底辺研究員の下書きレポート
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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid

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SCP-XXX-JP、初期収容に際し竪破山近辺にて撮影。

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは

SCP-XXX-JP-A収容房は常時無菌室相当の衛生環境を保持し、基本設備として寝具のみが配置されます。その他の備品は通常の人型オブジェクト収容房に用いられる範囲内で当人の要望があった場合にのみ支給されます。後期段階のSCP-XXX-JP-Aには刃の露出量を最低限に調整した医療用メスが支給され、以後医療者の常時監視下のもと限定的な自傷行為が許可されます。SCP-XXX-JP-Aの生命維持の為、その後の身体状況に応じて薬剤投与ならびに輸血といった対処が成されます。

説明: SCP-XXX-JPは全長約130cm、概ねヒトに類似した筒状の胴体・手足を持つ未知の存在です。その体表面は有機物を多量に含む土壌によって組成される事が採取された試料より判明していますが、現状内層の組成物質が同様であるかの特定までには至っていません。全身を覆うように一定間隔で孔が開いており、加えてオブジェクトの頭部にあたる部位は漏斗状の構造に形成されています。オブジェクト内部は空洞であると推測されますが、その空間は影に似た黒色の非物質的実体により満たされており、前述の孔や漏斗状器官などからオブジェクト内部を観測する試みは全て失敗しています。SCP-XXX-JPは自律行動が可能であり、時速0.5km以下という低速ながら二足歩行による移動を行います。現時点では、他の存在に対してSCP-XXX-JPが直接何らかの敵対的行動をとったという報告は確認されていません。

SCP-XXX-JPは、自らを直接視認1した対象にα症状(軽度)/β症状(重度)に分けられる異常効果を与えます。いくつかの試験に基づき、これはSCP-XXX-JP本体ではなく、その体表に存在する開口部 及びその内部を満たす黒色実体への目視をトリガーとする事が指摘されました。α症状への罹患はその体表の孔のみに対する5秒未満並びに1度までの目視によってもたらされ、それは「自身が何者かに見られている」「自身の認知できぬ何らかが周囲に存在する」という統合失調症患者における注察妄想に類似した異常な認識という形で現れます。この症状に陥った罹患者の明確な完治はこれまで確認されていませんが、前述した精神疾患に対して一般的に行われる薬事療法・精神療法・リハビリテーションといった治療に一定の効果があると報告されています。β症状はSCP-XXX-JP体表の孔に対する5秒以上もしくは2度以上の目視、さらには頭部の漏斗状器官からの内部黒色実体への目視により例外なく引き起こされます。重度症状に置かれた対象者はSCP-XXX-JP-Aと識別され、時間経過により以下の表に記載する状態変化を遂げます。

