SCP-XXX-JP |
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アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:現在、SCP-XXX-JPはサイト-1024の、性格適性試験に合格したDクラス職員(現在はD-100519)が所持しています。対象のDクラス職員へはSCP-XXX-JPの紛失による収容違反防止のため毎日12時間毎に所持品チェックを行ってください。このDクラス職員は特例として終了措置が免除されます。また、Dクラス職員へは週に一度カウンセラーとの面談によるストレスチェックを実施してください。ストレスチェックの結果、Dクラス職員が強いストレスを感じていると判断された場合は待遇の改善を検討してください。
説明: SCP-XXX-JPは製造年不明の紫檀製の腕輪念珠1です。
SCP-XXX-JPは2014年5月に、当時サイト-1024所属の研修生であった平等院氏より、財団へ譲渡されました。
SCP-XXX-JPの異常性は、SCP-XXX-JPの最も近くにいる人間が強い負の感情を持った時に発現します。この時、その人間の負の感情の原因となっている個人・共同体は、偶発的な事象が原因による肉体的、精神的、社会的ダメージを受けます。この事象によるダメージの規模は所持している人間が感じている負の感情の強さに応じて変動します。
現在、SCP-XXX-JPの異常性のより具体的な発現条件、発現原理、影響範囲の調査が進められています。
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SCP-XXX-JP譲渡時の平等院研修生との面談記録
対象: 平等院忠男 (サイト-1024 低危険オブジェクト調査2課 研修生[2014年当時])
担当者: エージェント・赤川
<面談開始>
エージェント・赤川:平等院さん。初めに、この面談記録は財団内の公式文書として記録されますので、これから話すことについては嘘偽りの無いようにお願いします。
平等院研修生:はい、わかりました。
エージェント・赤川:では、まずはこのオブジェクトの出自について話して下さい。
平等院研修生:はい、このオブジェクトは私の家に代々伝わっていたもので、幸御数珠と呼ばれていました。記録によると1780年頃に私の祖先がこのオブジェクトを作り上げて、それを代々受け継いできたとのことです。オブジェクトの作り方や作った経緯については失伝していてわかりません。現在の持ち主は私です。
エージェント・赤川:ありがとうございます。では続いて、平等院さんの一族はそのオブジェクトを代々受け継いでどのような使い方をしていたのですか?
平等院研修生:…あまり褒められた使い方ではありませんが、オブジェクトを使って他人を呪うことで利益を得ていたみたいです。あのオブジェクトは、持つ者の妬みや劣等感に反応して他者を不幸にするものです。私の祖先はその性質を利用して、自分より有力な人物を蹴落として成り上がっていったみたいです。例えば、有能な同期や上司、政略結婚の対抗馬、近代ですと競合他社の社長とかもやられたみたいです。皆急に仕事がうまくいかなくなったり人間関係が不安定になったりと様々な理由で崩れていったそうです。私の家は昔から資産家だったのですが、それもこのオブジェクトを使って結果的に得たものらしいです。恐らくオブジェクトを作った者も初めからそういう意図で作ったのだと思います。
エージェント・赤川:そうでしたか。お家のそういった事情はなかなか話しにくかったでしょう。正直に話して頂きありがとうございます。
平等院研修生:いえ、そんな気になさらないでください。
エージェント・赤川:そういえば、オブジェクトの取り扱う上でのマニュアルのようなものが代々伝わっているとの先日聞きましたが、今持ってきていますか?
平等院研修生:はい、こちらです。(資料を取り出してエージェント・赤川に手渡す)
エージェント・赤川:どれどれ…幸御数珠は片時も手放さず、常に身に着けておくべし…、無くしたらどんな手を使ってでも取り戻せ…、幸御数珠を使う際は恨み辛み妬み嫉み僻み怒りの念を強く込めるべし…、継承者が死病にかかった時や命にかかわる大けがをした時は速やかに幸御数珠を縁者に継承せよ、縁者が間に合わないならば誰でもよいから譲り渡せ…。
平等院研修生:ほとんどはマニュアルというより心得のようなものですが、もしかしたら収容プロトコル作成の参考になるような記述があるかもしれません。
エージェント・赤川:確かにそうですね。この文書は参考資料として預からせて頂きます。ご協力ありがとうございます。それにしても何故あなたは一族秘蔵のオブジェクトを財団に寄贈しようと思ったのですか?
平等院研修生:私はまだ研修生ではありますが、一応は財団職員の一人です。こんな恐ろしく危険なオブジェクトを私的利用するリスクについては把握しています。祖先には申し訳ないで…いや、別に申し訳なくなんてないな、とにかく一刻も早く安全な収容方法を確立させないといけないと思ったので引き渡しました。
エージェント・赤川:そうでしたか。とても立派なことだと思います。確かにこれは悪人や要注意団体の手に渡ると厄介事になりそうなオブジェクトですね。
平等院研修生:いいえ、厄介とかそういう次元のものではないです。先程のマニュアル中の「継承者が死病にかかった時や命にかかわる大けがをした時は速やかに幸御数珠を縁者に継承せよ、縁者が間に合わないならば誰でもよいから譲り渡せ…」の文を覚えていますか?
エージェント・赤川:ええ、覚えていますよ。そういえば、縁者に継承するはともかく誰でもよいから譲り渡せというのは変だなと思いましたね。
平等院研修生:…実は昔、当時の継承者が夜道で刺されて死にかけたという事件があったのです。刺した犯人は当時の継承者にオブジェクトで呪われて落ちぶれてしまった継承者の恋敵でした。それで、継承者が刺されて苦しんでいると、やがて刺した犯人も一緒に苦しみ始めてやがて死んでしまったんです。しかも死んだのは犯人だけではありませんでした。犯人の親や兄弟、従兄弟らのおおよそ4親等以内の親族皆が同時に苦しみ悶えて死んでしまったとのことです。マニュアル中の譲り渡せの部分を書いたのはその継承者なのですが、どうやら死にかけて苦しんでいる時に犯人とその一族を強く呪ったみたいでして、そのせいで多くの人が亡くなる結果となりました。
エージェント・赤川:それは…。
平等院研修生:このオブジェクトがどれほどの力を秘めているか、人の恨みや妬みの念はどれほどのエネルギーを持つはわかりませんが、もしかしたらその程度の被害で済んでまだ幸運だったのかもしれません。もしも当時の継承者が犯人一族だけでなく、その知人、同郷の人物、健やかに生きている者全てに対してまでその恨みの矛先を向けていたらどのような結果になっていたかを考えると。
エージェント・赤川:…わかりました。改めて、このオブジェクトを引き渡して頂けたことに感謝します。後は我々が責任を持って収容・保護します。
平等院研修生:はい。どうかよろしくお願いします。
<面談終了>
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D-100519の定期面談記録
対象: D-100519
担当者: 相楽医師
<面談開始>
相楽医師:ではD-100519さん。いつもの面談を始めます。今週は良く過ごせましたか?
D-100519:まあまあでしたよ。面倒な実験に参加させられることも無かったし、自由時間にそこそこ遊べたし。
相楽医師:それは良かった。
D-100519:ただ、ダチのD-101098が実験の失敗とかで大けがしたらしくて今週初めから姿を見せてないんですよ…それが少し気がかりですかね。
相楽医師:それは大変でしたね。ご友人が早く良くなるとよいですね。
D-100519:本当ですよ。しかし先生とこうして面談するのも何回目ですかね。この変な数珠を預かってから4年くらい経つから、ええと365÷7×4だから…200回を超えているのか。
相楽医師:そうですねぇ。
D-100519:先生もよくこんな何の意味があるのかわからん面談を真面目に続けられますね。
相楽医師:ちゃんと意味はありますよ。それに私もこれで給料を頂いていますからねぇ。
D-100519:そうですかい。しかし、本当この数珠は何なんですかね?常に身に着けてろとは言われましたが特に何も起きないし…そのくせ毎日失くしてないかチェックされるし、たぶんこの面談をやるのもこの数珠が何かしら関係しているんでしょ?
相楽医師:それは教えられないんですよ。そういえばこの話も何度もしましたねぇ。
D-100519:はいはい。まぁ別に不満は無いからいいんですけどね。
相楽医師:ふーむ。ではこう考えてみたらどうでしょう。その数珠は実は持つ者に幸運を招く不思議な力があって、我々はその力を探るためにあなたにモニタになって頂いていると。
D-100519:え、そうなんですか。
相楽医師:あくまで例えばですよ。
D-100519:ふーん。でも案外そうかもしれないですね。俺も結構長くここにいるけどこれを着けてからはD-101098みたいにヤバい実験に付き合わされることは一度もなかったし、他の同僚より好い目を見ることも多かったし。正直外にいた時より充実しているかもしんない。
相楽医師:そうそう。私もあやかりたいものですねぇ。
D-100519:替わりましょうか?
