飯田さんはモニターから目を離さす、打鍵音だけが部屋に響き渡っていた。彼は返答に困ってしまったのだろう。眉間にシワが寄っている。私はこの日、上司たる彼に相談を持ちかけるためにオフィスへやってきた。私は現在財団が提供しているマンションの一室に住んでいる。最寄り駅から十五分、一般的な住宅街の一角に存在している。”提供”といっても実際には民間のマンションであり、寮といった感じではない。傍から見ても様々な人種が住んでおり、生活時間帯もバラバラであって、間違っても特殊な組織の人間がいるようには見えない。そんな普通のマンションである。
「偶然……と言えなくもないが、情報漏えいの可能性もあるだろうし、
『財団気象部門の気象予報はですね、降水確率が50.00%を上回った時に傘を持っていけばいいって、諸知さんが言っていましたよ』
男にとって、それは非常に珍しい事であった。男の人生に於いて、他人の言葉を覚えているなど早々無いことであった。よく考えてみれば、それ以外には、旧友からの命令しか無かったのである。
「あなた…」
「SCP-███-JPの添付資料5A~3Cまでの資料のコピーを出してくれ」
「えっ、えぇ。分かりました。多分大丈夫ですけど、少し待っていてください」
そう彼は言って、奥に入った。男はそばのテーブルに腰掛けて待つことに決めた。この場所の香りは変わった。あの香りは、今は代わり、新しい香りが立ち込めている。須臾の間に、男はそんなことをぼんやりと考えていた。
「お待たせしました。これを。 資料は今出してきますね」
彼は私にタオルを差し出した。既視感があった。いつの日だったか、あの女もまた、私に同じことをした。
私はただ資料がほしいだけなのに、あの女は用途も説明せずにタオルを渡してきた。あの時と、同じだ。
「こちらが当該の資料になります。ご確認ください」
「ありがとう」
「博士?」
「何かね?」
「なぜ、博士は傘を持たずに出ていたんですか?」
その質問に、うまい切り返しは思いつかなかった。男は正直に話すことに決めた。
「雨は、嫌いではないし、傘を持つのは腕が疲れるのでね」
びしょ濡れのその男は、ファイルされた資料をそのままケースに仕舞い込んで、腰を上げる。
「あ、そうそう」
「いつも言うように、勤務中は私のことを博士と呼ぶんじゃあない。伯父さんと呼びなさい」
「嫌です」
そう、男は彼に尻を蹴り上げられて図書館を去った。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス:
特別収容プロトコル:
説明: SCP-XXX-JPそ存在を最初に提唱したのは、小平博士の提出した論文『█████████████████』の第三章「XXXXX」に於いてでした。
補遺:
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、標準人型オブジェクト収容容器の非Keterクラスオブジェクト最低居住環境13要件を満たせるように改修された、レベル4無響チャンバー内部に収容されます。無響チャンバー全体が真空エアロックで覆われるようにし、内外への音の侵入を可能な限り遮断してください。チャンバー内には監視カメラ、スピーカーが設置されますが、録音用のマイクを設置することは禁じられています。
チャンバー内には午前7時30分にペール・ギュントの「朝」を、正午にイエッセルの「おもちゃの兵隊の行進」を、午後18時にチャイコフスキーの「1812年」序曲を流してください。SCP-XXX-JPが収容に非協力的な態度を見せた場合はグスターヴ・ホルストの組曲『惑星』より「火星、戦争をもたらす者」を聞かせてください。
3時間以上SCP-XXX-JPの発する音を聴いた全職員は、72時間以内に医療部門の健康診断を受けてください。
説明: SCP-XXX-JPは人型実体です。黒髪で白色の肌を持ち虹彩は琥珀色をしていますが、外見上20代と目されていますが、身体的特徴からの国籍断定は出来ていません。対象の母国語は、その特異性のため未だ判明していません。対象の持つ諸ミーム、生活様式は21世紀前半の西洋に見られるものと、ある程度の類似が認められます。SCP-XXX-JPは現在非常に内向的ですが、楽曲を聞かせることで非常に陽気になります。 『ここまで推敲済み』
SCP-XXX-JPの周囲では、外部から侵入する音の減衰が確認されます。これは、周囲から発せられた音がSCP-XXX-JPに異常に反響しない事に由来すると考えられています。また、SCP-XXX-JPからは、常に微細ながら様々な音が発せられています。これらの音の種類は非常に多岐に渡り、調査では金属音、バイオリンの弦を弾くような音、水が地面に落ちる音、風の音などと評されます。また、SCP-XXX-JPは発話を行いませんが、職員が対話(インタビュー記録2を参照)を試みようとすると、口から様々な音1を発します。これらの音に何ら異常性は見つかっていませんが、SCP-XXX-JPを音の反響が大きい部屋2に収容した場合、SCP-XXX-JPは体調を害します。これに対して無音に近い環境下でもSCP-XXX-JPは衰弱3します。この現象について詳しい原因は分かっていません。加えて、SCP-XXX-JPは音の反響がより小さい部屋を好む傾向(実験記録2を参照)にあります。
実験記録1 - 日付XXXX/XX/X確認された音 | 発生源 | 備考 |
軽金属同士を叩き合わせたような音 | SCP-XXX-JP脚部 | 主にSCP-XXX-JPが歩行などで地面に足をつけた時に発生しているようです。歩行速度が遅いほど音階は低く、早いほど高くなり、足を上げる高さに比例して音量も大きくなるようです。 |
水が地面に落ちるような音 | SCP-XXX-JP胸部 | 主にSCP-XXX-JPの便益に左右され、音量は変わるようです。娯楽用に支給されたショートケーキを食べている間この音は止まっていましたが、基本的にSCP-XXX-JPの発見から現在に至るまでこの音は断続的に続いています。 |
弦を弾くような音 | SCP-XXX-JP腹部 | 主にSCP-XXX-JPの享楽に左右され、SCP-XXX-JPが笑顔であるときに、音階は高く、一定の間隔で発生します。また、そうでない時にこの音は不定の間隔でなり、音階も低くなります。 |
波のような音 | SCP-XXX-JP頭部 | SCP-XXX-JPは不定期にこの音を大きくします。特筆して実験中にこの音は大きくなり、実験終了後は小さくなります。睡眠中の音量は約100分周期で上下を繰り返します。 |
鳥の鳴き声のような音 | SCP-XXX-JP脊柱部 | SCP-XXX-JPが姿勢変更などで背骨を屈曲させる際顕著に現れます。歩行時などでもその音は小さいながらも発せられており、不規則に発せられます。SCP-XXX-JPが疲弊している場合以外でその音は「小鳥のさえずりのように聞こえる」と評されます。 |
アイディア | を | くれ |
実験記録2 - 日付XXXX/XX/X
対象: SCP-XXX-JP