区分 罹患期間 状態
初期 発症よりおよそ1~3週間 この状態のSCP-XXX-JP-Aはα症状の罹患者と同様の注察妄想に陥ります。それは自身の目が届かぬ死角に対する恐怖・不信へと繋がり、それらを解消するために物品の撤去や過剰な見回しなど強迫行為を伴った多動状態に陥ります。SCP-XXX-JP-Aに特有の症状として、これ以降日没から日の出までの夜間、及び暗闇に対する忌避2を示す事、常時周辺環境に「雨の日の土のような」と例えられる微かな臭気を認識する事が報告されています。後者に関し、影響外の他者や測定器などではこの臭気は観測されていません。
中期 症状進行よりおよそ1~2週間 SCP-XXX-JP-Aは全身の体表面を受容器とする未知の感覚を認識しはじめます。実際にはこの感覚を用いた周辺環境の把握能力は持たないように見えますが、SCP-XXX-JP-Aは自らの身体から見た外環境が不透明な幕3で覆い隠されている事に恐怖を訴えはじめ、これらを身につける事を強く拒否します。結果的にSCP-XXX-JP-Aは下着、あるいは全裸でその後の生活を続けることとなります。
後期 症状進行よりおよそ6時間~2日 上記の症状は発展し、SCP-XXX-JP-Aは自らの不透明な表皮そのものが自身から見た外環境を覆い隠す目隠しであると認識します。この段階に至ったSCP-XXX-JP-Aは、最長2日以内に何らかの鋭利な物品を用いて自身の表皮を刺突、あるいは切開して皮下脂肪層に至る幅5cm程度の“覗き穴”と称する切創を作り出します。4このようにして作られた切創は未知のメカニズムにより明確な視覚能力を持ち、本来行われるべき自然治癒が発生しません。この過程には正常な人間が行うものと同等の苦痛を伴う事が観察上伺えますが、麻酔の使用は全ての例で上記の視覚能力の喪失、そこからの対象者の突然死を招いています。切創の作成は約5cm〜10cm間隔でSCP-XXX-JP-Aの全身を覆うまで続けられ、以後、これまで多動的であったSCP-XXX-JP-Aは一転して非活動的に変わります。
末期 以後罹患者の死亡まで 後期段階で全身に切創を負ったSCP-XXX-JP-Aは以降末期状態であると区分されます。この段階のSCP-XXX-JP-Aは切創を通し認識する視界のみにおいて、正常な人間や各種観測機器では知覚出来ない未知の存在(以降SCP-XXX-JP-Bと呼称)を多数周囲に認識します。また同時に、影響下に置かれた初期段階から訴えていた恐怖・不安対象、ならびに臭気の正体がSCP-XXX-JP-Bであるという確信をもつ事が判明しています。以降のSCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JP-Bを避ける様子を見せるようになります。SCP-XXX-JP-Aは広域に渡る体表面の損傷と身体衰弱による病的リスクに晒され、外部環境ならびに当人への適切な衛生・生命管理がなければ生存する事は極めて困難です。
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佐伯信太氏、親族作成の掲示物より。常陸太田市内設置の監視カメラに記録されたのを最後に消息不明。

SCP-XXX-JPは2016/██/██に茨城県北東部、多賀山地の山中にて山菜採りを行なっていた民間人グループが遭遇、その全員が前述する重度症状の影響を受けた事により、地元警察からの報告を経てその存在が発覚しました。5確保された6名は財団の管理下に置かれ、関係者へは詳細な調査の後に記憶処理と“車両転落事故によるグループメンバー死亡”という旨のカバーストーリーが適用されました。当該区域は自治体や管理団体等の職員による定期的な立ち入りが行われていましたが、これまでSCP-XXX-JPに繋がる情報は一切得られておらず、当初その発生時期や起源については不明とされていました。しかし同年██/██、SCP-XXX-JP体表面から採取された試料内の有機物に一部ヒトの組織が分散されて含まれる事が判明。この組織から採取された遺伝子情報が2015/██/██に失踪した茨城大学の大学生佐伯信太氏のものと一致しました。佐伯氏は失踪する数ヶ月前から強い注察妄想を呈し、医療機関での治療を受けていた事が関係者の証言で明らかになっています。この証言内容と初期のSCP-XXX-JP影響者が現す症状の類似性から、現在同氏がSCP-XXX-JP発生に関わったものとして、担当班は調査を進めています。


ここから下未修正

担当班は当初管理下に置かれた6名のうち、サンプルとする3名を除いた残り3名のSCP-XXX-JP-Aに対して後期段階で行う自傷行為の阻止を狙いました。しかし1名が拘束への激しい抵抗から、身体複数箇所の骨折に基づく出血性ショックを引き起こし死亡、1名が自傷手段を封じられた精神的ストレスが起因とみられる突然死、残り1名も薬物による強制昏睡中に死亡しました。その後の試行においても、SCP-XXX-JP-Aの自傷行為に対する妨害は全て当事者の死亡という結果に至っています。またサンプルのうち1名も自傷後に衰弱し、数日後に死亡しています。