相楽医師:ははは、遠慮しておきます。ではD-100519さんは心身共に健康だとわかりましたので今週はここまでにしましょうか。
D-100519:じゃあまた来週お願いします。今度はもっと話せるネタ用意しときますね。
<面談終了>
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アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル:
説明:
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SCP-XXX-JP-1和了形の例 |
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アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル:
SCP-XXX-JP-2が1, 2, 3体、サイト-1024の人型オブジェクト収容室に収容されています。収容室には監視カメラと整備済みの雀卓を設置して下さい。
収容室には常に麻雀経験のあるDクラス職員を入れ、SCP-XXX-JP-2との闘牌を継続させて下さい。Dクラス職員は12時間毎に交代させて休養を取らせてください。
SCP-XXX-JP-2が4体、サイト-1024の人型オブジェクト収容室に収容されています。収容室には監視カメラと整備済みの雀卓を設置して下さい。
SCP-XXX-JP-2の拘束・毀傷を伴う実験は現在禁止されています。拘束・損傷を伴わない実験又はインタビューを実施する場合は、必ず収容室内で行いSCP-XXX-JP-2同士の闘牌を過度に妨げないように細心の注意を払って下さい。現在SCP-XXX-JP-1の和了によるSCP-XXX-JP-2発生の防止策として「同種の牌を4枚使用した七対子」役の和了を禁止とするルールの普及が財団により日本全国で進められています。
SCP-XXX-JP-2の発生が確認された場合は直ちにSCP-XXX-JP-2を確保・収容し、SCP-XXX-JP-2発生の目撃者及びSCP-XXX-JP-1和了者の親族への記憶処理とカバーストーリー「落雷による事故死」を流布して下さい。
説明:
SCP-XXX-JP-1は麻雀における【白・發・中】の牌を4枚ずつ使用した七対子の和了形です。
SCP-XXX-JP-1の異常性は和了した時に発現します。人がSCP-XXX-JP-1を和了した場合、和了者は雷に打たれ意識を失います。この雷は天候が晴天時である場合、和了者が屋内・地下にいる場合でも発生します。ただし、この雷による周囲の人間及び建物への損傷は一切ありません。和了者は被雷から数分後に意識を取り戻しますが、この時点でSCP-XXX-JP-2に変異します。
SCP-XXX-JP-2は外見は和了者と変わりませんが、元の人格・自我は失われており、常に麻雀を打つことへの執着を見せるようになります。SCP-XXX-JP-2が自身が麻雀を打つことを阻害された際は、近辺の雀荘へ転移する性質があります。また、SCP-XXX-JP-2は食事・睡眠・排泄を必要としません。
SCP-XXX-JPは19██年に東京都████区の雀荘で発見されました。
当時、東京都████区内では複数の雀荘から人が急に消失したという通報が何件も寄せられており、警察内に潜入していた財団エージェントがSCPオブジェクト関与の可能性を疑い財団へ報告しました。財団は調査員を派遣し、間もなく████区内の雀荘で消失する瞬間のSCP-XXX-JP-2を発見して、数日後に別の雀荘で確保しました。確保時はSCP-XXX-JP-2の転移を防ぐために、雀卓を荷台に設置した専用の確保用車両を用意し、SCP-XXX-JP-2は調査員達と麻雀を打ちながらサイト-1024へ移送されました。
SCP-XXX-JP-2の顔写真を元にさらに調査を進めた所、SCP-XXX-JP-2は██大学の学生であり、消失事件の数日前から消息を絶っていることが判明しました。対象の知人にインタビューした所、当時はサークルメンバー同士で麻雀を打っており、誰がより珍しい役を和了できるかを競っていた所、サークルメンバーの一人がSCP-XXX-JP-1を和了して急に落雷に打たれ、介抱している間に急に消失したとの証言を得られました。
実験記録001
実験目的: SCP-XXX-JP-2の身体検査被験者: SCP-XXX-JP-2
実施方法: SCP-XXX-JP-2を拘束し、体組織のデータを採る。
結果: SCP-XXX-JP-2は拘束時に消失した。この時点で実験は中断されサイト-1024全域に収容違反警報を発令しSCP-XXX-JP-2の捜索が行われた。消失から18時間後、サイト-1024付近の雀荘でSCP-XXX-JP-2を発見したため再収容した。以降はSCP-XXX-JP-2の闘牌を妨げる恐れがある実験は禁止された。
実験記録004
実験目的: 字一色役が複合する形でSCP-XXX-JP-1を和了した場合の調査被験者: D-109132(和了者), D-109133, D-109134, D-109135
実施方法: 前もってSCP-XXX-JP-1を和了出来るように操作した麻雀卓を使用し、D-109132が和了する。
結果: D-109132はSCP-XXX-JP-2に変異した。
実験記録006
実験目的: 3人麻雀でSCP-XXX-JP-1を和了した場合の調査被験者: D-109133(和了者), D-109134, D-109135
実施方法: 前もってSCP-XXX-JP-1を和了出来るように操作した麻雀卓を使用し、D-109133がSCP-XXX-JP-1を和了する。
結果: D-109133はSCP-XXX-JP-2に変異した。
実験記録008
実験目的: SCP-XXX-JP-1和了時に発生する雷の回避調査被験者: D-109134(和了者), D-109135, D-109136, D-109137
実施方法: サイト-1024の地下実験室に前もってSCP-XXX-JP-1を和了出来るように操作した麻雀卓を用意し、防護ヘルメットを被ったD-109134がSCP-XXX-JP-1を和了する。
結果: D-109134はSCP-XXX-JP-2に変異した。この時発生した雷を計測した所、電力は一切発生していないことが判明した。
補遺
実験記録008の実施後、収容プロトコルが現在のプロトコルへと変更された。今現在当サイトではSCP-XXX-JP-2を4体収容している。しかしこれ以上SCP-XXX-JP-2を増やされるとまた麻雀の人数合わせのDクラスを用意しなくてはならなくなる。いくら安定収容のためとはいえ常に複数人のDクラスを配備させるコストと実験で得られるリターンは見合わないと判断したため、今後はSCP-XXX-JP-2を新たに発生させる恐れがある実験は禁止とする。
何よりも我々の勤務中に遊んでいるDクラスがいるというのは我慢ならん。 -サイト-1024管理者-
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SCP-XXX-JP-2へのインタビュー記録
SCP-XXX-JP-2の闘牌阻害による収容違反の防止のため、このインタビューは収容室内で行われました。
インタビュー対象: SCP-XXX-JP-2 4体 (以降はA, B, C, D と区別して表記する)
インタビュアー: エージェント・██
<インタビュー開始>
エージェント・██:お楽しみの最中に失礼します。いくつかお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?
SCP-XXX-JP-2-A:ええ、いいですよ。
エージェント・██:ありがとうございます。では、あなた方はその体が落雷に打たれる前は何をしていたのでしょうか?
SCP-XXX-JP-2-A:うーん、覚えてないなぁ。強いていうならなんかその辺をふわふわ漂っていた。みたいな?
SCP-XXX-JP-2-B:ワシも同じようなものじゃ。よう覚えとらんわ。
エージェント・██:ありがとうございます。ではあなた方がその体に入った時のことを教えて頂けますか?
SCP-XXX-JP-2-A:ああ覚えていますよ。あれは何というか漂っていた魂みたいなものが掃除機みたいなものに吸い込まれるような感じで、気が付いたらこの状態ですよ。
SCP-XXX-JP-2-C:ポン
エージェント・██:ありがとうございます。ではあなた方は何故麻雀を打ち続けるのかを教えて頂けますか?
SCP-XXX-JP-2-C:えっ、麻雀って楽しいじゃない?それじゃダメ?
SCP-XXX-JP-2-B:リーチじゃ!
エージェント・██:私からは楽しいからという理由以上に執心されているように見えます。
SCP-XXX-JP-2-C:カン。うーん、何というか私たち常に打ち続けないと満足できないのよ。
SCP-XXX-JP-2-A:そういう一発消しはやめてくれ…。まぁ確かになんでかはわからないけど打ち続けないと気が済まないってのはありますね。
エージェント・██:ありがとうございます。では次に、あなた方は何を賭けて麻雀をしているのですか?
