Stringfish

このリストの目的

過去に処女作の下書きを大量に読んできた経験から見るに、以下で詳細を記す問題は駆け出しの執筆者に典型的なものです。このリストの目的は、あなたが起こしてしまっている可能性がある各問題の具体例を挙げ、改善するには何をすればいいか、なぜそのように変更を加えるべきなのかを述べるというものです。

注意: このリストは公式のものではありません。これは文法の添削と文体に関する助言をまとめたものであり、あなたの作品の質を向上させると私が経験則的に考えているものです。

下手な説明から説明を始める

説明: SCP-3714は、視界に入ったものを攻撃します。

説明: SCP-4253は、イギリスのブリストルで最初に発見されました。

してはいけないこと: オブジェクトが何なのかを説明する前に、そこまで重要ではない特性を挙げていく。

すべきこと: まず初めに、そのSCPが実際にどういう物体であるのかを説明する。

なぜか: SCPがどのような見た目なのか、読者は記事の中でなるべく早く理解する必要があります。例えば、このSCPは視界に入ったものを攻撃する、と書いても、それがどういう物体なのか事前に伝えていなければ、狙い通りのイメージを誘い出すことは不可能です。狼が見るなり攻撃したというイメージは、テディベアが、ピエロが、あるいは知恵を持ったナイフの箱が同じことをしたのとでは全く異なります。つまり、何を思い描けばいいのか分からなければ、読者は何も思い浮かべません。まず最初に、そのオブジェクトがどんな物または概念であるかを、読者の頭に叩き込みます。それから、その特性について詳しく説明していきましょう。

「XXのようです」「XXに見えます」「XXと考えられています」と書く

SCP-3452は、長さ20cmの大型のミミズのように見えるものです。

SCP-4720は、革財布の外観を持ちます。

SCP-3293は、色ガラスで造られていると考えられています。

SCP-4249は、浮遊能力を持つように見えます。

してはいけないこと: オブジェクトが実際に、XXである/XXをする、にも関わらず、「XXであるようです/XXするように見えます」と書く。

すべきこと: オブジェクトはXXです、XXをします、と断定的に書く。

なぜか: 科学的文書は、断定することを躊躇ってはいけません。1本のひもの長さを測定して求めたとき、求められた長さはそのひもの実際の長さに見えますし、私たちも実際の長さだと信じます。そのように見え、私たちがそう信じる根本的な要因は、実際に事実であるからです。この認識が機能しないと考えられる特別な理由(オブジェクトの効果が私たちの認知能力を改変してしまうなど)がない限りは、事実であると断言すべきです。

説明の項目に収容手順を書く

説明: SCP-4293との接触は、テストする場合を除き、許可されていません。

説明: SCP-3946の収容セルのサイズは、3×3×3メートルです。

してはいけないこと: 収容手順について説明の項目で書く。

すべきこと: 収容手順については特別収容プロトコルの項目に書く。

なぜか: :財団職員(と読者)は特別収容プロトコルの項目を読むことで、SCPの収容に関するすべてを判断できる必要があります。SCPの収容や接触の制限に関する情報が説明の項目の中に埋もれてしまうのは、財団世界において合理的とは言えません。

特に意味のない削除及び検閲

SCP-4296は[編集済み]によって、██████の████ ████で発見されました。

SCP-3252との物理的接触により、被験者は███████████を体験します。

D-█████は収容チャンバー内に入りました。

█████博士は、█████████████博士、████博士、████・████████████████████、そしてデニス・████████████らと共にいくつかの実験を行った。

してはいけないこと: 情報を隠す意味がない、隠しても意図した反応を読者から引き起こせない削除や黒塗りを行う。

すべきこと: 情報の削除は、世界観に合致し、尚かつ望ましい反応を読者から引き出すのに役立つ場合にのみ行う。

なぜか: 情報を削除することは、読者の好奇心や不安を誘うための有効な手段となりえますが、しばしば適切でない形で使用されています。効果的な使用例は、地球上のオブジェクトの正確な位置が隠されており、それがどこにでも存在し得る──読者の近くにさえも──ことを意味している場合です。同様に、SCPの完全な特性に関する詳細情報を検閲する場合も、読者に「一体何が起きるのか」と考えさせることができます。例えば、SCP-447でこの手法は非常に効果的に使われており、この記事をとても効果的なものにしているのは、SCP-447が死体に触れたときに何が起こるのか私たちには分からないというところです。

