Sato-sato

SCP-XXX-JP

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは梱包材を用いて三重に包んだうえで一般規格のボール箱に封入、中型物品保管用金庫に収納します。持ち出し・実験はセキュリティクリアランス3以上の研究員にのみ許可されます。実験の際には武装した職員が3名以上配置され、不測の事態への対処及び実験後に残存したSCP-XXX-JP-2の終了措置を行います。

説明: SCP-XXX-JPは縦75cm・横50cmのアルミ製パネル看板です。上部に「動物注意!!」の文字が入れられ、全面に穴から半ば身を乗り出すSCP-XXX-JP-2の写真が載せられています。また設置方法は一般的なパネル看板と同様です。収容当時から経年劣化の様子は見られず、損傷した事例も現在まで確認されていません。SCP-XXX-JPは十分な形で取り付けられた際に異常性を発揮し、SCP-XXX-JP-2をその表面から排出します。実験の結果から、この排出数には限度が無いと推測されます。

SCP-XXX-JP-2はホンドダヌキによく似た身体的特徴を持つ生物です。通常のホンドダヌキに比べて爪牙が発達し、全身の筋肉量も増大しています。知能も高く、簡単な器具を扱うことができます。非常に凶暴かつ攻撃的な性質で、食事や睡眠は必要としていないように見えますが、SCP-XXX-JPからおよそ1kmより離れると急激に衰弱します。SCP-XXX-JPからは、写真が立体化し写真の個体が自発的に飛び出す、もしくは後続する個体に押し出されるような形で出現します。

SCP-XXX-JP-2は自動車両を強烈に憎悪しているようで、しばしば集団で走行中の車両を襲撃します。この行動で群れは非常に高度な連携を見せ、何体かが車両に正面から体当たりし、停止した車両を群れで包囲して執拗に攻撃を加えます。この時自動車の運転手と同乗者も攻撃対象となりますが、車両から離れるとSCP-XXX-JP-2の注意はこれらの人物から失われるようです。SCP-XXX-JP-2はこの襲撃で自身が負傷もしくは死亡することを全く恐れる様子を見せず、攻撃には自動車を破壊するに足る力を発揮します。この「狩り」の際にはSCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-2によって道路に近い場所に取り付けられ、応援の個体を必要に応じて排出します。事を成し終えた後、ほとんどの個体はSCP-XXX-JPの「内部」に戻りますが、一部の個体が残ってSCP-XXX-JPを運搬、次の狩場を求め移動します。

SCP-XXX-JPははじめ岩手県南部の山林部で発見された、「異常に攻撃的なホンドタヌキの一群」として財団に認知されていました。しかし200█/██/██、東北自動車道長者原サービスエリア付近の高速道において大規模な衝突事故が発生した際、現場付近にタヌキの死骸が数多く散乱していたことをきっかけに、その発生源についての疑惑が浮上しました。この事案の後だけでも、SCP-XXX-JPは財団に収容されるまでに大小24件の交通事故と襲撃事件を引き起こし、2██台に上る自動車が被害に遭いました。

補遺:インタビューログSCP-XXX-JP - 日付200█/██/██

対象: ██ ██氏(以下、"対象者"と表記)

インタビュアー: エージェント・須田野

付記: ██氏は長者原サービスエリア付近での事案の被害者であり、このインタビューは氏への警察関係者による聞き取り調査という名目で行われています。

<録音開始>

インタビュアー: それでは、インタビューを開始します。██さん、事故当時の状況について教えていただけますか。

対象者: 分かりました…..私たちはあの日、高速道路で田舎に帰るところでありました。子供たちは疲れて眠り、私は助手席の妻と他愛ない話をしながら車を走らせていました。…..長者原のあたりに着くころ、前方に立ち上る煙と渋滞が目に入りました。

インタビュアー: 事態の異常性に気づいたのはいつ頃ですか?

対象者: 渋滞の列に入って少ししてでしょうか…..交通事故に出くわしてしまって、帰りが遅くなりそうだなあ、なんて思っていたんですがね…..遠くから破壊音がして、見える煙の量がね、増えていることに気づいたんです。私は妻と、顔を見合わせました。そのあと、その…..あの、…..えー…….

インタビュアー: ██さん、ゆっくりで構いません、落ち着いてお話してください。大丈夫、大丈夫ですよ。

対象者: ええ…..あれは、一体なんだったんでしょうか…..突然、あれは目に入ってきたんです。タヌキの大群です、ええ。…..目はぐわと見開かれて血走り、牙からは涎を飛び散らせて…..あたりの車に取り付いて、手当たり次第叩きのめしていました。後から後からやってきて、私たちの車もすぐにタヌキに覆われました。ガラスは割られ、ボンネットもドアも引きちぎられました。私たちは恐れおののいて声も出ずにいて…..「死」の文字が頭を埋めました。しかし…..あれは私たちを放り出した後、何もしてこなかったのです。

インタビュアー: 何もしてこなかった?

対象者: ええ…..幸運なことだとは思います。しかし、未だに恐怖がぬぐえないのです。あの、見下すでもなく、こちらを何とも思っていないような目。私たちはタヌキに見向きもされず、ただ震えて抱き合い、為す術なく私たちの愛車が、思い出が、潰されるのを見ていました。全くの、全くの無力でした。あれは…..なんなんでしょう?あんな凶暴で、冷酷な…..[声を詰まらせる]

インタビュアー: ██さん、心中お察しいたします。いずれにせよ我々は、あれを野放しにする気はありません。これ以上被害を広げぬよう、必ずあれを捕捉し、確保することをあなたに約束します。

<録音終了>