目的: SCP-XXX-JPの周囲環境への適応と反応を見る。
実施方法: SCP-XXX-JPを防音室と無響室と通常の部屋が連なった実験チャンバーに投入。どの部屋の滞在時間が最も長くなるかを確認。また、SCP-XXX-JPが長い間滞在した部屋からは備え付けの家具などを撤去し、意図的に生活するうえで不便な環境を作り出し、SCP-XXX-JPが本質的にどの環境を好むのか傾向性を探る。
記録
実験1日目
最初、SCP-XXX-JPは通常の部屋に投入されました。SCP-XXX-JPは困惑した様子で通常の部屋を出た後、防音室に2時間ほど留まり、そのまま室内のベッドで就寝した。就寝を確認した後、研究スタッフによって部屋の窓を封鎖し、照明を取り外した。また、SCP-XXX-JPが寝ているベッドの布団を撤去した。特筆するべき事項として、SCP-XXX-JPの留まった部屋の家具を撤去した研究スタッフらは酸味を感じたと報告した。分析: SCP-XXX-JPは実験環境下で取り乱すことはありませんでした。また、事前調査で確認されていた一定量の社会的知識の中にはドアノブの操作や、寝具の利用という生活レベルのものも含まれている事が証明されました。研究スタッフらの報告の真偽は不明であり、SCP-XXX-JPの未知の特異性という懸念もありますが、現状スタッフに顕著な害が発生しているわけではありません。以降の実験中部屋に入るスタッフにはレベル3バイオハザード防護服の着用を義務付け、実験を続行します。
実験2日目
SCP-XXX-JPは起床後しばらくあたりを見回していた。立ち上がり、部屋の中を右往左往した挙句扉を開いて通常の部屋に入った。落ち着かない様子で早歩きに備え付けの家具を持ち上げようとする4も、断念。その後、防音室を通って隣接する無響室に入り、中の家具を持ち上げようとしましたが、直後それを辞めて部屋の内部をくまなく調べ始めました。6分後、非常に落ち着いた様子で無響室の書棚から本を取り出し、ベッドに寝転がって鼻歌を歌いながら読書を始めました。その12時間後にSCP-XXX-JPは無響室のベッドにて就寝した。就寝を確認した後、研究スタッフによって無響室のベッド以外の家具が撤去され、窓は封鎖し、照明を撤去した。また、通常の部屋に冷蔵庫と、ショートケーキが配置されました。研究スタッフらは甘味を感じたと報告した。分析: 起床後の一連の行動は、家具の無くなった部屋にほかの部屋から家具を運び込もうとしていたものと思われます。この仮説が正しければ、SCP-XXX-JPは家具のある通常の部屋より、家具のない防音室を好むため、防音室をより快適なものに改善しようと努力したことになると考えられます。また、SCP-XXX-JPはこの日初めて無響室に入りましたが、その時の判断速度からして、SCP-XXX-JPは防音室よりも無響室を好むと考えられます。研究スタッフの報告は、ショートケーキによる反射的なものと考えられていましたが、原因は未だ判明していません。
実験3日目
SCP-XXX-JPは起床後、室内の変化に気が付き、わずかに動揺していましたがすぐに平静を取り戻しました。その後、SCP-XXX-JPは防音室を調べ始めた後、通常の部屋に配置されたショートケーキを発見しました。SCP-XXX-JPは皿ごとショートケーキを無響室へ持ち運び、その後に摂食しました。SCP-XXX-JPは笑顔になり、前日と同様に読書を始めました。分析: 通常の部屋に配置されたショートケーキはフォークまで用意され、その場で食べることが一番楽であるように配置されました。にもかかわらず、それを無響室へ運び込んだ後に摂食したSCP-XXX-JPの行動から、SCP-XXX-JPは無響室を好むと断定してよいでしょう。この実験結果から、実験は本日で終了とします。
インタビュー記録2に於いて確認された現象については、SCP-XXX-JPが音を一種の栄養源としているという仮説が最も有力な説明とされています。この特性に関しSCP-XXX-JPは単純音よりも一連の繋がりを持つ音楽を最も好むと考えられます。また、SCP-XXX-JPを収容する部屋の内部に侵入したスタッフは、インタビュー記録2に於いて確認された様にいずれも何らかの味を経験しました。原理は不明ですが、SCP-XXX-JPの発する音を長時間聴いたスタッフは満腹感を訴え、その後数日間に渡り食事を取る気分ではないと主張しました。Dクラスを用いた実験に於いても98%以上のDクラスは同様に満腹感と味のある音だと主張したため、研究チームはSCP-XXX-JPの発する音は可食であると暫定的な結論を提示しました。
事案XXX: XXXX年XX月XX日XX時XX分XX秒に収容容器内でSCP-XXX-JPが[検閲済]した事が確認されました。SCP-XXX-JPは赤面し、泣きながらしゃがみこんで嘔吐しました。嘔吐の後、SCP-XXX-JPは収容容器に備え付けられた冷蔵庫から飲料水を取り出して大量に飲み、落ち着きを取り戻しました。この現象を観測していた研究スタッフは「表現し難い壮絶な味」を感じ、嘔吐しました。これによる物的被害はなく、研究スタッフにも後遺症などは残りませんでした。この事案の後、SCP-XXX-JPは職員に対して消極的かつ内向的な態度を取るようになりました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは可能な限りユニット-XXXX内部に滞留させるよう、ユニット-XXXXの周囲から内側に向けてファンを稼働させ続けてください。ユニット-XXXXの周囲にはDクラス職員の収容房を設置し、異常な臭気を感じ取ったDクラス職員は収容房監督責任者へ報告するよう指導してください。ユニット-XXXXに勤務する全ての職員はSCP-XXX-JPの特徴を記憶し、類似する臭気を感じ取った場合直ちにサイト監督官へ報告してください。
SCP-XXX-JPは常に外部へ拡散する可能性があるため、民間でのSCP-XXX-JP被害と思われる事例が発生した場合は回収部隊い-3("白足猫")による再収容を実施してください。
説明: SCP-XXX-JPは発生源不明の感覚器官に依存しない、現実改変によると思われる臭気5です。SCP-XXX-JPは非常に強烈であり、3-メチルインドール・1-オクタンチオール・二酸化硫黄・ジメチルジスルフィド・亜硫酸アンモニア・ブチルメルカプタン・インドールなど複数の悪臭6とされる物質によるものであると推定されます。しかし、測定機器や観測装置ではそれらの物質は全く検知できず、感覚器官を遮断したDクラスによってもSCP-XXX-JPを感じ取ることが出来るため、SCP-XXX-JPは物質世界に存在せず、感覚器官または脳内伝達物質、あるいは感覚プロセスそのものに直接働きかける空間流動性の現実改変であると推測されます。
