※現SCP-1209-JP
アイテム番号: SCP-12XX-JP
オブジェクトクラス: Safe→Euclid
特別収容プロトコル: SCP-12XX-JPの存在する敷地内は現在財団の所有地となっています。SCP-12XX-JPの中への立ち入り、及び近づく事は固く禁じられています。担当職員は1日に2回か3回、SCP-12XX-JPに人間用の食品を持ち͡込んでください。実験を行う際は、明確な目的と方法を提示した上で当オブジェクトの研究チームに許可を取ってください。
当オブジェクトによって財団職員以外の人間が消失した場合、対象の身元を調査し、親族や関係者には適切な記憶処理、及びカバーストーリーを実行してください。
説明: SCP-12XX-JPは、██県██市████████に存在する地上6階建てのビルです。1996年にオブジェクトとして財団に認められ、財団関係者を除く人間の立ち入りが禁止されました。
このオブジェクトは1990年に建設され、それ以降は財団によって収容されるまで株式会社████の支社として利用されていました。1994年頃から後述する異常性が確認されたことが財団の注意を惹き、当オブジェクト収容の発端となりました。
SCP-12XX-JPの中に食品が持ち込まれ、それを直接人の目に届く場所に置いていた場合、その食品は変質することがあります。これらの食品は人間から逃げる、人間の手の届かないところに入り込む、人間の視界を塞ぐ、といった行動を取り、また当オブジェクトの各設備もそれを扶助するような傾向があります。このため、このように変質した食品の大半は消失していると推測されます。
食品 | 状態 | 結果 | 備考 |
---|---|---|---|
アイスクリーム 150グラム | カップに入った状態 | 急速に溶けると同時にカップが倒れ、アイスは床に染み込んだ。 | |
白飯 150グラム | 茶碗に盛った状態 | 液状化すると同時に湯気を出し、高熱の状態になった。 茶碗は割れ、液体状の白飯は床に染み込んだ。茶碗の破片は消失しなかった。 | |
オレンジ 1玉 | 皿の上に乗せた状態 | 果汁が噴出し、その場にいた職員の目に向かって発射された。幸い職員が眼鏡をかけていたので大事には至らなかったが、眼鏡を拭いて掛け直した時にはオレンジは消失していた。 | |
トウモロコシ 1房 | 同上 | 高熱を帯び、爆裂種1でないにもかかわらず破裂し、ポップコーン状になって勢い良く弾け飛んだ。職員は一時避難して、再び戻ると芯が焼け焦げていた。 | |
海老フライ 1尾 | 同上 | 海老は動きだし、くねるように皿の上から逃げ出した。職員が後を追いかけたが、見失った。そのまま消失したと思われる。 | |
同上 15尾 | フライパンに入れて蓋をする | スプリンクラーが作動し、職員が気を取られている隙に海老フライが激しく振動し、蓋が外れる。その後、濡れた床を泳ぐように逃走。全てのエビフライはそのまま逃亡したと思われる。 | 逃亡を防ぐために7名の職員を動員した |
マグロ 1匹 | 解体せずに搬入 | 職員がボックスから出すと、当オブジェクト内にあった2台の監視カメラがレーザー光線を射出し、マグロを部位ごとに細かく解体した。2その直後スプリンクラーによって切り身が流され、職員が回収を試みたが、可食部が約160キログラム中50キログラム消失していた。 | 同上 |
唐揚げ 130グラム | 皿の上に乗せた状態 | 消失しなかった。 | レモン果汁がかかっていた |
酢豚 200グラム | 同上 | 消失しなかった。 | パイナップルの切り身が入っていた |
冷やし中華 150グラム | 同上 | 消失しなかった。 | 実験当時は12月9日だった |
ケーキ 1ホール | 皿に盛った状態 | 実験の最中に停電が発生。直後、蝋燭がないにもかかわらず発火し、社内放送で『Happy Xmas (War Is Over)』が流れる。曲が終わると停電が復旧し、ケーキは消失していた。 | 実験当時は12月24日の夜であった |
