執筆中scp
タイトル「廃船のネズミ捕り」
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:
説明: SCP-XXX-JPは一隻の監獄船であり、船型や過去の資料から、18██年から利用されていたイギリスの監獄船「██くろぬり」と同一の、又は酷似した特徴を持った船舶であることが判明しています。SCP-XXX-JPは通常、その存在を認識することができません。SCP-XXX-JPが反ミーム的特性、又は局所的な空間隔離能力を有している可能性が指摘されていますが、現在までのところこの認識の不可能性についての明確な回答は得られていません。SCP-XXX-JPは明らかな劣化の兆候を見せており、内部の監獄の殆どは錆び、破損しています。また、内部には明らかに過去囚人が監獄に入れられていた痕跡が残っています。牢の数や、痕跡の数から、元々SCP-XXX-JPには200人以上の囚人が収監されていたと考えられています。しかし、それら囚人の遺体は4体を除き発見されておらず、残りの囚人の行方は不明です。
SCP-XXX-JP内部に適切な処置をとった状態で入らなかった人物は、高確率で発疹チフス、皮膚病、壊血病、赤痢、コレラなどに非常に似た症状を表します。これら症状の発症確率は、その人物がSCP-XXX-JP内に滞在した時間に比例して増大することが判明しています。適切な防護服を身にまとった状態であれば、これら症状を発症することはありません。これら症状は中世の船舶においては一般的な症状であり、その原因は船内環境の不衛生、食の偏りによる栄養不足、医療に精通する船員の不足などが上がられます。しかし、SCP-XXX-JP内は不衛生であることを除けば、これら症状を直ちに発症する要因は認められておらず、これら症状がどのようにして発生するのかのメカニズムは目下研究中です。
SCP-XXX-JP-1は一匹のイエネコです。体長は約30cm、黒毛で人に対する警戒心が薄く、老化の兆候を一切示しません。SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPを認識するために必要な、唯一の手段です。SCP-XXX-JP-1は時折、あらゆる障壁を通過し、SCP-XXX-JPの元までただ一人の人間を誘導する、「招きイベント」を発生させます。この誘導の過程は時として、誘導されている人間にも障壁の通貨能力を与え、空間転移に類似した現象を発生させます。最終的にSCP-XXX-JP-1と誘導された人間は所在不明な埠頭に辿り着きます。GPS装置による追跡によれば、その場所は現在埋め立てられており、埠頭は存在しないことが明らかとなっています。誘導された人物はその後、目の前にSCP-XXX-JPが碇泊しており、いつでも乗り降りが可能な状態であることを認識します。誘導された人物はこの時、SCP-XXX-JP-1についていきSCP-XXX-JPに乗船するか、乗船を拒否しそのばから離れるか選択することが出来ます。その人が後者を選択したならば、その人はイベントが発生する直前にいた場所へ転移し、SCP-XXX-JP、SCP-XXX-JP-1に関する記憶を全て喪失します。
補遺1-回収された文書:
出航から3日。この船で初めての病人が出た。症状は発熱、嘔吐、異常な発汗。意識混濁。およそ船乗りがかかる典型的な症状を現している。もし船員に症状が広がることがあれば大惨事になりかねないため、医務室へ一時的に移動させ、少量の瀉血を行ったが、症状回復の兆候はなし。一時的に様子を見、いよいよもって絶望的ならば水葬を行うようにと船長からのお達しである。
いままで幾つかの船に乗ってきたが、ここまで早くに病人が出るのは初めての事である。早急な原因解明が必要である。
出航から1週間。囚人間で体調不良を訴える者が続出している。現在、当船にいる医者は数少なく、全員の面倒を見るのは不可能である。様子を見て、症状が悪いものは処分し、水葬する必要がある。前日まで魘されていた病人は既に動かず、死亡したとみられる。死人は病を撒き散らすことは過去の資料から既に明らかである。今日の昼までに水葬が執り行われるだろう。
出航から11日。船長が倒れた。船員にも体調を崩し、職務を十全に行えないものが続出している。もはや船医が対処できる範囲を優に超えているのが現状である。船長、および航海長には、船が動かせなくなるより前に近くの港へ一時的に避難したほうが良い旨を伝えた。船長は「検討する」とだけ答えたが、あの調子では今後まともな判断を下せるかも疑問である。
船長の症状については概ね、当船で初期にでた病人の症状と一致している。瀉血処置を施しても病状が回復しなかった点も共通している。船医として感じた疑問点は、船長が囚人と殆ど接触せず、当船で受けられる最高の食事、最高の生活環境を賜っていたにもかかわらず、多くの哀れな囚人と同様の病を発症したことである。もし、囚人の病と船長の病が同様のものなら、船長も3日と持つまい。もし船長がなくなれば、当船を統率し、目的地に導ける者もいよいよ少なくなる。船長にはできる限り精神を強く持ってもらい、瀉血による回復を祈る以外にない。
かくゆう私も昨日から体調が優れない。もし症状が悪化するならば、私も覚悟を決めなければならない。
出航から[未記入]
私が生きているのか、それとも死んでいるのかわからない。ここはどこなのかわからない。りくは見えない。気づかない間に、病室のまどはたいへんに汚れ、ひび割れてしまっている。どうやら私が眠っている間に、とてもながい時間がたってしまったようである。私の生命はもはや絶望的である。ベッドの横には瀉血によって排出された、おそらく私の、どす黒い汚れた血が溜まったバケツが置いてあった。私がそれをした記憶がないので、ほかの船医が私が寝ているまに施してくれたのだろうか。力を振り絞り、声を上げて誰かいないかよんでみたが、応答はない。みんな死んでしまったのか?
私がこの文章をかけるだけの体力が残っていたのは幸運である。私はこれより、最期の希望をかけて、私自身にたいしてしゃけつ処置を施す。これでもし、事態が好転しなければ、私は自らの運命を受け入れ、我が愛する妻への遺言を残し、そしてこの文書をボトルに詰め、海へ放つ。願わくば、この先大海を目指す全ての船乗りへ、この惨劇を繰り返さぬように。そしてこの文書を最後に読むのが私自身であるように。
神よ、我を救いたまえ。
心より愛するxxxxxxへ
今日より私はvvvvvという立派な船に乗り、僕と君の祖国をしばし離れ、wwwへ向かう。君と離れ離れになるのは、何度経験しても辛いもので、僕は毎日こういう航海の内は憂鬱な気分になり、職務に従事している時間以外は遠くの海を眺め君を想うのが日課になっている。でもそれはあまりにも辛いし、空しいことの様に感じるので、今回の航海では、僕の船内での日々の暮らしや、船から見える大海の眺めをこの手紙に綴り、そして目的地に着いた後に、僕が一生懸命に仕事をし、楽しい日々を送っているということを伝えたいと思う。
今日は船長や船医、航海士の方々と食事会に参加した。その場ではいろいろなことが話し合われた。囚人の管理についてのこと、病人の処置の事。目的地まであと何日で着くとか、囚人の受け渡しはどうやって執り行われるかとか、そういうことが話し合われていた。食事は、とてもまずい。君の作る料理に比べればどんな料理もうまくは感じないだろうが、そうはいってもこれほど不味い料理はこの世にないだろう。どうも生臭くて、舌と喉の奥の方に纏わりつくような、嫌な食感で、これを食うぐらいなら甲板で釣りでもして、そして手に入れた小魚を適当に焼いて食った方が数倍マシだ。君の料理を早く食べたい。君が恋しいよ。
今日は一段と朝日が美しかった。私の寝室の窓から差し込む陽光で私は目を覚ましたのだが、甲板に出ると心地よい潮風と暖かな日の光が私の心身を癒す。日々の業務は辛いけど、こういう船乗り特有の癒しを味わえるから、僕はこの仕事が好きだ。今日も力仕事や、言うことを聞かない囚人たちを鞭打ち働かせたり、鼠を捕まえたりした。ネズミは厄介な存在だ。どこから入り込んだのかまったくわからないけど、毎日毎日捕まえて殺しているのに、まるでいなくなる気配がない。おかげで食料の幾つかが既にダメになった。
ところで、この船にはとても優秀なネズミハンターがいる。それはクロネコで、船員たちはそのネコのことを「aaa」「DDD」「EEE」などと呼んでいた。なんでこのネコのことを書いているかと言うと、僕がこの船にいる人間の中で最もこのネコと仲が良いからだ。ネコは僕のところに一日一匹必ずネズミの死体をもってくる。僕はそれを窓から放り投げて、ネコに夕食の残りをあげるんだ。ネコはとてもかわいくて、とても利口だ。きっと君も気に入ると思う。この仕事が終わったら、きっと僕はこのネコを持って帰るだろう。そして、家族の一員、愛すべき者の1人に加えられることだろう!
今日は幾つかの水葬を執り行った。囚人内で死者が続出しているらしいことが食事会で船医から離されていた。船長は事前に予想されていた犠牲であると言いつつも、その死者の多さに驚いている様子だった。囚人の処理は何度やっても嫌な仕事で、というのも囚人というのは生きていようが死んでいようが関係なく不潔で、ひどく臭いのです。特に死体の臭いはひどく、近づくだけで吐気がしてきます。死体の幾つかはもはや人の形相を保っておらず、目が眼窩から零れ落ちていた李、歯が一本残らず抜け落ちていたり、枯れ木の様に細い手足がなにか(おそらくネズミだろう)に食われ骨が見えていたりして、見るに堪えない。こんな苦しい状況であっても僕は君だけを支えにしている。君を想うだけでこれらのことは忘れられそうなんだ。
今日の甲板からの眺めは残念ながらあまりよくない。空は曇り、波が高く、船に乗り慣れた僕ですら僅かに吐き気を覚えるほどだ。でもきっと神様は僕ら船乗りを見捨てず、祖国へ無事に返してくれるだろう!君が僕の帰りを祈ってくれていることを願う。
今日も天候は悪く、下手に上甲板に出れば波に攫われてしまいそうです。船内は湿気と病人の瘴気でどんよりしていて、仄暗く、とても長い時間はいられません。そんなことをすれば気が狂ってしまいます。実際、囚人の幾つかは狂ったような叫び声をあげ、聞くに堪えない汚い言葉でネズミかなにかを罵り、のた打ち回っている始末です。僕は君が知っている様に、今までに幾つもの船で働いてきましたが、こんな酷い環境は見たことがありません。船医は何をしているのでしょうか?もはや動かない囚人がそこらにほっぽりだされ、酷い臭いと瘴気を発しているにもかかわらず、船医たちは彼らの血すら抜きにこようとしません。
こんな酷い環境を放置したからでしょう。船長が昼過ぎに倒れ、医務室に運ばれていきました。とても汗をかき、呼吸は浅く、なにか譫言を言っていましたが、何といったかはもはや聞き取れませんでした。
クロネコだけはとても元気で、今日も私の元にネズミを持ってきてくれました。これで何匹目でしょうね?とても利口な子です。おそらく、この船で今一番の働き者はクロネコです。本当に働き者なんです。今日もってきたネズミは今までのよりもっと太っていて、臭いやつでした。こいつらのせいで、僕たちが日々必要とする飲み水や食料がやられているのを考えると、とても腹が立ちます。
ああ、早くそちらに帰りたい。ネズミなどに悩まされることの無い、清潔な我が家に帰りたいです、xxxxx。
今日はとてもいい日です!なぜなら、僕とクロネコとで、ネズミの親玉を懲らしめたからです。クロネコは今日、僕のズボンの端を引っ張って、自分についてくるように僕に言いました。僕が彼についていくと、食糧庫の傍の床の上で立ち止まり、そしてそこを掻きながら鳴き声をあげ始めました。なるほど、ここに何かがあるのだなと思った僕は、周りに誰もいないことを確認してから、その床をひっぺはがしました。実際、船は連日の悪天候と船員の体調不良のためにだいぶ痛んでいて、そこまで時間をかけずに床に穴を開けることが出来ました。その下は空洞になっていて、船の骨組みが見えていました。そしてあの忌まわしい、足跡が聞こえました。いくつもいくつも聞こえました。なんと恐ろしいことでしょう!僕たちが一番に守らねばならない食料庫の真下に、巨大なネズミが溜まっていたのです。灯台元暮らしとはまさにこのことです。僕が見ただけでも30はいたでしょう。どれもが丸々と太っていて、不気味な鳴き声を発して、空洞内を走り回っていました。クロネコはそこへ飛び込むとまず一匹、そして一匹と、ネズミを殺していきました。なんという手際の良さ!それはネズミ専門のアサシンのようです。僕もその狩りに参加したんですが、いやはや、あのネズミたちときたら、こちらの動きをまるで予測しているかのように身をひるがえし、僕が空けた穴から次々と逃げ出していくのです。僕はもう怒り狂い、もう少しで監獄に飛び込んでいくところでした。
監獄はもはや手の付けようがない状態になっていたんです。そこは明らかに黒い靄の様な瘴気で満ちていて、ちょっと先も見えないのです。牢はどこも錆びていて、ちょっと触れば崩れ落ちてしまいそうでした。船医たちはもはやなにをする気もないことは明らかです。なぜなら、船医たちも囚人たちと同様の病気を患い、医務室に閉じこもってしまったからです。
xxxxx、僕はもはや生きて帰れる気がしません。しかし、もう少しで目的地に着くはずですし、もう少しの辛抱です。君に良い報告が出来ないのが心苦しいです。でも、きっと向こうはよいところなはずなのです。君がこれを読んでいるなら、船がどこもこんな酷い環境であるなんて思わないでくださいね。殆どの船というのは、清潔で、煌びやかで、高貴なものなのですからね!
