「俺が思うに、次世代のロックは何かに"密着する"。これに尽きるというわけよ。」
三輪駆動のロードローラーに乗りながら、上機嫌で岩は語る。彼の中では会話が続いているようだが、それを観察する我々には、おしゃべりなオブジェクトが独り言を言っているようにしか見えない。おまけに彼の会話には嘘が混じる。人間として考えれば当たり前のことだが、岩である彼の嘘を見抜くのは難しい。顔がついていればいくらかやりようもあっただろうが、彼の表情は終始無機質な砂のままだった。
「なぁ新人。お前さんもそう思うだろ?おみゃーよぉおおちゃこくなよ?先輩の話は最後まで聞くもんだぞ。」
それでも以前に比べれば、オブジェクトの持つ哲学や価値観が多少なりとも判明してきたのは喜ばしいことだろう。少なくとも現在は楽器一つで彼の機嫌は良くなり、油断して名古屋弁が漏れることも増えてきた。表情で嘘を見抜けないなら声色を見るまで。意志を持ち、雄弁に話すオブジェクトこそ、対話を繰り返し、収容に有利な情報を聞き出すことが重要になってくるのだ。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは
説明: SCP-XXX-JPは正方形の形状を取るメモ用紙です。一辺の長さは最小2cmから最大80cmまで記録されており、材質は様々ですが、すべて既存の製品と同一であることが判明しています。SCP-XXX-JPは前田 █郎氏 戸籍上氏名に「前田(maeda)」が含まれる人物及び対象となった前田氏と交流のある人物の周囲10m以内の床に出現します。
SCP-XXX-JPが出現してから3秒後、SCP-XXX-JPの附近5cm地点に生物、既存の製品を含む合計██種類の実体が出現し、SCP-XXX-JPはその後、出現した実体の表面に付着するように転移します。出現する実体は800ml以上の液体によって濡れている、もしくは同量の水分を体内に内包した生物であることが共通しており、
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはその出現地点に12台の監視機器を設置することで管理されています。出現地域へ入る一般人には、可能な限り現地のツアーガイドとして潜伏している財団職員が同行し、写真による当該オブジェクトの知覚を阻止してください。またこれに伴いインターネット、メディアなどに対し、SCP-XXX-JPが記録されうる写真撮影の非推奨化、及び別地点の写真撮影の推奨化が行われています。財団が把握していないSCP-XXX-JPを記録した媒体が発見された場合は、即座に消去、または回収し、記録媒体の保持者及び目撃者に対してBクラス記憶処理を施し、カバーストーリー「心霊写真」を流布してください。
反応実験XXX-JPはSCP-XXX-JPが有する異常性の影響範囲把握のため、すべての財団職員が実験に参加する必要があります。実験内容は画像資料XXX-JPを閲覧し、既視感を覚えるか否かで陽性、陰性を決定します。この実験において陽性反応、即ち画像資料XXX-JPに対して既視感を覚えた財団職員は、即座にSCP-XXX-JP担当の博士(現在は土御門博士)に申請してください。陰性反応が出た職員は正常につき、通常業務へ復帰してください。
説明: SCP-XXX-JPは200体クラスII霊的人型実体です。全体を通して黒色をしており、比較的灰色である部位によって人型であること、並びにその顔らしき部位を確認することが可能です。これに加え、SCP-XXX-JPの周囲には粒子状の霊的実体が多数浮遊、付着しており、このことからSCP-XXX-JPの衣服や詳細な経歴については不明です。
他のクラスII霊的実体と比較して、直接知覚可能な人物の割合が62%低く、映像機器へ記録される割合が25%多くなっています。また2004/8/11午前10:07現在、nPDN装置を含む物理的な状態への「固定」は失敗しており、稀に出現する霊的人型実体への接触を行える人物1による接触の試みもすべて失敗しています。
SCP-XXX-JPは俗に熊野三山2と呼称される神社の内、いずれか1社の境内へ一斉に出現します。出現する日時は陰陽道における天赦日3の午前0時であることが判明しています。出現したSCP-XXX-JPは紀伊路、伊勢路の一部区間を通って、出現地点以外の残り2社を経由しながら集団で移動します。この移動は分速1m程で行われており、出現地点である神社まで一周した場合、再び同じ順路を通り繰り返し周り続けます。移動を行っているSCP-XXX-JPが熊野三山のいずれか1社に到達した時点でその場から消滅します。SCP-XXX-JPが出現してから消滅するまでには、約30年の時間が経過しており、消滅はすべてのSCP-XXX-JPが同じ神社に合流した時点で行われます。
2004/8/11午前7:10追記: SCP-XXX-JPの物理的な状態への「固定」を目的として開発されていたnPHN装置によって、2時間4分の間当該オブジェクトを物理的な状態への「固定」することに成功しました。以下は、nPHN装置を利用したSCP-XXX-JPへの調査記録です。
調査記録XXX-JP
対象: SCP-XXX-JP
参加職員: エージェント・搆口 エージェント・衣川 エージェント・北 土御門博士(指令オペレーター)
実施内容: SCP-XXX-JPの移動時における行動、反応の調査。並びに日本語、英語、中国語を含む13カ国語による接触。なお当調査は事前に安全性が確認されたnPHN装置の動作確認、及び影響範囲の詳細なデータ収集も平行して実施された。
記録開始:
エージェント・搆口 こちら搆口、調査作戦XXX-JPへの参加職員二名と共に、SCP-XXX-JPと遭遇、現在SCP-XXX-JPは縦一列のまま直進中これより調査を開始します。現在SCP-XXX-JPは縦一列のまま直進しています。
土御門博士: 了解。三人とも、SCP-XXX-JPの周囲にある粒子状の存在は視認できたか?
