SCP-XXX-JP(入口から約50m離れた地点で撮影)
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: 旧久米井邸は保全のため、財団フロント企業により所有されています。
説明: SCP-XXX-JPは長野県松本市安曇に存在する旧久米井邸の井戸からアクセス可能な賭博施設です。面積は約401.50km2であり、これは2005年に松本市に編入合併した安曇村の面積と一致します。内装や設備はアメリカ合衆国ネバダ州ラスベガスに存在する複数のホテルのカジノとの一致が見られますが、設備は電力供給が無いのにも関わらず稼働を続けています。
SCP-XXX-JP内部には約4台の自動二輪車(以下、SCP-XXX-JP-1)および56名の人型実体の集団(以下、SCP-XXX-JP-2)が存在します。SCP-XXX-JP-1の外見は日本郵政株式会社が配達に使用するホンダMD90・郵政機動車と同一であり、自律してSCP-XXX-JP内部を移動しています。SCP-XXX-JP-2の外見に共通点はなく、全員がSCP-XXX-JP-1が積載しているとされる現金書留の奪取を目的としています。
旧久米井邸所有者の久米井 信一氏は
走るバイクを追うギャンブル依存症たち。箱に詰まった幸運を求め、
追加予定タグ: safe scp-jp 場所 外部エントロピー 建造物 確率
画像出典
出典: Unsplash
作者: Steve Sawusch
ライセンス: CC0
クレジット
タイトル: SCP-XXX-JP - 越境捜査
著者: ©︎
TF2045
作成年: 2020
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8142の低危険度物品収容ロッカーに保管します。週に1度点検を行い、新たな映像が確認された場合は詳細を記録してください。███山はカバーストーリー「土砂災害警戒区域」を流布して封鎖します。
SCP-XXX-JP-AおよびBはサイト-8142の人型オブジェクト収容室に収容されます。意識が回復した場合、その出自などの確認のためインタビューが行われます。
説明: SCP-XXX-JPは██県██市に存在する███山です。
SCP-XXX-JPは不定期に新たな映像が保存される、製造元不明のスマートフォンおよびソニー株式会社製のビデオカメラです。全ての映像は██県に存在する███山で撮影されたと推測されていますが、現地調査では特筆すべき成果は得られていません。出現する映像には必ず、2017年1月以前に捜索願が提出された日本人1名(以下、対象)が映り込んでいます。
スマートフォンに発生する映像は、対象が慌てた様子で山中を走る光景を撮影したものです。風景やカメラの動きから、撮影者は対象と約25mの距離を保ちながら、物陰から撮影を行っていると推測されています。再生時間は約1分で、対象は10~15秒が経過した時点で不定な衣服を着用した人物に確保され、暴行を受けます。対象は反撃を試みることなく再度逃亡しようとしますが、成功した例はありません。
ビデオカメラに発生する映像は、40代後半~50代前半に見えるモンゴロイド系男性(以下、SCP-XXX-JP-A)が対象を埋葬するものです。対象は一切の反応を示さず、一部の映像では胸部や腹部に刃物が刺さっていることが確認されています。カメラと被写体の間に一定の距離がある点はスマートフォンの映像と同様ですが、カメラの移動はなく、定点カメラで撮影されたものと思われます。再生時間は約10分で、SCP-XXX-JP-Bが素手で埋葬用の穴を掘り始める場面から始まり、2本の木の枝で構成された十字架が立つ簡素な墓へ合掌を行う場面までを大幅にカット編集しています。
補遺1: 2019/3/6、SCP-XXX-JPに新たな映像が発生しました。内容はSCP-XXX-JP-Aがいずれの行方不明者とも外見的特徴が一致しない20代後半~30代前半に見えるモンゴロイド系男性(以下、SCP-XXX-JP-B)と揉み合いになった末に転落する様子を近距離から撮影したもので、当該映像は最後に黒い画面の中央に白い文字で「Directed by G.A.W.」と5秒間映して終了しました。これを受けて███山を調査したところ、背面が衣服ごと結合したSCP-XXX-JP-Aおよび-Bが昏睡状態で発見されました。以下はSCP-XXX-JP-Bの上着から発見されたメモに書かれていた文章です。
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みんな集めてミスター・ギフトになろう!楽しもうね!
