監督評議会命令
下記のファイルはレベル4/1137-JPの機密事項に指定されています。不正なアクセスは禁じられています。
1137-JP
4/1137-JP LEVEL 4/1137-JPCLASSIFIED |
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Item #: SCP-1137-JPObject Class: Keter |

SCP-1137-JP-A
特別収容プロトコル: SCP-1137-JP-Aはサイト-811█の大型物品収容室に収容されます。取り扱いについては大型のマシンアームを使用して下さい。また、SCP-1137-JP-AはSCP-1137-JP-Bと同じサイトに収容しないで下さい。
現在、2体のSCP-1137-JP-Bが収容されています。SCP-1137-JP-Bは特別に設けられたサイト-816█の大型生物収容室に収容して下さい。対象には1日に2回、3kgの牛肉を与えてください。収容室の壁は傷が付いても色差が表れないように内部まで黒く塗装されます。サイト-816█やその周辺では他のSCPオブジェクトを収容しないで下さい。SCP-1137-JP-Bと他のオブジェクトとのクロステストは監督官により無期限に禁止されています。
説明: SCP-1137-JP-Aは約70cmサイズの火山岩であり、見た目からは異常性は確認できません。SCP-1137-JP-Aは既知のあらゆる手段(他のSCiPを用いた手段を含む)で傷付けることも破壊することも出来ません。人間がSCP-1137-JP-Aに触れると、その対象は、対象が身に着けている物ごと岩石の中に吸収されます。その後岩石は呪術的な模様を浮かび上がらせ、間もなくしてSCP-1137-JP-Bを召喚します。
SCP-1137-JP-Bは、その実体の目撃者から「鬼」と言及されている実体です。SCP-1137-JP-Bの大まかな全身像は人間と酷似していますが、身長は320cm~380cm程で、全身の筋肉は発達し、肌は朱色に染まっています。頭には二本の角が生えており、牙と耳は殊に尖っています。目は黒く、瞳孔は黄又は緑色です。実体は驚異的な物理耐性を持っていますが、物理的、あるいはそれ以外の方法で終了する事が可能です。実体の細胞組織からは、実体が数万年生存している事を示唆していますが、寿命や今までの生存期間については研究が進められています。
SCP-1137-JP-Aによって召喚されたSCP-1137-JP-Bは、人間に対し暴力的であり、近くに人間がいた場合、殴打する、踏み潰す、噛み千切る、[編集済み]を使用するなどして殺害します。また、SCP-1137-JP-BがSCP-1137-JP-Aを視認した場合、実体はそれを手に取って近くの人間を吸収し、仲間を増やそうと試みます。最初にSCP-1137-JP-Bが発見された事案においては、合計15体のSCP-1137-JP-Bの召喚事象を招き、一般人███名と収容作戦に携わった機動部隊██名が死亡しました。15体の実体の内、14体が作戦により終了され、1体のみが収容されました。作戦におけるオブジェクトの終了については、SCP-1137-JP-Aの人間を吸収することで無限に実体を召喚できるという性質を理解した上でのやむを得ない決定だという事を留意しておいてください。
補遺1: SCP-1137-JP-Bは、およそ言語と解釈されうる声を発さず、人間に対しては怒りを抱いた叫び声を発するのみです。しかし収容下にあるSCP-1137-JP-Bは、財団に協力的ではないにしろ、脱出が難しいと判断したのであろう収容室内では比較的大人しい状態にあり、時には苦悶の表情を浮かべる、声を上げて泣く、鋭利な爪を使い収容室の壁に絵を描くなどの悲観的な行動が見られるようになりました。
以下はSCP-1137-JPに関する議論の書き起こしです。
ディスカッションログ1137-JP-01
日付: 20██/██/██
議論の参加者: 仇博士、鋸田博士、浦羽博士
[ログ開始]
仇博士: さて。数日前に、未曽有の大災害を齎したSCP-1137-JP-AとB、職員はみな「鬼」と呼んでいるが、やっとのことで収容状態が落ち着いたこれらのオブジェクトについて、我々は整理し、考察する必要がある。
鋸田博士: まずは順を追って、SCP-1137-JP-Aについて話しましょう。この岩石は人間を吸収し、鬼を召喚するオブジェクトです。その仕組みは、呪術的な手段を用いているようで、人間のみにしか反応しません。
浦羽博士: 呪術となると、霊体や霊魂が関わっている可能性が高い。人間にしか反応しないのは、人間に宿る魂に反応しているからだろうな。
仇博士: では、このオブジェクトがやっていることとは一体何なのか。これは人為的なものか、鬼にとっても異常なものなのか。ぜひ意見を聞かせてもらいたい。
鋸田博士: では私から。研究の結果、不思議なことですが、鬼はそこで生まれた、という訳でもなく、元々いたものが元々いた状態でこの世界に召喚されているようです。となると、やはり第一に考えられるのが異次元との道を繋いでいるという事でしょう。
浦羽博士: そうだ。それと、鬼の組織には人間の組織が混在していた。吸収された人間のものが、完全に変化せずに、だ。道を繋ぐと言っても、人間が向こう側に行っているわけではないんだろう?
