種類が確認されており、それぞれをSCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2と分類します。
SCP-XXX-JPの異常性は、成熟し花を咲かせる事が出来る事が可能になったSCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2個体を半径35m以内に接近させた場合に発現します。未知の手法によりお互いを認知した各個体は急激に成長を始め、多数の果実を結実させます。そして、その果実を通常のホウセンカと同じ様に炸裂させ、お互いを「攻撃」し始めます1。
事象-XXX-1中は果実の炸裂による種子のエネルギーが異常に増幅され、その威力は一般的な12ゲージの散弾銃に匹敵します。その為、事象-XXX-1中は高速で飛び交う種子により大抵は建造物ならびに付近の人体に多大な損傷を与えます。
SCP-XXX-JPは、大阪府██市立██小学校の教室で発見されました。「教材用に育てたホウセンカに撃たれた」という警察への通報を受けたエージェントが現場に向かい事象-XXX-JP中のオブジェクトを発見、機動部隊の導入により鎮圧、収容に成功しました。収容までに児童・教員合わせて██人が死亡。生存した関係者にはクラスA記憶処理を施し、カバーストーリー「給食室の爆発事故に伴う火災」が適応されました。
補遺1:インタビュー記録
対象: 斉藤教諭
インタビュアー: エージェント・不見地
付記: 斉藤教諭はSCP-XXX-JPが発見されたクラスの担任です。
<録音開始>
エージェント・不見地: それでは、インタビューを始めさせていただきます。斉藤先生、お怪我の調子は如何ですか?
斉藤教諭: ええ、問題ありません。あの子達が受けた苦痛に比べれば、こんなものかすり傷です。
エージェント・不見地: 心中お察し致します。
斉藤教諭: いえ、貴方には分からないでしょうよ。皆は……私が初めて担任したクラスだったんですよ。
エージェント・不見地: [沈黙]
斉藤教諭: ……少し、熱くなりすぎましたね。申し訳ない。あの花の件、ですよね。
エージェント・不見地: はい、まずは入手の経緯などをお聞かせ頂いても良いですか?
斉藤教諭: 分かりました。あれは、四月の中頃の事だったと思います。一人の男が、私のアパートに訪ねてきました。確か川中、いや川本と名乗ったと思います。50代ぐらいの、白髪交じりの人の良さそうな男でした。
エージェント・不見地: なるほど。その川本と名乗った男とどの様な会話をしたか覚えていらっしゃいますか?
斉藤教諭: ある程度は。彼は私の職業を知っている様でした。知っているからこそ、私に教材を売りに来たのでしょうが。
エージェント・不見地:
斉藤教諭:
[以下、インタビュー終了まで会話を記録する]
<録音終了>
終了報告書: [インタビュー後、特に記述しておくことがあれば]
―――編集余地―――
補遺2:小学校の職員室に種の空き袋と共に残されていた文章
まいど!川本教材店です!
此度は当店の新作「そだててたのしいシリーズ F1うちあいっこホウセンカ」の試供品をご利用頂きありがとうございます。
氏名:不見地 虹人(みずち にじひと)
コードネーム:エージェント・とてどらごん
ものかきをするどらごんさん。作品のどこかに竜に関係する事柄を仕込む「隠れどらごんさん」という遊びを行うことが多い。
あまり筆は選ばず、俳句から講談風作品、更には暗号的作品まで過去には書いてきた実績を持つ。
ジャンル傾向としてはポストアポカリプス物が多い様に感じるが、代表作は別タブに記されたクロード・グラムシリーズである。え、書いてくれるんです?どうぞどうぞ設定お渡ししますよ!
