アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-████の高危険物金庫に収容してください。SCP-XXX-JPの複写をセキュリティクリアランスレベル3以上の職員のみ閲覧可能です。SCP-XXX-JP-1に変化した者がいた際は直ちに拘束し、空調を常時-10℃に設定した収容室に監禁してください。また、収容室に立ち入る際は防寒着を着用し、セキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可を得てください。SCP-XXX-JP-1は銀製の十字架を設置した部屋で毎日、1時間の間懺悔する事を義務付けられています。SCP-XXX-JP-1が死亡した際は一部、サンプルを採取した後、焼却処理してください。
説明: SCP-XXX-JPは「冬国の女王さま」と記された児童書です。表紙にはアカタテハ(学名:Vanessa indica)、裏側にはシドニージョウゴグモ(学名:Atrax robustus)の絵が印刷されています。内容は冬国の女王とされるチョウが国民全員の反感を買い、斬首刑に処されるというものです。(補遺1を参照)また、一部はシミや虫食い、文字のかすれで読み取ることは不可能です。時々、未知の原動力によって自律的に開閉を繰り返します。
対象はSCP-XXX-JPを読んだ際、偏頭痛を発症します。対象はチョウの幼虫が成虫に急成長し、クモに捕食される映像を繰り返し認識します。このまま、進行し続けると皮膚から糸状の物質が体を侵食し、全身をまゆの形に変化します。
3時間後、体長162~175cmで目にあたる部分に3つのラピズラズリを有した、シロアリ(学名:Isoptera)に似た生物(以下、SCP-1951-JP-1)が羽化します。この際、SCP-XXX-JPの周囲には40~60匹の体長、6cm程度の淡く発光する半透明の青と緑のチョウがSCP-XXX-JP-1に群がっています。まゆの形成から3時間、対象は「奇妙な夢を体験した」と訴えます。(文書XXX-JP-1を参照)
SCP-XXX-JP-1は皮膚が固く、背中に薄く脆い翅を有しています。首周りには木綿に似た繊維が生えています。SCP-XXX-JP-1は常時、白い息を吐き続け、花の蜜と鉱石のみ摂取するようになります。また、発話はできませんが、筆談やジェスチャーなどのコミュニケーションは可能です。SCP-XXX-JP-1に危害を加えると、SCP-XXX-JP-1に群がっているチョウが、加害者に対して噛みつくなどの攻撃を行います。
SCP-XXX-JP-1に変化した後、被験者の人格は徐々に、宝石類への依存と自己愛性パーソナリティ障害1の傾向が見られるようになります。
SCP-XXX-JP-1に変化してから2~3週間後、腹部から細い繊維を噴出し、袋状の巣を作り出した後、SCP-XXX-JP-1は巣の中で生活するようになります。SCP-XXX-JP-1は暑さに非常に弱く、4月~9月の間は巣の中で夏眠をします。毎月2回は脱皮し、古い皮は消失します。
10年後、SCP-XXX-JP-1は徐々に、鉄さびのようなものが皮膚に現れ、動く度に痛みを訴えます。徐々に五感や認識能力、記憶などが喪失していくと同時にSCP-XXX-JP-1に群がっているチョウが色を失い、段階的に死亡します。SCP-XXX-JP-1は銀製の十字架に向かって、懺悔する事で症状の進行を遅延できます。最終的にSCP-XXX-JP-1は身体中に霜が出現し、死亡します。
以下、SCP-XXX-JPの最初の被験者が書いた文書です。
こうなったのは、図書館が閉館した後、見回りをしていた時でした。私は図書館内の戸締りや誰か取り残されていないか確認していました。最後に児童書コーナーに行くと、小学生くらい女の子が座って、本を読んでいました。女の子は黒髪で上に二つ結び、魔法使いが被るようなとんがり帽子とフリルがついた黒のワンピースを身につけていました。
「もう閉館時間過ぎてるよ」と声をかけましたが、女の子は「えーやだお姉ちゃんも一緒に読もうよ」と不服そうに言って、持っていた本を私に押しつけました。
「明日にしようね」と言いましたが、女の子は「やだ」の一点張りで、話を聞こうとしませんでした。なんとか、説得しようと、しばらくの間、女の子と言い合いになってしまいました。女の子が半べそをかきながら、地団駄を踏んで、「今じゃなきゃ、やだ」と駄々をこねた後、私にすがりつきました。女の子は「それを読み終わったら帰るからお願い」と言うので、数分悩んだ後、その言葉を信じることにしました。
「お名前は?」と尋ねると、女の子は無邪気な声で「へクセだよ」と答えました。へクセが「お姉ちゃんのお名前はなに?」と聞いてきたため、「カオリ」と自分の名前を答えました。へクセは「へー、カオリお姉ちゃんって言うんだ。いい匂いがしそうな名前だね」と言って、無邪気に笑った後、私の袖を引っ張って、「早く早く、読ませて」と急かしました。
へクセの隣に座って、本を読み聞かせると、突然、頭に激痛が走りました。頭の中にオレンジ色のチョウが大きいクモに食べられる映像が繰り返し流れました。頭を押さえて、へクセの方を見ると笑っていました。でも、目が笑っていませんでした。へクセの顔が一瞬クモに見えて、恐ろしく感じました。
恐怖のあまりにその場から逃げようとしましたが、右足に力が入らなくて、立ち上がれませんでした。右足を見ると、右足と床が糸に絡みついて、離れないようになっていました。さらに、糸は腕や左足にも絡みついてきました。なんとか、抵抗しようとしましたが、暴れれば暴れるほど、糸が絡みついてきました。そのうち、だんだんと思うように動けなくなって、逃げることも助けを呼ぶことも出来なくなりました。気がつくと、へクセはいませんでした。息苦しい中、瞼が重くなって、意識が途切れる間際に、図書館内に幼い少女の笑い声が響き渡りました。
目覚めると、牢屋の中にいました。頭がくらくらとぬまいがしました。とりあえず、「ここは何処だろう」と見回しました。壁には「悔い改めよ」と赤いペンキなようなもので書かれていました。ふと、手を見ると手錠をかけられていました。突然の状況に、何故、手錠をかけられているのか、ここは何処なのか疑問でいっぱいになりました。
「これから、どうしようか」と途方にくれていると、コツン、コツンと、足音が近づいているのが聞こえました。
牢屋の前に私より身長が少し高いくらいのクロアリがツルハシを持って、現れました。クロアリには目がなくて、真っ黒な看守服を着ていました。また、首にはハート形のロケットをかけていていました。
クロアリから離れて、牢屋の奥に行きました。だって等身大のクロアリが現れたら、普通怖いじゃないですか。ですが、クロアリは気にせず、牢屋の扉を開けました。
クロアリは「時間」だと言って、自分の手錠に繋がれた長い鎖を引っ張りました。抵抗しましたが、クロアリの方が力が強く、耐えきれませんでした。クロアリに向かって、「助けて」と叫びました。クロアリは「すまない」と一言、謝りました。
「あなたは誰、ここはどこ」
「私はサヴァンだ。ここは女王の住処だ。君は女王の餌だ」
「女王って誰」
「女王は極悪非道な奴だ。私はそんな奴の世話係をしている」
「どうして私なんかが」
「許してくれ。本当は君を殺したくない。でも仕方がないんだ彼女と契約したから」
「彼女ってどういう人なの」と聞きましたが、サヴァンは「君は知りたがりだな。私の娘にそっくりだ。でも、覚えといてくれ、好奇心は猫を殺すんだ」と答えた後、黙って、手錠の鎖を引っ張りました。
しばらく、狭い通路を歩いていると、下に大きな穴が空いた場所に辿り着きました。辿り着くと、サヴァンは「女王の住処に辿り着いた。多分君は死ぬだろう。すまない。好きなだけ私を恨んでくれ」と涙声で言いました。涙を流していないのに。
サヴァンが私の肩を掴み、穴に突き飛ばしました。落ちた先はロココ調の豪華な装飾が施された部屋でした。周辺には自分より大きいモンブランやペロペロキャンディーなどのお菓子が置いてありました。部屋は甘い匂いで充満していました。ひどく吐き気がしました。
そして、目の前に巨大なシロアリがいました。シロアリは王冠を被っていて、綺麗な雪の刺繍が施された青色のドレスを着ていました。胸元にある水色の大きなブリーチが特徴的でした。頭と胴体が離れていて、頭がふよふよと浮いていました。
シロアリは王座に座り、手足が鎖に繋がれていました。鼻歌を歌いながらフォークを使って、チョコレートケーキを食べていました。
それはただよなる存在感を放っていて、近寄りがたく感じました。
シロアリが私に気づくと、「あらもう来たの」と言いました。その声は低く、醜いものでした。
その後、考える素振りを見せ、「まあいいわ」と言って、私に向かってフォークを刺そうとしてきました。
咄嗟に、避けると、シロアリは「なんて小賢しいの」と言って、手を口におきました。
「やめて」
「餌のくせに生意気ね」
「私は餌ではないです」
「では、あなたはどなた」
「カオリと申します。図書館の職員をしています。なにかの間違いでここに来ちゃいました」
「うふふ、笑わせないでちょうだい。あなたは自分でここに来たの。お分かり?」
「いや、確かあの時に女の子に渡された本でここに来ました」
「あーあのクソ魔女?アンタも不運だね。あいつに会わなきゃもうちょい長生きできるのに」
「アンタは騙されたの。あいつの言うことは八割嘘っぱちなんだから」
「魔女?あの女の子のことですか?信じられません。あの子は本当に」
シロアリは目を細め、「いい?あなたは自ら地獄の門を開いて、ここに来たのよ。私に食べられるためにね」と言いました。
あの子のことをさらに説明しようとしましたが、シロアリはため息をついて、呆れた声で「お話はこれきりにしましょ。それじゃあいただきます」と言うと、今度こそ勢いよく、フォークが私の腹に突き刺さりました。
口から血を吐きだしました。軽く持ち上げられて、シロアリの口の中に入りました。ぐちゃぐちゃと咀嚼音が聞こえ、体がバラバラになりました。
シロアリの胃の中は酷く熱く、気持ち悪くなりました。体が溶けていくのを感じました。徐々に感覚が失っていきました。完全に感覚がなくなった後、なにかこねくりまわされていくのを感じ、感覚が戻ってきました。
目には見えませんでしたが、ペタペタ触ると私の前に壁がありました。壁は脆そうで力を加えれば進めそうと思い、精一杯叩きました。
ビリッと音がして、突き破ると見慣れた景色が戻ってきました。私はあの世界から戻ってきたと感動を感じましたが、ふと自分の体に違和感しました。手を見てみると、人とはかけ離れたまるで昆虫の足のようでした。自分の体が得体のしれないなにかに変わっていることに戸惑いました。
振り返ると、突き破ってきただろうまゆの抜け殻がありました。「ああこれは夢か」と思い、頬をつねろうとしましたが、自分の皮膚が固くて、つねれませんでした。
この姿では信じてもらえないかもしれませんが、とりあえず、上司に報告しようと思い、私は立ち上がりました。するとライトの光が見えて、誰かがこっちに来ました。
こっちに来たのは同僚でした。同僚とは5年間仕事をして、休日では一緒に買い物行くなど一番仲良くやってきた仲間でした。
同僚に声をかけると、同僚は叫びだして、持っていた懐中電灯を投げつけられました。同僚は「化け物」と叫んで、児童書コーナーから逃げだしました。私は「そんなに逃げるほど私の体はおかしいのか」と驚きました。
数分後、貴方達が来て、ここに来ました。後のことは貴方達の方がご存知でしょう。ちなみに、ここに来るまで自分の姿がかなり変わっていると、分かりつつも、まさかアリみたいになっているなんて思いませんでした。しかも、顔があのシロアリに若干似ていました。確かにこれでは同僚に合わせる顔がありませんね。
SCP-XXX-JPは20██/██/██の午後11時に静岡県██市に存在する██市立███図書館に大量の繊維が付着したSCP-XXX-JP-1と共に図書館の職員の女性に発見されました。後に、通報を受けたエージェントによって、収容しました。目撃した女性はひどく動揺していましたが、Aクラス記憶処理を施し、落ち着きを取り戻した後、解放しました。
補遺1: 以下、SCP-XXX-JPの複写です。
むかしむかし、冬国に蝶々の女王さまがいました。女王さまは贅沢が大好きでした。いつも、豪華な食事をし、きらびやかな装飾品やドレスを身につけていました。
そのために、女王さまは料理に使う食材や装飾品、ドレスを買うために国民に重い税金をかけていました。税金を払わない国民は処刑、または投獄されていました。国民はそんな女王に不満を持っていました。
ある日、アリの少女が女王さまに雇われた兵士に殺されました。理由は自分が持っていた物より綺麗な耳飾りが欲しかった。こんな小娘より自分に相応しいから。
そんな理由で、娘を殺され、お父さんアリは娘のお墓の前で泣いていました。お父さんアリは「女王なんていなくなってしまえ」と思いました。