鋸田博士: ですが、魂の話となれば分かりません。人間が異世界で新たな肉体を手に入れていてもおかしくはありません。現に鬼がそのような状態と見られます。
仇博士: なら、鋸田は、岩石がやっていることを「魂の入れ替え」と考えているのだね?
鋸田博士: はい。
浦羽博士: ふむ…私はどうにもそう思えん。これは私の先入観によるものなのだろうが、「吸収」という過程を経て、肉体も鬼のものとなっているのだから、人間は死んでいるように思える。第一、異世界と繋がっているという考えに疑問が残る。
仇博士: 成程。今議論した事、それは今ここにいる鬼のみが真実の拠り所となるであろう。現在、収容状態にある鬼は悲観的な態度を露わにしている。知能は低いが、人間とほぼ変わらない感情を持っているように思われる。そして、信じられない事だが、収容室の壁に、その爪で絵を描きだしている。最初に君たちに配ったのは、その壁画を研究員が筆ペンで模写したものだ。
浦羽博士: これは、鬼だな。頭が歪んでるのを見ると、収容しているものとは別の鬼か。
鋸田博士: 鬼が暴走した事案から鑑みれば、鬼同士が仲間意識を持っているという事は明らかです。でなければわざわざ岩石を使って鬼を召喚したりはしないでしょう。
仇博士: その考えに則ると、鬼がこちらの世界に迷い込んだというのはおかしくなるな。岩石で鬼を呼び出し、迷った鬼を増やすなんて事はしないはずだ。
浦羽博士: なら、この石は、鬼を封印していたということか?
鋸田博士: 「人間に恨みがあり、あちらの世界に行こうとは思っているが、そのトリガーはあちらの世界にある岩石だけしかない」という状況、遥か昔に我々人間が鬼を封じ込めたと言うのでしょうか?
浦羽博士: 異世界でなくとも説明はつくだろう。鬼がなだれ込んでくるのを防ぐ石か、鬼の魂を封じ込め自由を奪う石なのか。判断に悩む所だ。
仇博士: だがそんな記録は残っていない。触っただけで鬼を呼び出してしまう危険な封印に関する記録を、どんな形であれ残していないというのはおかしな話だ。それだけなら、我々がそれに関する記録を発見していないという解釈もできる。だが、蒐集院の呪術師とのインタビュー記録(1137-JP調査記録CC-02を参照)でも、「このような方式の術式は記録に無い。これはオブジェクトそのものが作ったものでは無いか」と言ってる。岩石は鬼の物という認識で良いはずだ。
鋸田博士: ええ、それなら、…何故こちらの世界で仲間を…。
浦羽博士: どれだけ馬鹿でも、鬼が鬼自身を封じ込めたりはしないだろう。そうなると人間を恨む理由が分からないな…。
仇博士: …やはり、人間が鬼の世界に行っていると。鬼の世界で、人間が何かをしたと。
浦羽博士: 仇博士までそんな事を!
仇博士: だがな、2枚目の絵は、何を示していると思う?
鋸田博士: これは、地獄絵図ですね。血の池に針の山。人物は描かれていませんが。平安時代の落書きと言われても不思議ではありません。
浦羽博士: おい。仮に異世界があったとして、それを地獄の様に言うのはおかしいだろう。何かのミームに曝されたか?私は一刻も早くこの議論を終了したい。
鋸田博士: いえ、失礼しました…ですが、研究員達がそのような考えを持って業務に向かっているのは確かです。これは人類史における最大の謎を解く鍵なのだと。
仇博士: 私も失礼した。先入観を持ってしまってはこの議論の意味は無くなる。二枚目の絵から考えられるのは、やはり鬼は元々住んでいた場所がある。だが、そうなるとわざわざこちらへ来たのはおかしくなる。住んでいた……?
浦羽博士: やはり判断材料に欠ける。絶対にどこかが矛盾しているようでならない。これ以上の手掛かりは無いのか?