01. ミスター・ランサムウェア
02. ミスター・クラウドファウンディング
03. ミズ・掛け算
04. ミスター・wiki
05. ミスター・バズ
06. ミスター・ブラクラ
07. ミスター・拡散希望 ✔
25. ミスター・イキり
26. ミスター・貴方次第です
27. ミスター・トリップモノ
28. ミスター・アンチとミズ・信者
29. ミス・Vtuber
30. ミスター・鮫島
補遺2: SCP-XXX-JP-A、-B発見から48時間後、サイト-8142管理官宛てに以下のメールが送信されました。送信者の特定は失敗しています。
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それらをすべて見つけて、ミスター・ゲーマーになろう
21. ミスター・ネグレクト
22. ミスター・キリ番
23. ミスター・中国からやってくる
24. ミスター・小悪魔系女子
25. ミスター・納税
26. ミスター・生い茂る草
27. ミスター・非検閲
28. ミスター・いじめ(生産中止)
29. ミスター・ああああ
30. ミスター・偽装結婚
31. ミズ・パリピ
32. ミスター・リスペクトありすぎとミスター・リスペクトなさすぎ ✔
33. ミスター・犀賀六巳
34. ミスター・証明
35. ミスター・わすれっぽい(GAWリミックス)
このメッセージから、SCP-XXX-JP-A、-Bがこれまでに存在を予見されていた「ミスター・リスペクトありすぎ」と「ミスター・リスペクトなさすぎ」である可能性が浮上しました。リトル・ミスターを模倣した人型オブジェクトに見られるタトゥーは背面に存在すると思われますが、その場合は確認にSCP-XXX-JPの分離が不可欠であり、危険性に対して財団に齎される利益が少ないことから凍結されています。
追加予定タグ: ゲーマーズアゲインストウィード 博士 safe scp-jp 電子デバイス
クレジット
タイトル: SCP-XXX-JP - 越境捜査
著者: ©︎
TF2045
作成年: 2019
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8142の標準的人型オブジェクト収容室に収容します。SCP-XXX-JPが所持していたスマートフォンとビデオカメラは同サイトの低危険度物品収容ロッカーに保管します。
説明: SCP-XXX-JPは背面が衣服ごと結合した2名のモンゴロイド系男性の総称です。発見された時点で2名とも不明な要因によって昏睡状態に陥っており、現在も覚醒は確認されていません。当時、SCP-XXX-JP-Aは製造元不明のスマートフォンを、SCP-XXX-JP-Bはソニー株式会社製のビデオカメラを所持していました。
SCP-XXX-JP-Aは20代後半~30代前半に見える男性です。外見は2015年1月に行方不明となった早川 ██氏(当時21歳)と酷似していますが、DNAや指紋は一致していません。所持していたスマートフォンには同一の山中で撮影されたと推測される40秒の映像が多数保存されており、その全てに2017年1月以前に捜索願が提出された日本人1名(以下、対象)が映り込んでいます。映像は対象が怯えた様子で山中を走る光景を離れた地点から撮影したもので、対象は最終的に白色の作業服を着用した人物に確保されて暴行を受けます。対象は反撃を試みることなく再度逃亡しようとしますが、成功した例はありません。撮影方法、カメラのアングルやポジション、対象と作業服の人物の振る舞いから、撮影者は物陰に身を隠しているため2名にその存在を気付かれていないと思われます。
SCP-XXX-JP-Bは40代後半~50代前半に見える男性です。所持していたビデオカメラにはSCP-XXX-JP-Bが対象と思われる人物を山中で埋葬する約10分の映像が、先述の動画と同数保存されています。これはSCP-XXX-JP-Bが素手で埋葬用の穴を掘り始める場面から始まり、2本の木の枝で構成された十字架が立つ簡素な墓へ合掌を行う場面までを大幅にカット編集したもので、カメラアングルなどの特徴は先述の映像と一致しています。このことから、先述の映像同様、SCP-XXX-JP-Bも撮影者の存在を認識していないと思われます。