SCP-XXX-JPの致死性は低く、その発生源やSCP-XXX-JPが密集している箇所へ近づかない、及びSCP-XXX-JP密集地から素早く距離を取る限り問題ありません。しかし、SCP-XXX-JPの密度が高い場所では非常に強烈な臭気を感じ、一般人は短時間で方向感覚を失いパニックに陥ります。また、さらに濃度が高くなるか、SCP-XXX-JP密集地での滞在時間が長くなるに連れめまい、吐き気、嘔吐、一時的な見当識障害、失神、呼吸器官の麻痺による窒息死等が発生する場合があります。ですが、基本的にめまいや吐き気などの自覚症状が出た際に、SCP-XXX-JP密集地から離れるだけでこれらの危険は回避可能です。
SCP-XXX-JPは空間上を漂い、その範囲に入った人間の感覚に働きかけます。SCP-XXX-JPを壁などで遮断することは出来ず、完全な隔離は不可能です。加えてSCP-XXX-JPの範囲は徐々に拡大しています。原因は不明ですが、SCP-XXX-JPが存在すると思われる空間に対して風を当てることにより、SCP-XXX-JPの位置を移動させることが出来ます7。現状はこの性質を利用した特別収容プロトコルが採用されています。SCP-XXX-JPは目視で確認することが出来ないため、その所在地を割り出すには実際に人間がSCP-XXX-JPを感じ取る以外にありません。現在まで4件の収容違反と思われる事象が発生しています。
SCP-XXX-JPの発生源は現在不明です。財団に入った最初の情報は「夫の屁が臭すぎて窒息死した女性」が病院に搬送されたというものでした。民間の医師は女性(村上 ██ 当時31歳)に適切な処置を施しました。その際に上記の旨を述べた事で話題となり、地元の新聞に掲載され財団の注意を引きましたが、当初重視されませんでした。その後、当該の女性とその夫(村上 █ 当時35歳)の暮らす民家から強烈な悪臭が発生していると近隣の住民が通報し、警察が訪れた際に一般的異常8は発見されなかったものの、SCP-XXX-JPによると思われる臭気により警察官2名が病院へ搬送され、その後応援に訪れた警察官十数名が同様に病院へ搬送されました。これにより国家公安委員会から財団へ当該事件が報告、依頼されました。
初期収容記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
13:25 Eクラス職員が事案XXX発生地点に到着。現地警察官と民間人への記憶処理と身元記録、カバーストーリーの適用を開始。Eクラス職員がサイト-XXXX本部へ異常な臭気を報告。未知の化学兵器の可能性を考慮し大気分析を指示。
14:01 現地民間人と警察官の排除が完了。事案XXX発生現場の民家の調査を開始。化学兵器に該当する物質が検知されないためサイト-XXXX本部に連絡。
18:27 サイト-XXXXから収容スペシャリストが到着。Eクラス職員からの引き継ぎを完了。
18:49 収容スペシャリストが民家へ突入。収容スペシャリストらが異常かつ強烈な臭気を報告。突入続行を指示。XX分隊長が嘔吐、失神し突入を断念。
20:11 隔離プロトコルXXXが承認され、周辺住民への記憶処理とカバーストーリーの適用を実施。
翌9:11 事案XXXの一時的な収束を発表。隔離プロトコルの実行を開始。記録: XX分隊長は3日後の午前6時に意識が回復し、翌X日には職務へ復帰しています。
分析: 機動部隊は事前に対ミーム災害処置と対情報/認識災害装備を用意し突入を行いました。にも関わらず隊員への被害が生じたことから事案XXXにて発生してるのは現実改変か、我々にとって未知の存在であることは確かです。依頼を受けた当初に推測されていた臭気の発生源は特定できず、また臭気自体が化学物質によるものでもありませんでした。また、ガスマスクや無呼吸といった方法も解決にはならず、事案XXX発生地点は住宅街であるため、大規模な収容プロトコルが必要となるでしょう。
収容違反記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
概要: 神奈川県███市に存在するオフィスビル██████1階、2階、3階、4階にて、集団パニックと社員同士のトラブルが発生していたことが、財団による警察の内部調査の際に判明したました。当該のトラブルは社員同士の暴行事件とされていましたが双方の和解により警察では記録が残るのみに留まっていました。
記録によれば事件当日、██████のビル内にいた全ての人間が強烈な腐臭を感じ、パニックに陥り、その内で当時37歳であった██████の会社員 長谷川 ██ が「 西川 ██ (同会社員34歳)が放屁した」という旨の発言を行ったため口論となり、喧嘩に発展したとされていました。
この記録が発見された後、財団による██████への調査が行われ、一連の内容がSCP-XXX-JPの流出が原因である蓋然性が高いと判断されました。調査の結果、 長谷川 ██ と 西川 ██ の喧嘩の最中、██████社員の 村上 ██ が窓を空け、扇風機を外へ向かって稼働させ続けると数分で臭気は収まったとの事でした。これにより、SCP-XXX-JPの更なる収容違反が懸念されています。
補遺: 現在、SCP-XXX-JPを広大な空間へ拡散し、安全に希釈させる研究が続けられています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは電源プラグが抜かれた状態でサイト-8181のSafeクラスオブジェクト収容容器に保管してください。実験の後は電源を落とす前にインストールされているプログラム「実験終了後に起動してください.exe」を実行してください。
説明: SCP-XXX-JPはCPU使用率及びメモリ使用率に比例して総重量が増加するデスクトップパーソナルコンピューターです。外見的差異2017年に███から発売されたものと変わらず、現在確認されている中で異常性を有しているのは財団が保管している1台のみです。本体後部にはカバーを外すためのボルトが存在していますが、そのネジ穴は潰れています。マザーボードには既存製品に見られない未知のコンデンサらしき素子が追加されていることが確認されています。
実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
対象: SCP-XXX-JP
実施方法:
結果:
分析:
実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
対象: SCP-XXX-JP
実施方法:
結果:
分析:
対象: Anomalous-1255-JP
インタビュアー: 大和博士
付記: なし
<再生開始>
大和博士: 対象、Anomalous-1255-JP。西暦2011年サイト-8125にて録音。これより聴取を始める。ご機嫌よう西田さん。
Anomalous-1255-JP: えぇ、こんにちは。
大和博士: 我々は捨てられた子どもたちのその後を調査している厚生労働省管轄のある研究機関の人間でね。昨今の児童虐待についての調査を行っているんだ。どうか、未来の子どもたちのために見たことを詳しく聞かせてもらえないかな?