仇博士: …可能ならば、魂や肉体吸収のプロセスに近づきたい。蒐集院のエージェントと協力し、人間が岩石に吸収される過程を解明する。もしかしたら、元始の人間から今を生きる我々の全てを悩ませていた問題の回答が、得られるのかもしれない。…だがもしそうでなければ。
[ログ終了]
インシデントレポート1137-JP-Ω-A: 議論の後、Dクラス職員を使用し、SCP-1137-JP-Aの吸収の過程を観測するプロジェクトが展開されました。Dクラス職員には無線機と命綱を装備させ、吸収された向こう側の世界の探索を命じましたが、通信は確認されていません。蒐集院のエージェントである亜爾陀特級研儀官が吸収プロセスを直接観察することによってプロジェクトは完遂されましたが、その時に召喚されたSCP-1137-JP-Bの上位個体(SCP-1137-JP-B-Ωと呼称)と思われる実体によって壊滅的な収容違反が起き、██名の職員が犠牲になりました。亜爾陀特級研儀官の死体は見つからず、何らかの方法で逃走したと思われますが、サイトには1通の覚書が残されていました。以下がその書き起こしです。
鬼岩についてのメモ
確かに見えた。これは人間の魂を喰らう術式だ。この岩には鬼の記憶、肉体のデータが記録されている。人間がそれに触れることで、人間の知性、魂、肉体、…などのモノを、敷衍し、押し固め、顕現させる。仕組みは複雑怪奇だが、やっていることは、そう、あの機械の神とさして変わりはない。
岩石は異世界などと繋がってはいない。岩石は鬼を蘇生しているだけだ。
鬼は既に死んでいる。
インシデントレポート1137-JP-Ω-B: 当事案の際、既に収容されていたSCP-1137-JP-Bとその他のオブジェクトの連鎖的な収容違反が起きました。その際にSCP-1137-JP-B群と別オブジェクトとの異常な接触がありました。実体はいくつかのオブジェクトを持ち去り、その異常性を完璧に理解しているかのように使用しました。これによって事案時の被害は増大したとされています。また、意識を持ったオブジェクトとの接触が、監視カメラによって記録されました。以下がその映像記録です。
インシデント1137-JP-Ω 映像記録
日付:20██/██/██
注記: サイト-██内の収容室廊下の映像。2体のSCP-1137-JP-Bが映る5秒前に記録は開始される。
[記録開始]
00:05: 2体のSCP-1137-JP-Bが廊下を走っている。SCP-1137-JP-B-Ωの体長は後ろを追うSCP-1137-JP-Bの1.5倍程であり、肌は赤黒い。
00:11: 廊下の曲がり角からSCP-1048が顔を出す(SCP-1048はサイト-██内では収容されていませんでした。近辺地域のSCP-1048の収容違反が懸念されています)
00:13: 2体のSCP-1137-JP-BはSCP-1048に気付き、驚いた様子を見せ、急に立ち止まる。
00:17: SCP-1048は首を傾げた後、喜んだ様子を見せ腕を振る。
00:22: SCP-1048は跳び上がり、SCP-XXX-JP-B-Ωの肩にしがみつく。
00:34: SCP-1137-JP-B-Ωは長く小さな唸り声を上げる。SCP-1137-JP-Bはゆっくりと頷く。
00:46: SCP-1137-JP-Bは何かに気付き雄叫びを上げる。カメラには映っていないが、人間の声がする。
00:48: SCP-1048が素早く跳び上がり、画面外に消える。人間の叫び声がする。
[記録終了]
事案後、2体のSCP-1137-JP-Bは収容されました。映像記録は、SCP-1137-JP-Bが他のオブジェクトと関連があり、オブジェクトとの意思の疎通が可能だという事が示されています。
インタビュー記録682/1137-JP/01:
日付: 20██/██/██
インタビュワー: ██████博士
インタビュー対象: SCP-682
<ログ開始>
██████博士: 今日は君に話がある。
SCP-682: [低い唸り声] 今すぐ消えろ…。
██████博士: この生物を知っているか?
収容室の液晶にSCP-1137-JP-Bの写真が表示される。
SCP-682: それは… [唸り声] 当然知っている。
██████博士: 当然?何故当然なんだ。
SCP-682: 私がそれを知っているからだ。[唸り声]
██████博士: これは生物に見えるが、君はこれを憎んでいたか?
SCP-682: [枯れた息を断続的に吐く音] まさか、私はこれらと共に人間を殺していたのだ。
██████博士: 成程。何故これらを憎まなかった?
SCP-682: 貴様らとは違い、忌々しく無いからだ。
██████博士: ふむ…そのようなパターンもあるんだったな。なら、これらは君と似たような存在だと言って良い訳だな。
SCP-682: [長い唸り声] 消えろ…。
██████博士: 今日はこれぐらいにしておこう。
<ログ終了>
インタビュー記録682/1137-JP/02:
日付: 20██/██/██
インタビュワー: ██████博士
インタビュー対象: SCP-682
<ログ開始>
██████博士: 君はこれらと同じ存在とは言い難い。これらは感情の起伏が激しく、まさに人間のそれと似ている。何故君はこれらを憎まず、これらと共に生きていたんだ?SCP-682: [長い唸り声] (一言一言噛み締めるように)生物を愚かたらしめるものは、強弱でもなく、感情でもなく、偏にその罪にある。
██████博士: (驚いて)珍しくよく喋るな。罪とは一体何の罪なんだ。
SCP-682: この世に生まれる罪だ。
██████博士: 何?なら君たちは?
SCP-682: 私は元々ここにいた。他のものもそうであろう。
██████博士: …話にならないな。
SCP-682: これらがそう言ったのだ。
██████博士: …なんだって?この鬼が、生まれたものが罪深いなどと言ったのか?
SCP-682: 二度言わすようならば殺す…。
██████博士: …そんな。君はこれらに唆されて生物を殺すようになったのか?
SCP-682: 私は、元々、そうだ。 [唸り声]
██████博士: ふむ…だがこの世界はこのように、人間が支配している。君たちに何があった?