SCP-XXX-JP-2-B:何も賭けておらんよ。ワシらは麻雀を打つことさえできれば他は何もいらん。
エージェント・██:ありがとうございました。では今回のインタビューは以上に…
SCP-XXX-JP-2-D:ツモりました。8000オールの3本場です。
<インタビュー終了>
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SCP-807-JP |
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アイテム番号: SCP-807-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-807-JPの1個体がサイト-1024の小型生物収容室に収容されています。SCP-807-JPへは1年に1度給餌を行ってください。給餌時を除き、職員のSCP-807-JPへの接触は禁止されています。職員がSCP-807-JPへ接触する必要がある場合は、指定の頭部保護キャップを装着してください。ただし、給餌用のDクラス職員はこの限りではありません。また、現在O5-██の通達によりSCP-807-JPに対するあらゆる実験は禁止されています。
説明: SCP-807-JPは体長約8cm、体重約0.9gのハダカカメガイ科クリオネに類似した生物です。通常種のクリオネと同様に半透明の体色と頭部のバッカルコーン2を備えています。SCP-807-JPはこの特徴に加えて、通常種には存在しない中空の針状器官を体内に備えています。この器官は通常時は体内に折りたたまれた状態で収納されており、捕食行動時に頭部から体外に伸ばされます。
SCP-807-JPは通常種とは異なり水中ではなく空中を主な生息域としています。SCP-807-JPは普段は翼足部位を羽ばたかせるように動かすことで一定の高度を保ちながら空中を漂っています。この時の移動速度は 1km/h
です。ただし捕食行動時は一転して積極的に動き、翼足部位を高速で動かすことで 5km/h の速度で任意の方向へ移動することが可能です。
また、SCP-807-JPの翼足部位には「D・F・S・C - 0032796」の文字が印字されています。
SCP-807-JPの主食は人間の脳組織です。SCP-807-JPの半径おおよそ3m以内に人間が侵入した場合、SCP-807-JPは人間を感知し、対象へ高速接近し頭部のバッカルコーンを展開しながら頭部へ貼りつきます。バッカルコーンは強力な筋弛緩効果のある成分が含まれた刺胞細胞を有しており、捕食対象は頭部に貼り付かれた時点でSCP-807-JPに対する抵抗力を失います。その後、SCP-807-JPは頭部から針状器官を伸ばし、対象の頭皮・肉質・頭蓋骨を貫いて脳組織を吸引することで補食します。補食量は脳組織全体の内の約80%程です。捕食行動後のSCP-807-JPは吸引した脳組織によって平常時より膨張していますが破裂現象はこれまで確認されていません。
SCP-807-JPは捕食行動が完了した後に消失します。そして消失から24時間後、消失地点の半径5m以内にSCP-807-JPが再出現します。この時、消失前に吸引した脳組織は体内から消失しています。
補遺: SCP-807-JPは、2008/5/5に栃木県██市の農村部で発見されました。また、SCP-807-JP発見以前に脳組織の80%が消失した現地住民2名の変死体が見つかっています。当初は猟奇殺人事件として警察による調査が行われていましたが、██市担当のエージェントが事件を知り、死体の異常性から未知のSCPオブジェクト関与の可能性を疑い財団へ報告しました。その後調査員が派遣され事件現場付近の調査を実施した所、空中を漂うSCP-807-JPを発見し確保しました。財団が調査を行ったところSCP-807-JPが以前から発見されていた形跡は無く、最近出現したものであると推測されています。SCP-807-JPの確保後は一般人向けにカバーストーリー「転倒による脳挫傷」を流し、被害者の死因を知る警察関係者・遺族等へはAクラス記憶処理を施しました。
実験記録007
実験担当者: ██博士
実験目的: SCP-807-JPの捕食行動時の生態調査
被験者: D-103-615
実施方法: 実験室内にD-103-615を拘束した状態で配置し、SCP-807-JPを実験室へと放つ。
結果: SCP-807-JPはD-103-615の頭部へ貼り付いた。D-103-615は当初は抵抗していたが、貼り付かれた直後に抵抗を止めた。SCP-807-JPは捕食を続行し、10分後にD-103-615の頭部から離れ、実験室内から消失した。この時点で実験は中断されサイト-1024全域に収容違反警報を発令しSCP-807-JPの捜索が行われた。消失から24時間経過後、実験室内にSCP-807-JPが出現したため再収容した。
██博士のメモ: D-103-615の死体を調べた所、血中に筋弛緩成分が認められた。貼り付かれた際に触手から注入されたと思われる。あの触手にはクラゲの刺胞細胞のような機能もあるというわけか。消失現象に関しては目的・手段・消失先、どれも現時点では見当がついていない。Dクラスの確保が出来次第に追加の実験をしよう。だが今度の実験は昼食後以外の時刻を設定した方が良さそうだ。
実験記録008
実験担当者: ██博士
実験目的: SCP-807-JPの捕食妨害実験
被験者: D-103-616
実施方法: 実験室内に厚さ4cmの硬質プラスチック製ヘルメットを装着したD-103-616を拘束した状態で配置し、SCP-807-JPを実験室へと放つ。
結果: SCP-807-JPはヘルメットへ貼り付き、D-103-616は頭を振って抵抗した。貼り付き始めてから数秒後、SCP-807-JPはヘルメットから離れて実験室内を漂い始めた。D-103-616は生存しており、頭部にも目立った外傷はなかった。ヘルメットには深さ3cm程の微小な穴が開けられており、SCP-807-JPの針状器官によって傷つけられたものと推測されている。
██博士のメモ: SCP-807-JPの針状器官もヘルメットを貫通し切る程強靭ではないようだ。また、一度捕食に失敗した獲物には関心を示さなくなるらしい。
補遺: 本実験の後ヘルメットによる頭部の保護の有効性が認められ、SCP-807-JPの実験又は給餌時には、Dクラスを除く職員は財団指定の頭部保護キャップの装着することが義務づけられました。
実験記録009
実験担当者: ██博士
実験目的: SCP-807-JPの消失先の追跡調査
被験者: D-103-616
実施方法: SCP-807-JPにシール状の小型発信器を貼り付け、捕食後の消失先を調査する。
結果: SCP-807-JPはD-103-616の捕食後に実験室内から消失した。同時に発信器の反応も消失した。SCP-807-JPの消失から24時間後に実験室内にSCP-807-JPが再出現したが、実験前に貼り付けた発信器は確認出来なかった。
██博士のメモ: 発信器の反応がないということは恐らくは異次元・異空間の類へ移動したのではないだろうか。しかし再出現した個体に何故発信器がついていなかったのか?発信器を誰かが外したのか?それとも再出現した個体が消失した個体とは別の個体であったのか?
今度は何かメッセージを付けて試してみよう。もし発信器を誰かが外していたならば何かしらの反応があるかもしれない。
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以降の実験記録、並びにオブジェクトに関する情報の閲覧にはセキュリティクリアランス3以上の権限が必要です。
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アイテム番号: SCP-807-JP-C
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-807-JP-Cはその特性から現時点での収容は不可能です。SCP-807-JP-Cより通信が入った場合は、██博士、又はセキュリティクリアランス4以上の権限を持つ職員へ取り次いでください。
説明: SCP-807-JP-CはSCP-807-JPを生み出した、別次元に存在する企業体です。
現在、財団とSCP-807-JP-Cとの間でSCP-807-JPの収容に関する協定が結ばれています。SCP-807-JP-Cとは実験記録010で出現した通信機を用いることで通話が可能です。
実験記録010
実験担当者: ██博士
実験目的: SCP-807-JPの消失先の調査
被験者: D-103-617
付記: この実験は事前にサイト-1024管理者の許可を得た上で実施しています。
実施方法: SCP-807-JPに友好と接触の意思を表したメッセージを貼り付け、捕食による消失現象を発生させる。
結果: 消失から24時間経過後、実験室内にSCP-807-JPとモニタ付き通信機らしき機器が出現した。数分後に通信機から着信音が発せられたため、██博士が応対した。通話内容の詳細は後述の通話記録-807-JPを参照してください。
通話記録-807-JP
<通話開始>
SCP-807-JP-C: ご多用中に失礼します。私、ディメンションフードサービス社の小柳と申します。(同時に機器のモニタ上に若い女性が表示される)
██博士: は、はぁ、えぇー私は██という者です。
SCP-807-JP-C: ██様でございますね。先程お送り頂きましたメッセージを確認致しました。当社としても是非そちらの次元の方々と友好関係を築いていきたい所存でございます。
██博士: あ、ありがとうございます。えぇそうですね。
██博士: あの、小柳さん?2、3点お伺いしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?
SCP-807-JP-C: はい、どういったご質問でしょうか。
██博士: SCP-8…いえ、あの空中を浮遊する生物についてなのですが、あの生物はあなたが作ったものなのでしょうか?
SCP-807-JP-C: いいえ、あの生物は当社が開発した装置であって、私個人の製作物ではありません。
██博士: そうですか、ありがとうございます。もしよろしければ、あの生物は何のために作られたのか教えて頂けますでしょうか?
SCP-807-JP-C: はい、あの生物は人間の食用脳を採集する装置です。当社では採集装置を様々な次元に放流して脳を集めており… ご気分がすぐれないようにお見受けいたしますが、いかがなされましたか?
██博士: 失礼しました。こちらの世界では人間の脳を食べる文化がなく、少し驚いてしまっただけです。ところで何故別世界の脳を集めているのでしょうか?
SCP-807-JP-C: はい、私共の世界内での人狩りは違法となっていますので、規制の対象外である他の世界の方々の脳を集めているのです。██様の次元はかなり良い回収頻度です。大変助かっています。
██博士: それはどうも…?
SCP-807-JP-C: もしよろしければ是非当社と協定を結んで頂き、今後も脳の安定供給のご協力をお願い頂けないでしょうか。
██博士: 私は責任者ではないので決定権はないのですが…ちなみにどういった内容の協定でしょうか?
SCP-807-JP-C: はい、つまるところ定期的に当社の採集装置に脳を与えて頂きたいのです。その代わりに当社はそちらに送りました1個体以外には、あなた方の住む次元への採集装置の放流は致しません。
██博士: 少し待ってください。この個体以外にも採集装置を放流しているのですか?
SCP-807-JP-C: いいえ、まだ放流は開始していませんが、先程申し上げました通り██様の次元は脳の回収頻度が良好でしたので、来月より追加で4体の放流が予定されています。
██博士: それは…困ります。
SCP-XXX-JP-C: 申し訳ございません。当社もメッセージを頂くまでは文明を持った次元の方とは存じ上げていませんでしたので。ですが、そういった次元の方々とは先程お話ししました協定を結ばせて頂くことで良い関係を築かせて頂いています。
██博士: そうですか…ではこれはあくまで仮定の話ですが、もし私たちがあなた方より高度な文明を持ち、あなた方のやり方に反発するようなことがあった場合はどうするのでしょうか?