SCP-XXX-JPは2017/1/14、██県███山にて登山者が「背中がくっついた死体を発見した」と警察に通報を行い、異常存在の関与が疑われたことで財団の管理下に置かれました。
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30. ミスター・鮫島
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29. ミスター・ああああ
30. ミスター・偽装結婚
31. ミズ・パリピ
32. ミスター・リスペクトありすぎとミスター・リスペクトなさすぎ ✔
33. ミスター・犀賀六巳
34. ミスター・証明
35. ミスター・わすれっぽい(GAWリミックス)
このメッセージから、SCP-XXX-JPがこれまでに存在を予見されていた「ミスター・リスペクトありすぎ」と「ミスター・リスペクトなさすぎ」である可能性が浮上しました。リトル・ミスターを模倣した人型オブジェクトに見られるタトゥーは背面に存在すると思われますが、確認作業はSCP-XXX-JPの分離が不可欠であり、危険性に対して財団に齎される利益が少ないことから凍結されています。
追加予定タグ: ゲーマーズアゲインストウィード 博士 mister safe scp-jp 人間型
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の人型オブジェクト収容室に1体ずつ収容します。
説明: SCP-XXX-JPは頭部を中心に異常な身体的変化が発生した人物の総称です。SCP-XXX-JPの頭部は胴体から分離・浮遊した橙色の輪に置換されており、全方位への回転、拡大および縮小、明滅などの変化を不規則に繰り返しています。また、脳をはじめとする多くの器官の欠如にもかかわらず、精神構造や視力・聴力、声紋などは変化前と同様であることが判明しています。
追加予定タグ:
画像出典
出典:
作者:
ライセンス:
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス:
特別収容プロトコル:
説明: SCP-XXX-JPは多数のスポーツやテーブルゲームをプレイした映像が使用された、6分47秒の動画です。
SCP-XXX-JPは動画共有サービス「YouTube」において、「フォーエバー・キング20██」というタイトルで投稿され、
追加予定タグ: オンライン scp-jp
画像出典
出典:
作者:
ライセンス:
事案1692-JP: 20██/██/██、冷凍保管庫からSCP-1692-JPの死体が消失していることが判明しました。発生当日のサイト-9214周辺や保管庫内では不審な事象は確認されておらず、原因は不明です。現在、機動部隊によってSCP-1692-JPの捜索が行われています。
聖書か何かに載っている、羊の話を思い出した。
狭くて真っ暗な牢屋の中。もう随分前から、ずっとここに閉じ込められている。やることと言えば、初恋の人との記憶を思い出すぐらい。あの人と初めて出会った場所も、こんな風に暗い所だった。あの時の彼は若く、ひどく無知だった。牢にいた私に対して伸ばした手は、すぐに母親に見つかって引っ込められた。
ただ、彼の無邪気な笑顔は暗闇の中にいた私にとっては希望だった。
できることなら、この体で手紙を書きたかった。
実験記録640-JP-7 - 日付200█/██/██
対象: エージェント███
結果: SCP-640-JP-1内に一枚の便箋が現れました。内容は以下の通りでした。
画像出典
出典: Pixabay
作者: DonnaCR
ライセンス: CC0
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル:
