Taoistの作品

アイテム番号:SCP-1789-JP

オブジェクトクラス: Euclid Keter

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収容中のSCP-1789-A

特別収容プロトコル: SCP-1789-JPは現在、サイト-81██内の収容施設に置かれた金庫に収められています。
SCP-1789-JPが外部に流出することが決してないように、収容施設には複数の監視カメラが設置され、二名のセキュリティー担当者によって常時監視されます。SCP-1789-JPを実験のため使用するさいには責任者である小鳥遊博士かピリャク博士による許可が必要です。許可なく、収容施設に侵入した場合は、終了を含めた厳罰に処せられることになります。
SCP-1789-JPが何者かに奪取されかけた場合は、直ちに装置一式を破壊する必要があります。

現在財団が収容されているものとは別のSCP-1789-JPが発見された場合は直ちに、報告を行ってください。回収には、機動部隊む-1「無為自然」が派遣されます。

説明: SCP-1789-JPの存在は、カオスインサージェンシーの離反者の情報提供によって知られることとなりました。彼は、自身の保護と引き換えに、SCP-1789-JPの装置一式を提供しました。現在、SCP-1789-JPの研究、管理に関してのみ協力するという条件で、財団に雇用されています。

SCP-1789-JPは共同体に対する深刻な認識障害を引き起こします。認識障害の大半は、共同体と共同体との間に引かれた境界線に対して生じます。境界線に対して、様々な理由づけを行い特定の共同体と共同体とが別々なものであると思わせるように仕向けます。SCP-1789-JPがなんであるかは、現在調査が進められており、不明です。文法、言語、寄生虫など様々な説が挙げられていますが、仮説の域を出ていません。

当初、SCP-1789-JPとは、パソコンとソフトウェアからなる装置一式からなると思われていました。しかし、複数の事案の際回収された装置は様々な年代のパソコンや携帯端末が用いられており、異常性を有するのはSCP-1789-Cであるとみられています。

財団が現在収容しているSCP-1789-JPは、単独では効果がなく、SCP-1789-JP-A、SCP-1789-JP-B、と呼称される二つの装置を用い、SCP-1789-JP-Cを作成することで使用可能となります。SCP-1789-JP-AとはノートPCです。SCP-1789-JP-Aは多少の改造が加えられていることを除いて市販の██社製の██シリーズと同一です。OSは市販のものではなく独自のものが入れられています。SCP-1789-JP-Bは、「七竅」と書かれたソフトウェアです。製作者および制作された年月日は不明です。SCP-1789-JP-BはSCP-1789-JP-Aを用いなければ起動できないよう設定されています。SCP-1789-JP-BによってSCP-1789-JPの効果を持つ情報媒体が作成されます。これをSCP-1789-JP-Cと呼称します。

SCP-1789-JPは、SCP-1789-JP-Cをメディアに流すことによって、影響を与えます。SCP-1789-JPの影響を受けた人物は、外見上何ら変化を及ぼさないため発見は非常に困難です。

SCP-1789-JP-Cは被曝初期に、対象に対し、SCP-1789-JPを他の人々にも伝えたいという強い欲求にとらわれます。こうして影響を周囲へと広げていきます。周囲の人間もSCP-1789-JPにさらされるため、認識災害は次第に拡大していきます。現在、こうした認識災害の拡大を止める術はまだ見つかっていません。唯一ありえるとすれば、SCP-1789-JP-1の終了、および装置の早期回収の他ありません。
SCP-1789-JPによる大規模な情報災害が確認された場合、複数のカバーストーリーを用いて対処してください。
 

文章-1789-JP: ピリャク博士からの書状

SCP-1789-JPに関する報告書はもう読んでもらったと思う。このオブジェクトを担当する職員は、西洋史特に近・現代史の知識を持つ者を選抜しているはずだから一連の文章の内容は理解できたことだろう。SCP-1789-JPが特定の民族の境界線を勝手に引き直す作用を持つことは理解できたはずだ。

しかし、奇妙に思うだろう。

「なぜこのオブジェクトが虐殺を引き起こすのか」。SCP-1789-JPは境界線に作用するものであり、人間に虐殺を引き起そうと扇動するわけではない。虐殺の文法ではないのだ。しかし、結果としてSCP-1789-JPは虐殺を引き起こす。なぜだろうか。

まずある一つの国を想像してほしい。その国は民族が一つしかないとしよう、そして、民主的で自由主義経済下にある。その国に暮らす国民は果たして経済的、政治的に平等であるだろうか。違うだろう。資本主義とはまず平等 でないという前提からなる。富めるものと貧しいものとに分かれていく。だから社会主義や共産主義という思想 が生まれたのだ。

さて、ここまでは個人レベルの話になる。今度はマクロレベルの話をしよう。単一民族の国家でも、文化に何らかの差異がないなどということはない。そして、経済の発展の上でも、都市と地方との間には大きな差が生じる。中国では沿岸部と内陸部と、イタリアでは南北、ドイツでは東西と様々な事例がある。個人にしろ、地域にしろこうした格差は単一民族であるならばあまり気にならない、少なくとも問題は「個人」または「地域」にあると考えるからだ。しかし、多民族国家ならそうはいかない。もし、富める者が特定の民族に集中していたなら?地域間の格差が民族間の格差にもなっていたなら?

問題はたちまちのうちに「民族」の問題となるのだ。前者で特徴的なのはユダヤ人。後者で特徴的なのはユーゴスラビアだ。こうした格差はあくまで「偶然」生じるもののはずだ。しかし、羨望はたちまち妬みへと変わり、憎悪へと変わる。「なぜあいつらだけ」と考えるようになる。少数派民族は少数だから多数派民族にばかり有利にされていると思い、多数派の民族は少数派ばかり優遇されていると思うようになる。アファーマティブアクションのようなシステムは、確かに民族間の格差を解消する役割を持つかもしれないが、ソ連やユーゴスラビアのように多数派の民族であるロシア人やセルビア人の不満を生み出していった。多くの多民族国家は、同化という形でこれに対処していったが、被支配民族からすれば、自分たちのアイデンティティを否定することを意味し、対立は激しくなる。青年トルコ革命後のトルコが良い例だろう。トルコ化を進めた結果、アラブ人との対立が激しくなったのだ。こうして、問題は民族間の政治的な対立へと発展していき、暴力的な対立も引き起こされる。あとは、君たちの知る通りだ。ルワンダやスリランカ、キプロス、ユーゴスラビア、ソマリアといった破壊と流血の歴史が続くことになった。

そうだ、SCP-1789-JPに虐殺を引き起こす能力はない。「きっかけ」を生み出すだけの存在にすぎない。些細な違いを指摘し、屁理屈のようにも見える理屈によって「自分たちはあいつらとは違う」と扇動するだけなのだ。しかし、そこからドミノ倒しのように対立が生まれ、民族紛争、虐殺が引き起こされる。ユーゴスラビアを見ろ、ルワンダを見ろ、ドイツを見ろ。何十万、何百万という人間が惨たらしく殺されていった。

南海之帝為儵、北海之帝為忽、中央之帝為渾沌。
儵与忽、時相与遇於渾沌之地。
渾沌待之甚善。
儵与忽諜報渾沌之徳曰、
「人皆有七竅、以視聴食息。
此独無有。
嘗試鑿之。」
日鑿一竅、七日而渾沌死。

なぜSCP-1789-JPが「七竅」と名付けられたか分かっただろう?