アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、サイト-8149に特設された28m×28m×20mの極低温収容庫内に安置されています。担当職員は、毎日の温度、質量、脈動周期の変化を日次報告書に記載してください。異状が発見された場合、速やかに保安部に通報し指示を仰いでください。
月に一度のメンテナンス時のみ収容庫内に立ち入る事が許可されますが、どのような理由があろうとオブジェクトの周囲10m以内への進入は許可されません。入室者は複数の手段を用いて監視され、退出時に厳正な精神鑑定を行います。
説明: SCP-XXX-JPは、およそ直径8mの暗灰色をした真球状の物体です。極低温下では安定した球形を保ちますが、実体はコールタールに似た粘性を示す未知の液性金属の集合体であり、耐熱性と耐火性、そして非常に高い弾性と靱性を併せ持ちます。現在に至るまで、あらゆる破壊の試みは全て失敗に終わっています。
摂氏19℃以上で活性化し、極めて強い表面張力によって周囲のあらゆる物体に対し侵略的、捕食的な性質を示します。大きさや素材に関わらず、付着された物体はすぐさま包み込まれて消滅し、SCP-XXX-JPの質量に還元されます。特に人間に積極的な反応を示し、非活性状態においても周囲を感知して流動する姿が確認されています。
極低温下においても、中心部が一定の温度を保っていることが判っています。実験によって増加した質量に比例して温度も上昇している事実から、原因は検出不能の重力による何らかの崩壊熱にあると仮定されています。よって、これ以上の質量の増加は深部温度が活性水準に達する事態に繋がると考えられ、重大な収容違反に至る危険を避けるためにも、EXXX-8の実施を最後に以降の実験は全て中止となりました。
新たな収容方法が確立されるまでこの状態を可能な限り維持することが、特定異常存在収容会議において採択されています。
分析記録SCP-XXX-JP-a: SCP-XXX-JPの触れた物体が分解して生成される物質で、物体由来と思しき成分が1パーセント未満の割合で含まれる以外、そのほとんどが鉄分子の微細な粒子から構成されています。熱や酸化に対する反応も他の鉄同位体と同様です。
SCP-XXX-JP-aは、生成後一分以内にSCP-XXX-JPの両手の平に吸い込まれて消えます。この反応は、SCP-XXX-JPの半径約1.2mの範囲外では起こりません。持ち出したSCP-XXX-JP-aは、一般的な砂鉄の性質を維持します。
追跡調査記録SCP-XXX-JP: 偽装処理の過程で行った追跡調査では、対象の保護者に辿りつけませんでした。■年前、擁護施設の玄関に横付けされていた軽自動車の助手席で、ベビーバスケットの中で毛布に包まった状態で発見されたのが最初の記録です。通報記録が無いため、この時点で目立った特性は保持していなかったものと思われます。
自動車はレンタカーで、ドアはロックされエンジンも掛かったままでしたが、運転者と思われる存在は現れませんでした。同施設は、車内から市販のぬいぐるみ1体と添えられた手紙1通を回収し保管していましたが、現在その行方は判っていません。手紙の内容に関する記録も残っていません。
当オブジェクトの重要性を鑑み、関連項目の捜索及び捕捉が渉外工作部に通達されています。
承認実験記録 順応適性試験AXXX-JP:
日次報告 AXXX-3-22 担当研究員 榊 ■■■: 素材の分類がほぼ終了したという見解を受け、物品の素材を数種に絞ることとした。対象が興味を示す形態には一貫性がないため、今後の試験では物品の造形と能力の発露の関係性に重点を置き、その傾向を明らかにしたいと考えている。
先日処分した保育士の補充が来た。適性試験をクリアしたため、翌日付けでD-81297 D-81298は保育担当CW-4-3 CW-4-4としての任務に当たってもらう。
定期健診 AXXX-3-22 担当医師 江田 ■: 数名の担当職員に非常によく懐いていたため、同職員の人事異動や解雇がもたらす影響が心配される。
日次報告 AXXX-4-1 担当研究員 榊 ■■■: 児童収容プロトコル初日の経過観察はすべて正常に推移した。予定通りことが進めば、次期計画の策定にこれまで以上の説得力を与えることになるだろう。
本日の試験から3種の市販品を正式に採用した。いずれも対象が選んだもので、数日前より試験的に導入していたものだ。身体的、精神的変調に一定の改善をもたらす事が判明したため、より円滑な実施のために一部試験科目を書き換えた。当物品の素材、ならびにモチーフとなっているキャラクターが対象の精神に与える作用を精査する。
何らかの異常性や身体的な負荷が確認され次第、以前のプランに差し戻す。経過観察は怠らないように。
定期健診 AXXX-4-1 担当医師 江田 ■: 体調は落ち着きを見せた。能力試験の結果を踏まえ、精神的にも収容初期の水準に十分回復したとみて良いだろう。同様の事態を再び招かないためにも、今後の職員の割り当てについて十分な検討をしてもらいたい。
発生事案ログ:
当報告書は収集された記録を元に再編纂された概要記録です。詳細は特定機密文書に指定されたため、クリアランス4以下の全職員には、当報告書の閲覧のみが許可されています。
■■/■■ 9:09
対象は、保育担当職員2名[D-81299 D-81302]と警備員2名[C-812521 C-812537]とともにロビーを通りかかります。ロビーは意図的に照明を落としており、ロビー中央にあるテーブルにはアメニティの紙皿と、その上に乗せられた直径約30cmの木製のオブジェ(複数の動物が模されたもの)が安置されています。暗闇に戸惑う対象に対し、随伴職員が促す姿が確認されています。