説明: SCP-XXX-JPは1984年に建設された、大阪府大阪市に所在するオフィスビルです。地上15階建てで、1階以外は宿泊施設や娯楽施設などに類似した設備が整備されています。建設に関与した企業やテナントなどへの調査から、これらの設備は建設当時は存在せず、改装や導入された記録も存在しないことが判明しています。
SCP-XXX-JPの地上2階から13階までの各階は客室のような内装の部屋が5部屋存在しており、各部屋に1名の居住者(以下、SCP-XXX-JP-A)が存在します。SCP-XXX-JP-Aの外見は日本国内で報告されている行方不明者と同一であり、いずれも身体的・精神的な異常は見られません。また、居住の理由については「自殺しようとしたが、気付いたら客室にいた」「死ぬのが馬鹿らしくなって、ここに住むことにした」と主張しています。SCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JP内の設備を利用して共同生活を行っており、主に様々な分野の創作活動に従事しています。
SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPの客室に設置されたラジオ受信機型の機械です。異常な耐久性から分解は失敗しています。また、底面には『製作: (株)超工家電』と刻印が施されています。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JP-Aにのみ操作が可能で、放送する内容は通常の放送とは異なり、SCP-XXX-JP-Aが望んだ情報を
追加予定タグ: safe scp-jp 建造物 家電
画像出典
画像#1 (ベッド)
出典: Pixabay
作者: Pexels
ライセンス: CC0
画像#2 (ラジオ)
出典: Pixabay
作者: DonnaCR
ライセンス: CC0
高校1年の夏が終わる。そう思ってから、僕は連日出かけている。遊び足りない、夏を感じたい、この長い休みでしかできないことがしたい。動機は色々あったが、一纏めにして言えば、些細なことでもいいから変化や発見が欲しかった。それを通して、目標もない日々を変えたかった。
今日は自転車に乗って慣れない道を通り、少しだけシャッター通りのような商店街を真っ直ぐに駆け抜けている。明るい夏の陽射しに照らされたアーケードのない道は、言っては悪いがいつもより一層寂れて見える。父さんが言うには昔は写真館とか下駄屋とか、もっと色々あったらしい。そんな過去の世界を断片的にでも感じられたら、その知識を得られたら、僕は何かを見付けられるだろうか。そんなことを考えながら、行くあてもなく自転車を漕ぎ続ける。
途中、気まぐれで本屋の前に停まった。所持金の使い道も含めて完全なノープランだから気になったものは全部買ってしまおうか、いや、バスや電車に乗るかもしれないし暇潰しに1冊ぐらい。そんなことを考えながら本を探す。
少し迷った後、買ったのは1冊の短編小説集だった。それも全然知らない作家の。手に取った理由はただ目についただけで、決して本が帯やタイトルで何かを強く訴えたからではない。だけど、これが僕の未来を変えてくれるかもしれない。そうあってほしい。そんな期待を込めて、店を後にした。
最寄り駅から各駅停車に乗り、人の少ない車両でさっきの本を開く。車窓から見える景色よりも、今はこの本だ。はらり、はらりと捲られていくページ。そこに描かれた世界を頭の中に複製し、その動きを読み取っていく。
もっと面白い人間になりたい。夏休みが始まってからそう思った。これまで自信を持って得意と言えるものがなかったから。何かしら誇れるものが欲しかったから。そんな感じの単純な理由で。
だが、その程度の思いで現状を変えられるなら誰も苦労はしない。がむしゃらにあれこれ挑戦してみたが、誇れそうなものどころか、そこにたどり着くために必要な、強く惹かれる何かを見つけられないまま最後の3日となった今の僕は机に突っ伏して、「高校1年の夏」という貴重な時間を無計画に食いつぶした自分の馬鹿らしさを呪っている。失敗続きで焦っていたことや失敗を受け入れるのが苦手な性格もあり、理想と現実のギャップから来る無力感に心を押し潰されそうだった。
