Nin3bake7

銀河鉄道 特急きゅうり・寝台列車なす

アイテム番号:SCP-xxxx-JP

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: 現象発生時には各駅構内を臨時収容サイトと見做します。乗車券を持たない人物がSCP-xxxx-JP-1およびSCP-xxxx-JP-2に乗車しないように努めてください。プロトコル「銀河鉄道の夜」をJR東日本・青い森鉄道・八戸臨海鉄道・三陸鉄道・仙台空港鉄道・福島臨海鉄道・ひたちなか海浜鉄道・鹿島臨海鉄道・銚子電気鉄道の協力の下に実行します。(詳細は文書81-xxxxを参照)カバーストーリー破綻防止と対象者のプライバシー保護の為、報道関係者や鉄道マニアは駅舎入口から先へは立ち入り禁止にしてください。入場料徴収の有無は、各協力鉄道会社に一任するものとします。現地の宗教感情および習俗を考慮し、財団施設へ移送する形での収容は行いません。

説明: SCP-xxxx-JPは、2つの列車型実体SCP-xxxx-JP-1およびSCP-xxxx-JP-2を中心とした現象です。千葉県から青森県にかけての太平洋沿岸地域において、最も海岸線に近い鉄道線の駅で年に2度発生します。

SCP-xxxx-JP-1は、20両編成の列車型実体です。形態は日本国内で営業運転している旅客列車のうち最も速い車両に酷似しており、201█年現在は新幹線E6系の形をしています。車体は深緑色に塗装されていて、横上部の電光掲示の部分には「特急 きゅうり」と表示されています。

SCP-xxxx-JP-1の内部には、複数のクラスⅠ霊体(以下、SCP-xxxx-JP-3と記載)が乗っています。これらの観測にはK-515型撮影機等の特殊機材が必要です。ただし、一定の条件に当てはまる者(以下、対象者)は、観測機器が無くてもSCP-xxxx-JP-3を知覚できます。聞き取り調査の結果、対象者らはそれぞれ特定のSCP-xxxx-JP-3を、他界した近親者もしくは配偶者である、と認識しているようです。

8月13日に、SCP-xxxx-JP-1は青い森鉄道の線路を伝って青森方面からやってきます。まず最初に三沢駅へ13日02:00に停車し、その後、もっとも海岸に近い駅へと北から順に現れ、実際の路線の接続状況とは無関係に南下し、最後は総武本線干潟駅に停車して、成東方面へ走リ去ります。干潟駅を出発した後のSCP-xxxx-JP-1は消失します。 

各駅プラットホームにSCP-xxxx-JP-1が到着すると、車体横にある乗降車口が開きます。対象者は、列車から降りてきたSCP-xxxx-JP-3を自宅もしくは実家へ連れ帰る意思を見せます。駅舎から出ると、SCP-xxxx-JP-3の姿は対象者の目にも見えなくなります。しかし、対象者は「彼らは目に見えなくてもついてきている」と考え、そのまま帰路につきます。この一連の行動は、SCP-xxxx-JPの異常性に起因するものというより、現地の伝統的宗教観に基づくものと見るべきでしょう。
対象者はその後、自分の住む地域における伝統的な盂蘭盆会の風習に従ってSCP-xxxx-JP-3をもてなします。これは8月16日深夜まで続きます。

SCP-xxxx-JP-2は、国鉄20系客車(一般的には「ブルートレイン」として知られています)に酷似した20両編成の列車型実体です。車体は茄子紺色に塗装されていて、横上部の表示窓には「寝台列車 なす」と印字されています。

8月16日深夜、SCP-xxxx-JP-2はJR総武本線の線路を伝って成東方面からやってきます。最初に干潟駅へ26:00(17日2:00)に停車し、その後、SCP-xxxx-JP-1とは逆のルートを辿り北上し、最後は三沢駅に停車して、青森方面へ走り去ります。三沢駅を出発した後のSCP-xxxx-JP-2は消失します。

駅プラットホームにSCP-xxxx-JP-2が到着すると、車体横にある乗降口が開きます。観測の結果、この時にSCP-xxxx-JP-3群が客車に乗り込むことが判明しました。
SCP-xxxx-JP-3群がSCP-xxxx-JP-2に乗り込んだ後の対象者の行動はまちまちです。列車の窓越しに話しかける・列車が見えなくなるまで手を振る等の、一般的にお見送りと呼ばれる行動をとる者が過半数を占めます。が、そのまま帰路に就く者、協力鉄道会社の職員に話しかける者、そもそも駅へ来ない者などもいます。対象者に対し特定の行動を強制する作用は無いようです。