エージェント・搆口: 確認できました。
エージェント・衣川: こちらも確認できます。
エージェント・北: 同じく確認、なんとも数が多いな。
土御門博士: ではその存在を可能な限り除去してくれ。
エージェント・搆口: 了解。
3名のエージェントがそれぞれ箒、ブロワー、サンプル採取用のピンセットでSCP-XXX-JPの周囲に存在する粒子状の霊的実体の除去を試みました
エージェント・北: ブロワー、だめだな。除去できない。
エージェント・衣川: 箒…触れました。こちらの干渉を受け付けた実体は、地面へ落下します。
エージェント・搆口 サンプル採取…掴めました。収納します…だめです。フラスコを貫通して、地面へ落下します。
土御門博士: 了解した。では箒を使用して実体の除去に専念してくれ。
エージェント・搆口: 粒子状の霊的実体、約80%を除去しました。残り20%は除去できませんでしたが、SCP-XXX-JPの以前より詳細な外見を確認できます。
土御門博士: 報告してくれ。エージェント・北はその場で記述を
エージェント・北: 了解。
エージェント・搆口: 服装は…ボロ布、と表現するのが正確でしょうか。破れた箇所や引き伸びた痕が散見される布を、引きちぎって衣服のような形にした印象です。
土御門博士: 触れられるのか?
エージェント・衣川: 触れることはできますが、衣服の材質までは判断できません。
土御門博士: どういうことだ?
エージェント・衣川: 骨格や感触が曖昧なような。外見より平坦で、輪郭にのみ触れているような印象です。
土御門博士: 外見と「固定」された状態で認識に差が出ているのか?
エージェント・衣川: そのようです。
土御門博士: わかった、搆口、報告を続けてくれ
エージェント・衣川: 人種はモンゴロイド系、外見的特徴から男性型129名、女性型71名です。大きさから判断するにすべてのSCP-XXX-JPが20歳以上の人間型だと思われます。
土御門博士: なるほど、ではSCP-XXX-JPの移動方法に不審な点はあるか?
エージェント・搆口: 移動方法自体は、人間の歩行に酷似しており、不審点はありません。しかし足跡や衣服との摩擦音が聞こえませんね。
土御門博士: それはお前たちが接触していた際も同様だったか?
エージェント・搆口: はい、一度わずかに移動を停止させることも試みましたが、失敗しています。そのためSCP-XXX-JPの移動と平行して調査を実施しています。
土御門博士: わかった。他に外見的特徴は?
エージェント・衣川: 汗や涙等の体液は見当たりません。表情ですが、見える限りですべてのSCP-XXX-JPに極度の疲労が見られます。体形等には特に異常は見当たりません。痩せ型、標準、肥満型まで男女様々です。
エージェント・北: オペレーター、こちら北。後方で記述を取りつつ、残る20%ある粒子状の霊的実体の除去を試みていたら、事前情報にない実体を確認した。
土御門博士: 事前情報にない実体?なんだ?
エージェント・北: 最後尾にいる四体が四方を持ちながら移動している。高さは約90cm、幅約75cm。祠?のように見える。切妻屋根に観音開きの扉。色はSCP-XXX-JPと同一。随所がグレーがかっている黒。
土御門博士: 材質はわかるか?
エージェント・北: 外見から推測するに全部木製だとは思うが、詳細は不明…だめだ。触ってもわからない。衣川の言っていたのと同じような感覚だな。
土御門博士: 扉の様子は?
エージェント・北: 閉まっている。だが手ごたえがあるから開けられるだろう。
土御門博士: 中の様子は確認できるか?
エージェント・北: 無理だな。扉以外にはそれらしい隙間はない。仮にあったとしても塵4みたいのでふさがれてるだろうよ。
土御門博士: エージェント・北。二人の合流を待ってから、中の様子を確認してくれ。記述担当は、衣川と交代だ。
エージェント・北: 了解。
エージェント・北: 二人と合流した。扉を開けるぞ。
エージェント・北によって扉が開けられました
エージェント・北: これまた悪趣味な
土御門博士: 中の様子は?
エージェント・北: 中は空洞になってる。周りにあった塵が隅に積もってる。奥には像がある。
土御門博士: なんの像だ?
エージェント・北: 釈迦菩薩、大日如来、弥勒菩薩、観音菩薩、阿閦如来、全部を立たせたまま繋げたような外見をしている。頭や首は繋がっていないが、そこから下が中央に集まって歪にくっついてる。足の方は完全にくっついて足には見えないな。代わりに小さな穴がいくつも開いている。深さも色々あるな。
土御門博士: 材質はどうだ?動かせるか?
エージェント・北: 例によって不明。動かせるか…だめだ。固定されてて外れない。
エージェント・搆口: これで外見の分析調査は完了しました。
土御門博士: 了解、次に本格的な物理接触による反応の調査に移る。
この発言の直後、作動していたnPHN装置からエラーが発信されました。
エージェント・衣川: nPHN装置からエラー発信、エラー404、実体を確認できていません。
エージェント・北: SCP-XXX-JPとの接触ができない。(エージェント・北がわずかにうめき声をあげる)
土御門博士: どうした!SCP-XXX-JPはどうなっている?