その一方で、先行きは暗くないと必死に自分に言い聞かせている。まだ好奇心は尽きていない。興味を極限まで引き出してくれるものはきっと見つけられる。希望はある。まだはっきりと見えていないだけだ。
ならばやることは1つだ。目的が達成できない理由が分かっているなら、後はそれを解決するだけじゃないか。単純だ。出かけよう。行くあてもなく彷徨うのだって、きっと無駄じゃない。
そう信じて、部屋の隅から肩掛け鞄を持ち出し、今日も部屋を出た。
自転車に乗り、すっかり寂れた商店街を真っ直ぐに駆け抜ける。父さんが言うには、昔はもっと色々あったらしい。そんな過去の世界を断片的にでも感じられたら、その知識を得たら、僕は何かを見付けられるだろうか。
すれ違うのは年配の人が多い。あの人が知る世界を、僕も見てみたい。
「秋は実りの季節です。それと同時に、一人一人が今年得たものが熟していく時期です」
いつもは聞きたくもない校長の話がするりと耳に入り、思考を促していく。思い出すのはあの猫のことだ。
僕は残りの4か月、いや、残りの人生でどこまで成長できるのだろうか。どこまで熟すことができるのだろうか。そして、何を遺せるのだろうか。
目指すのはあの猫だ。あの猫のように、死してなお、その生き様が誰かを導く。そんな人間になりたい、いや、必ずなる。心の中で、静かに決意した。
超常現象記録-JP-██
概要: ██県██市一帯に、包装のない白い箱が出現しました。箱の中身は全てイエネコ(学名:Felis silvestris catus)の死体で、目撃者は全員「あの猫は好奇心が満たされて死んだ」と主張しました。発生から10分後に死体は全て消失しました。目撃者には記憶処理が施され、監視カメラの映像は全て差し替えられましたが、発生場所が広範囲なため、継続して目撃者の捜索が行われています。
・「面白い人間」になりたい主人公→好奇心が足りない。
・夏休みにあれこれ試すが、うまくいかない日々→夏休みも終わりに近いある日、さっきまでは無かったはずの猫の焼死体を発見する。
・死体を見て、なぜか「好奇心が猫を殺す」という言葉を思い出し、「この猫は好奇心が満たされて死んだ幸せ者だ」と考えた。
・始業式。校長は「秋は実りの季節です。それと同時に、一人一人が今年得たものが熟していく時期です。」と話す。主人公は幸せな猫の死体を思い出し、「腐ることを拒絶して熟し続ければ、自分もいつかあの猫のような『幸せな最期』を迎えられるのか」と考える。
「蜘蛛の子を散らす」という言葉がふと頭に浮かんだ。散り散りになって逃げる蜘蛛のイメージで脳内が支配される。イメージの中で視点が一歩ずつ前へと進み、その度に蜘蛛の群れは徐々に数を減らす。やがて真っ白な道だけが残ったが、3週間前はそこにあった希望は影も形もなくなっていた。
自宅に帰ってしばらく、俺は椅子に座ることもなく、壁を背にしてへたり込んでいる。部屋の隅には俺がイチから設計して組み立てた、俺の子とも言える1台の掃除機があった。明日、この子は徹底的に壊され、殺される。当たり前だが、そんな状況でも機械は何も言わない。部屋を押し潰そうとしている沈黙が、我が子の諦念を示すように思えた。沈黙が持つ重苦しい雰囲気はそのまま、俺の精神をも潰そうとしている。
いつ消されてもおかしくない会社を救う、画期的な商品。それが超工家電の社員全員が今求めているものだ。この掃除機のアイデアが降りてきたとき、これが実現すれば、俺たちが望んでやまなかった未来に近づけると確信した。
この子は会社の希望で、未来を創る存在で。そして、俺の野心の結晶として生まれた。だが。
超工家電は異常な組織として、はっきり言って非常に弱い。他の異常な組織、ようは「外敵」に睨まれたら中々動けず、本気を出されたら跡形もなく潰されてしまうだろう。だから外敵の気分を損ねないように議論と調整を重ねに重ねた商品だけを出すことで、どうにか耐えている。この悲しい立場の原因として、ここが普通の人間とほぼ同じ能力や価値観を持った社員が大半の中小企業であるというのが挙げられる。勿論そうでない社員もいるが、それを理由に不当な扱いはしない。俺たちには彼らが必要だし、彼らだってここに留まる理由がある。決してパワーバランスは偏っていない。