蕎麦 150グラム | お椀に盛った状態 | 実験の最中に停電が発生。直後、社内放送で鐘の音が108回再生される。その後停電が復旧し、蕎麦は消失していた。 | 実験当時は12月31日の深夜であった |
食品 | 状態 | 結果 | 備考 |
---|---|---|---|
SCP-481-JP | 皿の上に置いた状態 | 窓がひとりでに開き、風がSCP-481-JPを屋内のどこかに吹き飛ばした。4分後にSCP-481-JP-Aが床を突き破って出現したが、その直後に監視カメラ1台のレーザー照射によって死滅した。 | |
SCP-1176 50ミリグラム | 床に注ぐ | 染み込むように消失した。約20分後、オブジェクト内全体で停電が発生。電線を確認すると雷害によく似た断線が発生していた。 | |
SCP-006の水 1リットル | 同上 | 染み込むように消失した。その約3時間後、SCP-481-JP、SCP-1176の実験によって生じた損傷が元通りに修繕されていることが確認された | 実験に携わったセキュリティクリアランスレベル2以下の職員にはAクラス記憶処理が行われた |
SCP-458 | 床に設置 | ミディアムサイズ・トマトソース・バジル・モッツァレラチーズ・オリーブオイル・薄い生地のピザ(ピッツァ?)が出現した。その後車輪のように勢いよく転がり逃走した。 | |
SCP-871 | 皿の上に乗せた状態 | 消失と生成が数分の周期で繰り返された。 | 先述したSCP-006の実験を踏まえた予想とは反する結果であった |
事案12XX-JP-1:以下、1998年にサイト81██管理者の発表した決議書の一部です。
SCP-12XX-JPを対象とした実験の報告書の大半がその収容において有益な情報をもたらすものではなく、偏に一研究者が当オブジェクトを玩具のように扱い、その反応を目の当たりにする事によってその好奇心を満たすためだけに行っている実験である、という印象が否めない。そもそも、このように収容の容易なオブジェクトに過剰な実験を繰り返すべきではない。今後はこれらの反省を踏まえた上で、正当な理由がない場合のSCP-12XX-JPの実験を禁止する。
事案12XX-JP-2: 2000年█月█日、SCP-12XX-JP敷地内で雑草の処理を担当していた財団職員1名が行方不明になる事故が発生しました。
付近の監視カメラには、当日18時20分ごろにに近づいた職員が壁に吸い込まれるように消えていく映像、そしてそれに気づいた一般人4名の映像が残されていました。
その後数日のうちに、この事故を目撃してしまったと思われる一般人4名に対し個人の特定、インタビューおよび記憶処理が行われ、当オブジェクト内では終了予定間近のDクラス職員数名で実験が行われましたが、壁面に触れた職員、屋内に進入した職員のいずれも消失は確認されず、人間の消失における規則は解明されていません。よって当オブジェクトはEuclidに再分類されました。
以下、この事案に関するサイト81██管理者と██博士の通話記録です。
██博士: どうか実験再開の許可を願います。
管理者: それは出来ない。君達の無益な実験は看過できないと言ったはずだ。
██博士: 当オブジェクトがなぜ人間を消失させたか、原因を解明しなければなりません。
管理者: Dクラス職員でも闇雲に連れ込むつもりかね?
██博士: いいえ。SCP-12XX-JPは持ち込まれた食品を食べている。それは実験で明らかになっています。実験が凍結されて以来、当オブジェクトは何も食べていない。極度に飢えた者が人間の肉に手を出すというのは、有り得ない話ではないでしょう。
管理者: 成程。本事案は私のせい、とでも言いたいのか。
██博士: いえ、そうではありません。ただ…
管理者: なら聞こう。最後の実験は2年前に行われたもの、そして株式会社████の社員が最初に食品の変質を目撃しているのはSCP-12XX-JPが建設されてから4年後だ。
██博士: はい。
管理者: 4年間飲まず食わずでも████社員の犠牲者が出なかったにも関わらず、実験凍結のたった2年の期間でこのビルを『飢えた』と考えるのかね?
