アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の標準収容ロッカーに保管されています。取り出す際は適切な睡眠をとった職員の手で行ってください。実験室等への持ち出しには、事前に仮眠室付近を経由しないルートを設定し、その旨を報告する必要があります。
説明: SCP-XXX-JPはごく一般的な材質で構成された絵本です。流通している一般的な児童書には、内容の一致する作品は確認できず、また装丁は手作りであることが判明しています。SCP-XXX-JPは200█年██月に████県内で発生した男性の衰弱死について、不自然な点に注目した財団のエージェントにより回収されました。
SCP-XXX-JPの半径5 m以内で「眠気と疲労を感じている人物」が眠りに就こうとした際、SCP-XXX-JPはその人物に対して異常性を発現します。この時SCP-XXX-JPの影響を受けた人物を、以下ではSCP-XXX-JP-Aと呼称します。SCP-XXX-JP-Aは入眠直前の「うとうととした」状態を維持し、完全な睡眠状態への遷移が見られません。この間SCP-XXX-JP-Aは、絶えず「穏やかな声で本の読み聞かせをされている」内容の幻聴の他、多幸感を感じていることが判明しています。またSCP-XXX-JPの影響範囲にいる限り、いかなる手段を用いてもSCP-XXX-JP-Aは外部からの刺激による反応を示さず、また自ら目を覚ますこともありません。SCP-XXX-JP-Aは、曝露後1時間30分以内であれば、SCP-XXX-JPの影響範囲外において一般的な方法を用いて覚醒させることが可能です。しかし曝露後、SCP-XXX-JPの影響範囲内で1時間30分以上経過したSCP-XXX-JP-Aは、SCP-XXX-JPの影響範囲外においても、いかなる手段を用いても覚醒させることはできません。
SCP-XXX-JPの内容は「酷く哀しい思いをした子羊が帰宅し眠りに就くまで」の物語が、イラストのみで描かれているものです。しかし異常性の発現時は、最後のページにのみ文が追加されます。また時間経過による文の内容の変化も確認されていますが、SCP-XXX-JP-Aが覚醒した場合、文章は例外なく消失します。変化までの所要時間と確認された内容は以下のとおりです。
異常性発現直後
「おつかれさま、ぼうや」30分経過
「さあゆっくりと、めをとじて」1時間経過
「どうかしあわせなひとときを」1時間30分経過
「おやすみなさい」
補遺: SCP-XXX-JPの性質についての実験において、曝露から1時間30分以上を経た被験者の終了処分後、最後のページに栞と思われる紙片が挟まっているのが確認されました。紙片には鉛筆で以下ように記されていました。
すべて忘れて寝てしまいたい けれど寝たら朝になって また明日がきてしまう
いやだ 眠い 寝たくないいやだ 私はただ幸せな 穏やかな気持ちでいたいのに
もう何も考えたくないのに
その後の実験では、同じ条件下でも栞の出現は確認されていません。
めもです。
・てるてるちこくま
雨の日の夕時に部屋の窓際に出現するてるてる坊主。
その部屋の所有者がそれを見ると顔を描きこみたくなる。
描いた人はその日が一日晴れであったように記憶を改変される。
顔を描かれるとその場から消失し、次の雨の日にまたどこかの窓際に出現する。
・微睡むしあわせを
「おつかれさま、しあわせなひとときを」と書いてあるオブジェクト。
範囲内で強い眠気を感じている人物が眠りに就くと、
ごく浅いレム睡眠のままノンレム睡眠への遷移が起こらず、また絶対に覚醒しない。
オブジェクトと対象の人物との距離を遠ざけることで起こすことが可能になる。
対象の人物は起こされたことに対して「寝入る前だった」と不機嫌な様子を見せるが、
その間の状態については「幸せな心地だった」等と概ね良い印象を抱いている。
その性質上睡眠障害やそれに伴う体調不良を招く。
・片足は墓穴にありて
触れると一定時間後に特定の死因で死ぬ。