一作目 最終稿
硝煙、そして血の匂いが潮風を圧倒する。血に塗れたデッキに立ち尽くしながら、アルファルド号船長クロード・グラムは部下の報告を待っていた。最後の銃声が響いてから久しい。経験上この船での戦いは終結しただろうとは分かっていたが、それでもなおその鋭い目は揺るがなかった。
「船長、報告いたします。生存者は全員投降。敵キャプテンは頭を撃ち抜きました」
極彩色の翼を畳み、航海士パロが声を掛けた。腰には愛用の弩が、矢を外した状態で吊り下げられている。
「こちらの被害状況は」
「ボリスが足をやられました。死ぬ怪我ではないですがもうろくに動けないかと。ラインハルトは治療中ですが、永くはないでしょう」
「ハリーは」
「死にました」
苦虫を噛み潰した様にクロードは牙を覗かせる。これだけの規模の戦闘で戦闘不能者三名であればまだ優秀な戦績であろうが、見知ったクルーが死ぬというのは良い気持ちはしない。
「水葬の準備をしてやれ。死亡者全員のな。死ねば敵も味方も関係ない」
「仰せのままに、船長」
パロはその翼を広げながら再び船内を探索するクルー達の元へと戻る。仕掛けてきたのは向こうだ。こちらの船影を確認するや否や撃ってきたのは向こうだ。そして、それらを排斥する事がクロードの生業の一つである――が、それでも死者に敬意を払うことは忘れなかった。それを忘れてしまえば、文字通り畜生へと成り下がる。
「彼らがいるという事は、やはり情報は正しいらしい」
クルー達の手により降ろされた海賊旗を見下ろしながら一人ごちる。先日処刑された海賊団の隠し財産。それが今回のクロードの目指す代物であった。略奪品を「返却する」という名目で王国に引き渡せば報酬が手に入る。全く上手いシステムだ、と毎回思うのだが、それを利用して食事にありついている以上文句は言えない。まだ見ぬそれらの宝の数々に想いを馳せていると、にわかに階下に騒ぎが起きた。続いてこちらへと駆けてくるパロの姿。
「船長!来てください!もしかしたら我々はとんでもないヤマを掴んだかもしれません。ご確認頂きたく」
「騒々しいぞパロ。今行く。君がそんなに慌てるとはな」
「とにかく船長室へ。驚きますよあれは」
興奮冷めやらぬという様子で、パロは答えた。
船長室は酷く荒れていた。死体こそないものの、どうやらここがキャプテンの最期の場所だったらしく床にも壁にも夥しい血糊が付着している。豪奢な装飾を施されていた机の近辺は酷く焦げており、消火の跡が見て取れた。
「奴さん、最期にランタンをひっくり返しましてね。我々諸共焼き尽くそうって魂胆だったんでしょうが生憎と相手が悪かった。こっちにはジョードがいる」
普段は調理場で肉切り包丁を振るうビックスがその惨状を説明する。出身は違えど同じ狼族である彼にクロードはそれなりの親しみを覚えていた。
「良くやってくれたなジョード。寄港したら褒美を与えないとな」
クロードはビックスの傍らで気まずそうに俯く獺族の少年の頭をくしゃくしゃと撫でた。ビックスの下で厨房係として働くこの少年は多少の水の術式の心得がある。今回、それを遺憾なく発揮した事は明らかであった。
「ビックス、ところで何を見つけた?」
「それに関してはパロ航海士の方が詳しいかと。"あれ"に気づいたのも彼ですからな」
では、とビックスはジョードの手を引き船長室を後にした。もちろん、二人とも敬礼は忘れない。砕けた仲とはいえ最低限の礼儀は守るのが秩序の第一歩であるというのがクロードの信条だった。
「パロ、問題のそれはどれだ?」
「はい、こちらに。航海日誌は没になりましたが、これは無傷です」