Anomalous-1255-JP: は、はぁ。わかりました。どこから話せばいいでしょうか?大和博士: 最初にあの異常な子どもを見たところから、お願いするよ。
Anomalous-1255-JP: わかりました。今が何日か教えてくれますか?
大和博士: 今日は2011年、11月7日だ。
Anomalous-1255-JP: じゃあ、れは5日のことですね。私は部活の帰りで自転車に乗って家に戻っていました。
Anomalous-1255-JP: それで確か…。███橋の手前ぐらいかな…。ホームレスの人たちが住んでいるところがあるんですよ。そこにさしかかってブルーシートから何かが這い出てくるような音がしたんです。
Anomalous-1255-JP: それで…その時はホームレスの人だと思って通り過ぎたんです。でもその後こっちにむかって裸足で走ってくるような音が聞こえたんです。
Anomalous-1255-JP: 何か私が落として、拾ってくれたのかなと思って、ふり…。
Anomalous-1255-JP: [対象の呼吸が荒くなり、対象は叫び声を挙げる]
大和博士: 聴取を終了する。医療スタッフを寄越してくれ。
<再生終了>
終了報告書: 対象は事件を思い出すことによる精神的ストレスを過剰に感じていると思われる。心的外傷のケアの後、鎮静剤を投与した上での再インタビューを具申します。 —大和博士
対象: Anomalous-1255-JP
インタビュアー: 大和博士
付記: 前回のインタビューから1週間後であり、今回は対象に対して適正量の鎮静剤を投与して行われる。
<再生開始>
大和博士: 対象、Anomalous-1255-JP。西暦2011年サイト-8125にて録音。これより二度目の聴取を始める。調子は如何かな?西田さん。Anomalous-1255-JP: えぇ、少しボーっとしますが、多分、大丈夫です。
大和博士: では、自転車に乗って後ろから足音がしたところから続けてください。
Anomalous-1255-JP: はい。えーっと…それで振り返って、走ってくるのが見えました。裸で、髪が長くて、汚れてて、赤い…。多分女…の子。
大和博士: 裸で汚れた髪の長い女児、ですね。赤いというのはマフラーかなにかですか?
Anomalous-1255-JP: 多分…。いえ…あの、思い出せない、です。
大和博士: なるほど。それからどうしました?
Anomalous-1255-JP: え?えぇと…顔にびっくりして、必死に漕いで、重くなって…。
大和博士: それで?
Anomalous-1255-JP: 痛、かった…。気がついたらボロボロの家にいて…。私は…。
大和博士: 私は?
Anomalous-1255-JP: 食べられてた…。目玉も、多分首も、殆ど…。
大和博士: …分りました。
<再生終了>
終了報告書: 対象は以降Anomalous-1255-JPに指定、収容プロトコルは別途資料を参照してください。カバーストーリーは後日作成します。 —大和博士
男は着替え、大きなため息を付いて喫煙所に逃げ込んだ。不味い。なんというデジャブであろうか、こんなものをまさかここに来て見ることになろうとは、男は全く予想していなかった。幾許か昔の事を思い出す。不味い。
男には未だ仕事が残っていた。カバーストーリーの案を発注し、実行計画を建てて予算を報告し、指揮を任せなければならない。男は暫くの間考え、煙草の灯を消し、立ち上がる。面倒だが、しかし少し嬉しくも有った。
相田は戸惑った。昨日殺人事件と言われて駆けつけた現場には既に遺体もなく、犯人は捕まったと言われた。民間の通報を受けてからそう経っていないにも関わらず、である。彼は上司に説明を求めたが明確な返事はなく、答えははぐらされていた。
そうして今日、件の上司からの返答がメールで来た。そこには「誤報」の文字。相田は戸惑った。現場には未だ少量ながらも血痕があり、人の死んだあの独特の臭いが充満していた。
不自然な事が降りかかると、人は邪推を起こすものである。彼は考えた末に、上司が何か、何か大きいものを隠しているに違いないと確信していた。彼の確信は半ば正解と言えるだろう。しかし、彼は更に混乱することになる。
事件、あるいは誤報から一週間以上が経った後、相田は証拠品保管室の中で妙な保管箱を見つけた。ラベルは昨日、証拠品番号21552。事件現場は誤報のあった廃屋だった。彼は混乱した。その時に任されていた事件をほっぽりだして相田は上司に詰め寄った。「なぜ、誤報の事件の証拠品があるのか」と。上司の吉田はこう答えた「誤報とは、なんの事だ」と。
そうして、相田は全てを忘れた。否、彼は何も見ていなかったし、聞いていなかった。彼が駆けつけた時、たしかに廃屋はあったが、地元の不良少年が喧嘩を起こしているのを、近所の住民が殺人と思い込んだ誤報に過ぎなかった。少年らは補導され、彼らの持っていた金属バットやら鎖やらは証拠品として保管室で証拠品番号21552とラベルされ、今でも眠っている。
『決定』『決定』『決定』『決定』『決定』
『伝達、81、CS、タイプ4、No,2451以上』
『サイト-8181管理員に通達。SCP-2451-JPへのタイプ4を発令、以上』
『機動部隊へ伝達、タイプ4発令、目標2451、以上』
『担当研究主任へ伝達、タイプ4発令、目標2451、以上』
『エージェントへ伝達、タイプ4発令、目標2451、以上』…
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:
説明: SCP-XXX-JPは███県沖の███島に存在するプレハブです。主体構造の殆どがオーク材とトタンです。北側には鉄製の扉が設けられていますが窓はありません。建造時期は20██年頃、製造者は不明です。
SCP-XXX-JPは1956年財団の定期調査中███県にて高線量の放射線が検出されたことから調査が開始。発生源が超自然存在であると断定されSCP-XXX-JPに指定されました。当時、SCP-XXX-JPから検出される放射線と大気への影響からそれらは宇宙線である可能性が指摘され、第一種特異点9に分類されています。