すると突然、蜘蛛の魔女が現れました。お父さんアリは驚きました。
「あたしはへクセ。あなたの願いを聞いたわ。あたしが叶えてあげる」
お父さんアリは「本当か」と喜びました。
「そのかわりにアンタの[解読不能]をもらうけどいいよね」
お父さんアリは二つの返事で、快諾しました。蜘蛛の魔女は呪文を唱えました。
お父さんアリは光り輝き、[解読不能]になりました。
蜘蛛の魔女はお父さんアリの[解読不能]をもらいました。
[解読不能]
お父さんアリはその言葉に首を縦に振りました。蜘蛛の魔女が呪文を唱えると、[解読不能]となったお父さんアリと一緒に消えました。
翌日、女王さまの元に商人の豚がやって来ました。商人は女王さまに一礼し、言いました。
「ご機嫌麗しゅう存じます。女王陛下。私は遠い遠い国からやって来ました商人でございます。以後お見知りおきを」
「わたくしに何の用だ」
女王さまはふんっと鼻を鳴らしました。
商人は持っていた鞄から鏡を取り出し、女王さまに差し出しました。鏡には狐の彫刻が施されていました。
「美しいものしか映さない鏡です。さぞかし美しい女王さまなら映ること間違いないでしょう」
女王さまは鏡を受け取りました。
「悪くないな」
女王さまは鏡を眺めながら、「やはりわたくしはこの世で誰よりも美しい」と呟きました。
「お気に召していただきありがとうございます」
女王さまは鏡を気に入り、「金なら後で払う」と鏡を眺め続けました。
しばらく、鏡を眺めていると鏡に映った女王さまの姿が真っ白なアリに変わっていきました。
女王さまは驚き、「いやっ、一体なんなの」と鏡を投げ捨てました。
すると、女王さまの橙色と黒色の翅が抜け落ちていき、体は白く小さくなっていきました。あまりにもの激痛に悶え苦しみました。
商人は呪文を唱え、蜘蛛の魔女になりました。実は商人は蜘蛛の魔女だったのです。
「大変申し訳ありません。少々、嘘をつきました。本当はその者の真実の姿を映しだします。美しいかどうかはその者次第でございます」
蜘蛛の魔女は商人っぽく、言いました。
女王さまが「誰よあんた」と聞くと、蜘蛛の魔女は頬を吊り上げ、「ただのしがない商人でございます」と答えました。
蜘蛛の魔女は女王さまに一礼し、消え去りました。
それからというと、国中、女王さまが病気になったという噂が流れました。国民たちはその噂で持ちきりです。
とある哲学者が「これはチャンスだ」と言い、広場の前で今までの女王さまの悪行について演説をしました。
哲学者はこう、言いました。
「革命だ。革命を起こすぞ。この国を変える時だ」
国民たちは歓声を上げ、哲学者を賞賛しました。国中の男たちは各々武器を持ち、哲学者を筆頭に城に押しかけました。
女王さまの王座に辿り着くとそこに変わり果てた女王の姿がありました。女王さまは真っ白なアリになっていたじゃありませんか。
男の一人が女王さまに「お前は誰だ」と聞きました。
女王さまは「愚民の分際でわたくしのことを知らないなんて恥知らずな。わたくしはマリー9世。この国の女王よ」と答えました。
その声で女王さまと分かり、男たちは嘲笑いました。
「これは失礼しました。女王陛下。あまりにもお姿が変わって、誰か分かりませんでした」
「まあいいわ」
「女王陛下。あなたに言いたいことがあります」
「申してみよ」
哲学者は「私たちはあなたに私たちの税、家族、友人、食料、形見、装飾品を奪われました。もううんざりだ。誰も悲しませないためにもお前を殺す」と高らかに宣言しました。
男の一人が女王さまの腕を掴み、王座から引きずり出しました。男たちは女王さまをクワやナイフなどで殴ったり刺したりしました。
女王さまは「なっ…なにをす…る愚民の…分…際で」と抵抗しました。男の一人が女王さまの手足を縄で縛りあげ、広場に連れてかれました。
広場に辿り着くと、国民全員が女王さまを見ました。ある者は女王さまを罵倒し、ある者は女王さまに泥を投げました。女王さまは「無礼者」と怒りましたが、近くにいた男に殴られ、黙りました。
哲学者は「最後に言い残すことは」と聞きました。
女王さまはふんっと鼻を鳴らし、「愚民に言うことなんてないわ」と答えました。
哲学者は女王さまを冷ややかな目で見て、「そうか残念だ」と国民全員の前で女王さまの首を剣で切り落としました。
哲学者は女王さまの頭を掴み、こう言いました。
「強欲な悪魔に制裁を加えたり、悪魔の支配はもう終わった。皆は飢えに苦しむことなく、家族や友虫が殺されことはなく。幸せに暮らされることであろう。神に幸あれ」
みんな、みんな笑った。涙を流して笑った。
あはは、あははあははははは
あははははははははやった、やったぞ
ついにやったぞその夜に祭りが行われました。今日は聖なる日です。国民たちは広場で民謡的な音楽と共に踊り、ぶどう酒を飲み、豪華な食事をしました。国民たちはこの感動を忘れません。それから国は君主制から共和制に変え、国民たちは幸せに暮らしました。めでたしめでたし
補遺2: 以下、SCP-XXX-JPに「第██章 聖夜の後日談」と記されたページです。
その後、死後の世界に蜘蛛の魔女と[解読不明]となったお父さんアリがやってきました。蜘蛛の魔女は「なんて、つまらない話」とため息をつきました。
蜘蛛の魔女はお父さんアリに「そう思うでしょ。パパ」と聞くと、お父さんアリは首を横に振り、[解読不明]と答えました。
蜘蛛の魔女は「そう」と返しました。
蜘蛛の魔女は死んだ女王さまの魂を捕まえました。魂に触れた際、女王さまの記憶が頭をよぎりました。
「アンタ本当にいいの」
[解読不明]
お父さんアリはそう答え、笑いました。お父さんアリは蜘蛛の魔女の頭を撫でました。
「ありがとう。パパ」
蜘蛛の魔女は「あと、これ忘れ物」と[解読不明]となったお父さんアリの首にロケットをかけました。お父さんアリは[解読不明]と頭をかきました。
「気をつけてよ」
蜘蛛の魔女はそう言い、頬を膨らませました。
蜘蛛の魔女は「それじゃあ始めるね」と呪文を唱えました。呪文を唱えると、お父さんアリの足元に魔法陣が現れました。
お父さんアリは蜘蛛の魔女に手を振って、別れを告げました。
蜘蛛の魔女は檻の魔術書に[解読不明]となったお父さんアリと一緒に女王さまの魂を閉じこめました。
補遺3: 20██/██/██の深夜3時にSCP-XXX-JPの内部に文章(以下、「第██章 幕間」と記された文書、文書XXX-JP-2)が出現しました。
以下、出現した文書です。SCP-XXX-JPの本文同様、一部はシミや虫食い、文字のかすれで読み取ることは不可能です。
無数の星と本、それと一つ地球儀だけが漂う宇宙空間をプカプカと、浮いていた。頭はぼんやりとしており、確かに自分の体はあるはずなのに、不思議と体のないと感じた。生きているという感覚がないのだ。
いつの間にか持っていたツルハシを握り、ここに来るまでのことを思い出そう。私は蜘蛛の魔女ことへクセと契約して、私が[解読不明]となった後、へクセがなにか呪文を唱えて…それから記憶がない。
「調子はどう?」
目の前にいるヘクセは小さな星を好き勝手にいじくり、そう聞いてきた。
「まあまあだ」
「そう」
自分で聞いてきたのにヘクセは返答に興味なさげだった。ふと、何故か奴のことが頭をよぎり、奴の事について問いかけると、あけっらかんと「女王のこと?惨めになる呪いをかけたわ」と答えた。
私は胸を撫で下ろした。娘の無念が晴れたなら、それで良い。ほっとしていると、へクセは真剣な顔になった。
「でも、それで終わりじゃない」
その言葉で意識がはっきりし、信じられず、「何故だ」と聞くと、へクセは「確かに私の呪いは強力だけど、呪いをかけられた者は欲が強ければ強いほど理性を失い、化け物に成り果てる。化け物は周囲のものを全て殺し、壊すの。それが起こらないために封印しなければならないの。これを使ってね」と答え、本を取り出した。
「これは檻の魔術書と言ってね。悪霊、吸血鬼、悪魔などを封印するための本よ。元々は聖職者や退魔術師が使っていたわ」
「これを使うにはお代とは別料金として、アンタの[解読不明]が必要よ。アンタはあいつと一緒に閉じこめて、あいつを監視しながら世話をする。アンタにとって、精神的にキツいと思うわ。それでも受けいられる覚悟はあるかしら」
覚悟を決め、承諾すると、へクセは不敵な笑みを浮かび、「交渉成立ね」と言った後、指を鳴らした。
「檻の魔術書について、もっと詳しく話すわ。檻の魔術書は第三者が干渉することができるわ。方法は一つ、読むこと。この本の文章を見ることすらアウトよ。今は空っぽだからいいけど。」
「それに第三者が檻の魔術書に干渉すると、封印したものの怨念が宿り、封印したものの姿を生き写すの。封印したものは欲に飢えると、檻の魔術書の外に出ようと暴れるわ。これがアンタがあいつの世話をする理由。あいつの世話の仕方なら、本の中に入ってみればじきに分かるわ。これであたしたちがすべきことが分かったかしら?」
「ああ」
「それじゃ、浪費家の女王陛下が死んだからには始まらないわ。それまで待ちましょ。あっそうそう、もし本の中にいる時、うちの使い魔が来たらごめんなさい。仲良くしてね。」
ヘクセはそう言い、消えていった。私もその日まで適当に本でも読んでいようか。
後日、ヘクセが「処刑が決まった」と言い、現世に連れ出された。彼女の召使いであるコグモたちに見送られ、見覚えがある広場に着いた。周辺にはこの国の虫たちが前に向かって、罵ったり、泥を投げつけていたりなどをしていた。
非常に騒がしいと思いながら、虫たちが注目している方に視線を移した。そこには大柄な男に頭を掴まれた奴がいた。奴はみすぼらしいアリのような姿をしていた。
それを見て、周辺の虫たちと同じように、「早く、殺せ」という感情が沸き上がってきた。
男が女王に聞いた。
「最後に、言い残すことは」
女王は鼻で笑い、こう答えた。
「愚民に言うことなんてないわ」
男は眉間にシワをよせ、「そうか、残念だ」と言った後、持っていた剣を振り上げ、ザクッと、女王の首が落ちた後、女王の首を民衆に見せた。
開いた口が塞がらないとはまさにこういう事だろうか。強欲な女王らしく、生にすがりついた表情をしていたかと、思いきや、女王の目と口が吊り上がり、薄気味悪く笑っているようだ。
周りは「ざまあみろ」や「これで、国が救われた」など、女王の罵りや虫たちの歓喜の声が聞こえた。女王は死んだはずなのに、胸くそ悪い気分になった。
胸を押さえた。周辺の虫たちは処刑が終わると、どこかに散らばった。男は他の虫たちと一緒に、女王の死体を運び、どこかへ行ってしまった。
ヘクセが心配し、背中をさすってくれた。平気だと、心配かけないように言った。
ヘクセは心配そうな顔で、「それなら、いいけど」と言い、すぐにいつもの表情に戻った後、「女王の後を追うわよ」と私の手を掴んだ。
その言葉に頷いた。女王に何があろうと、娘を殺されたことに変わりはない。私は女王を憎み、許さない。これで、いい。これで、いいんだ。
グラリと、視界が歪み、ヘクセと共に、まだ、見ぬ境地に足を運んだ。
これから、私は永遠に、憎しき、女王に膝をつき、仕えるだろう。反吐が出る。ああ、神よ。娘の魂を導き、我が国に栄光あれ。
事案XXX-JP-1: 20██/██/██の午後2時にSCP-XXX-JPを調査する際、SCP-XXX-JPの周辺にSCP-XXX-JP-1にクロゴケグモ(学名:Latrodectus mactans)が20~30匹出現し、担当主任である蜜本博士に一通の便箋を渡しました。
同伴していた研究員がクロゴケグモ(学名:Latrodectus mactans)の捕獲を試みましたが、研究員の手をすり抜け、消失しました。
蜜本博士に渡された便箋は桃色でほのかに甘い匂いがしました。中には210mm×297mmの画用紙で蜜本博士に似た人物が蜘蛛に捕食されているクレヨンで児童が描いたような絵が同封されていました。画用紙の裏側には「Gib mein Buch zurück. Sonst werde ich dich essen.」と記されていました。
事案XXX-JP-2: 20██/██/██の午前12時に蜜本博士がサイト-████へ派遣になったため空港に向かう途中、蜜本博士の周りにクロゴケグモが110匹、出現し、蜜本博士の体に群がり始めました。蜜本博士は抵抗を試みましたが、失敗に終わり、消失しました。現在、蜜本博士の行方を調査中です。
事案XXX-JP-3: 20██/██/██の午後8時に蜜本博士が静岡県██公園内の女性用のトイレで民間人によって、発見されました。後に、通報を受けたエージェントによって、保護されました。発見当初、蜜本博士は6枚のA4用紙(以下、「第██章 看守の懺悔」と記された文書、文書XXX-JP-3、文書XXX-JP-4、文書XXX-JP-5、「第██章 憎き女王陛下の戯言」と記された文書、「檻の魔術書奪還計画書」と記された文書)を所持していました。後に、民間人はAクラス記憶処理を施し、解放しました。
