アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Safe Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXXX-JP、SCP-XXXX-JP-1、SCP-XXXX-JP-2に触れるときは必ず厚手で指まで覆うことのできる手袋を着用してください。また、エージェントはSCP-XXXX-JP、SCP-XXXX-JP-1、SCP-XXXX-JP-2、SCP-XXXX-JP-3、対象者を発見した場合は即座に確保し、サイト-8189に輸送することとなっています。
確保しているSCP-XXXX-JPの内すべてを束ね、サイト-8189内の中危険度ロッカーの中に収容してください。SCP-XXXX-JP-1を収容する場合、必ず対象者以外が持ち、サイト-8189内の危険物取り扱いロッカーに収容してください。 SCP-XXXX-JP-2を収容する場合は、必ず対象者が持ち、サイト-8189内の高危険度ロッカーに収容してください。SCP-XXXX-JP-3は、対象者がサイト-8189に到着するまで、サイト-8189内の人型用収容檻の内部に収容、他の収容者との接触は控えさせてください。また、SCP-XXXX-JP-3には対象者の画像を絶対に見られないようにしてください。対象者が到着し次第、強化ガラス製で成人男性の人差し指が突っかからずに入る程度の穴がある仕切りが設置されている部屋で片側に対象者、もう片側にSCP-XXXX-JP-3と武装した職員2名を配置し、その後その部屋を囲むようにシャッターを起動、対象者とSCP-XXXX-JP-3を仕切りの穴を介して直に接触させてください。
説明: SCP-XXXX-JPは、210 mm×297 mmのコピー用紙と同じ大きさ、材質、性質に加え、後述する特異性を持つ紙型オブジェクトです。このオブジェクトは日本の██県山間部の麓町で作られたことが明らかになっています。このオブジェクトが紙である理由は、もっともオーソドックスな記録媒体であるから、と推測されています。現在、財団はこのオブジェクトのうち146枚を収容しています。
SCP-XXXX-JPは普段は非活性状態ですが、知的生命体、もしくはその遺体と直に触れることで異常性を発揮します。一度対象者と直に触れたSCP-XXXX-JPの表面には、対象者が記憶している、あるいは遺体が生前記憶していたとされることのうち一つの出来事が、日記のような文章で浮かび上がります(この状態のSCP-XXXX-JPをSCP-XXXX-JP-1とする)。SCP-XXXX-JP-1は、対象者の記憶が確かであればあるほど正確な文章になり、また子供の頃のことであれば絵日記のようになることもあります。SCP-XXXX-JP-1は、読む人間によって言語が変わります。SCP-XXXX-JP-1にはこれ以上の特異性はなく、発見当初はSafeアイテムとして収容されていました。しかし、対象者がSCP-XXXX-JP-1に直に触れることでさらなる特異性が発見され、オブジェクトクラスがEuclidに改定されました。
SCP-XXXX-JP-1はSCP-XXXX-JP-1にもう一度対象者が直に触れることで、浮かび上がっている文章が、対象者の[消去済]を客観的に文章化したものに変化し、また、その形体は題名のない辞書になります。(変化したSCP-XXXX-JP-1をSCP-XXXX-JP-2とする)。SCP-XXXX-JP-2に対象者以外が直に触れると、直に触れた者の記憶は消え、代わりに対象者の記憶を有するようになります(この状態の生物をSCP-XXXX-JP-3とする)。この時、対象者の身体、及び精神、記憶に影響は見られません。その後、SCP-XXXX-JP-2はSCP-XXXX-JPの状態に戻ります。SCP-XXXX-JP-3はあたかも自分が対象者であるかのように振る舞い、SCP-XXXX-JP-2に触れる前のSCP-XXXX-JP-3について聞いても、覚えていないと言いはります。しかし、対象者と直に物理的接触をすることでSCP-XXXX-JP-3になる以前の記憶を取り戻し、代わりに対象者の記憶を失うことが確認されています。この時、接触するのはほんの一部分だけで問題ありません。