エージェント・北: 突然、塵が舞ってきて。
エージェント・搆口: SCP-XXX-JPに変化ありません。既存ルートを進行中です。再び粒子状の実体がSCP-XXX-JPの周囲に集合しています。
土御門博士: 触れられない以上、これ以上調査しても成果は上がらないか。全員サイト-81██に帰還せよ。今回の作戦を終了する。
記録終了:
終了報告書: エラーが発生したnPHN装置の点検を行ったところ、以上は確認されませんでした。なおこの調査に使用されて以降nPHN装置によってSCP-XXX-JPを「固定」する試みは失敗しており、現在は更なる改良が実施されています。
████/██/██追記: 現在一部の財団職員がSCP-XXX-JPの画像に対して初見の時点で既視感を覚える、並びに調査記録XXX-JPの内容に対して原因不明の嫌悪感を覚える事案が確認されています。この現象による直接的な被害は確認されていません。この反応が財団職員に多く見られることから、上記に該当する財団職員はサイト-81██で精密検査が行われ、今後の影響への対処を円滑にため、同サイト内で業務を行うことが決定されています。なお████/██/██午後█:██現在で上記に該当し、サイト-81██に配属された財団職員は103名です。
補遺XXX-JP-1 発見経緯: SCP-XXX-JPは財団の公式資料では1418年、蒐集院の資料では1180年前後頃には発見されていました。発見当初SCP-XXX-JPは「黒く行ったりきたりする幽霊」として超常現象記録に記録されていましたが、2004/8/11に財団職員への異常性が新たに発見され、通常のクラスII霊的人型実体との相違も相まって、オブジェクトに分類されました。
Loyalty
» 認証完了。ようこそ ‘‘財団職員’’ 様。SCP-XXX-JPの報告書を表示します。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe/Euclid/Keter (適切なクラスを選んでください)
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはすべてサイト-81██の人型生物収容房にて収容されています。SCP-XXX-JPには薬品摂取によって意図的に衰弱させる必要があります。すべてのSCP-XXX-JPに対して定期的にインタビューを行い、正常に衰弱しているか確認を行ってください。なお蒐集院の構成員として活動経験のあるSCP-XXX-JPはCクラス記憶処理を施し、カバーストーリー「財団職員」を流布し、それを維持してください。
説明: SCP-XXX-JPは200体の人型実体です。非活性時のSCP-XXX-JPの身体に異常性はなく、現在129名の男性人型実体、79名の女性人型実体が確認されています。また特筆すべき点として、すべてのSCP-XXX-JPは過去に財団職員、または蒐集院の構成員として正式な手続きを経て雇用されていました。
活性時のSCP-XXX-JPは財団日本支部、及び蒐集院を対象に、異常な手段を伴う攻撃を行います。活性時のSCP-XXX-JPは歯、爪がゲル状に変化し、40cmから80cm程伸びて、垂れ下がります。また不定期に後述するSCP-XXX-JP-1を口、肛門、眼球から排出します。この状態のSCP-XXX-JPは栄養摂取、睡眠を行わずとも活動が可能になり、生命活動を停止するまで攻撃を続行します。
SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPによって排出される塵状の実体です。
補遺: [SCPオブジェクトに関する補足情報]
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
〈15:08:21〉
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8118にある標準収容ロッカー内に収容されています。ロッカー内部はSCP-XXX-JPの上に竹で構成された深さ12cmの壺を下向きに被せ、棚部分には重量センサーを設置した状態で収容されています。実験を行う際は炭化チタンを含む厚さ10cm以上の合金板を使用し、SCP-XXX-JPをその場で静止させてください。
説明: SCP-XXX-JPは二つの六面ダイスであり、それらはSCP-XXX-JP-1、SCP-XXX-JP-2と分類されています。形状は誤差合計2mm以内に収まる立方体をしており、目の割り振りはSCP-XXX-JP-1が一般的に天一地六東五西二南三北四、SCP-XXX-JP-2が天一地六東五西二南四北三と呼称される配置になっています。またSCP-XXX-JPの材質には通常の墨汁とヒトの頭蓋骨が使用されており、DNA鑑定の結果、死後100年以上経過していると判明していますが、詳細な身元の特定には至っていません。
SCP-XXX-JPは活性状態にある場合、各頂点のいずれかをランダムに軸としながら回転し続けます。回転は外部からの妨害がない限り1分間に260回転し、回転軸は40回転するたびに変更されます。この状態のSCP-XXX-JPは緯度███、経度█████地点に向かって直進します。SCP-XXX-JPの進行方向上に障害物があった場合はそのまま衝突し、回転速度と移動速度が上昇します。特筆すべき点として、非活性時のSCP-XXX-JPに異常な耐久性は確認されませんでしたが、障害物との衝突によってSCP-XXX-JPが破損した事例は確認されていません。
上記の移動中に、SCP-XXX-JP同士が接触した場合、回転速度は1分間に80回転程度まで減速し、その場で回転し続けます。この状態のSCP-XXX-JPは物理的な手段によって静止させることが可能です。
SCP-XXX-JPは東京都八王子市に位置する██山5で発見、収容されました。発見当初SCP-XXX-JPには深さ12cm程の一般的に丁半で使用される壺の中に被せる形で保管されていました。
インタビュー記録XXX-JP-1
対象: ██ ██氏(SCP-XXX-JPを発見した土地の所有者)
インタビュアー: エージェント・横谷
記録開始:インタビュアー: それではインタビューを開始します。██さん。お忙しい中ありがとうございます。
対象: いえ、それで用とは?
インタビュアー: 実はあそこの土地にある廃屋の中に、サイコロが二つ見つかったんですけど、心当たりとかありませんか?
対象: サイコロ?そういえば、そこの土地、昔は武家屋敷があったって話は聞いたことがあります。なんでもそこで賭博が行われていたみたいで。
インタビュアー: 賭博ですか。
対象: えぇ、なんでも俺の父方の先祖が、当時流行った玩具…花札とか、それこそサイコロとかを作って売りさばいてたらしくて、先祖の製品を買うかわりに、賭博現場を黙認させられていたと聞いたことがあります。そういえば、先祖が最後に手がけた製品もサイコロだったかな?
インタビュアー: 具体的に何年ぐらいのことでしょう?
対象: 江戸時代中期ぐらいだとは思いますが。正確な年代までは…父も祖父も、引退間際にあったっていう話ばかり俺に聞かせてたものですから。そこばかり覚えてしまっていて。
インタビュアー: ご先祖様が仕事を引退なさる前にあった話ですか。そこのところちょっと詳しくお話しいただけますか?
対象: いいですけど大層な話ではないですよ?論文に書くまでもないことかと。
インタビュアー: 単純な興味でもあるんです。ぜひお願いします。
対象: わかりました。先祖が56歳の頃、引退する2年前ですね、お得意先だった賭場一家の三下が、都にいた芸者と恋仲になりまして、賭場を抜け出しては芸者が働く職場に出向いて、ぷらっと会っては家に帰る。そんな暮らしを続けてたらしいんです。
インタビュアー: 恋仲なのに、一日たったそれだけしか会わないのですね。
対象: あの時代でも賭博は犯罪でしたし、一家の親分が博徒として生きるよう子に言い聞かせるような男だったらしく、長居して見つかることを避けたかったみたいです。とまぁそんな三下の恋愛相談に乗っていたのが、賭場と直接の関係がないうちの先祖だったってわけです。
インタビュアー: 続けてください。
対象: それからある日を境に、芸者が服装を改めて丁半博打を度々しにくるようになりまして。女性なら宝引が人気だったらしいのですがそっちには目もくれず、丁半ばかりやっていたみたいです。
インタビュアー: それはなぜですか?
