六連 昴の砂箱
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SCP-XXX-JPの一例

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの出現は3台の人工衛星によって常に監視されます。SCP-XXX-JPと思われるオブジェクトを発見した際は機動部隊す-1”いかれ帽子屋”によって回収されます。その後Dクラス職員を用いて視認による異常性を確認した後、研究用の██個3個を除いてすべて焼却処分してください。また、研究用のSCP-XXX-JPは小型低脅威度物品保管用ロッカー小型中脅威度物品保管用ロッカーに収容してください。
自然発生したSCP-XXX-JP-AはインタビューとBクラス記憶処理ののち、死亡するまで財団フロントの学校、企業、介護施設などに所属させ、監視の上通常の社会生活と変わらない環境を与えてください。遺体は検査ののち、通常の手段で処分してください。財団の実験で発生したSCP-XXX-JP-Aはインタビューののち終了してください。20██/12/26追記: SCP-XXX-JPの実験をする際はクリアランスレベル3以上の職員2名以上の許可が必要です。

説明: SCP-XXX-JPは人間用の帽子です。外見は個体によって大きく異なります。SCP-XXX-JPは約1か月~半年おきに、観測のされていない日本国全域の路上にあるポールにランダムに出現します。SCP-XXX-JPの起源を探る試みは現在成功していません。

SCP-XXX-JPを肉眼で視認した人間(以下、対象)は例外なくそれを「自身のものである」と思い込みます。思い込みは対象の年齢・性別・経験・嗜好に関係なく発生しますが、大抵の対象は自身の経験からその思い込みを疑います。この思い込みは人間以外には起こりません。

SCP-XXX-JPを正しく着用した人間(以下、SCP-XXX-JP-A)は、SCP-XXX-JPを脱ぐことが不可能になります。このときSCP-XXX-JP-Aはそのことに対して疑問を持ちません。そして、█秒後に不明なプロセスで老化または若返りと、場合によっては性転換を始め、██秒~███秒かけて着用したSCP-XXX-JPの対象年齢・性別に心身ともに変化します。このときSCP-XXX-JP-Aには苦痛は見られず、変化後には一様に「しっくりくる」「生まれ変わった気分だ」といった旨のことを述べています。このプロセスののちにSCP-XXX-JPは前述の異常性を失い、はじめからSCP-XXX-JP-Aの所有物であったように認識されます。

SCP-XXX-JP-Aの寿命は変化後の外見から想定される程度に変わりますが、SCP-XXX-JP-Aの体細胞は変化前と後での違いは見られず、記憶の相違も見られませんでした。また、遺体の解剖でも通常のヒトとの相違は見られませんでした。

インタビュー記録XXX-1: SCP-XXX-JPは20██年4月6日に、██県██市の街中での「息子が若返った」という通報ののち、財団に発見されました。目撃者には事情聴取ののちAクラス記憶処理を施しました。「息子」は現在SCP-XXX-JP-A-01と指定されています。以下は通報者へのインタビューです。

対象: ██ ██氏(通報者)

インタビュアー: 北中研究員

付記: ██氏には警察からの事情聴取であると通達してあります。

<録音開始, 20██/04/06 14:59>

インタビュアー: では██さん、あなたが何を見たのかを教えていただけますか。

██氏: ああ、私は息子と飲食店に向かってたんですよ。本当ならもうじき24ですかね。給料が入ったから飯を奢ってくれるって話になって。そしたら道中で、小さな男の子が被るような赤いキャップが道の柱に引っかかってるのを見つけたんです。それを見て私は自分が昔に被ってた物だと思ったんですけど、なんでこんなとこに引っかかってるのかわかわからなくて……。不思議に思ってると、息子が「俺のだ」って言ったんです。

インタビュアー: それで、息子さんはそのキャップをどうされたのですか。

██氏: はい、息子は「懐かしいなあ」なんていいながらそれを被りました。その時私はそれが自分のものだと思っていたこともあって、「何を馬鹿な事を言ってるんだ、そんなもの買ってやった覚えはないぞ」と言って帽子を脱がせようとしたんです。そしたら、がっちり頭にはまって取れなくて。驚いて引きはがそうとしたら、背がみるみる縮んで、子供になっちまったんです。