SCP-xxxx-JP-1及びSCP-xxxx-JP-2の内部に、SCP-xxxx-JP-3群以外のクラスⅠ霊体の存在が確認されています(以下、SCP-xxxx-JP-4)。
SCP-xxxx-JP-4は複数存在しています。対象者を介してのSCP-xxxx-JP-3群への聞き取り調査から、SCP-xxxx-JP-4群はSCP-xxxx-JP-1及びSCP-xxxx-JP-2の乗務員として働いているものと思われます。

SCP-xxxx-JP-3でない者がSCP-xxxx-JP-1やSCP-xxxx-JP-2に乗り込もうとすると、乗降口付近に人型実体が現れます。この実体は誰の目にも見えます。対象者の条件に当てはまる財団職員達の証言から、この実体はSCP-xxxx-JP-4群のうちの一体と同一の存在である、と確認されました(以下、この実体をSCP-xxxx-JP-4-Aと称します)。

SCP-xxxx-JP-4-Aは乗り込んだ人物に対し、乗車券の有無を尋ねます。その時の物腰はとても丁寧かつ友好的です。乗車券が無い、と答えると、ごく穏やかな態度で降車を促されます。この際、指示に従わず乗車し続ける素振りを見せると、SCP-xxxx-JP-4-Aはやや強い態度で再度降車を要求します。それでも従わないと、SCP-xxxx-JP-4-Aによって力ずくで車外に出されます。SCP-xxxx-JP-4-Aがはっきりとした実体をもって現れるのは、おそらくこの作業に霊的存在では対応できないからではないかと考えられています。

経緯: 2011年8月中旬に「運行休止中の筈の██鉄道に緑色の新幹線が走っていた」という情報がSNS上に広まり、財団の注意を引きました。エージェントが調査に向かい、同年8月17日に現象を確認しました。

事案記録xxxx-JP-11-A
2011/8/17、鳥越駅で調査していたエージェント苦竹が、突然「ばあちゃん!」と叫んでSCP-xxxx-JP-2に乗り込む事案が発生しました。
エージェント苦竹は[編集済]SCP-xxxx-JP-2の客車内に祖母の姿[編集済]SCP-xxxx-JP-4-Aに「お客様、乗車券はお持ちでいらっしゃいますか?」と話しかけられ[編集済]その場で購入できないかと尋ねたところ[編集済]断られたそうです。[編集済]SCP-xxxx-JP-4-Aに促され、エージェント苦竹は[編集済]およそ2分後に車外へ出されました。

メモ: 報告書には研究に必要な事実のみを簡潔に書いてください。上層部には被災地出身・在住の財団職員に対してカウンセリングとケアを徹底するよう掛け合います。

インタビュー記録:xxxx-JP-11-1

日時: 2011/11/15
対象: エージェント苦竹
インタビュアー: 千葉研究員

<録音開始>

苦竹: 俺の仕事道具で俺がインタビューされる日がこようとは思わなかったわ。

千葉: ごめんて。貸してくれてありがとな。

苦竹: しかも調査相手を知り合いで済ませて。

千葉: 民間の方々は、まだインタ受けられる状況じゃないでしょ。さっそくだけど、お前、知ってたんならなんで財団に報告しなかったんだよ。

苦竹: 仕方ねえべや、異常だと思ってなかったんだからよ。

千葉: あ?

苦竹: こういうもんなんだと思ってたの、お盆ってのは。子供の頃からこうだったから。

千葉: ご先祖様が新幹線に乗って帰ってくんのがか。

苦竹: 牛や馬に乗ってる方が不自然だろがよ。江戸時代のご先祖様ならともかく、俺らのじいさんばあさんが乗れるわけねえべ? お前のじいさん乗れたか? 馬。

千葉: まぁ、うん、乗ってんの見たことないけども。

苦竹: だろ?

千葉: でも、進学やら就職やらで、他の地域の人と会ったろ? そん時「あれ?」って思わんかった? 「なんでうちはキュウリの馬やナスの牛じゃなくて電車?」って。

苦竹: や、精霊馬も飾るよ?

千葉: あ、飾るの?

苦竹: 飾るよー伝統だもん。でも実際にどうやって帰ってくるのかは、また別の話だから。

千葉: 別なんだ。

苦竹: 別でしょ。生前一度も使ったことのない乗り物で帰ってこいって言われても、ご先祖様だって困るべ。

千葉: そういうもんかぁ? 