対象がロビーに入ると照明が付き、隣室から2名の保育担当職員[D-81301 D-81297]と1名のロジスティクス担当職員[C-812399]が、誕生日を祝う一般的な詩歌を歌いながらロビーに進入します。
■■/■■ 9:19 曝露
対象がロビーに進入後、およそ9分32秒で最初の曝露が確認されました。室内に設置してある全ての監視カメラがオフラインとなり、別室のカメラ数台が衝撃音と複数人の悲鳴を記録しました。途絶する直前に残された映像を分析した結果、対象を中心とした半径およそ5m以上の範囲に、ほぼ瞬間的な曝露が起こったことが示唆されています。範囲内にいたと思われる職員6名は行方不明です。
■■/■■ 9:■■
事案発生から■分後。ロビー(以下作戦エリア)に、機動部隊ろ-9"調理師"の先発部隊員8名が到着します。この時点での対象には激しい変化は見られず、北東の角で自身が形成した粘性物質の中央に座り込む姿として確認されています。
機動部隊員が到着した時、担当研究員の榊博士が作戦エリア内に進入していました。この時点で、榊博士には服務規程違反、ならびに収容規則違反が適用され捕捉対象となりましたが、同時作戦展開中である機動部隊い-33"夜逃げ屋"への影響を鑑み、処分は一時保留となりました。
■■/■■ 9:■■
[削除済み]
事案XXX-2最終報告:
第二次作戦の発令ののち、約206分の戦闘の末、対象は沈黙しました。第一次作戦における臨界爆発事故と、対象の曝露によって行方不明となった担当職員7名、機動部隊員46名については、当事案の収束宣言をもって死亡とし、偽装検案書が作成されました。破壊または損壊を被ったSCPの詳細へのアクセスは禁止されています。
収容されたSCP-XXX-JPは、特定異常存在収容規程に基づく検査のため、サイト-81■■へと移送されました。
当事案発生以後、SCP-XXX-JPのオブジェクトクラスがketerに再分類されました。
甚大な被害を受けたサイト-8131の再建予定はありません。番号は抹消され、当時再建中であったサイト-81■■に新たに割り当てられています。
この文書は、作戦エリア跡地から発見された便箋に記されていたものです。収容作戦時には発見されておらず、その後いつの時点で出現したのかは不明です。便箋は折り紙のうさぎの型に折られた状態で、大部分が浸水と延焼により解読できませんでした。また、筆跡鑑定ではSCP-XXX-JP自身を含む関係者全員に該当がありませんでした。
以下、復元された文章の一部です。
[判読不能]の手紙を読めるようになった頃、父さんはもうどこにもいないだろう。こうする事しかできない父さんを、どうか許し[判読不能]
[判読不能]んと母さんはずっと一[判読不能]
この文書は、焼失した担当研究員の個室で発見された日記に記されていたものです。当文書には、サイト保全規約、ならびにDクラス職員運用規約に違反する箇所が含まれていますが、当該研究員の死亡をもって処分は不問とされました。
この文書が表沙汰にならないことを、切に願う
■月■■日
収容室内の■■ちゃんはでうつ伏せに寝転がっていた。私と保育士に気付かず、両足をバタバタとしながら何かに夢中。物音に気付いて、■■ちゃんは子猫のようにうずくまる。「■■ちゃん。どうしたの?」 「もう少し。待ってて」
少し恐れながら、「なにをしてるの?」という声を思い浮かべた、その瞬間、
「できた!」 ■■ちゃんはすくっと立ち上がり、スケッチブックを掲げるように持ち上げ、こちらにトコトコと駆けてくる。■■ちゃんは恥ずかしそうな声を上げてから、スケッチブックを私に預けた。
似顔絵。防護マスクの中の3人の顔を、とても丁寧に描き分けて。私は思わず、
思わず、保育士達に目を移す。どんな表情をしていた。保育士達と目があった。笑顔を返してきた。気付いたはずだ。間違いなく。
この事実は絶対に秘匿されるべきだ。この処置がSCP-XXX-JPの収容に、ひいては財団の理念に対しなんら不利益をもたらすものでないことを、強く確信している。
補遺: 臨時収容プロトコル期間内において、SCP-XXX-JPの警備と運搬に直接関わった職員37名から、精神汚染を疑われる15件の報告がありました。いずれの症状も幻覚で、声や姿が複数の事例で共通しています。この一連の現象は、特定収容規則の策定後、警備プロトコルを見直したことで終息しています。以後、新たな報告はありません。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: safe
特別収容プロトコル:当オブジェクトの管理はエージェント田中に一任してあります。当人は毎年12月1日から同月31日までに、当オブジェクトの表面に記載された差出人の住所宛てに年賀状を作成し、指定された最寄りの郵便ポストに投函してください。投函後のポストは財団が入念にチェックし、葉書が消失していることを確認します。
説明:日本郵便から市販されている一般的な形の年賀状です。エージェント田中の実住所に、毎年1月1日に一通だけ投函されているのが発見されますが、差出人欄に記載されている住所や郵便番号は実在しておらず、また、差出人の名前もエージェント田中には心当たりがありません。
届いた年賀状の裏面には、正体不明の文字列と思しき羅列と図案が記されています。年始に届くため便宜的に年賀状と呼称していますが、現時点で差出人の意図は全く不明のままです。何らかの予知、予言、警告である可能性を考慮し、エージェント田中には差出人との接触を計る任務が課せられています。任務開始から37年が経過していますが、差出人と思われる存在とのコンタクトには成功していません。また、現在までに受け取ったすべての文書に対し、文字列や図案の翻訳、解読の試みは成功していません。(脚注1
