nessii

今日呼ばれたのは一週間前の事件のことですね。ええ、承知しております。はい、気持ちも落ち着きましたので……。それでは始めます。

事件が起こったのは確か八時ごろだったと思います。いつものように玉菜博士と私は不味いインスタントコーヒーを飲みながら議論を交わしていました。お題は確か……財団とオカルト連合の現実改変者に対する知識量の差でした。まず第一にですね……、はい、すみません、必要なことだけを述べます。そしてですね、議論の最中に突然、玉菜博士の右足がすっぽ抜けたんですよ。はい、間違えありません。抜けたんですよ、大根みたいに。ええ、それはもう、目を疑う光景でした。周りの職員も固まっていましたね。ですが一番驚いたのは玉菜博士本人でしょう、突然足が抜けたんですから、彼は支えを失ってゆっくりと後ろに倒れてしまいました。不思議なことに血は全く出ていませんでしたが。

しかし、これれから起こったことに比べればそれは大した問題ではありません。我々がその抜けた足に目をやると、そこにあるのは足ではなくて巨大なホットドッグだったんです。いえ、別に比喩とかそんなのではありません。そして次の瞬間、ホットドッグの表面に無数の穴が空いたんです。それはもう、気持ちが悪かったですよ。私、集合体恐怖症ですからね。ええ、はい、すみません。そしてですね、その穴から弾丸が飛び出したんですよ。時間にして、大体三十秒くらいですかね。部屋は滅茶苦茶ですよ。不幸か幸いか、直ぐに我々は隠れたので、まともに受けたのは玉菜博士だけでした。

無限に続くかと思われた銃撃が終わり、我々は恐る恐る玉菜博士に近づきました。はい、レスキュー部隊は呼びました。そしてですね、我々の中の一番の新入りが玉菜博士の被り物のキャベツから紐が出ていることに気づいたんです。はい、くす玉についている紐の様に見えましたね。そして次の瞬間、そいつがその紐を引っ張りやがったんですよ。ええ、承知しております。これは完全に我々の不手際です。「好奇心は猫を殺す」基本中の基本です。……そしてですね紐が引っ張られて、頭のキャベツが二つに割れたんです。ですが、中から現れたのは玉菜博士の頭部ではなく、ボーリングの玉に見えるどす黒い色をした大きな爆弾でした。そして、眩い閃光とともにそれが炸裂したんです。我々は逃げる暇も与えられませんでした。

そこまでが私が覚えている全てですね。はい、その後のことは聞きました。サイト-81CAは半分吹き飛び、職員は私以外全て死亡……。ええ、大丈夫です。

ここまでの説明でなにか質問はありますか? ……原因について私の意見ですか。そうですね……大きく考えられるのは三つです。一つ目は玉菜博士が未知のスキップの影響を受けていた可能性です。暴露した者の足をホットドッグの形をした散弾銃に変え、頭を巨大な爆弾に置換するスキップ……。ええ、あくまで可能性の一つです。

二つ目は私の頭が爆発のショックでおかしくなってしまった可能性です。はい、この可能性がお互いにとって一番幸せでしょう。ただ、あまりにもはっきり覚えているので、この可能性は薄いと思います。

三つ目は現実改実体の仕業という可能性です。私個人の考えですと、この可能性が一番高いです。こんなにも悪意に満ちたやり方は奴らの仕業としか思えません。しかしこの可能性が正しいとすると、これは恐ろしい結果を示唆しています。平均的な現実改変実体というのは原則、自分の周囲にしか現実改変を行うことができません。ですが今回の場合、恐ろしく遠いところから現実改変が行われたことが推測されます。つまり内部ヒュームが天文学的に高い実体が未だ野放しになっているということです。これは非常に危ぶまれる事態です。この現実改変実体の存在は財団の崩壊にも繋がるかもしれません。

えーそれでは以上を持ちまして……、何でしょうか、私が無傷だった理由ですか。……たまたま運が良かっただけです。