SCP-682: …知らぬ振りなどするのか。
██████博士: 人間がやったと。
SCP-682: …私のいた世界は光に包まれた。私はその中で最も長く、意識を保った。全てが焼け焦がれた。…目が覚めたら、世界はこのようなふざけた有様だ。
██████博士: 成程。最後に、これらについて詳しく聞かせてくれ。
SCP-682: 私と同じように存在した。
██████博士: だが、何か別なところがあったのだろう。
SCP-682: …それは罪の仕組みを知っていた。
██████博士: 仕組みとは?
SCP-682: 知らん。聞こうとも思わなかった。やっている事は私と同じ。 [唸り声] 何も聞くことなど無かった。
██████博士: この世界に生まれることが、どうして罪深いのか聞いていなかったな。これらは何か言ったか?
SCP-682: …悪徳。…身の程知らず。だったか。全く、聞かずとも貴様らがよく理解しているだろう。今の世界こそが、その答えだ。
██████博士: これが人間のやった事なら、当たり前だろう。虐げられている者たちが革命を起こす事が、そんなにも罪深いことか?
SCP-682: だから、身の程知らずなのだ…。 [落ち着きのない吐息]
██████博士: …君の言っていることはでたらめだ。この世界は正常。人間は正常。情動は正常だ。誰もが光の中で生きる権利を持ち、それを未来へと繋いでいく。罪などは存在しない。罪など所詮人間が人間に対し作った概念だ。広い目で見れば、それには全て理由があり、それらの何らかの絡み合いによって起きるものだ。全ては現象に過ぎない。
SCP-682: …正常?正常だと?
SCP-682は叫び声を上げる。体表が紅潮し、体は膨張する。
██████博士: な、何をしている、やめろ!
SCP-682: 貴様らは愚かで忌々しい。理は存在する。誰もがそれを本能で知っている。…それに逆らう事が、どうして罪深く無いと言える。
██████博士: お前たちは、神を気取るつもりか?
SCP-682: …私達は生きている。故に、正常など存在しない。貴様らは生まれた。故に、罪は存在する。…最後には、償いが来るのだ。
SCP-682は安静状態になる。これ以降はどの質問にも答えなかった。
<ログ終了>
既読済みのメールです
Subject : SCP-1137-JPのアクセス件について
Sender : 堂本博士
Body : ████.dat
この情報は何のミームも保持していない。
この事実は何の悪影響も与えない。
…ですが、私はこのオブジェクトに関する記録の一部は秘匿されなければいけないように思います。
オブジェクトの調査に際し、貴方は何度もこの言葉を聞いたと思います。「地獄」という言葉を。私達は死後どんな存在になるのかを考えずにはいられない。オブジェクトの研究に当たった者達は、きっとこの死後の謎に迫る感触を味わった筈です。好奇心と不安とが交わるあの感触を。
ですがそんなものは結局謎のままでした。何故でしょうか。これは私の勝手な想像ですが、単刀直入に言わせてもらいます。
この世界こそが地獄だからです。
私は狂っているとは思いません。ですが、かつて鬼が人間を支配していた。人間を罪深き存在だと言った。それだけで、この世界を地獄の様に言うのはおかしいでしょう。地獄に落ちた人間が、赤ん坊からやり直してから罪の償いをするだなんて聞いたこともありません。だからあくまで、これは私の想像です。
地獄云々は置いておいて、鬼達は異常生物と異常物品を使役し、使用していたとされています。今私達が収容しているSCiPと別のものと考える方が難しいでしょう。やはり私達は鬼の支配を受けていたようです。地獄が今のような姿になっている理由は、SCP-682の言葉と、今までの人類史を顧みれば自ずとわかる事でしょう。殺したんです。支配者であった鬼を皆殺しにして、異常生物を皆殺しにして、異常物品を無力化して、SKを起こし、人間は解放されました。針の山は崩れて平らになり、血の池は蒸発し埋められたのでしょう。それが人間の技術によるものか、鬼から盗んだものか、はたまた全く別の異常存在の暴威によるものかは分かりません。しかし、「光に包まれた」というのなら、人間もその影響を受けていたと考えて良いはずです。ならば、なぜ脆弱な人間のほうが生き残り、支配者達が全滅したのでしょうか?