皆死んでしまった。僕がネズミ捕りにやっきになっている間に、信じられないほどの時間が経過して、そして僕以外の人間はみんな瘴気にやられてしまった。
正直なところ、僕も現状が受け入れられず、今は自分の船室に引きこもってこの手紙を書いているんです。いつもは、船の中や外を行ったり来たりしながら書いているんですが、もうそんなことをする余裕がないほどに、船内は瘴気に満ちてしまっていて、外は雷鳴が鳴り響いています。どうしてこんなことになってしまったのか。誰にも分らないでしょう。医務室にはもはや治療を受けるべき人間は1人も存在しません。船室も僕の部屋以外は空いてしまって、とても静かです。ネズミはどうかというと、人が減るたびに増えているような漢字がします。今や、生きている人間よりネズミの方が多いでしょう。
皆死んでしまったのに航行はどうやっているのかと疑問でしょうが、それこそが僕が最も受け入れがいた現実としてここにあります。今、この船は何者にも縛られることなく動いているのです。舵輪は独りでに動き回り、帆は常に暴風を受け続けていますが壊れる気配がありません。信じ難いことです。こんな暴風のなかで帆を広げるなんて!誰がそんなバカげたことをしたのか!
もはや僕は、この船がどこに向かおうとしているのかもわかりません。話を聞ける状態の人がもういないし、星を見ようにも天には常に雲がかかっているのです。唯一頼りになる可能性があるのは、灯台からの光ですが、それがどの港の灯台の光か僕にはわかりません。そう、今、僕の船室の窓からははっきりと灯台の光が見えるのです。船は明らかにその光に向かって進んでいて、明日には港についているでしょう。ただ、着いたらどうなるというのでしょうか。もはや運ぶべき囚人は誰一人として残っていないのに。
僕はもう船が沈んでしまった方が良いように思えてなりません。こう思ってしまうのはとても悲しいことです。
もう少し陸に近づいたら、僕はこの船から脱出しようと思います。勿論、あのクロネコと一緒にです。僕は生きて帰ります。神に誓いましょう。
神よ、この船をどこか遠い場所に運んで行ってください。この船を満たす瘴気が、我が祖国に届かぬように。
閉鎖海面第1716番収容対象
『』
乗る者なき哀れな船よ、せめて安らかに眠れ。
艦隊司令部
閉鎖海面第1716番名誉ネズミ捕獲長
『ウィルバー(1790-現在)』
永遠に留め置かれし、哀れな船でただ一匹、ネズミと戦い続けるあなたに、敬意を以てここに表する。
艦隊司令部
タイトル「ハイパーストラクチャ」
yosh0123のアイデア<ハイパーストラクチャ>を原案とします。
アイテム番号: SCP-XXXX-JP
オブジェクトクラス: Safe-doctrina
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは全5区画に分割され、それぞれが無機的オブジェクト収容サイト-8421に収容されています。収容室はSCP-XXX-JPの発見当時の状態を可能な限り保持するため、海水で満たされています。収容室は外部と繋がり、海水を常に循環させることで、調査や研究による環境悪化を防止します。各区画の研究状況は一つのデータベースにまとめられ、SCP-XXX-JPの合同研究チームは誰であっても、そのデータベースを閲覧することができます。ただし、データベースの編集を行えるのは各区画の研究責任者のみであり、編集を加えた場合には責任者に報告義務が生じます。報告のない編集は差し戻されます。
SCP-XXX-JP内部の探索は十分にダイビング能力に優れていると判断された人員のみで構成された、4名からなる調査チームによって行われます。調査チームは探索の際、外部との連絡手段を常に確立し、これを損失しないことを第一優先事項と見做します。調査メンバーは捜索終了後に、捜索内容を報告する義務が生じます。
SCP-XXX-JP内部の捜索によって、内部の状況は殆ど明らかとなり、その異常性も判明しているため、現在では基本的に調査チームの捜索は行われません。しかし、SCP-XXX-JPに関する調査は継続されます。
説明: SCP-XXXX-JPは全長400.8m、全高74.2メートル、推定重量27万トンの超巨大構造物です。SCP-XXX-JPは本来、フィリピン海海底で発見された由来不明の巨大船舶の艦橋部分でしたが、現在までのところSCP-XXX-JPを除く船体内部に異常性は確認されていません。SCP-XXX-JPは概ね鋼鉄製であり、一部に非異常な木材が使用されています。その材質に異常性はありません。SCP-XXX-JPは大きく分けて6つの区画に分かれており、それぞれの区画へは、各階層に二か所設置されている梯子を使用することで行き来が可能ですが、研究上の利便性に鑑みられタ結果、現在では5つの区画ごとに分解されています。
SCP-XXX-JPの主要な異常性は6つの区画ごとに異なります。便宜上、各階層を第一区画~第六区画と指定し、各階層の潜入調査が行われています。以下に示すのは、2020年7月2日現在までに行われた調査の結果明らかとなった、各階層の異常性の説明です。
第一区画: 巨大なセンサを除き、SCP-XXX-JPの最上部に位置し、SCP-XXX-JP第2区画正面から大きく突き出した箱型の区画です。底面を除く四方が厚いガラスで覆われており、内部から外部の状況を観察することが可能です。海底に放置され続けた影響によるものと思われるひびが各所に確認できますが、現在までのところ目立った損壊報告は挙がっていません。内部には計測機器、操作盤と思われる機会設備が多数存在していますが、そのいずれもが現在の地球上のあらゆる機器との互換性を持ちません。これら機器を再現する試みは失敗に終わっています。しかし、これら機器は現在でも正常に動作しており、その動力源は不明です。これら異常な機器類を除けば、当区画に異常性はありません。
第二区画: SCP-XXX-JP第3~6区画の前部を貫通する、最も厳重に装甲された楕円筒型の区画です。第一区画と隣接して存在しており、第5区画の出入口からのみ進入が可能でした。当区画へ通じる扉が厚さ540mmの気密ハッチであること、内部構造が第二次大戦期の戦闘艦の司令塔に類似していることなどから、1930年以降になってから建造されたと推測されていますが、正確な建造年日は判明していません。外壁両側面4か所に舷窓が設置されていますが、内部とは通じておらず、どのような理由からこれら舷窓が取り付けられたのかはわかっていません。第二区画内は由来不明の光源で隅々まで照らされています。第二区画はそれ自体が常に細かく振動しており、低周波帯の音波が発振されています。第二区画を中心に半径100kmに潜入したすべての大型船舶(潜水艦を含む、また戦闘能力の有無を問わず)は、当区画の内壁に、当区画からの距離や戦闘能力の有無などの情報を含んだ文字列とともに「影」のように映し出されます。この機能は現在の軍事センサーと同等かそれ以上の能力を有すると推測されています。
第三区画: 詳細不明。詳しい理由については補遺を参照してください。
第四区画: 多数の機器が設置されていた痕跡が残っているモノの、そのほとんどがなんらかの巨大な物理的作用によって引きはがされ、持ち出されたと推測される跡が諸所に確認されています。当区域内に設置されていた非異常なセンサ類は残っていますが、故障しています。当区域に特筆できる異常性は存在しませんが、便宜上ここを第4区画と呼称しています。
第五区画: 調査中につき執筆は控えます。—第五区画内部調査隊隊長 ”鞍馬”
補遺1-SCPオブジェクト登録以前の歴史: SCP-XXX-JPの目撃情報として最古のものは1944年です。目撃者はすでに故人であり、正確な情報であるかは疑わしいとされていますが、目撃者の親族によれば「長門艦上からたしかに扶桑型戦艦に酷似する船をみた」と幾度も語っていたといいます。しかし、のちの調査で蒐集員が当時、「突如として出現する巨大戦艦」をはっきりと目撃し、記録していたことが判明したために、この証言の信ぴょう性の再評価が為されることとなりました。
現在以降、最初にSCP-XXX-JPを発見したのはポール・アレン率いる海底調査チームでした。同チームは2015年3月に戦艦「武蔵」を発見した後、フィリピン海周辺で海底調査を行っていました。同年5月末、チームは海底に存在する「軍艦の艦橋構造に類似する巨大構造物」を自立型無人潜水機AUVにより発見していました。チームは反復してAOVによる音響調査を対象の構造物に対して実施した後、遠隔操作型無人潜水機ROVを用いて対象の具体的な外観を観察しました。チームはフィリピン海域の調査を6月末に終了し、調査海域を北大西洋に移しました。当時、チームが蒐集した対象の構造物に関する情報はすべて、ポール・アレンによって完全に隠蔽されました。そのため、財団が対象の構造物、SCP-XXX-JPを発見したのは2016年8月の海洋性アノマリー調査の一環で偶然にも発見されるのを待つことになりました。ポール・アレンがこの情報を隠蔽した理由は、2016年12月に行われた当時の調査チームメンバーへのインタビューで明らかになりました。
率直に申しますと、あの巨大構造物はあの場にいた私たち全員を驚かせ、そして焦らせました。なぜなら、あの構造物、私たちはアンノウンと呼んでいましたが、それが明らかに私たちが知るどの国の軍艦とも異なっていたからです。形だけであったら、私たちがよく知る帝国海軍の戦艦「扶桑」および「山城」に酷似していたのですが、その大きさは人知を超えていました。あれほどまでの大きさの艦橋をもつ軍艦は、私たちが知る限りでは、存在しません。それがフィリピン海の底に鎮座している!
これは大スクープだと思いました。世界に発信すれば大反響間違いなしでした。だからこそ、私たちはあれの公表を控えました。あなた方も知っているでしょうが、私たちチームはたとえ軍艦を見つけても、それが具体的にどこにあったのかは公表しません。公表すれば、どこかの墓荒らしどもの餌になることは目に見えていたからです。
しかし、私たちのほかにも、あれを発見した団体がいたなんていうのは予想外でした。どうやって見つけたんです?いつから探してたのです?そもそも、あなた方はあれがなんなのか知っていたんですか?
補遺2-SCP-XXX-JPの多元宇宙論的研究: SCP-XXX-JPの有力な起源として挙げられている仮説が「SCP-XXX-JPの異空間転移説」です。その根拠として、SCP-XXX-JPの底部にある局所的な捻じれに物理学的理由付けが行えないこと、SCP-XXX-JPがほとんど時間を掛けずに発見地点に出現していたことがほぼ確実であること、SCP-XXX-JP内から収集された文書にこの説を示唆する内容が含まれていること等が挙げられています。この仮説は2017年にScranton博士によって立証された「多元宇宙の非干渉性の破れ」を根拠として、何ら論理的矛盾を含むことなく証明することが可能となりました。
各支部主任研究者覚書
結論として、SCP-XXX-JPはこことは違う、そしてこの宇宙と非常に密接した異空間で、何らかの巨大な衝撃を被り、その結果としてここに出現したということです。その異空間がどこにあるのかは、我々の知りえないことではありますが、この仮説が事実だとすれば、我々は多元宇宙に関する重要な研究材料を手に入れたことになります。-桑名博士
この仮説で重要なのは、SCP-XXX-JPの異常は破壊不能性と、乗組員の消息をつなげて説明することが出来る点です。発見されたとき、SCP-XXX-JP内には誰もいませんでした。ただ人がいた痕跡があるだけでした。しかし、外部からこの仮説が成り立つほどのエネルギーが加わったとなると、いくらSCP-XXX-JPが堅牢であっても、内部にいた人間はひとたまりもない。おそらく、乗組員は空間を転移する瞬間にはすでに内壁にとてつもない速度で衝突し、塵となっていたことでしょう。内壁をより詳しく分析することが出来れば、乗組員の残滓が検出されるはずです。-Dr.Friedmann
補遺3-インタビュー記録: 2040年前後に起きた財団内の技術的ブレークスルーによって、SCP-XXX-JP内をより綿密に調査することが可能となりました。それまで中断されていた捜索が再開され、結果として微量の人由来成分を各区画の内壁から採取することに成功しました。成分は解析され、現在までにSCP-XXX-JP内を捜索したどの職員のものでもないことが確かめられました。財団の再生医学部門は最先端の記憶再生術によって、乗組員の情報を組織から吸収し、複数の乗組員の統合意識概念体として再構築することに成功しました。以下は概念体(対象Aと表記)と専用の機器を介して行われたインタビュー記録です。
質問者: 安部 公、再生医学部門、脳神経再生科博士
回答者: 対象A
質問者: 初めまして。
回答者: 此処は?
質問者: 病院ですよ。
回答者: お前は誰?何も見えぬ。
質問者: 今のあなたに目はありませんから、何も見えないのは仕方がありませんね。
回答者: 我はいまどうなっている。感覚がない。我はどうなっている。
質問者: それを知る必要はありませんし、正直なところ、私にもあなたの形状は分かりません。
回答者: お前は誰だ?
質問者: 私は研究員です。私はあなたにあの巨大な船橋内で何があって、今に至るのかを、あなたが知っている範囲の全てを知るためにここにいます。
回答者: 我は生きているのか?
