rta_tech
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「これからもよろしくお願いします。」

私は財団のエージェントだった。ほんの数年前までは。
今は財団のフロント企業で働いているから、今でもエージェントであることには変わっていないのかもしれない。

2年前にここに配属されてから、私は正規のエージェントの支援をしている。そんなある日のことだった。私は上司の者から仕事を受けることになった。

「東弊重工の動向を監視してくれないか。」
呼び出しに応じ、久しぶりにサイト-8101の上司のデスクに向かうと、上司は昔のように煙草を吹かしながら言った。

その煙の匂いはかつての記憶を思い出させ、たった数年前なのに酷く懐かしく思われた。

「東弊重工と言えば君も知っての通り依頼を受けてカラオケや金魚などのオブジェクトを作る町工場のようなところだ。
君のことだ。失敗はないと思うが、油断はするなよ。」

何故"今"になって私に、とは思うが近々人材募集を行う予定らしい。私は左遷されたのかもしれない。
ただ、企業に取り入った方が情報を集めやすいのもまた事実。
「わかりました。私でよければ引き受けましょう。」

馬鹿なことを考えている場合ではないな。元のポストに戻るためには失敗は許されないのだから。

上司に頭を下げ、私はデスクを後にした。

その後、私は人材募集の話を確認するために金属加工会社の社員に扮して東弊重工に出向いた。

担当したのは営業部………ではなく人事部の佐藤という男だった。

「いやぁ、すみませんね、ちょうど今営業部のものが出払っていましてですね。えっとお電話頂いた件ですね。
■■の■■■さん。」
と、佐藤は貼りつけたような笑顔で対応した。情報部門の話によると、ここは財団との押し入りなどで人が多く辞めていったらしい。これが本当であれば、"今いない"のでは無く"もう居ない"のでは無いだろうか。
だがまぁ、それは後で聞き出すとしよう。

「えーっと、そうですね……。うちはだいたいが自社生産なのでそこまで必要ではないんですが……。
えー、じゃあ、こんな部品とか作れたりしませんか?」
そう言って佐藤は1枚の資料を差し出した。

ここで受ける仕事は、ただのカモフラージュでしかない。だから、真剣に見る必要はなかったのだが、資料には財団が"収容したはずの"技術がそこに書かれていた。

「これは一体?」
私が平静を保って尋ねると、その言葉を待っていたと言わんばかりに佐藤は頬を緩ませた。

「詳しくは特許出願中なので言えないのですが、それは私どもの会社で理論から設計までされたメビウスの輪の表裏一体性を転じた部品です。」
「なるほど。えっと、つまりどういうことでしょう?」

[佐藤が表裏一体性に関するアバウトな説明と部品の紹介をする]

なるほど。それならば、理論上でしか無かったことが可能となる訳か。だからあんなものが…。

「ただ、ここでは、設備と人員が不足していまして、外注という形にしようかなと。なので、今回のお申し出は渡りに船だったのですよ。さも狙ったかのように。」
「そうだったんですね。ところで、人員が不足しているとは…?何かあったんです?」
「ああ、えっと少々、企業間でのいざこざで使える人材が減ってしまいまして…」

「ああ、すみません…。」
「謝ることは無いですよ…事実ですから…。」

「では取り敢えず…。」
「これからもよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそお願い致します。」

どうやら、まだ色々と調査が必要のようだ。
私は
監視者オブザーバーなのだから。