アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの状態を常に観察するために、出現する区域内の該当する監視カメラを管理し、記録を行ってください。記録した映像はコピーし、公開用として加工、その後ダミーとして保存してください。オリジナルの映像はサイト-81██で保管され、検証に回されます。
該当する監視カメラが破損した場合には修繕、補修を行ってください。SCP-XXX-JPが写りこんだ状態でSCP-XXX-JPの破損が確認された場合、周辺のSCP-XXX-JP出現候補の監視カメラを調査し、新たなSCP-XXX-JPの出現場所を割り出してください。
SCP-XXX-JPが該当カメラに写った人物に反応を示した場合、即座に保護を行い、必要な場合は記憶処理を行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは██府███市の[編集済み]商店街周辺に設置された監視カメラでのみ確認できる非実体の存在です。SCP-XXX-JPは黒装束に黒頭巾を着用した黒子のような人型実体として観測されます。常に右手に[削除済]社製のものと酷似した黒いハンディカメラを持っています。基本的にハンディカメラは監視カメラのほうに向け、自身も監視カメラに向かって体の正面を向けて直立する通常行動を行っています。SCP-XXX-JPに対して物理的な干渉は出来ず、意思疎通を成功させた例はありませんが、人間の一部行動に反応する姿を観測されており、外界の様子を観測することが可能であると考えられます。
SCP-XXX-JPが反応を示す行動のリスト
傷害
器物破損
万引き
引ったくり
商店街での自転車通行
20歳未満の人間の深夜徘徊
以上の行動を行った対象がSCP-XXX-JP周辺で確認された場合、即座に対象にハンディカメラを向けます。加えて対象を指差したり、対象の傍に接近し監視カメラに向けて手を振ったり、頭部を左手で平手打ちするなどのアピールを繰り返します。対象はこの動作に気づくことはなく、物理的な影響もありません。この動作は対象が監視カメラの画面外に出ることで中断され、その後は通常の動作に戻ります。
SCP-XXX-JPは[編集済]商店街に監視カメラが導入された19██年から確認されています。監視カメラに写る不審な人物として通報、調査の過程で警察に潜入していた財団のエージェントに捕捉され、収容プロトコルが制定されました。
SCP-XXX-JPの存在を確認できる監視カメラは合計5台であり、SCP-XXX-JPは一定の時刻になると各々の映像内を瞬間的に移動します。SCP-XXX-JPが写っている状態で監視カメラを取り外す実験を行ったところ、SCP-XXX-JPはそれまで異常性を見せていなかった近辺の監視カメラ映像に移動し、以降は取り外された監視カメラに写らなくなりました。それぞれのカメラにはナンバーが割り振られています。
ナンバー |
出現時刻 |
場所 |
詳細 |
SC-11 |
05:00~08:59 |
[編集済み]商店街 |
中央十字路天井に設置されている全方位式監視カメラ |
SC-12 |
09:00~15:59 |
スーパー██ |
商店街内にある店舗。店内に設置した固定式カメラ。左奥の角にあり、店内の全体を捉えることができます。 |
SC-13 |
16:00~19:59 |
███駅 |
一番線のホームに設置されている固定式カメラ。 |
SC-14 |
20:00~23:59 |
商店街付近のコンビニ |
店内に設置されているカメラ。 |
SC-15 |
02:00~04:59 |
[編集済み]通り |
柱の上部に設置されている固定式監視カメラ。実験でカメラを取り外した後、存在が確認できなくなる |
SC-16 |
02:00~04:59 |
[編集済み]商店街 |
西口付近に設置されている固定式監視カメラ。SC-15が取り外された後、存在が確認できるようになった |
映像記録-01
記録日時:19██/6/15