SCP-XXX-JPの内部には多数の光る点、明滅する点などが見られ、中央には巨大な光点があり、宇宙と見られる空間が広がっています。通常の状態でドアを開けた場合、周囲の大気が流入します。財団の行った探査機調査による"端"の発見は未だなされていません。内部には無数の恒星と思われる天体が光っており、一番近くの恒星は三重連星となっているなどの特徴から、ケンタウルス座α星系ではないかと指摘されています。
現在財団はこの空間の探索のため、あらゆる機器を投入していますがどれも有益な成果を上げていません。
実験記録XXX - 日付1957/10/4
対象: SCP-XXX-JP内部空間
目的: SCP-XXX-JP内部空間の広さの測定
実施方法: 広域宇宙遊泳探査船SCPSS-Diogenesによる内部空間の大気、温度、放射線、重力、磁気を測定する。
結果: 1957年10月4日、SCPSS-Diogenesは電磁カタパルトによって初速約1.25 km/sでSCP-XXX-JP内部空間に向けて射出された。直後、SCPSS-Diogenes後部カメラによって撮影された画像には、SCP-XXX-JPがあるべきはずの場所にSCP-XXX-JP内部空間と同様の景色が広がっていることが確認された。なお、この画像の解像度の低さ、及び不明瞭な通信状況などから他の特筆すべき事項は解析できなかった。
射出から6分後に通信途絶。 ↑この引用の途切れを埋めたいんですが、どなたかいいやり方知りませんか?
分析: SCPSS-Diogenesからの通信は2020年現在も回復せず、予定されていた各種センサーによる計測も実現しなかった。SCPSS-Diogenesから送られてきた画像はなんの役にも立たなかった。 -ヴェルナー博士
不可解なのはSCP-XXX-JPの空間特性です。第一種特異点であるならばSCP-XXX-JP内部空間はこの世界のどこかであるはずです。SCPSS-Diogenesから送られてきた画像にはSCP-XXX-JPの開口部が映されていませんでした。不鮮明な画像ということもありますがもし仮にこの画像解析結果が真であるなら、SCP-XXX-JPは第一種特異点でありながらその特性から逸脱してしまいます。なぜならSCPSS-Diogenesの通信回路は非常に短距離での運用を目的に設計されているからです。-オーベルト博士
実験記録XXX - 日付1958/2/1
対象: SCP-XXX-JP内部空間
目的: SCP-XXX-JP内部空間放射線量の測定
実施方法: 広域宇宙遊泳探査帰還船SCPSS-Aquinasによる内部空間の調査対象を重力波に限定し、測定する。
結果: 1958年2月1日、SCPSS-AquinasはJuno型推進装置を用いて初速約132 km/h10でSCP-XXX-JP内部空間に向けて射出された。SCPSS-Aquinasとの通信はその後14日間良好であり、狭い範囲ではあるもののSCP-XXX-JP内部空間から複数の重力波の検出に成功。
耐用期間である100日までに帰還することを目指すべく探査開始32日目明朝1:28分に姿勢変更指示とスラスターの再点火命令が発信された。しかしSCPSS-AquinasとSCP-XXX-JPとの距離は次第に遠くなり、41日午後7:12分財団の探知範囲から離脱し通信途絶。
分析: SCPSS-Aquinasから送られてきた重力波のデータから、SCP-XXX-JP内部空間は我々が知っている宇宙に非常によく似た物理現象を引き起こし、かつまだ生きているものと考えられます。探査船を使わずとも、SCP-XXX-JPのドアのサイズで高精度の望遠鏡を使うことが出来たなら、より詳細な調査が出来るものと思われます。-ツィオルコフスキー博士
SCPSS-Aquinasの通信途絶に関しては未だ諸説あります。実験当時、SCPSS-Aquinasからの非常事態アラームが作動しなかった事から、恐らくはSAS関係のシステムトラブルにより、姿勢変更に失敗したとの仮設が現状有力です。SASの制御に失敗したSCPSS-Aquinasは姿勢を変更せず、そのまま加速方向へ噴射をし、想定よりも速い速度で財団の探知範囲から離脱したものと思われます。-糸川博士
実験記録XXX - 日付XXXX/X/X
対象: SCP-XXX-JP内部空間
目的: SCP-XXX-JP内部空間の位置探査。第一種特異点説の反証
実施方法: 重力ピンガーを搭載した宇宙無人機"SCPSDシリーズ"多数をSCP-XXX-JP内部空間に配備。完了の後、一斉に重力ピンガーを作動させ地球から検知することで位置座標を取得する。SCPSDシリーズのサイズのため、SCP-XXX-JP開口部を広げる試みが検討されるもO5命令により中止。そのため開口部を内部に向けて延長し、NASA・ESA・Roscosmos・JAXA・DLR協力の下5年で合計2032機を宇宙空間にて建造。地球側では同組織の協力の下、軌道上の観測衛星に加えて重力ピンガー観測用SCPASシリーズを合計104機、信号中継用SCPASシリーズを4機、映像観測用SCPSTシリーズ4機を投入。ケネディ宇宙センター・ジョンソン宇宙センター・バイコヌール宇宙基地・酒泉衛星発射センター・種子島宇宙センターにて、これらの観測データの収集、統制を行い財団サイト-0003で最終的な集計を行う。2010年現在、配備は12%完了している。
結果: N/A
分析: N/A
事案記録XXX - 日付XXXX/X/X
内容: 2000年9月にSCPSDシリーズの一つであるSCPSD-R2-D2からの姿勢異常信号をバイコヌール宇宙基地が受信。内容は財団サイト-0003へ送信された。姿勢異常信号の内容は微小天体の衝突を示すアラート信号であり、損傷内容からSCPSD-R2-D2が実験継続能力を持たないと結論された。衝突した微小天体の破片がSCPSD-R2-D2表面に付着している可能性があるとし、財団はSCPSD-R2-D2回収作戦を展開。SCPSD-R2-D2に搭載されている推進装置のうち、リアクションホイールとEMドライブ2機がオフラインであることが判明し、財団サイト-0003から新たな姿勢制御ソフトウェアを遠隔でアップデートすることとなった。その後SCPSD-R2-D2は姿勢変更に成功し、180度回頭の後に逆噴射を開始、逆噴射開始から24日後にSCP-XXX-JPとの相対速度を0にすることに成功。続けて帰還軌道への噴射をさせることに成功。