補足:最初の発見以降、こちらからコンタクトを試みない限り、向こうからの返信はありませんでした。また、年賀状の体裁(脚注2をなしていない葉書は投函しても消失せず、送ることが出来ないようです。複数投函した場合や、収容プロトコルに記載してある期間外の投函も同様です。
(脚注1 研究の結果、図案に関しては、およそ12年周期で一定のパターンを繰り返していることが判っています
(脚注2 差出人名の署名や祝辞の言葉の有無)
了イ〒ム番号: SCP-XXX-JP
才ブジェク├クラフ、: safe
特別収容プロトコル:当オブジェクトの管理はエージェントΘΦに一任∪乙了りmä£。当人は毎年12月1日から同月31日mä乙”に、当オブジェクトの表面に記載(十れた差出人の住所宛乙に年賀状を作成∪、指定(十れた最寄りの郵便ポストに投函∪乙くだ(十レ丶。投函後のポストは財団が入念にチェック∪、葉書が消失∪乙レ丶る〓`cを確認∪mä£。
説明:日本郵便から市販(十れ乙レ丶る一般的な形の年賀状乙”£。エージェントΘΦの実住所に、毎年1月1日に一通だ|ナ投函(十れ乙レ丶るのが発見(十れmä£が、差出人欄に記載(十れ乙レ丶る住所や郵便番号は実在∪乙才らず、mäた、差出人の名前もエージェントΘΦには心当たりが了りmäせん。
届レ丶た年賀状の裏面には、正体不明の文字列`c思∪き羅列`c図案が記(十れ乙レ丶mä£。年始に届くた〆、便宜的に年賀状`c呼称∪乙レ丶mä£が、現時点乙”差出人の意図は全く不明のmämä乙”£。何らかの予知、予言、警告乙”了る可能性を考慮∪、エージェントΘΦには差出人`cの接触を計る任務が課せられ乙レ丶mä£。任務開始から37年が経過∪乙レ丶mä£が、差出人`c思われる存在`cのコンタクトには成功∪乙レ丶mäせん。mäた、現在mä乙”に受|ナ取った£べ乙の文書に対∪、文字列や図案の翻訳、解読の試みは成功∪乙レ丶mäせん。(脚注1
補足:最初の発見以降、〓ちらからコンタクトを試みなレ丶限り、向〓宀からの返信は了りmäせん乙”∪た。mäた、年賀状の体裁(脚注2をな∪乙レ丶なレ丶葉書は投函∪乙も消失せず、送る〓`cが出来なレ丶よ宀乙”£。複数投函∪た場合や、収容プロトコルに記載∪乙了る期間外の投函も同様乙”£。
(脚注1 研究の結果、図案に関∪乙は、才よそ12年周期乙”一定のパターンを繰り返∪乙レ丶る〓`cが判っ乙レ丶mä£
(脚注2 差出人名の署名や祝辞の言葉の有無
アイテム番号: SCP-375-JP
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: 収容事案375-2の発生により、SCP-375-JPに対する全ての実験計画は白紙となりました。事案発生以前の特別収容プロトコルと概要については、文書:旧特別収容プロトコルSCP-375-JP-1を参照してください。収容違反の詳細については、事案375-2報告書を参照してください。中断された生活適応実験375-16に関連する資料および記録データに対するアクセスは、クリアランスレベル4以上の承認が必要となります。
SCP-375-JPはサイト██にある15m×15m×10mの極低温収容庫内に安置されています。SCP-375-JPに対する追加実験は行われていません。担当職員は温度、質量、脈動周期の変化を記録し、日次報告書を作成してください。許容範囲を超える異状が発見された場合は、速やかに保安部に通報し指示を仰いでください。月に一度のメンテナンス以外で職員が収容庫内に立ち入る事は許可されていません。メンテナンス実施についての詳細は、375特定収容規則3-1項及び2項を参照してください。
特別収容プロトコル: SCP-375-JPはサイト31の改装済み人型用収容室に収容されます。収容室は全面にPE樹脂加工を施してあります。室内には、SCP-375-JPの心的ストレスを軽減するための措置として、検査済みの最低限の遊具、衣服、絵本等を持ち込むことが許可されていますが、一部素材の家具や電化製品、鏡、食器類の持ち込みは制限されています。許可物品の詳細は収容規則1-2項を参照してください。
SCP-375-JPに接見する担当研究員、Dクラスならびにロジスティクス職員には、特殊防護服375-Wが支給されます。入室時の職員は必ず防護服を身に着けてください。SCP-375-JPは実験時と身体検査時のみ外出が許可されています。食事ならびにレクリエーションは、収容室内か指定実験室内のいずれかでのみ執り行ってください。外出時のSCP-375-JPには必ず防護服を着用させてください。外出時にはサイトの保全規約に従って行動させ、警備員による監視を付けます。どのような状況にあっても、SCP-375-JPが指定区域の外へ出ることは許可されません。また、防護服越しであっても、SCP-375-JPと職員が直接接触する事態は、あらゆる場面において避けられるべきです。
承認実験375-1から375-4の結果を鑑み、生活適応実験375-5から375-10が策定されました。改訂された実験の詳細は、承認実験規則ならびに収容規則7-2項に記載されます。担当研究員は当日中に日次報告書を作成し、サイト管理者に提出してください。月次報告会議において日々の実験内容を詳細に分析し、実験記録を作成してください。SCP-375-JPと接触する機会のある担当職員全員に、毎月の精神鑑定が義務付けられています。精神汚染及びミーム汚染の疑いがある者は即座に人事異動され、以降の実験計画の見直しがなされます。
