遠野司書の記憶の片隅
challenger01.jpg

SCP-XXX-JPの前面(左)と背面(右)。

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 全てのSCP-XXX-JPは透明のフィルムで密封包装し、標準収容ロッカー内に保管してください。

各地の宇宙開発関連施設に在籍する連絡員がSCP-XXX-JPおよびSCP-XXX-JP-Aの出現を監視します。出現を確認した連絡員は汎用カバーストーリー適用による現場の臨時的隔離を試みると共に、近隣の観測所への報告を行います。報告を受けた観測所は直ちに職員を派遣し、初期確保作業に当たります。SCP-XXX-JP-Aと接触した一般人に対しては、必要に応じてクラスA記憶処理を施してください。

説明: SCP-XXX-JPは綿製の半袖Tシャツです。生地は白色で、前面には黒色の筆記体で表記された"CHALLENGER did not explode, just departed for VULCAN far away."(チャレンジャーは爆発したのではない、ただ遥かなるバルカンへと旅立ったのだ)という英文が、背面には1986年のスペースシャトル・チャレンジャー爆発事故の画像がプリントされています。背面内側に取り付けられたタグには"MADE IN ISL CA1"の印字が確認できます。

SCP-XXX-JPを着用した人物が"Yes, we are challenger."(以下、特定語句と呼称)と発言したとき、その人物はSCP-XXX-JPもろとも消失します。この際、同時に原因不明の小規模な爆発が発生します。

これまでの発見事例全てにおいて、SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-Aと共に出現しています。SCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JPを着用した人型実体であり、世界各地の宇宙開発関連施設敷地内に無許可の露店を設営してSCP-XXX-JPを販売しています。SCP-XXX-JP-Aは一般の通行人を言葉巧みに誘導し、SCP-XXX-JPの着用および特定語句の発声を促します2。誘導行為の成功/失敗にかかわらず、SCP-XXX-JP-Aは出現から数時間後に自ら特定語句を発言することで消失します。

事例記録: 内之浦宇宙空間観測所におけるSCP-XXX-JP出現事例の対応に当たっていた███記録官がSCP-XXX-JP-Aの誘導行為に曝露し、消失しました。

消失後、███記録官の所持していた発信機の信号を地球外より受信。信号の発信源は現在まで、太陽から0.21天文単位の距離を周回し続けています。







































































説明: SCP-XXX-JPはインターネット動画共有サービスYouTubeのサーバー内に出現する7種類の動画ファイルの総称です。各SCP-XXX-JPは再生時間が短いものから順にそれぞれSCP-XXX-JP-v1から-v7に指定されます。内容は各動画ごとに異なりますが、いずれも実写映像であり、かつ全編に渡って無音です。

SCP-XXX-JPに付与されるタイトル情報は毎回異なる不規則なアルファベット文字列です。一方、アップロード元として表示されるチャンネルの名称は一貫して"SacraMyoChannel"となっています。ただし実際には、SCP-XXX-JPは一切のアップロードの手順を経ることなくサーバーへ出現します。従ってチャンネルの情報からアップロード者を追跡する試みは無意味です。

SCP-XXX-JPを繰り返し視聴した人物は軽度の精神影響を受けます。被影響者は断続的かつ慢性的に"自分達の観測している現実世界は実は虚構なのではないか"という漠然とした疑念を抱くようになります。この精神影響による直接的な害は存在せず、日常生活に支障をもたらすことは稀です。クラスA記憶処理や非異常性の向精神薬投与により一時的に症状を除去することも可能ですが、しばしば再発します。

各SCP-XXX-JPの概要:

番号: SCP-XXX-JP-v1

再生時間: 2分16秒

動画内容: 住宅地の風景。撮影者は終始、舗装された道路の上をゆっくりと道なりに進んでいる。道沿い左手側には用水路が流れている。道と用水路を挟んだ両脇には、塀に囲われた瓦葺きの一軒家が並んでいる。強い雨が降っており、用水路は増水している。時間帯は昼と思われるが悪天候のため薄暗い。

番号: SCP-XXX-JP-v2

再生時間: 4分46秒

動画内容: 時間帯は昼。天候は晴れ。三階建て、陸屋根のコンクリート製建造物を敷地外から撮影している。敷地はブロック塀に囲われているが、視野正面は扉のない門が設けられており敷地内の様子が窺える。門から建造物玄関へ真っ直ぐに石畳が伸び、石畳の両脇の庭には一面に花卉が繁茂している。開始直後より視野が右にパンし、門の右脇の門柱を捉える。門柱には表札が埋め込まれており、"佐藤認識心理学研究所"と彫られている。その後、撮影者がゆっくりと敷地内に進入すると共に視野が下方へティルト、ズームアップし、庭の花卉を大写しにする。この花卉はノハラワスレナグサ(Myosotis alpestris)である。