苦竹: そういうもんだよ。時代に合わせてあの世も進化すんだよ。たぶん。俺が子供の頃は鼻面の丸い新幹線だったし、昔は緑のデゴイチだった、ってばあちゃん言ってたし。

千葉: デゴイチ? 蒸気機関車? じゃあ精霊馬からいきなり新幹線になったんじゃなくて、間に数段階あった、ってことか?

苦竹: その時代で一番早いやつになんだよ。馬の代わりだもん。

千葉: あー、そういう理屈。

苦竹: 少なくとも俺はそう思ってる。つか、そういう点をだな、きちんとフィールドワークでだな、広く聞き
<録音終了>

探査記録:xxxx-JP-12-1

実施日: 2012/8/13
対象: SCP-xxxx-JP-1
ドローンによる内部探査を行う。
乗降口よりドローンを内へ入れる。乗降口付近の内部構造はE6系客車と同一に見える。客車内部に侵入した直後、SCP-xxxx-JP-4-Aにより車外に排除された。
撮影した車内映像にはSCP-xxxx-JP-4-A以外の姿はなく、車窓外の対象者達が窓越しに見えていた。

探査記録:xxxx-JP-12-8

実施日: 2012/8/13
対象: SCP-xxxx-JP-1
探査者: D-32414
角の浜駅でSCP-xxxx-JP-1の中に入るよう指示。
D-32414が入ろうとしたところで中からSCP-xxxx-JP-4-Aが現れ、乗車券を提示するよう求めてきた。引き返すよう指示。

探査記録:xxxx-JP-12-13

実施日: 2012/8/13
対象: SCP-xxxx-JP-1
探査者: D-62885
岩沼駅でSCP-xxxx-JP-1の中に入るよう指示。
記録xxxx-JP-12-1と同じように、SCP-xxxx-JP-4-AがD-62885に対し乗車券を提示するよう求めてきた。無視して乗り込むよう指示する。再度乗車券提示を求められたが、さらに無視するよう伝える。D-62885はSCP-xxxx-JP-4-Aにより車外に排除された。

聞き取り調査記録xxxx-JP-12-31 日付2012/8/13

聞き取り内容: SCP-xxxx-JP-3が何に見えているか
調査方法: 該当地域出身の財団職員をそれぞれの故郷へ派遣し、臨時収容サイトでSCP-xxxx-JP-3を出迎えさせる。比較の為、その地域出身者以外の者も同時にその場に置く。

担当者: エージェント・不入斗
対象: 古舘博士(大槌町出身)/比較として入船研究員(東京都出身)
回答: 昨年3月に他界した父親/何も見えなかった

担当者: エージェント・行々林
対象: 池田研究員(唐丹町出身)/比較としてエージェント・新川(東京都出身)
回答: 昨年3月に他界した祖母と曽祖父/昨年3月に他界した従姉妹(8年前に結婚し唐丹に移住していたそうです。事前の調査不足でした。)

担当者: エージェント・十余二
対象: 武田会計士(東松島市出身)/比較として佐原看護師(埼玉県出身)
回答: 昨年3月に他界した娘と義両親、義祖父母/昨年3月に他界した看護大学時代の親友(卒業後陸前小野駅近くに勤務)
コメント: 近親者でなくても見える場合があるらしい。

担当者: エージェント・犢橋
対象: エージェント・石川(勿来町出身)/比較として西谷博士(群馬県出身)
回答: 19██年に他界した祖父母/何も見えなかった
コメント: 乗客はあの津波の犠牲者だけというわけではないようだ。

実験記録xxxx-JP-12-69

実施日: 2012/8/17
実施方法: 被験者に対しSCP-xxxx-JP-2に乗るよう指示。乗車券の有無を尋ねられたら制服のポケットを確認、乗車券がそこにない場合はその場で購入できないか訊くよう付け加えた。

対象: D-78059-JP(実験の3日後に終了予定の職員)
結果: ポケットに乗車券は出現せず。当日購入も断られ、SCP-xxxx-JP-4-Aにより車外に排除された。

対象: D-105430-JP(検証の為、終了予定を2か月超過させておいた)
結果: ポケットに乗車券は出現せず。当日購入も断られ、SCP-xxxx-JP-4-Aにより車外に排除された。

分析: 死ぬ予定がある者・予定を過ぎた者でも乗車券は出現しなかった。切符発券システムはどうなっているのか。そもそも本当に乗客たちは切符を持っているのだろうか?