██博士: SCP-12XX-JPにおける実験は、全て誰かが食品を目視した状態で開始していますが、何らかの原因で食品が見えなくなった後に消失する、という結果が大半です。当オブジェクトが████社だった時代も、どこか人目の着かない場所にある食品を食べてきた可能性が考えられます。その4年間に何も飲食していなかったとは考えにくいでしょう。
管理者: 今までの実験は、その事実を確かめる為に行ったのかね?全て現場の人間が、単なるお遊びでやっていた実験ではないか。
██博士: 今はその実験結果について話すべきでしょう。論点を…
管理者: SCP-12XX-JPはEuclidオブジェクトと見做し、財団職員を含めた一切の人間の立ち入りを禁止する。本事案は、人間消失という異常性に対し有益な実験を行わなかった君の責任として、サイト8100の日本支部理事会にも通達する次第である。
インタビュー12XX-JP-3
対象: 吉田██氏。株式会社████の社員であり、収容される以前の当オブジェクトで勤務していた。現在は定年退職している。
目的: 収容される以前の当オブジェクトの異常性について調査する。
インタビュアー: ではインタビューを開始します。本日はよろしくお願いします。
吉田氏: ああ、俺の覚えてることなら力になるぞ。
インタビュアー: 貴方は当オブジェクトにおける異常性、つまり食品が逃走したりする瞬間を見た事がありますか?
吉田氏: ああ、何度かあるぞ。あれはびっくりしたなあ。
インタビュアー: その時の状況について、詳しく思い出せますか?
吉田氏: んー、確かあんときは、弁当を自分の机の上に置いてたんだよなあ、蓋も空けてて。そしたら中身がひとりでにドバーッと飛び散ってよ。そんで雑巾を取りに行ったらきれいに無くなってたんだ。
インタビュアー: 弁当の蓋を開けていたんですか?それは何故でしょうか。
吉田氏: 実は、同僚の間で弁当の中身が何度も盗まれるって事件があってよ。警察に来てもらっても犯人がわかんねえし、弁当を見張ってても無くなってるから、俺達は弁当の蓋を開けて見張りながら仕事してたんだ。
インタビュアー: …そうですか。本日はありがとうございます。
このインタビューの直後、吉田氏にはAクラス記憶処理が施された。
事案12XX-JP-4 サイト8100の通達により特別収容プロトコルが現在のものに変更されました。事案12XX-JP-2以降、201█年現在まで人間の消失は確認されていません。
アイテム番号: SCP-12XX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-12XX-JPは現在、サイト8107にある人型オブジェクト収容エリア08の耐火処理がなされた一室に収容されています。使用されるベッドや布団なども引火性のない素材が使用されています。職員は1日に3~4回の食事、1度の入浴を提供してください。また、紙など引火の恐れがある物品の持ち込みは基本的に許可されていません。
SCP-12XX-JPの髪が多量抜け落ちているなど、顔や髪に何かしら異常が見られる場合はその旨を報告して下さい。必要に応じて、当オブジェクトにカウンセリング、および記憶処理を施します。
説明: SCP-12XX-JPは、15~20歳ほどのアジア人女性です。通常時は平均を上回るIQを持ち、一般的なコミュニケーションが可能です。当オブジェクトは18██年から旧蒐集院に保護されており、20██年に財団の収容下におかれました。
SCP-12XX-JPはあらゆる肉体的な損傷を負っても、元通りに再生することができます。しかし損傷の際には通常の人間と同等の痛覚を伴うため、当オブジェクトをみだりに傷つける実験は禁止されています。またSCP-12XX-JPは成長や老化といった外見上の年齢の変化を見せず、19██年に撮影された写真ともほぼ相違ない外見です。
SCP-12XX-JPは自分が知る人間が死亡した場合、何かしら情報の媒介が無くともそれを理解し、悲しみの感情を訴えます。この性質は当オブジェクトと直接会った人間に限定され、死亡した人間と親密であるほど深い悲しみとなります。時折、その後に頭髪が抜け落ちたり変質・変色する場合がありますが、これを当オブジェクトのストレスと関連付ける統計からは有意な結果が算出されています。
SCP-12XX-JPの体は1年~数年の周期で発火します。これはいかなる手段を用いても防ぐことができません。肉体が燃焼し終わるとまた再生しますが、その時の当オブジェクトは発火する前に得ていた記憶を失っています。