補遺1: SCP-XXXX-JPは20██/09/13に███県を任務で訪れたエージェント・キダイが██市の文房具店で発見しました。その後、店主、及びその時店内にいた人々に記憶処理を施し、サイト-8189に収容されました。また、このオブジェクトは当時エージェント・中山が手にとったことで異常性が確認されましたが、何故任務中のエージェント・中山が文房具店に入り、このオブジェクトを手にとったかは判明しておらず、エージェント・中山は黙秘を続けています。
補遺2: SCP-XXXX-JPのオブジェクトクラスに対し、漆原博士は「SCP-XXXX-JPは現在完全に収容されていると言っていいだろう。そのため、このオブジェクトのオブジェクトクラスをsafeに改定することを提案する。」との提案がありました。これに対しこのSCPの責任者である██博士とエージェント・キダイをはじめとする職員5名は、「SCP-XXXX-JPは、特別収容プロトコルは確立されているが、このオブジェクトが今収容しているもので全てだとは考えにくい。そのため、safeへの改定はしない。」との見解を表しました。しかし、漆原博士は依然safeへの改定の提案を続けています。 - 以下の実験結果によりこの提案がされることは無くなりました。
実験記録XXXX-JP-い - 日付20██/11/22
対象: D-XXXX-JP-1(男性) D-XXXX-JP-2(女性)
実施方法: D-XXXX-JP-1をSCP-XXXX-JP、SCP-XXXX-JP-1に直に接触させ、D-XXXX-JP-1の人生を客観的に文章化したSCP-XXXX-JP-2を出現させる。その後、SCP-XXXX-JP-2にD-XXXX-JP-1、D-XXXX-JP-2を同一のタイミングで直に接触させる。
結果: D-XXXX-JP-1は失神、D-XXXX-JP-2はSCP-XXXX-JP-3となった。その後、気絶しているD-XXXX-JP-1に直に物理的接触をさせたが、SCP-XXXX-JP-3がD-XXXX-JP-2に戻ることはなく、D-XXXX-JP-1が失神から回復することも無かった。その後、SCP-XXXX-JP-3は特別収容プロトコルに基づいて収容された。
分析: SCP-XXXX-JPは、対象者の記憶を保持し、対象者以外が触れた時に記憶をインプットするだけでなく、オブジェクトを介して、記憶を流出させるという異常性があることがわかりました。また、このオブジェクトの危険性も確認されました。 -██博士
注: この実験の後、このオブジェクトを用いた実験を██博士の許可を得ず実施すること、レベル2以下の職員を実験の監督者として実験を行うことは禁止されました。また、これと同じ内容の実験を再び行うことも同様です。
補遺3: 実験XXXX-JP-い で収容されたSCP-XXXX-JP-3に対しインタビューを行いました。
対象: SCP-XXXX-JP-3(元D-XXXX-JP-2)
インタビュアー: エージェント・キダイ
<録音開始, 20██/12/02>
インタビュアー: では、インタビューを開始します。まず、あなたの名前を教えてください。
対象: [会話]はい、[編集済]です(D-XXXX-JP-1の名前を答える)。
その後、インタビュアーが対象の個人情報、Dクラスになる前は何をしていたかなどを聞きました。それに対し対象はD-XXXX-JP-1のことについて答え、それを自分のこととして話しました。
インタビュアー: では次にこちらの写真を御覧ください。(D-XXXX-JP-1の顔の写真を見せる)これはあなたですか?
対象: はい、それは私です。
インタビュアー: では次に、こちらの写真を御覧ください。(SCP-XXXX-JP-3の顔の写真を見せる)これは誰ですか?
対象: (困惑の表情を浮かべながら)それは私です。
インタビュアー: はい、では最後にこちらの写真を見てください。(失神しているD-XXXX-JP-1の写真を見せる)
(10秒間の沈黙)
対象: え・・・ なんで私が・・・ え? (体を震わせながら)これはいつの写真ですか・・・?
インタビュアー: 今朝の写真です。
対象: え?