承認実験375-5から375-10の結果を受け、収容規則の一部が緩和されました。毎日午前9時から午後5時までの期間に限り、SCP-375-JPのサイト31内での収容指定区域が拡大されます。区域の詳細については収容規則11-4を参照してください。生活適応実験375-11から375-16が策定されました。実験計画の改訂により、SCP-375-JPの収容には標準的な児童収容プロトコルが適応されます。担当保育士には、教員経歴のあるDクラス職員が割り当てられます。職員の防護服は不要と判断されましたが、SCP-375-JP自身の防護服に関しては実害を憂慮し保留のままです。SCP-375-JPの行動範囲にあるすべてのデータ端末、電化製品、コンセントは撤去されます。SCP-375-JPの行動範囲は、常に2名の偽装警備員と3か所以上のカメラにより監視されます。関係者に精神汚染の兆候が確認され次第、実験は即時中断されSCP-375-JPは拘束されます。
説明: SCP-375-JPは標準的な日本人女性で、収容時点で█才でした。身長、体重共に19██年代の平均的な年齢水準を逸脱していませんが、両目が常に充血しています。視力は両目とも正常な範囲で、各種身体検査の結果、体組織についても後述する皮膚表層の侵襲部位以外、通常の人間となんら差異は認められませんでした。
SCP-375-JPはその皮膚で触れた物質に働きかけ、不明のプロセスを経て分子を再構築し砂鉄のような粉末(SCP-375-JP-a)に分解する能力を持ちます。生成される物質については、分析記録SCP-375-JP-aを参照してください。
接触部位は濃灰色の金属質な皮膚組織の侵襲が確認されている両掌と両肩の一部分で、物理的な接触後およそ10秒で反応が始まり、最長でおよそ3分以内には対象となった物質全体に伝播したのちに収束します。対象となる物質は非金属類の一部の無機物と、植物由来の一部の樹脂、塗料、繊維質に限られているらしく、それ以外の重金属類や石油由来の製品、水、食品及び有機的な生体組織や化合物に対する反応は示しません。影響を受ける物質についての詳細な情報は各実験記録の内容を参照してください。SCP-375-JPは19██年██月██日に███県██市の市営病院で発見されました。相談に訪れた母親と医師、看護師数名の前で異常現象を発現し、通報を受けた財団の即応封じ込め部隊が駆けつけました。関係者全員に対する事情聴取と、回収規約に則った記憶処理、戸籍の改竄、生活痕跡の抹消は、一両日中に全ての作業が正常に完了しました。即日付けでSCP-375-JPは拘束され、サイト31に収容されました。SCP-375-JPは数日に渡って不安と焦燥の感情を露わにしましたが、収容自体には協力的であるため、追加の拘束手段は必要としませんでした。実験記録375-1以後、人型異常存在収容規定に基づいて収容規則が策定されました。
実験記録375-1および分析記録SCP-375-JP-a、医療記録375-4の結果を踏まえ、食事と称した能力試験が承認され、実行に移されます。実験の詳細については、承認実験目録375-2から375-4及び375-5から375-10を参照してください。
分析記録SCP-375-JP-a: SCP-375-JPが物質を分解することで生成される物質で、その特性は一般的な砂鉄のものと非常に酷似しています。分解対象となった物質由来と思しき成分が1パーセント未満の割合で含まれる以外、ほぼ鉄と同一の分子構造を持つことが確認されています。また、SCP-375-JPの侵襲部位を構成する素材ともほぼ同一であり、関連性が研究対象となっています。検査の結果、分解前の物質と比較すると質量がわずかに増加する傾向が見られましたが、実験及び分析の過程において酸化したことが主原因であることが判明し、この仮説は否定されました。
SCP-375-JP-aは、観測不能の未知の磁場に引かれてSCP-375-JPの周囲に渦巻くように集約され、らおよそ█分以内にSCP-375-JPの侵襲部位に吸い込まれて消えます。この反応は、SCP-375-JPの半径約1.2mの範囲外では起こりません。持ち出したSCP-375-JP-aは、一般的な砂鉄の性質を維持します。
分解後の物質をすぐさま取り上げて研究を行ったところ、SCP-375-JPは空腹と喉の渇きによる不満を訴えました。SCP-375-JP-aを上述の範囲内に戻すと、即座に反応が起こり空腹が収まったことを証言しました。この事例により、分解、吸収の過程はSCP-375-JPにとって食事の代替行為であることが類推されています。
説明: 現在のSCP-375-JP及びSCP-375-JP-bは、およそ直径2mの未知の金属からなる真球状の物体です。その性質についてはほとんど判っていませんが、接触した物質に対する侵襲と捕食が確認されています。現状、収容庫の外壁の材質であるアルミニウムと██████による合金が侵襲を防ぐ有効な手立てであることが判明していますが、それ以外の物質による有効性の試験は、SCP-375-JP-bが見せる特性のために進行していません。
温度に対する耐性は、実験記録375-3の結果が適用されませんでした。現在の収容条件である、摂氏-███度(█K)以下の極低温が収容に一定の効果があると認められましたが、各種探査により完全な停止には至っていないことが判明しています。
SCP-375-JPの実体と推定される存在は、自ら生成したSCP-375-JP-bの中心に位置しています。████を用いた観測の結果、身体的特徴については最後の光学観測以来変化が見られませんが、その体積は年█%未満の割合で減少していることが判明しました。しかし同時にSCP-375-JP-bがほぼ同じ割合で増加していることが判っているため、単なる衰弱の証拠とはみなされていません。