本人もそのことを瞬時に悟る。
それまでの間に他の原因で死ぬことはない。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81██の標準収容ロッカーに保管されています。取り出す際は適切な睡眠をとった職員の手で行ってください。実験室等への持ち出しには、事前に仮眠室付近を経由しないルートを設定し、その旨を報告する必要があります。
説明: SCP-XXX-JPはごく一般的な材質で構成された絵本です。流通している一般的な児童書には、内容の一致する作品は確認できず、また装丁は手作りであることが判明しています。SCP-XXX-JPは200█年██月に████県内で発生した男性の衰弱死について、不自然な点に注目した財団のエージェントにより回収されました。
SCP-XXX-JPの半径5メートル以内で「眠気と疲労を感じている人物」が眠りに就こうとした際、SCP-XXX-JPはその人物に対して異常性を発現します。この時SCP-XXX-JPの影響を受けた人物を、以下ではSCP-XXX-JP-Aと呼称します。SCP-XXX-JP-Aは入眠直前の「うとうと」とした維持し、完全な睡眠状態への遷移が見られません。この間SCP-XXX-JP-Aは、絶えず多幸感を感じていることが判明しています。またSCP-XXX-JPの影響範囲にいる限り、いかなる手段を用いてもSCP-XXX-JP-Aは外部からの刺激による反応を示さず、また自ら目を覚ますこともありません。SCP-XXX-JP-Aは、曝露後1時間30分以内であれば、SCP-XXX-JPの影響範囲外において一般的な方法を用いて覚醒させることが可能です。しかし曝露後、SCP-XXX-JPの影響範囲内で1時間30分以上経過したSCP-XXX-JP-Aは、SCP-XXX-JPの影響範囲外においても、いかなる手段を用いても覚醒させることはできません。
SCP-XXX-JPの内容は通常イラストのみで構成されています。しかし異常性の発現時は、最後のページにのみ文が追加されます。また時間経過による文の内容の変化も確認されていますが、SCP-XXX-JP-Aが覚醒した場合、文章は例外なく消失します。変化までの所要時間と確認された内容は以下のとおりです。
異常性発現直後
「おつかれさま」30分経過
「さあゆっくりと、めをとじて」1時間経過
「どうかしあわせなひとときを」1時間30分経過
「おやすみなさい」
補遺: SCP-XXX-JPの性質についての実験において、曝露から1時間30分以上を経た被験者を終了処分した際、最後のページに栞と思われる紙片が挟まっているのが確認されました。紙片には鉛筆で以下の文章が記されていました。
すべて忘れて寝てしまいたい けど寝たら朝になって また明日がきてしまう
いやだ 眠い 寝たくないいやだ 私はただ穏やかな気持ちで すべてを忘れていたいのに
もう何も考えたくないのに
その後の実験では同じ条件下でも栞の出現は確認されていません。
英語力ガバガバであんまりなのでここに…
独身の白人男性、20~25歳
複数の殺人事件に関する事情聴取のため捜索中
隠された美しさ
仕立屋
あしながおじさん
On The Third Day
The Samaritan
The Designer
彼はウェイトレスの微笑みに目を奪われた。コーヒーから上る湯気は彼女の顔を揺らめかせ、儚げな印象を与える。本当に。その微笑みはただ客に向けるものでなく、「よく眠れていないのですか?」といった優しさが伝わってくるものだ。
皮膚と筋肉が本当の美しさを曇らせているのなら、下の骨も可憐に微笑んでいるのだろうか。青白く、輝いていて。彼が彼女の胸郭について想像していると知ったら、裸で横たわり世界中の目に晒され、光がしたたり落ちその椎骨を照らし続けるのを想像していると知ったら、その笑顔はそれほど親しみやすいものであっただろうか。バンディはそのように感じていたのだろう、金や平和への願いなんて動機のない怪物は男性の世界を歩き回った。ただ現実の世界で自身の痕跡を壊してしまいたかった。