対象: SCP-XXX-JP
カメラナンバー: SC-12
付記:SCP-XXX-JPの代表的な行動、人間への反応が記録されている映像です。重要度の低い箇所は編集されています。
<再生開始>
09:00: 開店時刻でないため、電灯はついておらず店は薄暗い。SCP-XXX-JPが手前の棚の前に出現。出現時、SCP-XXX-JPはSC-12に対して頭を下げる。その後、SC-12にハンディカメラを向ける通常行動を始め、硬直する。
09:30: 社員の朝礼、店員による棚の陳列などが行われる。この間、目の前を店員が通ってもSCP-XXX-JPはSC-12にハンディカメラを向けたままだった。
10:00: スーパーが開店。数人の客が入店するがSCP-XXX-JPは反応なし。時折左肩を回したり、首を捻ったりするものの、それ以上の行動はせず直立したままだった。
13:32: SCP-XXX-JPがSC-12内に写る客(以下、対象-1と指定)に反応。SCP-XXX-JPはその場から移動し、離れた陳列棚の影にいた対象-1の元まで移動。SCP-XXX-JPは対象-1を左手で指差したり、SC-12に向けて手を振ったりなどのアピールを行う。対象-1はSCP-XXX-JPに気付いた様子はないが、しきりに周りを見回していた。対象-1がSC-12の範囲外に出ると、出た方向をしばらく指差していた。
13:47: SCP-XXX-JPは出現した位置に戻り、ハンディカメラをSC-12に向ける。
13:50: 店員として潜入していたエージェントが店外へ出た対象-1を確保し、関係者出入り口を通じて店員の待機室へ移動する姿がSC-12に写る。SCP-XXX-JPは反応しない。
13:51: SCP-XXX-JPが背後を振り返り、待機室の方向に頭部を向ける。SCP-XXX-JPは関係者出入り口の前まで移動し、中を覗き込もうとする動作を3分ほど繰り返す。SCP-XXX-JPは出入り口から離れると、スキップをしながら出現位置まで戻る。出現位置まで戻ったSCP-XXX-JPは両腕を天井に向け、万歳と形容されるポーズを取った。その後、通常行動に戻った。
15:59: SCP-XXX-JPが消失。16:00にSC-13に出現を確認。
<再生終了>
報告書: 対象-1をエージェントがインタビューしたところ、付近に住む47歳の女性でした。対象-1は鞄の中に会計を済ませていない商品を忍ばせていました。対象-1を調査したところ、他の店舗でも窃盗を行っていた常習犯でした。聴取や精神分析の結果を鑑みてもSCP-XXX-JPが精神的影響を及ぼした可能性は低いと考えられます。対象-1には一部記憶処理を施し、窃盗の容疑で警察へ引き渡しました-吹田博士
映像記録-02
記録日時:20██/6/24
対象: SCP-XXX-JP
カメラナンバー: SC-13
<再生開始>
16:00: SCP-XXX-JPが一番線のホームに出現。出現時、SCP-XXX-JPはSC-13に対して頭を下げる。その後、SC-13にハンディカメラを向ける通常行動を始め、硬直する。
17:00: 帰宅する乗客が増え、ホームが混み合い始める。多くの客がSCP-XXX-JP付近と通り過ぎるものの、SCP-XXX-JP自身が乗客を避けてぶつからないようにしている様に見える。その間もハンディカメラをSC-13に向けたままだった。
18:16: ホームを歩いていた児童(以下、対象-2と指定)が線路側に転落する。対象-2が転落したことに談笑している保護者らしき女性は気付いた様子がなく、周りの乗客も気付いていない。転落から数秒後、SCP-XXX-JPがハンディカメラをSC-13に向けたまま、線路を覗き込む。その後、SCP-XXX-JPが駆け足で出現位置から移動し、対象-2が転落した地点から線路を覗き込む動作を行う。SCP-XXX-JPは線路とSC-13を交互に見つめて、SC-13に向けて手を振る、線路を指差すなどのアピールを何度も行った。