平均深部体温はおよそ摂氏█.█度に達し、約██時間██分おきに脈拍と思われる微動が感知されています。この事例を生物学的な知見に当てはめ、SCP-375-JPは冬眠の状態にあると推察されています。新たな収容方法が確立されるまでこの状態を可能な限り維持することが、O5による特定異常存在収容会議において全会一致で採択されました。決議の詳細については、375特定収容規則1-1項を参照してください。
分析記録SCP-375-JP-b: クリアランスレベル4以上の承認が必要です。記事には閲覧制限が設けられます
SCP-375-JP-bは、SCP-375-JPの周囲に形成された未知の金属組織です。粉末状であったSCP-375-JP-aに対し、SCP-375-JP-bは半液状です。コールタールに似た粘性を示し、吸着したあらゆる物質を包み込んで取り込もうとする動的な性質を見せます。取り込まれた物質はすぐさま消化、同化され、SCP-375-JP-bの一部となり、同様の性質を示します。
█クラス災害的生物に指定されたため、分析及び発生事案に関する全ての記録は特定機密文書██████に転記されました。
医療記録375-JP: 収容規則に基づき行われた定期検査記録より、担当医師の所見を抜粋したものです。詳細な診断記録へのアクセスは許可されていません。医療記録375-37 医療担当 Dr██ ████ ██ ██/██
相変わらずSCP-375-JPの状態は健康そのものだ。最初の検査から体重は+-200gの範囲でしか変化していない。この█ヶ月余り、昼夜を問わず実験に明け暮れているとは思えないほど充実した身体状態を維持している。収容初期に見せた動揺が消え、一般的な児童の天真爛漫な反応を見せるようになった。性格や心理状態に目立った異状は見られない。この点に関しては、5名の鑑定医師全員の見解と一致している。また、両掌、両肩の侵襲部分であるが、測定の結果この█ヶ月で変異、移動、増大その他の兆候を一切見せなかった事を付記しておく。現状では判断に足る材料がまだまだ乏しいが、何らかの異常性による侵襲というよりも、体組織が変化して生成された未知の消化器官のように思えてならない。これは医師としての経験からの私見であり、公式見解ではない。現状成功していないが、正確で詳細な分析がいずれは必要であると提言する。
医療記録375-102 医療担当 Dr██ ██ ██ ██/██
体重の変動が落ち着きを見せた。収容初期の水準に十分回復したとみて良いだろう。この結果は、SCP-375-JPが心的ストレスに対しておよそ歳相応である事を、改めて示したといえる。また、心理状態が能力の発露に大きく関わることが実験記録により判明しており、極めて憂慮するべき事態であったといえるだろう。今回の事態は、SCP-375-JPの精神性と異常性との関連を軽ろんじた結果であり、心的負荷を無視した無為無策な担当職員の解雇や異動は容認されるべきではないと提言する。今後の職員の割り当て方法について、十分な考慮が必要である。
実験記録375-1: クリアランスレベル2以上の承認が必要です 承認レベルが引き上げられました。クリアランスレベル4以上の承認が必要です 承認レベルが引き下げられました。クリアランスレベル2以上の承認が必要です
収容直後のインタビュー記録です。SCP-375-JPは機動部隊員1名に連れられ、サイト31内の面会室に入室しました。以下の記録は、担当研究員とSCP-375-JPのやり取りを記録した映像データの一部を抜粋し書き起こしたものです。当文書は事案375-2の発生後にクリアランスレベル4に指定されましたが、█████博士の提言によって閲覧制限がクリアランスレベル2以上に再度緩和されました。
実験記録375-1-1 担当研究員 █ ███ ██ ██/██
インタビューログ:午前█時██分
█研究員: こんにちは。
対象は俯いたまま座席に着席する
█研究員: えーと。おなまえ。██ ███(SCP-375-JPの戸籍上の姓名)ちゃん、よね?
対象の目頭に涙が溜まっているのを捉える
█研究員: 怖がらないで。███ちゃん。私の名前は███。お医者さんなの。あなたの名前を教えてもらえる?
約6秒の沈黙ののち、対象が口を開く
SCP-375-JP: ███(戸籍上の名前)
発した音声に対する精神汚染判定がなされる。結果が送信され受け取るまでの約10秒の沈黙ののち
█研究員: そうね。███ちゃん。なんでここに来たか、判るかな?
SCP-375-JP: これ?
対象が両手の平を上に向けて研究員に見せる
█研究員: これがなにか、知ってる?
対象は勢いよく首を振る
SCP-375-JP: 知らない。お母さんに聞いても知らないって。そしたら、お病気だからって。言われて。お医者さんに診てもらったの。でも、ダメだって。病気なんだって。お母さんが。でも。お母さん――
喋りながら俯いた対象の声は次第に小さくなり、聞き取れなくなる
█研究員: いつから、そういう風になったの?
SCP-375-JP: ずっと。ずっとそうなの。でもこないだ、それが見られたの。お母さんに。それで、お医者さんいこうねって。なって。それで。
注)対象の発言は証言記録375-2に矛盾します。母親はこの異状が収容時点から█日前の、対象の戸籍上の誕生日から発現したと主張しています。█研究員: そうね。それで――
こちらの話をさえぎるように対象が話し始めます
SCP-375-JP: お医者さん。その。これ治る? 治せる? お願いします。お母さんは、██は悪い子じゃないって。ちょっと違うだけだって。でも知ってるの。怖がってるって。みんな。それで、なんとかしようって。思って。それでも。やっぱり、また。お母さんに、また――
█研究員: 落ち着いて、███ちゃん。ゆっくり、こっち見て。ね?
SCP-375-JP: うん
対象は█研究員と目を合わせた後、再び俯く姿勢を取る
█研究員: 飲む?
