Thor Taisho

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ryuteki

収容セル内のSCP-XXX-JP群の一部。

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP群は、全9種類の楽器が散逸することのないよう留意の上、サイト-81██内の高危険度物品収容セルに収容されています。経年劣化及び不慮の破損・破壊を防ぐために、SCP-XXX-JP群は緩衝材で覆い、特殊強化ガラスケース内に保管します。収容セル内には1基のスクラントン現実錨が常時起動状態で配備されます。さらに、SCP-XXX-JP保管ケース内部及び収容セル内には、サイト内の全ての放送用スピーカーに接続されたマイクがそれぞれ2本ずつ、常時ONにした状態で配置されなければなりません。同様の環境を完備した収容室さえ準備可能であれば、当オブジェクトはサイト管理者の承認の下、他サイトへの移送が可能です。

SCP-XXX-JP群及び収容セル内の放送機器や音響設備に対しては1か月に1度、定期メンテナンスが実施されます。SCP-XXX-JP群のメンテナンス作業の担当者は、宮内庁式部職楽部の楽師に限定されます。これは当オブジェクトを過失的に破損する危険性を最小限に抑えるためです。財団の一般職員を含む、雅楽に精通しない者が当オブジェクトに接触することは許可されていません。

チューニング・イベントの完遂阻止を担当する特別保安職員が、収容セル内に輪番制で常駐しなければなりません。当保安職員は、チューニング・イベント発生に備え、宮内庁式部職楽師による特別訓練を受け、止手とめてを習得する義務を負います。イベント発生時、予め訓練を修了した担当職員は速やかに収容セルに入室し、通常の雅楽用楽器を用いて止手を実施してください。チューニング・イベント中断の試みが失敗し、イベントが完遂してしまった場合、インシデント記録に報告書が追記されます。インシデント記録に記載されているSCP-XXX-JP-Bのうち、消失イベントが未発生であるものに対しては、カバーストーリーの作成や、記憶処理剤の備蓄といった、事後処理の準備が必要です。

説明: SCP-XXX-JPは、笙、篳篥ひちりき、龍笛、琵琶、筝、和琴わごん鞨鼓かっこ、釣太鼓、鉦鼓の、全9種各1個の和楽器から成る、楽器群です。SCP-XXX-JP群には外見上及び構造上、非異常性の一般的な雅楽用楽器との差異は見られず、個々の材質からも特筆すべき異常性は発見されていません。にもかかわらず、いかなる人物もSCP-XXX-JP群を用いた通常の演奏はおろか、楽音を発生させることすら不可能です。

ある程度定期的とみられるタイミング(概ね25〜35日間1)で、SCP-XXX-JP群は活性化し、世界の音楽史において既知の楽曲(以下、SCP-XXX-JP-A)を自発的に演奏し始めます。SCP-XXX-JP群は活性化中、60Hmを超える莫大な値にまで周囲のヒューム水準を増幅させることが、カント計数機による計測によって判明しました。この値は、活性化中のSCP-XXX-JP群が現実改変効果を既知空間の全域に渡って作用させうることを示していますが、活性化時のSCP-XXX-JP群が及ぼす現実改変はその対象と帰結が大幅に限定されています。SCP-XXX-JP-Aの演奏が開始すると、既知の文化圏において認知されている「7個1組の概念ないし事物」(以下、SCP-XXX-JP-B)が1つ、現実改変の対象となります。SCP-XXX-JP-Bは、演奏終了までの時間をかけて、その要素が有する客観的数値(量、時間、発生頻度等が含まれます)を一次関数的に変化させます。これらの、SCP-XXX-JP-Aの演奏と、それに対応して発生する現実改変現象を総じて、「チューニング・イベント」と呼称します。

チューニング・イベント中のSCP-XXX-JP-B各要素の数値的変化は、今のところ100%の確率で、ある一定の比率に収束することが判明しています。その比率は、ピタゴラス音律が適用された場合の全音階における各音の周波数比と一致あるいは漸近します。例えば、1~7の番号を付した7個1セットのボールの質量に対してチューニング・イベントが発生した場合、イベント完遂時には1のボールの質量と比して2のボールの質量が1.125倍、4のボールの質量が1.33倍、5のボールの質量が1.5倍になります。すなわち、SCP-XXX-JP-Bの要素の中には、チューニング・イベントを経ても数値的変化が発生しない要素の数値(以下、SCP-XXX-JP-B-DO)が必ず1つ存在します。この数値が、その他6つの要素に生じる数値的変化の基準値となります。 数値的序列や大小関係の存在しない概念ないし事物であっても、潜在的にSCP-XXX-JP-Bとなりうることが判明していますが、この場合、SCP-XXX-JP群がSCP-XXX-JP-B-DOを選定する基準が一体何であるのかについては、現在判明しておらず、調査が進められています。

SCP-XXX-JP群はかつて、宮内庁が所持していた9種類の非異常性の雅楽用楽器でした。2009年10月1日午前5時26分、これらの楽器群が突如として自発的に「神楽歌 其駒」の演奏を開始したことが、記録上最初のチューニング・イベントだとみられています。SCP-XXX-JPが異常性を獲得するに至った経緯や原因は不明のままです。当時このイベントに偶然立ち会った████氏(当時の宮内庁楽部筆頭楽師)が、所持していた自身の篳篥を用いて、同楽曲の「止手2」の即興演奏を試みたことで、イベントは中断させられました。のちの財団による検査とインタビューによって、████氏は当オブジェクトの異常性に関して事前に知識を有していた訳ではなく、彼や彼の篳篥から一切の異常性が検出されなかったことから、この行動は彼の芸術的感性に基づいた独断であったことが報告されています。結果として、SCP-XXX-JP群の初期収容は奇跡的に大事に至ることなく達成されました。財団は████氏の功績を称え、特別表彰ならびに褒賞を授与すると共に、彼の手法と音楽技術を収容プロトコルに組み込みました。████氏は現行プロトコルにおける止手の初の実施者であり、財団職員に止手を伝授する初代指南役でもあります。