18:17: 周りの乗客、さらに保護者が対象-2が転落したことに気付き、騒然となる。SCP-XXX-JPは人ごみに飲まれそうな中でも、SC-13へのアピールを続けた。現場監督者などの協議の結果、駅員として潜入していたエージェントを対象-2の保護を目的にホームへと向かわせた。
18:18: エージェントがホームに到着。ホームに居合わせた乗客と協力し、対象-2の保護を行う。救出の間、SCP-XXX-JPはエージェント、時計、時刻表の方向に頭を忙しなく動かしていた。対象-2とエージェントがホームに上がったとき、SCP-XXX-JPは両手で激しく拍手するような動作を取る。直後、SCP-XXX-JPは拍手する行為が所持しているハンディカメラを叩いていることに気付いたような仕草を取り、左手で右手の甲を叩く動作に変更した。
18:20: エージェントが対象-2の保護を終え、怪我の手当てを理由に保護者と共に駅員室へ連れそう。SCP-XXX-JPはその場に腰を下ろし、天井を見上げていた。
18:23: SCP-XXX-JPが立ち上がり、出現した位置に戻る。通常行動に戻る寸前、SCP-XXX-JPはSC-13に向けて左手に親指を立てるアピールを行った。その後、時折ハンディカメラをチェックする動作がみられたが、特記するような行動は見られなかった。
19:59: SCP-XXX-JPが消失。20:00にSC-14に出現を確認。
<再生終了>
報告書: 保護した対象-2を検査、インタビューを行いましたが、精神的な影響は確認されませんでした。保護者の女性も「友人との談笑でうっかりしていた」と供述しています。こちらも精神的な影響はみられません。不本意ではありますが、SCP-XXX-JPのおかげで早期的な対応が出来たと言わざる得ないでしょう。SCP-XXX-JPには監視カメラ内に写る人間の動向を把握しているのかもしれません。-吹田博士
映像記録-03
記録日時:20██/8/12
対象: SCP-XXX-JP
カメラナンバー: SC-16
<再生開始>
02:00: SCP-XXX-JPが道の中央に出現。出現時、SCP-XXX-JPはSC-16に対して頭を下げる。その後、SC-16にハンディカメラを向ける通常行動を始め、硬直する。
02:13: SC-16に男女の中学生の児童(以下、男児を対象-3、女児を対象-4と指定)が写りこむ。写りこんだ対象-3と対象-4にSCP-XXX-JPが接近。対象-3、対象-4人差し指を刺して、注意しているような仕草が見られる。対象両名は気付いた様子はなく、手元のスマートフォンの画面を注視して歩いている。
02:14: 対象-3は商店街に設置された業務用コンセントを使えないか探り、対象-4が壁際に座り込んでいる。SCP-XXX-JPは対象-3、対象-4の頭を叩くなどの行為を行ったが両名に影響は見られなかった。
02:15: 対象-3、対象-4が画面外へと移動する。SCP-XXX-JPは対象両名が消えた方向へ何度も指を刺していたが、通常行動に戻った。
03:44: 対象-3、対象-4が再びSC-16に写りこむ。SCP-XXX-JPは頭を叩くなどのほか、対象の目の前に出る、対象の周りを飛び回るなどの行為を行ったがすり抜けるなどして影響はみられなかった。SC-16外に対象が出て行くとその場で地団駄を踏み、ハンディカメラを投げつけるような動作を行おうとした。ハンディカメラを投げる直前で行為は停止し、その後、出現位置に戻った。
04:59: SCP-XXX-JPが消失。05:00にSC-11に出現を確認。
<再生終了>
報告書: この記録の数日後、対象-3、対象-4の殺害、死体遺棄が確認されました。容疑者は該当区域である███市の男性でした。SCP-XXX-JPとの関連性が調査されましたが、SCP-XXX-JPの影響下にある監視カメラには男性は写っておらず、精神鑑定などでも男性の衝動的な犯行であったと判断されました。この記録映像は加工され、証拠映像の一つとして警察や報道機関へ提出されました。深夜徘徊する児童へのSCP-XXX-JPの反応は以前から観察されており、すでに児童の精神的影響の観察などは済んでいたため、被害者となった対象両名への保護やインタビューは行われませんでした。-吹田博士