質問者: 私はあなたの質問に答えるためにここに来たわけではありません。しかし、あなたは現在、生きているとも死んでいるとも判断できない状態にいるということは答えることができます。そして、あなたの生死を我々が操作することができることも。
回答者: 我を殺そうというのか?
質問者: いいえ。あなたが質問に答えてくれれば、なにも問題ありません。
回答者: 我に何を答えられる?
質問者: 私たちが一番知りたいのは、あなたが乗っていた船についてです。
回答者: 船?あれが船だと?
質問者: 船ではないのですか?
回答者: あれは船なんてものではない。あれは城だ。それも、一国分の容積を誇る、巨城だ。
質問者: それは私の認識と食い違います。私たちの見積もりでは、あの大きさの艦橋は確かに常軌を逸してはいますが、しかし一国分の大きさを持つ船の艦橋とは。
回答者: お前たちは艦橋を見ていながら、船其の物を見ていないのか?そんなことがありえるか?それとも、あまりの大きさにあれを船と認識できなかったのかもしれん。
質問者: 少なくとも、あなたの言うような超巨大構造物を、私たちは認識できていません。私たちが認識できているのは、あの戦艦の艦橋に似た構造物です。そこからあなたは発見されたのです。あなたはあの構造物を知っているはずです。あの構造物はいったい何なのですか?
回答者: お前、あれを艦橋と呼んでいたのか。もしそうなら見当違いだ。あれは単なる電探にすぎん。我はそこに就いていた電探員だ。
質問者: では、船はどのようなものなんですか?
回答者: 先ほども言ったように、我から見て、あれは船という概念をはるかに超越した巨体を誇る。おそらく、あれほどの大きさのものはどの世にも存在しないだろう。しかし、造船所の者に言わせれば、船はいくらでも巨大にできるらしい。まったく信じがたいことだ。
質問者: その船はなんのために作られたのですか?
回答者: あれは軍艦だ。その建艦理由は一つだろう。すなわち、敵を撃滅すること、敵を海の藻屑に変えることだ。
質問者: では、あなたはその船に乗り、戦闘をしていた?
回答者: いいや。あの船は艤装が完了して日が経っていなかった。まだ砲の1つも打ったことがない。それどころか、能動的に動かしたこともなかったのだ。
質問者: つまり、完成して間もなかったと。
回答者: いや、そうではない。船自体はかなり前に完成していた。だが、船を動かす動力、つまりエンジンの開発に時間がかかっていたのだ。その開発も造船所のものが請け負っていたのだが、どうもあれほどの巨体を動かそうとした時に必要なエネルギーを生み出せる機械を作るのは、彼らですら困難であったらしい。
お前も二乗三乗の法則は知っているだろう。この法則を考えれば、あの船がどれほどの排水量を誇っていたかは想像できるはずだ。実際、あの船が閉鎖海域に着水したとき、海域の水位が平均して数十mも上昇し、我らの宿舎はほとんど水没してしまったのだ。それほどの超質量の船を動かそうとしたら、そこらのディーゼルエンジンごときでは歯が立たぬことは、門外漢な我にもわかる。そこで、新たなエンジンが考え出されたわけだ。我は詳しいことはさっぱりわからんが、噂によれば、そのエンジン1つで富士の山を消し飛ばせるエネルギーを得られるらしい。
質問者: では、その船は実際には動かすのを、あなたは見ていないのですか?
回答者: いやいや、私は確かにあの船が動いているのを見たぞ。しかし、不思議なことに、あの船が動いた直後からの記憶がないのだ。
質問者: 何かしらの事故があったのでしょうか?
回答者: 思い出せない。ただ、とてつもない揺れに襲われたのは覚えている。そういえば、船の周りに煙がたっていたような気がするが。おそらく、エンジンの出力が高すぎて、海水が熱せらて蒸発していたのだろうな。もしかしたら、その熱で船のどこかしらに不具合がおきたか、弾薬かなにかが爆発したか。
質問者: では、その船がいまどうなっているかは、全く分からない?
回答者: 分からぬ。
質問者: 実はあなたが発見された、電探というのは、それ単体で見つかったのですよ。つまり、船そのものの痕跡はまったく見つかっていないのです。
回答者: ああ、ならば船そのものも無事ではないだろう。なんたることだ。あの煙はやはりそういうことだったのだ。得体のしれない造船所に依頼されて作られた船という話を聞いたときから不吉な予感がしていたのだ。もう欠片も残ってはいない。もう終わりだ。お前たちがあの船を見ていないというなら、あの船は跡形もなく消滅したのだろう。お前たちは盲ではない。ないものは見れぬ。ああ、なんと哀しいことか。
質問者: ご回答ありがとうございました。ひとまず、インタビューはここまでとしましょう。また後日、お話しさせてください。
回答者: ああ、我を生かしてくれるなら、もう何でもいい。我も疲れた。しばし休もう。
補遺4-最新の研究: SCP-XXX-JPに関連する研究テーマで最も優先されているのは、SCP-XXX-JPの接続されていた超大型不明船舶の捜索手段の確立です。現在までのところ、観測可能な宇宙内に超大型不明船舶の存在は確認されておらず、隣接する多元宇宙空間を航行している可能性が最も高いとされています。
超大型不明船舶の形状が戦艦「扶桑」と相似していると仮定した場合、超大型不明船舶は全長9km、全幅1.5km、排水量8億1000万tになると概算されています。超大型不明船舶の航行原理は不明ですが、20ノットで航行する場合の運動エネルギーを考慮した場合、対象Aの発現には誤りがあるか、搭載されているエンジンの出力が過剰である可能性があります。対象Aの発言を参考にすると、搭載エンジンの出力は超大型不明船舶を動かすのに必要なエネルギー量のおよそ10億倍以上になると見積もられており、あらゆるシミュレーションが船内の全人員がエンジン動作と同時に消滅するという結果を出しました。
そのため、現在の超大型不明船舶は漂流状態にあるとされています。これら仮説から、財団は電磁波を用いた多元宇宙間探索の規模を広げ、超大型不明船舶の発見を目指しています。発見された場合、超大型不明船舶に当ページの番号が割り振られ、SCP-XXX-JPはその付属品という扱いになり、新たにSCP-XXX-JP-Aとナンバリングされます。
付録-要注意兵器-999探索作戦: SCP-XXX-JPが付属していた超大型船舶は戦闘力を有しており、それが当該世界に出現したときの脅威度の高さに鑑み、当該船舶を要注意兵器-X999と指定した、多元空間捜索が決定しました。この捜索に先立ち、地球オカルト連合より一部、技術支援を受け、X999と戦闘状態に突入した際に対応可能な装備を次元間で移動可能にし、可能ならば、X999を無力化する計画が立案されました。当作戦に参加する人員は全て、統合部隊Σ(”Pangea”)に所属し、作戦要綱の詳細を閲覧することができます。
パンゲア部隊加入希望者に向けた文書
参加条件: 心身ともに健康で、歯科、血液科、その他必要とされる全ての医療機関で診察を受け、問題ないことが証明されている者。多元宇宙航行訓練を評価B以上で修了している者。現在、優先度3以上の研究に参加していない者。以上の点全てに当てはまり、且つ所属サイト管理官の推薦を受けた者。
参加において提出が必要な書類: 親族に向けた遺書。所属していた研究所に向けた研究の引継ぎ申請書。診察明細書。多元宇宙航行訓練修了証明書。パンゲア部隊加入に向けた宣誓書。
参加後の過程: 能力適正テストを受講(加入当日)。希望配属班の回答(加入当日)。配属班決定(加入から一週間以内)。配属班で各々が所定の訓練を実施(配属から作戦本実施まで)。
作戦責任者覚書: 上記を読んで、当部隊への参加を断念した諸君は賢明な判断を下した。この文書のことはすっかり忘れ、元の業務へ戻ってくれて構わない。
そして、当部隊への参加を希望する命知らずで好奇心に殺されることを厭わないマッドサイエンティスト、アウトサイダー、又は生粋の財団職員。諸君の判断は非常に論理に外れている。まったく馬鹿げているし、大雑把すぎる。諸君もそう思うだろう?
だからこそ、我々は諸君が必要だ。ようこそ、パンゲア部隊へ。-Dr.Rangstorm
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scp-jp リサイクル2019 船舶
執筆中tale
「進水式」
招待状に示されたとある埠頭まで行くと、如何にも熟練の技術者という出で立ちの恰幅の良い男が立っていた。彼は私に、進水式を執り行うので一緒に来てくれと言い、埠頭に横付けされていた小舟に私を誘った。彼は櫂を取ると、慣れた手付きで埠頭を離れ、暗黒の海に漕ぎ出した。
気づくと、私は見知らぬ空洞の中にいた。辺りは電球の光で仄かに照らされているが、全体的に暗く、全貌ははっきりとしない。中央には船渠があり、巨艦が海面に尻を向けている。ここが造船所であることは誰の目にも明らかだろう。
私は常備しているコンパスに目をやった。コンパスの針は落ち着きなく回り続けていた。時計はというと、長針が一分で一周したかと思えば、短針はまるで動かなくなっていた。日付は文字化けを起こし、読み取ることが出来なかった。ここは何処かと尋ねるも、彼は言葉を返さない。
艦の底部を駆ける者。それは確かに人の型に見える。驚くべきはその大きさ。遠目に見ても10尺はあろう。まるで鬼のようだ。丸太の如き剛腕に、掴まれているのは盤木か?あれを艦から外しているということは、もう進水は目前ということになる。
徐々に艦を束縛していた物が取り払われ、艦全体が輪郭を得る。それは確かに我々にもたらされるに相応しい、堂々たる艦影をしていた。
遂に時がきた。艦底に艦を陸に引き留めるものはない。あとは支綱を切断すれば、艦は眼前の海に着水し、艦としての生涯をいよいよ始めることとなる。
艦の舳先には、筋骨隆々の老人がいた。いつどこから現れたのかは全く分からなかったが、事前に聞いていた造船長と特徴が一致する。あれがおそらく、この誰も場所を知らない幻の造船所、「七福造船所」の長。背丈は5尺、両手に巨大な斧を持ち、艦首と相対する。顔の殆どを白髭が覆っているため表情は全く読み取れず、眼も固く閉ざされているので、何を考えているのかまるでわからない。ただ、その風格は悠久のときを生き続けてきた者特有の覇気を纏っているように感じられた。我らの大将とは同年代、またはそれ以上だろう。
ふいに、空間内の空気が張り詰めた感じがした。造船長は固く閉ざされていた瞼をぱっと開き、眼を支綱に向けると、ゆったりとした動作で斧を頭上にまで振り上げた。空間内の緊張はここで最高潮に達し、私の額から汗が噴き出た。造船長の頭上から斧は振り下ろされた。それは残像を伴うほどの速度で、支綱を絶ち切きり、艦と陸を繋ぎとめる最後の砦が勢いよく宙を舞う。次に、何かが軋むような音が響き、艦がまるで水を求めているかのように、海面に向かい一直線に動く。けつから海面に着水する巨体が、艦より高く舞い上がる飛沫をあげる。背後からは絶えず万歳の声が轟く。その声はおよそ10種聞き取れた。となれば、この艦の進水式に携わったのは、私を除けばほんの10人程度ということになる。なんたる練度の高さだろうか!
艦が完全に海面に浮かび、静かに停止すると、いよいよ進水式は大詰め。
造船長は声を張り上げて言った。
「本日をもって、『Charybdis』は我らの元を離れ、艦隊司令部の管理下に入る。以降の手続きに関しては全て、この場に同席して頂いた司令部直属の者に任す。以上で、『Charybdis』進水式を閉幕する」
こうして、私含め僅か10数人によって執り行われた、細やかな進水式が終わった。
気が付くと私は、見慣れた海に『Charybdis』と共にいた。先程までいた造船所は全て嘘のように消え去っていた。ただ、あの場所に立ち込める熱気と汗の臭いだけは、艦と私に纏わりついていた。2019年5月1日、登り始めた日の光が『Charybdis』の甲板を照らした。
以下の音声記録は20██年██月██日に、特別収容プロトコルに基づく異常なイベント発生の際に記録されました。
[Dクラス職員が収容室に入る。Dクラスは直ちに異常性の影響を受ける]
[オブジェクトは驚いたように飛び上がり、収容室の隅に駆け寄る。オブジェクトは怯えているように見える]
おいおい、これはどういうことだ?マティ?君なのか?
[オブジェクトが変化したDクラスに向かって吠える]
その声はマティだ。だが、ちくしょう。つまり俺は無駄死にだったってわけだ!それが今やはっきりした!あの最期に感じた、何かに顔を舐められている感覚は、俺の幻想だったわけだ!ちくしょう!
[オブジェクトは変化したDクラスの元へゆっくりと近づいていく]
おお、かわいそうなマティ!どうか俺を思いっきり噛んでくれ!俺は償いをしなければならない!俺は一番大切だったものすら碌に守れず死ぬ愚か者だ!さあ、俺の手を噛んでくれ。
[変化したDクラスはオブジェクトに手を差し出す。オブジェクトはその手を口内に入れる]
なんで?マティ、もっと強く噛んでくれ。そうでないと収まらない。俺には地獄じゃ生ぬるい罪を背負っているんだ。君が僕を許しても、俺が俺を許せないんだ。頼む。一思いに噛んで、そしてどこか遠くへ行ってくれ。
[オブジェクトは口内から変化したDクラスの手を出し、一度吠える。もはや、最初の恐慌は観察できない]
マティ……
マティ、ここがどこか知ってるか?