その後、SCP-XXXX-JP-3は暴れだしたためエージェント・キダイが抑え込み、その後サイト-8189内にいたエージェントに無線で応援を頼み無力化させ、人型用収容檻に収容しました。この時もレコーダーは録音状態を維持していました。
インタビュアー: アクシデントは発生しましたが、これにて録音を終了します。
<録音終了, 20██/12/02>
終了報告書: SCP-XXXX-JPは、SCP-XXXX-JP-3に軽度の認識齟齬を引き起こすことが確認されました。ただし、このSCP-XXXX-JP-3は特殊な発生条件で発生したため、実験が必要だと考えます。つきましては、██博士、漆原博士両名へのこの現象に対する実験の要請、およびその実験結果にかかわらず特別収容プロトコルに、「SCP-XXXX-JP-3には対象者の画像を絶対に見られないようにしてください。」という一文を付け加えることを推奨します。 -エージェント・キダイ
このインタビューの終了報告書で推奨された特別収容プロトコルの追記は直ちに漆原博士によって行われました。実験は現在準備段階にあり、実行には移されていません。
補遺3: このオブジェクトの性質を調べるため、レベル4職員2名、██博士の許可のもと以下の実験が行われました。
実験記録XXXX-JP-ろ - 日付20██/01/24
対象: SCP-XXXX-JP,SCP-XXXX-JP-1
実施方法: SCP-XXXX-JP、SCP-XXXX-JP-1を2枚ずつ用意しそれぞれ1枚ははさみで切断、もう1枚はライターを使用し焼却する。
結果: SCP-XXXX-JPはそれぞれ切断、焼却が可能であった。SCP-XXXX-JP-1ははさみで切断することはできず、焼却も不可能であった。焼却したSCP-XXXX-JP-1に焦げ跡は見られなかった。
分析: SCP-XXXX-JPは既存のA4コピー用紙と同じ性質を持っていることがわかりました。SCP-XXXX-JP-1は、破壊が不可能であったことから、異常性を発揮するにはオブジェクトに欠損がないがないことが条件であることが推測されます。 -漆原博士
補遺4: エージェント・キダイの発案により、以下の実験が行われました。
実験記録XXXX-JP-は - 日付20██/06/23
対象: エージェント・キダイ
実施方法: エージェント・キダイに漆原博士が[削除済]を保持していることを伝え、その後そのことに対してのEクラス記憶処理を施す。その後、エージェント・キダイを対象者としたSCP-XXXX-JP-2を発生させ、記憶処理前後の記述を確認させる。
結果: エージェント・キダイが漆原博士が保持しているものの内容を伝えたこと、その後Eクラス記憶処理が施されたことが客観的に記述されていた。
分析: このオブジェクトは対象者の記憶していること、ではなく文字通り人生を読み取る、つまり知能を持っている可能性があります。これを判断するため、より詳細な実験を行うべきだと考えます。 -エージェント・キダイ
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: このオブジェクトは現在、完全に収容できていません。このオブジェクトは、サイト-81██内の収容ロッカーに入れてください。このオブジェクトは毎年2月2日にケースに入れて500 m×500 m×5 mのスペースがある部屋の中央に設置してください。2月3日の0:00から23:59までの間、機動部隊ろ-23(木製の升)がオブジェクトを常に部屋の中心にとどめてください。この時、機動部隊ろ-23は絶対に素肌を露出させないで下さい。SCP-XXX-JP-1が発生した場合は、銀製の弾丸でSCP-XXX-JP-1の左胸部を撃ちぬいてください。
説明: SCP-XXX-JPは、ヒノキ(Chamaecyparis obtusa)製の15 cm×15 cm× 10cmの升に入った現在全てで2016粒の炒られた大豆(Glycine max)、及びこのオブジェクトに直に触れた人間(SCP-XXX-JP-1)です。このオブジェクトが升からあふれることはありませんこのオブジェクトの総数は減ることはなく毎年11月30日に1粒増えることが確認されています。このオブジェクトが腐食することはありません。このオブジェクトは、岡山県の███島で19██/02/03に発生した島民20名が死亡、1名が行方不明になった事件で発見されました。