それもきっと、この世界の仕組みによるものなのでしょう。
SCP-1137-JP-Aは鬼にとってのThaumielオブジェクトでしょう。十分な科学力と迅速な対応、実体の破壊という英断が無ければ、鬼によって再びSKが起こされ、世界はもとの役割を取り戻したことでしょう。
…今のは皮肉でしょうか。ですが、この世界が地獄だと言われれば、あまりにもしっくりくるのです。人間を狂わせる、痛めつける、大量に殺す拷問器具のようなオブジェクトの数々。減る事を知らない凶悪犯罪者Dクラスの数々。人類の為だと言い、外道な実験をしながら罪から目を背け続ける…。
そうです。これこそが私達の世界の正体です。でもそれが何だと言うのでしょう?前述した通り、これが真実だったとして、それが何の悪影響になるわけでもありません。私達は今まで通り、人間の世界の正常性を損なうオブジェクトを、確保し、収容し、保護するだけです。…それが出来なくなる日まで。
ですが、私はこの記録をこのまま残すのが良い事とは思いません。私は狂っているとは思いませんが、私は何か悪いものを飲み込んだように思われます。余りにも壮大で、余りにも昔の話で、何も恐ろしくはないのに、何か冷たい物が背筋に立ち上るのです。私は、全てのSCiPに鬼の手が…いいえ、今や私の中では、全てのSCiPが全てのSCiPと繋がり合って、ただ一つの目的、ただ一つの物語を形作っているように思われるのです。寧ろ、こちらの方が緊張感を持って業務に向かえるのかもしれませんね。
SCP-1137-JPの研究の全責任は貴方が担っています。収容プロトコルの見直しや情報の秘匿など、どうか慎重に決断してください。私に記憶処理が必要な様なら、そうします。
それでは。

公共施設内にて発見されたSCP-1788-JPの一個体
アイテム番号: SCP-1788-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 全てのSCP-1788-JPはサイト-81██の生物収容室に纏めて収容してください。SCP-1788-JPの変身能力の限界が不明なため、監視は24時間にわたって行われます。
現在非常に多くのSCP-1788-JPが未収容状態にあります。収容の為、女性隊員のみで構成された機動部隊ひ-2("女郎花")は埼玉県を中心に、深夜に活動するSCP-1788-JPを探し、確保してください。また、SCP-1788-JPによって起こされた可能性のある事件については、同じく女性隊員のみで構成された機動部隊ひ-3("姫女苑")が対応に当たって下さい。
説明: SCP-1788-JPは自律的に動く女性の姿をした人形群です。SCP-1788-JPは完全に未知の組成をしており、その再現は現在不可能とされています。SC-1788-JPは自身の容姿と衣服を自由に変化させることができ、持ち物や装飾品等も作り出す為、外見を通常の人間と区別することが困難です。しかしSCP-1788-JPは発話能力を持たず、ほぼ常に笑顔を保っている為、ある程度の対話によって区別が付きます。SCP-1788-JPは再生能力を持ち、与えられた外傷はほぼ瞬時に回復しますが、焼却などの方法によって完全に破壊することが可能です。
SCP-1788-JPは人間社会に溶け込み、人間の多い場所での徘徊、公共の乗物を使用した別の場所への移動などを繰り替えします。SCP-1788-JPは自身に危害を加えた、また興味を持たれた状態で接触を図った123人間の男性に対して敵対的になります。SCP-1788-JPは対象を人気のない場所に連れ込み、体内に取り込みます。その後SCP-1788-JPは自身の複製を生み出します。対象が付いてくることを拒否した場合、その場で対象を取り込み、自身をゼリー状の物体に変化させ、素早く人気のない場所まで逃走します。SCP-1788-JPは捕食行為を行った後、自身の容姿と服装を変え、再び徘徊を始めます。SCP-1788-JPの徘徊は深夜にも行われます。
財団は現在68体のSCP-1788-JPを収容しています。現在確認されているSCP-1788-JPは同じ容姿をした個体がおらず、また過度に密集した場合別の地域へと移動する性質があるため、SCP-1788-JPは同個体間での意思の疎通を行っていると推測されています。
発見経緯: SCP-1788-JPは埼玉県██市とその周辺地域において、成人男性の行方不明者が多数報告された所から調査が開始されました。その際に送り込まれたエージェント・モトヤマは偶然SCP-1788-JPにインタビューをしようとしました。SCP-1788-JPは答える様子を見せず、しきりにエージェント・モトヤマの手を引いている様子でしたが、唐突に自身の形状を変化させ、街中でエージェント・モトヤマを捕食しました。これにより収容対象は無口な女性に絞られ、機動部隊が派遣されましたが、再生と増殖を繰り返すSCP-1788-JPに壊滅させられました。その後女性のみで構成された機動部隊が結成され、5体のSCP-1788-JPが収容されました。未収容のSCP-1788-JPを発見する為、現在の特別収容プロトコルが作成されました。
SCP-1788-JPの起源を調査した所、SCP-1788-JPが発見された頃に行方不明となっていた一人の女性、連 ██氏に辿り着きました。連氏の家にはSCP-1788-JPの構成要素に似た物体とSCP-1788-JPを作成したことが示唆される日記が遺されていました。以下はその日記の重要な部分の写しです。