パロは翼で机に広げられた一枚の地図を指した。見たところ年代としてはかなり古い代物だ。そして、左上に記された方位記号の装飾に、クロードは見覚えがあった。
「まさかこれは、ロビンソン卿の地図では?」
「やはり気づきましたか船長。どうやらその様です」
ロビンソン卿。その昔世界をまたにかけたという冒険者の一人。そして彼は各地に地図を残していた。発見したが様々な理由で持ち出すことの出来なかった――
「宝島、か」
夢物語だ、確かにそう言われる事も多い。だがロビンソン卿の地図はかなりの確率で"真"だった。となればこれもまた信憑性があるといえる。
ふと、テーブルの上に光るものが見えた。間違いない、金貨の輝きだ。それを手に取る。特徴的な紋章が刻まれている。地図には、同じ紋章が。
「馬鹿な、冗談だろう?こいつは"アン王妃の嘆き"の地図だと?」
クロードの尾が俄に振れる。遠吠えしたい衝動に駆られる。"アン王妃の嘆き"といえば、ロビンソン卿が生きた時代より少し前に失われたとされる王家の財宝だ。その額は憶測だけでも「国が買える」と言われる程であった。
「ですが、それはロビンソン卿の地図ですよ船長。追う価値はあるのでは」
パロがそっと囁きかけた。全く、悪魔の囁きだけは本当に上手い男だ。ここまで来れば、こう答えるしかなかった。
「クルーを集めろ。次の冒険が決まったぞ」
今度は、遠吠えを隠さなかった。
2作目予定
フィドル弾きの軽快な音楽が酒場を満たす。こんがりと燻された肉と魚、そして芳醇なラム酒の香りに混じる葉巻の煙が鼻腔に直撃する。この店のいつもの景色だ。
店主がそっと指差す先にはいつもの指定席。どれだけ店が混み合おうと、そのテーブルだけは常に空けられている。何せ――
「クロード船長、お久しぶりで。3ヶ月ぶりですかな?」
「2ヶ月と21日だぞマルコ。とりあえずいつものをいつもの分回してくれ。あとこいつは前回のツケと今日の分だ、余りは今いる奴らにラムでも回してやれ」
小さいとはいえ、クロードも船を持つ身だ。クルーの労いとなればそれなりの人数が店に来ることになる。"巣"の一つや二つは無ければ肝心のときに困るという訳だ。船員達を促しつつ、ずしりと重い帆布の袋を店主――マルコ、かつての王国海軍航海士へ手渡しながら、クロードは僅かに尾を揺らした。
「これはこれは。という事は、今回の航海は大成功だった様ですな」
「噂よりも半分ほど少なかったがな。まあガセを掴まされるよりはマシだろうよ」
「はは、そりゃあ違いない」
器用に翼で受け取りながらマルコは答える。片眼鏡から覗く眼光はいつもよりも鋭い。鷲族独特の鋭さとは違うそれに、クロードは僅かな違和感を覚えた。
「マルコ、お前何か厄介事――」
そう言いかけるが早いか、スイングドアの跳ね開けられる鈍い音が響いた。フィドルの演奏が止まる。談笑が静まり返る。なるほど厄介事の正体はこれかと入り口を見やる。見慣れぬハイエナ族の男ら数名が、そこに立っていた。
「おいおい鳥頭、せっかく来てやったのにいらっしゃいませの一言もないのか、ああ?」
「へえ、えらくすみません。いらっしゃいませ。ですが今日は見ての通りの満席でして」
マルコが今までの口調から一変してへらへらと答える。この男は相手次第で口調を自在に変える。どうやらこいつらは彼には"招かれざる客"である事は確からしかった。
「だったら空ければ良いだろう?この無能がァ!」
俄にいきり立った男がテーブルを蹴り倒す。ラム酒のグラスとマルコの得意料理、マグロのカツレツが床に転がる。店内に誰かの悲鳴が響き、数名の客が店を飛び出した。