その「価値観の相違」を容認する最大の理由は、商品の調整にある。例として、「入ると病気がみるみるうちに癒えていく風呂」を販売したとしよう。きっと莫大な利益がでるが、実現すれば███会が黙っていない。医療人のクセして自分から病人を増やし、年がら年中あの手この手で我田引水。そんな連中だ。自分たちの利益を横取りする敵はありとあらゆる手段を用いて始末するだろう。だからそんなアイデア。
じゃあ何を売るのかというと、便利機能の代わりに、使いどころの分からない機能が付いた製品だ。それでも一応「便利」と「需要無し」の中間程度の機能を目標としている。ただ、販売できるラインに押し上げるため、人殺しのための機能を付けることも少なくない。
他には、普通だったり比較的穏やかな組織、酔狂な金持ちに契約したりして補っている。MCFには前々からお世話になっているし、上は韓国の樫の木楽団との商談も計画している。桜桃楽器が口出ししてくる可能性も無きにしも非ずだが、楽器販売ぐらいしか興味がないと聞いているのでまだ安全だろう。
シャッターが下りた窓ばかりの会社──外観は殆ど廃工場なのだが──の廊下。社員は社長・部長クラスからヒラまで1人残らず、内外ともに殺風景なオフィスで外敵への下剋上を果たすべく日々働いている。中小企業なので社員数はそこまで多くないが、全員が大手の連中に負けないほどの溢れんばかり熱意と、臆病な心を秘めて生きている。1人1人が会社の礎となり、暴走しがちだが熱意溢れる社長に振り回されながらも辛い現状を打ち破ろうとしている。さながら青春ドラマだ。実態はブラック企業なのだが。
俺以外誰もいない廊下の隅、自販機の前に立って天然水を買う。決して好きなわけではないが、疲れて味が分からなくなった時の虚しさも感じないし、喉を通る冷たさが俺の意識は確かだと保証してくれる。疲れで心が折れないように張った、我ながら無茶苦茶な予防線だ。だがこんな無茶をしてでも、俺たちは日々死ぬ気で働かねばならない。これは他ならぬ俺たち自身の意思なのだ。
クレジット
タイトル: キネマ
著者: ©︎
TF2045
作成年: 2019
見たくなければ見ない、それは最も手軽で効果的な自衛の方法だ。嫌悪を抑え込んで無理に向き合っても、決して良い結果は生まれない。あるときからそう強く信じ始め、私は次第に創作から離れていった。何においても中途半端なアイデアの数々から目を背ける理由を得て、それらに埃を被せて腐らせてしまうことに対して感じるものが段々と減っていったからだ。そして私は今、それ以来疎遠になったはずの旧友に、見たくもない邦画を見せられている。観客は私一人だけ、会場はあいつの自慢のミニシアターだ。
まったく興味がないために、内容はほとんど頭に入ってこない。画面では人々がパニックに陥っているように見えるが、何かしらの感情や先の展開への疑問は湧いてこない。いたって空虚で、大学生の時に受けた音楽に関する講義の内容を、ぼんやりとだが思い出した。
確か、同じ映画でも日本版と北米版では演出に相違点があるという話だ。両者は流れる音や、音の流れる場面が微妙に違う。そこから邦画は視聴者を物語に参入させ、反対に洋画は物語と視聴者を隔絶させる効果を得るそうだ。
昔ならそこに注意を払って創作の糧にでもしていたのだろうが、今の私にそんな気力はない。意識は完全にスクリーンの外にある。その代わりとして、自分がこの状況に至った経緯をじっくりと振り返る余裕があった。
そもそも、この件の始まりはあいつとの再会だった。先月の頭、偶然同じ店で酔っていたところ、あいつの方から声をかけてきた。少し飲み過ぎたせいで気分が高揚していた私は、近況どころか住所までべらべらと喋ってしまったのか、後日あいつから手紙が送られてきた。
内容はごく普通の挨拶と二回目らしい近況報告と、一つの要望から成っていた。どうやら私が筆を折ってから間もなく熱意が冷めてしまい、あいつも創作を止めたらしい。だがその時の熱が10年以上経ったここ数年で蘇り、私を含めた昔の仲間たちと無性に会いたくなったのだという。
