アイテム番号: SCP-1535-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1535-JPと思しき現象が確認された場合、機動部隊る-05("尾ひれ")により直ちに発生地点の周辺自治体に対し、プロトコル・3秒ルールを実行してください。SCP-1535-JPの発生に関わった、もしくは一連の事象を目撃した一般人にはAクラス記憶処理が施されます。なお、財団の収容努力により199█/██/██以降、SCP-1535-JPの実験施設以外での発生は確認されていません。
SCP-1535-JPに対する実験にはセキュリティクリアランス3以上の職員の許可が必要です。
199█/██/██現在、SCP-1535-JPに対する実験にDクラス職員を用いる場合、実験終了後にAクラス記憶処理を施すことが義務付けられています。Dクラス職員を用いた実験は禁止されています。SCP-1535-JPに関与する職員は必ず、事件記録1535および補遺2を確認してください。
説明: SCP-1535-JPは198█/██/██、███県██郡に当時存在していた小学校でその存在が初めて発見された、ある特定の言葉をトリガーとして発動する異常現象です。
最初の発見以降、財団が実施した調査により少なくとも、全国███の地方自治体にてSCP-1535-JPの発生が確認されました。しかしプロトコル・3秒ルールの実施後からSCP-1535-JPの発生は加速度的に減少し、現在に至ります。
SCP-1535-JPは、ある人物(以降被験者と呼称)が食物を床等へ落下させたのち、おおよそ5秒以内に[データ削除済み]と発言することで発生します。この時、落下した食物はSCP-1535-JP-1へと確実に変化します。SCP-1535-JP-1は外見や味、におい、構成元素等は落下以前の物体から変化が見られません。しかしながら、摂食行動以外のあらゆる行動によっても、汚染及び破壊することが不可能になります。また、SCP-1535-JP-1は劣化、腐敗の兆候を示しません。
SCP-1535-JP-1は問題なく摂食することが可能ですが、摂食後24時間以内に軽度の下痢に似た症状を摂食者に引き起こします。この症状は摂食者の健康状態等にかかわらず常に軽微なものです。
以下は一連のSCP-1535-JP事象に関する実験記録の抜粋です。
実験記録1535-1-日付199█/██/██
対象: 市販の食パン1枚
実施方法: D-1535-JP-1に、皿に載せられた食パンを実験室内の床に落下させ、直後に[データ削除済み]と発言させて経過を観察した。
結果: 食パンに見た目上の変化は見られなかった。以降の実験ではこの食パンをSCP-1535-JP-1-aと呼称する。
実験記録1535-2-日付199█/██/██
対象: SCP-1535-JP-1-a
実施方法: 対象を60日間の経過観察の後、D-1535-JP-1に摂食させた。
結果: 同時期に製造された市販の食パンには腐敗の進行が確認されたにも関わらず、対象の見た目やにおい、触感には一切の変化が見られなかった。またD-1535-JP-1はこれを問題なく摂食。直後に美味しいと感想を述べたが、摂食から約3時間後に軽度の下痢の症状を訴えた。
分析: 見た目のみにとどまらず、さまざまな性質が対象に変化した瞬間のまま維持されるようだ。下痢の症状が対象の性質により引き起こされたのか、単純な劣化により引き起こされたのかは現段階では不明。
実験記録1535-3-日付199█/██/██
対象: 市販の食パン1枚
実施方法: 実験記録1535-JP-1と同様の手順を無菌加工の施された室内で、食パンが清潔に保たれるよう注意しつつ実施。落下後は速やかにD-1535-JP-1に摂食させた。
結果: 摂食は問題なく行われた。しかし、摂食から約1時間後、D-1535-JP-1は前回同様に軽度の下痢の症状を訴えた。
分析: 下痢の症状はどうやらSCP-1535-JP-1のもつ固有の性質により引き起こされているようである。
実験記録1535-7-日付199█/██/██
対象: 市販の食パン1枚の上に一般的な目玉焼きを載せたもの
実施方法: 実験記録1535-JP-1と同様の手順で食物をSCP-1535-JP-1-dに変化させたのち、経過を観察した。