SCP-807-JP-C: 実際の所、私共より高文明の次元の方々とも協定を結ばせて頂いていますが、今までそういった反発は頂いたことがございませんので何ともお答えできません。皆さま、異次元との接点を持つことが出来るのならば安い対価だとおっしゃってくださいます。
██博士: 成る程…ありがとうございます。ですが先程お話しした通り、私は責任者ではありませんので協定に関しても上層部と協議しなくては回答は出来ません。
SCP-807-JP-C: はい、存じております。こちらもすぐにお返事頂けるとは考えておりません。また後日に改めてご連絡致しますので、是非協定について前向きなご検討をお願い致します。本日はお忙しい所ありがとうございました。失礼します。(モニタ上の女性が頭を下げた後に映像が切断される)
<通話終了>
補遺: 後日財団の交渉人とSCP-807-JP-Cとの間で数回の通話が行われ、財団とSCP-807-JP-Cとの間で『807-JP協定』が締結されました。
807-JP協定書 (要約)
第1条 財団は1年に1度SCP-807-JPへ給餌を行う義務を負う
第2条 SCP-807-JP-CはSCP-807-JPの定点放流 (放流場所はSCP-807-JPの収容室) と放流個体数の制限の義務を負う
第3条 協定違反が発覚した場合は財団・SCP-807-JP-Cは共に第1条、第2条の義務の放棄を認める
第4条 807-JP協定は、財団・SCP-807-JP-Cが存続する限り効力を持つ
当然我々は自ら望んでこのような不平等協定を結んだ訳ではない。SCP-807-JP-C は悪辣で危険な団体であり、収容・無力化されるべき存在であることは重々理解している。そして、残念ながら現在の財団はその手段を未だ有していないこともまた同時に知っている。我々はその手段を得るまでの時間を、毎年Dクラス1人という対価と引き換えに買っているのだ。断じてSCP-807-JP-Cと交流するための対価を支払っているのではない。- O5-██
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アイテム番号: SCP-832-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Euclid
特別収容プロトコル: 現在SCP-832-JP-1がサイト-1024の危険物収容室に保管されています。SCP-832-JP-2が収容室に出現した場合は即座に収容室の2重隔壁を起動し、機動部隊へ通報して下さい。
説明: SCP-832-JP-1は直径20cmの電波時計です。SCP-832-JP-1は未知の原理により電池を抜かれている状態であっても時刻を表示し続けます。ただし、表示される時刻は「10月1日12:00」で固定されており、こちら側の操作は受け付けません。収容当初は「電池なしで動く壊れた電波時計」としてAnomalousアイテムに分類され低危険物収容金庫に保管されていましたが「事案832」にて出現したSCP-832-JP-2と密接な関わりがあるとされ、オブジェクトクラスを「Euclid」に再分類、現在の収容方法へ変更されました。
SCP-832-JP-2は衣服を纏った体長約2.3mの人型生物です。SCP-832-JP-2は非常に凶暴な性質と、優れた膂力・反射神経を持っていることが観測されています。
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事案832
2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に突如SCP-832-JP-2が出現しました。SCP-832-JP-2は出現後、SCP-832-JP-1の収容されている金庫を奪取し逃走を計りました。金庫が奪取された時点でサイト内に侵入者警報が発令され、警備員が急行しSCP-832-JP-2を取り押さえようとしましたが抵抗されたため叶わず、鎮圧用麻酔弾も効果がなかったため火器を使用しSCP-832-JP-2を殺害、SCP-832-JP-1を回収しました。また、SCP-832-JP-2の死体はSCP-832-JP-1の回収後に消失しました。この事案により警備員1名が死亡しました。
アイテム番号: SCP-832-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Euclid
財団記録・情報保安管理局より通達
ファイル'SCP-832-JP'には文字の一部が赤字に変色している箇所が存在しますが、これは財団による意図的な編集ではありません。当該箇所の改竄行為は失敗に終わりました。現在、この現象とSCP-832-JPとの関連性を調査中です。
— 記録情報セキュリティ管理室(RAISA)管理官 セオドア・ジャクソン
特別収容プロトコル: 現在SCP-832-JP-1がサイト-1024の高危険物収容室に保管されています。SCP-832-JP-2が収容室に出現した場合は即座に収容室の3重隔壁を起動し、機動部隊へ通報して下さい。
説明: SCP-832-JP-1は直径20cmの電波時計です。SCP-832-JP-1は未知の原理により電池を抜かれている状態であっても時刻を表示し続けます。ただし、表示される時刻は「10月1日12:00」で固定されており、こちら側の操作は受け付けません。収容当初は「電池なしで動く壊れた電波時計」としてAnomalousアイテムに分類され低危険物収容金庫に保管されていましたが「事案832」にて出現したSCP-832-JP-2と密接な関わりがあるとされ、オブジェクトクラスを「Euclid」に再分類、現在の収容方法へ変更されました。
SCP-832-JP-2は鎧兜を纏った体長約2.3mの人型生物です。SCP-832-JP-2は非常に凶暴な性質と、優れた膂力・反射神経を持っていることが観測されています。また、武具の扱いに長けていることから人間と同等の知能を有していると推測されています。
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事案832
2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に突如SCP-832-JP-2が出現しました。SCP-832-JP-2は出現時に所持していた槌に類似した武器により金庫を破壊すると、SCP-832-JP-1を奪取し逃走を計りました。金庫が破壊された時点でサイト内に侵入者警報が発令され、警備員が急行しSCP-832-JP-2を取り押さえようとしましたが抵抗されたため叶わず、鎮圧用麻酔弾も効果がなかったため火器の使用とSCP-832-JP-2の殺害許可が下りました。
しかしSCP-832-JP-2の強固な武装に阻まれ殺害には至りませんでした。SCP-832-JP-2はなおも逃走を続けましたが、通報を受けた機動部隊がサイトに到着し重火器を使用したことでSCP-832-JP-2の殺害に成功し、その後SCP-832-JP-1を回収しました。また、SCP-832-JP-2の死体はSCP-832-JP-1の回収後に消失しました。この事案により警備員2名が死亡し、施設の一部が損壊しました。
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補遺
SCP-832-JP-1を回収した機動部隊員より『SCP-832-JP-1の移送時にオブジェクトの液晶部分にNow Loading…の文字が浮かび上がった』との証言を得ました。SCP-832-JP-1には未だ解明されていない性質があると見られています。現在、SCP-832-JP-1の分解も視野に入れた追加調査の実施が協議されています。
アイテム番号: SCP-832-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Euclid
財団記録・情報保安管理局より通達
ファイル'SCP-832-JP'には文字の一部が赤字に変色している箇所が存在しますが、これは財団による意図的な編集ではありません。当該箇所の改竄行為は失敗に終わりました。現在、この現象とSCP-832-JPとの関連性を調査中です。
— 記録情報セキュリティ管理室(RAISA)管理官 セオドア・ジャクソン
特別収容プロトコル: 現在SCP-832-JP-1がサイト-1024の地下収容室に保管されています。SCP-832-JP-2群が収容室に出現した場合は即座に収容階層の隔離を実施し、機動部隊へ通報して下さい。
説明: SCP-832-JP-1は直径20cmの電波時計です。SCP-832-JP-1は未知の原理により電池を抜かれている状態であっても時刻を表示し続けます。ただし、表示される時刻は「10月1日12:00」で固定されており、こちら側の操作は受け付けません。収容当初は「電池なしで動く壊れた電波時計」としてAnomalousアイテムに分類され低危険物収容金庫に保管されていましたが「事案832」にて出現したSCP-832-JP-2と密接な関わりがあるとされ、オブジェクトクラスを「Euclid」に再分類、現在の収容方法へ変更されました。
SCP-832-JP-2は鎧兜を纏った体長約2.3mの4体の人型生物です。SCP-832-JP-2は非常に凶暴な性質と、優れた膂力・反射神経を持っていることが観測されています。また、武具の扱いに長けており、SCP-832-JP-2同士では未知の言語によってコミュニケーションをとりながら連携する様子が観測されていることから少なくとも人間と同等の知能を有していると推測されています。
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事案832
2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に突如SCP-832-JP-2群が出現しました。SCP-832-JP-2群は出現時に所持していた槌に類似した武器により金庫を破壊すると、SCP-832-JP-1を奪取し逃走を計りました。金庫が破壊された時点でサイト内に侵入者警報が発令され、警備員が急行しSCP-832-JP-2群を取り押さえようとしましたが抵抗されたため叶わず、鎮圧用麻酔弾も効果がなかったため火器の使用とSCP-832-JP-2群の殺害許可が下りました
しかしSCP-832-JP-2群の強固な武装に阻まれ殺害には至りませんでした。その後、通報を受けた機動部隊がサイトに到着し重火器を使用することでSCP-832-JP-2群の掃討に成功し、その後SCP-832-JP-1を回収しました。また、SCP-832-JP-2群の死体はSCP-832-JP-1の回収後に消失しました。この事案により警備員2名、研究員1名、機動部隊員2名が死亡し、施設の一部が損壊しました。
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SCP-832-JP-2群の掃討に参加した日下部機動部隊員の証言
あのデカブツ共は、まるで俺らが出てくるのを前もって知っていたみたいに待ち伏せして迎撃してきやがった。そのせいで同僚が2人もやられちまったよ。
デカブツ共を殲滅してやった時も、奴らなんというか「死にたくない」とか「祟ってやる」とかの悲壮な感じは無くて、ただ少し悔しそうに死んでいったんだ…まるでちょっとした勝負事で負けちまったみたいな感じ。
それとあの時計についてなんだが、実はデカブツ共が消えちまったすこし後くらいに液晶の部分に「Now Loading…」って文字が出てきたんだよ、少ししたら消えちまったけどな。あ、勿論上には報告したさ、あれなんだったんだろうな?