下記はSCP-XXX-JP-Aサンプルの1名である渡辺章嘉氏に対して行われた聴取記録の抜粋です。

インタビューログ XXX-JP-A-3-2

対象: SCP-XXX-JP-A-3(本名:渡辺章嘉)
インタビュアー: 黒坂研究員
付記: 当聴取は財団による当該人物確保から数時間後に行われたものであり、この時点のSCP-XXX-JP-A-3は初期段階の異常下にあります。SCP-XXX-JP-A-3の強い要望により、室内環境は最低限の設備に抑えられました。
<録音開始>
黒坂研究員: それでは、インタビューを開始いたします。あなた方があの異常存在に遭遇した際の状況をお話しいただけますか。
SCP-XXX-JP-A-3: はい。菊池さんの運転で███まできて、登山道から横の方に逸れて入って、ずっと森みたいな中を通ってって。山菜やら何やら色々採ったり散策じみた事をして、だいぶ奥まで来たんで、そろそろ時間も日が落ちるし戻りましょうと。それで、元来た方向に引き返したんですが……その、変なこと言っていいですか?
黒坂研究員: 何でしょうか。
SCP-XXX-JP-A-3: お恥ずかしい話ですが、しばらくして段々と、不安になってきたんです。うっすらと暗さも出て来て、木の影もどんよりしていて、普段こんな事は無いのですが、なんだか怖くなってきまして。先行する方々の背中追っかけてたんです。そしたら……急に列が止まって。どうも先の人たちが動揺して、若干藪とかに身を寄せはじめて。イノシシでも出たんかと思ったんですが、それで見た先に、その、あれがいたんです。太い木の枝かなにかと思ったら、動いていて。人でもない、なんだあれは、と。どうもみんな普通じゃない。回り込もうにも場所が悪くて動けん、段々暗くなってくる、暗くなったら何が起こるか分からんって。多分、全員冷静ではなかったです。目の前に生きてるかも分からん何かがいて。多分何か山の、悪いモノだろうって。そのうちに、野口さんがあれを、気を逸せばどこかに行くんじゃないかって。石でも横の方に投げて気を引くか、あわよくばその音で、魔除けみたいにどっかにやれるんじゃないかって。それでその、投げたんです。拳くらいの石を、左横のほうに。
黒坂研究員: その行為に、誰も疑問は持ちませんでしたか。
SCP-XXX-JP-A-3: ただ怖くて、勢いでした。思ったよりそれのすぐ側に飛んできましたが、最初それは音の出た左のほうをずっと見てました。上手く行ったか、と思ったら、それは、こっちを見ました。目が、合いました。身体が固まって、動けなくなりました。多分、全員。……なにかの拍子に、ばっと振り返ってみんな走りました。ずっと、濡れた土のような臭いが付いてきました。居場所が分からなくなるくらいまで奥に逃げて、そこでやっと、携帯電話で助けを呼びました。
黒坂研究員: その指示の通りに移動して、地元警察に保護されたという流れでしたね。SCP-XXX-JP、あの異常存在と“目が合った”と仰いましたが、それについて少々詳しくお話しいただけますか。どのように見えたかなど。
SCP-XXX-JP-A-3: [数秒間の沈黙] 真っ黒い、先の無い、飲み込まれそうな、ダム穴みたいな顔です。今でも見られているような。……すみません。これ以上は分かりません。
黒坂研究員: ありがとうございます。ではインタビューを終了します。