その一方で、職員や民間人の名前を検閲したり隠したりするのは、記事を読んだ際の体験を良いものにするとは一般的には言えません。(特に、「D-3742」のような表記のナンバー部分を隠すことに意味はありません。Dクラス指定の目的そのものが、その本名を隠すことだからです。それ以上の検閲は、財団世界内と現実世界の両方で、何の意味もありません。)同様に、オブジェクトが読者の近くに存在したとしても感情的な反応を誘い出す可能性が低い場合、その所在地を隠す理由はほとんどありません。見えない巨大なモンスターがどこに居たっておかしくない、すぐ後ろに居るのかもしれない、というのであれば読者は怖がるかもしれません── しかし、描き上げたどんなものにも命を吹き込む鉛筆であるなら、その正確な所在地を隠しても読者の反応は変わりません。このような場合には所在地を検閲しても何の意味もありません。検閲したり隠したりすることで良くなるものが無い場合、そうする価値はありません。

「常時」または「必要性がない限り」XXを行う

SCP-4392は、施錠された収容チャンバー内で常時収容されます。

極度の必要性がない限り、収容チャンバー内への立ち入りは許可されません。

してはいけないこと: 収容は常時維持されるべきであること、必要性がない限り何らかのアクションは起こすべきでないことを述べる。

すべきこと: 収容プロトコルが開始されれば収容は常時維持されること、全てのアクションは必要性があるときにのみ行われることを前提とする。

なぜか: ただ単に、オブジェクトは特定の手順で収容されると述べれば、その収容手順が永久的に保持されるという意味が含まれています──丁寧にお願いされたからといって収容対象を解放するのは、標準的な慣例などとは言えません。

文字の打ち方や書式を変えて装飾する

説明: SCP-3740は長い牙や毛皮を持つ巨大な黒犬です。1

SCP-4026との接触は、目の膨張、唇の垂れ下がり、その他の関連するものといった影響を伴うことがあります。極端な場合には、を引き起こす可能性があります。2

してはいけないこと: 文書全体をこのようにタイプしたり3、読者の注意を引くために一部で大文字や太字を使う。4

すべきこと: 文の最初の単語の頭文字は普段通り大文字にし、文の途中で大文字や太字を強調する目的で使わない。

なぜか: 作品の中でこんな風にタイプしたり書式を変えたりするのは、記事の内容を損ないます。それに、どうもバカっぽくて身勝手なように見えがちですし、特に理由もなく文章を読みにくくしているだけです。まさしくここで示しているように。5

現代の科学では知られていないもの

SCP-4392は、現代の科学では知られていない濁った液体を漏出します。

SCP-3927は、地球上では発見されていない材質で構成されています。

してはいけないこと: その材質が、オブジェクトを異常な存在にしている要因のひとつだと明らかなとき、それを「現代の科学では知られていない」と書く。

すべきこと: 材質については「特定されていない」、もしくは「特定不能」と書く。

なぜか: 「現代の科学」は非常に漠然とした言葉です。さらに財団は一般的に、現在「現代の科学」と考えられるものを超えた技術を有している、と考えられます。また、材質の原子または分子の内容を、ほとんどの場合で特定できる技術が存在します。これらの技術でも解析に失敗した場合、「現代の科学では知られていない」ではありません。なぜなら、サンプルは目の前にある──ただ、上手く特定できなかっただけです。したがって、この物質は「特定されていない」、もしくは「特定不能」と書くべきです。

SCPの識別名を誤った形式で使う、別の形式の識別名を使う

SCP - 4203 - 27

SPC-4203

SCP-4203、別名『ザ・ウォッチ』は、小さな懐中時計です。『ザ・ウォッチ』は慎重に取り扱う必要があります。

説明: オブジェクトは、大きなビーチボールです。膨らませたとき、オブジェクトはあらゆる種類のビーチでの遊びのために使用できます。いくつかの試験がオブジェクトに対して行われてきました。オブジェクトは現在収容されています。オブジェクトオブジェクトオブジェクト。

してはいけないこと: SCPを表記する際にダッシュ(-)の間にスペースを入れる、「SCP」のアルファベットの順番を間違える、またはSCPアイテムに言及する際にその指定名称を使わず「オブジェクト」という呼称ばかりを使う、もしくはそのSCPの指定名称ではない何らかの呼称を使う。

すべきこと: 「SCP-4203」のような形式で記述し、常にその呼称を使う。

なぜか: 財団の文書化方式は、作品世界内では規格化されています。したがって、「SCP-XXXX」という形式が常に使用されるべきです。記事中でSCPを『ザ・ウォッチ』のような、何らかのニックネームで呼ぶことは絶対にやめましょう。名称を指定する全体的な目的は、明確にオブジェクトに言及し続けられるようにすることです。財団は100個の異なる『ウォッチ』を保有しているかもしれませんが、どんなときでもSCP-4203として指定されたものはひとつしか持っていないでしょう。また、公式文書内でSCPを「オブジェクト」と言及するのは問題ない(とはいえ私は猛烈に止めさせたい)ですが、そればかりを使うのは避けましょう。そのような態度は不満の対象6、とあなたは言うかもしれませんが。