直ちに蜜本博士を検査した結果、軽度の幻覚症状(蜘蛛の魔女に関する報告書を参照)を発症していました。蜜本博士が発見されてから、1ヶ月後、幻覚を認識しなくなり、回復の予兆が見られるようになりました。それから、1週間後、蜜本博士は退院しました。
蜜本博士は退院後、監視体制の中、業務に復帰しました。また、蜜本博士は定期的に、カウンセリングが義務付けられています。精神鑑定の結果、蜜本博士は極度のクモ恐怖症を発症していました。蜜本博士は精神科医に「飛行機のチケット代が無駄になるわ。クモに追いかけられるわ。散々だった」と供述していました。
あれから、失神した後、見慣れない質素な部屋で倒れていました。起きた直後は頭部に鈍い痛みと全身にゾワゾワとした感触が残りました。私は状況を確認し、上司に連絡を取ろうとしましたが、案の定、スマートフォンは圏外で、繋がれませんでした。
周囲を見回すと、部屋には何らかの原因で破壊された医療用ベットとスチール製の事務用机のみが設置されており、床にはガラスや昆虫の死骸が散乱していました。
また、壁には「サヴァンが寂しくないよう、おともだちを呼び出すために魔術書を魔改造しよう」という文章と文章の下記に、未知の言語や魔方陣が印刻されていました。
とりあえず、机の引き出しを開けたり、ベットの下を覗いたりしていると、6つの書類(以下、「第██章 看守の懺悔」と記された文書、文書XXX-JP-3、文書XXX-JP-4、文書XXX-JP-5、「第██章 憎き女王陛下の戯言」と記された文書、「檻の魔術書奪還計画書」と記された文書)を発見しました。
書類を読みました。これらの書類はSCP-XXX-JPの起源に関連する物ではないかと、推測し、持ち帰りました。
特筆すべきことがなくなったため、部屋を出ると、薄暗い長い通路が続いていました。出口を求め、通路を移動していると、遠くから、人影が見えました。同じように、ここに来た人だと思い、急いで、向かいました。
人影がいるだろう位置に辿り着きましたが、そこには誰もいませんでした。自分の勘違いだと、諦めた瞬間、目の前に、クモの顔が現れました。
驚愕し、一歩離れて見てみると、フリル等で装飾されたワンピースを着用した女児が天井に逆さになって、立っていました。新手のオブジェクトと警戒しました。
「貴方は何者なんですか?」
「本を返せ。返すなら、何もしないであげる」
「本とはなんですか?」
「しらばっくれないで!!アンタたちの所業、忘れないから!!」
女児は鬼のような形相で「分かった。本を返さなかったこと、後悔させてやる」と発言し、消失しました。女児が消失すると、カサカサと昆虫が這いよる音が聞こえました。何かが接近しているようで、それは少しずつ見えてきました。
それは約3mのクモで、目が赤く発光しながら、尋常じゃない速度で、こちらに接近してきました。明らかに、敵意があり、全力疾走で、逃げました。
クモの口から、粘着質な糸を発射してきました。咄嗟に、糸を避けました。糸は床に落ち、足場が悪くなったせいか、上手く、走れないのに、苛立ちを感じました。
クモは獲物を仕留めてきたかのように、距離を詰めてきました。
なんとか、抵抗手段はないかと、ポケットをまさぐっついると、ペンを見つけ、投げました。たまたま、ペンがクモの目に刺さり、クモがひるみました。その隙に、逃げました。
一直線に逃げていると、目の前に、扉が見え、急いで、入りました。部屋に入ると、すぐさま、そこらの家具でバリケードを張りました。
走り疲れたのか、壁にもたれかかり、呼吸を整えました。何故か、ここに来る予感がし、対策を打たねばと思いました。
少し回復し、部屋中、探索しました。部屋にはいかにも、魔術道具のような家具や本が置かれており、昆虫やネズミの死骸が散乱していました。
また、床の中心には赤黒い液体で、魔方陣が描かれていました。長年使用されていないのか、複数ヵ所、魔方陣がかすれていました。
魔方陣の中心に一枚の紙切れを落ちました。紙切れには「使い魔の送還方法」と殴り書きされており、以下の事が記されていました。
・魔方陣の上に、7つのロウソクを置く。
・送り返すときに、魔方陣に乗った使い魔の上で、赤毛の髪と果実を燃やす。
・燃やしている時に跪きながら、[削除済み]と唱える。
あのクモを討伐方法だと分かり、すぐさま、準備を取りかかりました。棚から、赤毛やロウソクなどを見つけたり、魔方陣の上に、ロウソクを設置したりしました。
準備が終わると、カサカサと、音が聞こえた後、クモがドアと壁を破壊し、暴れ始めました。暴れながらも、クモが魔方陣の上に行くのを見計らい、髪と果実を燃やし、投げました。火がクモの体に燃え移ると、クモが前脚で、火消しをしようとしました。
その光景を見ながら、[削除済み]と唱えると、クモを燃やす火はさらに、燃え上がり、数時間後、クモは黒灰に変化しましたが、消失する際、突然、クモから、未知のガスが噴出しました。
ガスを浴びせられ、急に、ぬまいと倦怠感を感じた後、子供のような小さな手が様々な種類のチョウの翅をむしり続ける幻覚を発症しました。
私は唇を噛み、自分が発狂するのを抑えました。幸い、かろうじて、視界が見えていたため、触覚を頼りに、脱出を図りました。
しばらくすると、視界がキラッと、光り、手から、冷たい感触が伝わりました。それを探りながら、触ってみると、形状から、ドアノブだと分かりました。何回かドアノブを捻ると、ガチャという音と、共に、前に倒されました。
扉を通ると、女性の悲鳴が聞こえ、頬に衝撃が伝わりました。
数時間後、財団に保護され、こうして、職場に戻ることが出来ました。念のために、言っときますが、女性用トイレに入っていたのは事故であって、私の意思ではありません。
以下、蜜本博士が回収した文書です。SCP-XXX-JPの本文同様、一部はシミや虫食い、文字のかすれで読み取ることは不可能です。
ここに住んでから、日付を数えるのは止めた。永遠にいるのだから、時を数えるのは、無駄だろう。ただ、時間を追うのに、疲れただけだ。
調理場で菓子を作り、奴がいる巨大な穴に放り込んで与える日々だ。このような日常をつまらないと感じ、前にふと「話し相手が欲しい」と思ったが、不可能に、決まっているので、諦めた。
そう、あの日まで、誰も会えないと、思っていたんだ。後悔をしている。また、誰かを傷つけた。違う。仕事をしたんだ。それだけなんだ。でも、あの子を死なせたのは私なんだ。いや、私は悪くない。そうでもしないと、奴が出てきてしまう。仕方ないんだ。そう、言い聞かせろ、私。忘れてしまったのか、自分の信念を。
とりあえず、あの子との出会いを書こう。あの子と出会ったのはこの仕事が充分に慣れた頃だった。あの子は薄汚い檻の中にいた。あの子はこの世に存在しているとは思えないブヨブヨとしたベージュ色の塊のようだった。
最初はその奇妙な姿に警戒しながら、おそるおそる、近づくと、こちらに気づいたようで、あの子は皮膚から、黒い小さな水晶が現れ、動き始めた。
あの子は私を見た途端、黒い小さな水晶のような物体が現れた後、白いものが広がった。一体どこから声を出しているか分からないが、おそらく、口であろう部分から、少年のような声で、「ひっ…アリが喋った」と怯えるように後ずさった。
その声を聞いて、私も後ずさった。不思議にも、頭のすみに「普通のことなのに何を言ってるんだ」と冷静な部分があった。
あの子は太い腕なようなもので小さな黒い水晶を擦り、辺りを見回した後、「ここは、どこ」と呟いた。
勇気を振り絞り、あの子に「君は誰だ。というより、なんなんだ」と質問を質問で返した。
あの子はさらに、壁に押しかかっていてそうになるほど後ずさり、弱々しくヒエエエと鳴いた。
持っていたツルハシを床に置き、「私はサヴァンだ。ここの管理している。改めて、聞く、君は誰だ。そして、種族はなんだ?」と優しく子供に質問するように聞いた。
生物は皮膚から、数回、小さな黒い水晶を現れ、消えるを繰り返した。
「僕は██。9歳。君こそ、なんなの。ここはどこか、教えて」
「ここはすべての悪の根源が封印された場所だ。私はそれを解放されないように監視している」
「悪の根源?」
「そうだ。何故、君が来たのかは分からないが、本来は私しかいないんだ」
「帰れるの?」
「さあ、多分、帰れない」
「じゃあ、ここに暮らすしかないの?」
その返答に頭を抱えた。このようなことは始めてで、どう対処するのか。かといって、このまま放置するわけにはいかないかった。
「こうなったのも、私の責任だ。君が帰れるのまで、ここに暮らさないか」
あの子もとい、██は「うん」と頷いた。
なるべく笑顔で、██に「そんなに緊張しなくていい、好きなようにくつろいでくれ。」と言った。
その日は██をベットに寝かせた。寝る際、██の体が膨らんだり、へこんだりしているのが、面白く見ていた。見るのも飽きると、壁に寄りかかり、腕を組んだ後、目を閉じた。疲れているのもあったのか、いつの間にか、夢の世界へ、旅立っていた。
それから、困難や環境、文化の違いはあったたもののいつしか、そのうち、互いの緊張が解けて、気軽に、話し合えるような仲になった。
ある日突然、██が菓子を作りたいと言い出した。別に構わなかった。むしろ、助かるぐらいだった。エプロンを用意し、一緒に菓子を作った。
作り終わり、菓子を代車を乗せた後、██は運びだしそうにしていたが、あらかじめ、断った。断ると、██は「ケチ」と言い、ふてくされていた。
██と別れ、奴の元へ辿り着くと、いつも通りにお菓子を穴に放り込んだ。落ちていくお菓子を眺めた後、踵を帰そうとした瞬間、非常に甲高い耳障りな音が聞こえた。
耳を澄ますと、誰かが「どなたか、いませんの?」と声をかけてきた。
その誰かは「毎日、お茶菓子がまるで、雨のように降ってくるから、誰かいると思うのに」、「はぁ、つまらないわ」など呟いた。
さらに、耳を澄ますと、声は穴から、聞こえた。穴から来る、酷く甲高い声、貴族のような話し方、もしや、奴が話しかけてきているのではないだろうか。
息を潜み、奴の戯れ言に付きあった。
奴は「まあ、いいわ。もし、そこにいらっしゃるのなら、わたくしの独り言に聞いてあげてもいいわよ」とほざきやがった。散々、娘を苦しめたくせに、何、呑気に、しているのか。お気楽なものだ。
「昔、わたくしはこうみえて、侍女でしたのよ」
それを聞き、目が丸くなったが、黙って、奴の戯れ言を聞き続けた。
「わたくしは王様と女官の子でしたの。王様の浮気が発覚し、母親である女官は遠くに連れいきましたの。王様は行く宛のない、わたくしを不憫に思って、わたくしを侍女にし、私を王宮に置いてくださったのよ。」
「でも、侍女ってものはお掃除やお洗濯に、結構、疲れるものよ。お金が欲しくて、わたくしは王女を絞め殺して、死体を埋めた後、成り代わったの。王様の血を継いでいるせいかしら、王女とは顔がまあまあ、似てましたのよ」
「王女としての生活はお作法が難しかったこと以外、中々、良いものでしたのよ。でもね、わたくしはまだ、足りなかった。もっと、もっと、地位が欲しかったから、わたくしは妃様を箱の中に閉じ込めて、海に流したわ」
「最後に王様の食事に毒を盛ったわ。それで、女王として、君臨したのよ。でも、おかしいわね。なんで、誰もわたくしだと、気づかないのかしら。不思議だわ」
「明らかに、こいつは狂っている」と思ったと同時に、ここに閉じ込めて、良かったと、再確認できた。
奴は「もしかしたら、わたくしは欲という悪魔に憑りつかれて、その悪魔に手助けしてくるのかしら、うふふ、硬貨は寿命ってわけね」とおかしな事を言い、笑い続けた。一体、何がそんなにおかしいのか。
耳障りな声が響き、耳を押さえながら、穴から、離れた。うるさく、気分が悪かった。
部屋に戻ると、体を洗った後の██に「大丈夫?顔色、悪そうだよ」と心配してくれた。
心配させないように「いや、大丈夫だ」と伝えた。
「気分が悪かったら、とことん、休んでね」
そう言い、██は自室にあった本を読み始めた。上着を脱ぎ、今日はいつもより、早く眠りについた。
この日を境に、調理場にある材料が少なくなってきた。普段ならば、勝手に増えるため、特に気を止めなかったが、日に日に、増える量が少なくなっている気がした。
それでも呑気に、「最近、材料が少ない気がする。まあ、気のせいか」と考えていた昔の自分を殴りたかった。
数日経っても、キッチンや倉庫にあるお菓子の材料が増えなくなった。異変に気づき、なんとかしようと、考えたもののヘクセに訴えることも出来なかった。もし、奴がここから出た事を想像し、絶望するしかなかった。
それでも材料は日に日に、消費することになる。出来ることはなるべく、材料の量を節約するようにした。
奴に与えるものが少なくなり、度々、地震が起きるようになった。日が経つにつれ、地震の頻度が多くなった。おそらく、奴が暴れているのだろう。地震が起きる度、██は机の下に隠れ、怖がった。
その姿を見る度、「大丈夫か」と声を掛けた。
██は答えず、ただ、机の下で、震えていた。
