Tale下書き 「また再び抱かれたならば。」& SCP下書き「帰る場所」& SCP下書き「戦う意味とは。」
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「それでは、また来ます。」
そういって彼は部屋を出た。
腕には注射の後がしっかりと残っていた。
意識がすっと遠くなっていく。
こんな時私が思い浮かべるのは、
あの子のことだ。
そう、私という夢を抱いてくれたあの子……。

「うるっせえ。家の金使おうが勝手だろが!」
「うぅ……」
そう、これはあの子の記憶。あの子が毎日聞いた声。
父が怒り、母が泣く。
そんな日々が毎日続いていたのだ。
そして夜に父が帰る。
「くっそう、また負けた。あの台故障してんじゃねえんか!」
「ねえ、お父さん。今日、私のたんじょ……」
「うるせえ!黙ってろ。」
この日を思い出す度に、頬に痛みが走る。
そして痛くて泣くと「うるさい」って
また殴る。
辛い日だったんだ。あの子は。
でもその子は耐え続けた。
辛い日がある度にその子は引き出しからある絵本を取り出した。
その本は父が2歳くらいに買ってくれた絵本だ。唯一父があの子のために買った物。
その絵本の6ページ目、そこには家族が笑顔で食事をしている挿絵があった。
そこには父の姿もあった。
「いつかこんな楽しい食事が楽しめたなら。」
あの子はその絵を見る度にそう言った。
そう、それがあの子の夢だった。

しかし、その夢はあっけなかった。
その日、またいつものように怒号が聞こえてきた。
しかし、その日はいつもとは違った。
「あの子はどうするの?」
「うるせえ、俺の勝手だろうが!」
いつもの痴話喧嘩とは違っていた。
私が下に降りると、あの父は玄関の扉を開こうとしていた。
あの子は問いた。
「父さん。どこいくの?」
か細く、怯えた声で。
父は答えなかった。

後日、あの子は母から別居の話を聞いた。
父から突然切り出したそうだ。
あの子はそれを聞いて諦めた。断念した。
一途な1つの夢を。そうして私が生まれた。
じゃあ私は何のために生まれたのか。
代わりに夢を叶えるためじゃない。
再び、抱かれるためだ。あの子に。
夢にだって感情はある。
だから再び抱かれたならば。
「私も一緒に担おう。この身が果てるまでの辛い日々を。」