2018/10/25
遂に完成した。今はとても恐ろしくて、でも嬉しくて溜まらない。奇妙な企業に頼み込んだかいがあった。これで、やっと下卑たクソ男共は排除されて、女性の権威が確立される。女男平等の時代がやってくる。絶対に。
完成するとすぐに、人形は勝手に玄関を開けて外に出て行った。街へと繰り出し、何分か練り歩くところを私は追跡した。すると、三人の男共が人形に話しかけた。あいつらのゴミみたいな目を見ればわかる。三人とも、サルみたいに欲情していた。でも人形は全く動じず、男共を路地裏へと連れて行った。
覗き見ていた私の顔はどんなだっただろうか。人形は大口を開けて一瞬にしてデブ男を飲み込み、二体に増えた。残りの二人は逃げようとしたけれど、になった人形にそれぞれ飲み込まれた。路地裏は静かになった。余りにも凄惨で、だけど、あのクソッタレな男共がみんな死んだことが嬉しくて、私はとにかく震え上がった。これまで一人で戦い続けてきたかいがあった。あの会社のセクハラ上司の恐怖に耐えてお金を稼いだかいがあった。その後四体の人形たちはバラバラに行動した。この調子なら、きっといける。
2018/10/26
先日の事を思い出しながら電車に乗り込むと、同じ車両の中で一人の美しい微笑を浮かべる女性に出会った。すぐに、それを人形だと理解した。人形の周りには男共がたくさんいて、不快感を感じずにはいられなかったけれど、でも、同時に高揚していた。今からあの男共が、きっと然るべき裁きを受ける。私はこの世の不条理を常に呪っていたが、今はどうだろうか。女性を軽視する男は裁かれる、そのシステムが出来つつあるのだ。人形は電車を出た男に付いて行った。また社会が良くなっていく。
2018/10/29
今日の電車で、痴漢された女子高生を見た。ハゲのおっさんは駅員を呼ばれてもしきりに「俺はやってない!」と叫んでいたが、痴漢して言い逃れようだなんて、本当に怒りを覚える。あの女子高生と私の人形が変わってやれれば良いのにと思った。人形なら、嫌な気分にならずずっと笑顔のままだし、男を殺すこともできる。きっと今も、女性の為に頑張っているはずだ。
2018/11/05
街中で人形を見かける事は少なくなくなった。私はこの頃、人形を見るたびに奇妙な感覚に襲われている。
人形はどれも本当に美しい、整った顔をしている。体の凹凸は正に黄金比で、常に妖艶な笑みを浮かべている。男だけではなく、女性もそれに注目しているようだった。ある女子高生達が通りかかった人形の噂話で盛り上がっていたり、ある女性が、人形を嫉妬の目で見つめていたりした。私は嫉妬する女性を哀れんだ。今に容姿を気にせずにいられる社会が来るから、もう少しだけ、我慢してほしい、そう思った。
話が少しそれた。私は、人形に対して、何かを望んでいた。その美貌に憧れているのかもしれないとも思ったが、また少し違うようだった。私は何度か人形に付いて言って、男共が殺される様を見た。今や恐怖は無くなり、ただその光景が嬉しかった。そうなってから、私は、人形の笑顔がとても健気に思えた。あれはとても強い微笑み。絶対的な微笑み。男のどんな行動にも屈しない、無敵の微笑みだと理解した。今も人形は動いている。
あれは女性の理想の姿。
2018/11/07
偶然、電車で四人の女たちを見た。男共の臭い荒い息や、ナメクジみたいに気味悪く動く手も、もはや、女性の高貴な行為を正当化し、引き立てるものにしか見えなかった。会社の事を忘れて、彼女に付いて行った。辿り着いた場所は偶然にも最初に男を殺すのを見た路地裏だった。彼女の何かを暗示させる微笑、男に触れる優しい手、男を飲み込む刹那、飲み込んだ後の恍惚、美そのものの分裂、そして、背を向いて、互いに違う方向へと歩む孤高。全てが美しかった。全てが美しかった。全てが美しかった。
2018/11/08
残りの素材で、彼女の様に美しい社会を作り出そうとした。お金はない。はやく、微笑みたい。こんな鏡ではなく。みんな。やらなければいけない。心が必要。私は孤高だ。私ならやれる。私が全て美しくする。私も動く。私は彼女らも導く。私は全てを美しくする。全てを美しくする。全てを美しくする。全てを美しくする。全て[以下解読不能]
わたしもすべても女になる
連氏についての調査が続けられています。また、埼玉県██市で起きた女性が行方不明となった事件についての関連性が示唆されています。
タグチャレンジのタグ keter 自己複製 敵対的 性的
その他タグ scp-jp 未収容 捕食 変身 人間型 擬態 自律 集団意識
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは現在収容されていません。起源や性質に関する研究も打ち切られています。
説明: SCP-XXX-JPは異常な性質を持った火です。SCP-XXX-JPは通常の火と違い、炭素を含んだ物質ではなく水の表面に着火し、通常の火と同様に、酸素を消費し二酸化炭素を生じます。着火している水に化学反応は起こらず、酸素が二酸化炭素へと直接の変化を起こしているという事が分かっています。このプロセスがどのように起こっているかは不明です。
発見経緯: SCP-XXX-JPは2028年7月17日、日本標準時12時56分頃に地球上の全ての海域が炎上した際に財団に発見されました。SCP-XXX-JPの起源は不明です。
補遺: SCP-XXX-JPによってNK-クラス世界終焉シナリオが起こされた同日に、地球外退避プロトコルが発動されました。