「やれやれマルコ、面倒な客に居着かれたらしいな?」
「まあ、そんなところです。海賊くずれのチンピラでして。クロード船長のいない間は指定席に座らせてたんですがね」
ほとほと困ったという様にマルコは両翼を上げる。普段そこまで感情を顕にすることはない。堪りかねているという事を示す以上に、これは二人の間で一つの協定を示す符号でもあった。
「聞こえてるぞお前らァ!」
男どもの一人が怒号を上げる。手にはラム酒のボトル。それが飲用目的以外で手に持たれたものであることは明らかであった。潮時だ。
「実に礼儀がなっていないな。これでは楽しく酒を飲む事も出来ない」
「なんだてめえはよォ、やるってのか?」
クロードが相対すると同時にボトルを握った男が殴りかかった。早い、それなりの場数をこなしてきた動きである事は明らかだった。が、所詮チンピラの動きである。
「ッたああああァァ!」
それが頭に振り下ろされるより早く、その手首を掴みあげる。そしてくいと捻りあげると男は悲鳴と共にボトルを取り落とした。
「これ以上は営業の迷惑になる。表へ出たまえ」
静かに、怒気を孕んだ声でクロードは言い放った。
潮風が毛並を揺らす。僅かに漏れる街明かりが、路頭に並ぶ男達を浮かび上がらせる。
「お前達は手を出すな。周りに迷惑が掛からないよう見張っていてくれ」
「はい、仰せのままに船長」
やけに仰々しく航海士のパロが答え、それを合図とする様に他の船員達も引き下がる。目の前の棟梁らしい若いハイエナ族の男も制止する様に手を挙げると、後ろに付き従っていた数人の男たちが引き下がった。構成員8名。マルコの言うとおりに海賊団まがいの活動をしている中ではかなりの小規模だ。アルファルド号の常時の船員と比べても3分の1にも満たない。
「随分な狼藉じゃないか。此処が誰かの縄張りだと考えもしなかったのかね?」
「ハッ、知らねぇな。そっちこそ数カ月も時間があればシマの一つや二つ持ってかれる事ぐらい考えなかったのか、犬っころ?」
虚勢だ、そうクロードは見抜く。場数も、規模も、何もかも劣る。だが喧嘩を仕掛けてしまった以上は引けないという訳だ。
「君だって犬っころじゃないか。鏡を見たことはないのかね?」
「なんだとォ!」
軽い煽りには軽い煽りを。だがその程度でもかの男を怒らせるには十分だった様だ。対するクロードは冷静を保ったまま相対する。怒りで我を忘れた相手ほど対処はしやすい。
「アステリオン海賊団に喧嘩を売った事を後悔させてやるぞ王国の犬がァ!」
「そうかい。じゃあお手並みを拝見しよう」
何処かで聞いた台詞ばかりだ、とクロードは考える。聞きかじった台詞を並べただけの陳腐な口上。恐らくは、賊に落ちてまだ間のない集団なのだろうとアタリをつける。生活に困り賊に落ちる者は決して少なくはない。今まで魚を獲っていた船に武装を付ければそれだけで海賊行為が可能なのだから。
男が腰に下げたカトラスを抜き払う。刃渡りこそ短いが、閉所での白兵戦となればこちらの方が脅威になる事をクロードは経験上知っていた。それに答える様に、クロードも王国の紋が刻まれただけの質素なサーベルを抜刀する。王国への「返却事業」をいくらかこなせば手に入る代物だが、作り自体は悪いものではない。
最初に仕掛けたのは男の方であった。雄叫びと共に大振りな動きで切りかかる。多少刀剣類の扱いは知っているのだろうが、結局はその程度であろうという動きだった。苦もなくそれを軽く身を捩りかわしてみせる。
「どうした?威勢だけかね?」
「ほざけェッ!」