対象: 壺振り人が、芸者の意中の男。あの三下だったんですよ。賭場側も賭場側で、芸者が賭け事に弱いのを知って歓迎したそうですよ。いわばカモですね。芸者が来るようになってから、一週間ぐらいでしょうか、賭場近くの橋で、芸者と三下が話しているのをたまたま耳にしたらしくって。それがまたロマンチックと言うか、気の利いたことを言っていたらしく、今では先祖代々に伝わる口説き文句になってしまいましたよ(対象が笑う)
インタビュアー: なんて言ったんですか?
対象: 流石に当時なんと言ったかは父も忘れてしまったみたいなんですが、現代語に直すと「丁半のサイコロが羨ましい、壺の中で邪魔者はないのに、熱く逢瀬を交わすことができる」みたいな感じです。それを言われた先祖が、「しかし伏せられた壺はすぐに開かれてしまうじゃないか」って返したらしいんですけど芸者の方は「それでもいい」って返したらしくて。
インタビュアー: ん?芸者が言ったことなのに、盗み聞きしたご先祖様の口説き文句になったのですね。
対象: 当時先祖は既に結婚して子供もいたそうなんですが…子孫としてみても少しみっともない話ですよね。
インタビュアー: いえいえそんなことは、話の続きをお願いします。
対象: そんな日々がしばらく続いて、祖父が58歳になったとき、芸者との関係が一家の親分にばれてしまったようで、三下はこっぴどく殴られたうえ、壺振り人から雑用になり、取り分も減少、加えて賭場からの外出を禁止されたばかりか、芸者が客として来ても、見てはいけないなんて言われたそうで。これには先祖も抗議したそうなんですが、取り入ってくれなかったらしくて。そこからはあっけない顛末だったそうです。幕府の役人の摘発で賭場が解体され、その場にいた一家全員や一部の客が死罪になりまして。
インタビュアー: 芸者と三下は?
対象: その中に含まれていました。先祖は当時自分の家にいなかったのと、直接賭博を行ったわけではなかったため軽い刑罰で済んだそうです。
インタビュアー: ご先祖様が引退なさったのはその後ですか?
対象: えぇ、2人が死んでからすぐに、先祖は2つのサイコロを作った後引退したそうです。最後に一番いい仕事ができたと、誇らしげに語り聞かせていたそうで。
インタビュアー: サイコロはその後どうなったんでしょうか?
対象: さぁ、きっと注文されて作ったものなので、依頼主のところに渡ってるとは思いますが…いや、依頼はとっくに受けなくなったと言っていた気がするなぁ。すみませんわからないです。
インタビュアー: わかりました。
[後略]
終了報告書: ██ ██氏にはBクラス記憶処理が施され、カバーストーリー「民俗学者との対談」が流布されました、なおインタビューに出てきた三下と芸者については遺体が発見されておらず、詳細は不明です。
警告: 当報告書の編集及び外部への伝達行為は、男性の財団職員にのみ権限が与えられています。違反者を発見した場合は即座に通報してください。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8118の標準収容ロッカーに出現時と同一の文書として現在2枚が収容されています。実験等でSCP-XXX-JP文書を使用する際、セキュリティクリアランスレベル3以上の職員へ申請を行い、必ず男性がSCP-XXX-JPを取り扱ってください。SCP-XXX-JPの影響を受けた対象は、即座に隔離される必要があります。この時、隔離された室内を外部から観測不可能な状態を維持してください。隔離された対象を女性職員が認識することは禁止されています。なお当プロトコルはSCP-XXX-JPの詳細な異常性が判明し次第、随時男性職員によって加筆、編集されます。
説明: SCP-XXX-JPは長さ35cm×25cmの半紙1枚に記載された文章及びそれによって伝達される情報です。文章は墨汁で記載されており、墨汁と半紙それぞれに異常性は確認されていません。SCP-XXX-JPの内容は空気、特に地球の大気に関係するものであり、異常性は有していませんが必ずイラストと共に記載されてます。このイラストは何らかの生物を模していると思われますが、詳細は不明です。文書内での大気は生物個体を装飾し、社会的地位を高める存在として記載されており、様々な形容詞6によって表現されています。この時、温度に関する記載が最も頻繁に登場していることが判明しています。
半紙の裏には「お客様センター」という文章と、既存の局番と一致しない電話番号が記載されています。記載された番号に電話をかけると、不特定の人物が通話に応じます。この人物の音声及び電話番号に異常性は確認されていません。なおこれらの事実に加え、SCP-XXX-JPに毛筆と思われる痕跡が多数確認されていることから、人為的にSCP-XXX-JPを制作した存在がいると推測されていますが、個人及び団体の特定には至っていません。SCP-XXX-JPの内容に関する詳細は、文書XXX-JP-1を参照してください。
SCP-XXX-JPを生物学上メスに分類される生物個体(以下、対象)が認識した場合、対象に応じて二種類の異常性が発現します。対象が人間だった場合、SCP-XXX-JPの内容を積極的に伝達することを試みます。この時対象はSCP-XXX-JPをファンション関連の雑誌「四季刊、Air Love」及び同名の雑誌に記載されていた情報であると証言します。加えて対象の周囲の大気が認識したSCP-XXX-JPの内容に反する場合、対象が現在の大気に対して中傷する発言を行い、周囲の大気状態の変化、及びSCP-XXX-JPの内容と同一の状態を維持する空間への移動を要求します。
対象が人間を除く生物の場合、対象はSCP-XXX-JPの内容に基づいた状態に自身を変化させます7。対象が人間の場合と異なり、他の個体に対してSCP-XXX-JPの伝達を試みることはありませんが、他のメス個体がSCP-XXX-JPの異常性によって変化した対象を認識した場合もSCP-XXX-JPの異常性は発現します。なおこれらの異常性は、対象を他の個体から118時間以上隔離した場合に消失し、SCP-XXX-JPに関する記憶等も欠落します。
以下はSCP-XXX-JPの異常性が発現した対象人物へのインタビュー記録及び記載されていた電話番号に関する実験記録です。
インタビュー記録XXX-JP-██
対象: D-XXX-1
インタビュアー: 大川研究員(性別:男性)
対象が視認したSCP-XXX-JPの内容: 「大流行気温8℃、湿度10%コーデ!」8
付記: インタビュー開始直後の室内は、温度18℃、湿度30%でした。
記録開始:
インタビュアー: こんにちは、D-XXX-1
対象: 挨拶はいいからさ、8℃、10%にしてよ!暑苦しすぎるのよ、ここ。
インタビュアー: 8℃、10%とは何の数値ですか?