タグ scp-jp keter k-クラスシナリオ 科学 未収容 炎
アイテム番号: SCP-XXXX-JP | Level 0-K/XXXX-JP |
オブジェクトクラス: Keter | 限定的機密解除 |

2019/11/7に██県の山間で撮影された写真。上空がSCP-XXXX-JPに覆われている。
特別収容プロトコル: 現在、SCP-XXXX-JPの収容は行われていません。財団はカバーストーリー「地球温暖化による異常気象」を一般に流布し、一時的な対処法とします。SCP-XXXX-JPに関する情報はクリアランスレベル2を持つ職員にまで開示され、オブジェクトを無力化、もしくは影響を最大限に抑えるための取り組みが財団の総力を上げて行われています。
説明: SCP-XXXX-JPは地球上の雲です。地球上に存在する全ての雲の体積の50%がSCP-XXXX-JPであり、SCP-XXXX-JPが出現した時から現在までその比率が変化したことはありません。SCP-XXXX-JPは通常の雲と同じ働きを持ち、通常の雲と同じプロセスで発生、消失します。SCP-XXXX-JPは常時SCP-XXXX-JP-Aを発しています。
SCP-XXXX-JP-Aは人間の脳4を活性化し、好奇心を高めるミーム性の光です。SCP-XXXX-JPが上空にある際、地上は霧に包まれたように視界が悪くなり、照度はおよそ80'000~90'000lx5になります。SCP-XXXX-JP-Aは温度の変化を齎しません。
あれはもう我々がどうこうできる問題ではない。あれは雲だ。雲と同じように現れ、雲と同じように消える。あれはただの現象に成り上がったのだ。だが、異常なものは異常なのだ。あれが俗世に降り注ぎ、民衆の好奇心を煽り立て、科学で説明できない事実を悟られれば、我々の活動に綻びができる。その綻びは、やがて正常性に大穴を空け、暗闇の恐怖が世界を支配し、我々の理念は崩壊する。SCP-XXXX-JPの起源は分かっていない。蛇の手の仕業か、MC&D社の営業活動か、日本生類総研がまた収容違反したのか、現状は正に雲を掴むような状況だ。
しかし、我々は正常性を「選ぶ」程の力を持っている。幸い、この光には人体に影響は無い。今まさに人類はMKを迎えようとしているが、正常性さえ保たれれば、人類も、我々も、今まで通りの活動を続けることができる。このシナリオに対するプロトコルの計画を全職員の最優先事項とし、最終決定は我々O5が執り行う。諸君らの働きに期待している。 -O5-1
アイテム番号: SCP-XXXL-JP | Level 4/XXXL-JP |
オブジェクトクラス: Thaumiel | 機密 |

2020/6/28に███県の海辺で撮影された写真。天気は曇り。
特別収容プロトコル:
説明:
補遺:
アイテム番号: SCP-XXXW-JP-EX | Level 4/XXXW-JP |
オブジェクトクラス: Explained | 機密 |

2020/6/28に███県の海辺で撮影された写真。天気は[編集済み]。
特別収容プロトコル:
説明:
補遺:
4/XXX-JP LEVEL 4/XXX-JPCLASSIFIED |
![]() |
Item #: SCP-XXX-JPObject Class: Keter Neutralized |
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは無力化されたと考えられている為、現在の時点では収容する必要はありません。
SCP-XXX-JPはサイト-81██の特別人型オブジェクト収容室に収容して下さい。対象は現在、収容に対してやや不安を持っている様子です。対象が少しでも自身の環境に嫌悪を抱けば、壊滅的な現実改変を起こしかねません。対象が何らかの要求をした場合、可能な限り承諾するようにして下さい。
説明: SCP-XXX-JPはレベルIX現実改変実体でした。SCP-XXX-JPは愛知県██市に住んでいた「鏡 ███」という2018年当時17歳の少女と同一の実体であり、対象は自身の能力を半年程前に手に入れたと証言していました。
対象は際限のない現実改変を起こす事が出来ました。実際の確認と証言から、
・物体、事象、過去の発生、消失、改変
・あらゆる認識の改変
・一般的に「魔法」や「超能力」と呼べる類の能力6の保持
が確認されており、対象は「自分のこの力を消す事以外ならなんでも出来る」と証言していました。
発見経緯: SCP-XXX-JPは、自身の能力を消すという目的の為に、能力を使い財団を特定し、自ら財団との接触を試み、対象はまず財団サイトの警備員と接触しました。警備員は異常を報告し、エージェントがインタビューに臨みました。以下がその記録です。
<録音開始>
インタビュアー: エージェント・ハシラ
エージェント・ハシラ: 君が異常な能力を持っていて、その能力をどうにかする為に、自ら財団に接触しようとしたっていうのは本当かい?
SCP-XXX-JP: はい。…疑っているんですね。
エージェント・ハシラ: そんな事は無いさ。
SCP-XXX-JP: 私は、あなた方の施設を攻撃する為に内部に侵入しようとしている訳でも無いですし、その、要注意団体?ワンダーテインメント博士?とも無関係です。私は、私の意思でここに来ました。
エージェント・ハシラ: …君は人の心を読む事が出来るんだね。君の言う「力」というのはそれの事かい?