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補遺
SCP-832-JP-1を回収した機動部隊員より、『SCP-832-JP-1の移送時にオブジェクトの液晶部分にNow Loading…の文字が浮かび上がった』との証言を得ました。SCP-832-JP-1にはまだ解明されていない性質があると見られています。現在、SCP-832-JP-1の分解も視野に入れた追加調査の実施が協議されています。
アイテム番号: SCP-832-JP
オブジェクトクラス: Anomalous Euclid(現在Neutralizedと推定)
財団記録・情報保安管理局より通達
ファイル'SCP-832-JP'には文字の一部が赤字に変色している箇所が存在しますが、これは財団による意図的な編集ではありません。当該箇所の改竄行為は失敗に終わりました。現在、この現象とSCP-832-JPとの関連性を調査中です。
— 記録情報セキュリティ管理室(RAISA)管理官 セオドア・ジャクソン
特別収容プロトコル: 現在SCP-832-JP-1の残骸がサイト-1024の地下収容室に保管されています。SCP-832-JP-2群が収容室に出現した場合は即座に収容階層の隔離を実施し、機動部隊せ-1("ギガントハンター")へ通報して下さい。
説明: SCP-832-JP-1は直径20cmの電波時計です。SCP-832-JP-1は未知の原理により電池を抜かれている状態であっても「10月1日12:00」の時刻を表示し続ける性質がありましたが、事案832時に破壊されて以降はその性質は消失しています。収容当初は「電池なしで動く壊れた電波時計」としてAnomalousアイテムに分類され低危険物収容金庫に保管されていましたが「事案832」にて出現したSCP-832-JP-2群と密接な関わりがあるとされ、オブジェクトクラスを「Euclid」に再分類、現在の収容方法へ変更されました。
SCP-832-JP-2は戦闘服に類似した衣服とヘルメットを身に着けた体長約2.3mの4体の人型生物です。SCP-832-JP-2は非常に凶暴な性質と、優れた膂力・反射神経を持っていることが観測されています。また、火器・爆発物・刃物の扱いに長けており、SCP-832-JP-2同士では未知の言語によってコミュニケーションをとりながら連携する様子が観測されていることから、少なくとも人間と同等の知能を有していると推測されています。
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事案832
2001年10月1日、SCP-832-JP-1が収容されていた金庫室に突如SCP-832-JP-2群が出現しました。SCP-832-JP-2群は出現時に所持していた爆発物により金庫を破壊すると、SCP-832-JP-1を奪取し逃走を計りました。金庫が破壊された時点でサイト内に侵入者警報が発令され、警備員が急行しSCP-832-JP-2群を取り押さえようとしましたが抵抗されたため叶わず、鎮圧用麻酔弾も効果がなかったため火器の使用とSCP-832-JP-2群の殺害許可が下りました。しかしSCP-832-JP-2群の武装に阻まれ殺害には至りませんでした。その後、通報を受けた機動部隊がサイトに到着し重火器を使用したSCP-832-JP-2群の掃討作戦が実施されましたが失敗し、SCP-832-JP-2群はサイトより逃走しました。幸いなことにSCP-832-JP-2群が市街地に向かわず、サイト付近の山林に留まり続けていたため、同日中に機動部隊の増援によってSCP-832-JP-2群の掃討に成功しました。この事案により警備員2名、研究員1名、機動部隊員15名が死亡し、サイトの一角が崩壊しました。
また、SCP-832-JP-2の死体はSCP-832-JP-1の回収後に消失し、消失地点には大量の松茸が残されていました。
SCP-832-JP-1はSCP-832-JP-2群の掃討後に機動部隊によって回収されましたが、サイトへ移送する途中で日下部機動部隊員によって故意に破壊されました。
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インタビュー記録832
インタビュー対象: 日下部機動部隊員
インタビュアー: エージェント・██
<インタビュー開始>
エージェント・██: では、インタビューを始めます。さて、何故あなたはSCP-832-JP-1を破壊したのですか?
日下部機動部隊員: うーん、どう表現したものか……何というか、あの時計はすぐに壊さないとやばい奴だと思ったんですよ。
エージェント・██: 真面目に答えて下さい。
日下部機動部隊員: あー…わかりました。話します、ただ…馬鹿にしたりしないでくださいよ?
エージェント・██: もちろんです。
日下部機動部隊員: それではそうですね…██さんはFPS、あーTPSでもいい、なにかそういう系のチームを組んでミッションを達成するようなゲームをやったことはありますか?
エージェント・██: 私は今までそういったゲームで遊んだことはありませんね。
日下部機動部隊員: では説明しますね。これはある戦争ゲームのルールなんですが、まずゲームを始める前に装備を決めたり仲間を募ったりするんです。私は簡単なミッションならソロで、高難度のミッションなら友人と協力して遊んでいます。で、その後参加したいミッションを選んでゲーム開始。スタート地点に転送されてその後はミッション達成のために好きに行動する。敵をキルしたり、レアアイテムを探したり、まあ目的は何でもいいです。そして、もしもミッション中に自分がやられてしまったらリトライを選んでまたスタート地点からやり直す。ここまで大丈夫ですか?
エージェント・██: ええ、ですがそれがSCP-832-JP-1を壊したこととどういう関連があるのですか?
日下部機動部隊員: あのデカブツ共の動きを見ておかしいと思いませんでしたか?
奴らはまるで部隊員の頭数、装備、作戦行動の全てを前もって知っていたかのように待ち伏せして迎撃してきました。しかも奴らはサイト内の構造にも精通しているようでした。建物内の死角や遮蔽物を活用されて私たちの部隊は完全に攪乱されました。あんな立ち回りは奴らに予知能力があるか、我々の内部に情報を垂れ流したスパイがいたか、もしくは以前にも全く同じ戦闘をしたことがあるかしない限り絶対に無理です。エージェント・██: すみませんが、あなたの言いたいことがまだ理解できていません。
日下部機動部隊員: それではまた、ゲームの話に戻りますね。プレイヤーはやられてゲームオーバーになったらリトライできます。ですのでプレイヤーは何故自分がやられたかを分析して反省し、次のトライのために準備することが出来ます。装備を強化したり、強い仲間を募ったり、敵の戦力・作戦を先読みして対応策を考えたり…
エージェント・██: 待ってください、あなたはSCP-832-JP-2群がそれをやっているとでもいうのですか?
日下部機動部隊員: ええ、その通りです。
エージェント・██: その…状況証拠以外のもう少し別な根拠はないのですか?
日下部機動部隊員: そうですね…奴の死体から時計を回収した時に、それを見ていた生き残りのデカブツが目に見えてうろたえていたことと、後はあの時計について、奴らを殲滅して死体が消えたすぐ後くらいにいきなり液晶の部分に「Now Loading…」って文字が出てきたことですね。で、文字を見たとたんにハッと気づいたんですよ。「奴らがまたやり直そうとしている」って、そう思ったら後は、考えるよりも早く体が動いて…気が付いたらあの時計を壊してしまった後でした。
エージェント・██: はぁ…もし仮に、仮にですよ? あなたの説が正しかったとしても、我々はタイムリープ現象を観測する手段をまだ確立出来ていませんし、SCP-832-JP-1を破壊してしまったのではオブジェクトの調査も出来なくなってしまい、あなたの説の正当性を立証出来なくなってしまうのですよ?もう少し冷静になって待つことは出来なかったのですか?
日下部機動部隊員: それでは遅いんですよ!
…すみません。自分でもおかしなことを言っているのはわかっているんです。財団に所属してる職員として絶対に犯してはいけないことをしてしまったこともわかっているんです。ただ、どうしても怖かったんですよ!エージェント・██: 何が怖かったのですか?
日下部機動部隊員: 奴の目です! 俺がとどめを刺した奴の目です! 友人とゲームで遊んでいるときに何度も同じ目をして言われたから、言葉はわからなくても奴が死に際に何を言おうとしていたのかがすぐにわかりました!
エージェント・██: SCP-832-JP-2は何を言おうとしていたのですか?