[オブジェクトは変化したDクラスを注意深く観察する]
マティ、確かに昨日は俺の頭がどうにかしてしまってたかもしれない。もし俺が行くとすれば、それは地獄だろうし、そこにマティがいるなんて考えられない。だから、きっと、ここは現実なんだろう?昨日は悪かった。状況がまるで呑み込めなかったんだ。許してくれ、マティ。俺は、君の甘噛みで今では完璧に正気だ。たぶん。
[オブジェクトは変化したDクラスの足元に行き、体を足に摺り寄せる]
マティ。ここはたぶん、でかい動物病院のような施設なんじゃないか?君はあの後、誰かに保護されて、そしてこんな綺麗で広々とした部屋に住んでる。窓1つなく殺風景なのが気になるし、あの毛布がないんじゃどこでだって君は満足しないだろう。でも、君を見てると、どうやら俺が心配してるようなことにはなっていないようだ。
説明: [SCP-2420]はイエイヌ(Canis lupus familiaris)であり、人間を外見・記憶ともに、かつて自身の飼主だった人(本名ジョン・█████)と同じ姿(SCP-2420-1個体)に変化させる能力を持っています。
記事になるかもしれないアイディアたち
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-81XXの、気温が常に23~25度に保たれる自然環境再現区画-04に収容されます。区画内環境整備以外の目的で収容区画へ入ることは禁止されています。整備を行う人員は収容区画へ入る前に身体検査を受けなければなりません。収容区画内の整備で使用する物品以外を持ち込むことは禁止されています。
未収用状態のSCP-XXX-JPの収容のため、渉外部門、諜報部門、物流部門、保安部門の共同捜索活動が行われています。収容施設外でSCP-XXX-JP-Aが出現する事態になった場合は航空機動部隊が出動し、SCP-XXX-JP-Aによる被害の拡大防止に努めます。
説明: SCP-XXX-JPは外見、及び遺伝子が二ホンミツバチ(Apis cerana japonica)と一致する異常生物群です。現在までの研究により、異常性を発現するのはメスの働きバチのみであり、オスのハチと女王バチは異常性を発現しないことが判明しています。SCP-XXX-JPの異常性は遺伝し、女王バチとなったSCP-XXX-JP個体は新たなるSCP-XXX-JPを生み出します。
SCP-XXX-JPの異常性は、SCP-XXX-JPの巣へスズメバチ亜科(Vespinae)に属する昆虫(報告書内では総括して“スズメバチ“と表記)が侵入したとき、または外部からの物理的接触により巣が破損したときに発現します。異常性が発現すると、SCP-XXX-JPは集団でスズメバチ、又は巣を破損させた対象を取り囲み、肉体に激甚的な変化をもたらします。変化したSCP-XXX-JPの肉体は金属光沢を帯びた灰色に変色し、鋼鉄と同程度の堅牢さを獲得します。そして、SCP-XXX-JP個体同氏は、変化した肉体を接合し合い、スズメバチ、又は巣を破損させた対象を中心とする巨大な構造物(SCP-XXX-JP-A)を作り出します。SCP-XXX-JP-Aの外見の種類は概ね軍事兵器と類似しています。現在までに拳銃型、ガトリングガン型、武装車両型、戦車型、駆逐艦型、戦艦型のSCP-XXX-JP-Aが確認されています。
SCP-XXX-JP-Aは排気口に該当する部分が欠如しているため、数分程度でSCP-XXX-JP-A内部の気温は50~60度程度になります。SCP-XXX-JP-Aは内部に閉じ込められたスズメバチ、又は巣を破損させた対象が死亡するまで暴れまわります。SCP-XXX-JPの変化は不可逆的であり、一度変化したSCP-XXX-JPは最終的に自信の硬化変形した肉体によって内臓が押しつぶされることで死亡します
SCP-XXX-JPは2017年6月27日に養蜂を営む民間人からの「飼っていたミツバチが鉄塊になった」という通報を受け、不審に思ったエージェントが現場に出向き、発見されました。収容作業中にSCP-XXX-JPの巣が一部欠損したことによりSCP-XXX-JP-Aが出現し█人の職員が負傷しましたが、ごく小規模な民間人への記憶処理とカバーストーリーの流布により問題なく収容が完了しました。その後の8月31日、Twitter上で「空飛ぶ船を見た」という内容の文章と画像が発見され、事実確認のために画像が撮影された場所まで派遣されたエージェントは日本生類総研の破壊された施設を発見しました。当該施設の存在は直ちに財団に報告され、施設内の捜索が行われました。その結果、未収用状態のSCP-XXX-JPが存在することが明らかになりました。周辺地域に在住する民間人への聞き取り調査の結果、████人がSCP-XXX-JP-Aを目撃していたことが判明しましたが、カバーストーリーの策定が困難であったため、周辺一帯への記憶処理剤の散布が行われました。
施設内の捜索の結果として、財団は複数の重要な未確認以上生物の情報を入手しました。しかし、大半の資料は削除されており、現在はそのバックアップデータの発見が情報部門により行われています。財団が回収したデータの中から、SCP‐XXX‐JPをめぐって日本生類総研と詳細不明の武装集団との間に抗争が発生していたことが明らかになっています。施設内にはSCP‐XXX‐JPの活性化以外の要因によってできたと思われる弾痕が複数発見されています。
施設に置かれていたSCP‐XXX‐JPの現在の居場所は判明していません。民間人の証言を基にした周辺区域の捜索は、複数の非異常なミツバチの巣を発見に留まりました。現在の最大の懸念材料として、詳細不明な武装集団がSCP‐XXX‐JPを獲得している可能性が指摘されています。回収されたデータ内では、日本生類総研がSCP‐XXX‐JPを軍事的に利用する案が提出されたのち、何者かに却下された痕跡が存在します。
監視カメラ映像の書き起こし
文書作成者注: 以下の書き起こし内容は施設内の複数の監視カメラ映像の継ぎ合わせたものです。映像内には、膨大な人数の日本生類総研構成員と、複数の未確認異常生物が認められました。しかし、今回はそれらすべてを文章化することはせず、SCP-XXX-JPと関連性のある部分のみを切り抜いています。完全な映像記録の閲覧を希望する方はサイト-8176の重要保管室を訪れてみてください。
日付: 2017/08/31
<閲覧開始>
<07:00>: 周囲を野花に囲まれた空間の中心部にSCP-XXX-JPの存在を確認できます。1名の研究員がガラス越しにSCP-XXX-JPを観察しながら、3名の研究員が複数のメーターの値を見ています。巣からは数匹のSCP-XXX-JP-2が出入りしていますが、異常性は発現していません。
<07:10>: 巣から複数のSCP-XXX-JP-2が出てきて、警戒行動を始めます。それを見ている研究員は明らかに動揺しており、1人が室内電話を使い施設管理者と連絡を取っています。
<07:16>: 施設全体に警報が鳴り響き、非常事態を意味する警告ランプが点灯し、施設管理者が緊急事態宣言を発令します。研究者は個々、可能な限り武装し、全ての研究施設を幾つかの手順を飛ばして強制閉鎖します。しかしSCP-XXX-JPの研究施設だけは閉鎖されず、施設出入口が開放されます。このことにその場にいた研究員は驚いている様子を見せ、施設管理者と連絡を取っていた研究員は大声をあげて早急に施設を閉じるように抗議しています。しかしその意見は最期まで受け入れられないかったようです。
<07:18>: 複数の非武装の研究員が非常口を目指して走っています。SCP-XXX-JPの様子を傍で見ている研究員たちも退避しましたが、ただ1人の研究員だけがその場に残ります。残った研究員は先ほどまで施設管理者に抗議していた人物です。残った研究員は研究施設に入り、SCP-XXX-JPの巣に近づいていきます。
<07:20>: 非常口周辺が爆破され、3つの監視カメラが破壊され、少なくとも5名の研究員が死亡します。爆炎は消火装置によって消火されますが、煙の中から武装した集団が施設内に侵入します。全員が顔をガスマスクで覆っており、人物の特定はできていません。武装集団は廊下を進み、途中で逃げ遅れた研究員を射殺していきます。また、殺した研究員の所有物の中から何かのカードを取る様子が記録されています。
<07:28>: 武装集団は鉄製の扉の前に集まり、カードをスキャナーに通します。扉は電子的ビープ音を鳴らしながら横に開き、武装集団のうち5名がその中に入っていきます。室内には複数の監視カメラ映像が映し出されており、その中にSCP-XXX-JPの姿も確認できます。武装集団はまず、室内にいた研究員を瞬時に射殺し、映像に目を通しています。そしてSCP-XXX-JPが映っているテレビを指さすと、部屋を出て再び走り出します。
<07:35>: 武装集団がSCP-XXX-JPの研究施設前までたどり着きます。まずリーダーと思われる人物が部屋に入り、そこに6人が続きます。管理室、研究室には誰もいません。7人の武装集団は飼育室に入ります。室内にはSCP-XXX-JPと研究員が1人います。研究員は巣に銃口を突きつけています。武装集団が研究員を殺すより先に研究員は引き金を引き、巣に一発の銃弾が命中したように見えます。この瞬間、SCP-XXX-JP研究施設内を映す全ての映像が途絶えます。
<07:38>: SCP-XXX-JP研究施設の外で待機していた武装集団のうち2人が突如として出現した灰色の壁により押し潰され即死します。施設内にいる全ての武装集団は混乱している様子を示しています。灰色の壁は周囲の壁を破壊しながら徐々に移動しています。
<07:40>: 複数回の爆発音と破砕音の後、空が映し出される。
<閲覧終了>
補遺: 音声
概要: 以下は██:██にPoI-3333とPoI-6666の間で交わされた施設内通話の書き起こしです。
<閲覧開始>
PoI-3333: はい、こちら[編集済み]研究室。研究管理者██です。
PoI-6666: ██だ。突然で済まないが頼みたいことがある。
PoI-3333: ああ、はい。なんでしょうか?
PoI-6666: 君たちが研究している[編集済み]についてだが、今日より当研究施設の対攻撃用生物兵器として使用することが決定した。
PoI-3333: まだ[編集済み]は研究段階で、そのような利用が可能であるとは思えません。
PoI-6666: 承知の上だ。我々はあくまで外部からの攻撃を受けた際の緊急防壁として使用すると言っているのだ。[編集済み]は現在までの研究で既にその防御性能の高さと同時に敵対存在への殺傷能力の高さをも確認できている。それさえわかれば十分であると我々は判断した。
PoI-3333: しかし不安要素が多すぎます。第一に[編集済み]の能力が起動して、それが我々を護る盾になるほど頑強である保証がないこと、第二に[編集済み]の能力の起動は敵対存在への殺傷力を有するとともに我々への殺傷力をも持っていることです。
PoI-6666: それも承知している。しかし我々にはあれが必要だ。
PoI-3333: 私には理解しかねます。なにをそれほどに焦っているのですか?
PoI-6666: 敵は近くにいる。
<閲覧終了>
付記: 管理室から回収された情報によれば、この通信が行われる10分前に施設周辺に散在していた監視用昆虫型生物セキュリティからの電波が全て途絶えていたことが判明しています。
概要: 以下は██:██において[編集済み]研究室内の複数の監視カメラに記録されていた、PoI-3333と武装集団との会話、および現場の状況の書き起こしです。
<閲覧開始>
PoI-3333: あなた方が来ることはすでに知っていましたよ。
武装集団はPoI-3333に銃口を向ける。PoI-3333はSCP-XXXX-JPに拳銃を向けている。
PoI-3333: あなた方が少しでもその場から動けば、この場にいる生物は全て鉄の城に圧し潰されることになります。これは脅しではなく真実です。
武装集団はPoI-3333から銃口を向けたまま動かない。
PoI-3333: 今すぐこの施設から立ち去りなさい。
武装集団のうち5人が部屋から退出する。部屋に残る武装集団は3人である。
PoI-3333: あなたも、今の方々に倣ってここから出ていってください。
PoI-3333と最も近い距離にいる武装集団のうちの1人が銃を下ろし、後方で会話をしているように見える。PoI-3333は動揺している。
PoI-3333: 動くな!
武装集団はハンドサインと思われる動作をする。2人の武装集団が部屋から出る。残った1人の武装集団がマスクを外す。
武装集団-A: 交渉をしましょう。
PoI-3333: なんのですか?
武装集団-A: それの所有権についてです。
PoI-3333: あなた方にこの蜂を譲れということですか?
武装集団-A: その通りです。私たちにとって、それは非常に興味深い。あなた方がそれをこの灰色の施設に仕舞い込み続けるより、私たちはそれを使うことができる。もちろんタダでとは言いませんよ。抵抗しなければ、ですが。
PoI-3333: なにに利用するつもりですか?
