回答者: 暫定収容サイト-141管理官、D███ L██████ (“DL-141”)
質問者: サイト-28管理官 (“Admin-28”)
場所: サイト-28、ニューヨーク市、ニューヨーク州
<記録開始: 午後7:25、20██/██/██>
DL-141: 尋問室。マジかよ。
Admin-28: 私に連絡してきたとき、君は一大事だと言った。まさに一大事だ。これは標準的な手続きだ。君は2141に関して共有すべき緊急の情報を持っている、そうだな?君に北部からの出頭を命じたのは、わざわざ挨拶に来てもらうためだとでも?“オフレコ”という手は今の君には使えんぞ、D███。
DL-141: アタシが連絡したのはO5だ、── (間) ──“28番”、アンタじゃない。あの方々はアタシを“委ねた”ってのか、アンタの── (溜め息) ──“裁量”に。
Admin-28: 誤解だ、D███。O5の決定事項は私が決めるものではない、分かっているな。
DL-141: 御託はいい。事案[-2141]-IIIが理由だろう。あの方々が信用できないのは、アタシの──何だって?作戦指揮での判断?プロフェッショナルとしての分別?アンタら全員アタシを“ヒステリー女”だと思ってるのをどういう用語で表現してんのさ?こんなところまで引っ張り出しやがって、アタシに申し開きでもさせたいのか。
Admin-28: 被害は甚大だった。財団の人員だけでなく、市民の命も失われた。我々が後始末をした──まだ後始末の途中だ──だが、こう考えれば筋が通る。O5-評議会は確証が欲しいのかもしれない。今日君が用意してきたものが二度と──
DL-141: それが“真意”だって?くたばりな、28番。自分ならもっと上手くやれたとでも思ってんの?報告書を読んだろ。“前例がなかった”。アタシ──アタシらは──全く考えもしなかった。まさか2141-1の出口を塞ぐことで──それもあんなわずかな範囲のみで──収容違反が起こるなんて。あの野郎は── (間) ──彼女は学習してる。
Admin-28: SCP-2141から。そう主張するのか。
DL-141: クソッタレのEuclidクラスなんだ、28番。アタシが持ってるのは大半が主張だ。だが確たる証拠に基づいた主張だ。事案2141-Iによれば、彼女は──
Admin-28: “彼女”は止せ。“SCP-2141-1”だ。君はきっと、自分の持ち場ではプロフェッショナルとしての距離感を弁えていたはずだ、D███。 (小声で) 私はそう努めてきた。
DL-141: (沈黙する)
Admin-28: さあ、管理官。我々は君の味方だ。君はこれが政治的策略ではないと理解する必要がある。これは保護だ。優先すべきは。確保、収容──
DL-141: 保護。 (溜め息) 分かってる。 (間) アタシはしくじった。 (小声で) しくじったんだ。
Admin-28: 君は“収容を困難にする異常性質の著しい変化によって作戦指揮上の過失を犯した”。 (より小さな声で) これに慣れる必要があるな、D███。君は正しい。我々──私は──報告書を読んだ。現場に居合わせた研究者たちも、収容プロトコルを改訂するという君の決定に賛同していた。彼らの死は君のせいではないし、またSCP-2141-1がもたらす苦難も── (間) ──“今は亡き”夫人のせいではない。唯一非難するべきものは──まあ実際、この現実くらいなのだろう。
DL-141: (笑う) 中々のカウンセリングじゃないか?
Admin-28: (笑う) 言っただろう、標準的な手続きだ、と。我々は決して──君ならどう表現したかな?
DL-141: “重度の責任を伴う財団の上級職員は、業務上の作戦指揮の過程で典型的なストレス要因や精神的苦痛に苛まれがち”、ってところか。
Admin-28: 学習してるな。
DL-141: ああ、そうかも。
Admin-28: 君の話は真摯に聞いているつもりだよ、D███。君が用意したものを見せてくれるか?
DL-141: (溜め息) ほら。 (Admin-28に文書を手渡す)
Admin-28 (閲覧中) : SCP-2141が地中を潜行する事例の増加。 (読み進める) そしてSCP-2141-1は概してより高い頻度で出現してきている。
DL-141: 大体18日おきだ。
Admin-28: だが、現行の収容プロトコルは有効なのだろう?
DL-141: もしこの状態が続けば、そうじゃなくなる。
Admin-28: どういう意味だ?
DL-141: さっきも言ったが── (間) ──奴は学習してる。あの異常実体はSCP-2141の行動を模倣している──一部の例では、その容姿もだ。あの全身を覆う粘液──あれは最初から備わっていたが、他に気付いたことがある。
Admin-28: 例えば?