日下部機動部隊員: 「よくもやりやがったな、次は絶対お前から殺してやる」
<インタビュー終了>
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補遺
日下部機動部隊員は記憶処理の後に財団傘下のフロント企業へ異動となりました。
「事案832」の後に、破壊されたSCP-832-JP-1の分解調査が実施されました。この調査により、SCP-832-JP-1内部に磁気媒体3と思われる装置が内蔵されていたことが判明しました。磁気媒体内のデータの調査を実施した所、以下の文章の解読に成功しました。
納品ミッション
依頼人:Xguiwhdejuioe
ミッション内容:Gyuhdiew × 40 の納品
報酬:duciGTYFtyiuw × 4
5,000,000eoi
場所:fewiofhwfio(昼)
更新:2016年3月現在、これまでSCP-832-JP-2が再出現していない事から、オブジェクトクラスを「Neutralized」へ再分類する案が現在審議中です。
SCP-885-JP-1 |
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アイテム番号: SCP-885-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、SCP-885-JP-1とSCP-885-JP-2がサイト-1024の低危険物収容金庫に保管されています。SCP-885-JP-1とSCP-885-JP-2は実験目的以外の使用、持ち出しが禁止されています。
また、未収容のSCP-885-JPが少なくとも後6つ存在すると見られており、現在も回収活動が続けられています。
説明: SCP-885-JP-1は直径9cmの卵型の小型ゲーム機です。SCP-885-JP-1の前面には小型の液晶画面とボタンがついており、外見は1990年代に発売され、当時流行した███社の携帯ゲーム機「[編集済]」に酷似しています。SCP-885-JP-1は財団エージェントが栃木県██市の縁日の屋台で購入し、後に自宅で起動した際に異常性が発見されました。その後、財団はエージェントがSCP-885-JPを購入した屋台を捜索しましたが、発見することは出来ませんでした。
SCP-885-JP-2は黄を基調にしたカラーリングが特徴のSCP-885-JP-1と同型のゲーム機です。SCP-885-JP-1とSCP-885-JP-2はカラーリング以外には差異が無かったため、以降の記述では一部を除いてSCP-885-JPとまとめて呼称します。
SCP-885-JPの異常性はボタンを押下した時に発現します。この時SCP-885-JPの最も近くに存在する「卵」が1つ割られ、SCP-885-JPの液晶画面には「卵」が割られる過程のドットアニメーションが流れます。異常性の効力範囲、「卵」が割られる原理は不明です。
SCP-885-JPによって割ることが出来る「卵」は鶏卵のみに留まらず、魚類・爬虫類の卵など、その対象は多岐にわたります。(詳細は後述の実験記録を参照)
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SCP-885-JPの影響を受ける対象の調査実験記録
付記: 実験No.002 以降はオブジェクトの影響を実験室外に及ぼさないよう、実験室内に防止用の鶏卵を配置した。
No. | 対象 | アニメーションの内容 | 結果 |
001 | 鶏の有精卵 | 床に置かれた卵が刃物で斬られる | 殻が割れる、中の黄身はつぶれていた |
002 | 鶏の無精卵 | 床に置かれた卵が刃物で斬られる | 殻が割れる、中の黄身はつぶれていた |
003 | ダチョウの卵 | 床に置かれた卵がハンマーで割られる | 放射状のひびが入り、殻のみが砕けた |
004 | 茹でた鶏卵 | 床に置かれた卵が刃物で斬られる | 変化なし、防止用の鶏卵が割れた |
005 | 鮭の卵 | 鮭の卵が指に潰される | 表面の膜が裂け、内容物がこぼれた |
006 | 亀の卵 | 床に置かれた卵が刃物で斬られる | 殻が割れる、中の黄身はつぶれていた |
007 | 卵型の菓子 | 床に置かれた卵が刃物で斬られる | 変化なし。防止用の鶏卵が割れる |
008 | 孵化直前の鶏卵 | 床に置かれた卵が刃物で斬られる | 殻が割れ、内部の雛は死亡した |
009 | 排卵直前の鶏 | チューブ状の物体に包まれた卵が刃物で斬られる | 鶏の卵管内で卵が割れた。 |
010 | リンゴ | 床に置かれたリンゴが刃物で斬られる | 種のみが割れた |
011 | アボカド | 床に置かれたアボカドがハンマーで割られる | 種のみが割れた |
012 | ココナッツ | 床に置かれたココナッツがハンマーで割られる | 繊維質の殻と内部の殻の両方が割れる |
013 | モルモット | 床に置かれた卵が刃物で斬られる | 変化なし、防止用の鶏卵が割れた |
014 | 妊娠中のモルモット | 袋状の物体に包まれたモルモットが刃物で斬られる | モルモットとその胎児は死亡した。解剖の結果、子宮の破裂が死因だと判明した |
015 | モルモットの新生児 | 床に置かれた卵が刃物で斬られる | 変化なし、防止用の鶏卵が割れた |
実験結果に対する██研究員の考察
SCP-885-JPのボタンを押下した時に影響を及ぼす対象は、鳥類のみに限らず、爬虫類、魚類等の卵も含まれることが判明した。また、No.010〜012やNo.014の実験結果を鑑みるに、植物の種子や動物の胎児も 「卵」 として扱われること。動物については子宮部位が卵の「殻」として扱われると推測できる。
次に、「卵」の割り方に関して、SCP-885-JPのアニメーションの内容と実際の「卵」の割られ方はある程度リンクしているように見える。また、「卵」を割る手段は、「卵」の大きさや硬度の違いによって異なるようだ。
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SCP-885-JP-2の回収記録
20██年7月、栃木県██市で妊婦のみを対象にした原因不明の連続傷害事件が発生しました。この事件の被害者には目立った外傷がなく、体内の子宮部分と胎児のみが刃物によって傷つけられていました。警察内部に潜入していたエージェントの報告により事件の詳細を知った財団は、この事件が未収容のSCP-885-JPによって引き起こされた可能性があると判断し、██市の事件現場付近で、SCP-885-JP 及び 所持している人間の捜索が行われました。その結果、SCP-885-JP-2が発見され即座に回収・収容されました。以下は回収時のインタビュー記録です。
インタビュー対象: 事件現場付近に在住している男子小学生(以降は「少年」と記述)
インタビュアー: エージェント・██
<インタビュー開始>
エージェント・██:それじゃあ██君(少年の名前)、そのゲームを見せてくれるかな?
少年:うん、これだよ。(机の引き出しからSCP-885-JP-2を取り出しエージェント・██に見せる)
エージェント・██:このゲームはどうやって手に入れたんだい?
少年:えっと、7月の初めらへんに父ちゃんがお土産に買って来てくれたんだ。父ちゃん、あの日は酔っぱらっててさー「父ちゃんが子供だった時にはみんなこのゲームで遊んでたんだぞー」て言ってたなぁ。ほんとはこんなのよりも[編集済](インタビューの実施時点で発売されていた最新機種のゲーム機)が欲しかったんだけどなぁ、これそんなに楽しくないけどやってみる?
エージェント・██:いいのかい?じゃあ少し借りるよ。(事前に用意した鶏卵を皿に置き、SCP-885-JP-2のボタンを押す。)
少年:えっ!?卵が勝手に割れた!?
エージェント・██:知らなかったのかい?
少年:うん、箱も説明書も読まずに捨てちゃったし、これってボタンを押すとアニメを見れるゲームじゃなかったの?
エージェント・██:アニメも見れるけど・・・ちなみに今まではどんなアニメを見たんだい?
少年:えーと、卵とか、果物が割れたり、袋に入った猫や赤ちゃんが斬れたり・・・あれ?
エージェント・██:(無言)
少年:ねえ、ひょっとして少し前に近所で猫がたくさん死んでたり、僕の近くで女の人が急に苦しがってたのって・・・
エージェント・██:今日は色々お話ししてくれてありがとうね、このゲームはちょっと壊れているみたいだからお兄さんが引き取っておくよ。代わりに別の欲しいゲーム機を買ってあげ・・・
(少年はエージェント・██の言葉を最後まで聞かずにトイレに駆け込む)
エージェント・██:(溜息をつき) 本部、こちらエージェント・██です。未収容のSCP-885-JPを発見・確保しました。これより戻ります。
<インタビュー終了>
補足
エージェント・██によってSCP-885-JP-2は回収され、その後SCP-885-JP-2の所持者の少年とその家族には追加のインタビューを行った後に、Aクラス記憶処理が施されました。
追加インタビューの結果、少年の父親からSCP-885-JP-2は仕事帰りの途中で露天商から購入したとの証言が得られました。しかし、当時少年の父親は酔っており露天商の特徴やどのあたりで購入したかについては憶えていないとのことでした。現在、この露天商の行方を捜索していますが発見には至っていません。
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付録SCP-885-JP
以下の文がSCP-885-JP-1のパッケージに印字されていました。
オーット!『博士のわくわく卵割りマシーン』を手に入れたんだね?
ボタンを押すとあら不思議!博士が作った楽しいアニメを見ているうちに、なんと卵がまっぷたつ!まるで魔法だ!今夜は卵パーティで決まりだね!
『博士のわくわく卵割りマシーン』は全部で8つあるよ!そのうち7つは虹の色、最後の1つはシークレットレアさ!さあ全部見つけてコンプリートだ!
.
みんな一緒に楽しもうね!.
.