このオブジェクトは普段は非活性状態にありますが、毎年2月3日に活性化します。活性化状態に入るとこのオブジェクトに一番近い人間に向かって秒速1 mの速度で移動し始めます。この時、障害物があった場合、その外側に転移します。この時の転移距離は最大で200mです。このオブジェクトに人間が直に触れると、その人はSCP-XXX-JP-1に変化します。SCP-XXX-JP-1の姿を裸眼で直視した場合、日本伝承における鬼、に見えると目撃者は供述しています。SCP-XXX-JPに外傷を加えるには、銀の弾丸を使用する必要があります。
SCP-XXX-JP-1は周囲にいる人間がすべてSCP-XXX-JP-1にとって脅威的なものに見えるようになります。この時、何に見えているのかは、SCP-XXX-JP-1の言動、及びオブジェクトの形態から鬼である、と推測されています。SCP-XXX-JP-1は他の人間に恐怖を抱くようになり、SCP-XXX-JPを他の人間に投擲するようになります。このオブジェクトに被弾した人間は傷を負い、自らの年齢分被弾すると死亡します。
SCP-XXX-JP-1は、日光、もしくは流水に当たることで灰となって消滅します。
補遺1: このオブジェクト発見時の事件の目撃者へのインタビュー記録
対象: [編集済])
インタビュアー: 三菱研究員
付記: 便宜上対象者を岸田と呼称する。
<録音開始>
三菱研究員: では岸田さん、あの事件のインタビューをさせていただきますがよろしいですか?
岸田: ああ、わかった。
三菱研究員: まず、あの日何があったかを教えて下さい。
岸田: 何処から話したもんか・・・ あの日は節分だっただろ、だから島民みんなで豆まきをすることになったんだ。で豆を島民から鬼のやつを抜いた分用意したが当日一つ増えてたんだ。
三菱研究員: それを失踪した[編集済]さんが持ったと?
岸田: ああ、その後あいつが妙に怯えだしてな。島の長が近づいていったんだ。そしたらあいつは長に向かって手に持った豆を投げ出した。そしたら長が怪我をしたんで他のやつが近づいていったんだ。そしたら、そしたら・・・(10秒間の嗚咽)
三菱研究員: 落ち着きましたか?
岸田: あぁ、すまねぇ。そしたらみんなが倒れて、俺は逃げ出した。子供も大人も関係ねぇ、みんなが死んでいったんだ。その時のあの野郎は、角が生えた鬼に見えた。その後はあんたらの知るとおりさ。
三菱研究員: ありがとうございました。ソレ以外に変わったことは?
岸田: いや、特には。
三菱研究員: はい、ありがとうございました。これでインタビューを終了します。
<録音終了>
終了報告書: このインタビュー後、対象者にCクラス記憶処理を施し解放した。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2は、サイト-8119内の収容ロッカーに入れてください。SCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2は毎年2月2日にケースに入れて10 m×10 m×5 mのスペースがある部屋の中央に設置してください。2月3日の0:00から23:59までの間、機動部隊ろ-23(木製の升)がSCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2を常に部屋の中心にとどめてください。この時、機動部隊ろ-23は絶対に素肌を露出させないで下さい。SCP-XXX-JP-3が発生した場合は、銀製の弾丸でSCP-XXX-JP-3の左胸部を撃ちぬいてください。
説明: SCP-XXX-JPは、異常性を持つヒノキ(Chamaecyparis obtusa)製の升(SCP-XXX-JP-1)、SCP-XXX-JP-1の中に発生する現在全部で2016粒の炒られた大豆(Glycine max)(SCP-XXX-JP-2)、及びSCP-XXX-JP-1かSCP-XXX-JP-2に直に接触した人間(SCP-XXX-JP-3)からなるオブジェクトです。SCP-XXX-JP-2が腐食すること、SCP-XXX-JP-1から溢れることは外的要因を除いてありません。SCP-XXX-JP-2がSCP-XXX-JP-1から外に出た場合、外に出た分だけSCP-XXX-JP-2は補充されます。毎年11月30日に一粒増えることが確認されています。このオブジェクトは、19██/02/03に日本の岡山県の離島で起きた島民██名が死亡、█名が失踪した事件で発見されました。