DL-141: 眼だ。強膜も、虹彩も、かなり黒ずんできた。まるで白内障のような見た目で、おそらく彼女は自分の眼を使っていない──仮に前は使っていたとしてもだ。あの事例── (間) ──事例2141-IIIの後にも何度か現れたが、最初の数回では、彼女はもっと変な動きをしながら、壁にぶち当たっていた──でも、その後は安定しているんだ。SCP-2141には眼がない──どうやって動き回っているのか、SCP-2141-1の位置を割り出しているのか、全く不可解だが──つまり、それが唯一の証拠なんだ。SCP-2141-1の変化が目指す先は…
Admin-28: 母体か。
DL-141: そうだ。いや、証拠は他にもある。
Admin-28: 地中の潜行、突飛な移動速度。
DL-141: そう。事案2141-IIIで見た例には全く及ばないが、我々の不安を煽るには十分だ。もし奴が再びあのような行動を示すようなことがあれば…
Admin-28: 現行の収容プロトコルでは事足りない。
DL-141: その通り。
Admin-28: 君の提案は収容違反の防止のため、SCP-2141-1を終了することか?
DL-141: ハン、違うね。我々の知る限り奴にはおそらく再生能力がある。 (躊躇う) アタシが提案するのは── (間) ──SCP-2141の“無力化”だ。
Admin-28: な──何だと? どうやって? あの巨大な – もし仮に殺すことができたとしても──
DL-141: - 無力化する。
Admin-28: (間) 無力化する──どうやって──
DL-141: 死骸を処理するのかって?分かってる。でもやらなきゃならない。アタシは──アタシはSCP-2141-1の活動を精一杯邪魔しようとした。上手くいかなかったし、再挑戦はお勧めしない。仮に成功の目があるとしても、失敗の代償は──大きすぎる。特に、あのイカしたエイティーン・ホイーラーから授かったようなツキがもう無いとしたら。 (間) 奴の予想進路がこのサイトにどれほど近かったか知ってるか?もしあのトラックが奴を撥ねなかったら、どうなっていただろうな?
Admin-28: そして我々はあの事故で対象が無力化したとき、何が起きるのかすら把握していなかった。
DL-141: 全くだ。それで、見てみろ、下の方だ。
Admin-28 (閲覧中) : “さらに現場の職員により、休眠状態にあるSCP-2141の周辺で地震活動の増強が報告されています。” クソッ。
DL-141: ああ、全くだ。そして地下で一体何が起きているのかも全然読めない。障害のおかげで█km圏内ではGPRの使用を試しても遮断される。
Admin-28: 信じられん。
DL-141: さあ、アタシがここにいる理由が分かったな。この件についての予定表がある。SCP-2141が収容プロトコルに反応して何をしているのかは分からない。どれだけキッチリ設計した収容プロトコルでも、前例のない異常行動を防ぐと保証することは決してできない。Scipが現行の収容プロトコルを脅かしたのは今回が初めてではないが、コイツは我々が対処の準備を整えるよりも速く差し迫っている。さっき言ったSCP-2141-1の出現の頻繁化──あれはSCP-2141が子孫を1匹孵すのにかかる時間が短縮していることを示唆している。
Admin-28: その主張を支持する証拠は?
DL-141: 確かなものはない。だが奴らが見た目の通り、妊娠・出産を経る必要があるとして、アタシらがSCP-2141-1に浴びせ続けたクソの量を考えると、胎内のクソどもが毎回生き延びているのはまずあり得ない。最低でも、SCP-2141 はSCP-2141-1の回収の都度、ダメージコントロールを行っていると考えている。胎児が受けた傷を治療しているんだ。もし奴らがもう1匹でも殖えてしまえば、我々の能力でこの状況を抑え込むのは絶望的だろう。言うまでもなく予算も吹っ飛ぶ。
Admin-28: 財団が凍結するほどの事態など未だかつて見たことがないがな、D███。
DL-141: ああ、多分アンタが最期に見るものだろうからな。
Admin-28: 違いない。 (間) 会話記録をO5に送るつもりだ。君の勧告を支持する。SCP-2141の終了は最優先事項となるだろう。
DL-141: 素晴らしい。 (紙束を弄る音)
Admin-28: 待った。もう一つ。
DL-141: 何だ?飛行機に乗り遅れちまう、もう5分もないみたいだ。
Admin-28: 事案2141-Iにある文書。O5はこれについて君の評価を求めている。報告書には記載がないようだ。
DL-141: あのイカれたメモか? (失笑する) アタシには書いた奴が何を言いたいのかさっぱりだ。ぶっちゃけた話、どうでもいい。たぶん、我々が対処してるコイツに関する大昔の伝説でもあるんだろう。 (静かに) アタシが一番心配してるのは、あの男みたいな馬鹿野郎がまだいるんじゃないかってことだ。あるいはコイツみたいな化け物が眠ってる場所が他にもあるんじゃないかってこと。 (間) あの文書についてのアタシの評価はこうだ。当該異常実体が唯一のものとして言及されている点から、SCP-2141はただ1体のみである。しかし、これは確たる結論ではない。
Admin-28: 君の言う通り、そうは居まいさ。その調子で頑張ってくれ。
<記録終了: 午後7:58、20██/██/██>