武装集団-A: あなた方も分かっているでしょう?それの兵器としての有用性。半永久的に入手可能な鋼材。再利用可能な兵器の皮。それさえあれば、私たちは最高の軍を編成することができる。
PoI-3333: なぜこの時代にそんなことを。
武装集団-A: あなたには理解できないかもしれません。私たちとあなたたちは住んでいる世界が違う。しかし、あなた方が無用な介入をしなければ、私たちとの関係性はほとんどありません。そのため理解する必要もありません。
PoI-3333: それは重要なことでは。
武装集団-A: いいですか?この交渉が成功すれば互いにwin-winな結果になるのですよ。先ほども言いましたが、私たちはそれをタダで貰おうなどとは思っていません。それが行うことのできる仕事量を鑑みれば、あなた方には多大な資金がもたらされるでしょう!
部屋の出入り口から投げ入れられた閃光弾が炸裂し、部屋中が一時確認不能になる。PoI-3333の呻き声が聞こえる。
武装集団-A: 我々の礎となるのだ。
PoI-3333: ああ、眼が。くそ、離せ!
武装集団-A: 動くな。口を閉じろ。
PoI-3333は武装集団に囲まれ完全に拘束されている。
PoI-3333は口を押えられながらも呻いている。武装集団-AがPoI-3333を殴り気絶させる。
<閲覧終了>
付記: こののち、SCP-XXXX-JPは外部からの衝撃が加えられていないにも関わらず活性化した。その原因は明らかになっていない。
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アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 新たなSCP-XXX-JP個体が発見された場合、サイト-8199に輸送されます。個体は非常に高齢であるため、輸送の際の取り扱いは慎重に行う必要があります。新たなSCP-XXX-JPの出現の兆候である可能性のある全ての失踪事件には、財団の監査の目が入っている必要があります。
確保されたSCP-XXX-JPには定期健康診断を行ってください。SCP‐XXX‐JPの精神状態を安定させ、より恒久的な保護を行うための努力をしなければなりません。
説明: SCP-XXX-JPは複数枚の異常性を有した写真です。SCP-XXX-JPの材質、耐久性に異常な点はなく、異常性がどのようにして発生するのかは不明です。そのため、SCP-XXX-JPの総数は不明であり、現在でも年に1から2枚の新たなSCP-XXX-JPが回収されています。
SCP-XXX-JPの表面に人物の顔写真を貼り付けることによって、その顔写真に映っていた人物はSCP-XXX-JP-1となります。SCP-XXX-JP-1となる人物には瞬間的な肉体の変化が生じ、SCP-XXX-JPに映されていた人物と同等の肉体、自身がその人物と同様の氏名になったという思考、肉体に対する過剰な信頼感、その人物の現在の年齢や大まかな生涯に関する知識を得ます。SCP-XXX-JP-1はその肉体を保持するためにあらゆる努力を優先的に行うようになります。
補遺1-SCP-XXX-JP-1へのインタビュー:
対象: SCP-XXX-JP-1-1、ジャンヌ・カルマンの姿を取っている
質問: ██博士
<再生開始>
██博士: ええ、ではインタビューを開始します。よろしくお願いします、ああ……██さん?
対象: それは旧名ですよ、先生。今の私はジャンヌ・カルマン、史上最高齢の人類です。先生ならご存知では?
██博士: ああ……ではジャンヌさん。さっそくですが、あなたに質問をさせていただいても構いませんか?
対象: ええ、もちろんです。
██博士: ではさっそくですが、あなたは本来██ ██さんであることに間違いはないでしょうか?
対象: そうですね。しかし、今の私はジャンヌです。
██博士: その人物は四半世紀も前に亡くなっていることはご存知でしょうか?
対象: ええ、知ったのは一週間ほど前でした。彼女は天寿を全うしたのでしょう。そして今は、その世界一長い生涯を途中から再開しているのです。
██博士: ああ……そうなんですか。あなたはジャンヌさんの記憶をどの程度持っているのですか?
対象: 全ては持ち合わせていません。それはとても残念でもあり、そして幸運なことでもあります。まったく同じ記憶をもって人生の再出発をするのはあまり面白いことではありません。それに、今の私には世界一大事な息子がいるのです。たったひとりの息子です。前の彼女が絶対に持ち合わせられなかった記憶なのです。私はこの先100年以上続く生涯を、息子への献身に捧げられるのです。この肉体のおかげで。
██博士: なるほど……ではあなたは結局のところ、ジャンヌ・カルマンなのですか?
対象: 今の私は間違いなくそうであると信じていますよ。
<再生終了>
付記: この後も再度インタビューを行い、対象者の記憶の詳細を掘り下げようとする試みは失敗しました。彼(又は彼女)の主張はどうも具体性を欠いていてちぐはぐな印象を受けました。結局、資料として残すほどの情報を聞き出せなかったのが残念ですが、今後は別のアプローチから彼の記憶を探っていこうと思います。—██博士
今日ここまで
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
2018/03/20、今日はここまで
アイデア:
SCP-XXX-JPは、「ジャンヌ・カルマン女史」の出生証明書のコピーです。SCP-XXX-JPを半径1m以内にある状態で8時間以上睡眠した人間は、その性別、年齢に関係なく、ジャンヌ・カルマンに見える人型実体(SCP-XXX-JP-1)に変化します。この変化は瞬間的かつ不可逆的です。いずれのSCP-XXX-JP-1も元の人間の記憶を保持しておらず、ジャンヌ・カルマン女史の記憶を保持しています。そのため、全てのSCP-XXX-JP-1は自身をジャンヌ・カルマン本人であることを疑わず、SCP-XXX-JP-1同士が出会った際には強い混乱を示します。高齢のため、一部の記憶や陳述が不明瞭ではありますが、SCP-XXX-JP-1は1997年に"ある人物"に襲われ殺されかけたという内容の話を担当職員に積極的に聴かせようと試みます。この話を無視したり、話題を変えようとする行為は、SCP-XXX-JP-1が強い不快感を露にする結果となります。
1:SCP-XXX-JPの定義
2:SCP-XXX-JPの説明と実験記録
3:SCP-XXX-JPの発見経緯
4:インタビュー記録、謎の存在XXX-JP-1に言及
5:インタビュー記録、謎の存在XXX-JP-1の顛末と最期
発見されたSCP-XXX-JPの一例、駆逐艦「フレッチャー」
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、サイト-81██の低危険物収容ロッカー内にまとめて収容されます。新たに発見されたSCP-XXX-JPはサイト管理者に報告した後、下記の一覧に追記されます。映って船舶の特定は軍事部門が担当します。
説明: SCP-XXX-JPは、あらゆる戦闘能力を有する艦艇の何れか一隻と同名である人物のもとに、その船舶を映した写真が届けられる現象です。運送は決まって観測地点の外側から飛来する1~10羽のカモメによってなされます。写真は人物が定住する住居の郵便ポストか、人物の手元に投函されます。写真を送ったカモメに異常性はありません。すべての写真の裏面には簡素なメッセージが添えられ、筆跡はバラバラではありますが、すべて「御免」と署名されています。
写真には一隻の艦艇が碇泊している姿が映されたものもありますが、多くの写真は一隻の艦艇が未知の存在と戦闘を行う姿が映されています。未知の存在の多くは巨大なタコやウツボ、サメを合体させたような姿をしています。また、写真のうち半数は、一隻の艦艇が未知の存在の攻撃を受け撃破された瞬間を映しています。
近年になって、SCP-XXX-JPと関連する可能性を指摘されているいくつかの事例において、不明な原因による船舶の行方不明事件があります。行方不明になった船舶のうち複数がSCP-XXX-JP発生によってもたらされた写真に含まれていることが確認されています。
SCP-XXX-JPとの関与が疑われる最初の船舶失踪事件は、防護巡洋艦「畝傍」の行方不明事件です。これ以降、給炭艦「プロテウス」、潜水艦「ソードフィッシュ」、戦艦「サン・パウロ」などのSCP-XXX-JPと関連する可能性の高い行方不明事件が発生しています。また、いくつかの行方不明であった船舶は深海探査の結果、その船体が大きく損傷した状態で発見されています。船舶の史実を鑑みて、この損傷のほどの多くの原因は未知です。
関連して、未知の存在と同一と推測される生物が、古来から船舶を襲撃し撃沈していたことが蒐集院の資料から明らかになっています。一説には、未知の存在を抑制するために戦闘艦を拝借している可能性が示唆されています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPに関する情報は全て検閲対象です。財団は、全世界の船舶から伝声管を排除するべく、船舶内の通信設備の技術的向上を促進しなければなりません。現在、そのための部門が設置され、伝声管の使用率は年々減少しており、SCP-XXX-JPに関する情報が発見される頻度も減少傾向にあります。
説明: SCP-XXX-JPは伝声管を使用する送信者と受信者の間で発生する、音響的改変事象です。SCP-XXX-JPが発生すると送信者が伝声管に発した発言、声量に関係なく、███寿司のタッチパネル音声に改変されます。この事象により受信者のほとんどは困惑を感じますが、SCP-XXX-JPが同じ伝声管に短期間のうちに、又は連続的に発生した事例は確認されていません。
SCP-XXX-JPの最初の発生は蒐集院の記録によれば、1898年ごろの戦艦「富士」の船内であることが判明しています。再現性がないために明確な記録をとることは困難であり、時間を要することになりましたが、1936年に駆逐艦「雪風」の船内において初めて信頼できる記録を取ることに成功しました。
対象: [人間、団体、SCPオブジェクトなど]
インタビュアー: [インタビュアーの名前。必要に応じて█で隠しても良い]
付記: [インタビューに関して注意しておく点があれば]
<録音開始, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
インタビュアー: [会話]
誰かさん: [会話]
[以下、インタビュー終了まで会話を記録する]
<録音終了, [必要に応じてここに日時(YYYY/MM/DD)を表記]>
終了報告書: [インタビュー後、特に記述しておくことがあれば]
お寿司×軍艦という使い古されたダジャレ。軍艦注文すると現実の軍艦が消える。そして寿司屋の地下に転移する。船員は死ぬ。差別化頑張れ。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは収容区画8181に生活しています。SCP-XXX-JPへは食事宅配サービスを称して、十分な量の食事が供給されます。また、老齢者看護の名目の元、SCP-XXX-JPの健康状態を確認するとともに、安定した精神を維持するためのコミュニケーションを行います。
SCP-XXX-JP-1は全て回収され、秘密裡に焼却処分されます。
説明: SCP-XXX-JPは静岡県██市に住む、高齢の男性です。SCP-XXX-JPの異常性は、SCP-XXX-JPが釣りを行った際に発生します。SCP-XXX-JP、および使用される釣り具、又は釣りを行う地点においてはいかなる異常性も確認されていません。
SCP-XXX-JPが釣りを始めると、約1時間で針の先端に取り付けられていた餌が、SCP-XXX-JPの息子に当たる人物の死体に変化します。この死体はSCP-XXX-JP-1に指定されます。SCP-XXX-JP-1は遺伝子的にみてもSCP-XXX-JPの息子であることに間違いないことが判明しています。
SCP-XXX-JPの息子は、19██年██月██日に行方不明届が提出されています。直前に、彼はSCP-XXX-JPとともに漁船に乗って沖合で釣りを行っていました。その日はしけが激しかったためSCP-XXX-JPは釣りを中断し、彼に帰ることを伝えようとしましたが、その時点で彼は船上から消えていました。
へんてこな釣りをするおじさん。糸を垂らしてから数分で大物のがれきを吊り上げる。獲物はいつも釣り針の部分に転移するように出現する。独り身。強く生きろよ。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: SCP-XXX-JPは複数の枝木で構成された人型実体です。SCP-XXX-JPは凡そ高齢の男性と報告される声で発話することが可能で、その発声機構は不明です。SCP-XXX-JPは職員と問題なく対話することが出来る程度の知能を示しています。SCP-XXX-JPを構成する枝木に強い衝撃を与えたり、抜き取ろうとする行為は、SCP-XXX-JPへの極度の苦痛を与える結果となります。例として、SCP-XXX-JPの脚部に対応する部分から長さ3 cmの枝木を抜き取る試みはSCP-XXX-JPの強い抵抗にあい妨げられ、その前後の衝撃によって小枝の一部が欠損したことに対して、SCP-XXX-JPは「骨折した」旨の発言を繰り返し、治療の必要性を訴え続けました。
SCP-XXX-JPは常にフルートに類似した木管を口に加えています。SCP-XXX-JPはその木管を時折フルートの演奏のように構えます。その後、木管からは凡そ1~3 g程度の粉末が放出されます。この粉末はSCP-XXX-JP-1に指定されており、これを体内に取り込んだ人間は異常な能力を獲得します。
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル:
説明: SCP-XXX-JPは362隻からなる異常な陸軍潜航輸送艇の総称です。諸元の殆どは2型の陸軍潜航輸送艇に即しています。従来の潜航艇と異なり非武装な状態であり、不明な方法によって海水による外殻の腐食を防止することによって非常に長期な運用を可能としています。SCP-XXX-JPは通常、まったく不可視、且つ接触することが出来ません。SCP-XXX-JPを認識し、触れることが可能となるためには、陸軍潜航輸送艇の乗組員として正式に任命され、且つ陸軍潜航輸送艇に関する知識を有している必要があります。実験によれば、陸軍潜航輸送艇に乗り込み、延べ100時間の艇内作業を行うことで、誰であれSCP-XXX-JPを認識できるようになることが判明しています。しかし、少なくとも1年以上、陸軍潜航輸送艇に触れていないとSCP-XXX-JPを認識することが出来なくなります。