テーブルに置いてあるグラス入りの飲料(オレンジジュース 80ml)を差し出す
対象は首を振る
SCP-375-JP: いらない
約12秒の沈黙ののち
█研究員: それじゃあ、██ちゃん。ちょっとお姉さんに、見せてもらっていいかな?
対象が顔を上げる
█研究員: ほら。██ちゃんのおうちや、████病院でやってみたこと。それをここで、お姉さんに見せてもらえる?
約5秒の沈黙ののち、対象は大きく頷いてみせる
記録終了 所要時間█分
その後1時間27分に渡って執り行われた実験については、実験記録375-1-2を参照してください。
実験記録375-5から375-16: 詳細な実験記録及び分析結果にアクセスすることは許可されていません。以下の実験記録は、担当研究員の所見欄を抜粋し書き起こしたものです。
承認実験375-5-5 担当研究員 █ ███
収容から██日経ったが、対象の生活適応実験に対する順応性にさしたる問題は起きていない。健康診断では毎回担当医師を驚かせ、その都度その様子に高揚する姿が見られる。異常能力を保持する児童によく見られるパターンであり、精神状態に変異が起こっているわけではないと思われる。精神鑑定及びミーム汚染診断にも正常な数値を示しているため、追加の診断科目策定は不要と考える。
承認実験375-6-21 担当研究員 █ ███
収容からほぼ█ヶ月が経過した。対象の順応性は目覚ましい。収容室内での行動は一貫して一般的な児童のありふれたパターンを維持し、職員とのコミュニケーションにも異常性は検出されていない。先月の実験と今月の実験により、対象が影響を与える素材が███分類にまで絞られてきた。素材の詳細については報告書375-6に随時記載する予定である。先日処分した保育士の補充が来た。適性試験をクリアしたため、翌日付けでD-████は保育担当C-4-4としての任務に当たってもらう。
承認実験375-8-15 担当研究員 █ ███
素材の分類がほぼ終了したという見解を受け、本日の実験から与える物質を数科目に絞ることとした。素材には対象が好物とする18種を選定した。嗜好性を判断するため、物品の形や色を適宜変化させてテストをする。現在までに判明している対象が好む形態には一貫性がないため、仔細な試験によって傾向を明らかにしたいと考えている。分析結果は追って報告書375-8に記載する予定である。
承認実験375-11-1 担当研究員 █ ███
児童収容プロトコルの初日の経過観察は、問題なくすべて正常に推移した。予定通りことが進めば、オブジェクトクラスの引き下げに同意してくれる博士達に、これまで以上の説得力を与えることになるだろう。本日の食事から、対象が選んだ物品12種が採用される。いずれも市販品であるが関連性は不明だ。何らかの異常性や身体的な負荷が確認され次第、配合レシピ375-8が再度適用される。経過観察は怠らないようにするべきである。
収容事案375-2: 当事案の詳細については、事案375-2報告書を参照してください。当事案の収束宣言をもって、SCP-375-JPのオブジェクトクラスがketerに再分類されました。これに対し、これまで2度の検討会議が開かれましたが、当オブジェクトの潜在的な脅威を鑑み評価は据え置かれています。現在、再評価、再分類の予定はありません。
編纂者 ██所属█████ ██ ████████博士 編纂日時██ ██/██
当報告書は、事案375-2収束宣言後に収集された映像記録、音声記録ならびに証言記録を元に、特定機密に指定された箇所を省き再編纂された概要記録です。当事案の詳細な報告書は特定機密文書███████に指定されたため、クリアランス4以下の全職員には、当報告書の閲覧のみが許可されています。出動機動部隊の任務記録及び作戦計画の全容については、作戦375-2報告書を参照してください。
以下、当事案発生から収束までの変遷を時系列に沿って記載します。個人名および組織名についてのアクセスは許可されていません。また、█クラス収容違反が認められた後の記録は記載されません。
██/██ █:██
対象は承認実験375-16の指定された実験科目を完了させるため、収容室[█-██]から保育担当Dクラス職員[D-████ D-████]によって連れ出されます。この時点では、後に現れる異常性の兆候はありません。また、担当職員に精神汚染の兆候もありません。外出に際する手続きにも違反はありませんでした。
██/██ █:██
対象は2名の保育担当職員と2名の警備員とともに、収容室から指定実験室に向かう途上のロビーエリア[█-██]を通りかかります。ロビーエリアは意図的に照明を落としており、ロビー中央にあるテーブル[標準的な会議用机180cm×45cm×70cm]にはアメニティの紙皿と、その上に乗せられた直径約30cmの陶器製の置物[複数の動物が模されたオブジェ]が安置されています。暗闇に戸惑う対象に対し、随伴の保育担当職員が促す姿が確認されています。
生存者[D-████]の証言によれば、なんらかの催しが開かれる予定があったのは確かなようです。関係者のほぼ全員が消失したため確認は困難でしたが、対象の戸籍上の誕生日が当日と重なることから、事前に綿密な計画が立てられていたものと推察されます。承認実験規則と収容規則に対する違反は確認されていません。使用された物品も全て検閲済みのものです。
対象がロビーエリアに入ると照明が付き、隣室[█-██]から2名の保育担当職員と1名のロジスティクス担当職員が、誕生日を祝う一般的な詩歌を歌いながらロビーエリアに進入します。
██/██ █:██ 曝露
