アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JPを完全に収納できる鍵つきの金属製の箱の中に、鍵をかけて収めた状態で収容してください。また、外部からの衝撃によって刃の部分が開かないよう、刃が閉じた状態を維持するために持ち手の部分及び刃の部分を針金等できつく縛るようにしてください。SCP-XXX-JPはレベル1以上のセキュリティクリアランスを持った職員の許可があれば誰でも利用可能です。SCP-XXX-JPはレベル1以上のセキュリティクリアランスを持った職員の許可があればDクラス職員のみ利用可能です。
説明: SCP-XXX-JPは長さ1メートルほどのハサミです。一般的な右利きの洋鋏と同じ構造をしており、2枚の金属板が支点を中心に重なり合っています。それぞれの金属板の内側に向かって刃がつけられており、持ち手部分はプラスチックによって覆われています。見た目上の相違はその大きさが通常のものよりも大きいということ以外にはありません。特筆すべき点として、それぞれの金属板の持ち手に"cut"という文字がプリントされている事が挙げられます。
SCP-XXX-JPは拷問器具を集めた博物館で発見されました。博物館の学芸員である財団職員が倉庫を清掃しているときにこのオブジェクトを発見しました。
SCP-XXX-JPはどのような物質であっても両断することができるハサミです。両断されるものは刃に収まっている必要はなく、また、刃と触れ合っている必要もありません。SCP-XXX-JPの刃の部分を開き、そしてそれを閉じることによって物質の両断が行われます。SCP-XXX-JPの刃が開いた状態で、刃の部分に物をあてがっても傷つくことはありません。
SCP-XXX-JPによって両断されるものは、SCP-XXX-JPの3キロメートル以内にある場合、距離によって妨げられることはありません。両断される物質は必ずSCP-XXX-JPの刃が向いている直線方向に存在している必要があります。両断された物質の断面はダイヤモンドカッターによる切断面によく似ています。
SCP-XXX-JPのもう一つの異常性はこのオブジェクトの使用者が他者との関係性を失うことにあります。この関係性とは知り合いという程度の簡単な関係から家族といった深い関係に至るまでの全てを指します。しかし奇妙なことにこの関係性の喪失について使用者はすぐに知覚できません。関係性の喪失は一方的に行われ、使用者が失う関係性の対象のみがそれを喪失します。関係性が喪失するにあたり、その関係性に関する記憶の一切も喪失しますが、関係性に関係のない知識(例えば使用者の名前や性格といったもの)は失うことはありません。
SCP-XXX-JPを使用することによって喪失する関係性は、SCP-XXX-JPを1度使用すると1つなくなることがわかっています。また喪失する関係性に優先順位はないように見えます。遠縁の関係から近縁の関係までの全ての関係性からランダムに喪失は行われるようです。
ただし、一度関係性を喪失した相手と再び関係性を持った場合はその関係性が優先して喪失します。
SCP-XXX-JPの影響によって喪失するものは関係性の対象がもつ関係性に関する記憶のみです。書類上、映像上での関係性は維持されたままです。しかし、そのようなものを提示しても喪失した記憶がよみがえることはありません。
その異常性はSCP-XXX-JPを利用した職員によって引き起こされた複数の事件により発見されました。
最初の事件は20██/██/██に起こりました。男性職員の1人がカウンセリング室にて男性カウンセラーに暴行を働いた事件です。男性職員は、サイト内の鎮圧部隊がこれを直ちに取り押さえられました。鎮圧を受けた財団職員に対して行われたインタビューは以下のとおりです。
対象: 鎮圧された職員 以下職員
インタビュアー: エージェント・███
付記: 職員は非常に落ち着きを払った状態。後日の調査により職員は複数回に渡りSCP-XXX-JPを利用した実験を行っていたことが分かる。サイト-81██にて記録。
<録音開始, 20██/██/██>
エージェント・███: では、これより音声記録を開始します。よろしいですか?
職員: ええ、大丈夫です。もう私もだいぶ落ち着きましたから。
エージェント・███: 今日はなぜインタビューされているのかの理由は分かっていますか?
職員: はい、先日カウンセラー室で私が暴れたことについてですよね
エージェント・███:そうです。貴方が今までにこのような暴行事件を、それどころか誰かを殴ったりなんだりしたなんて言う話は聞いたことがありません。貴方について話す人達も、一様に貴方は温和で優しい人だと言っていましたよ
職員そうですか、皆さんそんなことを。・・・ええ、そうですね。私は、少なくとも人を殴ったりしたことは今回が初めてです。温和だと言われるのも、ええ、別に無理してそういうふうにしていたわけではありません。誰かを怒ったり、誰かに当たったりしてもなんにもならないことはわかっていますから。
エージェント・███:ではなぜ、今回このようなことを?