間違いを犯していることは彼自身も分かっていた。彼はただ皮膚の下の美について時々考えていただけだった。一時の気の迷い。今の彼は絶えず骨を肉と区別しようと試みることと、彼の周りにいる人のそれらを思考の中で解体することに夢中だった。虐殺はすぐに、気の狂っていくのを止めてくれた。
時々、彼は自分が捕らわれているように感じる。皮膚はあまりに重く、筋肉は自身を抑圧する。呼吸は肺によって束縛される。彼を前屈みにさせる臓器の重さも、彼が本当に自由でさえあれば振り払うことができたような気がする。
妙な殺人計画を立てた。それは彼自身が決して、決して起こる事がないと主張することの精神的な練習から始まった。繊細さなど全くない儀式だったが、タイミングの正確さは想像よりはいいだろう。これは彼が心の中で、あのウェイトレスがいつシフトを終えるかという確認項目に目を通しておくため、自分自身に対してつく嘘だ。彼がベッドルームにピンでとめておいた彼女のルートを記した地図は、彼女が悲鳴を警察に通報する者のいない地区の、放棄された倉庫に挟まれた暗い路地を過ぎた場所で、地下鉄を利用することを告げている。
白いコーヒーカップが照明を受けてきらめくのを眺めながら、彼は彼女の頭部が同じ輝きを持つだろうか、また熱で歯の間から細かな肉を取り除くための仕上げとして蒸気が必要になるだろうかと思案していた。ラッカーはきっと、それに素晴らしい輝きを与えるだろう。さて、それについて考える時間は後で十分にとれる──。彼はその考えから身をよじり逃れた。いや、まだだ。まだこの安らぎの世界に別れを告げたくはない。
性的なことは何もなかった。それどころか、彼はセックスという行為を嫌悪していた。夥しい汗や体液、肉と肉のぶつかる音を。
コーヒーの湯気が窓を曇らせるが、彼はまだ街灯の明かりで輝く指骨と、通行人たちの絶え間ない親しげな笑顔を見ることができた。彼が生まれるべきだった世界だ。
彼はコーヒーをすすり、歯に古艶の形を感じ取った。まだ美しさはしまっておこう。暫くは。
彼らはわかっていないよ、ダーリン。彼らにはできない。自分達が知らないことへの恐怖から生まれる嫉妬や怒りに、気付きもしないうちに覆われていて何も見えてないんだ。
ここなら安全だよ、愛しい君。彼らは私たちを見つけられない。私が引き返してきたかも、なんて調査してみる発想はないだろうね。自分たちと現実とを切り離しすぎて、思考もあまりに鈍くなった。彼らがもし、君のように考えることが出来たなら。――こんなにも純粋な認識、飛び交うスクラップへの思考の一つ一つ。君が歩んでいた時のそれらのほとんどを、椎骨を通して感じ取ることができる。――もし彼らが君ほど自由であったなら、私を見つけるだろうね。その価値がある。
さあ、ちょっと抱きしめてもいいかな。君が湿気を好まないことは知っている。それは君を腐食してしまうから、それに逃避行中の今は君を直してあげることも難しい。少しの雫だって君をかびさせてしまう、それはいけない。あれは何だろう?蛾?君のために打ち倒そう。私は風を受けて膨らみ輝くローブを身にまとった騎士なんだ。君を危機から守るよ。あの埃まみれの小さなドラゴンが、愛しい君に触れることはない。君が防虫剤を嫌う事は知っているし、私が近くにいる限りそれは必要ないだろうね。
さあ、明かりをつけてもいいかな。ただ暫く君を見ていたいんだ。私は愛しい君に飽きたりはしないよ。君の美しさ、君の気品。――君の肋骨を通して揺らめいた光の帯が、青白く美しい胸骨に絡みついている。うん?知っているよ、天使さん。君はいつもナイロンを安っぽく見えると感じていたね。君がお母さんに連れられて店に来た時、顔をしかめていたのでわかったよ。私たちには時間がなかった。それはとても早く過ぎていく。君の全ては、すぐに愛によってまとめ上げられた。そう、彼らがそれに水を差す前に。そして今、君はこんなにもほっそりとしている!閉じ込める全てから自由になって、君のいるべき世界にさらけ出すんだ。
