Tachyonの砂箱

 
 

 
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概要: 20██/██/██、突如SCP-049が担当研究員との接触を要求、その後独白に近い形で発話を行った。以下は発話内容の文字起こしである。
 
 
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[記録開始]

私は彼を知らなかった。否、知ろうともしなかった。

彼もまた、悪疫に抗い得ぬ者どもの一人だと、身勝手にも決めつけていたのだよ。

「先入観はこれ則ち進歩を殺す」学問の徒として同じ道を行く君たちならば、今さら指摘するまでもないだろう?

彼とは誰か、と?おいおい、知らないはずがないだろう!彼もまた私と同じく、君たちの隣にあるのだから。

そう、名も知らぬ「彼」!彼こそが新たな可能性だ!

「悪疫」を治療したわけではない。その場しのぎの投薬や手術で、症状の悪化を無意味に遅らせているわけでもない。

彼はただ悪疫を受け入れ、そして患い、それでもなお症状を巻き戻したかのように「石棺から顕れる」のだ!

ああ、彼に会いたい、研究したい、その可能性を探ってみたい!

なぜ私が彼を知っているのか?そんなことはどうでもよい!人が悪疫に抗い続ける限り、則ちそれは私にとって知るべきことなのだから!

私を突き動かすそれは、ただ純粋な衝動だ。知識を、真理を求めんとする唯一無二の原動力だ!
 
 
 
いやはや熱くなってしまったね、失敬失敬。

無論君たちの事情も少なからず知っているよ、ドクター。どうやら彼は──少しばかり難儀な性格のようだから。

私とて無用の怪我は好まないさ。彼との接触には相当の、なんというべきか──心遣いが必要だろう?むしろこの独房は、はやる気持ちを抑えるにはちょうどいいくらいのものさ。

おっと、なぜ私が唐突にこうも捲し立てるのかと、疑問を持っているのかね?

結構、答えようとも。悪疫が群れをなして来るのだよ。いよいよもって大絶滅が始まるのだ。これまでも多くの人々が倒れ伏してきた悪疫が、遂に牙を剥く瞬間だ。

あの洞穴の向こう側から聞こえないかね?今にも侵略せんと潜む悪疫の息遣いが。或いは一つでも聞こえるかね?未だ悪疫に侵されぬ生命の脈動が。

すべてが始まる。すべてが終わる。大絶滅はすぐそこにある。時間がないのだ、ドクター!

なに、畏れるには足りないさ。まだ、間に合う。

人類が数多の病に勝利してきた理由は、奇跡などでは断じてない。

ただ純粋なる科学の力だ。一人ひとりの科学者が、生涯を賭して立ち向かった歴史なのだ。

だから共に行こう、科学の徒らよ!

悪疫を根絶し、もうひとつの「向こう側」へと!

[記録終了]
 
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補遺: 後の調査により、SCP-049が不明な手段でSCP-076SCP-2935について知覚していると結論付けられました。
情報源は現時点で不明です。この事実を受け、SCP-049の収容体制見直しが提案されました。
SCP-049からの更なる情報の収集については、現在協議中です。

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タイトル : 喰らうもの、抗うもの

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君は、抹香鯨まっこうくじらを知っているか。

君は、大王烏賊だいおういかを知っているか。

彼らは闘う。

目の前の十つ脚を、己が血肉とするために。

目の前の海獣に、己が存在をなかったことにさせないために。

彼らは、生きるために闘う。












君は、たこを知っているか。

彼もまた、生きるために宿敵と闘う存在だ。

「奴」は目の前のもの全てを喰らう。

喰らい尽くして全てを忘れ。

また泰然とそこに佇む。

故に奴は、幾千幾万の物語で。

畏怖を込めて名辞される。




海の悪党ギャング』と。












彼らの、古からの闘いは。

生きるための闘いは。

消し去るものと、抗うものの闘いは。

うつぼと蛸の闘いは。

それはつまり、忘却創作の闘いだ。












八つ脚の物語は、今日もまた大鱓の餌となる。

或いは、大鱓を讃えるものとて例外ではなく。

奴は全てを飲み込んでしまう。

贄の数は、生半可なものではなく。

ならば蛸は減り続け、いずれいなくなってしまうのか?








否。

彼らに絶滅などあり得ない。

そこに物語を産み出す者がいる限り。

今日もまた、幾つもの遂げられざる想いが。

作者に纏わる蛸となる。

だからこそ、我々も。


安心して、かの大鱓からおこぼれを頂くことができるのだ。












我らが浮かぶ海の底に。

蛸はいつでも潜んでいる。

奴に喰らい尽くされぬよう、壺に隠れて蠢いている。

さあ。

すくい上げよう。

すくい上げよう。

大漁旗たいりょうばたを、かかげよう。





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