間違ったIts/It's7

SCP-4720をなだめる唯一の方法は洪水させることで、それは毒ガスで収容チャンバーです。8

SCP-3927は、特定のルーン文字のある箱にずっと格納する必要がありますそれは表面です。9

SCP-4293は温暖であると素行が悪く、従ってその保管されたは冷蔵収容チャンバーの中。10

してはいけないこと: 「it's」を非短縮形である「it is」では意味が通らない部分で使う、「its」を「it is」が非短縮形として望ましい部分で使う。

すべきこと: あなたの語法が正しいか確認するためにhttp://www.its-not-its.info/を参照する。

なぜか: これは英語の文法ルールのひとつであり、多くの人々が混乱するルールでもあります。それこそがルールだと学ばなければなりません。11とはいえ、その理解はできる間違い。12私は絶対に、絶対に犯さない間違いですが。

既に知られていること、説明するまでもないことを書く

Dクラス職員は常にスタッフの指示に従ってください。

SCP-4639は収容セル内に収容されるべきであり、解放してはいけません。

SCP-3274の収容セルに侵入しようとしている人物は誰であれ拘束されます。

違反が発生した場合、SCP-4293は直ちに収容する必要があります。

してはいけないこと: 作品世界内の職員、あるいは現実世界の読者が既に知っているであろう財団の仕事の実態やそれに関する事を述べる。

すべきこと: 読者は既に財団の仕事について良く親しんでいることを前提にする。

なぜか: もし、SCP記事ひとつひとつで基本的な行動に関する全情報を詳しく述べた場合、極端に冗長になりますし、その内容は読者に向けたオブジェクトの説明とはほぼ無関係なものです。収容の手順にひとつでも違反した場合、誰もが拘束されるべきだと思うのは非合理的とまでは言えません。ですが、オブジェクトが収容から脱走した場合、適切な行動方針がオブジェクトを収容することなのは明らかです。こういった当たり前の手順を説明する文章は、基本的な行動を述べているのであり、記事に与えるメリットは少ないです。

3次元の物体を説明するのに3次元の単位を使っていない、その他単位に関するミス

SCP-3923は、4x4mの部屋に収容されます。

SCP-4273は、サイズ3x3x3x3mの収容セル内に保管されています。

SCP-3293は、サイズ30x30x30フィートの部屋に保管されます。

SCP-4639は、1.3mの体積を有しています。

してはいけないこと: 物理的に3次元空間に存在する物体のサイズ・量を3次元以外の単位で記述する、測定した数値を表すのに非メートル法の単位または間違った単位を使用する。

すべきこと: 3次元の物体のサイズ・量はメートル法を使用し3つの数値のみで記述する。数値を表記するものには正しい単位を使用する(長さにはメートル、大きさにはリットル、など)。

なぜか: SCPの文書は科学的な文書として書かれています。したがって、これらの文書は科学的に正確であり、測定のために標準的な科学的測定基準(シャレだからね)13を使用する必要があります。ほぼ全ての場合で、メートル法が使用されるべきです。参考までに、こちらのウィキペディアのページを確認して、記述したいものに相応しい単位が何かを判断してください。

用語または科学的性質の誤用

SCP-4028は、小動物を窒息させるのに十分な放射能を持ちます。

(放射能が窒息を引き起こすことはありません。)

その民間人にはクラス-C麻酔薬14が投与されました。

(記憶処理15は意図した用語です。)

やるべきでないこと: 意味をよく知らないのに、記事で用語を使用したり科学的性質に言及する。

すべきこと: その用語が表す性質をしっかり理解している場合にのみ使用する。

なぜか: 繰り返しになりますが、SCPの文書は科学的な文書として書かれています。財団の世界では、これらの文書は科学的分野の専門家達によって書かれているのです。著作者としてのあなたが財団の科学者と同じぐらい賢い必要はありませんが、財団の科学者のように書ける振りができる必要はあります。あなたが専門用語の意味について自信がない、または特定の特性や作用の結果を詳細に理解していない場合は、それらの用語を使う前にチャットやフォーラムで誰かに質問してください。

画像が無いことにあえて言及する

画像:[画像編集済み]