番号: SCP-XXX-JP-v3

再生時間: 5分36秒

動画内容: 黒色のビニールポットに植わったノハラワスレナグサを映した映像。背景は黒一色で、視野は固定されている。動画開始直後の時点ではノハラワスレナグサは複数の蕾を付けているが、花は確認できない。全ての蕾は動画終了までに急激に綻び、開花する。暗幕の前にノハラワスレナグサを置き、開花の様子を早送りで記録したものと思われる。

番号: SCP-XXX-JP-v4

再生時間: 6分11秒

動画内容: タイル張りの浴室。壁に掛けられたシャワーヘッドを仰ぎ見ている。動画開始後14秒時点でシャワーヘッドより水が注ぎ出す。撮影者はこれを避けず、画面全体が水浸しになる。以降、動画終了まで同じ状態が続く。

番号: SCP-XXX-JP-v5

再生時間: 6分35秒

動画内容: 板張りの木造建築物の内部。照明は点在する燭台の灯のみで薄暗い。撮影者は細長い廊下を進んでいる。動画開始後4分36秒時点で広い部屋へ入る。視点は部屋の中央奥へ向く。部屋の奥には3体の仏像が隣り合って存在する。像容から釈迦三尊像と見られる。

番号: SCP-XXX-JP-v6

再生時間: 6分55秒

動画内容: 東京都の渋谷駅前スクランブル交差点。時間帯は夜。周囲は多数の通行人で混雑している。撮影者は交差点を南東の角から北西の角に向かって渡っている。視野は徐々に上方へティルトし、QFRONTビル壁面のデジタルサイネージ"Q's EYE"を視野に収める。Q's EYEには3DCGで描写された人型キャラクターの動画が映し出されている。実際のQ's EYEにおいて過去に当該の動画が放映された事実は確認されておらず、動画中のキャラクターの特定も成功していない。

番号: SCP-XXX-JP-v7

再生時間: 11分26秒

動画内容: ソメイヨシノ(Cerasus ×yedoensis 'Somei-yoshino')の枝のクローズアップ。撮影地点は不明。手ブレと思しき小さな揺れを除けば画面はやや仰角のまま動かない。花は満開の状態。時間帯は夜。晴れ。



















一文taleリレーをするスレッド4

私は一本道を独りで歩いていました。落ち葉が落ちたままに散らばったその道は、私独りにはとても広すぎる道でした。

ふと顔を上げると、向こうの方から歩いてくる影がありました。しかしながら、私には……その時の私には、「それ」が何なのかはわからなかったのです。「それ」には気を留めずに歩いていると、落ち葉を踏みしめる音に、何か別の音が混ざり始めました。それは、冬の日の朝に、水溜りに張った薄い氷を踏み割るような、そんな音でした。

「気持ちの良い冬の音がするでしょう、お嬢さん」

私に話しかけてきた「それ」は、灰色のツイードジャケットを羽織って中折れ帽を被った、いささか古風な、しかしこれといって変わった点の見当たらない老紳士でした……ただ一点、彼の両目があるべき位置に、ふたつの大きな穴がぽっかりと空いていることを除けば。

もちろん私は彼と会話をするつもりなどありませんでした。私は声をあげて、その場から駆け出そうとしました。しかし、何故か私の体は動きませんでした。口から漏れる息はいつもより熱く、そして幾万の綿毛を含んだように重く不快なものでした。その間にも「それ」は一歩、また一歩とこちらへ歩みを進め、それに比例するかのように私の呼吸も徐々に速く、そして荒々しくなっていきました。

「それ」の空っぽの目と目が合った瞬間、大事な何かが頭からするりと抜け落ちたような感覚を味わいました。抜け落ちた何かを埋めようとして私の頭の中で響くのは、冬。

「はい、確かにこの音は冬、透き通っていて輝かしくて、それでいて懐かしい、私があの日体験した冬、です」

そう答えた私に、財団の職員と名乗る男は淡々と次の言葉を告げました。

「今日という日は何の異常もない、太陽が一周してしまえば毎日の喧騒の中に埋もれてしまうような、ごくありふれた冬の一日、そうですね?」
「はい……私があの日、あの人……いえ、『あれ』に出会った時に見たのとはまるで違う、代わり映えしない冬です」


そう呟きながら落ち葉の絨毯に体を投げ出しつつあった彼女を、男はそっと抱えた。

「……忘れて仕舞えば雪のように溶けゆく儚き悪夢だと言うのに、何故貴方は何度も、忘れて仕舞うことを拒むのでしょうか」

彼女が意識を失ったということは、Aクラス記憶処理が完了したことを意味する。それでもほら、ふつふつと、若芽の萌ゆる音が、再び訪れる、春の音が。



















(下書きここまで)


(以下オマケ)











執筆したSCP-JP

SCP-281-JP 帰郷
Homecoming

SCP-712-JP ヒアシンス侯爵夫人の眠らないお茶会
March. Hyacinth's Sleepless Teaparty

執筆したTale-JP

茜色の特異点
the Madder-red Singularity










The Edge of Lib. Tono's Memory



horizon.jpg



一番最後でもいいからさ 世界の涯てまで連れてって10



























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記憶の片隅の片隅




書きかけの下書き、没にした案etc.