いつしか、大量にあった材料は底を見えるようになり、もう1つのお菓子は作られないのは難しいだろう。
焦った私はふと、ある考えがよぎった。
奴に██を捧げれば、いいじゃないかと。
すぐさま、頭を振り、その考えを打ち消そうとした。
██とは今まで仲良く暮らしてきたじゃないか。それでは、まるで彼を裏切るみたいな。いやでも、このままでは、地震は治まらず、そのうち、奴が出てきてしまう。私の友が死んでしまう。
██に対する良心と己の使命感が交差し、三日三晩、葛藤し続けた。結果、奴をここに閉じ込めるために来たこと、それを自分が望んだことを思い出し、多少、まだ、迷いはあるが、使命感が勝った。
ツルハシと鎖を持った後、重い足で仕方がないと自分に言い聞かせながら、██の元へ、歩いた。机の下にいる██の前で仁王門をした。
私の様子が違うことに気づいたのか、██はおそるおそる、自分の名前を呼んだ。
目をつぶり、深呼吸した。
██は私の体調を聞き、心配した。
██の服を引っ張り、鎖で首を縛った。
██は抵抗し、日光に晒された魚のように暴れた。
鎖で██を奴の元まで、引きずった。
██は殺されたくないと泣き叫んだ。
覚悟を決めたはずだ。でも、彼女、彼らには心がある。██と触れあって分かった。どんな姿が違っても、中身は私たちと変わらないことを。
奴を押さえるにはこれをするしかなかった。私だって、やりたくなかった。このまま、██と暮らすと思っていた。
奴がいる穴に辿り着くと、██は必死に命乞いをしていた。一瞬、私はためらったが、██に最後に謝罪をした。
「私は動物殺しだ。██、すまない、何も出来ない私を恨んでくれ。これも奴が私の世界に行かせないためなんだ。」
██は口を開けたまま、私を見ていた。
██の背中を押し、穴へと、突き落とした。突き落とした際、悲鳴が聞こえた。自分の手を見た。今でも、手の感触が残る。
その日は毛布に潜った。毛布には██の体温が伝わり、居心地は悪かった。そのせいか、あまり寝れなかった。
奴は気がすんだようで、一時的に地震は治まったが、その日から、日に日に、私は罪悪感に蝕まわれた。今も、眠れなくなったり、食事をあまり取らなくなったり、常に、疲れるように感じる。
██に似た生物が檻の中にいた。ほんの少し、██が帰ってきたと都合がよい期待してしまったが、それは違った。
生物は私を見る途端、私に怯え、後ずさった。その姿を見て、初めて、██と会った頃がフラッシュバックし、頭がおかしくなった。
半狂乱になりながら、生物の服を掴み、穴まで、引きずった。生物は暴れ、何かを喚きちらしていた。
穴に辿り着くと、私は生物を穴に放り込んだ。穴に放り込んだ際、██よりも低い悲鳴が響き渡った。
生物を穴に放り込んだ後、だんだんと、なにやってんだと冷静になり、じんわりと、腹が痛くなった。それからも、似たような生物がここに訪れた。その度、██と重なり、謝った後、穴に放り込んだ。
██に似た生物を何度も、殺し慣れているはずなのに今でも、殺した感触が残り続ける。それからも、来た子たちもだ。
彼女、彼らをあの穴に突き落とす度、さらに、罪悪感が広がっていく。平常心を持て、私よ。あれはただの塊だ。ヘクセと話した時、覚悟を決めたじゃないか。サヴァン。
なぜ、私は彼女、彼らに謝り続ければならないのか。もしかして、彼女、彼らに謝っているのではなく、謝っていることで、正当化し、自分への精神安定剤になっているのではないか。
一体、いつになったら、材料は補充されるのか。私には分からない。ただ、私は元凶である奴を憎み続ける。
彼女、彼らを奴の餌にするのではなく、ここに来た最初のようにケーキでも作って、投げ込めばいいのだろう。
彼女、彼らを奴に汚されたくない。彼女、彼らに触れる奴の汚い手を折りたい。
今日はここので終わらせておこう。時間も分からない明日は早い。他の方法が見つかるまで、破滅に向かうのを食い止めなければ。この懺悔も謝罪も私のエゴだ。忘れるな。忘れてなければ、おやすみ、いい夢を。サヴァン。
おかしなことに、狭い箱に押し込められていましたわ。確か、愚民共に首を切られて死んだはず。
体を動かそうとしたけど、鎖に繋がれて、カチャカチャと、音がなるだけで、動けませんでしたわ。
まあ、一体、誰がこんな無礼を。
とりあえず、わたくしは鎖を引きちぎろうとしたり、助けを呼んだりと、ここから出ようとしたわ。無駄でしたけどね。
ふと、わたくしは上を見ると、小さな穴がありましたわ。
そこから、色々なお菓子が落ちてきましたわ。そのおかげで、食べ物には困りませんでしたけど、非常に、退屈でしたのよ。
穴の向こうには誰かがいると思い、話しかけていましたわ。実質、独り言を呟いてましたけどね。はあ、話し相手と紅茶が欲しいわ。
そう思ったある日、喋るケーキが落ちてきましたわ。最近のケーキは喋るのかしら?
ケーキさんは「食べないで」とお願いしてきたわ。安心して、貴方は私のお腹の中で幸せに暮らすだけだから。
ケーキをフォークで刺した。ケーキからは甘い甘いストロベリーソースが流れましたわ。
食べる時、ぎゃあぎゃあ、うるさくて、癪に障ったわ。でも、美味しかったわ。
さて、今度はどんなお菓子が来るのかしら。楽しみだわ。
█████奪還計画書
Schon wieder!!2
[魔法陣に酷似した絵が印刷されています]
・連中に魔術書が奪われた時、連中のアジトを突き止めるため、連中の一人に使い魔を忍び込ませた。
↓
・アジトを突き止める前に連中に使い魔を踏まれる。畜生、許さない。・████式転移魔法を使って、連中のアジトに移動する。
↓
・場所が分からないため、転移魔法が使えない。・冥界から、[データ削除済み]を召喚し、連中のアジトに突撃する。
↓
・召喚するための材料が足りない。
・材料を買うためのお金も足りない。・政府の偉い人間の夢に潜入し、連中に関する情報を吐かせる。
↓
・一応、夢の中に潜入したが、人間の精神が耐えきれず、脳死した。20██.██.██
ホウキでお空を飛んでいたら、連中の一人を見つけた。捕まえて、情報を吐かせよう。なんか、違ったら、記憶を消せばいいか。
補遺4: 以下、SCP-XXX-JPの最後のページに記された文書です。
私はあいつを監視しなければならない
幸せのために
ここでは私が従者であいつが主人だ
あいつが憎い
娘を殺したあいつが憎い
でもあいつに従わなければならない
私は誰も殺したくない
あいつの口に君たちをいれたくない
すまない
本当にすまない
ここに関わらないでくれ
お願いだからどうか二度とこんな悲劇が繰り返しませんように
目覚めた時にはベットの上にいた。ここは何処だと思い、状況を確認するために半身を起こした。布団や枕は見る限り、綿あめで作られており、やけにべとべとした。
近くにへクセが座って、すやすやと寝ていた。寝顔は見た目通りの年齢で、愛らしかった。
自分の手を見て、体をペタペタと、触った。確かにここに自分の体はあるはずだが、不思議と体のないと感じた。生きているという感覚がないのだ。
息を吐き、ここに来るまでのことを思い出そう。私は蜘蛛の魔女ことへクセと契約して、私が[解読不明]となった後へクセがなにか呪文を唱えて…それから記憶がない。
首にかけられた形見のロケットを握りしめた。このロケットは娘から誕生日の贈り物としてもらったものだ。来年…いや、この先ずっと誕生日を共に祝うはずだったのに。
あの時、血溜まりに寝そべる娘の姿を思い出しそうになり、涙が出そうになったが、[解読不明]となった私にはもう泣けないのだ。
「あっ、起きたの」
ハッとなり、へクセの方を見た。いつの間にか、起きており、足をブラブラと揺らしていた。
へクセは目をこすり、「おはよう…そういえばアンタ、名前は?」と聞いてきたため、「おはよう。私の名前はサヴァンだ」と答えた。
自分で聞いといてかかわらず、興味が無さそうな顔で「平凡な名前ね」と言った後、「アンタ、二日も寝ていたのよ。いくらなんでもちょっと寝すぎよ」と言った後、頬をふくらませ、睨みついたため、「悪い」と謝った。
へクセは呪文を唱えると、ポンッと煙をたて、ティーセットと小さなスプーンが現れた。
さらに、手で弧を描くと、ひとりでに、ティーポットが浮き、ティーカップにミルクティーを注いだ後、シュガーポットとミルクポットから、それぞれ、砂糖とミルクを入れた。スプーンで、ミルクティーをかき混ぜた後、ティーセットは消えた。ティーポットから、ゆらゆらと湯気が立っていた。
へクセは「とりあえず飲んで、きちんと目を覚ましなさい」とミルクティーを差し出した。
私はへクセに促され、ミルクティーを飲んだ。ミルクティーは舌に甘く広がり、体が温まった。
つい、「甘い」と口に出た。
へクセは「でしょ?」と満足気に笑った。
ミルクティーを堪能した後、へクセは首を傾げ、「さて、何を話そうかしら」と言った。私は奴のことが頭をよぎり、奴の事について、聞くと、あっけらかんと「女王のこと?惨めになる呪いをかけたわ」と答えた。
その答えに「そうか」と胸を撫で下ろす。「娘の無念が晴れたなら、それでいい」と思い、ほっとしていると、へクセは真剣な顔になり、「でも、それで終わりじゃない」と言った。
信じられず、「何故だ」と聞くと、へクセは「確かに私の呪いは強力だけど、呪いをかけられた者は欲が強ければ強いほど理性を失い、化け物に成り果てる。化け物は周囲のものを全て殺し、壊すの。それが起こらないために封印しなければならないの。これを使ってね」と答えた後、本を取り出した。
「これは檻の魔術書と言ってね。悪霊、吸血鬼、悪魔などを封印するための本よ。元々は聖職者や退魔術師が使っていたわ。これを使うにはお代とは別料金として、アンタの[解読不明]が必要よ。アンタはあいつと一緒に閉じこめて、あいつを監視しながら世話をする。アンタにとって、精神的にキツいと思うわ。それでもアンタは受けいられる覚悟はあるかしら」
覚悟を決め、承諾すると、へクセは不敵な笑みを浮かび、「交渉成立ね」と言った後、私とへクセは深い握手を交わした。
「檻の魔術書について、もっと詳しく話すわ。檻の魔術書は第三者が干渉することができるわ。方法は一つ、読むこと。この本の文章を見ることすらアウトよ。今は空っぽだからいいけど。それに第三者は檻の魔術書に干渉すると封印したものの怨念が宿り、封印したものの姿を生き写すのよ。封印したものは欲に飢えると檻の魔術書の外に出ようと暴れるわ。これがアンタがあいつの世話をする理由。あいつの世話の仕方なら本の中に入ってみれば分かるわ。これであたしたちがすべきことが分かったかしら?」
「十分、分かった」と言うと、へクセは「それじゃ、浪費家の女王陛下が死んだからには始まらないわ。それまで待ちましょ。あっそうそう、もし本の中にいる時、うちの使い魔が来たらごめんなさい。仲良くしてね。」と言った後、椅子から降り、部屋から出ていった。
それから数ヶ月経ち、すっかりここの生活に馴染んだ。へクセの使い魔である小さなクモたちが持ってきた小説を読んだり、部屋の掃除をしたりしている。
ここに来た時、クモたちに案内され、館を一通り見てきた。館は立派で広かったが、どこもかしこも、クモの巣だらけで汚かった。
クモたちから、ホウキとちりとりを借り、自分の部屋を中心に掃除をする。ここのクモたちは洗濯や料理などはするが、掃除だけはしないようだ。
ホウキでクモの巣を壊していった。自分の家を壊されているのもかかわらず、ヘクセや使い魔は気にしないようだ。熱心に巣作りするもいいが、限度っていうのも覚えておくれよ。クモたち。
そんなこんなで環境は変わったが、普段とあまり変わらない生活を送っていたが、計画を実行する前に事件が起こった。
丑三つ時、目を覚まし、廊下を歩いていると、黒い犬または、猫のような動物が何かを頭を乗せ、横切っていくのが、見えた。目をこらして見ると、動物の頭にはなにかの本のようなものが乗っているのが、見える。
なんとなく、動物を追った。「待って」と言ったが、勿論、動物は待ってくれず、私から逃げていった。
廊下を右へ、左へ曲がった。階段を降りたり、登ったりした。途中つまづきながらも、動物を追い続けた。
しばらく、走っているのに、全く疲れなかった。私が[解読不明]だからなのだろうか。
その後、動物のようなものは手はないのにもかかわらず、魔法のような謎の力によって、窓を開け、逃げていった。
動物のようなもの見失い、自室に帰る途中、書斎の扉が開いているのが、目に入った。ここも使い魔に案内されたため、覚えていた。確か、ヘクセが世界中のおとぎ話や魔術書を集めた、コレクション部屋みたいなものと、使い魔に得意げに紹介された。
気になって、書斎に入った。そこにはヘクセがいた。ヘクセはかなり慌てた様子で、本棚をあさっていた。なにかを探しているのだったのろうか。
「どうしたんだ」と声をかけた。ヘクセは振り向き、こちらに詰め寄ってきた後、焦った声で「ないのっ!檻の魔術書がないの!」と言った。
驚いた。檻の魔術書がなければ、計画が実行できない。もしかして、あの動物が本を盗んでいったのか?