補遺:以下、██博士の提言です。
SCP-12XX-JPはどういう訳か見知った人間の死を感知できるが、故人の記憶ごとその悲しみを忘れる為に自らを焼いているのか、もしくは彼らの後を追うためなのかは判らない。だが、もしその過程において通常の人間が火炙りに晒されるのと同様の苦痛が伴うとしたら、我々で当オブジェクトに記憶処理を施したほうがよほど安全かつ人道的なのではなかろうか。
この提言により特別収容プロトコルに追記が加えられ、██博士にはSCP-12XX-JPのみに対し、クラスEまでの記憶処理を使用する権限が与えられました。19██年の最後の記録以降、現在まで発火現象は確認されていません。
アイテム番号: SCP-19XX-JP
オブジェクトクラス: Keter → Euclid → Safe
特別収容プロトコル: SCP-19XX-JP-1は現在、サイト-8107の中央-4保管ルームに収容されています。
SCP-19XX-JP-1の収容を継続する場合、SCP-19XX-JP-2は収容不可能とされています。
セキュリティクリアランスレベル2以下の職員には、当オブジェクトへのアクセスは許可されていません。
説明: SCP-19XX-JP-1は、長さ約██センチメートル、重量約███キログラムの鉄-ニッケル合金です。細長い刃の形状で根元には穴が開いており、槍の穂先であることが推測されています。また、SCP-19XX-JP-1には何かしらの言語が彫られていますが、非常に擦れており解読は難航しています。
SCP-19XX-JP-2は長さ██メートル、重量約███キログラムの棒状のオブジェクトであり、SCP-19XX-JP-1と同じく鉄-ニッケル合金でできています。棒の先端にはSCP-19XX-JP-1と同じ直径の穴が開いており、こちらは槍の柄であることが推測されています。現在SCP-19XX-JP-2はMC&D社の管理下にあり、財団による収容がされていません。
SCP-19XX-JP-1を穂とした槍で何らかの対象を突いた場合、いかなる硬度でも貫通し、穴をあけます。また、貫かれた対象が人間の場合、傷はいかなる場合も自然治癒することはなく、また多くの場合化膿が引き起こされます。噴出した血液を傷口に塗り直した場合のみ治癒されます。
SCP-19XX-JP-1はクー・クラックス・クラン3の分派の一つ「Knights Equipping the Elder Relic」が合衆国█████州███████市発の客船内でMC&D社のメンバーに譲渡を計画していたことが明らかになり、本オブジェクト収容の発端となりました。
補遺1: 以下、要注意団体および秘密結社の動向について調査していたエージェントがハッキングにより入手したSCP-19XX-JP-1に関するデータです。
今月██日の午前13時に、この槍を███████船上にてマーシャル・カーター&ダーク株式会社に譲渡する。我々が[解読不能]であることの象徴を他組織に引き渡すという事は苦渋の決断であったが、我々にはこの穂先と柄を[解読不能]ことが出来なかった。しかしこれで当面の活動資金は確保され、名実ともにKKKの正当な中心組織として活動できる。当日当時になったら船の甲板で待機せよ。マーシャル・カーター&ダーク社員には、携帯番号███-███-████で君達にコンタクトをとるように指示してある。くれぐれも用心せよ。
このデータの解析から2日後、エージェント13名を出動させ、███████船上でSCP-19XX-JP-1の確保に成功しました。その7時間後にSCP-19XX-JP-1の所在する「Knights Equipping the Elder Relic」の拠点が明らかとなり、機動部隊によってこれを制圧、無力化しました。
補遺2: 当オブジェクトに刻まれた文字の情報を各国支部・本部に提供したところ、SCP-073による「それは『トバルカインの槍』という意味のシュメール語だ」という情報が届きました。また当オブジェクトについて知っているか質問した際「知っている。その槍で生じた傷は、流れた血でのみ癒すことができる」とも話しているそうです。
Dクラス職員に同様にSCP-19XX-JP-1によって生じた傷に血を塗りなおすことで傷が治癒した。彼らも随分膿に苦しんでいたようだが、これでまた業務に復帰できるだろう。- ██博士
補遺3: 以下、サイト81██管理者の提出した報告書です。