職員:なんででしょうね。私も実はよくわかっていないのです(2秒の沈黙)。いえ、本当は分かっているんです。分かっているんですよ。ただそれを言葉にするのが難しいというか、その(そのまま職員は顔を伏せて黙ってしまう)
エージェント・███:(会話が途切れたことがわかり少し思考)わかりますよ、言葉で言い表せないことっていうのはあるものです。一個ずつ整理してみましょう。まず、今回の暴行については最初からやるつもりでいたんですか?
職員:いえ、まさか!(首を大きく横に振る)本当に、そんなつもりはなかったんです。私はもう、カウンセラーの先生しか話せる人なんていなかったんですから。
エージェント・███:・・・それはどういうことですか?貴方のような性格なら、多少社交性がなくても人付き合いはそう難しくないと思いますが
職員:(目を見開いてエージェント・███の顔を見てから)はい、実は最近までは親しい同僚などもいたのですが、それが次々にいなくなってしまって。
エージェント・███:そうですか。全員別のサイトに移動してしまったのですか。それで、親しい人がいなくなってしまい、カウンセラーが
職員:(会話を遮りやや荒っぽい口調で)違います!全員このサイトにいます。実は最近になって次々私と距離を取るようになり始めて。最初のうちは何か私がまずいことでもしたかと思って仕方ないかと思ったんですけど、日に日に私によそよそしくなる人が増え始めて。流石に気が滅入っちゃって、それでカウンセラーに通って相談してたんです。
エージェント・███:なるほど。それでカウンセラーに。
職員:でも、でもです!その先生までついに私によそよそしくしはじめたんですよ!つい昨日までは私の話を聞いて、一緒に悩んで一緒に笑ってくれた人が、急によそよそしくなったんです!まるで初めてあったときのように、淡々と話を聞いて相槌を打つような風に!君に分かるか!私の気持ちが!
エージェント・███:落ち着いてください。つまり、あなたはカウンセラーによそよそしくされて、それでカッとなったから暴行を働いたと、つまりそういうことですか?
職員:(堰が切れたかのようにおさまる様子もなく再び声を荒げて)そうです!私は昨日まで先生とは本当に仲良くしていたんだ。毎日のように顔を合わせていたし、出会ってからの期間は短いけれど、私は彼との間に深い友情だって感じていたんだ!それなのに、それなのに・・・(顔を伏せ、嗚咽混じりに)すいません、つい声を張ってしまって
エージェント・███:・・・・・・わかりました。辛い話をさせてしまったようで申し訳ありません。今回の件については後日また確認させていただきます。・・・ところで、話は変わりますがもしよろしければ私と友だちになりませんか。あなたの姿は、つい、学生時代の私に重なるところがあって
職員:・・・ええ、知っていますよ。いつだったか君はそんな話をしていたからね。そう、初めてあったときだよ。まさか君の口からそんなセリフが出てくるなんて思ってもいなかったよ。
エージェント・███:おや、そうでしたか。それは恥ずかしい話をしてしまったものです。いつだったか、私はどうも思い出せませんが、申し訳ない。このサイトは決して人が少なくないですから、どこかで軽くお話でもしたのかもしれませんね。
職員:ええ。そうですね。友達になりましょう。・・・‥‥‥今度は、私のことを遠ざけないでくださいよ。███さん。
<録音終了, 20██/██/██>
終了報告書: 後日職員はエージェント・███を殺害。理由は今回と同じでしたが「2回目は許せなかった」と供述していました。現在職員はDクラス職員としてサイト81██にて働いています。
その後、同サイトの他の職員でも同様の事件が引き起こされたことでこれらの事件群の異常性が注目されました。事件群の共通点はどれもSCP-XXX-JPを利用したことのある財団職員によって引き起こされたということです。原因究明はDクラス職員を用いた幾つかの実験によって行われ、これらの事件の謎が解明されました。
SCP-XXX-JPがどのようにして関係性という曖昧なものを認知し、それを消失させているのかはわかっていません。またなぜこのようなオブジェクトが作られたのかについても現在調査中です。
現在、SCP-XXX-JPを私的理由で用いることは禁止されています。