2000年12月にSCPSD-R2-D2はSCP-XXX-JP付近に配備された宇宙望遠鏡によって捉えられ、財団はこれに対し回収機のランデブーを敢行。SCPSD-R2-D2との接触により回収機のアームは破損しながらもSCPSD-R2-D2の回収に成功し、SCPSD-R2-D2は445日ぶりに地球へ帰還した。
回収されたSCPSD-R2-D2は当初予想されていた状態よりもはるかに損傷が少なく、各種姿勢制御装置のオフライン化は付着した大量の米11による電気回路のショートが原因であると判明。また、EMドライブのマイクロ波反射鏡の損傷から、赤色の物体がめり込んでいることが発見された。成分解析の結果、この物体はマグロ12であると断定された。
分析: SCPSD-R2-D2にあった本マグロは間違いなく地球産です。しかしながら、2006年現在、宇宙飛行士が宇宙空間へマグロを持ち込んだという記録はなく、由来は現在も不明のままです。また、SCPSD-R2-D2表面に多数付着していた米に付着していた穀物酢も、米自体も、地球から宇宙へ持ち出されたという記録はありません。現在は宇宙飛行経験者、あるいは人工衛星開発関係者、などの直接宇宙空間に関わる分野の全ての人間に事情聴取を行っています。また、付着していたマグロ、米の摂食実験もこれらの物質が長時間宇宙空間に晒されていたという事実と関係なく美味であると報告されています。この現象への仮説は未だ立てられていません。 —ツィオルコフスキー博士
マグロの入射角度とSCPSD-R2-D2に搭載されたEMドライブの強度、そしてマグロ自体の損傷具合などを分析した結果、マグロはSCPSD-R2-D2のアラート信号発信場所からJ8星雲13方向から秒速240mほどで衝突したことになります。この時に発生する強烈な衝撃にSCPSD-R2-D2がある程度耐え、アラート信号を発信できたという事実は今後のSCP-XXX-JP投入探査宇宙機の開発に大いに役立つでしょう。しかしながら不可解なのは、このマグロがJ8星雲方向からD2恒星系14へと向かっていたならば、現在研究されているSCP-XXX-JP内部は銀河系の一か所であるという仮説はより有力なものとなるでしょう。この衝突方向は現在研究されているSCP-XXX-JP銀河の中心から見た時の天体の回転方向とほぼ同一であるためです。あのマグロは回転していたのです。 —ヴェルヌ博士
「懐かしい」
僕の口は、意図しない言葉を吐いた。いや、肉は意図したのだろう。
肉体は、僕の目は上辺だけを見ている。ここにはあの日の地獄のような時間などありはしない。
完全な規律と、統制が彼らを守っている。見せかけの秩序はなく、真なる秩序が彼ら自身を守っている。
そうだ、今彼らは罪人ではないのだ。僕とは違う。彼らは資源になった。上辺だけの罪を精算するために、閉じ込められているわけではないのだ。だけど、彼らはそれを自覚していないから、だから。
「0822番、面会だ」
「えっ?」
面食らったよ。だって、僕には両親もなければ、遺族も既にいないんだ。
面会なんて、実に何年ぶりだろうか。最初の数年はそりゃあ少しの訪問もあったけど、今となっては、最早僕に用がある人なんていないと、そう思っていた。
僕が腰を上げ、扉の前に立つと、看守と目があった。
「いや、そこにいろ」
僕はきょとんとして立ち尽くした。面会室の準備ができていないのかと
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:
説明: SCP-XXX-JPは日本の屋外、屋内に見られる飲料用自動販売機です。SCP-XXX-JP-A,B,Cの三種類が存在します。すべての個体で経年劣化の兆候は見られますが、通常の手段で電力を供給すると、異常性を除き正常に稼働します。問い合わせ用にオブジェクト表面に記載された問い合わせ番号なども、それぞれメーカーの対応係に繋がるため、SCP-XXX-JP群は元々正常な製品として出荷され、後述する異常性を後天的に持った蓋然性が高いです。
SCP-XXX-JP-Aにはコーヒー、炭酸飲料、ジュースなどの飲料水の容器モデルが飾られており、これらには同一商品による重複はありません。被験者が啓示最低額の硬貨または紙幣を投入し、何れかの商品選択用ボタンを押すことで、対象の商品が2つ受取口に落下します。落下した商品は外見上同一であり、判別することは不可能であると言えます。被験者が受取口に落下した商品のどちらか片方を飲むことを選択した場合15、選択された商品には1gのシアン化カリウムが混入しています。選択されなかった商品は一般に流通しているものと変わりありません。
SCP-XXX-JP-Bも、外見上SCP-XXX-JP-Aと同様に見えますが、飾られている容器モデルは全て必ず二つ以上重複しています。SCP-XXX-JP-Bに啓示最低額の硬貨または紙幣を投入し、何れかの商品選択用ボタンを押すことで、対象の商品が受取口に落下します。選択された商品には1/2の確率で1gのシアン化カリウムが混入しています。しかしながら同様の商品を続けて購入した場合、必ず1gのシアン化カリウムが混入しています。
SCP-XXX-JP-Cには-A,-Bのような外見的特徴はありません。SCP-XXX-JP-Cに2000円紙幣を投入した場合、商品選択用ボタンを押すことで、対象の商品が受取口に落下し、紙幣投入口から投入した2000円紙幣が返却されます。被験者がこの現象に関して、対象の商品を飲む前にSCP-XXX-JP-C表面に記載されている問い合わせ番号に電話し不具合として説明しなかった場合、あるいはこれを不具合として、管理者に報告しなかった場合、対象の商品には1gのシアン化カリウムが混入しています。
これらシアン化カリウムの発生条件や、どの時点で混入するのかあるいは発生するのかについて明確な結論は出されていません。
実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
対象: Dクラス1名 SCP-XXX-JP-A
報告: 当実験はDクラスによる飲料水の購入による諸実験の記録である。担当のDクラスは平均的な日本人男性42歳。