映像記録-04
記録日時:20██/8/21
対象: SCP-XXX-JP
カメラナンバー: SC-16
付記: 映像記録-03から9日経過した映像です。
<再生開始>
02:00: SCP-XXX-JPが道の中央に出現。出現時、SCP-XXX-JPは頭部を地面に向けたままで、SC-16に対して何の動作も行わなかった。
02:05: SCP-XXX-JPが対象-4が座り込んでいた位置に移動。膝を地面について、硬直する。
02:12 SCP-XXX-JPが右手のハンディカメラを地面に叩きつける動作を行う。ハンディカメラは叩きつけられることにより、側面の画面が砕け散り部品が回りに飛び散っているように見える。SCP-XXX-JPはその様子に構う様子はなく、行為を続けた。
02:24: SCP-XXX-JPが損傷したハンディカメラをSC-16に投げつける。SC-16に直撃する様が映像として記録されていたが、SC-16には損傷や投げつけられた形跡はなかった。SCP-XXX-JPは息を切らしているかのように肩を上下に動かしていた。
02:26: SCP-XXX-JPがそばの壁を両手で殴る動作を行う。拳からは傷が確認され、血ような液体が流れるが、SCP-XXX-JPは動作を続けた。
02:30: SCP-XXX-JPが前述の行為を中断、両手で閉店した店のシャッターに触れる。シャッターの表面に液体を擦り付けて、図形、もしくは文字と思われるものを描こうとする。
02:32: シャッターに液体を擦り付ける行為を中断。シャッターに描かれた液体はところどころ途切れており、判別は不可能だった。
02:33: SCP-XXX-JPが地面にうなだれ、両膝、両手をついた状態で硬直する。
02:35: SCP-XXX-JPが消失。共に損傷したハンディカメラ、カメラの部品、シャッターに描かれた液体も消失した。05:00にSC-11に出現を確認。SC-11に出現したSCP-XXX-JPは両手に包帯を巻いており、ハンディカメラも新しいものになっていた。
<再生終了>
報告書: 対象-3、対象-4の死亡が全国的に報道された翌日のことで、SCP-XXX-JPの自傷行為や規定時刻前に消えるなどの例外的行動が確認できる記録です。これによりSCP-XXX-JPが監視カメラに映っている以外の場所で外界の情報を得ている可能性があげられました。加えて対象-3、対象-4の殺害が第三者的なものだったことから、現実改変の可能性やSCP-XXX-JPが未来の事象を感知していた可能性もありますが、調査中で憶測の範疇を出ません。どちらにせよ、更なる被害の拡大はSCP-XXX-JPの予想外の行動に繋がる可能性があるため、SCP-XXX-JPが反応を示した対象に対して保護の義務化を収容プロトコルに導入することを検討していきたいと思います。-吹田博士
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの発生する住居周辺にはフェンスを設置し、警備員を最低一名配置し、一般人の侵入を防いでください。一般人が住居内に侵入した場合、警備員は一般人が住居から退出してから確保してください。確保された一般人はインタビューの後、一週間SCP-XXX-JP-Aの影響を受けていないか、経過観察を受けます。
一般人、もしくは職員がSCP-XXX-JP-Aの影響を受け対象になっていることが確認された場合、個室に移送し観測を行ってください。対象の生存が確認された場合、即座に医療処置を行い、一般人であれば記憶処理を行い開放してください。この記憶処理の際、SCP-XXX-JPに関する出来事は断片的に記憶させ、「夢であった」と認識するように記憶処理を行ってください。一般人が死亡していた場合はカバーストーリー「山中遭難」を流布してください。
現在SCP-XXX-JPに関する実験はクリアランス4以上の職員の許可なしに行うことは出来ません。