███████船上にてSCP-19XX-JP-1の確保には成功したが、「Knights Equipping the Elder Relic」の記録からSCP-19XX-JP-1と2の両者が保存されていたことが確認された。このことから、SCP-19XX-JP-2がすでにMC&D社の手に渡ってしまったことが予想される。後日、サイト8100の許可を受領次第、当社にコンタクトを取ることとする。
この報告書によりSCP-19XX-JPは変更されました。
先日はKKKの一員共々世話になった。この槍の柄は既に我々MC&D社が所有している。渡してほしいのであれば、片割れである穂と交換という形にさせてもらう。それ以外の条件は認められない。
ときに諸君等は、この槍の柄と穂が一つに繋がっていた時の出来事を知っているだろうか。1912年、オーストリアの某博物館にてこの槍を目にしたアドルフ・ヒトラーは神か悪魔か超常的な何かに憑り付かれたとされ、1938年ナチス・ドイツはこの槍をオーストリアごと併合して手に入れた。その後ドイツが宣戦布告し各国を侵略していった歴史は言うまでもなく、1945年ベルリンに侵攻したアメリカ軍がこれを奪取し、その後KKKの元に渡ったと記録されているが、この時点ですでに槍は2つに分けられており、彼らの技術ではこれを繋ぎ合わせる事が出来なかった。さもなければKKKはその絶頂期である1920年代の、あるいはそれ以上の勢力を取り戻していただろう。この槍は人間を排他的にし、そして所有者をして歴史に決定的な変革をもたらしめるからだ。我々人類はあまり過ぎた力を手にするべきではない。弊社が柄を、諸君等が穂を収容することで、真にこの槍を『収容した』と言えるだろう。尤も、折があれば是非その穂も弊社が手に入れたい、というのが本心だがね。
株式会社マーシャルカーター&ダーク 渉外部門
アイテム番号: SCP-19XX-JP
オブジェクトクラス: Keter → Euclid → Safe
特別収容プロトコル: SCP-19XX-JPは現在サイト-8107の中央18-4保管ルームに収容されています。当オブジェクトに触れる際はグローブを着用して下さい。また、担当職員各位にはSCP-19XX-JPの精巧な模造品であるSCP-19XX-JP-Aが貸与されます。紛失あるいは損壊した場合は██博士に申し出て下さい。
特別収容プロトコル: SCP-19XX-JPは現在サイト-8107の中央18-4保管ルームに保管されています。担当職員は主担当者と副担当者に分担されます。副担当者は当報告書の閲覧は許可されていません。主担当者は一日2交代や3交代制といった適切な手段により、30分ごとに誰かが当報告書を閲覧して下さい。
主担当者がSCP-19XX-JP及び保管庫に触れることは許可されておらず、各副担当者に対し一時的な持ち出し及び接触を許可する権限のみを有します。持ち出す際は保管庫ごと運び、副担当者が運搬にあたって下さい。当オブジェクトに触れる際は簡易防護服とグローブを着用して下さい。
SCP-19XX-JPを保管庫内以外の場所に持ち出してよいのは15分以内です。それ以上長く取り扱う際は主担当者の監修のもとで最低15分おきに保管庫内に入れてから、もう一度取り出して下さい。30分以上の帯出が認められた場合は深刻な収容違反と見なされサイト管理者および機動部隊ゑ-5(山彦)に通達されます。
特別収容プロトコル: SCP-19XX-JPは現在未収容です。SCP-19XX-JPの被害を防ぐため、職員はサイト内の移動を最小限に抑え、移動の際は防刃性に優れる防護服を着用して下さい。
説明: SCP-19XX-JPはサイト8107に存在する、正体不明のオブジェクトです。直接その姿が目撃されたという事例は無く、後述する複数の傷害事件から一般的な着衣の人間に危害を加えるのに十分な能力を備えていることが判明しています。
SCP-19XX-JPは当サイト内で度々職員や設備に原因不明の傷害事件を引き起こしており、収容グループを組織する原因となりました。機械類の導線4が切断されていたり、職員の皮膚や衣類に刃物で切られたような軽傷が生じることから、当オブジェクトは財団に対し敵対的なオブジェクトと推測され、当サイトでは職員に対し防刃性に優れる防護服の着用義務が発令されました。