SCP-XXX-JPが発見された時期は1944から1946年の間であり、発見場所は東京湾周辺に集中しています。第一発見者の多くは非職員である陸軍潜航輸送艇の乗組員であり、特に第二次世界大戦終了後に「異常な数のまるゆがいた」とする目撃例が相次いだことから、財団の関心を強く引くことになりました。現在、財団が記録している最古の発見報告は荒巻 茂(潜伏工作員)が行いました。
[前略]
この「まるゆ」という奇怪な船に乗り始めてから随分と長い時間が経った。毎日が驚きと困惑の連続であった日々が今では懐かしく思われる。
[中略]
困惑、といえば先刻とても不思議な体験をしたのでこの定時報告に併せて記すことにする。私はもう何ヶ月も前から繰り返される訓練を行い、その合間に工作員としての職務を果たすべく周囲に目を配っていた。そうしていたら遠くの方から明らかな潜水艦によって作られる波が私たちの方へ走ってくるのが見えた。私は直、周りの船員にそれを教えた。皆困惑の表情を浮かべていた。一瞬、敵の潜水艦か魚雷の航跡ではないかとも思ったが、こんな場所までそれらが侵入できる道理はないので、やはり味方の潜水艦だと思った。
その船はまるゆと非常によく似て変わった形をしていた。その船は私たちのすぐ横に並ぶようにして止まると物音一つ立てずに静止してしまった。これはどういうことだろうか、周りの方々と話していたが、暫くすると幾人ものお偉いさんが来て、その船を興味深そうに — どちらかといえば歓喜の気持ちが多分に含まれていたようにも見えた — じろじろと見つめる。この船はなんなのかと聞いてみたが、新造艦であるという回答しか得られず、私たちの心には靄がかかったような感じだった。
結局、その船は翌日の訓練のときには姿を消していたし、誰もその行方を答えることが出来なかった。お偉いさんに聞こうかとも思ったが、昨日まで埠頭にいた軍艦が今日になって姿形を消してしまうのは私からすればそこまで珍しいことではないし、単に係留場所を変えただけかもしれないし、そこまで重大なことではないと判断した。この報告書を打っている時においてもあの船の行方はわからずじまいである。
[以下略]
SCP-XXX-JPの出現までの詳しい経緯は判明していませんが、その建造の過程で「まるゆ」建造可能な工場を探していたS氏と詳細不明な人物との間で交わされた約束があったことが判明しています。
最初は驚きましたよ。極秘扱いされていた「まるゆ」建造が外部に漏れていて、しかも私たちにそれを作らせてほしいと言うのですから。当然、私も最初、彼が何者なのか尋ねましたが納得のいく回答は得られないし、そもそもどこからやってきたのかと聞いても「辺鄙な地」だの「七福造船所」だの言っていて、これは新手のスパイではないかと疑いました。それで私はその男を拘束して尋問せんと彼の胸倉に掴みかかったのですが、不思議なことに私が出した手はいつの間にか地面をついていて、彼の姿は消えてしまっていたのです。
なにか魔法にでもかけられたような気持ちでその日は終わったのですが、次の日とんでもない報告がまるゆの乗組員から上がってきたのです。私が現場に赴くと桟橋に2隻のまるゆがありました。明らかに片方のまるゆは昨日までそこに存在していませんでした。昨日今日で寄港予定のまるゆがあるはずがないのは分かっていましたから、これはどこからきたのかと不思議に思いました。ゆっくりとそれに近づいていくと、中から昨日見たあの男が出てきました。そして「私たちに任せる気ができましたか」と聞いてくるのです。私はもう驚天動地な気持でした。私はもうすぐにその男にまるゆ建造を依頼しましたね。
ああ、もちろん、その場で二つ返事で了解したわけではありませんよ。船内を見せてもらったんです。船内も見事に従来のまるゆと瓜二つであったのは衝撃でした。図面などはどこで手に入れたのかと聞くと、「船を見れば、凡その内部構造も予測できる」と自信満々に答えるもんですから、これはかなわんと思いました。「造船所なら海軍の手がもう入っているんじゃないのか」と私が聞くと「いいえ、世界のどの海軍も私たちを把握していません。あなた方が唯一のお客様です」と答えました。これはもう断る理由はないだろうと思いました。
翌日から毎日のようにどこからともなくやってくる新造のまるゆを眺め、私はどこか高揚感を感じていました。しかし問題がありました。あまりにも増加のペースが速すぎて乗組員の育成が全く間に合わんのです。仕方ないのであの男に「こちらの準備が整うまで、そちらで保管しておいてほしい」と頼みました。彼もそれを快く了承してくれましたね。
補遺-再発見と報告: SCP-XXX-JPは第二次世界大戦終結後、接収された三式潜航輸送艇の海没作業を行っていた作業員によって再び発見されました。発見されたSCP-XXX-JPは三式潜航輸送艇の左舷側で停止すると、艇内から爆発を起こし、三式潜航輸送艇とともに沈没しました。輸送艇甲板上で作業を行っていた作業員数名がこの時の爆発に巻き込まれ死亡、又は行方不明となりました。このSCP-XXX-JPの存在は直ちに日本政府へ通達され、同時に財団がSCP-XXX-JPの確保を行う契機となりました。
再発見から半年間、財団はSCP-XXX-JPの素性を全く掴めずにいました。しかし、再発見時にSCP-XXX-JPを目撃していたのが輸送艇に乗り込み作業を行っていた人物に限定されることから、SCP-XXX-JPを視認できるのは潜航艇と接触している者のみであるという仮説が塩川博士により提言されました。この説の実証のため、財団はアメリカ合衆国政府、および海軍との交渉の末、1隻の輸送艇を貸与することに成功しました。財団は輸送艇に関する諸所の学習を20名の職員に行わさせ、輸送艇を使用したSCP-XXX-JP捜索任務を開始しました。最初の1か月、SCP-XXX-JPは発見されませんでしたが、1947年██月██日に1隻の所属不明な潜水艦を発見することに成功しました。輸送艇は対象に接近し、それが三式潜航輸送艇と酷似した外見をしていることを確認し、その場で早急な確保作業が行われました。三式潜航輸送艇を使用した捜索が有効であることが判明したため、財団は海軍と掛け合い、海没処分が行われていなかった20隻の三式潜航輸送艇を新たに確保することになりました。
捜索隊が増大したことによって、SCP-XXX-JPの発見、確保数は増加していき、最終的に362隻が財団の収容下に収まりました。しかし現在でも稀にSCP-XXX-JPが発見されることがあり、完全な収容には至っていません。SCP-XXX-JPの完全な収容、および出現経路特定の試みが進行中です。
補遺-特殊造船部局の設立: SCP-XXX-JPを捜索するために使用されてきた輸送艇は数回の改装によって延命されてきましたが、年々エンジントラブルや機関の故障、浸水被害の報告が増加していました。林造船博士はこの現状を改善するために以下の提言を発しました(一部抜粋)。
=三式潜航捜査艇造船部局設置の進言
[前略]
急務の問題は、SCP-XXX-JPの捜索をしている職員の安全が担保できない状況に陥っていることです。この問題の原因は総じて、現在までに使い続けてきた21隻の捜査艇の劣化によるものです。現在の大型潜水艦ですら、20年も使えば老朽化し、新たなる潜水艦への代替わりが必要となる時代に、一昔前の陸軍製の粗悪な潜水艇を使い続けるのはもはや自殺行為に近しい行為です。実際、エンジントラブルで捜査隊の1班はあやうく全滅する危機にあっています。
この問題の解決策として私が提言したいのは、三式潜航捜査艇造船部局の設置です。現在でも財団では造船を行える部局が存在していますが、三式潜航捜査艇を建造可能な場所はありません。そこで、新たに三式潜航捜査艇を建造するための部局を設置し、そこで私たちが「まるゆ」の完全な模造品を作り上げるのです。ここで作られた捜査艇がはたして捜査に使用可能かは判然としませんが、ともかくやってみなければわかりません。
この点について、私は早急な判断を求めます。新たに造船施設を作るには資金も資材も時間も必要になってきます。それに捜査艇を新造するにも数か月はかかる故、可能な限り早い決断を、よろしくお願いしたい所存です。
この提言は日本支部理事の協議の元受理され、新たに特殊造船部局が設立されることになりました。この部局では従来の造船部局で建造されない小型船舶や戦闘能力、収容能力を有しない船舶、SCP-XXX-JPなどの特定のオブジェクトを収容するための専門の船舶を建造するために使用されています。
補遺-オブジェクトクラス再分類に関する議論: SCP-XXX-JPの発見数が年々減少していき、2019年度の発見数が0であったことをきっかけに、SCP-XXX-JPのオブジェクトクラス再分類についての議論が活発化しました。多数の職員がEuclidへの再分類に賛成している一方で、要注意団体関連調査部局や海洋探査部局の職員は現状維持が妥当であるとする意向を示しています。
補遺-新たなるSCP-XXX-JPの出現: 2020年██月██日、東京湾内で3隻のSCP-XXX-JPが発見されました。SCP-XXX-JPは発見時点ですでに潜航を開始しており、捜査隊の出動も行われましたが確保の機会は逸してしまいました。レーダによれば、3隻のSCP-XXX-JPは東京湾を出てから別々の方向に転進したことが判明しており、創作が行われています。発見場所近辺の漁場では、食糧や鉄製品が紛失する事件が相次いで報告されていますが、それとSCP-XXX-JPの関連性があるかは明らかになっていません。
追記-紛失物の再発見: 上記した紛失物と思われる物品の一部がルソン島沿岸部で発見されました。また、近辺にはスクリュー、エンジンが破壊され、燃料が投棄された状態のSCP-XXX-JPが1隻座礁放置されていました。
新たなるSCP-XXX-JPの発見に伴い、SCP-XXX-JPのオブジェクトクラスを再分類する案は保留となりました。発見された残りの2隻のSCP-XXX-JPについては現在も捜索中です。
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの捜索はサイト-8111の捜索部隊を中心として行うべき最重要任務の1つです。あらゆる船舶には財団の捜査がなされることが望ましく、また可能な限り迅速な再収容が求められます。
SCP-XXX-JPを発見した場合、発見者は直ちにSCP-XXX-JPをサイト-8111の地下収容倉庫に移送してください。SCP-XXX-JPの収容、管理は全て遠隔操作型の機器のみで行われます。
全ての船舶の事故には財団の監視が介入した捜査が行われます。
説明: SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-1が土着しているチーク材です。SCP-XXX-JPは非異常なチークと比較して異常に高い耐火性、耐水性、耐腐食性、耐衝撃性を有します。それらの異常な耐性がSCP-XXX-JP-1由来であるのか、元からSCP-XXX-JPに備わっていたのかは判明していません。
SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPに土着している人型非実体です。SCP-XXX-JP-1をセンサで感知する試みは成功しておらず、現在までのところ目視以外でSCP-XXX-JP-1の姿を捉えることは出来ていません。SCP-XXX-JPはあらゆる障壁を通過して移動することが可能であるため、従来の標準人型オブジェクト収容手順が通用しません。このような実体を持たない可視存在に対抗可能な収容設備の研究は現在も行われていますが、完成の目途は立っていません。
SCP‐XXX‐JP‐1は移動の際、必ずSCP‐XXX‐JPを持ち歩きます。この習性のため、SCP-XXX-JP-1はあらゆる障壁を突破することが可能であるにもかかわらず、SCP-XXX-JPによってある程度の行動が制限されます。SCP‐XXX‐JP‐1は明確な目的をもって船舶への侵入を試みることがあります。侵入は主に船内に持ち込まれる積み荷にSCP‐XXX‐JPを紛れ込ませる形で行い、その殆どを成功裡に成し遂げていたことが判明しています。侵入に成功したSCP‐XXX‐JP‐1は人目を盗み、甲板や船内の木造部分を探します。木造部分を見つけると、SCP‐XXX‐JP‐1はそこにSCP‐XXX‐JPを不明な方法で埋め込みます。SCP‐XXX‐JPは組織レベルで木造部分に融合し、一度埋め込まれたSCP‐XXX‐JPを発見することは困難になります。
SCP‐XXX‐JPの発見は財団の船舶でなされました。船舶内に設置されていた監視カメラは、SCP‐XXX‐JP‐1がSCP‐XXX‐JPをもって艦内を動き回っている様子を捉えました。SCP‐XXX‐JP‐1は職員の寝室に忍び込もうと試み、その部屋の出入り口のセキュリティチェックを通過することに難儀している最中に、臨時の収容班により取り押さえられました。SCP‐XXX‐JP‐1は瞬時にSCP‐XXX‐JP内に入ることで収容班の束縛を逃れましたが、この行為はSCP‐XXX‐JPをSCPオブジェクトと認定するに十分な証拠であることが即座に断定され、収容が決定しました。
補遺1-初期収容時のインタビュー記録:
XXX: こんにちは、私の名はXXX。早速ですが、この船に乗り込んで何をしようとしていたか話してもらいましょうか。
[SCP-XXX-JP-1は無言でXXXの顔を見る]
XXX: 貴女が何者かは知りませんが、ともかく何か話してくれないと。
SCP-XXX-JP-1: 守る為です。
xxx: なんと?
scp-xxx-jp-1: 私はこの船を守る為に来たのです、XXX。
xxx: なぜ君が私の名を知っているのかは後で尋ねることにして、その意味をもう少し話してもらおうか。
scp-xxx-jp-1: この船は近いうちに沈むことになります。私にはわかるのです。なぜなら私はすでにこの船と一心同体だから。生物が自身の死期を悟り死に場所を求めて彷徨うように、船にも海の底で眠るときが迫っていることを感覚的に理解する能力が潜在的に備わっているモノなのです。特にこのような大勢の船員を運ぶ大型船は。だから私にはこの船がもうすぐこの海の上から永久に消えようとしているのがわかるのです。理解できますか?