対象: 気温と湿度に決まってんじゃない、そんなおしゃれニワカなようじゃ、一生独身9よ。あなた。
インタビュアー: その気温と湿度でなければいけないのでしょうか?
対象: あなた知らないの?気温8℃湿度10%は今の時期の流行りなの。[ため息]これだから引きこもりの学者馬鹿って嫌いなのよ。
インタビュアー: あなたは財団でDクラスとして雇用されてから██年以上経過しています。なのに上記の空気の状態が流行であると言える根拠は何ですか?
対象: あなた本当に何も知らないのね。Air♡10に書いてたからよ、流行の最先端であるファッション雑誌にね。
インタビュアー: 実験に使用したSCP-XXX-JPは一枚だけでしたが、あなたはあれを雑誌だとおっしゃりたいのですか?
対象: そうに決まってるじゃない。
インタビュアー: 質問を変えます。温度と湿度、あなたが重要視するのはどちらでしょう?
対象: いきなり踏み込んだこと聞くんだ、答えはもちろん温度。だって一番目立つしねぇ、温度を制する者はおしゃれを制するって感じ?
インタビュアー: その、あなたの言うおしゃれ?は温度が重要だと?
対象: そ、つーか誰に聞いても一緒だと思うよ?ま、どんなに湿度や酸素濃度に好みがあろうと、やっぱ流行には乗らないとねぇ。てか早く空気変えてよ!ださすぎて目が腐るっての!
[以降10分以上に渡って対象が暴れる]
インタビュアー: 現状ではインタビューの続行は不可能であると判断します。室内の温度、湿度を変更してください。
[室内の温度、湿度が変更される。変更から12秒後、対象とインタビュアー用に防寒着が配布される]
対象: うん、いいわ。どう、似合うかしら?(防寒着を着用する)もちろんこの空気のことよ?
インタビュアー: いえ、全く。酸素濃度を0.5%上げてください。
[直後、指示通りに室内の酸素濃度が変化する]
対象: 確かにこういうのも若くてポップな感じで可愛いかもね。でも私としては低酸素なんかと合わせた、色っぽい感じの方が好みね。
[後略]
終了報告書: 後日異常性が消失したD-XXX-1にインタビューを実施したところ、SCP-XXX-JPの内容及び自身が明言していた空気の美的価値観の内容を正しく回答することができませんでした。また別のDクラス職員で再度同様の実験が行われましたが、SCP-XXX-JPの内容を除く大気の美的価値観は対象によって異なることが判明しています。
実験記録XXX-JP-██
実施方法: 記載されていた電話番号に電話をかけ、インタビューを行う
インタビュアー: 大川研究員
結果: 人間の男性と思われる音声がインタビューに応じた。
通話内容:
音声: お電話ありがとうございます。四季刊Air ♡、お客様センターでございます。
大川研究員: あの雑誌は、一体何を対象とした雑誌なのでしょうか?
音声: はい、四季刊Air ♡は様々な年齢層の女性へ向けたファッション雑誌でございます。
大川研究員: どのような内容を取り上げているのでしょうか?
音声: はい、当誌ではこの季節流行するおしゃれな大気を主に取り上げております。カジュアル大気、セクシー大気、トラディショナル大気等、世の女性が楽しく流行に乗れる雑誌をモットーに作成しております。
大川研究員: 一緒に書かれているイラスト、あれは何ですか?
音声: はい、あれは限定雇用したモデルをイメージして作成されたイラストとなっております。
大川研究員: モデル、と言いますと?
音声: はい、我々にはおしゃれ大気をまとい、着こなすことができるモデルがいなかったため、全国を探し回り、モデルとなっていただける方を、その時限定で雇用させていただいた、というわけでございます。残念ながら写真NGでしたが、こうしてイラストの方も好評であったことから、引き続きイラストを掲載していく予定となっております。
大川研究員: そのモデルについて詳細を教えていただけますか?
音声: 申し訳ございません。個人情報ですのでお教えできません。
大川研究員: わかりました、では次の質問を、なぜこのような雑誌を制作したのでしょう?目的は何ですか?
音声: はい、まず先ほども言いました通り、世の女性たちに楽しく流行に乗っていただきたいというのと、もう1つ、まことに現金な話ではございますが、この大気ファッション業界は参入している割合も少なく、今の我々なら流行の最先端となれると確信を経たうえで、Air ♡を制作致しました。
大川研究員: 口調から察するに、あなたが雑誌を制作したのですか?
音声: 申し訳ありません、その質問にはお答えできません。
大川研究員: わかりました、最後に雑誌を発行している場所を教えていただけますか?