ヘクセにさっき会った動物のことを話すと、舌打ちし、「なるほどね。確かにアンタの言う通り、その犬みたいな、猫みたいな動物が魔術書を盗んでいったのね。で、その動物はどっちに行ったの?」と言った。
ヘクセに動物が外に逃げだした場所に案内した。動物が逃げだした場所に辿り着くと、窓は開いており、外の風が吹いてきた。
「ここで逃げたのね」
「そうだ」
「今から、その魔術書を盗んだ奴を調べるわ」
ヘクセが帽子から、針を取り出した。針に向かって、クルクルと手を回し、針を押すと突然、針は浮き上がり、クルクルと回り始め、徐々に回る速さは早くなった後、針はピタリと、止まり、東を指した。
ヘクセが「盗っ人は東の罪の森へ、逃げたわ。行くわよ」と走っていった。私は蜘蛛の魔女に少し待つように言ったが、へクセは聞かなかった。
へクセに置いてかれ、呆然としたが、とりあえず、後を追いかけた。
後を追うと、玄関に辿り着いた。そこに、ヘクセがドアノブに手をかけ、待っていた。
「そういえば、アンタ、外に出るのは初めてよね」
私が頷くと、ヘクセは「初めに言っとくけど、足元に毒草とかあるから、気をつけなさいよ。あと、この時間にオオカミが現れるから、離れないでね。」と言った。
気をつけると了承し、ふと、私は「罪の森とは、どういうところだ?」と疑問に持ち、どういうところかと聞いた。
へクセはこちらに振り向き、「諸事情で、[解読不能]ような、地獄にも、天国にも行けない魂が辿り着く、森よ。そこに行く魂は必ず、なにかしらの罪を背負っているわ。でも、安心して、奴らはあたしたちに危害を加えるほど、力は残ってないの。しかも、奴らは生前に犯したことはあまり覚えてないわ。都合がいいこと。まあ、そんなことより、早く盗っ人を捕まえるわよ」と玄関の扉を開け、出ていった。
へクセに続き、外へ、1歩踏み出した。外は薄暗く、月が私たちを照らしてくれている。館の周りには白いカトレヤの花が咲いていた。
月がカトレヤを照らす。月の光に反射したカトレヤが美しく、光って見える。
どこからともなく、フクロウの鳴き声が聞こえた。
へクセが「こっちよ」と手招きし、歩き始めた。私は数歩遅れ、後を追った。霧で視界が悪くなり、木がピンク色や青に見え始めた後、木の枝に肉切り包丁や拳銃などの物騒な物が縄で吊るされていた。
ちらほら、木に「助けて」や「地面の下で愛しい子供たちが泣いている。お前のせいだ」など、書かれた木の板が打ちつけていた。
私たちはたき火を中心に子供ぐらいの大きさの影たちが踊っているところに居合わせた。影の一人はたき火に本を投げ込んでいる。一体何をやっているんだ?
影の一人が私は引き込んだ。影に「私たちは忙しいんだ。他を当たってくれ」と言ったが、影は私が言っていることが分からないようで、首を傾げた。
影の手を振りほどき、へクセの後を追うようにしたが、影の頭が歪んだ後、手が十数本に増え、私の腕を捕まえようとする。
命の危険を感じ、逃げると、影が私を追いかけてくる。殺されると思い、影から、全力疾走で逃げ続けた。
後ろを振り向くと、もう影は追ってきていなかった。撒いただろうか?辺りを見回した。辺りは木と草ときのこがあるだけで、へクセの姿は見当たらない。へクセと離れた?へクセが言っていたことを思い出す。オオカミが飛び出してきて、喰われたら、間違いなく、私は死ぬ。計画が終わっていないのに、ここで死んだら、友人たちはどうなる?
憎しき女王が友人たちなどを傷つけるのは、絶対に避けたい。だから、私はここで死ぬわけにいかない。恐怖に震えると、草むらがガサガサと揺れ始める。まさか、オオカミか?
そこら辺に木の棒を拾い、草むらの方に構える。心もとないが、ないよりマシだろう。草むらから、黒い物体が勢いよく、飛び出し、顔にぶつかってきた。黒い物体をよく見ると、目が隠れるほど、毛深く、額に一角が生えた黒いウサギだった。なんだこの生物は。
ウサギは擦り寄ってきた。私は恐る恐る、ウサギを触ると、気持ち良さそうにしていた。私はこの生物に大変愛らしく感じた。
ウサギと触れ合っていると、草むらから、長い舌が出しっぱなしで、ハートのアップリケのエプロンを身に着けたアライグマが現れた。アライグマは怯えたようすだったが、私が手招きすると、アライグマがこっちに寄ってきた。この子も愛らしく感じた。
アライグマを撫でると、気持ち良さそうに目を細めていた。舌が気になり、「触っていいか」と聞いた。アライグマは答えず、ただ、大人しく撫でられていた。 アライグマは嫌がってなさそうなので、私はアライグマの舌を触った。舌はザラザラしており、触ったところがピンク色から緑色に変化した。不思議だな。
アライグマの舌を眺めていると、草むらから一匹の青いシカが現れた。一匹といっても、シカの頭が二つあった。シカは片方の角が折れ、涙を流していた。
シカは年老いた女性のような声で、「I want to die」と言い続けていた。
シカに「どうしたんだ?」と言ったが、相変わらず、「I want to die」と言い続けていた。
とりあえず、シカの首を撫でた。シカは抵抗せず、大人しく撫でられ続けた。ウサギやアライグマがシカの足を舐め始めた。その光景は励ましているようだった。満足したのか、シカは「Thank you」と言い、草むらの方に去っていった。
私は「これから、どうしようか」と思い、立ち上がると、突然、空から、厚紙で作ったような天使の翼と輪がついたカモノハシが舞い降りてきた。
戸惑ったが、カモノハシは気にせず、何故か、私の頭にピンク色や白色の花の冠を乗せた。
花の冠を触り、手を見る。私の手には黄色の花粉がついている。見ず知らずの私に花の冠を渡すことにどういう意図があるだろうか。花粉を十分見た後、服に擦りつけた。
カモノハシは翼をパタパタと、動かし、浮いている。どういう原理で浮いてたのか検討もつかなかった。突然、カモノハシが私の懐に飛び込み、服の中に入ってきた。くすぐったい。
私は「おい、やめてくれ」と言うが、カモノハシは聞く耳を持たなかった。
カモノハシはモゾモゾと、服の中で動き、シャツから頭を出した。心なしか、カモノハシの顔は安心したような、ほっこりとした表情に見える。カモノハシを引き剥がそうとしたが、カモノハシがシャツを掴み、離さなかった。
諦め、へクセを探すことにした。へクセなら、なんとかしてくれるだろう。いや、待てよ。へクセの性格からすると、この状況に面白がって、なんとかしてくれないかもしれないな。
カモノハシの体温はあまり、高くないと本で聞いたことがあったが、それとは違い、体温が高く、私の胸元が暖かった。つい、眠くなり、目を擦っていると、背後から、ドシン、ドシンという地震のような、大きな足音がこちらに近づいてきた。
一体、今度はなんだ!