<録音終了>

インタビューログ XXX-JP-A-3-9

対象: SCP-XXX-JP-A-3(本名:渡辺章嘉)
インタビュアー: 黒坂研究員
付記: この時点のSCP-XXX-JP-A-3は異常下の末期段階であり、全身の切創及び継続的な出血により衰弱状態にあります。SCP-XXX-JP-A-3は収容室中央で膝を抱えており、聴取は室内のスピーカーならびにマイクを用いて行われました。
<録音開始>
黒坂研究員: SCP-XXX-JP-A-3、聞こえますか。
SCP-XXX-JP-A-3: [目を閉じたまま小刻みに首を縦に振る]……はい。
黒坂研究員: 何か、変わった事はありませんか。
SCP-XXX-JP-A-3: 黒いのがいます。土くさくて、猿みたいな。蜘蛛みたいな。いっぱい、天井も壁も。
黒坂研究員: それらはあなたに何か反応を示していますか。
SCP-XXX-JP-A-3:  [小刻みに首を横に振る]まだ。見つかってないので。
黒坂研究員: 見つかるとは?
SCP-XXX-JP-A-3: 覗き穴から見てます。まだ気付かれてない。
黒坂研究員: それらの存在について、もう少し詳しく観察してお教えいただけますか。
SCP-XXX-JP-A-3: [数秒の沈黙]手や足が細長い。尻尾がある。壁とか、床から出てく。子供ぐらいの大きさ。顔が、あまりよく……顔……あっ。
SCP-XXX-JP-A-3: あ、あ、目が、こっちに、あ、
黒坂研究員: SCP-XXX-JP-A-3、大丈夫ですか。
SCP-XXX-JP-A-3: あ、あ、[不明瞭な語句] 来るな、さわ、いや、あ、あ、[絶叫]
黒坂研究員: SCP-XXX-JP-A-3、聞こえますか。
SCP-XXX-JP-A-3: 指、指!離れ、あ、ひろげ、いや、[不明瞭]![絶叫]
黒坂研究員: 聞こえますか。
SCP-XXX-JP-A-3: みるな![不明瞭]!覗くな、のぞ、あ、[不明瞭] あ、あ、……あっ。

黒坂研究員: SCP-XXX-JP-A-3、わかりますか。

SCP-XXX-JP-A-3: [沈黙]
黒坂研究員: SCP-XXX-JP-A-3、何か見えますか。
SCP-XXX-JP-A-3: [数秒の沈黙] め。
黒坂研究員: もう一度言ってください。
SCP-XXX-JP-A-3: め。[不明瞭な語句] で。
黒坂研究員: SCP-XXX-JP-A-3、何と言いましたか。
SCP-XXX-JP-A-3: [不明瞭] いで。
黒坂研究員: 渡辺さん。分かりますか。
SCP-XXX-JP-A-3: たべないで。
黒坂研究員: 渡辺さん、聞こえますか。
SCP-XXX-JP-A-3: たべないで。
<録音終了>
終了報告書: SCP-XXX-JP-A-3はその後の問いかけに返答せず、生命兆候は徐々に弱まり間も無く停止しました。約3時間後には皮膚や骨格等を除く体内組織のほぼ全てが黒色の物質に分解され、中空の抜け殻となった皮膚の下方に堆積しました。回収された黒色物質は本来のSCP-XXX-JP-A-3の体格から推測される体積・質量を明らかに下回っており、その組成は92%という高い水準でSCP-XXX-JPの体表面から採取されたものに一致を示しています。残された皮膚組織そのものに特筆すべきに変異は見られませんが、左胸部の切創一点にのみ、何らかの力で左右に押し拡げられた様な痕跡が残されています。

付記1: SCP-XXX-JP-Bについて他のSCP-XXX-JP-Aサンプルにも複数回に渡り聴取が行われましたが、上記資料でSCP-XXX-JP-A-3から報告された以上の情報は現時点得られていません。SCP-XXX-JP-BがSCP-XXX-JP-A以外の現実事象に干渉を加えた/受けた例も確認されず、担当班はその行動範囲・目的等について調査を継続しています。

付記2: 現在担当班は初期収容から唯一生存するSCP-XXX-JP-A-2(本名:石川恒成)と実験により得られた3名のDクラス職員を合わせた計4名のサンプルを確保しています。この4名はその全てが現状末期状態の異常下にありますが、インタビューログ XXX-JP-A-3-9において発生した様な事案は現状確認されていません。またSCP-XXX-JP-Bについても複数回調査が行われましたが、どのサンプルにおいても上記インタビューにて得られた以上の情報は得る事ができませんでした。

補遺: 2017/██/██以降、収容下にあるSCP-XXX-JPが、区域内に設置された観測機器を度々凝視する様子がみられています。これに対しいくつかの異常対策が立てられましたが、現状これらの写真・映像記録等を経由して観測者にSCP-XXX-JPの異常効果がもたらされた例は確認されていません。