剣と剣とがぶつかり合う。鋭い金属音が夜の街に響き続ける。一人、二人と野次馬が集まり、自然と二人の周りには人垣が形成されていく。
「君にとって、今の生活は満足かね?」
「はァ?いきなり何言ってやがる!」
時には受け止め、時には受け流し。あくまで防戦に徹し、クロード自身から攻撃を仕掛けることはせずに問いを投げかける。僅かながら、攻撃の手が緩んだ。
「君のようなヒトを今まで何人も見てきた。魚が捕れなくなった漁師、積荷をことごとく襲われた商船、理由は色々だが、皆生活に困窮していた。君はどうなんだ?」
「そんなもの、答える義理なんか、ねェよ」
明らかな狼狽の色が見て取れる。剣戟の勢いは明らかに落ち、その筋にも乱れが見えた。そして、それをクロードは見逃さなかった。
「もう、終わりにしようじゃないか」
「ッ!」
一閃。その鋭い剣筋は男のカトラスの鍔を捉え、その手の内から軽く吹き飛ばす。地面を滑るそれを追う気力は、男には残されていなかった。
「君に家族がいるかは分からないが、今の君を見ると大層悲しむだろう。海賊として捉えられれば、良くて絞首台送りと相場が決まっている」
「………」
「私の船に乗りたまえ。丁度欠員が出たところでね。人手を探していた。君達が良ければ、だが」
「……良いのか?」
「もちろんだ。これから向かう旅路は人手が要るからな。君達に飽きのない冒険を保証しよう」
クロードは地面に転がったカトラスを拾い上げると、男に柄を差し出した。男がそれをおずおずと受け取った事を確認し、自らもサーベルを鞘に収める。
「さあ、飲み直しといこうじゃないか。腹を割って話すのに酒は良い友となる、そうだろう?」
そっと、マルコの店へと促す。そこには既に席が設えられていた。
そして、長い長い夜がようやく始まったのだった。
翌日。晴れた空に白いセイルが映える。出港を目前としたアルファルド号は活気に溢れ、積荷の運搬や装備の点検の声があちらこちらから響く。
「またお別れですな、クロード船長」
「なに、別れの時ぐらいは畏まらなくて良い。昔の様にクロードで良いさマルコ」
桟橋の上でクロードとマルコは語り合う。お互いに二度と会えないかもしれないという事は毎度のように覚悟をしていた。
「はは、そうだな。しかしあんたがこんなにでかいヤマを引き当てるとはな。正直期待してなかったよ」
「酷い言い草じゃないかマルコ。君の方こそ良いのか?まだまだ航海士としての腕は鈍っちゃいないだろう?」
「いいや、それは駄目なのさクロード。俺にはもう嫁入り前の娘がいるからな。結婚式には出てやらなきゃならん」
「おいおい、それは初見だぞ。あのスカーレット嬢が?」
「そうさ、もう18になる」
マルコは空を見上げながら、煙管をふかす。一羽のカモメが陽光を遮る。
「結婚相手は決まってる。お若いやり手の海軍将校さ。名前はあんたも聞いたことがあるだろう、クローヴィスって奴さ」
「噂には聞いている。かなりデキるらしいじゃないか。担当海域の海賊を大方拿捕し尽くしたとか」
「それだけじゃないぞクロード。これはあんたの耳に入れておかねばならん」
そう言うと、マルコはそっとクロードに耳打ちをした。
「あいつは見境がない。義賊だろうと『回収人』だろうとお構いなしだ。戦績に取り憑かれた怪物だよ」
「娘の結婚相手に対する物言いではないな。だが忠告は受け入れるよ」
「縁談としては悪くないってだけで俺はあいつを好きにはなれないからな。まぁ言うだけはタダさ」
煙管に新たな刻み煙草を入れ、火種を移しながらマルコが言う。海軍関係の交流で断れなかったというのが実状なのだろう。