結果: SCP-1535-JP-1-dを食パンであった部分と目玉焼きであった部分へ分離させることは不可能であった。摂食は問題なく行われた。
分析: 対象が変化する瞬間の状態で完璧に保管されるようだ。料理は料理のまま、ということなのだろうか。
実験記録1535-8-日付199█/██/██
対象: SCP-1535-JP-1-d(実験記録1535-JP-7の食べ残しを使用)
実施方法: 対象にさまざまな外的刺激を与え、経過を観察する。
結果: 水に浸す、加熱する、濃硫酸をかける、少量の火薬を用いて爆破する等さまざまなアプローチを行ったが、対象に一切の変化は見られなかった。また、ハサミ等を用いて対象を切断する試みも失敗に終わった。摂食は問題なく行われた。
分析: SCP-1535-JP-1に変化した時点で、摂食行為以外のありとあらゆる外的刺激によっても対象を変化させることは出来なくなるようだ。
実験記録1535-18-日付199█/██/██
対象: 生きたニホントカゲ(Plestiodon japonicus)2匹
実施方法: D-1535-JP-1とD-1535-JP-2の2名の職員にそれぞれ1匹ずつ、実験記録1535-JP-1と同様の手順を実行させ、経過を観察する。D-1535-JP-1は一般的な食の嗜好の持ち主であるが、D-1535-JP-2は海外での傭兵経験から食の嗜好に偏りがみられる。
結果: D-1535-JP-2が手順を実施した対象にのみ変化が見られた。変化した対象(以下SCP-1535-JP-1-h)の経過観察を実施。変化後は水分および栄養源を一切与えていなかったにもかかわらず、対象は40日が経過しても衰弱や劣化の兆候を見せず、一切の自発的行動(排泄等の生理現象を含む)も見受けられなかった。しかし、心臓の拍動が正常であった為、対象の生命活動は継続されているものと考えられる。その後、SCP-1535-JP-1-hは生きたまま摂食された。
分析: 変化の有無は被験者が対象を食物とみなしているか否かにゆだねられているということだろうか。変化した対象の動向に関しても少々不可解な点がある。もしかするとSCP-1535-JPは物体を変化時の状態で固定しているのかもしれない。なんにせよ、生物に対してもSCP-1535-JPの効果が表れるというのは非常に興味深い結果だ。更なる実験が求められる。
補遺1: これら実験記録1535の結果を受け、SCP-1535-JPを利用することで誰であっても比較的簡易に強固な耐性を様々な対象に付与できてしまう可能性が浮上しました。実験に携わった人間による収容違反を防ぐ為、実験後のDクラス職員への記憶処理が義務付けられました。
201█/██/██追記: SCP-1535-JPを用いた実験中に重大な事故が発生しました。以下は事故の原因解明のため、後にサイト██より回収された実験会話ログの内容です。
対象: D-1535-JP-2
付記: 実験は、人間に対するSCP-1535-JPの効果適用が可能かどうかを調査する目的で行われていた。また、諸手続きの遅れによりD-1535-JP-2は実験開始前に30分ほど実験室内にて待機させられることとなった。会話ログは実験開始の数分前からを掲載している。
<録音開始>
D-1535-JP-2: なあなあ、博士さんよ。実験はまだ始まんないのか?こんな狭い部屋でずっと待ってろなんてひどい話じゃないか。
██研究員: D-1535-JP-2、実験は手続きが終了次第すぐに開始されます。無駄な私語は慎むように。
D-1535-JP-2: そう言われても暇なもんは暇なんだよ…。実験ってのは何をするんだ?そんくらい教えてくれてもいいだろ?
[実験の手続きが完了したとの報告を██研究員が受け取る]
██研究員: わかりました。実験についての説明を行います。
[実験の説明と準備、更にこれまでの実験結果からD-1535-JP-2が人間を食物として認識しているかの確認も行われた]
D-1535-JP-2: 変なこと聞くんだな。まあ、食えって言われりゃ食うけどさ。…しかしあれだな、こんだけ待たされたんだからどんな大層な実験なのかと思ったが、椅子から飛び降りながらこいつを言うだけなのか?