インタビュアー: なるほど。通報では「若返った」とおっしゃっていましたが、今の姿は幼少期に似ている、ということでしょうか。

██氏: [しばらく考え込んで]いや、そういうわけでもないですね。通報した時は混乱してたし、なんて言えばいいんだかわからなくてああいってしまいましたが。

インタビュアー: 当時の息子さんの写真等は残っておりますでしょうか。

██氏: 家にならありますよ。さすがに今は……いや、確か免許証に家族写真が挟まって……ああ、これです。[██氏は懐を漁り、免許証の入ったカードケースを出して写真を見せる]

インタビュアー: なるほど。こちらコピーさせていただいてもよろしいでしょうか。

██氏: ええ、大丈夫です。

インタビュアー: その他息子さんの言動で何か気になったことはございますか。

██氏: いや、特には。強いて言うなら前よりよくしゃべるようになったかな、ってぐらいです。

インタビュアー: ご協力ありがとうございました。

<録音終了, 20██/04/06 15:26>

終了報告書: 写真に写るSCP-XXX-JP-A-01と現在のSCP-XXX-JP-A-01の顔立ちはかなり異なっていました。どうやらただ老化・若返りを起こすだけではないようです。また、最後の発言から精神面への影響も伺えます。 - 六連博士

インタビュー記録XXX-2: 以下は財団での実験に伴って行われたインタビューの記録です。

対象: SCP-XXX-JP-A-04

インタビュアー: 北中研究員

付記: SCP-XXX-JP-A-04はDクラス職員であり、SCP-XXX-JPの発見以降、初めて財団での実験でSCP-XXX-JPを着用した人間である。SCP-XXX-JPの効果により27歳男性の肉体から老婆の肉体へ変貌している。

<録音開始, 20██/05/04 13:00>

インタビュアー: SCP-XXX-JP-A-04、調子はどうですか。

SCP-XXX-JP-A-04: その呼び方は慣れないね。気分はすこぶるいいよ。ちょっと体が不自由だけど、多分普通のジジババぐらいだろう。

インタビュアー: そうですか。では質問に移ります。SCP-XXX-JPに暴露したとき、どういった心情でしたか。

SCP-XXX-JP-A-04: そりゃあ、何にも聞いてないから脱げなくなったときはちょっとビビったよ。でもね、すぐに大丈夫だって思ったんだ。

インタビュアー: それはなぜですか。

SCP-XXX-JP-A-04: わかんない。ただ、大丈夫だ、って思った。あと、それから嬉しくもなった。

インタビュアー: 嬉しく、ですか。

SCP-XXX-JP-A-04: ああ、なんというか、無くしてたものが戻ってきたような。あの帽子のことだけじゃなくてね。

インタビュアー: あの帽子、とはあなたの着用したSCP-XXX-JPのことで間違いないでしょうか。

SCP-XXX-JP-A-04: うん。そして、体が変化し始めたときによりそれが強くなった。……ああ、そうだ。いまピンときたよ。

インタビュアー: 何でしょう。

SCP-XXX-JP-A-04: 今からあたしはほんとの自分になる、ってね。

<録音終了, 20██/05/04 13:17>

終了報告書: 実験時のSCP-XXX-JP-A-04はもっと粗野な言葉遣いだったように思います。インタビューの内容も加味するとSCP-XXX-JPは肉体だけでなく、精神への影響もあることは確実でしょう。具体的にどのようにかはまだ研究の余地がありますね。 - 六連博士

インタビュー記録XXX-5:

対象: SCP-XXX-JP-A-11

インタビュアー: 北中研究員

付記: SCP-XXX-JP-A-11はDクラス職員であり、現在は21歳女性の肉体から中年男性の肉体に変貌している。SCP-XXX-JP-A-11は実験前、自己愛性パーソナリティ障害の診断を受けている。また、SCP-XXX-JP-A-11には実験前にSCP-XXX-JPの異常性についての説明を行っている。