「ま、折角の出航に辛気臭い話は無しだ。また席を開けておくさ。あと上等のラム酒もな」
「マグロのカツレツも忘れないでくれよ、あれが無ければ飲んだ気がしない」
「はは、仰せのとおりに、クロード船長」
船員達が新入りになったハイエナ族の若者達を軽く小突きながら整列させる。全て準備は整った。これから長い旅路になる。
「じゃあな、マルコ。汝の翼に追い風の吹かんことを」
「そちらこそ、長き夜と安らかなる昼を。クロード船長」
クロードが両腕を広げる。それに応えるようにマルコは両翼を広げ、二人は熱く抱擁を交わす。出航のいつもの習慣だった。
身なりを整え、アルファルド号へと乗り込む。風は穏やかに吹き、出航には申し分ない。潮時だ。
「総員出航準備!錨を上げろぉ!」
腹の底から、クロードは叫びを上げる。日常へと、命を賭けた旅へと戻っていく。慣れた動きと少しぎこちない動きの船員達の躍動を感じつつ、港へと海軍仕込みの敬礼を向ける。
「出航!」
失われた宝、"アン王妃の嘆き"を巡る旅が今始まった。
第三稿
「とおぉりかじ一杯い!敵船側面に回り込めぇ!」
後方から唸りを上げながら火球が通り過ぎていく。狙いを外した火の術は落水し海面に蒸気の柱を立てる。臆することなく舵を指示しながら、アルファルド号船長クロード・グラムは後方の帆船を睨み付けた。当たりはしていないが狙いは悪くない。この距離からこれだけの精度で術を撃ち込んでくるならばそれなりの腕の術士が乗っているのは確からしかった。甲板後方では調理師見習いのジョードが対抗して水の術式を撃ち返しているが、その一発が敵船の遥か前方に落ちた辺りで期待は薄れた。熟練度が違う。
「やはり、軍は強いか。」
帆船のマストにはためく、紛うことなき王国海軍旗。それは今までと大きく状況が変わった事を意味していた。今までであれば、海軍は「返却事業」に携わる船には手を出さなかった。事実、アルファルド号のマストには王国と提携関係にあるという証である竜の首を掲げた猫族の男の紋の旗を掲げている。つまり、あの軍艦艇はそれを視認した上で攻撃を仕掛けてきているという事になる。
「左舷砲門開けぇ!敵船の砲撃に備えろぉ!」
左に舵を切られたアルファルド号は風と波を受け傾きながらも進路を変えていく。船員達は慌ただしく動き回り、砲撃の準備を始める。クロード自身も腰に携えた短銃型ラッパ銃に弾を込めた。砲撃戦で決着がつかないならば、その先は白兵戦である。
「舵戻ぉせぇ!砲手砲撃準備ぃ!」
敵船と平行になる頃合いに舵を戻す。進めばいずれは射線上に入る。幾度と経験してきた瞬間であるが、今回は相手が違う。今まで信じてきた国家の刺客だ。だが、今止まる訳にはいかない。
「ってえええぇぇぇ!」
轟音が響く。腹の底に突き上げるような衝撃。アルファルド号に据えられた十二門砲の半数がほぼ同時に火を吹いた。
風を切る音が響く。敵船の砲弾が降り注ぐ。狙いを外した弾が水柱を上げ甲板を濡らす。鈍い衝撃が船に伝わる。悲鳴と怒号。何処かに被弾したらしい。
「被害状況を報告しろぉ!負傷者はバルトの所へ運べぇ!」
「左舷後方に一発食らいました!負傷者2名、ジェームズとレオです!二人とも軽傷!」
「損傷軽微ぃ、戦闘継続だ。気合い入れていけぇ!第二撃準備ぃ!」
まだ戦いは始まったばかりであった。
甲板は激戦の場と化していた。剣戟の中に時折発砲音が響く。クロードは王国の紋の刻まれたサーベルを振るい、かつて同胞であった筈の烏族の軍兵士を貫いた。戦況は互角寄りの劣勢。見えているだけでも既に三人のクルーが落命していた。
「船長、妙だと思いません?こいつらの編成、鳥族ばかりで揃えてますよ。」