SCP-XXX-JPは普段は非活性状態にありますが、毎年新暦の2月3日に活性化します。活性化状態に入った時、SCP-XXX-JP-1は一番近い人間に向かって秒速30 cmで移動し始めます。SCP-XXX-JP-1の進行方向に障害物があった場合、その外側に転移します。その時の転移距離は最大で3 mです。人間が直にSCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2に触れると、その人間はSCP-XXX-JP-3に変化します。SCP-XXX-JP-3は裸眼で直視した場合のみ日本伝承における鬼に酷似した姿に見えるという認識災害を引き起こします。SCP-XXX-JP-3に外傷を与えるには銀の弾丸を使用する必要があります。SCP-XXX-JP-3は、日光、もしくは流水に当たることで灰となって消滅します。
SCP-XXX-JP-3には周囲の人間がすべてSCP-XXX-JP-3にとって脅威的な何かに見えるようになります。何に見えているかは、オブジェクトの形態、SCP-XXX-JP-3の言動から鬼ではないか、と推測されています。その後SCP-XXX-JP-3は周囲の人間に対し恐怖を感じるようになりますが、次第に自我を失っていきます。自我を失ったSCP-XXX-JP-3は周囲の人間に対しSCP-XXX-JP-2を投擲します。SCP-XXX-JP-2に被弾した人間は外傷を負い、自らの年齢分被弾すると死亡します。その後SCP-XXX-JP-3は死体に対し[削除済]。
補遺1: SCP-XXX-JP発見時の事件の目撃者へのインタビュー記録。
対象: [編集済]
インタビュアー: 三菱研究員
付記: 便宜上対象者を岸田と呼称する。
<録音開始>
三菱研究員: では岸田さん、あの事件のインタビューをさせていただきますがよろしいですか?
岸田: ああ、わかった。
三菱研究員: まず、あの日何があったかを教えて下さい。
岸田: 何処から話したもんか・・・ あの日は節分だっただろ、だから島民みんなで豆まきをすることになったんだ。で豆を島民から鬼のやつを抜いた分用意したが当日一つ増えてたんだ。
三菱研究員: それを失踪した[編集済]さんが持ったと?
岸田: ああ、その後あいつが妙に怯えだしてな。島の長が近づいていったんだ。そしたらあいつは長に向かって手に持った豆を投げ出した。そしたら長が怪我をしたんで他のやつが近づいていったんだ。そしたら、そしたら・・・(10秒間の嗚咽)
三菱研究員: 落ち着きましたか?
岸田: あぁ、すまねぇ。そしたらみんなが倒れて、俺は逃げ出した。子供も大人も関係ねぇ、みんなが死んでいったんだ。その時のあの野郎は、角が生えた鬼に見えた。その後はあんたらの知るとおりさ。
三菱研究員: ありがとうございました。ソレ以外に変わったことは?
岸田: いや、特には。
三菱研究員: はい、ありがとうございました。これでインタビューを終了します。
<録音終了>
終了報告書: このインタビュー後、対象者にCクラス記憶処理を施し解放した。
補遺2: 20██/02/03に収容違反が発生し、エージェント・██がSCP-XXX-JP-3に変化しました。その後、自我を失うまでの間Dクラス職員を介しインタビューを行うことに成功しました。
対象: SCP-XXX-JP-3(元エージェント・██)
インタビュアー: D-XXX-JP-1
付記: D-XXX-JP-1は三菱研究員の指示に従って質問をする。
<録音開始>
D-XXX-JP-1: よし、じゃあインタビューを始めるぞ。
SCP-XXX-JP-3: は、はい、分かりました。
三菱研究員: ではD-XXX-JP-1、まずはその風貌について質問してみてください。
D-XXX-JP-1: じゃあまず、俺からはあんたは・・・鬼?に見えてるんだが、それは自分で認識してるか?
SCP-XXX-JP-3: い、いえ、あ、あなたが鬼じゃないんですか・・・?
D-XXX-JP-1: あ?何言ってんだ。お前が鬼だろ?