補遺: 「調査する側もされる側も両方日本人で、盂蘭盆会に祖霊が訪れるのは当然、という前提を疑う者がいない。お盆というミームを待たない者の目で当該オブジェクトを見つめ直す必要があるのではないか」
というエージェント許の指摘を受け、諸外国の財団職員に検証実験協力を依頼しました。

《協力職員一覧》
・グループ1(日本とは異なる盂蘭盆会の習慣を持つ職員)
エージェント許(上海)
田博士(台湾)
エージェント王(〃)
章博士(韓国)
李部長(〃)
セーラオ博士(タイ)
シーチャオ主席研究員(〃)

・グループ2(東日本太平洋沿岸地域にルーツを持ち、仏教以外の宗教文化で育った職員)
オカダ通訳(ブラジル日系四世)
ヒラウチ研究員(〃)
サンペイ博士(〃)
エージェント・タマガワ(ペルー日系四世)
タカハシ弁護士(〃)
ヒトミ研究員(北米日系三世)
ソウマ博士(〃)

・グループ3(ルーツも宗教文化も違う職員)
コルビナ博士(ロシア)
ラヴロフ研究員(〃)
ミトルキン博士(〃)
エージェント・ティゾン(フランス)
ハイテイラ博士(〃)
クワシニエフスキ博士(ポーランド)
ブライト博士(北米・ドイツ系ユダヤ人)
エージェント・ヨリック(〃)
アップルゲート博士(北米・イングランド系)
ヒューズ博士(〃)
クルコフスキー博士(ポルトガル)
マグナー博士(スペイン)
オルロフスキー博士(ウクライナ)
クラーニクス博士(ドイツ)

実験記録xxxx-JP-13-15

実施日: 2019/8/13
対象: SCP-xxxx-JP-1
実施方法: 駅でSCP-xxxx-JP-1から降りてくるSCP-xxxx-JP-3を肉眼で観測させる。各駅にはグループ1から1人、グループ2から1人、グループ3から2人、合計4人置く。

陸奥白浜駅担当者: エージェント狢野
観測者: セーラオ博士、エージェント・タマガワ、コルビナ博士、ミトルキン博士
結果: 四人ともSCP-xxxx-JP-1は見えたがSCP-xxxx-JP-3は見えなかったと回答。

綾里駅担当者: エージェント大豆谷
観測者: 李部長、ソウマ博士、オルロフスキー博士、マグナー博士
結果: 李、オルロフスキー、マグナーの三名はSCP-xxxx-JP-1は見えたがSCP-xxxx-JP-3は見えなかったと回答。
ソウマはSCP-xxxx-JP-1から大伯母が降りてきたと回答。(他界したのは1980年代。「会ったことはないが、顔は写真で知っていた」とのこと。)

日立駅担当者: 後草研究員
観測者: エージェント王、サンペイ博士、ヒューズ博士、ハイテイラ博士
結果: 王、サンペイ、ヒューズの3名はSCP-xxxx-JP-1は見えたがSCP-xxxx-JP-3は見えなかったと回答。ハイテイラはSCP-xxxx-JP-1、-3どちらも見えなかったと回答。

飯岡駅担当者: 琴田研究員
観測者: エージェント許、ヒラウチ研究員、ブライト博士、クラーニクス博士
結果: 許、ヒラウチ、クラーニクスはSCP-xxxx-JP-1は見えたがSCP-xxxx-JP-3は見えなかったと回答。
ブライトはSCP-xxxx-JP-1の中に妻がいたと回答。(事件記録xxxx-JP-13-15Aを参照)

干潟駅担当者: 千葉研究員
観測者: 田博士、オカダ通訳、エージェント・ヨリック、アップルゲート博士
結果: 田、オカダ、アップルゲートはSCP-xxxx-JP-1は見えたがSCP-xxxx-JP-3は見えなかったと回答。
ヨリックはSCP-xxxx-JP-1の中に祖父母がいたと回答。(事件記録xxxx-JP-13-15Aを参照)

事件記録xxxx-JP-13-15A
2019/8/13、飯岡駅にてブライト博士がSCP-xxxx-JP-1に乗車し、そのまま行方不明になる事件が発生しました。

録音記録 2019/8/13 4:15
付記: エージェント・ヨリックは、事件xxxx-JP-13-15A発生の知らせを受け、ブライト博士個人の携帯電話に連絡をとりました。この記録は、その際途中からエージェント・ヨリックの携帯にレコーダーを接続し、会話を録音したものです。