読み進めるうちに、吐き気のようなものがこみ上げてきたことを覚えている。先月の酒による悪酔いが、今になって襲ってきたのだ。そんな頭で現状の打開策は出るはずもなく、断ることも良心が咎めた。
私は創作者であり続ける意欲を失っただけで、創作自体を忌避しているわけではない。むしろ活発であってほしいと願っているのだ。疲れてしまったが故に、創作に対しては一介の消費者であり続けたいのだ。昔の仲間と会ってあいつの創作意欲が刺激されるならば、行くことはやぶさかではない。
しかし、いざ行ったとしても、消費者となった私があいつに受け入れられるかどうかが大きな不安であった。もしかしたら、それに完全に納得できず、悪気なくかつての私のことを話題にするかもしれない。その過去やかつて放棄したアイデアたちと向き合うことは己の才のなさと向き合うことと同義であり、この上なく恐ろしいことである。
迷いに迷った末、結局私は誘いに応じてしまった。あいつを信用したいと思う気持ちからの判断だった。それがどうだ。来てみれば客は私一人。何故かミニシアターに案内されたかと思えば、急用が入ったと言って再会を懐かしむ間もなくあいつは出て行ってしまった。しかもスクリーンには微塵も惹かれない映画だ。
改めて映画に目を向ける。やはり興味は湧いてこない。あいつの無計画さにはほとほと呆れる。
昔はそうではなかったのだ。少なくとも今と違ってしっかりした、計画性ある男だったことは確かだ。私と違って締め切りに間に合わなかったことは一度もなく、活動に遅れたこともない。だが決して失敗を知らないわけではない。多くを学び、取り入れ、捨て、己が生み出せる最も美しい作品を書こうと苦悩している姿を何度も見てきた。その夢のためか、あいつは大学生にも関わらず、子供のように旺盛な好奇心の持ち主だった。創作の糧になると考えたならどのようなことにも首を突っ込み、一緒にいた私も巻き込まれ、面倒ごとになったことは少なくない。それでもその真っ直ぐな熱意に、私は憧れを抱いていた。これもまた確かなことだ。
そんな男があのようになってしまったのかと思うと、途端に寂しくなった。今自分がいるこのミニシアターも、どうやら終盤に差し掛かったらしいつまらない映画も、かつての若さを失ってしまったあいつの象徴に思え始めた。もはやこの部屋にいることさえ苦痛だ。そう思ってこの部屋を出ようとした直後であった。あいつが戻ってきた。
「ああ、やあ。ごめん。遅くなった」
よりによってこんなタイミングで。少々恨めしく感じながらも労いの言葉をかけた。あいつは謝るばかりだった。
「本当にごめん。ああ、映画終わったんだ。クレジット見た?」
こいつは何を言っているのか。先ほどから苛立ちが募っていたこともあり、はっきりと「見る気も起きなかった」と返した。それを聞いたあいつは、少し残念そうな表情で口を開いた。
「そっか……やっぱり気付かなかったかあ……」
話を聞くと、どうやらあの映画には、大学時代の同期がいたらしい。知らない名前ではなかった。それどころか、それなりに親交が深かった者の一人だった。その時、彼が役者を目指していたことを思い出した。端役ではあったが、彼は夢を叶えたのだと、あいつは一転して嬉しそうに、懐かしむように口にした。だがその顔も長くは続かなかった。
それに付け加えるように、あいつは今日までに起きたことについて話し始めた。私以外の仲間は全員とうに筆を折ってしまったこと、蘇った熱意も既に再び燃え尽きようとしていること、自分の才の枯渇を自覚したこと、あの時していたこと全てが無意味に思えてきたこと、作家としての自分や作品が忘れられる瞬間への恐怖に襲われたこと、覚えていてほしい一心から、かつて青春を共にした私を、藁にも縋る思いで招待したこと。
口を開くたびに、あいつの目に涙が浮かんでいったのがはっきりと見えた。必死にこらえていたからか、それがこぼれ落ちることはなかった。
私はどうすればいいのかわからなかったが、体は自然に動き、あいつの背中をさすっていた。多分私はこの世を去るまで、この瞬間を忘れることは許されないのだろう。それがかつて深く尊敬した小説家とその子供たちに対する、私にしかできない感謝であることを、直感的に理解していたのだ。