██研究員: 余計な私語は慎むようにといったはずです、D-1535-JP-2。迅速な行動をお願いします。
D-1535-JP-2: はいはい、つまんないことに時間食いすぎなんだよ。[データ削除済み]。
<以降のデータは存在していません>
補遺2: この直後、実験施設の存在していたサイト██を中心とする半径██km圏内で物理学的時間軸の大規模な[データ削除済み]が発生しました。今現在も事態の完全な収集には至っていません。
本件の後、SCP-1535-JPを用いることで極めて簡易に大規模な特殊災害を引き起こすことが可能である事から、安全性を考慮し実験へのDクラス職員の使用は禁止されました。また、担当職員への危機管理の徹底が重要課題として挙げられています。
サイト██にとって、5秒はあまりにも長い時間となってしまった。-██博士
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 回収されたSCP-XXX-JPはサイト81██の低脅威度物品保管庫に30日間保管してください。その後、異常がなければ研究に使用するサンプル分を確保し、残りは一般的な類似品と同様の手法で破棄してください。該当区域内に存在する全ての中学及び高等学校は財団によって監視され、SCP-XXX-JPの出現が確認された場合、機動部隊い-4("日直")は直ちにSCP-XXX-JPの回収に当たってください。回収後、必要であればカバーストーリー"先生の置忘れ"を流布してください。
説明: SCP-XXX-JPはセラミック製の中型(全長約20cm)花瓶とそこに活けられた花です。花瓶及び生けられた花の外見や種類は各イベントごとに多少の差はありますが、概ね一致しています。詳しくは下記のSCP-XXX-JP実例一覧を参照してください。
SCP-XXX-JPは20██/██/██、東京都██区に当時存在していた高等学校でその出現が初めて確認されました。ある一つの教室内の机上に瞬間的に出現したことが確認されており、それに付随していくつかの異常現象が引き起こされました。後の調査でSCP-XXX-JPには前述以上の特異性が存在しないことが明らかになりました。
この出現は不定期かつランダムに場所が選択されていますが、これまでに確認されている██件全てのSCP-XXX-JPは東京都内の中学及び高等学校に出現していることから、これらの地域がSCP-XXX-JPの発生区域であると考えられ、現在の特別収容プロトコルが確立されました。
SCP-XXX-JPの出現は通常、深夜等の教室がヒト(Homo sapiens)等による直接の監視を受けていない時に発生することが判明しています。出現の瞬間を捉えようとするあらゆる試みは現在まで失敗に終わっています。
出現後のSCP-XXX-JPには特異性は無く、一般的な花瓶と切り花の特徴を有するのみです。しかし、花瓶の作成者や花の産地の特定に至った例は現在まで確認されていません。
また、出現したSCP-XXX-JP実体が出現場所である机上から取り除かれた場合、同一机上に一定の間隔を置いて再びSCP-XXX-JP実体が出現した例が多数確認されています。同一イベント中のSCP-XXX-JPの出現は1度のみであることが後の調査で判明しました。
以下はSCP-XXX-JP実例一覧の抜粋です。
出現場所 |
出現時刻 |
花の種類及び外見の特徴 |
備考 |
私立██高等学校 1年A組の教室内 |
不明 |
白ユリ(Lilium) 花瓶は白く塗られ模様等は存在せず |
出現から25日後、対象の出現した机の使用者であった████は同校の屋上から投身自殺した |
私立██大学付属███高等学校 2年4組の教室内 |
不明 |
白ユリ(Lilium) 花瓶は白く塗られ青い模様が刻まれていた |
出現から2か月後、対象の出現した机の使用者であった████は同校を中退した |
公立██高等学校 1年4組の教室内 |
監視カメラの映像の乱れからおおよそ深夜1時頃と推測される |
ツバキ(Camellia japonica) 花瓶は水色で模様等は存在せず |
出現から3か月後、対象の出現した机の使用者であった████は自宅で[データ編集済み]により死亡 |
