アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:
説明: SCP-XXXX-JPは、 地球上とよく似た性質を持ち、かつ全く違う法則の上に成り立つ空間です。SCP-XXXX-JPは独立して存在しており、その存在は我々の宇宙に依存していると考えられています。SCP-XXXX-JPは遠くに存在しますが、現在収容中の地球上の入り口(SCP-XXXX-JP-aと指定)より侵入可能です。
SCP-XXXX-JPではさまざまな矛盾及び説明できない事象が生じており、その全容は未だ解明に至っていません。SCP-XXXX-JPは無限に広がっていると考えられています。SCP-XXXX-JP内に光源は一切発見されていないのにも関わらず、空間内の明るさは変動し続けています。SCP-XXXX-JP内では「下」に向かい重力が発生していますが、不定期に方向が変化します。また、SCP-XXXX-JP内は見渡す限り白い空間が広がっており、黒い直線のような平面図形、及び立体が浮遊しています。これらは重力の変化に合わせ方向、位置が変化し、重力に対し垂直なものに限り実体として機能します。これらが移動する際、砂の流れるような音を立てて滑るように移動することがわかっています。
SCP-XXXX-JPはDクラス職員を用いた探査の結果、空間的な2〜6次元的空間であることが分かっています。SCP-XXXX-JPに2秒〜32日間留まることで、人体の目、カメラなど全ての視点が「横スクロールアクションゲームのような」視点に変化します。これらの影響はSCP-XXXX-JPから脱出することで元に戻ります。この現象が発現している際通常通り体を動かすことが可能です。しかし主観的な感覚では2次元的な移動に感じるのに対し、発信装置を用いた実験では4〜6次元的な移動をしている様子が記録されました。SCP-XXXX-JPでは時間にも異常が見られ、外部での1時間が0.4秒〜201日にあたります。この特性によりSCP-XXXX-JP内では外部との通信が不可能です。
SCP-XXXX-JP内では、ヒューム値が0.8〜4.2の間で変動し続けており、それらが上記の異常に影響を与えていると考えられています。
SCP-XXXX-JP-aは、SCP-XXXX-JPに繋がるドアです。見た目、比重などは完全に木製のものと一致しますが、SCP-XXXX-JP-aを破損させようとする試みは全て失敗しています。ドアノブは金属製であり、導体、磁石に反応するなど一般的な鋼鉄に近い性質を持つものの破壊不可能です。
参照:
[審議中]
探査XXXX-JP-02・音声記録
[審議中]
[閲覧不可]
補遺XXXX-JP-1: 探査XXXX-JP-02において使用されたDクラス職員は5名であり、記録音声の途中から出現D-XXXX-14が何者かは不明です。D-XXXX-14は脱出以降確認されておらず、また財団データベースには同様の職員は記録されておらず、現在も調査が続けられています調査は[編集済]に打ち切られました。
※このページには、未確認のファイルの侵入が見られます。担当職員は発見次第、ファイルを移動して下さい。
「な、最高にクールだったろ?」
「もういい、喋るな」
後ろでそう言う男の首を手にしたナイフで黙らせた。全くふざけた話だ。クールだって?むしろ寒すぎるぜ。
今更どうやっても無駄なことはわかってる。これが噂に聞いた『Kクラス』ってヤツか。
これのどこが芸術なんだよ、██。
財団の誰もが油断していた。AWCYにとっては芸術こそが全てのはずだった。厄介ではあっても、まさか世界を滅ぼそうとは誰も思ってもいなかった。それは自分たちのキャンパスを燃やすようなものだった。そしてそのことは、元AWCYのオレがよく理解していた筈だった。
あん時は苦労したぜ。なんせ一度俺は死んだことになったからな。AWCYと縁を切って、そして財団になんとか入ってからも、この首の主だけは信じていた。コイツは本気で芸術を追いかけていたし、多少の異常も独力で操ってしまう、そんなヤツだった。何度か同じ道に来るよう誘ったが、いつも
「僕のアトリエはここだ」
と言って聞かなかったな。