SCP-XXX-JP-3: ひ、(SCP-XXX-JP-1を探し始める。)
D-XXX-JP-1: 豆を探してんならここにはねぇぞ。
SCP-XXX-JP-3: え、いや、来ないで、助けて。(激しい叫び声)
D-XXX-JP-1: おい、聞こえるか、こいつをどうすりゃいい?
三菱研究員: 今から機動部隊を突入させます。その後退避してください。
D-XXX-JP-1: あ、あぁ。わかった。
<録音終了>
終了報告書: この後、SCP-XXX-JP-3は終了されました。このインタビューにより、上記の異常性の幾つかが発見されました。
補遺3:
SCP-XXX-JPについての調査の結果、SCP-XXX-JPが発見された島ではこのオブジェクトに関係すると思われる事件が18世紀頃にも発生していたことを示す資料が発見されました。
20██/01/23: SCP-XXX-JPが発見された島でSCP-XXX-JPに関すると思われる資料を発見。 -██博士
20██/01/30: 資料の解読を開始。 -██博士
20██/02/07: 資料の解読を終了。この資料を資料SCP-XXX-JP-Aと認定する。 -██博士
資料により判明したこと。
・██村には仏教行事を重んじる風習があったこと。
・鬼を神格として祀っていたこと。
・宗教行事を疎かにしたものは追放されたこと。
・キリスト教を吸収したこと。
・大豆の産出地であったこと。
18世紀の事件について: 文章、及び挿絵から当時の島民はSCP-XXX-JPを追放者に対して使用していたことが判明しました。文中には、キリスト教を吸収した後、節分が行われ始めたという記述がありましたが、鬼を神格化している影響か、「鬼は外」ではなく、追放者、もしくは鬼以外の神格を対象にしていた、ということが判明しています。但し、キリスト教における鬼、吸血鬼がどう扱われているかは定かではありません。 -██博士
「博士。博士はなんで蝉にこだわるんですかね。」
昼休みのサイト-81██。その一角で小柄な男は問いかける。
「ほう。それは私に蝉について語っても良い、といっているのですか。」
「えぇ。顧客について理解することは売上につながりますからね。」
「では、きっかけでもお話しましょう。」
女は続ける。
「私が最初に蝉の魅力を知ったのは、19の頃、大学のフィールドワークで大学内のビオトープに入った時でした。その時見た蝉の抜け殻に格好良さとでも言うんでしょうか、芸術性を見たような気がしたんです。その後は蝉の研究に没頭しましたよ。」
「へぇ、例えばどんな?」
「そうですね、例えば・・・抜け殻って小さくて、中身が無いのに存在感があるじゃないですか。あれに憧れ、を抱いたのかもしれませんね。でも、その時点ではまだ抜け殻だけだったんですよ。生きている蝉を見たのは、その次の夏、これまたビオトープで探しに行ったわけですよ。それでやっぱ蝉の抜け殻はあくまで抜け殻なんだな、ってことを実感させられましたよ。大きさ、速度、羽音。どれをとっても一級品じゃないですか!飛んでいる姿を見た時はもう20だというのに柄もなくはしゃいでしまいまして、更に熱を加速させていった、というだけの話ですよ。」
「いやいやいや、待ってくださいよ。まだその肩のアブラゼミの話を聞いてないですよ。またなんかあるんでしょう?」
「おっと、私としたことが一番大切なことを忘れていました。この子は大学卒業後、私がここに雇用された時の事案の時からの付き合いですね。あの日、私は市街地の蝉の採取に出かけていました。で、まぁその時にSCP-███-JPの確保計画に巻き込まれたわけですが、あのSCiPの活性化に巻き込まれましてね。活性化の内容はご存知だと思うので割愛しますが、その時に採取して虫かごに入れてたこの子と私の間に、なんていえばいいんでしょう。人間で言えば親子のような、岡安博士の言葉を借りれば一心同体のような関係が構築されたわけです。おそらくですが私が死ぬときにはこの子も一緒に死んでしまうんじゃないかな、と思っています。まぁ、この子以外にも何匹か出せるようになったんですけどね・・・ 出しましょうか?」
「いや、遠慮しておきます。強く。でもありがとうございました。で、ここからは商「いえ、まだ終わってませんよ私の話は。そろそろ昼休みも終わります。私の研究室にどうぞ。」「え、いや先に商談を「どうぞ」「・・・はい」
「あれ、差前さん。どうしました、すごいげっそりしてますけど」
「いやな、鳴蝉博士に蝉の標本を売ろうと世間話から入ったら捕まって半日蝉の話をされ続けた。」