<録音開始, 20██/12/24 13:00>

インタビュアー: SCP-XXX-JP-A-11、調子はどうですか。

SCP-XXX-JP-A-11: とってもいい。見違えるようだ。

インタビュアー: そうですか。では質問に入ります。SCP-XXX-JPに暴露したとき、どういった心情でしたか。

SCP-XXX-JP-A-11: ねえ、何でも話していいのかい。

インタビュアー: 我々はインタビューでの発言のみを基準にあなたがたを解雇することはありません。

SCP-XXX-JP-A-11: そう。[2秒沈黙]最初はね、クソッたれだと思ったんだよ。こんなにも素晴らしい私を捻じ曲げようとするだなんて。しかもこんな趣味の悪いハンチング帽なんかろくな見た目にならないと思った。実際そうだ。見てくれよこの脂ぎった醜い手!

[SCP-XXX-JP-A-11は手を伸ばしてインタビュアーに触れようとする。インタビュアーはのけぞり、SCP-XXX-JP-A-11は手を引っ込める]

SCP-XXX-JP-A-11: ほらごらん。でもねえ、覚悟を決めてこいつを被った時、何かが流れ込んでくるような感じがしたんだよ。

インタビュアー: 何かが流れ込んでくるような、ですか。

SCP-XXX-JP-A-11: ああそうさ。そんな感じがして、俺は酷く安心したんだよ。きっと悪いことは起こらないって思った。自分が小太りのおっさんに変化してもだ。俺は新しい俺を愛せると思ったんだ。俺はもう私じゃない。新品なんだよ。新しくなるんだ。[SCP-XXX-JP-A-11は興奮し、椅子から立ち上がる]

インタビュアー: SCP-XXX-JP-A-11、落ち着いて席に座り直してください。

SCP-XXX-JP-A-11: 変われるんだ。これは救いだ。俺だけじゃない。誰でもこれを被れば変われる。欠けたものを埋めて完璧にしてくれる。そして新しくなる。やり直せるんだ。[SCP-XXX-JP-A-11の輪郭が崩れ、目まぐるしく変わる。報告と映像分析により、様々な年代・性別の人物の姿を連続して形成していることが判明]

インタビュアー: SCP-XXX-JP-A-11?

SCP-XXX-JP-A-11: お前たちもあの帽子を被ろう。皆が新しくなれば世界はきっとよくなる。こんなくだらない大がかりな茶番を止めて救いを広めよう。誰もが待ち望んでいる。忘れたものが帰ってくることを!

インタビュアー: インタビューを、インタビューを終了します。

<録音終了, 20██/12/24 13:36>

終了報告書: SCP-XXX-JP-A-11はインタビューを行っていた部屋の外で待機していた警備員によって鎮圧され、終了されました。また、当該インタビュー記録の後半部の音声を聞いた職員の██%が未知の認識災害を受け、SCP-XXX-JPの収容違反を試みました。これを受けて当該インタビューの映像・音声記録はアーカイブされました。閲覧の必要が生じた場合、クリアランスレベル3以上の職員2名以上の許可を得た上で、Dクラスに閲覧させてください。

事案SCP-XXX-JP: 20██年3月14日に行われた確保作戦の際、機動部隊長のエージェント・██がSCP-XXX-JP-Aになる事案が発生しました。発生したSCP-XXX-JP-A(SCP-XXX-JP-A-16と指定)は狂暴化し、機動部隊員によって鎮圧、終了されました。その際、機動部隊員2名、通行人7名が死亡しました。目撃者にはインタビューのちAクラス記憶処理が施されました。調査の際、終了されたSCP-XXX-JP-A-16の着用していた衣服から以下のメモが発見されました。

あの帽子は何度も見るうちに洗脳を強化していくのか、それとも俺の意志が弱いのかはわからないが、俺はもう抗えなさそうだ。すまない、皆。俺は忘れ物を取りに行くよ。