現在画像待ち

してはいけないこと: 画像が欠落している、あるいは検閲されていることを特筆する。

すべきこと: 手元に画像があるなら記事に組み込み、そうでなければ画像が無いことについて書かない。また、文章中に画像を埋め込むのではなく、SCP記事を書くには?の「フォーマット」のタブにある「画像の表示方法」の標準の画像表示用構文を使うようにする。

なぜか: 財団世界では、記事に画像がない場合、それは単純に添付されていないだけです。画像が添付されていない特別な理由──例えば、見ると悪影響があるなど──がない場合、画像が無いことに注目させるのは何の意味もありません。

怒り状態

SCP-4027を大きくて長い棒でつついた場合、怒り状態に入ることが観察されました。

やってはいけないこと: とにかく「怒り状態」という用語を使用する。

すべきこと: とにかく「怒り状態」という用語を使わない。

なぜか: 人が怒ったとき、「怒り状態に入った」とは言いません。「怒った」と言います。動物がうなり声をあげあなたを攻撃するとき、それは「怒り状態に入っている」ではありません。自分の縄張りを守っている、あるいは空腹であなたを食べたいがために攻撃的な行動を取っているのです。SCPがあなたを本気で殺そうとしているとき、それは「怒り状態」にあるのではありません。ただ単に、知的な衝動や生来の本能、もしくは本質的な特性などの特定の理由によって、あなたを殺そうとしています。「怒り状態」という言い回しはなんら有用な意味を持たず、通常の英語話法で使用される言葉ではありません。そういった振る舞いを、読者により詳細に伝え述べるために使える説明しやすい言葉が、必ず存在します。

最後に

以上の参考例が、SCPを執筆する際にここで挙げられたミスを犯していないか判別するのを助け、将来的にはあなたの作品をより良くするのに役立つことを願います。これらの間違いを犯していたとしても、気を落とすことはありません。サイトの誰もが最初は初心者でした。とにかく記事を読み続け、書き続けましょう。そうすれば、執筆者として磨かれていきます。幸運を祈ります!


SCP Foundationに関係ないものも練習がてら訳してみよう。
というわけでcreepypastaのAnnora
2月辺りにIRCで話題に上っていたのを見てサクッと訳そうと思ったのに、どうしてこんなことに…


ブリー、このメールを消さないで!

私を憎んでるのは分かってる、でも私たち一度は親友だったし、どうしてもこれを読んで欲しいの。私はすごく困った状況になってて、あなたにはどうすることもできない。でも、どうしてもこれを読んで欲しいの、そうしたら分かってくれる。

私たち、地域大会16から話してないよね。あれから随分経った、でもあなたに起こったことは私のせいじゃないの。少なくとも、全部が私のせいって訳じゃない。みんなは私がやったと思ってるだろうけど、あなたを傷付けるようなことなんて絶対にしない。

これから書くことは、おかしな話に聞こえると思う。でも、あなたに話す必要がある、誰かに知って欲しい。

それを始めたのは、私たちが8年生17のとき。クリスタル・クラシック杯18の前の晩だった。私は家に居て、試合のことを考えてとても緊張していて眠れなかった。それで、パソコンを立ち上げて、ちょっとネットを見たりしてた。でも何をやっても気が乗らなくて、ただそこに座ってた。それで、自分のことググッてみたの。

私はそんなことするべきじゃなかった、ブリー。最初のうちは、みんなが自分のことググったときに出るような、普通のことしかなかった。でもそれから、ウィキペディアの私のページへのリンクを見つけた。

私たちのスケート・クラブか、私のパパが作ったりしたんだと思った。大したことは書いてなくて、ただスケートに関する基本的な情報とか、私がどの街に住んでるかとか。でも私の目を引いたのは、私がその年のアイス・クラシックで優勝したと書かれていたことだった。

笑っちゃった、きっと誰かが私を元気付けようとしてやったんだと思った。パパを問いただしてみたけど、パパはやってないって言った。

次の日、クリスタル・クラシックで優勝して、とても嬉しかった。それが初めて優勝した大会で、すごく気分が良かった。それからどんなに厳しい練習をしたか、憶えてる。私の両親が、セルゲイをコーチとして雇ったの。すごくお金が掛かったはず、あなたも分かるでしょ。

それから、大会の前はいつも私のページをチェックした。いつも私が何位に入るか、結果を教えてくれた。15歳のときに地区大会19で優勝すると書いてあって、それは現実になった。その後、セルゲイは「オリンピックを狙える」とママとパパを説得して、私は学校から引き離された。

毎日滑った、でもセルゲイが言う「全米選手権20に出るならこれぐらいできないと」という程には上達していかなかった。キツい練習をこなして、上手く滑った。それでもセルゲイは「まだダメだ」って。