XXX: いや、まったく。船は生物じゃなくて人工物だ。人工物にそのような、感覚は宿らない。
scp-xxx-jp-1: そう考えるのも無理はないでしょうね。私を理解してくれる方とは今までに巡り合ったことがないのです。あなたも私の理解者にはなれないようですね。
SCP-XXX-JP-1: そのようだな。それで、どうしてこの船に乗り込んだのか、まだ納得のいく答えが出ていないようだが?
XXX: この船を守る為だといったでしょう。
SCP-XXX-JP-1: あー、その証言を変えるつもりは?
scp-xxx-jp-1: ありません。
xxx: ならば仕方ない。ここでは君に真実を吐かせるにはいろいろと設備が不足していてね。もうすぐ私たちの拠点の一つに到着するから、君にはそこで改めて取り調べを受けてもらうことにするよ。それまで、君はここで軟禁される。いいね?
scp-xxx-jp-1: 私はこの船から引き離そうというのですか!ああ、なんて愚かなことを。
[SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JP内に入り、これ以降応答しなくなる。]
追記: SCP-XXX-JPを乗せた船は近傍の臨海収容サイトでSCP-XXX-JPの受け渡しを済ませた後、燃料を補給しドック型サイトへ帰港中、沈没を遂げています。乗組員は全員死亡、または行方不明となりました。沈没の原因は不明であり、SCP-XXX-JPとの関与が疑われましたが、SCP-XXX-JP-1はこれを強く否定しました。最終的に、回収された船舶部品や職員の遺体の検査でも沈没原因を特定することはできず、10年にわたる調査の結果、当該事案は超常的で不幸な事故として処理されることになりました。
補遺2-SCP-XXX-JPの動向: SCP‐XXX‐JPがこれまで埋め込まれた船舶のうち複数は、運用中に沈没しています。このことについてSCP‐XXX‐JP‐1は関与を否定しています。また、SCP‐XXX‐JPが埋め込まれた船舶のリストは、SCP‐XXX‐JP‐1の証言に全面的に基づいているため、その信頼性に疑問が呈されています。しかし、SCP‐XXX‐JP‐1の証言とSCP‐XXX‐JPの埋め込まれた船舶の完全な照合は事実上不可能であると見做されており、当該リストはSCP‐XXX‐JP‐1の過去の動向を示す重要な資料として扱われています。
SCP-XXX-JP‐1の証言に基づく、船舶のリスト(沈没した船舶のみを抜粋)
戦艦「三笠」: 1900年に侵入(詳細な日時は不明)。進水式の時の甲板上の様子を部分的に証言した。日本海海戦時には、砲火が艦のすぐ横で爆発し、大きな水柱が林立していたことを記憶していた。同年9月11日に佐世保軍港で「三笠」は爆沈し、SCP-XXX-JP-1からの脱出を余儀なくされた。
練習艦(元二等巡洋艦)「松島」: 侵入日時は不明。1906年より行われた遠征航海時にはすでに艦内に侵入していた記憶があると証言している。1908年4月30日の馬公で発生した「松島」爆沈に巻き込まれることになり、しばらく海上を漂流していた。どれほどの期間を経たかは定かではないが、少なくとも1936年には日本への帰還に成功している。
戦艦「河内」: 1917年に侵入(詳細な日時は不明)。1918年7月12日の爆沈事件発生時まで船内に潜伏。「河内」爆沈後、侵入した艦艇の相次ぐ沈没事故の発生に心を病んだSCP-XXX-JP-1はしばらくの間、船舶から距離を置くことを決める。
戦艦「陸奥」: 1936年に侵入(詳細な日時は不明)。1943年6月8日の爆沈事件が発生し、その爆発に巻き込まれ周辺海域を漂流した後、沈没地点の付近のいずれかの島に辿り着く。その後、「陸奥」沈没事件の調査員を乗せた木造船(船種などの詳細は不明)が当該島に接近していることを見つけ、その船まで泳ぎ船底から侵入を果たす。呉軍港へ帰還した後は、第二次世界大戦が終了するまでの間、僻地の小村で過ごす。
補遺3-リスト作成後に行われたインタビュー記録: 上記のリストが完成すると、SCP-XXX-JPは通常のインタビューにも応じる姿勢を示しました。そのため、XXXはSCP-XXX-JP-1に対するインタビューを実施することに決めました。
XXX: お疲れ様、SCP-XXX-JP-1。今日もリスト作成の協力をしてくれて助かったよ。
SCP-XXX-JP-1: いや、別段隠すようなことではありませんし、気にすることはありませんよ。それより、私の証言が役に立つならうれしいです。
XXX: あとどれくらいあるんだい?
SCP-XXX-JP-1: 今日お話ししたもので全てです。もうこの件に関して、私からお話しできることはなにもありません。
XXX: そうかい。なら私から、一つ君に質問させてほしいんだが、いいかい?
SCP-XXX-JP-1: はい、どうぞ。
XXX: 君がいたという船のうち幾つかが沈没、しかも原因が定かでない爆発によるもの、が含まれることに、君の研究チームは、やはり君が船を沈ませているのではないかと疑っている。……もうこれは以前に一度尋ねられたことであるはずだが、もう一度聞く。君は本当に船の沈没には関与していないのかい?
SCP-XXX-JP-1: ええ。私ができるのは船を守ることだけです。航海が無事になされ、乗組員がみな健全でいられることが私の願いであり、力の源でもあります。……しかし、私にも防げない厄災があるのです。それは乗組員によるものです。私が守ろうとしている乗組員は当然、みな平等に守られています。それ故に、乗組員のうち何人かは、通常では考えられないような災厄を船に齎したのです。守っている二つのモノのうち、片方がもう片方が傷つけようとしたとき、私にはどうすることもできませんでした。いえ、どうするべきかまるで分らなかったといっていいでしょう。
XXX: 君は止めることができなかったのかい?
SCP-XXX-JP-1: 無理ではありませんが、私の言葉や願いすら意に介さない、人の業というものがあるのです。それに、私の身なりは船内では常に異様に映るのです。船の中に女はいませんから。たいていの場合、乗組員の暴走を止めようとすれば、それはさらなる騒ぎとなり、人々は混乱し、乗組員の企みを遂行することを容易にするのです。人伝えに聞いた話では、私を目撃して、それを後世まで船の霊という都市伝説という形で伝わり続けているともいいます。それだけ、私は船内では目立つ異様な存在なのでしょう。だから止めることはできません。ただ、なりゆくに任せ、その乗組員の暴走を誰かが止めてくれるのを祈ることしか、私にはできなかったのです。
補遺4-収容違反: SCP-XXX-JPが収容されていた低危険度収容房が、管理担当チームの研究員がサイト内に持ち込んだん爆薬により破壊され、混乱に乗じてSCP-XXX-JPが脱走しました。当初、調査本部では管理チームの職務怠慢が結果的に今回の事件につながったのではないかとしました。しかし、調査の結果は、サイト内に収容施設を破壊できるほどの爆薬は存在せず、それを外部から調達した形跡も存在しなかったことなどにより、この事案がSCP-XXX-JPの異常性により引き起こされた可能性が高いことを証明しました。
事件発生直後の収容房の映像記録
SCP-XXX-JPからSCP-XXX-JP-1が現出している。SCP-XXX-JP-1はひどく取り乱したように頭を抱え叫んでいる。
SCP-XXX-JP-1: ああ、どうしてそんなことを! 貴方はどうして……どうして。これではまた。
映像が大きく乱れる。SCP-XXX-JPに炎が引火する。SCP-XXX-JP-1は下級研究員の残骸を抱いて泣く。
SCP-XXX-JP-1: こんなことをどうして? 分からない、私には理解できない! なぜこんなことを。
SCP-XXX-JP-1は下級研究員の残骸を投げ出す。収容房内の炎がさらに勢いを増す。映像の殆どは煙で覆い隠される。
SCP-XXX-JP-1: これも私のせいだというのですか? ああ、私はどうすれば。
SCP-XXX-JP-1は収容房の出入り口まで移動する。SCP-XXX-JPに点いた炎はオブジェクト全体を包んでいるように見える。SCP-XXX-JP-1はその状態のSCP-XXX-JPを胸元に両手で抱えながら収容房を脱する。
SCP-XXX-JP-1: 私は認めない。私は船を護る者……船を、船を護らねば……行かなければ。
収容房を破壊するまでに下級研究員が辿った道筋や、収容房を完全に破壊するほどの火薬の入手方法の特定などは依然として未解決です。
補遺5-サイト-8111から送信された意見具申書 事件現場の調査から、爆破事件を引き起こしたのが██下級研究員であることは明らかでしたが、サイト-8111はそれに疑問を呈し、以下の文書を事件捜査の中心人物であった深田博士の元に送信しました。この文書が送られた翌日には、特別収容プロトコルが現在の形に改定され、大規模な捜索が行われることになりました。
日付:
FROM: 三吉照彦博士、サイト-8111管理者
TO: 深田博士、サイト-8181管理者
お久しぶりです。毎日のように私たちのサイトに訪れて、事故原因究明に向けた事細かい調査を行ってくれたこと、そしてSCP-XXX-JPの最終用に向けた協力に感謝します。
さて、今回は私たちのサイトに向けられた一部の痛々しい目線を少しでも逸らせるよう、当サイトの管理者として、当該事件についての意見を述べさせていただきます。
最初に断言させていただきますが、私たちの仕事ぶりは完璧です。完璧、というのは機械的という意味ではありません。一人一人の職員が、人間として可能な最大限の努力を毎日のように続けている、ということです。
それは彼も同じです。
私はこの文書で彼を擁護するつもりはありません。しかし、現実的にみて、彼が今回の事件を引き起こすのは不可能であったということははっきりさせなければなりません。サイト-8111には各部屋に監視カメラと盗聴器が設置されており、年中無休ですべての職員がオブジェクトと同じくらい厳重に監視されています。それは職員の誰か一人が変な気を起こしてオブジェクトを収容違反したときに及ぶ被害を鑑みた結果です。また、サイト内外への出入りにも厳しい監視の目が光っていて、サイト内の職員は外の天候すらも知ることができません。そのような体制下で今回のような事件を引き起こすことは、たとえ私であっても不可能であると断言します。
では、誰が犯人なのか?