放ったばかりの弩に即座に矢を番えながら航海士パロが声を掛けた。銃が開発された事により弩の時代は終わったと囁かれてもなお彼はこの旧時代の武器を使い続けていた。事実装填に時間の掛かるラッパ銃よりも弩の方が立ち回りが早く、雨や潮で火薬が駄目になる心配をする必要もない。
「同族を射つのは気が引けるか?」
鷹族の兵士の突き出すレイピアを払い、逆にその肩を切り裂く。
「いいや、まさか。むしろ戦い方は分かってる様なものですよ。」
調理士ビックスと共に烏族の軍魔術師と対峙するジョードに突撃する隼族の小柄な兵士を射ちながらパロが答える。
「なら問題はないな。だがその指摘は確かに引っ掛かる。」
調和を重んじる王国軍ではその種族に関わらず隊を編成する慣習がある。必然的に獣族と鳥族、竜族の混成部隊となる事が常である。
が、この船は違う。今戦闘の場に立つこの軍勢は細かな種別がありこそすれ全員が鳥族であった。これは異例の編成であった。
「まさか、奴か?」
心当たりはない訳ではなかった。見境なき狩人。出世欲に取り憑かれた男。そして。
「この船の船長を出してもらおうか。私はクローヴィス・レインホーク中佐である!」
友マルコの娘を娶った男。階級章に彩られた軍服を纏った鷲族の男が名乗りを上げた。最悪の想定は常に当たるものである。
「私がアルファルド号船長クロード・グラムだ。私としても貴殿に聞きたい事がある。何故我々の船に攻撃を仕掛けるのか?よもやあの旗が見えなかったとは言うまい。」
返答は一発の銃声だった。クローヴィスの放った銃弾はクロードの左脚を貫いた。滴り落ちる鮮血が傷の深さを物語る。鋭い痛みに思わず牙を剥き出しにする。
「チッ、外したか。まあ良い、次で仕留める。」
「船長ぉ!大丈夫ですかい!」
「私に構うな、戦闘に集中しろ!」
咄嗟に肩に翼を掛けるパロを制止し、クローヴィスを睨みつける。対話は不要という事らしい。こちらの言い分など関係なく、殲滅する。出船前のマルコの言葉が頭に蘇った。
『あいつは見境がない。義賊だろうと"回収人"だろうとお構いなしだ。戦績に取り憑かれた怪物だよ。』
死人に口なし。滅ぼせば言い分を聞く必要もない訳だ。
「なんとも卑怯なやり口だなクローヴィス殿?こんな戦い方ではスカーレット嬢に自慢できまい。」
僅かにクローヴィスに動揺の色が見えた。
「今、何を言った?」
放ったラッパ銃を側近の兵士に押し付けながらクローヴィスが応じる。装填係がいれば次弾の射撃も早いという事らしい。実に知恵の働く奴だ、と内心でクロードは吐き捨てた。
「君の配偶者に見せられぬ恥ずべき戦い方だと言ったのだよ。これでは公平性に欠けるではないか。」
左脚を押さえながらクロードが続ける。立つことは出来る。ならば動かすことも出来るはずだ。そう自分に言い聞かせる。
「──っははは!あの女の知り合いとはな!異種と付き合うなんてあいつも物好きだな、え?」
「聞き捨てならん言葉だな、撤回を要求しよう。それはスカーレット嬢のみならずその父マルコへの多大な侮蔑だ。」
クロードの胸の内に確かな怒りの炎が芽生えた。この男は確かに怪物だ。
「ならばどうする船長殿?賊と付き合いのある者は縛り首と相場が決まってる。そんなものをこの私が!認めるとでも!」
「賊などではない。賊に落ちた事実などない。我々は貴軍の属する王国より公に認められた取引をこなしているだけに過ぎぬ。それを反故にして攻め立てる貴殿こそ謀叛者ではないのかね?」
「黙れぇッ!」