そんなヤツがどうしてコレに至ったか。知るか、そんなもん。いや、心当たりはある。
コイツは『完成』を目指していた。
なんで『完成』がコレなのか。思い出せそうで、思い出せない。
やり直せるならそうしたかったぜ、兄弟。
いよいよ此処にも『無』が迫ってきた。今まで俺はコイツの計画で生き残っていたが、それもこれまでのようだ。
(お前自身も作品になるってか、笑わせんなよ)
痛みも何もなく、ただ消えてゆくのを感じる。
久しぶりに笑ってみせた。
「な、最高にクールにだったろ?」
「ああ、これまた綺麗な花火だったな」
新作の油絵を仕上げていた俺の横で、親友は窓を眺めている。コイツはとにかく「見てもらいたい」アーティストで、俺とは対照的だ。今まで上手くやってこれたのも、バランスが良かったからかも知れない。
最後のは特大の『AWCY』。形、大きさ、そして色まで、完璧の仕上がりだった。
「流石だな、兄弟」
「だろ?でもあんまり見てると酔うぜ?新作の柄を仕組んだからな」
「マジかよ」
「今頃財団の連中が探し回ってるさ。しばらく外に出るなよ」
親友の言う通り、エージェントと思しきスーツがそこら中にいる。変装したやつならもっといるだろう。アイツらが追ってくるのも納得だ。なんせ俺たちは、もう14回も作品を披露してるんだ。
「あのさ、兄弟」
「ん?」
「最高にクールだったぜ」
ただクールなだけじゃない。
コイツは最高にクールなんだ。
久しぶりに、心から笑ってみせた。
財団に入ってからも、アイツとの交流は続いていた。もちろん例のラーメン屋でだがな。おすすめのラーメン…ではなく炒飯と餃子を注文し、席に着く。遅れて来たアイツは、なにやら嬉しそうに話してきた。久しぶりに見た気がする。コイツの笑顔。
「なかなか良いもんが手に入ったぜ、兄弟」
「その様子だと、また何かの異常なモンか?」
「ああ!」
そう言って取り出したのは、黒い袋に入った紙だった。この様子だと、恐らく認識災害系のやつか。
「認識系だと思ったろ?違うんだよな〜、コレがさ」
興味深い話だ。
「コレがあれば、どんなことだってできる。前に話したこともね。」
「『無』か?」
「かもね。だって『無』はさ、誰も否定できないじゃん。」
そうか。何か引っかかる気がする。俺はここで何をしてるんだ?
アイツは笑った。
気のせいか、少しだけかげって見えた。
「最高にクールだろ?」
全てを思い出した。確かに、確かに俺は終焉を見ていた筈だ。
止めなければ。
アイツは俺にこんなことを話したことがある。
『完成』とは何か。
その話題について、俺はこう言った筈だ。
「全ての人に肯定されるもの」
俺にしては、随分と前向きだった気がする。なにせそんな不可能なことを挙げるなんてな。例のトンネルで作られた複製でもない限り、この世に同じ人間は多分存在しない。そしてその数だけ個性があり、好みがあるはずなのだ。
アイツは確か、俺と正反対のことを言っていた。
「全ての人が否定できないもの」
アイツにしては、消極的な考えだったと思う。██はこの頃、どうも様子がおかしかった。俺が財団に移って以来、どこか暗くなった気がする。俺と活動できないから、というのは自惚れすぎか?俺より先に店に入れば、だいたいお手製の砂時計を眺めていた。作品を自慢することもなくなった。
「そしてそれは、『無』だと思うんだ」
そう言ったときのアイツは、もういつかのアイツとは別人だった。遠い目をしていた。アイツの中では、何もかもが過去形で過ぎていくらしい。
「だから僕は、『無』を創ってみせる」
そうか、俺は反対だな。
「もちろん応援してくれるよな、兄弟」
まだ何も知らなかった俺は、アイツの異常に気づくことはなかった。
そしてうなづく。
それが、終わりの始まりだった。
夢を見ていた気がする。人生最悪の悪夢を。
いつもの寮のいつもの自室、いつものベッドで眼を覚ます。ふと机を見て、眼を見開いた。
まさかコモドオオトカゲが乗っていたなんて。
そうか、そういうことか。
ひとまず部隊に連絡、凶暴なドラゴンには部屋に戻ってもらおう。
今日は休みを取らないとな。
連れ戻してやるぜ、兄弟。
気づいたの?そうだよね、ちょっとおかしいよね。あの子にはこんな力ないよね。だって直前に戻るだけだもの。だから、少しだけ力を貸したの。
『ロード』したんだ。