私たちは一つの結論を出しました。それは、SCP-XXX-JP(又はSCP-XXX-JP-1、はたまたその両方)が現実改変の類の能力を彼に対して発動させ、彼を重大事件の犯人に仕立て上げた、というものです。
短絡的だと、より詳細な調査が必要だと、あなたは仰るかもしれませんね、██管理員。しかし、これが私たちの辿り着いた結論です。
SCP-XXX-JPはもはや我々の監視下には存在しません。もうすでにどこかの船舶に紛れ込んだか、それとも人里離れた僻地で息を潜めているのか。どちらにしろ、再びどこかで爆発事件が起きて、その現場周辺からSCP-XXX-JPが見つかれば、私たちの推測がより説得力のあるものになるでしょう。
しかし、事故が起きてからでは遅すぎます。私たちはオブジェクトの脅威から人々を守り、隠す義務があります。幸いにして、我々は非異常なチーク材とSCP-XXX-JPを見分ける手段を有しています。しかし、私たちだけでは、SCP-XXX-JPを再び見つけ出すのに時間がかかりすぎます。
私たちのサイトの捜索部隊はすでに行動を開始しています。先ほど完成した当該報告書は、既に担当研究チームだけでなく、全てのクリアランスを持つ職員に閲覧可能な状態になっているはずです。その報告書の先頭に、SCP-XXX-JPの画像を添付しておきました。それこそが我々がSCP-XXX-JPを見つけ出す強力な武器になってくれるはずです。
可能な限り、この捜索任務を支援してください。私たちにはそれが必要です。
下書き此処まで↑↑↑↑
タグ(暫定)
scp-jp safe 木製 船舶 変形 強制力
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: SCP-XXX-JPは不定期に上空300kmに出現し、南太平洋上の大気圏に突入する船舶群です。SCP-XXX-JPは全て、大気圏突入と同時に空力加熱によって燃焼しますが、多くの場合は殆ど欠損ない状態で海面に落下します。落下角度は水面から見ておよそ70度から80度であり、場合によっては小、中規模の津波や、付近の船舶に被害が及びます。SCP-XXX-JPの落下地点はすべてポイント・ネモ(南緯48°52′東経123°23′)であり、その場所以外に落下したという記録は現在まで確認されていません。
SCP-XXX-JPの出現は気象監視衛星より入手されたデータによれば、局所的な空間の捩じれ現象によって開始され、その捩じれの範囲が一定以上になると捩じれの中心から船首と思われる部分が露出し、徐々に船体全体が露になることで完了します。出現が完了すると捩じれは復元されますが、その過程でSCP-XXX-JPが急速に加速し、大気圏へ船首を向け落下していく様子が捉えられています。この動きは現在までに物理的な説明が成されておらず、なんらかの異常な慣性力がかかっているものとみて研究が行われています。
SCP-XXX-JPの艦種は様々ですが、共通する点として、既存の艦型、および艦級と酷似する特徴を有します。SCP-XXX-JPの船体には明らかに現代の造船技術によってこれらが建造された痕跡がありますが、いずれの艦も現実で建造された形跡はありません。しかし、複数のSCP-XXX-JPからは、SCP-XXX-JPの建造を行ったとみられる造船会社「七福造船所」の名が記された散逸的な内容の書類が回収されています。
SCP-XXX-JPの船体に使用されている材質には異常が見られません。しかし、SCP-XXX-JPの落下中、落下後に船体にかかる力の大きさに鑑みると、落下後の船体はあまりにも損傷が少ないことが注目されています。造船部門の見解では、SCP-XXX-JPになんらかの力学的プロテクトが貼られており、それが海面に激突した衝撃で粉砕されることで現在の状況が出来上がっているという仮説が持ち上がっています。
SCP-XXX-JPの引き揚げの試みは、SCP-XXX-JPが最初に落下してから逐次行われました。全てのSCP-XXX-JPを引き揚げる試みは隠蔽工作に投じる必要のある労力が、一つのオブジェクトに対して財団が払える労力を超過していたため中止されました。現在では、一部の特筆すべきSCP-XXX-JPのみにナンバリングが与えられ、研究の対象となり、引き揚げが行われています。以下がそのSCP-XXX-JPのリストです。
- SCP-XXX-JP-A: SCP-XXX-JP-Aは1955年3月12日に海面に落下した、現在の財団が蒐集可能な最古のSCP-XXX-JP船舶です。船型は大日本帝国海軍の防護巡洋艦「畝傍」と酷似していますが、その艦の特定に必要な証拠は全て落下時に消滅したと推測されています。SCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JPの中でも状態が悪く、落下時の衝撃で無数の部品に分解されたため、現在でも完全なSCP-XXX-JP-Aの復元は行われていません。
- SCP-XXX-JP-B~F: SCP-XXX-JP-Bは1962年5月10日に海面に落下した、4隻の大型漁船です。落下時に大きな損傷を負ったため正確な船型の判別は不可能ですが、共通する特徴として、すべての船体にクジラ漁で使用されていた機器が備え付けられており、クジラ漁用に建造された漁船である可能性が高いとされています。
- SCP-XXX-JP-G~Z: これら20隻のSCP-XXX-JPは1975年6月1日に集中して発生し、海面に落下しました。船型は大日本帝国海軍の駆逐艦である松型駆逐艦と酷似しています。船体同士が折り重なるように落下したため、その船体の一部が衝撃によって脱落し、四方へ飛散、結果として近辺で監視にあたっていた巡視船1隻が小破する被害を出しました。最初に落下してきたSCP-XXX-JP-G、H、I、Jは比較的状態が良く、引き揚げ後3年間は財団の船舶として再利用されました。
- SCP-XXX-JP-AA: SCP-XXX-JP-AAは1976年8月15日に出現し、海面に落下しました。船型や艤装は大日本帝国海軍の戦艦「武蔵」と酷似しており、史実において計画がされたが建造が中止となった大和型4番艦との関連性、同一性の可能性が指摘されています。その船体の大きさ、重量は現在確認されているSCP-XXX-JPの中でも6番目に大きく、落下時には小規模な津波を引き起こしました。引き揚げ調査によって、多大な衝撃を受けているにも関わらず船体にほとんどの損傷がないことが注目されましたが、その後の耐衝撃性調査によって船体構造に異常な点はないことが確かめられました。船体はいくつもの鋼材に分解、融解され、現在でも使用されている財団船舶の一部となりました。
- SCP-XXX-JP-AB: SCP-XXX-JP-ABは1981年12月25日に出現し、海面に落下しました。現在までにこの船体と酷似する船型の船舶は存在せず、いぜんとして調査が続けられています。その船体の大きさは現在までに確認されたすべてのSCP-XXX-JPの中で最も大きく、推定全長1000m、推定全幅120m、推定排水量70万トンです。その船型からタンカー船であると推測されています。その大きさゆえに落下時の衝撃によって中規模の津波が発生、周辺で待機していた巡視船3隻が浸水し、8名の職員が行方不明となりました。一部が引き揚げされ調査が行われた結果、現在存在するどの機器とも該当しない構造を有する巨大な機関が内蔵されていることが判明しました。動力源は現在まで不明ですが、その構造を現在の財団の技術力によって部分的に応用し、船舶に使用する計画が持ち上がっています。現在、当該機関の試験運用において50ノット以上の高速で水中航行が可能な潜水艦が開発されています。
補遺1-回収された文書:
補遺2-引き揚げ作業一時中断までの経緯:
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: SCP-XXX-JPは病院船マーシーで使用されていたナースコールです。外見、内部構造に異常な点は一切見られませんが、およそ3%の確立で所定のPHSではなくSCP-XXX-JP-Aとの通信が繋がります。PHSは基本的に病院船内でのみ応答可能な程度の電波のみ発信することや、地球からSCP-XXX-JP-Aの距離は推定██光年離れているにもかかわらず瞬時に通信が繋がることなど、現在の技術原理では説明のつかない点があります。
SCP-XXX-JP-Aは身長3mの、概ね看護婦の姿かたちを模した人型ロボットです。内部構造を確認する試みは、SCP-XXX-JP-Aが瞬間的に離脱してしまう結果となります。SCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JPによって通信が繋がると必ず「どうしましたか?」と質問します。これに対し「体調がすぐれない」旨の返答をした場合、SCP-XXX-JP-Aは観測不可能な速さで地球に飛来し、SCP-XXX-JPが押された地点まで訪れます。もしそれ以外の旨の内容(「押したかっただけ」、「別に要はない」など身体的な不調と関係のない内容)で返答した場合、通信が即座に切断されます。
SCP-XXX-JP-Aは対象に前に現れると人間の頭部に該当する部分から青色の光線を放ち、対象の体全体をスキャンします。スキャンが終わるとスカートを模したと推測される傘状の下半身の一部が開き、そこから薬品を取り出します。SCP-XXX-JP-Aはそれを対象に強制的に飲ませると、薬品が対象の胃まで完全に到達するまでそのばで待機します。SCP-XXX-JP-Aが取り出した薬品の多くは地球上のあらゆる薬品と成分が異なっており、現在までに再現することには成功していません。SCP-XXX-JP-Aが取り出す薬品の効果は絶大であり、殆どの場合対象は病状の軽減や痛みの沈静化を示します。特筆する例として、末期の膵臓がんに侵されていた██研究員にSCP-XXX-JP-Aが薬品を飲ませたところ、翌日の精密検査によって腫瘍が完全に消滅していることが明らかとなりました。
SCP-XXX-JP-Aは対象が薬品を飲み終えると「お大事に」という言葉を発し閃光を放ちます。続いてSCP-XXX-JP-Aは光り輝く直径50cmの球体に変化すると、全ての物体を透過して上空へ飛んで行きます。SCP-XXX-JP-Aは徐々に速度を増していき、第3宇宙速度に到達すると地球圏を脱し、そして観測不可能な速さまでさらに加速し消失します。SCP-XXX-JP-Aとの建設的な会話は現在までに██度試みられており、そのうち5回はSCP-XXX-JP-Aと会話することに成功しました。
SCP-XXX-JP-Bは地球から██光年先の宇宙空間で停止している、SCP-XXX-JP-Aの母船です。SCP-XXX-JP-Bの船体は滑らかな楕円形で、推定全長████kmです。SCP-XXX-JP-Bは現在の人類の科学技術力を大きく上回る恒星間移動システムを有しており、SCP-XXX-JPの異常性が発揮されると同時に地球の衛星軌道上に瞬間的に移動します。SCP-XXX-JP-Aが一連の行動を終了すると再びポイントαへ戻ります。SCP-XXX-JP-Bを建造した文明の起源は現在まで確認されていません。
インタビュー記録
SCP-XXX-JP-A: 大丈夫ですか、患者さん!今すぐ検査します。
██研究員: ああ、頼む。
SCP-XXX-JP-A: 検査完了。どうやら胃や食道がストレス性の炎症を起こしているようです。お薬出しますね。
SCP-XXX-JP-A: お待たせしました。どうぞお飲みください。
██研究員: この薬は見たことがない。なんて名前の薬なんだい?
SCP-XXX-JP-A: クグゾラム、[未知の言語]、飲料水です。
██研究員: クグ……なんだって?
SCP-XXX-JP-A: ストレス性の炎症に汎用的に効果のある飲み薬です。
██研究員: そうか……どういう風に作っているんだい?
SCP-XXX-JP-A: 申し訳ありません。存じ上げません。
██研究員: じゃあこの薬を私たちで調べることは。
SCP-XXX-JP-A: 可能ですが、私からはオススメしません。その薬は全て飲まないときちんとした効果が得られません。
██研究員: なら新たにこれと同じものをくれないか?
SCP-XXX-JP-A: それは出来ません。
██研究員: なぜだ?
SCP-XXX-JP-A: 薬剤師がもういないためです。
██研究員: あの船の中にか?それはなぜ?
SCP-XXX-JP-A: それを説明するのは難しいです。ただ、見せることは可能でしょう。
██研究員: 見せてくれるのか!
SCP-XXX-JP-A: 追加のお薬をだせない理由を納得していただけるのなら、患者様。
██研究員: わかった。カメラを渡そう。それで船内を撮影して、次に読んだときにそれを見せてくれ。
SCP-XXX-JP-A: 了解しました、患者様。
SCP-XXX-JP-A: お薬をお飲みください。長く常温で放置するとお薬が劣化してしまいます。
回収されたカメラ映像。
カメラが起動する。カメラはSCP-XXX-JP-Aの頭上に取り付けられている。
金属光沢を放つ三重殻壁を潜り、SCP-XXX-JP-Aは船内に入る。
船内は暗く、明かりは一切灯っていない。SCP-XXX-JP-Aはライトで前方を照らす。
SCP-XXX-JP-Aは長い廊下を進む。床の至るところに灰色の液体が飛散している。SCP-XXX-JP-Aはそれに触れないように注意しているように見える。
SCP-XXX-JP-Aは50mほど老化を進み、突き当りを右折する。壁面に未知の言語で書かれた赤黒い文字が見える。
SCP-XXX-JP-Aは30mほど進み、右側にある扉の前で停止する。
SCP-XXX-JP-Aは扉にレーザーを照射する。扉は無音で開く。部屋の内部は明かりがついており、幾つかの未知の機械が置かれている。
SCP-XXX-JP-Aは6本のコードを背中、後頭部、両足、両手に接続し、ベッドで仰向けになる。
SCP-XXX-JP-Aは停止する。
[1週間が経過]
部屋の明かりが赤色になり、警報音が鳴り響く。
SCP-XXX-JP-Aは動き出し、コードを引き抜くと部屋の奥部にある円柱形の空間に移動する。
SCP-XXX-JP-Aは空間の中央部に置かれている筒状の機械の内部に入る。
カメラが停止する。
SCP-XXX-JP-A: 私たちは星間旅客船の乗組員でした。数々の星を巡り、観察するのは私たち文明の一大ブームとなっていました。
SCP-XXX-JP-A: しかし、私たちは訪れた星のいずれかから未知の病を乗せてしまいました。
SCP-XXX-JP-A: それは恐ろしい病でした。あまりにも感染力が高く、一度感染した患者の細胞は激甚的な変貌を遂げ、1日と持たずに死亡しました。
SCP-XXX-JP-A: 私たちは当然全力を尽くしました。ありとあらゆる薬を試しました。しかし、それは患者の死亡時間を数秒長引かせるだけでした。ただ一つ有効だったのは数百度の炎で患者を焼き尽くすことでした。そうすることで患者は死に、同時に患者の体内に巣くっていた病を完全に消し去ることが出来ました。優秀な医者は多くの患者と関わったことで忽ち数を減らしました。ただの旅客船にそんなことを行える設備はありませんでした。母星からの通信は日に日に曖昧になり、そして途絶しました。私たちは見捨てられました。
私は幸運でした。私は船内の全てに病が広がる前に、体を機械化することで難を逃れました。同じように体を機械化したものも何人もいましたが、それらは全て母星に向かって飛んで行きました。船に残ったのは私だけでした。
患者ですか?それらは全て船外に放棄しました。私たちは死んでいる患者も死んでいない患者も平等に扱いました。
富裕層は皆混乱が船内中に広がる前に脱出船で母星へ帰りました。そうです。私たちは母星にも見捨てられ、客にも見捨てられたのです。
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アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル:
説明:
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
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