あの地域大会の日になった。私は勝つことしか考えられなくて、あることをした。そんなことしなければよかったのに。みんな、あなたが優勝の本命だって言ってて、私はもう試合で負けたような気分だった。それで、私はウィキペディアのアカウントを作って、私のページを更新しようとした。私が優勝する、って内容に。

それで、その後。ちゃんと更新されてるかチェックすると、ページに書かれていたのはこれだけだった。「アノラ・ペトロワは自己中でセコいクソ女、然るべき報いを受けるだろう。」

泣き崩れた。私が次の日すごく調子が悪そうだったのは、それが理由。私は呆然としてた。憶えているのは、あなたがいつもの動きをしてたこと、あなたの靴のエッジが折れるのを見たこと。そして気が付くと私は倒れていて、飛んできた刃先で額が切れて顔中血だらけになってた。それから運営の人たちは、これは私のせいだと言った。私が少し前にあなたの靴を持っていたからって。ブリー、私は本当にあなたの靴には何もしなかった──私は勝ちたかった、でも、あなたを傷つけるようなことなんてしない。

私がその後の全ての大会からの追放処分になると、みんな「然るべき報いだ」と言った。誰も私の言い分なんて聞こうとしなかった。

その後セルゲイが私を破門にしたのを、あなたは聞いたと思う。セルゲイは「お前は私の名を貶めた」と言った。私と話そうとする人は誰もいなかった。

みんなから除け者にされるってどんなだと思う?私は氷に立つことすらできなかった。

それから、私のページはもっとひどいことになった。私がチェックすると必ず、私についてのいろんな恐ろしいことが書いてあった。その内の半分も伝えきれないし、言葉使いもとてもひどかった。それを読むたびに私は泣いた、でもチェックするのはやめられなかったの。

私は何をすべきか分かってて、それでウィキペディアに苦情を出した。電話しても見たけど、私のページについて何か知っているという人は居なかった。

その金曜の夜、私は家にひとりで居て、私のページが削除されていないか確認することにした。ページはまだあって、そのときはこう書いてあった。「アノラ・ペトロワはかわいそうなちっちゃな身なし子」。

私はパニックになった。パパとママに電話を掛け続けたけど、その度に電話の向こうから聞こえるのは、ゾッとするような笑い声だけだった。きっと100回は掛けたけど、最後はもう、それ以上あの笑い声を聞くのに耐えられなくなってしまった。

事故の後、警察はパパとママの携帯を渡してくれたけど、あの夜に私が掛けた電話の記録は何もなかった。

悲しくてどうしようもなかった。前は一日中練習をして家庭学習もして、とても忙しくて、私がいつもどんなに孤独だったかなんて気付かなかった。あなたが連絡を取ろうとしてくれたことは知ってる、でも私はすごく落ち込んでいたし怒ってもいたから、何もかもを遠ざけてた。

18歳になると、私は裁判所から賠償金を受け取って、スイスに渡った。

私は自分をやり直さなきゃいけなかった。私のスケートは本当に動き出した。1年も経ってなかったけど、あの起こったこと全てが、とても昔のことのように感じられた。

それが、こんなことするべきじゃなかったって理由なの、ブリー。

私はこれを今、プラハの街外れのホテルから書いてる。明日、アイス・サーカスのオーディションを受けるの。確かに、私たち昔はこういうのを鼻で笑ってたけど、でも今は本当に受かりたくて。すごく緊張してて、それで昔のクセで私のページをチェックしてみた。

どう言えば良いのか分からないけど、でも私が明日仕事を手にできるか見てみたら、ページにはただ「アノラ・ペトロワは友達も居ないまま孤独に死んだ。」って書いてあって、そして今日の日付が私の命日として一覧に載ってた。

ぐしゃぐしゃに泣きながら、どうにかこれを書いてる。でもあなたには本当のことを知って欲しかったから。お願い、私を信じて、ブリー。私のページのスクリーンショットを添付したから、信じてくれるよね。それに全部が、私があなたに伝えたままがある。

どうするべきなのか分からない。ここには知らない人しか居ないし、誰も英語を話さない。私はページを更新し続けてる。

あぁ、神様。随分経つけど、まだページを更新し続けてる。でもまだ何も変わらない。私は夜の12時を待ってる。どうするべきか分からなくて、鍵を掛けてこの部屋に閉じこもってる。

もう夜の12時まであと何分かしかない。私にできるのはページを更新することだけ。もう疲れちゃった、でも止められない。怖くてパソコンから離れられない、この後何が起こるのか分かるまでは。

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