Dクラスは指示通り、160円を投入し一番左上に陳列されている500mlのペットボトル入りミネラルウォーターを購入。釣り銭はなし。初期実験の結果と同様に同一のミネラルウォーターが2つ受取口に落下。Dクラスはこの現象について「幸運である」と主張していた。
この時点で調査員がDクラスの持つ2つのミネラルウォーターを回収。即座に分析に掛けられた。この時にDクラスが右手に握っていたものをA、逆をBとして区別している。分析の結果、Bからシアン化合物が検出された。用意された別のDクラスにより、Aが試飲されたが問題はなかった。
購入したDクラスへ2つのビーカーに移し替えられたミネラルウォーターA,Bがそれぞれ提出された。調査員の支持によりDクラスはAのミネラルウォーターを飲み、12分後死亡。死因はシアン化合物による中毒死であった。
Dクラスの死亡が確認された後、A,B双方の再分析が成されたが、結果はA: 有毒、B: 無毒であった。試飲前後の分析結果に誤りがあったとは現在まで認められていない。
分析: 後に詳細な調査が行われたが、分析結果の狂いについては「被験者が購入した」という前提と「被験者の飲む意志」という2つの要素が毒物の発生原因となっていると結論するしかない。また、調査員の指示で飲む方を決めず、自由意志によって決め、幸運にも回避したと思われたケースにおいても同様に死亡したことから、「選択して飲む」という条件に狂いはないものと思われる。
実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
対象: Dクラス1名 SCP-XXX-JP-B
報告: 担当のDクラスは平均的な日本人女性21歳。
担当のDクラスは指示通り110円を投入し中央列右の微糖缶コーヒーを購入。釣り銭はなし。初期実験同様商品が受取口に落下し、調査委員が回収。即座に分析に掛けられた結果は無毒であった。他のDクラスによる試飲の結果も問題はなかった。
ビーカーに移し替えられたコーヒーをDクラスに提示し、飲むように指示。結果Dクラスは死亡しなかった。
続いて同様の金額を投入し、同じ商品選択用ボタンを押させた。受取口に落下した商品を分析した結果、シアン化合物が検出された。ネズミによる試飲テストの結果も有毒であることを証明したためこれを破棄。
続いて、先程とは異なる商品を2連続で選択させた。受取口に落下した商品2つを同時に分析した結果、後に落下した方からシアン化合物が検出された。この実験を20回試行したが結果はすべて同じであった。
続いて、Dクラスに「出した2つの同じ商品のうち、片方を選んで飲め」と指示。Dクラスには財団化学医療チームが随伴し、シアン化合物による中毒を即座に治療できるよう待機していた。Dクラスは最初に受取口に落下した商品を選択し、飲んだ結果痙攣と嘔吐を始めたためすぐさま医療チームの処置が施され、医療区画へ搬送された。
Dクラスはその後回復。
分析: この実験から、もはやDクラスに飲ませる事前の分析は殆ど意味を成さないことが確信された。Dクラスの無用な損耗を防ぐため、マウスによる試飲も発案されたが出てきた商品の双方とも無毒という結果に終わった。必要なのは、やはり人間の意志であるとしか仮説が立てられない。
実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
対象: Dクラス1名 SCP-XXX-JP-C
報告: 担当のDクラスは平均的な日本人男性32歳。
Dクラスは指示通り、2000円紙幣を投入し最下段左に配置されている微糖の缶コーヒーを購入。初期実験の結果と同様に缶コーヒーが受取口に落下し、紙幣投入口から投入したものと同じナンバーの2000円紙幣が返却された。Dクラスはこの現象について「俺は幸運を呼び寄せる男だ」という旨を主張していた。
この時点で缶コーヒーを回収し分析した結果、シアン化合物が検出されたため、これを破棄。同一の商品を再度2000円紙幣で購入させた。再び2000円紙幣は返却され、缶コーヒーにもシアン化合物が検出された。異なる商品でも結果は同じであった。
そのため、Dクラスに商品が落下した後に2000円紙幣を投入し、その間に商品を飲むように指示。結果Dクラスは痙攣と嘔吐始めたためすぐさま医療チームの処置が施され、医療区画へ搬送された。
Dクラスはその後死亡。
分析: SCP-XXX-JP-A,Bとは異なり、SCP-XXX-JP-Cの特異性は解明されなかった。1000円紙幣しか受け付けないハズの装置であることは確かであるが、2000円として認識できているのは不具合なのか判別すら出来ていない。
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
実験記録XXX - 日付YYYY/MM/DD
対象: Dクラス1名 SCP-XXX-JP-C
報告: 担当のDクラスは平均的な日本人男性26歳。
Dクラスは指示通り、2000円紙幣を投入し最下段左に配置されている微糖の缶コーヒーを購入。先の実験の結果と同様に缶コーヒーが受取口に落下し、紙幣投入口から投入したものと同じナンバーの2000円紙幣が返却された。Dクラスはこの現象について非常に困惑し、実験担当職員に困惑の様子を見せた。
この時点で缶コーヒーを回収し分析した結果、無毒であった。再度2000円紙幣にて同様の商品を選択させ分析した結果シアン化合物が検出されたため、これを破棄。同様の検証を複数回に渡り行ったが結果は同様に有毒であった。
分析: 先の実験とは明らかに異なる結果が観測された。最初の一回目のみ無毒であり、それ以降が全て有毒というのは説明し難い現象である。個人差も考慮し、更なる同様の実験を申請する。
補遺: 20人によるテストを行った結果も最初の一度目、あるいは数回目で突如無毒の商品が検出された。無毒であった場合の映像の分析により、被験者の困惑した態度や実験担当者への相談などが共通していることから、現在の説明に結論されました。
ある猿がいた。
猿はまた、同時に彼であった。
同時に、父であり、父祖であった。
彼は荒野に腰掛ける。曙光を望んで水平を見、そこに現れた感動を見ていた。胸に湧き上がるこれは、一体なんであろうか?餌を見つけた歓喜ではない、水を見つけた安堵でもない、闇を覗いた恐怖ではない。
これは一体、なんであるか?