説明: SCP-XXX-JPは奈良県██郡、██山中の無人の住居で観測される空間異常です。SCP-XXX-JPの発生源である住居は平屋建ての木造建築であり、土地の所有者である菅田太一氏によって建築されました。所有者であった菅田太一氏は死亡しており、土地の所有権は親族に引き継がれましたが、住居は██年間無人でした。SCP-XXX-JP内にはSCP-XXX-JP-A(後述)と呼称される生物実体郡が不定期に出現し、生息しています。SCP-XXX-JP-A出現時には微細なヒューム値の変動が観測されるため、空間異常として認定されています。
SCP-XXX-JP-Aはクモ目ハエトリグモ科亜種と思われる節足動物です。アダンソンハエトリ(学名:Hasarius adansoni )に非常に酷似しており、外観での区別は困難です。SCP-XXX-JP-A個体は成体しか確認されておらず、幼体や卵などの存在は確認されていません。出現したSCP-XXX-JP-Aは建築物の天井に自ら放出した糸をつけ、空中でぶら下がる体勢で過ごします。この間、捕食活動など生命活動に必要な行動を行わないため、出現した個体の大半が餓死によってぶらさがった体勢のまま死亡しています。SCP-XXX-JP-Aが自発的に屋外に出ることはありません。
人間がSCP-XXX-JP-Aを殺傷、もしくは糸を切るなどの危害を加えた場合、特異性が発揮されます。危害を加えた人間を対象と指定します。対象はSCP-XXX-JP-Aに危害を加えてから一週間以内に「腕に蜘蛛の糸のようなものが絡み付いている」と認識します。この認識は物理的な洗浄や記憶処理では取り払うことは出来ません。この認識が現れ、24時間以内に対象は白い粘着質の糸によって上部へと吊り上げられ、対象は基底次元から消失します。対象は消失している間、「消失地点から上部に引っ張られ、地表から2mほどの位置で糸によってぶら下げられていた」と証言しており基底次元の視覚情報や聴覚情報を観測することが可能です。この観測は一方的なものであり、対象の声や姿は基底次元からの観測は不可能でした。消失している間、対象は糸によって固定され食事や水分補給が行えず、消失期間によっては餓死します。消失期間は不定期で最短で4日、最長で11年3ヶ月までの期間が確認されています。対象は消失した地点から2mほど上部の位置に再出現し、天井があれば糸で腕を固定された状態で発見されます。消失地点の上部に天井がない場合は、再出現地点から落下します。この際、対象の消失中に脱いだ衣服や靴、排泄した尿や糞なども再出現地点の地面に出現します。
SCP-XXX-JPは██山中にて異常物品の調査に当たっていたエージェント・金平により発見され、財団に存在を補足されました。その際にエージェント・金平はSCP-XXX-JP-Aの特異性の影響を受け、6日間消失していましたが消失箇所が財団施設内だったため、早期の処置が行われ、現在は通常業務に復帰しています。
インタビュー記録
対象: D-6728
インタビュアー: 吹田博士
付記: D-6728は実験によりSCP-XXX-JP内に侵入し調査を行った際、SCP-XXX-JP-Aを殺傷。影響を受け、5日間消失しており、再出現時は衰弱していた。インタビュー時は治療により日常生活が可能な程度に回復している。
<録音開始>
吹田博士: インタビューをはじめましょう、よろしくD-6728。
D-6728: よろしく、博士。
吹田博士: 今日はSCP-XXX-JP-Aの影響を受けていた間のことを聞かせてほしい。覚えていますか?
D-6728: そういっても博士、吊るされてただけだぜ。腹が減りすぎて細かいことなんて覚えてねえし。
吹田博士: そのとき思ってたことを話してくれるだけでいいんです。全員が生きて帰ってこれるものじゃない、生存者の情報は貴重なんですよ。
D-6728: わかったよ。あー最初は博士が言ってたように、腕にネバッとした糸が絡み付いてきたな。んで、暴れる暇も無く上に引っ張られて、ぶら下げられた。暴れたし、あんたらに助けも求めたけど、無駄だった。無視してたんじゃないだろうな?