クローヴィスが銃口を向ける。怒りに任せて撃ち抜くつもりらしい。それもまた一興、とクロードは笑みを浮かべた。少なくとも海の上で辱めもなく死ねる。だが、ただで死ぬつもりもなかった。
腰に下げた短銃型ラッパ銃を抜く。慣れた動作で即座に狙いを定める──
クローヴィスの身体が宙を舞った。直後に冷たい水飛沫が殺到する。クロードが振り向くとそこには息を荒らげながら手を掲げたジョードの姿が見えた。
直後、クロードの身体はぐらりと姿勢を崩し、甲板に崩折れた。
暗い。それがクロードの最初の思考であった。掴みどころのない空虚。ただ広さだけがある空間。いや、正しくはそうではない。無数の白い粒状の何らかの影が上に上昇している。
違う、自分が下降しているのだ。そうクロードは確信した。これは水葬だ。
手を握りしめる。尾を揺らし、耳を動かす。全てがいつも通りの筈であるが、ただ、身体をこれ以上動かす事は叶わなかった。何かに縛られている様だった。
鎖だ。漠然とクロードは結論付けた。
沈む。ただ沈む。果て無き水を、ただ沈んでいく。
下へ。下へ。
かつての戦友が待つ水底へ。
下へ。
何かが迫っている感覚を得たのは何分後だっただろうか。いや、もしかしたら何時間、あるいは何日。
目には映らないが、確かにそれは接近していた。
そして、降下が止まった。
目の前に、古より生きる大海蛇の顔が迫っていた。
「海に生きる毛の民よ。何故そなたはここにいる?」
それは問いかける。だが声は出ない。
「答えなどは不要。私はそなたを読むだけ。ヒトの生はいわば書物。そなたはただ、私に任せていればよい。」
抗うことも許されないか。だが、それもまた一興。世界神話の時代より生きるこの生き物を見ることが出来ただけでも興味深いものではあるが。
「なるほど。大体は分かった。そなたの生き様も、夢も。」
それはただ、こちらを見つめる。
「だけれども、まだ物語としては不完全だね。私の蔵書に加えるにはまだまだ内容が足りない。」
それはぐいと首を近づける。
「海に生きる毛の民よ。クロード・グラムよ。そなたに今一度夢を与えよう。」
何を言っているのかが理解が出来ない。
「そなたの黄泉の旅路は中途だ。今ならば戻ることも出来よう。戻りたまえ。私の権限で。」
身体が軽くなる。拘束が破られる。肺が熱い。
「行きなさい。そして私に相応しい書物として帰って来なさい。そなたは面白い読み物らしい。」
生の渇望。生きねばならない。皆を置いて死ねない。私は、私は──
「そうそう、これを覚えておくと良い。私の名前はアルファルド。しがないただの老いぼれさ。」
──アルファルド号船長。クロード・グラムである。
クロードが目を開けた。その情報は瞬く間に船内に広がった。クロードが気を失ってからの後に軍勢力は投降し、パロが船長代理権限を使い束縛の後に小型艇にて退避をさせた。食料と水は十分にある。飢えることはないだろう。
戦死者の数は決して少なくはなかった。新参のハイエナ族の若者二人を含む八人が死亡していた。
随分と減ってしまった。だが、此処で止まる訳にもいかなかった。それはクロードに課された希望であり、また枷でもあった。あれを夢の一種と断ずる事も簡単ではあるが、クロードは違うと確信していた。
船首に立ち、クロードは先を睨んだ。まだ先は短くはない。例え荒波が、嵐が待ち受けていようと突き進むしかないのだ。
『クロード・グラム。君が今生きていると言うのなら、最後にその価値を教えておくれ。』
海蛇の意匠の船首像が、語りかけたように感じた。
「前方視界良好。船影、島影なし。よおぉうそろおおぉぉ。」
海原を裂き、傷を追ったアルファルド号は東に向かっていった。