止手はチューニング・イベントを中断させるための、現在知られている唯一の方法です。止手は本来、音楽の自然な進行を妨げずに終止句へ移行する手法であるため、高度な即興演奏技術が求められます。止手を担当する保安職員は、SCP-XXX-JP-Aの調性に応じて適切な楽器を選び、適切な旋律を演奏する技術も必要とされます。SCP-XXX-JP-Aは、呂音階の音律で調律されているため、平均律の音楽に用いられる一般的な西洋楽器を未調律のまま使用しても、止手としての効果が発揮されないことが判明しています。収容セルには常時、止手に使用するための非異常性雅楽用楽器が準備されています。現行プロトコルにおける止手の成功率は、2019年までの約10年間で9█%です。

SCP-XXX-JP群は手作業を含む通常の手段で分解・破壊が可能です。ただし、楽曲の演奏が一時的に不可能になる程度にSCP-XXX-JP群の機能が損なわれた状態に置かれると、発生のインターバル期間を無視して即座にチューニング・イベントが発生します。この場合、いかなる手段をもってしてもイベントの中断は不可能です。突発的なチューニング・イベント発生後は発生規則が復帰するようであり、それ以降のチューニング・イベントは再び25日〜35日の周期で発生します。

SCP-XXX-JP群は前述の通り通常の雅楽用楽器と構造上の差異を持たないにもかかわらず、呂音階の音律を保ったまま、一切の調律を要さずに転調を行なうことが可能です。このため、通常の雅楽用楽器ならば調律の関係上演奏不可能な楽曲を含む、既知のほぼすべての音楽がSCP-XXX-JP-Aの潜在的候補となります。ところが、特筆すべきことに、これまで記録されてきたSCP-XXX-JP-Aは例外なく五音音階の楽曲のみでした。また、少なくとも財団が公的に記録してきた範囲内において、人類史の中で伝承が途絶えた楽曲や、平行世界ないし未知の文明圏にのみ存在する楽曲をSCP-XXX-JPが演奏したという事象は発生していません。

チューニング・イベント記録

日付: 2009年10月1日
演奏されたSCP-XXX-JP-A: 伝統的雅楽「神楽歌 其駒」
SCP-XXX-JP-B-DO: 日本全国における恵比寿天を祀る寺社仏閣の総数
概要:最初に確認されたチューニング・イベント。イベント中、恵比寿天を除く6柱の七福神のうちいずれかを祀る寺社が突如として自然発生的に増加するという事案が発生した。イベント開始から3分28秒経過時点で、████初代指南役が止手を成功裏に完遂した。当イベントでは福禄寿を本尊とする寺社数の増加率が特に顕著であり、総計1██社にまで達した。イベント中断後、イベント継続時間と同等の3分28秒をかけて、現実改変によって新たに増加した寺社は徐々に消失し、常態が回復された。
分析:チューニング・イベントによる現実改変は、止手の成功後に回復するようです。イベントの過程を目撃した一般市民の数は████人を下らない見込みです。当プロトコルにおける記憶処理薬の使用可能量を現行の少なくとも4倍に増やすよう申請いたします。 - エージェント・██
//承認。 - サイト-81██管理者 ██博士

日付: 2009年11月5日
演奏されたSCP-XXX-JP-A: 中山晋平作曲「あめふり」
SCP-XXX-JP-B-DO: 可視光線において「赤色」と認識されうる電磁波の波長の定義域
概要:財団がチューニング・イベントに失敗した最初の例。SCP-XXX-JPの初期実験の一環として、当オブジェクトの分解検査を実施した際に発生。この時、分解されたSCP-XXX-JPは瞬時に分解前の状態に復元され、SCP-XXX-JP-Aを演奏した。████初代指南役によって止手が4回試行されたものの、チューニング・イベントを中断させることは不可能だった。結果として、日本において伝統的に「春の七種」として知られている植物の種子数に現実改変が生じた。当インシデント以後、SCP-XXX-JP-を分解・破壊する試みはいかなる意図の下であっても禁止された。

日付: 2009年10月3日
演奏されたSCP-XXX-JP-A: 文部省唱歌「鳩」
SCP-XXX-JP-B-DO: セリ(Oenanthe javanica)1株あたりの種子数
概要:財団がチューニング・イベントに失敗した最初の例。SCP-XXX-JPの初期実験の一環として、当オブジェクトの分解検査を実施した際に発生。この時、分解されたSCP-XXX-JPは瞬時に分解前の状態に復元され、SCP-XXX-JP-Aを演奏した。████初代指南役によって止手が4回試行されたものの、チューニング・イベントを中断させることは不可能だった。結果として、日本において伝統的に「春の七種」として知られている植物の種子数に現実改変が生じた。当インシデント以後、SCP-XXX-JP-を分解・破壊する試みはいかなる意図の下であっても禁止された。

補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]