「蝉の話は禁止されてるの、知らないんですか?」
「・・・そういえば」
非日常が日常の組織の非日常。
20██/08/24
「どうも、鳴蝉博士。SCP-███-JPの報告書が出来上がったぜ。」
そう言いながら私の研究室に入ってきたのはエージェント・差前だ。
「おや、あなたがそのような事をわざわざ伝えに来るとは珍しいですね。」
「いやいや、ついでに蝉関連の剥製だとかの商談をしに来たわけだが・・・まぁとりあえず読んでからだな」
SCP-███-JP、あのオブジェクトは、私にとっても、肩の蝉にとっても因縁のあるオブジェクトだ。
あの歳の夏、まだ私は大学4年生だった。無論その頃から蝉への執着は周囲から見れば凄まじいと言われるほどで、その日も私は他のゼミ生が昼食をとりに行ってる間も一人で大学内のキャンパスで蝉の採集に勤しんでいた。しかしその日は前日が雨だった所為か、戦果はアブラゼミが一匹、というところで次第に大学の敷地を出て、大学近隣の森林地帯へと入っていった。その森は私の庭、と言っても過言ではないほどに通い詰めていた森だった。だから油断していたのだ。
私がその蝉を見つけたのは森の入ってから3時間程経ってからであった。近づいて観察してみたが、これまでに見たことのない体色をしていたため「新種!?」、と柄にもなくはしゃぎながら私は虫あみを振り下ろした。網の中からは羽音すらせず、非常にあっさりと捕獲することができた。そして、それを虫かごに移そうと触れた瞬間、私の意識は暗転した。
目を覚ました時、私は視界に激しい違和感を感じた。それもそのはずだ。何故なら私の視界に映る景色がまるで万華鏡に映っているかのように分裂していたからである。また、自らの身体が小さくなり、空を飛べるような気さえした。5分ほどそんな状態が続き、自らがどうなっているのかを理解した。(納得はできなかったが)しかし、それを悟った瞬間に私の意識は再び暗転した。
意識が戻った時にはすでに機動部隊が私が見つけた新種の蝉、いや、SCP-███-JPを確保していた。そして私に簡単な説明を行った。(今思うとでたらめなものだったが)その後、私に記憶処理を施そうとしたものの私が記憶処理に耐性を持っていたために、財団に就職することとなった。虫カゴの中にアブラゼミの姿はなく、私の肩にはそれより一回り大きいアブラゼミがいた。
回想にふけりながらも報告書を読み終わった。SCP-███-JPには触れた生物と、その近くにいる生物の意識を一時的に入れ替える、その時に入れ替えた2つの生物を同一のものにするという異常性があるということが書かれていた。
「なるほど、だからこの子は私からあまり離れないんですね。」
「そうなるな、と、じゃあここからは楽しい商談の時間だ、博士。」
「えぇ、楽しみですね」
その日の戦利品は、アブラゼミなど6個の剥製と幼虫が3匹だった。
サイト-8181にある私の研究室には今、私と一人のDクラスが向かい合って椅子に腰掛けていた。
「感謝するよ冴場博士。これでいい''商品''が作れそうだ!」
「いえいえ、私も【博士】の一員となったのです。これくらいはお安い御用なのですよ。しかし、わざわざこんなところにそんな格好で潜り込んでまで何を作りたかったのです?」
「まだ試作品だけど、これだよ!いい商品になるとは思わないかい?」
そういって彼が見せてきたのは、我らが財団のロゴが刻まれた箱であった。よく見ると箱の中にはSCiP収容室をかたどった模型が入っている。
「一体どんなオブジェクトなのです?」 私は問いかけた。
「それは世に出てからのお楽しみにしてほしかったなぁ。まぁいいさ、僕の条件通り手伝ってくれたしね。このオブジェクトは、ちびっこたちに君たちのような研究を楽しんでもらうための商品なんだよ!」
我々の研究は楽しくも面白くもないのだが・・・
「この構想は君たちのことを知ってからずっとあったんだ!ただ、細部がわからなくてね。だからこんな変装をして入りこんだわけだ。まぁ、そのおかげで君をこちらに引き込めたわけだから後悔はしていないけどね!」
「そう言っていただけて光栄なのです。」
そろそろ本題の話を入ることにしよう。
「さて、私が貴方に協力したのは利害の一致があったからなのです。貴方にとっても、我々財団にとっても。」
「あぁ、『博士』と君たちが呼んでいる男のことだろう?それについてはもう問題ない。」
「ミスターズを日本に呼んだよ。彼らが『博士』を捕縛してくれるだろうさ。」
こいつは何を言っているんだ・・・?ミスターズを呼んだ!?それでは本末転倒ではないか!