数歩、足音がした後、うめき声が聞こえ、振り返ると、そこには体長4mを超える、薄汚いローブを被ったムカデの化け物が私を見下していた。化け物の皮膚の表面から、黄緑色の液体が噴き出している。
腰を抜かしてしまい、その場から動けなくなった。なんとか、動物たちを守ろうと、抱きしめした。化け物はそんなことも気にせず、話しかけてきた。話しかけるといっても、「ウ"ー」とうめき声のように鳴いているだけで、何を言ってるのか分からなかった。
突然の出来事に、唖然としたが、何故か、「こいつと会話すれば、友好を築けるのでは?」と思いついた。とりあえず、化け物に「こんにちは、ムカデさん。いい天気ですね」と言った。化け物は相変わらず、「ヴー」と鳴き続けていた。
その後、化け物に意思疎通を図ろうとしたが、それは無駄だった。化け物に何を言っても、化け物は「ヴー」としか、鳴かなかった。
化け物と意思疎通が出来なくて、膝から、崩れ落ちた。その拍子に服の中に入っていたカモノハシが「プキュッ」と鳴いた。
カモノハシは驚かせたしまったのか、怖がっていた。同時に、抱きしめていた動物たちが飛び出し、少し離れていった。
動物たちに「驚かせて、すまない」と、カモノハシの頭を撫でた後、他の動物たちに「びっくりさせたね。悪かった。すまない」となるべく、優しくなるべくこちらに手招きした。
動物たちが近づき、励ますように私の腕や顔を舐め始める。どうやら、許してくれたようだ。化け物は踵を返し、森の奥へ、戻っていったかと思えば、立ち止まり、こちらを向いた後、「ヴー」と鳴いた。私は「ついてこい」という意味かと思った。
動物たちも、そう言いたいのか、化け物が行く同じ方向へ、私の服をグイグイと、引っ張った。
化け物についていくべきなのか、それに、この先にあるのは、どんな場所なのかと、色んな考えが巡り、迷ったが、やはり、蜘蛛の魔女と合流し、本を取り返すのが、先決だろうと思い、化け物についていった。
急に、風が吹き、木を吊るしていた縄がブチッと、ちぎれた後、ツルハシが落ちた。なんとなく、ツルハシの元へ行き、ツルハシを拾った後、試しにツルハシを軽く、2、3回振った。こう見えて、炭鉱夫だったため、ツルハシの使い方はよく分かっていた。
持っていた木の棒をツルハシと交換した後、化け物の元へ、戻った。化け物は私を待つかのように、立ち止まっていた。私が化け物の元に戻ると、また歩き出した。
化け物についていくと、何かが体に引っかかった。目を細めて見てみると、細い線が私の体に絡まっていた。この糸に見覚えがあった。まさかな。糸を振りほどくと、カサカサと物音がし、上を向いた。そこには4、5匹のへクセの使い魔がぶら下がっていた。
使い魔が「ご主人様が貴方様を探している」と伝えられた。彼女も私がいなくなり、困っているようだ。使い魔に礼を言い、「大丈夫だ。私は優しいムカデ?と一緒にいる。私は待っているから、ここに来てくれ」と伝えるように言った。
化け物…いや、ムカデに「連れが見つかった。連れと、一緒に行きたいから、ここで待ってくれないか?」と言うと、ムカデは言う事を聞いてくれたのか、立ち止まり、「ヴー」と鳴いた後、そこらに寝転んだ。
私もムカデの隣に座り、へクセが来るのを待った。また、フクロウがホー、ホーと鳴き始めた。暇なので、動物たちの頭を撫でたり、軽く、遊んでいたりした。皆、目を細めて、幸せそうだ。私はその顔に癒され、自然と顔が緩んでしまう。
すると、ムカデがこちらに向き、至近距離で顔に近づいた後、顔から、拳銃が落ちた。驚いた。もしかして、これは護身用か?まさか、誰かを殺せというのか。拳銃を拾い、ムカデにどういうことかと訪ねた。ムカデは「ヴー」と鳴いた。
ムカデが木に吊るされているオノの柄を加え、縄を引っ張った後、縄がちぎれ、オノをムシャムシャと食べ始めた。普通ならば、ありえない光景を目の当たりにし、目が点になった。
よく分からなかったが、食べろという意味なのか?ムカデに向かって、拳銃を持ち、食べるジェスチャーをした。ムカデは頷き、「ヴー」と鳴いた。
多分、食べろという意味で、合ってるそうだ。これは食べれるのか?いや、でも、ムカデがこれを食べれる酵素を持ってるかもしれない。
悩んだ末、勇気を振り絞り、拳銃にかぶりつき、シャリシャリと拳銃を噛み砕いた後、飲み込んだ。拳銃は多少、苦味はあったが、美味しかった。ムカデに「ありがとう。美味しかった」と言った。ムカデは「ヴー、ヴー」と言い、頭を上下に動かした。
驚き、動物たちが怪我しそうなので、ムカデにやめるように言うと、ムカデは頭を上下に動かすのをやめた。言ってくれたら、止めてくれるのか。
しばらく、ムカデや動物たちと戯れていると、どこからともなく、「あー、いたいた」という聞き慣れた声が聞こえ、遠くから、へクセが近づいてきた。
へクセの元へ寄り、「大丈夫か」と声をかけた。へクセは「大丈夫よ。もう、どこに行っていたのよ」と頬をふくらませた。
その答えに安堵し、「ああ、少し色々あってな」と言った。へクセは私を見た後、クスクスと笑い、私の頭を指で指した後、「綺麗な花かんむりね」と言った。
今更、恥ずかしくなり、花かんむりを取ろうとしたが、カモノハシが澄んだ目で見つめてきた。そのせいか、私は謎の罪悪感に襲われ、やむおえず、花かんむりをそのままにした。
へクセが何があったか聞いてきたため、へクセに小さな影やムカデについて、ここまで辿り着いた経緯を話すと、同情したような目で、「大変だったわね。あいつら、寂しがり屋で、仲間にしようとしてくるから」と言った。
「でも、あの影たちはいくつかいたぞ」
「あいつら、皆、独りよがりなの。だから、仲間にしようとしてくるわ。もしまた、出会ったら、逃げるか、無視しなさい。いいよね?」その言葉に同意した後、ムカデの方へ向き、礼を言った。ムカデは「ヴー」と鳴いた。こころなしか、私たちを見て、安心したようだった。
ムカデは「ヴー、ヴー」と鳴いた後、へクセはウンウンと相打ちを打った。
「言葉が分かるのか?」
「ええ」
少し考えた後、へクセに「盗っ人の居場所が分かるのでは?」と提案した。
へクセが「聞いてみるわ」としばらく、ムカデと話し合った後、へクセは「盗っ人のアジトを知ってるって言ってるわよ」と言った。
私は「本当か」と聞くと、「ええ、さあ、行きましょ」と答えた後、ムカデは動き出し、へクセの後を追った。
カモノハシが私の懐から、飛び出し、降りていった。私は動物たちに手を振り、別れを告げた後、私もムカデとヘクセの後を追った。
動物たちはそれに答えるように、姿が見えなくなるまで、独特の鳴き声で鳴き続けた。
ムカデを筆頭に後を追っていくと、森を抜け、洞窟に辿り着いた。洞窟に辿り着くと、ムカデはここで終わりだと言わんばかりに立っていた。改めて、礼をし、別れを告げた後、洞窟に入った。中は薄暗く、洞窟のようになっていた。また、上から、雫が降ってきており、下にいくつか、水溜まりができていた。
後ろを振り向くと、ムカデは「ヴー」と鳴き、頭を左右に動かした。こちらも感謝の意を込めて、ムカデに手を降った。
へクセは手から、ポッと、火を出した。「便利だな」と言うと、へクセは「魔女なんだから、こんなことは出来て、当然よ」と言った。
洞窟を進むと、徐々に壁や天井が狭くなり、屈むような姿勢で歩くようになった。洞窟の中にやっと光が見え、入ると、広い場所に辿り着き、そこにはモグラが布を敷いて、座っていた。近くには酒が2、3本程、置いてあった。
モグラは目元と鼻筋が赤く、毛に白髪が混じっていた。また、頭や腹から、生まれたてのチョウやカブトムシに似た赤ん坊が湧き出ていた。時々、モグラは鼻をピクピクと鳴らしていた。
その姿に息を飲んだ。その子たちについて、聞きたかったが、聞いてはいけない気がした。
「どちらさんかな」
モグラは酒を飲み、そう聞いてきた。
「私がサヴァンで、彼女がヘクセです」
「そうか。わしはこの洞窟に住む老いぼれの占い師だ。主らは弟子を探してきたのかな」
「はい。そうです」
「それなら、ここの左だ。弟子がすまないのお」
「いえ、占い師さんは悪くありません」
「優しいのお。そういえば、詳しくは知らないが、その女王さまが城にひきこもって、あまり、外に出なくなったんだのお。噂では危篤になったとか、呪いをかけられたとかなどなあ。元々、あそこの国の女王はあまり、良い噂は聞かないからなあ」
私は「もしかして、あの女王、かもしれない」と思い、自然と、嬉しさが込み上げ、笑いそうになったが、なんとか、抑えた。
「それはそうと、なんで、お前はツルハシなんか、持ってんのかのお」
「護身用です」
「あと、花も」
へクセの頭に手を置き、「この子にもらったんです」と言った。
へクセは小突き、「何を言ってんだ」と言わんばかりで私を見たため、そっと目をそらした。
「ありがとうございます。そろそろ、行ってきます」
「うむ、行ってこい」
占い師は酒を飲み、そう言った。
私は「お邪魔しました」とお辞儀をした。
へクセも「それでは、また」とスカートの裾を掴み、お辞儀をした後、占い師と別れた。
抑えていた興奮を解放し、体を震わせた。
へクセは「落ち着きなさい」と私を落ち着かせた。
笑いが込み上げ、笑いを抑えながら、「いやだって、あの女王が、ついに、祖国が救われた」と言いたがったが、興奮して、上手く言葉が言えなかった。
へクセは眉間にシワを寄せ、「だから、落ち着きなさい。聞こえたら、どうすんの」と言った後、私の頭を叩いた。
衝撃で、ヴッと声を上げ、叩かれた頭を摩った。冷静になり、へクセに「すまない」と軽く、謝罪をした。
へクセは頷き、「分かれば、よろしい」と言った。すると、動物の影が見えた。動物は私たちに気づいたようで、すぐに逃げてしまった。
へクセは「見つけたわよ」と言い、走り出した。どうやら、あれが盗っ人のようだ。私もへクセの後を追った。
[解読不能]になってから、落ちていた体力も、今なら、どんな虫より、走れた。先は行き止まりになっており、盗っ人は立ち止まっていた。やはり、盗っ人の頭には魔術書が乗っていた。
へクセは手をポキポキと鳴らし、「やっと、見つけたわ。この盗っ人めが」と言った。
盗っ人は幼い少年の声で、「やだ。これは僕の物だ」と言った。
「あら、喋れるじゃない。元々、それはあたし達の物よ」
「違う、僕の物だ」
「勝手に、虫の家に入って、盗んだのは、誰よ」
「窓が開いていたのが、悪いんだ」
「不用心なのは謝るけど、それでも、家に入るのは、不味いんじゃないの。ほら、ここで大人しく、魔術書を返すなら、謝罪だけでいいわよ」
「うるさい。この本は渡さない。出ていけ。糸まみれのクソグモ女」
へクセは「聞き分けが悪い子ね。いいから、さっさと、魔術書を返しなさい」と盗っ人に向かって、体当たりした。
盗っ人は避けようとしたが、間に合わず、へクセとぶつかり、魔術書を落とした。その拍子に、へクセと盗っ人は頭をぶつけ、倒れてしまった。
その隙に魔術書を拾った。魔術書についたホコリや土を払い、傷ついていないかを軽く、見た後、魔術書を抱え、後ずさった。
盗っ人は起き上がり、尻尾が鋭い刃のように変わった後、へクセに向かって、振りかざした。
へクセは少し、起き上がるのが、遅く、あきらかに、刃を避けるのは間に合わない。咄嗟に、へクセと盗っ人の間に入った。刃が振りかかり、背中に痛みが走った。私の背中にじんわりとした痛みとほのかな温かさを感じた。
へクセを庇うような姿勢で、ツルハシを盗っ人に降った。ツルハシは盗っ人の顔にぶつけ、顔が歪んだ。
盗っ人は再び、刃を振りかざし、一瞬にして、私の手を切り落とした。一瞬の出来事だったため、痛みはなく、手の感覚がなくなっただけだった。
不意に、ツルハシを落としたが、もう一本の手で、盗っ人を殴った。あまり、手応えは感じなかった。殴った衝撃に盗っ人は倒れ、ツルハシを拾い、盗っ人と距離を離した。ヘクセも私の後を追った。
盗っ人は起き上がり、私たちを見た後、「僕の本。僕の本」と騒いだ。
なるべく、優しめに盗っ人に「これは君の本じゃないよ」と言った後、へクセも「そうよ。これはアンタの魔術書じゃない。これはあたし達に必要なの」と言った。
盗っ人は「ずるい。ずるい。皆、宝物があって、僕にはないんだ」とピョピョンと飛び始めた。
盗っ人が飛ぶと、地面が揺れ始めた。地盤が緩いのか、地面に亀裂ができ、崩れた。
真っ逆さまに落ち、へクセが上にになるようにした。時間がとても、遅く感じた。私の頭に乗せていた花かんむりの輪が切れた。カモノハシが作ってくれたのに、残念だと思った。
へクセの口から、糸を放出し、私たちを包んだ。しばらくすると、ガンッと音がなり、私たちを包んでいた糸がほどかれた。
服についた糸くずを払い、辺りを見回すと、地面には黒猫と犬の仮面が落ちていた。仮面は酷く破損しており、仮面の欠片が周辺に散らばっていた。
「怪我はないか」と安否を確認すると、へクセは振り向き、怒ったように睨んだ。
どうしたと聞いたが、へクセは黙ったまま、私に近づいた。そんなへクセを見て、首を傾げた。突然、へクセは私の腹を一発、強く殴り、私はヒキガエルが潰れたような声で、唸った後、腹を押さえた。
へクセは無表情で、「あの時はアンタに従ったけど、なんで私を守ったの」と言った。
私は「なんでと、言われてもな」と戸惑った。何故、そう言うのか分からなかった。
へクセは「守ってくれたのは、感謝している。でも、あたし達は契約を結んでいるの。もし、アンタが死んでもしたら、契約が果たせなくなるわ。それに、怪我したって、すぐ、治るから、アンタはアンタの事を考えなさい」と言った。