補遺1: 19██年█月██日、Cクラス職員の原田███が障害物のない平らな床で転び、同時に彼の防護服の数箇所に刃物で切り付けられたような跡がありました。原田は『何かにつまづいた』と証言しており、この事からSCP-19XX-JPが透明なオブジェクトであるという仮説が立てられ、機動部隊ゑ-5(山彦)が招集されました。この結果SCP-19XX-JPが発見・収容されました。当オブジェクトは重さ約320g、刃渡り約21cmのナイフ状の物体であり、これまでの傷害事件は当オブジェクトが不明瞭な方法で浮遊および自走することで引き起こされていたことが明らかになりました。
SCP-19XX-JPは正確には透明ではなく、「その位置」の視覚情報は盲点のように補完されるようだ。エコーロケーションの結果も似たようなもので、SCP-19XX-JPの存在する方向からはノイズとも形容できる不明瞭な音声が発せられていた。だが複数回ノイズを観測することで、その発信源を特定することに成功した。- 機動部隊ゑ-5(山彦)隊長 █████
補遺2: SCP-19XX-JPの収容から14時間後、当オブジェクトの保管庫から物音が聞こえるという通報により担当職員が確認に向かったところ、保管庫の鍵の金具部分が内側から40%ほど切断されかけていました。同時に、サイト内の職員が誰も当オブジェクトの特徴や収容までの経緯を自力で思い出せず、報告書の閲覧による再確認によって思い出す者がほとんどだったことから、SCP-19XX-JPは透明ではなく反ミーム的性質を持ったオブジェクトであると仮説が立てられました。一般的な職員はSCP-19XX-JPに直接触れるか報告書を閲覧してから約30分~1時間ほど放置すれば当オブジェクトに関する記憶が失われることが確認されています。
実験-19XX-JP-01
対象: SCP-19XX-JP
目的: SCP-19XX-JPが収容状態から脱出する経緯を観察する。
場所: 密閉型実験室。機動部隊ゑ-5(山彦)が協力にあたり、室内の微細な風や音波からSCP-19XX-JPの位置を測定する。
実施方法: SCP-19XX-JPを木箱に収容する。
結果: 20時間が経過してもSCP-19XX-JPは全く動かず、木箱を破壊しなかった。
我々の予想と反する結果となった。実験の条件を、収容直後の状態により近づける必要性があるだろう。- ██博士
実験-19XX-JP-03
対象: SCP-19XX-JP
目的: SCP-19XX-JPが収容状態から脱出する条件を観察する。
場所: 密閉型実験室。今回も機動部隊ゑ-5(山彦)の協力の下行われる。
実施方法: SCP-19XX-JPを木箱に収容する。木箱に何らかの反応が見られるまで、実験参加者および担当職員は当報告書の閲覧を禁じられている。
結果: 54分41秒後、木箱の内側から叩くような音が発せられた。
木箱が叩かれた時、我々は皆実験の目的を忘却していた。実験担当者の一人が報告書を閲覧することで音は止んだ。- ██博士
財団職員、あるいは地球上の人間の誰かがSCP-19XX-JPに対し正しいミームを獲得している間、異常性は鎮まる。だが最も警戒すべきは、そのミームを獲得した唯一の人間が当オブジェクトを所持した場合であるのかも知れない。- 機動部隊ゑ-5(山彦)隊長 █████
補遺3:
SCP-19XX-JPを石膏などにより立体コピーすることで、視覚情報からでも正確なミームを獲得できるようになり、形状や寸法を正確に認識できるようになりました。その情報をもとに、██博士により右図の模造品(SCP-19XX-JPとほぼ同等の約320g。以下、SCP-19XX-JP-Aと呼称)が多数製作されました。SCP-19XX-JP-Aの一つは現在、SCP-19XX-JPに3本のチェーンによって繋がれていますが、その状態でもSCP-19XX-JP-Aにおけるミームが正常に機能し、中期および長期記憶が可能であることが財団職員61名を用いた実験により保証されています。
チェーンが1本でも切断された場合、鎖素子に内蔵されたマイクロチップによりサイト管理者に通達されます。
収容プロトコル改定以降はSCP-19XX-JPの収容違反は現在確認されておらず、オブジェクトクラスがSafeに引き下げられました。
SCP-19XX-JPの行動原理とは自己の存在の主張である。凶器としての側面を持つ反ミーム的オブジェクト故に我々に危害を加えることが最短の近道と考えていたようだ。だがこの模造品は言わば、難きことを易しく理解するための「図」である。これ以降収容違反が発生した場合でも、括りつけた模造品によって被害は最小限に抑えられるはずだ。ついでに、暗器として悪用されるリスクも無くなるんじゃないかね。- ██博士