音声: 申し訳ありません。お答えできません。
大川研究員: わかりました、質問は以上です。
音声: 四季刊Air ♡お客様センターをご利用いただきありがとうございました。当誌の愛好のほど、よろしくお願い致します。
インタビュー終了:
終了報告書: 通話中、連絡先の逆探知が行われましたが連絡先を特定できず、音声から個人を登録する試みも失敗に終わっています。
SCP-XXX-JPは20██/12/28、長崎県██市に位置する無人島で発見され、島内に存在していたAnomalousアイテムと共に回収されました。発見当初、SCP-XXX-JPに劣化の形跡が確認されなかったことから、発見日と同日にSCP-XXX-JPが出現したと推測されています。初期収容以降、SCP-XXX-JPと同一の異常性を有する文書が最初に発見された地点へと出現することが判明しました。このことから██市の無人島に、財団管轄の収容サイトを建設することが検討されています。
事案記録XXX-JP-1: 20██/1/9、SCP-XXX-JPの出現区域が存在する無人島全域の気温及び湿度がそれぞれ25℃と80%となる現象が発生しました。何らかの措置を行使しない場合、島の気温及び湿度は低気圧や日照時間に左右されず維持されることが判明しています。この温度変化の影響により一部の野生生物が死滅し、また島の状態を目撃した財団職員を含めたメスの生物個体がSCP-XXX-JPの影響を受けた対象と同様の挙動を見せています。これによりSCP-XXX-JPの影響を受けた女性職員全員が隔離された後サイト-8118へと移送され、島に生息していた生物の█割が隔離された後保護、█割が駆除、█割が[削除済み]されています。同日以降、財団で開発した広範囲除湿装置及び陸間冷却装置を使用し、島の気温と湿度をそれぞれ10℃と30%まで変化させることに成功していますが、装置を常に稼働させているにも関わらず、島の気温と湿度は継続して上昇しています。この気候は、財団が初めて発見したSCP-XXX-JPの内容と一致する数値であることから、現在財団は関連性を調査しています。
20██/1/13追記: 最初に異常性が発現した無人島に加え、新たに近隣に位置する島の大気の状態が変化しました。現在島は気温18℃、湿度50%まで到達しています。特筆すべき点としてこれらの変化に加え、島全域の二酸化炭素濃度も██%まで上昇し続けていることが判明しています。現在財団は2つの島を対象に大気の状態を正常に戻す試みを実施していますが、成果は上がっておらず、島に発現したと推測される情報災害の除去方法も確立されていません。
これらの事例から、財団は一連の温度、湿度変化の原因がSCP-XXX-JPであると仮定している。恐らく影響を受けた島は、対象がメスの生物個体であった場合と同じようにSCP-XXX-JPを伝達するであろう。というのが研究チームの見解である。温度や湿度の維持が難しいこの状況で、我々は島を初めとする陸地をも対象とした情報災害の除去を余儀なくされている。SCP-XXX-JPが世界全土に影響する代物なのか、█島だけでなくどうやって近隣の島にも影響が出たのか、島が影響を受けた理由は、島に性別があるのか等不明な情報はあまりにも多い、しかし我々はSCP-XXX-JPの異常性をすべて除去し、流行とやらをせき止める必要がある。確保、収容、保護
サイト-8127 管理者
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8118の防音性収容ロッカー内に収容されています。SCP-XXX-JPを対象とする実験を行う場合、クリアランスレベル3以上の職員へ申請を行う必要があります。申請を受けた職員は、実験中SCP-XXX-JPをその場から即座に移動できる状態であることを精査したうえで、申請の承認を行ってください。収容を円滑にするため、SCP-XXX-JPを取り扱う際は男性職員を一人以上割り当てることが推奨されています。
説明: SCP-XXX-JPは直径約80cm、重さ約400kgの砂岩です。材質は既存の砂で構成されており、SCP-XXX-JPの外見や構成される砂の特徴から、愛知県日進市に位置する██山との関連性が指摘されています。また特筆すべき点としてSCP-XXX-JPの表面は10ml以上のポマードが付着した状態を維持されることが判明しています。付着したポマードに異常性はなく、構成される香料、木蝋の比率等から、付着するポマードは株式会社██████の販売する製品に酷似していることが明らかになっています。なおポマードが外的要因によって喪失した直後に、新たなポマードがSCP-XXX-JPの表面に瞬時に出現する形で付着します。
SCP-XXX-JPは未知の発話能力を有しており、特定の条件を満たすことで知能が付与されます。音声は日本の成人男性のものであり、名古屋弁を使用することが判明しています。条件が満たされない場合、SCP-XXX-JPは2秒の間隔を空けた後、日本語で「俺ってグレイト?」と発声し続けます。なおSCP-XXX-JPの音声は自身の中心部が発生源であることが判明していますが、原理は不明です。
SCP-XXX-JPをマカダム式ロードローラーの上部に設置した場合、SCP-XXX-JPは████年時点で22歳の日本人男性として振る舞います。インタビュー等でSCP-XXX-JP自身が最初に認識した情景、財団に発見された際の状況等を詳細に供述していますが、供述の一部は虚偽であることが判明しており、現在財団はSCP-XXX-JPの供述する情報の真偽を解明するとともに、SCP-XXX-JPの詳細な経歴について調査しています。この状態のSCP-XXX-JPは、男性の財団職員に対しては、比較的有効な態度を取り、女性の財団職員には「女はいらないぜ」と発言し、干渉を拒否することが判明しています。この干渉拒否は、SCP-XXX-JPに関わるすべての女性職員が10分以上説得することで解消される場合がほとんどです。
SCP-XXX-JPは20██/█/██、チャド共和国ンジャメナに位置するシャリ川の中流で発見、収容されました。発見当初及び市民の通報内容では、SCP-XXX-JPは自身が設置されているマカダム式ロードローラーに対して対話を行い、ロードローラーを操作する様子が確認されていました。このSCP-XXX-JPの挙動は収容以降1度も行われておらず、財団は一連の現象の再現及び原理の解明を試みています。またSCP-XXX-JPに関する聴取及びンジャメナに存在する監視機器を調査したところ、シャリ川付近のものを除き、SCP-XXX-JPの存在が確認されませんでした。このことから財団はロードローラーの操作能力以外の未知の異常性があると判断されていますが、詳細は不明です。
インタビュー記録XXX-JP-██
対象: SCP-XXX-JP
インタビュアー: 越智博士
付記: 本インタビューはSCP-XXX-JPをマカダム式ロードローラーに設置した状態で実施されました。なお設置したロードローラーは燃料が注入されておらず、運行不可能な状態でした。
記録開始:
越智博士: こんにちは、SCP-XXX-JP。
SCP-XXX-JP: よう、良い夜だな、ロックな俺がブイブイ言わせるにはちょうどいい日ってもんだ。
越智博士: 今日はあなたがここに収容される以前の話をお聞かせください。あなたは何の目的でチャドに来ていたのですか?
SCP-XXX-JP: あぁ、アンタには俺がロックな男だって話は、散々してきたと思うけどな?俺は現状で満足するほど落ちぶれちゃあいないのさ。更なるロック、真のロックンローラーになるために、俺は流離い続けるのさ。
越智博士: つまりあなたは、自身のためにチャドに行ったということですか?