対象がロビーエリアに進入後、およそ█分██秒で最初の曝露が確認されました。室内に設置してある全ての監視カメラがオフラインとなり、別の室内に設置してあるカメラ数台が衝撃音及び複数人の職員の悲鳴を記録しました。室内のカメラが映像を途絶する直前に残された映像を分析した結果、対象を中心とした直径およそ5m以上の範囲に、SCP-375-JP-bのものと思われる曝露がほぼ瞬間的に起こったことが示唆されています。曝露範囲内にいたと思われる職員6名の行方は、現時点まで不明のままです。
生存者[D-████]の証言によれば、対象はテーブルの前におかれた小児用の椅子[検閲済み 強化プラスチック製]に立ち、犠牲となった職員達に囲まれて先述の詩歌を一緒に歌っていたようです。そして、テーブルに置かれたオブジェに顔を近付け、防護マスク越しにろうそくを吹き消すマネをしたその直後、ロビーエリア全体が瞬間的に曝露したSCP-375-JP-bで覆われたということです。D-████は一時的に隣室に移動したため難を逃れました。
通報及び機動部隊の派遣:作戦375-2概略より抜粋
最初の曝露から約█秒後、通報を受けた███████は、当事案を事案375-2として特定収容プロトコルを策定、直ちに機動部隊の召集を指示しました。██秒後、機動部隊█-██(鳥かご)、機動部隊█-██(夜逃げ屋)、機動部隊█-███(調理師)が結成され、サイト31の当該区域に派遣されました。同作戦計画が正式に承認され、実行に移されます。通報から█分██秒後、作戦に参加する全機動部隊員が現地に到着しました。機動部隊█-██(夜逃げ屋)は、到着と同時にサイト31に収容中のSCP██体(うちEuclid█体を含む)の内、移動不可の█体のsafeオブジェクトを除く全オブジェクトの移管作業を開始しました。機動部隊█-██(鳥かご)と機動部隊█-███(調理師)は、サイト31警備部から任務を引き継ぎ、直ちに作戦計画に従った部隊展開を行います。
██/██ █:██
事案発生から█分後。SCP-375-JPによる事案に曝されたロビーエリア(以下作戦エリア)に機動部隊█-███(調理師)の先発部隊が突入します。この時点での対象には、初期曝露時に見られた激しい変化はなく、作戦エリア北東の角にうずくまっている姿として確認されています。また、室内にあった壁面以外の様々な備品すべてが消失してることが確認できます。機動部隊員が到着した時、SCP-375-JPの担当研究員である█研究員が作戦エリア内に進入していました。この時点で当該研究員には服務規程違反ならびに収容規則違反が適応され捕捉対象となりましたが、同時作戦進行中である機動部隊█-██(夜逃げ屋)への影響を鑑み、処分は一時保留となりました。また、当地をモニタリングしていた████博士によると、この時点では説得の試みに一定の効果が期待されていたのも確かなようです。詳細は文書375-5を参照してください。
██/██ █:██ (作戦時間█:██)
以下、機動部隊█-███の映像記録より内容を抜粋█研究員「██ちゃん。ほら、落ち着いて。落ち着くの。大丈夫だから、ね? さあ。こっち見て――」
呼びかけに対して対象に目立った反応は無く、効果のほどは判断できません。
対象「ちがう。ちがうよ。わたし、ちがう。ちがうの。███さん、████、███。ごめんなさい。ごめんなさい。なんで、なんで。ちがう――」
集音装置によって得られた対象の呟きの内容です。ほぼ同様の内容を何度も反復しており、重度の精神汚染の兆候と断定されました。距離と位置の関係から、█研究員の耳には届いていません。
█研究員による呼び掛けが約██秒続く間に、作戦エリアの南と西に位置する出入り口に、それぞれ1名ずつの機動部隊員が配置され、エージェント████は待機命令を発し指示を仰ぎます。配置完了からおよそ█秒後、対象を取り囲むように円錐状に展開していたSCP-375-JP-bの動きに活発化の兆しが見えたため、████博士はエージェントに█研究員の捕捉を通達しました。通達を受け、エージェントは室内の研究員に呼びかけますが、█研究員は依然説得を続けています。
█秒後、対象の形態が徐々に変化し、SCP-375-JP-bが体の周囲に纏わりつき始めます。████博士は緊急時対応██を承認、█研究員は即時解雇とし、機動部隊█-██(夜逃げ屋)の完了を待たずに、作戦行動███-█を発令しました。
作戦行動███-█最終報告 作戦375-2報告書より抜粋
作戦行動███-█が対象に与えた影響は、極めて軽微なものであると推定されます。第二次作戦である███-█の適用をもって本作戦は中止され、以後作戦の継続は機動部隊█-███[削除済み]に引き継がれました。作戦時間█:██における突入作戦時、即座に展開した対象によってエージェント████及び█研究員が曝露に遭い消滅。同時に、本作戦での使用が承認されていた██████████████の臨界爆発事故をもたらしました。この爆発により、同作戦エリアを含むサイト31の87%が焼失しましたが、観測の結果対象にはなんら影響が与えられなかったことが判明しています。この結果により、高温に対する耐性は実験記録を大きく逸脱していることが判明、新たな作戦行動が策定され実行に移されました。この爆発により行方不明となった機動部隊員██名については、第二次作戦の終了をもって死亡と判定し、偽装検分書が作成されます。また、対象の曝露に遭ったエージェント████及び█研究員については、事案375-2収束時点で死亡扱いとされます。
第二次作戦の発令ののち、約206分の戦闘の末、対象は沈黙し収容されることとなります。収容された対象は、特定異常存在収容規定に基づく検査のため、サイト██へと移送されました。当事案における被害額は██████以上と見積もられています。詳細については管理部門に問い合わせてください。破壊及び損壊を被ったSCPについては、報告書[削除済み]を参照してください。