.注意
妊婦又は妊娠していると思われる人は気をつけて使用してください。
『博士のわくわく卵割りマシーン』により発生した事故・損害に対して博士は一切の責務を負いません。あしからず。
SCP-1011-JP-1 |
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アイテム番号: SCP-1011-JP
オブジェクトクラス: Keter Euclid
特別収容プロトコル: SCP-1011-JP-1はその普及率の高さから、未だ完全な収容が成されていません。
サイト-1024の特別収容室にSCP-1011-JP-1を内包した端末がサンプルとして1台設置されています。端末を使用する場合は、事前にサイト管理者の許可を得た上で担当警備員を同室させた状態で操作して下さい。
財団が業務上使用・貸与しているPC, スマートフォン端末へのSCP-1011-JP-1の混入を防ぐ目的で、年に一度、端末の動作確認テストを行います。SCP-1011-JP-1の混入が確認された場合は、所持者への事情聴取と混入経路の調査が実施されます。
現在、SCP-1011-JP-1の根絶、及びSCP-1011-JP-2の無力化を目的とした 『悪魔払い』 と 『銀の弾丸』の2種類のプロトコルが随時実施されています。
無力化プロトコル『悪魔払い』
機動部隊し-1("クラッカー")により、国内のCPU生産工場へ定期的に立ち入り調査を実施し、SCP-1011-JP-1が生産されていた場合にSCP-1011-JP-1の接収と生産者の捕縛・掃討を行います。
無力化プロトコル『銀の弾丸』
SCP-1011-JP-2の異常性を無力化可能な、新型・新バージョンOS4の開発支援。また、それら新型・新バージョンOSの民間人・企業向けのアップグレード促進活動を行います。
説明:SCP-1011-JPは三種類の要素からなるオブジェクトです。
SCP-1011-JP-1は███████社製のCPU5です。SCP-1011-JP-1の異常性はSCP-1011-JP-1を搭載したPC, スマートフォンの端末の電源を入れた際に発現します。端末の電源がON、且つインターネットへの接続がオンライン状態の時にSCP-1011-JP-2を自動で実行します。
SCP-1011-JP-1の生産時は通常のCPUの生産工程に加えて、原料であるシリコンウエハーを[削除済]に浸す工程と未知の記号群を回路へ打ち込む工程があります。現在国内で流通・使用されているCPUの約11%がSCP-1011-JP-1であると見られています。
SCP-1011-JP-2はSCP-1011-JP-1を搭載したPC・スマートフォン端末で実行されるバックグラウンドプロセス6です。このプロセスは一般に流通しているタスクマネージャー等のプロセス確認機能によっては検出されず、検出するためには専用のプロセス確認ツールが必要です。SCP-1011-JP-2は端末の演算機能を使い、SCP-1011-JP-3の構築を行います。構築作業を行うSCP-1011-JP-2同士は同期状態にあり、より効率的に作業を行うことが可能です。また、後述のインタビュー記録よりSCP-1011-JP-2にはSCP-1011-JP-2を実行している端末の周囲100mの人間を未知の手段で分解し、身体構成情報をSCP-1011-JP-3へ転送させる機能が備わっている、又は今後付与される可能性があります。
SCP-1011-JP-3は未知のコンピュータネットワークです。後述のインタビュー記録より、SCP-1011-JP-3にはSCP-1011-JP-2が分解・転送した人体の構成情報を保存し内部で再現させる機能があると推測されています。現在、SCP-1011-JP-3は未完成の状態であり、全国に分布しているSCP-1011-JP-2によって構築が進められています。SCP-1011-JP-3が完成した場合、国内に住む66%以上の人間が現実世界から消失する恐れがあります。
SCP-1011-JP-1は███████社のCPU生産工場に勤務する非正規雇用の従業員による、内部告発から存在が発覚しました。この従業員はSCP-1011-JP-1の生産工程の内、[削除済]にシリコンウエハーを浸す工程の詳細を偶然知り、知人であった財団のエージェントに相談したところ、エージェントはその工程の異常性から、未知のSCPオブジェクト関与の可能性を疑い財団へ報告しました。財団は生産工場への立ち入り調査を実施しようとしましたが、███████社より、社内の機密情報漏えい防止の為という名目で調査を拒否されたため、潜入調査員を派遣して生産工場の調査を行うこととなりました。しかし、派遣した調査員からの報告が一週間後に途絶えたため、機動部隊による事前予告なしの生産工場強制立ち入り調査が行われました。その結果、事案-1011が引き起こされ生産工場は倒壊しました。その後、立ち入り調査時に捕縛した███████社の上級従業員へインタビューを行った結果、SCP-1011-JP-2 と SCP-1011-JP-3の存在が明らかになりました。
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機動部隊によるSCP-1011-JP-1生産工場への強制立ち入り調査時の記録
<記録開始>
部隊長:午前11時10分、工場の立ち入り調査を開始します。
部隊長:午前11時20分、工場の生産ライン部分へ到達しました。これより調査を開始します
(背後から隊員の声。・・・従業員の方々はその場から動かないで下さい。危害を加える意図はありません。我々は政府のエージェントです。テロリストの類ではありません・・・)
部隊長:午前11時24分、告発のあったシリコンウエハーの加工ラインを発見しました。確かに不審な液体が入った水槽があります。
本部:液体のサンプルを採取して本部へ送ってください。(後に採集したサンプルを調査した結果、液体は[削除済]であることが判明しました)
部隊長:サンプルの採集が完了しました。これより工場責任者の拘束と事情聴取を・・・
館内放送:従業員の皆さん。生産ラインに武装勢力が侵入しました。社内規則に従い、12時00分に手順20を実行します。レベル2,3の従業員は11時45分までにコード14を実行する権利が解放されます。繰り返します・・・
部隊長:本部、一部の従業員達たちが暴れ始めました!鎮圧の許可をお願いします!
本部:待ってください。何かきっかけはあったのですか?
部隊長:放送が鳴ったとたんに暴れ始めて隊員を振り切って逃げ出そうとしています・・・まて!まだ鎮圧の許可が出ていない!
本部:鎮圧を許可します。ただし火器の使用は許可しません。
部隊長:午前11時39分、鎮圧が完了しました。これより工場責任者の拘束へ向かいます。
本部:その前に、部隊の被害状況の報告をして下さい。
部隊長:はい、隊員2名が軽傷を負いましたが、任務続行に支障がない程度です。鎮圧した従業員も数名意識を失っていますが、重傷者はいません。しかし・・・従業員に関して1つおかしな点がありました。
本部:おかしな点とは?
部隊長:逃げ出そうとした従業員は出口ではなく、工場の2階へ向かおうとしていたのです。
本部:見取り図を見る限り、2階はオフィスになっていますが・・・確かに逃げる方向にしては不自然です。先ほどの館内放送が発せられた直後に暴動が起きたというのも気になります。部隊員を数名残して暴動を起こした従業員から館内放送の意味をインタビューして内容を中継させて下さい。放送は手順やらコードやらで暗号化されているようですが、これが証拠の隠滅を意味するものならば、この立ち入り調査も無駄になってしまいます。あなたは残りの部隊員を率いて引き続き探索を続行して下さい。
部隊長:了解しました。聴取は副隊長に任せ、自分は探索と工場責任者の確保を続行します。
<部隊副隊長によるインタビュー記録 開始時刻は午前11時43分>
部隊副隊長:これよりインタビューを開始する。
さっきの館内放送に出てきた手順20とコード14とは何だ?
従業員:頼む、上に行かせてくれ!
部隊副隊長:質問に答えれば解放する。早く答えろ。
従業員:わかった、えーと・・・手順20は工場内の機密データや転送装置とかのクリティカルな設備の破棄を実行する手順のことです。放送でも言っていたけど12時に実行するみたいです。
部隊副隊長:少し待て。 (通信) 隊長、手順20は証拠隠滅の非常プロトコルのようです。削除される前に機密データの押収を急いだ方が良さそうです。
従業員:なあ、聞きたいことは話したろ。早く放してくれ!後、今何時なのか教えてくれ!
部隊副隊長:まだだ、コード14とは何だ?
従業員:コード14は、電子世界への・・・あー、理解できんか。・・・コード14は工場内の正規従業員の招集コードです。さあこれでいいでしょう!早くしないと間に合わなくなる!
部隊副隊長:従業員を集めて何をするんだ?
従業員:避難するんですよ。さあ解放してくれ!後、今何時なのか教えてくれ!
部隊副隊長:時間は教えてやる。今は11時47分だ、残念だが招集には間に合いそうにないな。しかし解放はまだだ、他にも質問したいことが出来た。さっき避難するといったな。逃げ場のない上階にか?もしやヘリでも待機させているのか?
従業員:11時47分・・・。は、早くここから逃がしてくれ、死んじまう!
部隊副隊長:どういう意味だ?
従業員:さっきは言わなかったけど、手順20でのデータ破棄っていうのは施設ごと吹き飛ばすんだよ!だから・・・
部隊副隊長:何、だがそれが本当なら何故ほかの従業員は騒がない・・・クソッ (通信) 隊長、12時に工場が爆破されます!すぐに部隊を退避させて下さい!私たちは残った従業員を外へ避難させます。
<部隊長による探査記録>
部隊長:午前11時46分、マシンルーム以外の工場の2階部分の探索が完了しました。現在のところ2階部分では従業員が確認できませんでした。これよりマシンルームの探索を実施します。
本部:わかりました。何故マシンルームだけ捜索が遅れているのですか?
部隊長:内側から厳重に鍵がかけられています。おそらく工場長や上級社員もこの中にいるのでは・・・よし、開いたな!突入します。
部隊長:午前11時48分、マシンルーム内の捜索が完了しましたが、従業員は発見できませんでした。しかし、従業員の衣服を発見しました。
本部:衣服?衣服だけですか?
部隊長:はい、マシンルーム内の中央スペースに作業着やスーツの上下が数着わだかまって落ちていました。ネームタグを見た所、工場長の衣服も混ざっています。
本部:妙ですね、何故服だけ・・・カメラを回して映してください。
部隊長:映っていますでしょうか。これより部隊は引き続き工場敷地内の捜索を・・・
部隊副隊長からの通信:隊長、12時に工場が爆破されます!すぐに部隊を退避させて下さい!私たちは残った従業員を外へ避難させます。
部隊長:待て!一体どういう・・・本当なら時間がない、本部、先程副隊長より通信がありました。12時に工場が爆破されるとのことです。部隊の退避許可をお願いします!