SCP-XXX-JP: それだけだとちょいと弱いな。 例えば俺の相棒のこいつ。こいつも俺と同じロックンローラーの道を目指してる、小粋な奴だろ?
越智博士: こいつ、とは?
SCP-XXX-JP: 俺の下にいるのが見えるだろ?
越智博士: ロードローラーのことでしょうか?あなたはそれが、あなたと同じく知能を有していると?
SCP-XXX-JP: ナンセンスだぜ、博士、俺とこいつは、ソウルで繋がっているのさ。言葉なんざ必要ない。俺はこいつとなら、完全無欠のロックンローラーになれる。そうだろ?相棒。(8秒間程、断続的に相槌を打つ)…ふ。だな!
越智博士: しかしその言い方ですと、あなたはまだ目的を果たしていないように見受けられます。SCP-XXX-JP。あなたの目的について、もっと詳細に教えてください。
SCP-XXX-JP: なんでもお見通しだな。そう。俺たち二人は、まだ完全じゃない。後1人、1人メンバーが加わることで、俺たちはスターの仲間入りを果たす。そのために日本を飛び出し、アフリカまで探しに来たんだ。ま、八分の七ってところだな。パズル最後の一ピースを埋める瞬間はいつだって心躍るものさ。しかしまぁ、そんな大事な時に、俺はアンタらに捕まったんだけどな。
越智博士: なるほど、それで、その新メンバーとは?
SCP-XXX-JP: 全く、本当に無粋なやつだぜ。そうだな、俺が六本木のヤクザとドンパチやりあった話でもしようか。
(この発言以降、SCP-XXX-JPはインタビュアーの質問に答えず、異なる供述をしたため。これ以上のインタビューの続行は不可能とされ、インタビューの中止が決定されました)<録音終了>
終了報告書: このインタビュー以降も、複数回にわたってインタビューが実施されましたが、SCP-XXX-JPは黙秘及び不明瞭な解答を続けています。
事案記録XXX-JP-1: 20██/█/██、インタビューを行っていたSCP-XXX-JPが、設置されたロードローラーと共に消失する事案が発生しました。消失直後、財団がSCP-XXX-JPの捜索を行ったところ、消失直前にジンバブエ共和国西マシュランド州で撮影されていた楽曲「██████」のプロモーションビデオに、走行する同型のロードローラーとSCP-XXX-JPの姿が記録されていました。ビデオの撮影クルー及びアーティスト本人に聴取を行ったところ、カメラから約2km程離れた地点で走行するロードローラー及び日本語と思われる言語を聞いたと証言しました。11その後SCP-XXX-JPはジンバブエ共和国ハラレの郊外で発見、再収容されました。特筆すべき点としてロードローラーの座席にはンビラ12が設置されており、SCP-XXX-JPの様子も初期収容時に比べ、財団に友好的な態度を取っています。事案XXX-JP-1以降、同様の収容違反は発生しておらず、SCP-XXX-JPがンビラに対して極度の愛着を示していることから、SCP-XXX-JPをンビラと共に収容することが検討されています。
いわく、この世界は元々何もなく、ビックバンという大爆発を経て、この宇宙が生まれたらしい。大爆発なんて、無から生まれるなんておかしいというのは、きっと誰もが思うでしょ。じゃあ無から生まれた最初の”モノ"ってなんだと思う?俺が答えを出すとすれば……一つの「意志」だろう。
無から意志が生まれるわけない?そんなこと俺だって知らねぇよ。気が付いたら俺がそこにあったんだよ。……矛盾してるな、そこは俺でも自覚してる。この話を信じられるやつは、きっと無からビックバンが生まれたことも、無条件で信じられるやつなんだろう。俺は信じてほしいとは思わない。ただ話したくなったから話す。だからアンタがどういう意志で聞こうが構わない。ただ耳を傾けてくれればそれでいい。と思う。
さて……俺が気が付いた時、そこは何もないところだった。空間なのか、世界と呼べるのか、かろうじて俺という存在を自覚することはできたが、それを物理的に感じることができなかった。目も、耳も、鼻も、口も、体も、脳だってありはしない。ただそこには、無を観測しつづける俺という何かが存在していた。その点だけは俺も理解できた。俺は苦しかった、怖かった、つらかった。だって本当に何もないんだぜ?広いんだか狭いんだかわかんないようなところで、己すらもぼやけたような感じ。ちょっと違うが、人間が真っ暗で何も見えない、聞こえない部屋に閉じ込められでもしたら、誰だって気が狂うだろう?そんな感じだったのさ。そして俺がもっとも恐ろしかったことは……揺れないんだ。振動しないんだよ。それが感じられない。だから音だって聞こえない。人間にも聴覚に障害を持つ人ってのはいるだろう?でもそんな彼らでも、振動としてなら感じることができる。心臓の鼓動、血がめぐっていくような感覚。それらを聞くのではなく、他の器官を使って感じる。人間はそういった音や振動を知覚する器官が優れている。もちろん聞こえない時は誰だって聞こえないんだろうけどさ。
とにかく、無振動に対する恐怖が最も恐ろしかった、不思議なもんだよな。振動なんて概念、存在すら知覚できていないのに、それがないことに対する恐怖がどうしても拭えなかった。そんなびびりまくりだった俺が、この後何をしたと思う?……創ったのさ。音を、振動という概念、その仕組み、音が伝わる媒体。そしてそれらによって奏でられる音の数々を、その膨大な情報は、爆発として観測され、何もなかったその空間には、星や分子、原子が生まれていった。どうやって創りだしたかって?それは俺にもわからない。というより思い出せない。そん時は怖くて怖くって仕方なかったんだ。しいて言うとすれば、嫌で嫌で、あがき続けた結果がこれなんだろうよ。とにかくだ、こうして俺の、無音への恐怖は終わりを告げたってわけ。
素敵な音が聞こえて万々歳かと思ったがそうは上手くいかなかった。俺は初めて、音、振動というものを知覚した、相変わらず俺という存在はぼやけたままさ。でも聞こえるんだ。感じるんだよ…まぁその理屈はわからないんだけどさ。ただ俺は、音という未知に対して、ただおびえてばかりだった。自分でいうのもなんだが、俺ってば臆病者だな。でも怖いものは怖いんだよ。量子が重なる音、星が動く音、静寂という騒音、ありゃあだめだ、聞いてて嫌になる。というわけで、相変わらずおかしくなりそうな気分だった俺は、今度はその嫌な音をかき消すために、また多くの存在を創りだしていった。どうやって創りだしたかって?…まぁ察してくれよ。なんてったって俺は、宇宙一の臆病者なんだからよ。どうだ、これが色んなものの始まり、酔狂にしては中々じゃないか?まぁ実話にしちゃあ最悪だろうけどよ。