当事案により甚大な被害を受けたサイト31の再建の予定はありません。番号は抹消され、当時再建中であったサイト██に新たに割り当てられています。
文書375-18 █████博士による提言: この文書は、収容事案375-2収束宣言後、サイト██の主任研究員█████博士が、事案375-2について提出した2枚の文書に記載された提言の記録です。████博士は当事案の最終責任者を兼任し、事案375-2の収束に多大な貢献を果たしましたが、その後の特定収容には極めて懐疑的な見解を述べています。以下、その抜粋記録です。
事案375-2報告書より
この事案の教訓は非常にシンプルなものだ。「甘く見るな」。振り返るに、この結果はすべてにおいてそこに起因しているのだ。対象が何者であろうとも、それがいかなる異常存在かを見誤り、すべての努力をフイにするような愚行を容認してはならない。当事案は人災であり、避けられるべき事態であったのは言うまでもない。巻き添えとなった隊員各氏と、希少な存在それぞれの犠牲を、決して無駄にしてはならない。当件に関わる資料に、必要以上の機密性は保持するべきでないと提言する。反面教師。失敗から何も学ばないのは愚の骨頂である。
特定収容に対する意見書より
我々は何か、大事な何かを見過ごしているのかもしれぬ。そう、たとえばその異常性にどのような理由があるのか、といったことだ。我々が得るものは結果だけだ。だが、結果はすべてを説明してはくれない。我々は、犯した過ちに気が付いているのか。[編集済み]
文書375-21 担当研究員 █ ███の私的記録: この文書は、焼失したサイト31内の担当研究員の個室にて発見されました。この文書には、サイト保全規約、ならびにDクラス職員運用規約に違反する箇所が含まれていますが、当該研究員の死亡をもって処分は不問とされました。下記は文書を包んでいた封筒に記載されていた文言です。
以下は、三つ折りにされた便箋に書かれた文章から抜粋された記録です。ああ、なんということだ。私としたことが、このような感情的な判断を下してしまうとは。情けない。
この記録は決して公には出来ないだろう。だが、私の身に何かが起こった時、あるいは起こりうる事態を想定し、この日記は残しておく。この文書が表沙汰にならないことを、切に願う。 サイト31 █ ███
█月██日。その日、██ちゃん(サイト31指定区域内でのSCP-375-JPの通称)は収容室内でうつ伏せに寝転がっていた。進入した私と保育士に気付かず、両足をバタバタとしながら何かに夢中だった。保育士C-3-1が物音を立てたため、██ちゃんはとっさに振り向き、すぐさまうずくまる姿勢を取った。
私は、「どうしたの?」と声を掛ける。担当保育士2名とともに近付こうとすると、彼女は声を上げる「まだだめ!」
私と担当保育士達は戸惑い、何らかのセキュリティ違反である可能性を考慮し、収容室の扉にロックをかけた。
「██ちゃん。どうしたの?」 私が再び声をかけると、「もう少し。待ってて」と制してきた。
私は少し恐れを抱きながら、「なにをしてるの?」という声を頭に思い浮かべた。その瞬間、先に彼女が口を開いた。
「できた!」
彼女はすくっと立ち上がり、両手に持ったスケッチブック[検閲済み木材パルプ製 287mm×202mm]を両手で掲げるように持ち上げて、こちらにトコトコと駆け寄ってくる。
「まあ、上手ね。」保育士C-3-3が気付いて声を掛ける。同時に私も思わず感嘆の声を上げた。「素敵ね。██ちゃん。」
「フフ」と恥ずかしそうな笑い声を上げてから、スケッチブックを私に預け、彼女は保育士C-3-1から防護服を受け取った。
似顔絵だ。クレヨンと色鉛筆を器用に使い分け、マスクの中に収まった私たち3人の顔がきっちり描き分けられている。回収記録と証言記録で読んだ彼女の将来の夢が、一瞬頭の中を駆け巡った。
ハッと保育士達の表情に目を移す。おそらく、今の私も同じような表情をしているのだろう。
保育士達と目があった。保育士C-3-3は笑顔を返してきた。きっと私の表情の変化に気付いたに違いない。
この事実は絶対に秘匿されるべきだ。担当者たる私の精神的な適性が疑われてはいけない。
保育担当の職員両名は、収容規則違反を理由に即日転属とし処理を施した。この処置は私の独断で行ったものだが、私の決断がSCP-375-JPの収容に、ひいては財団の理念に対しなんら不利益をもたらすものでないことを、強く確信している。
補遺-1: SCP-████及びSCP-████、SCP-████を用いた収容実験が5回申請されましたが、すべて却下または保留となっています。20██年█月█日現在、収容手続に例外は発生していません。
補遺-2: 事案375-2の爆心地で回収された3種の物品は、現在サイト██の検疫済みロッカーに保管してあります。いずれも作戦時の高温に晒された形跡がなく、一部焼失した手紙以外はほとんど無傷です。調査の結果、2種については市販されている物品と同一であることが判明しましたが、手紙の筆跡鑑定では関係者全員に該当がありませんでした。その出自は今もって不明のままです。
補遺-3: 事案375-2の収束後██時間に渡って行われた臨時収容プロトコル期間内において、警備部門とDクラス作業部門から、精神汚染を疑われる13件の事案(事案375-3から事案375-16)が報告されました。内容には、「子守唄のような声」と「複数人の男女の笑い声」がいくつかのケースにおいて共通していますが、現在に至るまでその原因は不明のままです。症状が確認された職員は、厳正な精神鑑定の結果、異動もしくは解雇となりました。この一連の現象は、特定収容規則の策定後、警備プロトコルを見直したことで終息しています。