ちょっと待っておくれ、聴き耳を立てる必要がある。なるほど、そうか、彼らは背後に回っているね。どうやら私は彼らの推理力を見誤ってたようだ。君のために私が成さなければならないことの一つだね。それにしても、彼らは過剰反応のお手本を見せてくれているみたいだ。本当に、彼らは私が狂っていたとでもと思っているんだ!おそらく君はまだ承諾年齢にもなっていなかったのだろうけど、自分に自信を持っていたね。彼らが私に君と話したことの説明の機会を与えてくれれば、道理を分かってもらうこともできると確信しているよ。
行くなら今だと思う、愛しい君。でもどうか心配しないで。僕は君を後部座席に寝かせておこうと思うんだ。上手くいけば、彼らは君がうたた寝していると思うだろう。
愛しい君、私たちは大丈夫だよ。誰も愛を止めることなんてできない。それに、君も私のことを愛しているよね?もちろん、ね。
翻って考えてみるに、問題だったのは足だ。
確かに、私の視力はあの忌まわしい特徴を識別できるほどでなくなってもう長い。長い脚に連結されたその不穏な胸部は、他のどの部位よりも大きな影を落としている。そう、それは足でなければならない。私はほぼ確信している。なんといっても、それはあしながおじさんの名前に含まれている。こんなにもひねくれた生き物に与えられた、こんなにも格別の愛情が込もったタイトル。
まだ目がよく、世界についての知識もなかった少年のころの私は、彼らを悪魔だと考えた。悪夢は私を恐ろしい幻影の世界へと引きずり込むようになった。私は逃げた、恐怖で叫んで震えて、母親にそれを取り除くようせがんだ。大層ご立派であった父親はというと、言うまでもなくこの小さな少年にひどくうんざりしていたようだ。男らしさと勇気において、自分のような男になるのが困難だろうと考えた。彼は夜に私の部屋に忍び込んではそれらを放した。そして私を残して去っていった、起きた時に囲まれているように。
すまない、まだそのままでいてもらう必要がある。よし、これを試してみよう。痛みを感じたら教えてほしい。
ある意味では、このショック療法はいい影響をもたらしたと思っている。忌まわしい毎日の朝のうち一つで、私は初めてそれに反撃した。私の腕を這っている生命の一つを押し潰すため、手に靴下をはめた。それをむき出しの肌に触れさせるのを恐れた私は、少し距離を置いて捕まえ、それらの足が断末魔の苦しみでのたうち回るのを見た。以前にもそれを殺すのを夢想したことはあったが、それらの動揺するような素早さはそのような試みを愚かで成功できそうにないものであると思わせた。
その後、それらの不愉快な命の一つ一つを消すために、自ら探すようになるまでそれほど時間はかからなかった。その虐殺の場は家の裏庭から始まり、次第に森へと移っていった。靴下は手袋と取り換えられた、それらは一時期とてもよく働いたものだった。私が初めてそれに気付いたのは、こういった遠足をしていたある日のことだった。殺されたばかりのそれの脚が――不規則に引き攣り、動いているのを。膨れ上がる恐怖の中、私はそれが生き返ったのだろうかと考えた。今までの私の手によって犠牲となったそれらが恐ろしい軍団となって私を追跡するイメージが頭の中にあふれ、私は狼狽えた。私は森から逃げ、自分の部屋に隠れた。それから私は、手袋を用いるのでは十分でないと判断した。自らの脳がこの事実を合理化するのには、より強い力が必要であったに違いないと。父親のものであった重く黄色い釘抜き金槌は、この目的によくかなっていた。
私は君にはただ静かに祈っていてもらいたいのだが。酷く気が散る。全く、失礼なことだ。
すぐに、私の遠足は新たな形ではじまった。この時点で18歳の青年であった私は、あれらが人々の上にも潜んでいるように見え始めた。長い脚を持った小さな姿が腕をよじ登っていても、平然と決まった道を運行していく街のバスドライバーを見て、私は吐き気に襲われた。私の目の前にいる牧師のカラーの上にも一対の小さな足がじりじりと歩んでいることを理解したある日、私の視界は灰色に染まった。
(途中)