吹田博士: 君の姿も声も聞こえませんでしたよ。先に伝えてたはずです、こっちからはみえなくなる、と。
D-6728: 本当なんだが嘘なんだか。あんたらのことだから知ってるだろうけど、そのあとはずっと、そのままだ。そっちの姿は見えるのに、声を出しても暴れても小便たらしても気付きやしねえ。早く終わってくれって思ってたよ。のどが渇いてきて、腹も減ってきて、だからつっても何も出来ない。別のこと考えれば空腹も少しマシになると思って、とにかく何か考えてた。
吹田博士: 具体的には?
D-6728: 最初に浮かんだのはあんたらへの恨み言だな。何度もわけわからねえ実験に参加させやがって。最初はあんたらのことばかり攻めてた。そしたら、何でこんな目に会わなきゃならねえんだって、ふと思ったんだよ。
吹田博士: 心当たりはあったんですか、D-6728。
D-6728: まず浮かんだのは、このモルモットみてえな扱いをされるようになった原因についてだ。手段として最悪なことをしたと思ってる、法的にも最低だったみたいだな。けどアレはアイツも悪かったんだぜ? あんな死んだ方がマシって思える目に合わされるほどじゃねえ。
吹田博士: 相当な恨みのようですね。ほかに心当たりは?
D-6728: そりゃまあ、あった。俺のせいで人生台無しになった奴はいる。だけど、どうしろってんだよ。壊しちまったものは戻らないし、それを埋め合わせるだけの力なんて俺にはねえよ。だから、とにかく思い出してた。
吹田博士: 反省するつもりになったんですか?
D-6728: 反省なんて今更だ、さっき言ったとおり俺のしでかしたことはどうにもならねえし、どれだけ反省したってクズの本質は変わらねえだろ。色々思い出せたぜ、小学校いじめてた奴の名前とか母親初めて殴ったときとかよ。すっかり忘れてて、どうでもいいって思ってたことだった。その頃にはほとんど空腹なんて感じなくなってた。けど、ほとんど意識もあってないようなもんだったな。だが、忘れちゃいけねえってことだけはハッキリわかった。
吹田博士: なんですか?
D-6728: 俺がとんでもねえクズ野郎だったってことさ。どれだけ悔やもうがそれだけは変わらねえ。
<録音終了>
終了報告書: D-6728に精神的な影響どころか反省もみられませんでした。竹内博士の提唱していた過去の罪について懺悔するかどうかで、消失期間が決まる、という説はどうやら正しくないようです。彼は開き直っていますから。彼が最高刑に処された理由が良くわかりましたよ。体のほうはもう大丈夫そうですし、記憶処理を行った後、また頑張ってもらいましょう-吹田博士
補遺
SCP-███-JPの実験中、D-6728がSCP-XXX-JP-Aの特異性によって消失、50日後に再出現し、死亡が確認されました。SCP-XXX-JP-Aの消失の生存者に対して特異性が再発する例はD-6728が初めてであり、消失のタイミングなどから条件は記憶処理によるものではないかと考えられています。これにより、一度でもSCP-XXX-JP-Aの影響を受け、生存した対象にSCP-XXX-JPに関する記憶の処理を極力行わないよう、収容プロトコルが改訂されました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの発生条件を満たした共同住宅のエントランスには監視体制を敷き、SCP-XXX-JP-1の出現を警戒してください。SCP-XXX-JP-1の出現が確認された場合、職員を派遣し無力化、または捕縛を行ってください。SCP-XXX-JPに関する実験は担当者の許可を得てください。またSCP-XXX-JPの発生する共同住宅を減らすため、カバーストーリー「古臭い迷信」を流布してください。
説明: SCP-XXX-JPは条件を満たした共同住宅で発生する現象の総称です。SCP-XXX-JPの発生する共同住宅の条件は以下の通りです。
- オートロック式のエントランスである。
- エレベーターが設置されている。
- 各階の4号室に当たる部屋が5号室として表記されている。
SCP-XXX-JPの影響範囲は日本全土と考えられており、日本国内で条件を満たした共同住宅において不定期に発生しています。SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-1と指定される人型実体とSCP-XXX-JP-Aと指定される異空間によって構成されます。