本部:早く退避して下さい!指揮は任せます。
部隊長:機密データの抽出班は作業を中断し現時点での抽出データを持って即座に工場敷地外に退避せよ!生産ライン付近の哨戒班は11時55分まで副隊長と連携して従業員の避難誘導に当たり、その後共に退避せよ!その他の部隊員は全員即座に退避せよ!
<記録終了>
付記
12時00分、工場内の複数箇所で大規模な爆発が発生しました。この爆発により、敷地内の建造物は全て倒壊し、従業員██人と避難誘導を行っていた部隊員█名が死亡しました。後の現場検証により、爆発の原因は建物内の各所に設置された発破解体用の火薬によるものだと判明しています。
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対象: ███████社の課長職に就いていた男性
インタビュアー: ██研究員
付記 対象がインタビューに非協力的であったため、事前に自白剤を投与しています。
<インタビュー開始>
██研究員:インタビューを始めます。あなたのお名前と所属を答えて下さい
男性:・・・名前は・・・█████。・・・勤め先は、株式会社███████です。・・・第4開発部の保守支援課の課長をやっています。
██研究員:よろしい。今回はあなたの勤め先についていくつか質問をします。出来る限り正確に答えて下さい。わかりましたね。
男性:はい・・・
██研究員:まず初めに、あなたの勤めている███████社では何を作っているのですか。
男性:はい・・・主にパソコンやスマートフォン向けのCPUを作っています・・・
██研究員:わかりました。では次の質問です。あなたの所属しているその保守支援課ではどういった仕事をしているのですか。
男性:はい・・・同じ開発部の保守課・・・の手伝いをしています。部内の連絡網を管理したり・・・。プロジェクト中の、第4開発部の担当部分の進捗率を毎月求めて資料に直したり・・・。データを整えて保守課に回したり・・・。
██研究員:一旦そこまでで結構です。ふむ、では次の質問です。そのプロジェクトとはどういったものですか。
男性:プロジェクト・・・あれは、・・・とあるプログラムを開発するプロジェクトです。
██研究員:そのプログラムとはどういった働きをするのですか。
男性:・・・人体の構成情報を電子世界に移してネットワーク上で統合させます。
██研究員:真面目に答えて下さい。プログラムを実行すると何が起きるのですか。
男性:プログラムを実行している端末の半径100m以内にいる人間の体を分解し、構成情報をスキャンし端末を通して電子世界に登録します。
██研究員:いい加減に・・・
男性:ただし、プログラムはまだ完成していません。先月の部内会議時点での進捗率は81%でした。第4開発部では、分解した体の構成情報をスキャンしてデータ化する過程を担当していますが、構成データの圧縮が難航していて目標期日よりやや遅れが出ています。結局、役員連中には進捗率は84%でスケジュール通りだと報告しました。しかしデータ化の機構自体は完成していますし、CPUのデーモンによるネットワークの構築完了までには十分余裕があるので、そこまで問題視していません。
██研究員:待って、少し待ってください。・・・少々席を外します。そのまま待機してください。
(この時点でインタビュー中断の合図が発せられたため、██研究員は一旦部屋から退出し、今後のインタビュー方針について協議した。嘘発見器より、対象の男性の供述に虚言がないと判明したため、CPUの働き、事案-1011、███████社の最終目的、に関して特に掘り下げて聴取することが決定した)
██研究員:お待たせしました。・・・次の質問です。CPUのデーモンとはどういったものなのか、説明してください。
男性:・・・弊社で生産したCPUを搭載したPCやスマートフォンで実行されているバックグラウンドプロセスのことです。あれは本当に素晴らしい、電子世界の拡張・構築にかかる莫大な人的・時間的コストを一気に解決してくれ・・・
██研究員:質問に対する答えのみ話してください。・・・次の質問です。そのバックグラウンドプロセスではどういった処理を行っているのか説明してください。
男性:電子世界の拡張・構築を行っています。電子世界というのは人間の構成情報を溜めておくネットワークのことです。ただ、今の時点では全人類のデータを入れるための容量が不足しているので、容量の拡張作業をこのプロセスに任せているんですね。ネットワークを構築完了予定は確か20██年の█月頃だったはずです。
██研究員:わかりました。それにしても電子世界とは・・・オープンワールド型のオンラインゲームのようなものでしょうか。
男性:あんな俗なものと一緒にしないでください!・・・しかし、考え方はそう間違っていません。電子世界についてかいつまんで説明しますと、まず電子世界ではデータを登録した時点の状態から人は年を取りません。大元がデータですからね。そして、内部にはあらゆる娯楽がデーモンによって創造されているとのことです。そこでは誰もが争うことなく望む限りの悦楽を享受することが出来るのです。
██研究員:とのことです?その電子世界の実物を観たり、中に入った人間と意思疎通をしたことはないのですか?
男性:電子世界に入った時点で、物理世界へは干渉できなくなりますので、外部との意思疎通は出来ません。分解した物理肉体の復元も不可能です。先ほどの電子世界の世界観は社長が啓示して下さったのです。あぁ、CPUの技術も社長が作り出したものみたいです。弊社の社長はすごいでしょう?
██研究員:社長が、しかし確証がないものを良く信じることが出来ますね。
男性:確証も何も、内部の様子こそ見ることは出来ませんが、現に電子世界自体は構築され続けています。それに比べればあの世や天国・地獄といった考えの方がナンセンスです。
██研究員:・・・次の質問です。███████社では内々で従業員をレベルで区別していたように見られましたが、レベルの違いにはどのような意味があるのですか。
男性:レベルというのは、大雑把にいってしまえば社員の階級のようなものです。電子世界とかの会社の崇高な目的を知らされていない派遣の労働者はレベル1、そのあたりの理念や目的を知っている正社員はレベル2、正社員の内の部長クラスからはレベル3というような感じです。
██研究員:それでは、館内放送で発せられていた「コード14」にはどういった意味があるのですか。
男性:あれは・・・言うなれば電子世界への旅立ちの合図です。もし、社屋が襲撃を受けた場合は、手順20・・・機密保持のための社屋の処分が実行される規定になっています。その際に従業員は社屋のマシンルームに備え付けられた転送装置を使うことで電子世界へ旅立つことが許されるのです。
██研究員:なぜ派遣、いや、レベル1の従業員は対象外だったのですか。
男性:無用の混乱を防ぐためです。レベル1の従業員はコード14や手順20が何を意味するのかすら知らない。知る必要がない。
██研究員:わかりました。次の質問です。███████社が、その電子世界を作る目的は何ですか。
男性:目的?
██研究員:ええ、何故人間をその電子世界に取り込ませたいのですか。
男性:・・・・・・全ての人間を電子世界に移住させるため。
██研究員:それはわかりました、何故移住させ
男性:全人類を電子世界に迎える。 貧困も格差もない完璧な、理想の楽園に。そして人類を煩わしい物理世界、肉体から解き放つ!我々はその使命を果たした後に電子世界に還る名誉に預かる!
██研究員:落ち着いてくだ
男性:人類は原初の0と1のデータに還り! 決して老いも衰えもない、電子の楽園で永遠に・・・!
(この時点で男性が異常な興奮を示して立ち上がったため、インタビューを中止しました。その後、対象は警備員によって無力化されました。)
インタビュー結果報告書
作成者: ██研究員
インタビュー時の対象は自白剤による無気力化の副作用にも関わらず、ある種の宗教的熱狂に似た興奮状態にありました。
仮に対象の供述を信用するならば、立ち入り調査時に発見されたマシンルームに放棄された衣服は、電子世界への転送時に従業員が身に着けていたものではないかと推測できます。
SCP-1011-JPは根絶させなくてはならないオブジェクトです。もし人が電子世界で永遠に生きることが出来たとしても、肉体がない以上それはもう人間ではありません。電子世界が完成して世界中の人間が全て取り込まれるということは、人類の破滅に他なりません。
SCP-1011-JPの特性・脅威に関しては把握しました。ただし、結果報告書にはオブジェクトの収容方針に関するあなたの見解は必要ありません。以後気を付けるように。 - 日本支部理事"█"
補遺
インタビューの後、供述されたバックグラウンドプロセスの実在が確認され、以降SCP-1011-JP-2に指定されました。電子世界に関しては、SCP-1011-JP-3に指定されました。
事案1011の後に███████社は財団によって解体され、カバーストーリー"経営不振による倒産"が一般向けに流布されました。また、SCP-1011-JP-1のさらなる生産を抑制するために███████社の従業員███名を捕縛しました。従業員は記憶処理の実施も検討されましたが、解放後に捕縛を逃れた従業員と合流するリスクを考慮した結果、全員Dクラス職員として財団で雇用することが決定しました。また、現在も██社長を含む捕縛を逃れた一部の従業員により、SCP-1011-JP-1の小規模な生産活動が続けられているため、SCP-1011-JP-1の摘発と、元従業員の捕縛・掃討を行う機動部隊し-1("クラッカー")が結成されました。
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補遺
201█年、無力化プロトコル『銀の弾丸』により、SCP-1011-JP-2の特性を無力化する新バージョンOSの開発に成功しました。現在は民間人・企業向けのアップグレード促進活動が行われています。また、新バージョンOSの開発成功によりオブジェクトの脅威度が下がったとみなされたため、SCP-1011-JPのオブジェクトクラスは「Euclid」に再分類されました。
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██社長の日記の一部と見られている |
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