ムッとなり、へクセの肩を掴み、「仮に、契約したとしても、他の虫より、早く、治ったとしても、私にとって、君は年頃の女の子だ。男が女の子を守るのは当然だろう?」と言い返した。
へクセは掴んだ手を振り払い、「何、アンタは私の父親?」と言った。
「君は私が死んだら、契約を果たせなくなると言ったね。それはこちらも、同じだ。君が死んだら、私も契約を果たせなくなる。お互い様じゃないか」と伝えると、へクセは「うっ…」と言葉が詰まった後、「そうね」と言った。
私も冷静になり、「いや、私も悪かった」と謝った。
ヘクセは私に近寄り、「背中の傷を治したいから、後ろを向いて」と言った。
私はへクセの言う通りに、後ろを向いた。
へクセは呪文のようなものを唱えると、背中が暖かくなり、痛みが引いていった。後、へクセと向き直った。
へクセは横に頭を振り、「手はもう、施しようがないわ」と言った。
私は「そうか」と返事をした。
さっきより、暗くなっていたため、へクセはまた、手から、ポッと、火を出した。しばらく、通路を歩き、沈黙が続いたが、へクセはふと、呟いた。
「気になったんだけど、ロケットに何が入っているの?」
へクセはこちらをジッと、見た。
「妻と我が子の写真だ」
「あー、娘さんのせいでこうなったのよね。持ちかけたあたしが言うけど。こくよね。娘は死ぬし、夫は失踪。奥さんが可哀想ね」
「いいや、心配ない。妻は娘を産んだ、数週間後に病気で、天国に行ってしまったよ。妻には持病があってね。医者が諦めるように行っても、妻は産むと言うことが聞かなくてね。たくさんの犠牲の中、卵の娘を抱いた時の妻が頭にこびりついて、忘れられないんだ。幸いにも、娘の持病は遺伝しなかったよ」
「うーん。つまり、娘さんはアンタ、一人で、育てたって、こと?」
「ああ、周りの助けはあったが、母親似の美人に育ったよ。私にとって、娘は誰にも、譲りたくない最高の宝物のようだった」
「婚約者が来たら、大変そうね」
「来たら、来たで、覚悟は決めていたよ。それでな。娘が働き始めて、初めての給料で、買った耳飾りに大変、喜んでいたんだ。似合うってな」
次の言葉が詰まった。言いたいが、声が出ない。女王への、殺意が湧き上がってきた。力を振り絞り、声を出した。
私の声は震えながらも、「なのに、なぜ、あんな事が。私は女王を絶対に、死んでも、許さない」と言った。
[解読不能]
私はその言葉に同調した。
しばらく、通路を歩いていると、前から、光が差し込んできた。出口だ。出口を通ると、いつの間にか、朝になっており、どこからか、チュンチュンと、鳥の声が聞こえた。
私は「もう、こんな時間か」と思った。
へクセは「ええ、全く、お世話騒がせなものね」とため息をついた。
「なんとか、本を取り戻せたな」
「とりあえず、一安心ね。一時はどうなるかと、思ったわ」
「ああ、危うく、計画が実行出来ないと、思ったな」
へクセは「本当にね」と同意した。
疲れが溜まっていたのか、つい、私はあくびが出てしまい、眠気に襲われた。
目を擦り、「早く、館に帰って、寝てしまいたい」と思った。
「早く、帰りましょう。眠たいわ」
よく見ると、へクセも眠そうな目をしていた。
「奇遇だな。私もだ」
へクセは「それじゃ、もうひと踏ん張りよ」と歩き出した。
私もへクセの横に並び歩いた。私たちはいち早く、寝たいため、私たちが住む館を目指して、帰った。
後日、背中の痛みがぶり返し、使い魔たちにへクセ特製の薬を塗ってもらった。
使い魔たちに礼を言った。ピョン、ピョンと、はね飛び、喜んでいるようだ。
それを微笑ましく思った。
突然、へクセが自室に来た。
「女王の処刑が決まったわよ」
目を見開き、「ついにか」と思った。
「処刑はすぐよ。時間が無い。見たかったら、早く来なさい」
急いで、仕度をした。へクセに聞く限り、[解読不能]となった私には生者は見えないようで、わざわざ、変装する手間は無いらしい。
仕度をした後、へクセは手を床につき、魔法陣を出現させた。魔法陣はゆっくりと、時計回りに回転をしていた。
へクセは私に手を差し伸べ、私に「念の為に、聞くけど、行くの?行かないの?」と聞いた。
私はへクセの手を取り、へクセに「行くに決まっているだろう」と答えた。
へクセは無邪気に笑った。
振り返ると、使い魔たちが手を降り、見送ってくれていた。それを見て、使い魔たちに手を振り返した。
「いよいよね」
一応、ヘクセに世話になったため、ヘクセに今までの感謝を込めて、「色々、世話になった。ありがとう」と礼を言った。
「契約だからね」
ヘクセの言葉に、頷いた。本当に、ありがとう。ヘクセは「ちょっと、頭が痛くなるけど、準備はいい?」と聞いた。
「構わない」と答えると、ヘクセは手で弧を描き、呪文を唱えると、視界がグラリと、視界が歪んだ。
気がつくと、見覚えがある広場にいた。ここにくる際、頭痛がした。辺りを見回すと、周辺にはこの国の虫たちが前に向かって、怒鳴ったり、泥を投げつけていたりなどをしていた。
非常に、騒がしいと思い、横を見ると、私の隣にはヘクセがこちらを向き、立っていた。
「ついたわよ」という言葉と共に、目を開いた。そこには男に頭を掴まれた女王がいた。女王はアリのような姿をしており、ヘクセが言った通り、惨めだと感じた。
周辺の虫たちと同じように、「早く、殺せ」という感情が沸き上がってきた。
男が女王に聞いた。
「最後に、言い残すことは」
女王は鼻で笑い、こう答えた。
「愚民に言うことなんてないわ」
男は眉間にシワをよせ、「そうか、残念だ」と言った後、持っていた剣を振り上げ、ザクッと、女王の首が落ちた後、女王の首を民衆に見せた。
女王の首に目を見開いた。強欲な女王らしく、生にすがりつき、醜い表情かと、思いきや、女王の顔はまるで、何かに安心しきったように、眠っていた。
周りは「ざまあみろ」や「これで、国が救われた」など、女王を罵りや虫たちの歓喜の声が聞こえた。女王は死んだはずなのに、胸くそ悪い気分になった。最後死ぬと、皆、同じこういう表情かもしれないが、それでは、足りない気がした。
胸を押さえた。周辺の虫たちは処刑が終わると、どこかに、散らばった。男は他の虫たちと一緒に、女王の死体を運び、どこかへ、行ってしまった。
ヘクセが心配し、背中をさすってくれた。平気だと、心配かけないように言った。
ヘクセは心配そうな顔で、「それなら、いいけど」と言い、すぐに、いつもの表情に戻った後、「女王の後を追うわよ」と私の手を掴んだ。
その言葉に頷いた。女王に何があろうと、娘を殺されたことに変わりはない。私は女王を憎み、許さない。これで、いい。これで、いいんだ。
グラリと、視界が歪み、ヘクセと共に、まだ、見ぬ、境地に足を運んだ。
これから、私は永遠に、憎しき、女王に膝をつき、仕えるだろう。反吐が出る。ああ、神よ。娘の魂を導き、我が国に栄光あれ。
文書-XXX-JP-1で被験者と出会った身元不明の女児、SCP-XXX-JPの内容に登場する蜘蛛の魔女、そして、私の前に現れた少女は特徴が一致しており、同一人物だと推測される。彼女は我々に対して怒っている。彼女からすれば、我々にSCP-XXX-JPを奪われ、どんな手段を使ってでも、取り返しに来るだろう。今後、我々は蜘蛛の魔女に関する調査と警戒を怠ってはならない。- 蜜本博士
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP‐XXX‐JPは55cm×55cm×55cmの鉄製の箱に施錠した上でサイト‐████の高危険物金庫に保管してください。SCP-XXX-JPが収容違反が発生した際はアルコール類を与えた後回収してください。(補遺1を参照)SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPとは別途で緩衝材で梱包した状態で低危険物金庫に保管してください。SCP-XXX-JP-1を使用する際は500m以上のエタノールを携帯した武装警備員の同伴の上でセキュリティクリアランスレベル3以上の許可を得てください。SCP-XXX-JP-1が終了した際、SCP-XXX-JPは与え、回収してください。また、SCP-XXX-JP-1がシナリオが発生した際は妨害を行わないでください。(実験記録-XXX-10を参照)
説明: SCP-XXX-JPは高さ48cm、重さ57kgの陶土製の19██年代の煙突付きヨーロッパ様式の民家の置き物です。裏側にはミズダコ(学名:Enteroctopus dofleini)に酷似した触手が8本結合しており、未知の成分でできた黒い粘液を排出します。SCP-XXX-JPの扉部分を開閉する事が可能です。扉部分から主にジャズ音楽、クラシック音楽、ケルト音楽、マザーグースを発します。SCP-XXX-JPの内部は老朽化が進んだ劇場のステージにスポットライトを浴びた蓄音機が可動し続けているように見えます。SCP-XXX-JPは非常に反抗的で乳幼児に似た甲高い声で鳴きます。
SCP-XXX-JPが存在する半径10m以内の動物、無機物、植物など(以下、対象)が侵入した際、体格差構わず捕食します。対象を約130km/h の速さで追跡する事に加え、舌を約1.6~4.1mに伸縮し、対象を捕縛する事が可能です。
それに反して、SCP-XXX-JPはアルコールに非常に弱く、100m以上のアルコールを与えると表面温度が上昇し、煙突部分から未知のガスを噴出します。
SCP-XXX-JPが対象を捕食した30分後扉部分から「演目:██」と記されたマスキングテープが貼付されているフィギュアや小型の幼児向け玩具(以下、SCP-XXX-JP-1)を排出します。
SCP-XXX-JP-1は一般的なプラスチック製品より脆く、衝撃を加えると小規模な爆発が発生すると同時に約50cm程の円状の幕付きステージを最初とし、約10~30cm程のミニチュア、ハリボテなどが出現します。次に約25~33cm程の白人男性の関節球体人形とアジア系女性の関節球体人形を中心に顔が存在しない人形などが出現します。
出現後SCP-XXX-JP-1は対象に向けて会釈し、一時的に周辺の照明器具が消灯されます。その後30分~2時間マスキングテープに記されたことに沿って、SCP-XXX-JPに発し、間接球体人形は活動した後消失します。(以下、シナリオ)SCP-XXX-JP-1がシナリオを開始時SCP-XXX-JPがSCP-XXX-JP-1が付近に存在しなかった際、即座に出現します。
以下、SCP-XXX-JPの実験記録です。
実験記録XXX‐JP‐1 - 日付20██/██/██
対象: 「演目:海外旅行」と記されたマーキングテープが貼付されているサングラスと黒い蝶ネクタイを身につけたカクレクマノミ(学名:Amphiprion ocellaris)のフィギュア
元の素材: 雌のナンヨウハギ(学名:Paracanthurus hepatus)
実施方法: コンクリート製の15m×15m×15mの実験室内事務用の椅子と机を設置し、D-67502を配置する。D-67502には安全ゴーグルと手袋を身に着させる。D-67502にSCP-XXX-JP-1をトンカチで衝撃を加えることを指示し、観察する
結果: D-67502は指示通りトンカチでSCP-XXX-JP-1に衝撃を加えた後小規模な爆発が発生し、D-67502は驚いて転倒しました。小型のステージが出現し、白人男性の間接球体人形はD-67502に向けて会釈し、一時的に周辺の照明器具が消灯した後SCP-XXX-JPが出現し、リズミカルなジャズ音楽を発しました。ハリボテの飛行機からカンカン帽とアロハシャツを身につけた白人男性の間接球体人形が降りるように出現しました。白人男性の間接球体は持っていたギター弾く素振りをしていました。一時的に周辺の照明器具が消灯した後白人男性の間接球体人形は水着を着用し、海が描かれたハリボテで泳ぐ素振りを見せたり、白人男性の間接球体人形はアジア系女性の間接球体人形と一緒にフラダンスを踊る素振りを見せたりするなど3泊4日のハワイ旅行のように1時間活動しました。D-67502はSCP-XXX-JP-1を目を凝らして、観察していました。後にD-67502は「見ていて楽しかった」と供述しました。
分析: どうやらSCP-XXX-JP-1のシナリオを見た際、精神的に回復し、幸福感得られる効果があるようだ-刺腹博士
実験記録XXX‐JP‐2 - 日付20██/██/██
対象: 「演目:迷子の遊園地」と記されたマスキングテープが貼付されている風船を持った緑色の水玉模様の蝶ネクタイと赤茶色のベストを身につけた二足歩行の兎の小型の幼児向け玩具
元の素材: :国産の人参
実施方法: D-35995に上記と同様に指示し、観察する。
結果: D-35995はSCP-XXX-JP-1を出現するための手順を踏むと白人男性の関節球体人形はD-35995に向けて会釈し、一時的に周辺の照明器具が消灯した後SCP-XXX-JPが出現し、最小音でクラシック音楽を発しました。赤色のワンピースを着用したアジア系女性の関節球体人形が泣く素振りを見せているところにピエロの間接球体人形が現れ、アジア系女性の関節球体人形に手を差し伸べる素振りを見せました。アジア系女性の関節球体人形はピエロの関節球体人形の手を取る素振りを見せました。一時的に周辺の照明器具が消灯した後SCP-XXX-JPはチェロを中心としたジャズ音楽を発しました。ピエロの関節球体人形とアジア系女性の関節球体人形がメリーゴーランドが描かれたハリボテで約13cm程の棒馬のようなものを使い、ハリボテの周りを回るように動くなどした後SCP-XXX-JPは目覚まし時計に似た音を発し、一時的に周辺の照明器具が消灯しました。アジア系男性の関節球体人形がアジア系女性の関節球体人形に肩を叩く素振りを見せ、終了しました。シナリオは2時間続きました。後にD-35995は「小さい頃祖父に遊園地に連れてもらって、迷子になった事を思い出した」と供述しました。