SCP-XXX-JP-1は6~12歳ほどの少年少女の外観をした人型実体です。出現する共同住宅によって年齢や性別などの外観は変化しますが、調査によって全ての個体が記憶と人格を共有していると結論付けられています。SCP-XXX-JP-1は共同住宅のエントランス前に瞬間的に出現します。消失までの時間は約1時間程度ですが、財団が確認した限り最大14時間出現していた例も確認されています。SCP-XXX-JP-1の消失は出現時と同じく瞬間的なもののため、物理的な拘束などは無意味とされています。出現したSCP-XXX-JP-1はエントランス内に侵入すると、インターホン前に立ち尽くしたり、エントランス内を歩き回ったりなどの動作を行います。この際、能動的な行動はせず、出入りする住民に対しては視線を送るなどの行為で留まります。SCP-XXX-JP-1は出入りする住民や来客などに「困っている」という印象を与えます。印象を受けた人物は多くの場合、SCP-XXX-JP-1に話しかけて事情を聞くという行動をします(SCP-XXX-JP-1に話しかけた人物を対象と指定)。SCP-XXX-JP-1は総じて「○階(対象が訪ねる予定の階)の友達の家に遊びに来たのだが、部屋番号を忘れてしまった」といった旨の返答を行います。対象の反応は「SCP-XXX-JP-1の話を聞くだけ」「目的の階層の部屋番号を手当たり次第に押して確認してみると助言する」など答える対象によって分かれます。SCP-XXX-JP-1はほとんどの提案に否定的ですが、対象が「行き先が同じ階だから同行しよう」と提案した場合にのみ、提案を肯定し行動に実行します。SCP-XXX-JP-1は対象とエントランスに侵入すると、エレベーターに乗り込みます。SCP-XXX-JP-1と対象が乗り込んだエレベーターは対象の目的とする階に向かう場合にのみ、SCP-XXX-JP-Aと指定される異空間に繋がります。
SCP-XXX-JP-Aは基底次元を模した異空間です。後述のSCP-XXX-JP-A-1を除いて基底次元との外見上の違いはありません。侵入後エレベーターで他の階に移動することで脱出は可能ですが、SCP-XXX-JP-Aに再度の侵入は不可能になります。無線などの通信は行うことが出来ますが、GPSなどはエレベーター内で対象が停止している状態で表示され続けます。SCP-XXX-JP-Aの内部は基底次元の集合住宅を再現していますが、空間自体の範囲は対象の目的の階しか形成されておらず、階段などで移動を行おうとすると不可視の障壁によって阻まれます。各部屋も鍵で施錠することは出来ず、ドアノブは固定されているため開くことは出来ません。SCP-XXX-JP-Aは外観上、大きな違いはありませんが本来5号室となっている部屋の表札が造花などの装飾によって隠されており、部屋番号や表札の名前を確認することができません(この部屋をSCP-XXX-JP-A-1と指定)。多くの場合、SCP-XXX-JP-AまでSCP-XXX-JP-1を案内した対象は目的地へ向かおうとしますが、SCP-XXX-JP-1は謝礼などの理由をつけてSCP-XXX-JP-A-1の前に誘導します。誘導が成功しなかった場合でも、SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JP-A-1のインターホンを押します。インターホンを押して数秒後、SCP-XXX-JP-A-1の扉が開かれます。開かれた瞬間に基底次元とSCP-XXX-JP-Aとの繋がりは完全に消失し、無線による通信やGPS信号も完全に消失します。この現象のためSCP-XXX-JP-A-1内部の様子を観測することは出来ていません。この時点でSCP-XXX-JP-A内部にいた対象は生死は不明で、帰還者も確認されていません。
SCP-XXX-JPは20██年から頻発に発生した集合住宅での失踪事件とSCP-XXX-JP-Aからの帰還者によるSNSの書き込みが財団の目に留まり発見されました。事件に関係した人物には記憶処理を施し、失踪した人物に関してはカバーストーリーが適用されました。
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