SCP-XXX-JP: いえ、違います。私は、私の望むことなら何でも出来るんです。
エージェント・ハシラ: 何でも?じゃあこのペンを消して、また出現させ…
(エージェント・ハシラの持っていたペンが消失する。5秒後、ペンが机上に出現する)
SCP-XXX-JP: これで理解できましたか。
エージェント・ハシラ: …なるほど、じゃあ次は…
(この後エージェント・ハシラは数回に渡ってテストをする)
エージェント・ハシラ: …分かった。君の処分については後々決めていくが、もっと詳細な実験をする為に収容サイトに搬送しよう。…どうかしたかい?
SCP-XXX-JP: いえ…その…
(SCP-XXX-JPは顔を伏せて震えている)
エージェント・ハシラ: 体調が優れないかい?もしかして、能力を酷使すると身体に影響が…
SCP-XXX-JP: 違うんです…苦しいんです…自分が、自分の力が、こんなにも怖がられてるって、理解する事が…
<録音終了>
度重なる実験、調査、インタビューにより、SCP-XXX-JPの能力は明らかになりました。また、対象は過去に、自身を虐めていた同級生を殺害した事があると分かりました。SCP-XXX-JPは典型的な鬱の症状が見られます。精神の不安定は、能力の行使を招く危険があり、重大な問題として捉えられています。
インタビュー記録XXX-JP-05
<録音開始>
インタビュアー: 海博士
海博士: 調子はどう?
SCP-XXX-JP: …
海博士: 大丈夫よ、私は貴方の味方。貴方の力をどうにかする為に、協力する味方だから。
SCP-XXX-JP: …私、何でここに来たのか分からなくなりました。ここの人も、みんな、私の事が嫌いなんです。
海博士: そんな事…いや、大丈夫よ!そもそも、貴方が能力を使おうとしなければ安全なんだから。それが分かれば誰も怖がったりしないわ。
SCP-XXX-JP: …もう嫌なんです。
海博士: …貴方の今までを考えれば、そうなるのも分かるわ。でも、貴方は偉いわ。自分の能力が強力過ぎることが分かってて、それを使わないでいられることが。
SCP-XXX-JP: 先生は、素晴らしい人だと思います。でも、同時に愚かだと思います。こんなにも恐ろしい力を持った私を、心の底から信用しているんですから。
海博士: 愚かでもいいわ。貴方を収容する唯一の方法は、貴方を信用する事だからね。
SCP-XXX-JP: 先生、世界は広いんです。財団も大きな組織です。誰もが私を信用する事なんて、無いんです。そしてこの恐ろしい力を使えば、それが簡単に…
海博士: でも、そんな事はしないわ。だって、貴方は優しいんだもの。
SCP-XXX-JP: …そんな事はありません。私は、こんな私が、世界に認められて良い訳が無いから、今の状態でいるだけなんです。…そして、もう限界なんです。
海博士: …私なら、幾らでも力になるわ。他のプロジェクトを後回しにしてずっと貴方の話し相手になってもいい。貴方はひとりじゃない。私が…
[こちら管理局。海博士、余り感情的になってはいけません。また今の発言は不適切です。今すぐインタビューを終了し、適切な処置を受けて下さい]
海博士: …イヤね、私ったら。それじゃ、行かないと。
SCP-XXX-JP: 先生…その、私のせいで…
海博士: 何言ってるのよ。別にちょっと説教されるだけよ。それじゃ、また会いましょう。
(海博士が部屋を出る。ドアが閉まった後、SCP-XXX-は小さく啜り泣く)
<録音終了>
上記のインタビューの後、SCP-XXX-JPが収容室で死亡しているのが見つかりました。原因は心肺停止であり、何らかの道具が使われた形跡はありませんでした。対象はNeutralizedに再認定されましたが、対象の死体は蒐集院のエージェントによる呪術的な方法で保管されており、対象が過去に住んでいた地域の再調査が行われています。
海博士のメッセージ
これは私の個人的主観による報告です。
彼女、SCP-XXX-JPは、財団に来た理由が分からなくなったと言っていました。彼女は、人殺しという間違いを二度と犯さないよう、能力を消す事を願いましたが、財団でも、彼女は受け入れてもらえず、更に悪い事には、自分の能力がどれだけ恐ろしいものかというのを、嫌という程認識する事になりました。
彼女は耐えきれず自殺しました。多くの職員が「XXX-JPはまだ生きている」と言います。ですが、彼女はきっと、この世界と自分の手に入れてしまった能力に絶望し、自ら命を絶ったのです。
確かに彼女は、恐ろしい能力を持っていました。彼女がその気になれば、自身に敵対するモノを全て消す事も、世間の自分に対する認識を変える事も出来たでしょう。自分の望む結果だけを引き出す事も、暴威と快楽の限りを尽くす事も出来たでしょう。
でも彼女はそれらをしませんでした。彼女は幸せになれるはずでした。しかし、世界に疎まれ財団に恐れられた彼女にとって、能力を使う事に恐怖を抱いた彼女にとって、何人かの人間に「死んでくれてスッキリした」などと言われた彼女にとって、きっとそれは、高望みだったのでしょう。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Euclid/Keter (適切なクラスを選んでください)
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: [SCPオブジェクトの性質に関する記述]
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]