実験記録XXX-JP-3 -日付████/██/██
対象: 「演目:楽しいお誕生日会」と記されたマスキングテープが添付されている女児向けアニメ魔法少女█████の主人公の小型の女児向け玩具
元の素材: 不明
実施方法: D-67052に上記と同様に指示し、観察する。
結果: D-67052はSCP-XXX-JP-1を出現するための手順を踏むと白人男性の関節球体人形はD-35995に向けて会釈し、一時的に周辺の照明器具が消灯した後SCP-XXX-JPが出現し、「Happy Birthday Song」の伴奏を発しました。一般的な住宅のリビングのハリボテでスーツを着用したアジア系男性の関節球体人形と女児向けアニメ魔法少女█████の主人公と同様の衣装を身につけたアジア系女児の関節球体人形が約10cmのケーキを食べる素振りを見せました。アジア系男性が消失しました。3分間後アジア系男性の関節球体人形はピンク色のリボンがついた約30cmのSCP-XXX-JPに酷似したフィギュアと共に出現しました。アジア系女児の関節球体人形は飛び跳ねる素振りを見せました。SCP-XXX-JPに酷似したフィギュアの扉部分からヒトに酷似した舌が現れ、アジア系女児の関節球体人形を破壊しました。アジア系の関節球体人形を破壊する際、10代前半の女児の叫び声が聞こえました。突如原因不明の発火が発生しました。発火は5分間続いた後消失しました。D-67502は軽度の火傷を負いました。
分析: お悔やみ申し上げます-刺腹博士
実験記録XXX‐JP‐4 - 日付20██/██/██
対象: 「演目:白鳥のダンス」と記されたマスキングテープが貼付されている右半身が黒色の白鳥のフィギュア
元の素材: 雄のアヒル(学名:Anas platyrhynchos var.domesticus)の羽根
実施方法: コンクリート製の15m×15m×15mの実験室に事務用の椅子と机を設置し、D-XXXXを配置しSCP-XXX-JP-2を活性化させた後シナリオ中に妨害する。
結果: D-35995はSCP-XXX-JP-1を出現するための手順を踏むと白人男性の関節球体人形はD-35995に向けて会釈し、一時的に周辺の照明器具が消灯した後SCP-XXX-JPが出現し、「白鳥の湖」を発しました。白鳥の湖を元にしたシナリオで白人女性の関節球体人形が活動しているところをD-35995が妨害を行いました。SCP-XXX-JPは発するのを止め、白人女性の関節球体人形がD-35995の方を向き、D-35995は男性型のビスクドールに変化した後消失しました。
分析: 今後人形たちが動いている間は決して触れないように…いいね?-刺腹博士
SCP-XXX-JPは20██/█/█の午後8時に静岡県██市に存在する一般マンションに30代前半の「男性から突然置き物が動き出した」と通報を受け、エージェントによって回収されました。当時部屋はかなり散乱しており、机に置かれたバースデーケーキは半分に食べられていました。また、血痕が発見されており、調査の結果、男性の娘である██ ██氏と同様のDNAだと判明しました。SCP-XXX-JPは日本酒によって弱体化していました。男性は顔や右足などに重症を負い、PTSDを発症しました。現在男性はBクラス記憶処理を施し、財団内の病院で入院しています。
現場周辺にいた住人にはBクラス記憶処理を施し、カバーストーリー「空き巣強盗」を流布しました。
調査の結果、部屋には「演目:楽しいお誕生日会」と記されたマスキングテープが貼付された███放送局で放送された女児向けアニメ魔法少女█████の主人公の小型の女児向け玩具が落ちていました。男性は「買い与えた覚えはない」と供述していました。
男性はSCP-XXX-JPを「山狸骨董品店」という店で購入したと供述していましたが、現在「山狸骨董品店」という店は存在しません。今後も「山狸骨董品店」について調査中です。
補遺1: 20██/██/██に収容違反が発生しました。SCP-XXX-JPの担当の職員が箱の鍵をかけ忘れ、SCP-XXX-JPが中から金庫を破壊したことが原因だと推測されています。SCP-XXX-JPは刺腹博士の研究室に発見されました。SCP-XXX-JPは刺腹博士に近づき。男性の声が入った録音のようなものを発しました。刺腹博士はSCP-XXX-JPにエタノールを投げ与え、回収されました。後にSCP-XXX-JPの担当の職員はDクラス降格処分を受けました。
以下、SCP-XXX-JPから発せられた音声記録です。
平成██年██月██日
俺は██████・ロビン
人形劇団に所属しているんだが、現在人形劇団が廃業寸前になっている。人形劇なんてもう古いらしい。昔は仲間もお客さんも劇場にたくさんいた。だが次第に仲間も次々と辞めていくし、劇団長は劇団をたたむと言っている。嫌だ嫌だ俺は子ども達の笑顔を子ども達を楽しませたい。そこでだ古本屋で見つけた魔導書を使って、子ども達が人形劇の楽しさを忘れないものを作る。出来上がったらきっと子ども達は喜ぶだろう
平成██年██月██日
俺は魔法陣を描き、砂糖とタコの足と粘土と赤毛の髪と自分の血液と[削除済み]で作り上げた。名前は…そうだ████にしよう
平成██年██月██日
劇場前に████を披露したところお客さんの目にとまり、かなり好評だった
平成██年██月██日
劇場に以前と変わらない程のたくさんのお客さんで賑わっていた。劇団長は嬉し涙を流してたよ。後でお祝いに████に肉をやろう
さあみんな今日も人形劇が始ーまーるーよ
[子どもの歓声]
今日は[ノイズ]だよ
それでは始まりー始まりー
[30秒間ノイズが流れる]
[子どもの叫び声]
[18秒間ノイズが流れる]
みんな…どうしたの
もしかしてつまらなすぎて寝ちゃったのかな
ごめんなさい…ごめんなさい…
こんな事になるはずじゃなかったんだ
ただ…ただ君たちの笑った顔が見たかったんだ
[34秒間ノイズが流れる]
[咀嚼音が流れる]
平成██年██月██日
忘れもしないあの日、俺は誰も許すことがない失敗を犯した
[雨音]
おやゴミ捨て場に珍しい先客がおるのう
[咀嚼音]
食事中か。邪魔して悪かったのう
[物音]
本が落ちとるな。うむ、どれどれ
「娯楽の化け物に肉を与えないでください。娯楽の化け物に与えた場合肉の味を覚え、人間を捕食します」とな
こいつの説明書か
ふーむ
お主、わいのところにこないか
[物音]
わいならお主の行きたいところに連れてってやるぞ。勿論3食おやつ付きじゃ。一緒に行くか
[噛みつくような音]
それは了承と受け取っていいかのう
まあよろしく頼むのう
ああそうだ。忘れっとた。ちなみにわいは山狸骨董品店ってゆうところに働いとる[ノイズ]とゆうもんじゃ。店については蜘蛛の魔女から陰気臭いとゆわれたが、住み心地は悪くないと思うぞ。悪かったらすまんなあ住めば都と思うて、我慢してくれ
最後は別の男性の声が入っており、「山狸骨董品店」に関するものだと推測されています。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCPは情報部隊で監視し見つけ次第封鎖
実験する場合Dクラスを使って
SCP-XXX-JP-2が見える子供を収容
別の子供がSCP-XXXJPと接触した場合子供を特定し収容してください
意識がない子供は医療設備がある収容室に収容してください
年齢が退行した者は専用の収容室で監視し保育を取っている職員で補助
説明: SCP-XXX-JPの住所不明の通販サイトです。夢市場と書かれ(-2と酷似したキャラクターが描かれ 外見)と描かれている。上に(年齢と性別とそれに沿ったタイトルが書かれている)夢が並んでいる。18未満しかアクセス出来ない
18歳以上がアクセスした場合精神的にも肉体的にも退行する
SCP-2は30代後半の日本人男性が出現し主にラフな格好をしているが必ずバクのマスクと大きいリュックサックとサンダルを身に着けています。
SCP-XXX-JP2は18歳未満の子供のみ認識出来ます。SCP-XXX-JP2は「やぁ僕は██3 君は○○を望んでいるね」と6歳未満の男児のような声で発話し対象に積極的に接触しようとします。対象はSCP-XXX-JPとの接触を拒否すると消失します。対象はSCP-XXX-JPと受け答えをした場合契約書にサインし握手を交わした後意識を失い2自身が案内人になり望んだ物を手に入れる夢を見る 近くで寝ることで夢を共有出来る後意識はあるが動かなくなります。意識がない子供が近くにいた場合夢と関連がある物に混ざって何かがくっついているように認識します 眠っているにつれ肥大化します 繰り返す度に寝る時間が長くなり老化します 3~5年後目覚めなかった場合悪夢を見ます 物を売り代わりに代償を頂く 日本国内を活動区域とし3年に一度変わります。子供しか認識できません。また動画、写真でも撮れません。
既に被害があった子供のインタビュー -2は一緒にいる
実験 Dクラスを使って
事案 四角
発見 誰かが接触してブログに発信して最近の都市伝説とかした後財団の注意を惹きました。
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: safe
特別収容プロトコル: (道路工事に偽装してください。)
説明: SCP-XXX-JPは(静岡県██市内に存在する未知の金属で出来たマンホールです。路地裏にあります。SCP‐XXX‐JPの周辺には猫のような足跡があり(猫のみSCP‐XXX‐JPの中に入れる事が可能です。)中には地下空間(地下街)があります。)
SCP-XXX-JPの異常性は(マンホールに入った数分後顔がぼやけ人のように言葉を振る舞います。(以下、SCP‐XXX‐JP‐2))
(猫の首に小型カメラを取り付けた探索記録)
(SCP-XXX-JP付近でペットの行方不明の通報が相次いだため調べると異常があったため財団職員によって発見された)
補遺:
文書 A4サイズのノート用紙の紙切れ
壁に貼ってあり下には文字がある
対象は猫のみ
1 地下施設
迷い込んだものを連れ込む(人間)
○○県○○市○○山にある土に埋め込まれている未知の金属で出来た○○cm×○○cmの扉です。
出入りした猫の足跡が残っている
2 獣人 猫 たくさん
舌足らずな日本語で話し二足歩行で歩き人間のような振る舞いをします。
顔がぼやけて見えない
プロトコル
武装警備員を配置
扉を施錠
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス:
特別収容プロトコル: (人型収容セルに収容し週に一回包帯を取り替える事と炭や木の実や果物の給仕を週一回交代で職員が補助してください。)
説明: SCP-XXX-JPは(10代前半の体長60cmの男児のように見えます。肌は黒く頭部に二つに分かれた細い角があります。痩せ細っています。目はありません。流血を防ぐため包帯で保護をしています。SCP-XXX-JPは人に対して反抗的です。足に(憤怒(英語))と額には逆十字架が刻印されている。筋肉がついている。体温が42℃ある。食事以外を必要としない)
SCP-XXX-JPは(皮膚や目などから血が流れます。象がSCP-XXX-JPの血液に触れた時
SCP-XXX-JPは児童相談所が来る際父親が不審死した状態でSCP-XXX-JPが意識を失った状態で発見されました。前から虐待を疑われました。
インタビュー 死ぬ間際悪魔と契約し気づいたら父親は死んでいた 目をあげた SCPに鎮痛剤を打ち拘束してください 疑心暗鬼 (うるさい どうせ○○するだろ)
補遺: (SCPの自宅に罪状が書かれた紙が置かれていた。)(内容 名前:○○ 種類:憤怒 罪状:○○ 四角)
七つの大罪
1サタン 肌が赤い 少年 小学生位 額に先が2つに分裂した角
狼の頭を持つ
代わりに話す
インタビュー
狼がサタンを崇拝している
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Euclid/Keter (適切なクラスを選んでください)
特別収容プロトコル: [SCPオブジェクトの管理方法に関する記述]
説明: [SCPオブジェクトの性質に関する記述]
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
SCP-XXX-JP-2にGPS付き首輪かける
夜になるにつれ鹿に変化すり男性
鋭い歯を持った口しかない目は退化している 幻覚作用を持つ甘い香りがする 鹿 赤い角 夜行性
(夜で本屋で立ち読みしてた男性がSCP-XXX-JP-2(鹿のようなもの)に変化し周辺の一般市民を襲った。偶然休暇でいた2人のエージェントが捕え(負傷した) 周辺の一般市民に記憶処理し カバーストーリーを流す