子は答えふ。
「それは、到来ぞ」と。
彼は悟り、朽ちた同胞の骨を拾い、岩を砕いて立ち上がった。
彼は思う、「嗚呼、我々の後に全てが起こり、そして続くのであろう」と。
彼は床を磨いていた。普段であれば、こう念入りに床を磨いたりはしない。
現状を保つだけで良い。財団の職員たちの道徳規範はおよそ全ての国家の法をも破綻させるほど道徳的である。
廊下は磨き上げられ、汚すものなど誰もいない。時間だけが、その廊下に時間の痕跡を残していく。
ガーデルマンは、そんな床を磨くだけで、維持するだけで、良いのである。
しかし、今日は違った。曙光を見てより、けたたましいサイレンを聞いて出動し、掃除を終えた頃には床はその生きた痕跡で汚れていた。
飛び散る赤に、ガーデルマンは懐かしい光景を見た。しかし、感傷にふけるのは仕事の内ではないので、足早にデッキブラシとバケツを用意して、仕事にかかった。「本来の」
「仕事と、仕事は、終わったかね?」
聞いたのは上司である。その男は私の背後に現れて、仕事ぶりを観察しに来たのである。そう信じたい。
「仕事は終わりました。そして仕事は今掛かったばかりです」
そう答えると、男は鼻で笑って踵を返し、戻ってゆくのである。
はて、男は何をしに来たのか。考えれば、男は「笑いに来た」だけであって、あの男が「笑いに来た」のであれば、それは「話がある」の合図であることを、ガーデルマンは思うのである。
そしてこの床は、思ったより掃除しづらい。
「完了しました」
上司へ報告すると、男は「ご苦労」と椅子に掛け、背を向けたまま答えるのである。
「して、質問は?」
男が聞く。
「質問は?」
私が答える。
批判
1 物事に検討を加えて、判定・評価すること。「事の適否を批判する」「批判力を養う」
2 人の言動・仕事などの誤りや欠点を指摘し、正すべきであるとして論じること。「周囲の批判を受ける」「政府を批判する」(コトバンク-デジタル大辞泉の解説)
批判は非難ではない。殊、財団に於いては何が面白く、何が面白くないのかを明確にする作業が必要になる。そして批判は、何が面白くないのか、どこがおかしいのかを指摘するのみに留まらず、何が面白いのかも積極的に述べていくべきだと、私個人は思う。
0,統一感という問題
統一感を重視するという前提が、私の中にはある。財団は几帳面な組織であるという先入観が、私の中にはある。であれば、同一の物を指す時に、異なる語句を用いるということは、何か理由がない限りにおいて、しないであろうという推測は、上の私の中の思い込みからは、導出できる。そしてこの統一感の問題、統一感を重視するという価値観は、ただ私の中にある曖昧な憶測と妄想という吹けば飛ぶ前提の上に成り立っているのであって、決してガイドラインにそのような事が明記されているわけではないことに留意していただきたい。これが、「読まないほうが良い」と言う所以である。
1,半角アラビア数字のススメ
記事内で全角アラビア数字を使うのは美しくない。というのも、そもそも「SCP-XXX-JP」と我々が呼ぶ時の「XXX」は、それはオブジェクト一覧にある数字を指す。では、オブジェクト一覧にある数字を眺めて、それが全角アラビア数字か、半角アラビア数字か、見分けることは容易い。であれば、勿論記事のタイトルも半角アラビア数字だろう。では、同一の記事に使用された数字の形式が、特に何の理由もなく変化することはあるだろうか? そう自分に聞いてみて、出た答えが、そうなのだ。
余談だが、私はこれに関して、例えば全角数字を見つけても「数字が全角です」としか指摘しない。その指す意味は「この箇所の数字は全角のものが使われていますね」であり「だから半角に修正せよ」とは一言も言っていないのである。つまり、事実を述べたに過ぎず、修正するか、しないかは筆者の自由であると、私は考えている。
2,おそらく、あれはテンプレートなのだろう。
必読のガイド「SCP記事作成のガイド」にはテンプレートが掲載されている。それを注意深く、丁寧に観察してみる。「アイテム番号: SCP-XXX-JP」とある。この半角のコロンまでが太字に指定されていることが分かる。そして、太字に指定する最後のアスタリスクの次にあるのは「S」ではなく「 」つまり半角スペースである。これはその他の項目も同様である。そして、このガイドが必読で、ガイドであり、そのテンプレートであることは既に述べた。そしてこのテンプレートの下部にはこうある。「SCP報告書の書式は、基本的に本家と同じレイアウトになるよう意識して下さい。」
3,Let's Interview!
2番と同様に、インタビューのテンプレートがある。このインタビューに多く見られる不統一の例が句点である。例えば。
対象: 大和博士
インタビュアー: 宇喜多博士
付記: ほんわかぱっぱ。
<録音開始>
大和博士: やぁ!
.
.
.
対象: 大和博士。
インタビュアー: 宇喜多博士。
付記: ほんわかぱっぱ
<再生開始>
大和博士: やぁ!
.
.
.
以上二つのインタビュー記録が同一の記事内にあったとする。貴方がむず痒くなる箇所は幾つあったであろうか。私は4つである。