「それでは話が違うではないか!私は貴方が『博士』を財団にバレないように処理できるというから秘密裏に協力したんだ!」
「あぁ、だから処理するためにミスターズを日本に呼んだんだろう?君も我々【博士】の一員となったんだ。楽しんでよ。」
「楽しめるか!奴のオブジェクトの異常性はあまりにも危険だからあんたに頼んだんだ、なのに、なのになぜもっとやばい奴らを呼ぶ!?」
「自分勝手だなぁ、僕らは君と''利害の一致''があったから手を取り合ったんだろう?それなのに今更そういうことを言うのは僕達のやり方にそぐわない。」
「だったらなんだというのだ、ここはお前にとっての敵地であり私はお前をここで捕まえてもいいんだぞ!」
こんなやつに頼ったのはやはり失敗であった。私も同時に処罰を受けるだろうがやむを得ない。そう思い私が警備を呼び、再び視線を彼に向けたとき、すでにそこに彼はいなかった。代わりに一枚のメモが置かれていた。
冴羽 春樹 様
貴方の行いは、ワンダーテインメント博士™の企業理念に反するものです。
その為、貴方をワンダーテインメント博士™から除名させていただきます。
また、この件につきまして我々は一切の責任を負わないものとします。
ワンダーテインメント博士™
それを読み、私は途方に暮れた。警備隊にどう説明しようか、私の地位はどうなるのだろうといったことを考えていると、突然サイト内にけたたましい警報音が鳴り響いた。収容違反を意味するサイレンである。
これによって言い逃れができるだろうと安堵しつつ、私は収容違反が起きた区画へと急いだ。収容違反が起きたのは、SCP-033-JPであった。
後日、サイト-8181付近の村の男性から、サイト-8181の出入り口となっている廃工場からオレンジ色の服を着た一人の男が出てきたのを見たという証言が上がった、対応に当たったエージェントは男から話を聞いたあと記憶処理を施し男性を解放したとの報告を得た。
報告によると、男性ら数名の村人が男に声をかけた際、その男は「楽しもうね」とだけ残しその場から立ち去ったという。
オブジェクトクラス: Fun
特別収容プロトコル: 全ての" ちびっこ研究者" たちは新しいSCP財団™収容サイトごっこセット™を使って、異常で楽しい時間を過ごす必要があります!
説明: SCP財団™収容サイトごっこセット™は、あなたのような"ちびっこ研究者"たちが思い描く、ありとあらゆる確保、収容、保護™しなければならない物を含んでいます。お好きなものをただ収容室に入れるだけで、特許取得済のパパっとイジョー装置™テクノロジーが、あなたが直に体験できるユニークな異常特性を付与します!
補遺: 収容室のパパっとイジョー装置™に生物、武器、あるいは既に異常な性質を有しているアイテムを入れないでください。ワンダーテインメント博士はSCP財団™収容サイトごっこセット™の誤用によって生じたいかなる身体的または精神的被害に関しても責任を負いかねます。部品の組み立てが必要です。電池は含まれておりません。
SCP財団、SCP財団のロゴ、『確保、収容、保護』はSCP財団の登録商標です。 All rights reserved.