私立███中学校 1年5組の教室内 |
同上 |
イエギク(Chrysanthemum × morifolium) 花瓶は白く塗られ模様等は存在せず |
出現から15日後、同教室を普段から利用していた████が教室内で[データ編集済み]により自殺(対象の出現した机の使用者では無かった) |
上記に代表されるSCP-XXX-JP実例から、当初当該オブジェクトには人間に対し何らかの精神干渉作用があるものと考えられていました。以下は調査の一環として、オブジェクトの出現した教室を日常的に使用していた学生達に対して行われたインタビュー記録の抜粋です。
対象: 男子学生(当時18歳)
インタビュアー: エージェント██(インタビューは警察による飯島██の自殺についての任意聴取という形で行われている)
付記: インタビューはオブジェクトの出現から3か月後に行われた。対象の出現した机の使用者であった飯島██はこの記録の3日前に同校の屋上から投身自殺している。彼の残した遺書には「ありがとう」と一言だけ綴られていた。
<録音開始, [20██/10/18]>
エージェント██: それじゃあ██君(対象の学生)、話を聞かせてもらえるかな。言いにくいこともあるだろうけど、生前の飯島君について知っていることとか…何でも構わないんだ。
男子学生: いいですけど…。[5秒ほどの沈黙] 別にこれといって特には。
エージェント██: 3か月くらい前に、彼の机に花を生けた花瓶が置かれたことは君も知ってるだろう?その花瓶について彼は何か言っていなかったかい?
男子学生: 知りません。[5秒ほどの沈黙]僕は何も。
エージェント██: なるほど。では、そうだな彼の様子はどうだった?何か思い詰めているようだったとか、いじめを
男子学生: [エージェント██の言葉を遮るように]違う!僕じゃない!!悪いのは僕じゃない!
エージェント██: い、いきなりどうしたんだね?とにかく落ち着きなさい██君。君はいったい何の話をしているんだ?
[この後、男子学生が突然興奮状態となった為、インタビューは中断。男子学生に精神安定剤が投与され、落ち着きを取り戻した後にインタビューは再開された]
男子学生: あの日…あの日の朝、僕が学校に着いた時には、もう教室は花瓶の話でもちきりでした。「誰が置いたんだろう。」とか「でもあれってそういう意味だろ?」とか。だから僕はてっきり自分の机にあるもんだと、またいつものみたいな奴だろうとそう思ったんです。
男子学生: でも違った。あの日花瓶が置かれていたのはあいつの机で、皆の視線はあいつに向いていた。その日は今までのことが嘘みたいに静かで。だって、いつもみたいなのも全然なくて。お昼ご飯だって食べられた。だから…だから僕は明日もそうであって欲しかった。だから…。
男子学生: あいつもあいつさ。[飯島██のことを指していると思われる]僕が目を付けられてからは全然近寄って来なかった。巻き込まれるのが怖かったんだ!だから!きっと天罰が下ったんだ!そうだよ…あいつの自業自得じゃんか…。はは、やっぱ僕は悪くない。[5秒ほどの沈黙]悪くないんだ…。
男子学生: それにね刑事さん。僕が置いたのは2回目だけですよ。誰かがやったんだ…僕はただ、自分にこれ以上矛先が向くのが嫌で…。二度ととないチャンスだったんだ…同じ立場だったらきっと僕じゃなくたって…。仕方ないじゃんか!仕方なかったんだよ!
<録音終了,[20██/10/18]>
終了報告書: 男子学生にはインタビュー終了後、記憶処理が施され解放されました。
20██/10/20 追記1: インタビュー後の追加調査により、このクラスには日常的な"いじめ"があったことが判明しました。いじめの主な被害者となっていたのが上記インタビューの男子学生でした。
精神鑑定の結果等から、これらのいじめや男子学生の言動にSCP-XXX-JPは一切関与していないことが判明しています。現在、3回目以降の花瓶の出現について調査が進められています。調査は打ち切られました。
20██/10/22 追記2: 自殺した飯島██の自室から複数の花瓶が回収されました。これらはいずれも未使用の状態でした。