俺は何なんだって?さっきも言った通り、意志だよ。これが多分人間が使う言葉の中で一番近いだろうよ。先に言っておくと、俺は神なんかじゃないぜ?神ならもっといい世界を創りだすだろうよ。第一俺は全知全能じゃない。ただぼーっと見て。嫌になっておかしくなっただけの存在にすぎない。そんなやつが世界を作ったと聞いて、アンタはがっかりするかもしれないけど。そん時はこの話をただの嘘にしてしまえば、それでいいさ。だがそんな俺でも、結構気に入ってるのが、アンタ達人間なんだよ。それに、人間は結構幸せ者なんだと思うぜ?忌々しい原子のぶつかる音とか、諸々聞かなくて済むんだ。一度聞いてみて俺の気持ちをわかってほしいと思わなくもないが、人間の脳が、それを処理して、体全体が感じられないようにしてくれる。良くできてるよな。それだけじゃないな。いい景色は存分に堪能できるし、嫌な景色からは目を背けることができる。痛みだって、本能が避けようとしてくれるし。おっとこれ以上はやめとこう、アンタ、人間はそこまでよくできてないって顔してるぜ?でも案外事実なんじゃないか。できなくはないだろう?できた人間がいるかはともかくとして。
さて、話はこれでお終い、俺は少し眠るとするよ。…といっても、眠るのは今回が初めてなんだ。アンタ、眠るってのはどんな感じなんだ?意識を失うのか?音は聞こえないのか?…まぁいい、眠ってみればわかるか。俺はさ、あんたらが幻滅してるこの世界、結構気に入ってるんだぜ?いや、大好きさ!鳥の鳴き声、美人な男女の透き通るような声。楽器の音、歓声、虫のさざめき、人間が舌を丸めて、コってはじく音、鐘の音。素敵な音に満ちている。だからお願いってわけじゃないけど、俺が死んで、なくなるその日までは、人間や、この世界を残しておいてくれるとありがたいかな。別に今いる人間を生き残らせてほしいって言ってるわけじゃない。この世界は、一か所にとどまり続けることが難しいことくらい、俺が一番わかってる。でもよ、世界そのものを残すことは、可能なんじゃないかって信じてるよ。事実アンタ達はそれを成している。現在進行形でな。だからよ、これからも見せてくれよ。アンタ達の頑張りをよ。眠るんじゃなかったのかって?眠るさ、疲れたからな、でも眠ってても見えるんじゃないのか?いや、多分見えるよ、アンタが何を言おうと見える。世界を創った俺だ、見ながら眠るくらい、造作もないってな。まぁ自信はないんだけどよ。
長くなったな。最後までご清聴ありがとう!じゃあお別れだ。といっても、俺はアンタを見てるんだけどよ。ただこうして話をするのは、この先ないだろうな。でもアンタとの会話は、結構楽しかったぜ。というか、俺がほとんど一方的に話してたな。
(意志は笑う)
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-████にある5m×5m×5m10m×10m×10mの収容コンテナにSCP-XXX-JPの周囲50cm内にあったアスファルトと共に収容されています。SCP-XXX-JPの収容を円滑かつより確実なものにするために、アスファルトの定期的な補修を行ってください。SCP-XXX-JPへのインタビューは定期的に、必ず担当研究主任立ち合いのもと 行ってください。SCP-XXX-JP-1が発生した場合、危険性がないと判断されるまで、全職員はSCP-XXX-JP及び収容コンテナに近づかないでください。
説明: SCP-XXX-JPは異常性を持つ、Raphanus sativus(以下、ダイコン)と形状が酷似している実体です。SCP-XXX-JPの全長は30cm(その内葉の部分は12cm)で感触も通常の大根と区別がつきませんが、植物に見られる特徴はほとんど見受けられません。
SCP-XXX-JPは、知能と未知の発話能力、強固な耐久性を有しています。知能は人間の子供のものに近くすべての発話は人間の男児に似た声質の日本語で応じています。財団からのインタビューに対しては友好的に応じており、現在では人間の生活習慣や他者のストレスについて興味を示し、積極的に対話を試みます。またすべての発話内容に共通する特徴としてSCP-XXX-JPは「根性」またはそれに類似した単語を多用する傾向があり、このことから「根性」という単語を基点に思想が形成されていると考えられています。SCP-XXX-JPを生物学的観点から分析する試みは、SCP-XXX-JPの強固な耐久性故に失敗しており、SCP-XXX-JP-1でもSCP-XXX-JPを損壊させるには至っていません。
SCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPを基点に発生する異常現象です。それらは自然現象や物体の発生等現在までに███種類が確認されています。SCP-XXX-JP-1の規則性については完全に解明されていませんが、少なくとも発生から40分後にはすべて消滅しており、SCP-XXX-JPの精神状態によって発生頻度や影響範囲が変化していることが判明しています。また現時点で記録に残っているSCP-XXX-JP-1の最大影響範囲は6mまで記録されていますが、最大影響範囲に制限はないものと考えられています。
SCP-XXX-JPは██県██市の市役所に「水道管が破裂し、水が噴き出ている」との通報を受け潜入していた財団エージェントが確認に向かったところ、アスファルト製の道路に埋まるようにして生えているのを発見されました(発見当初、SCP-XXX-JP-1は既に消滅していました)。また、移送の際、エージェントが大根を道路から離そうと試みましたが、SCP-XXX-JPがパニック状態になり、それに伴ってSCP-XXX-JP-1が発生したため、SCP-XXX-JPのみを移送する試みは失敗しました。代替案としてSCP-XXX-JPの周囲50cmにあるアスファルトを切り取ったところ、SCP-XXX-JPに変化がなかったため、そのまま切り取ったアスファルトごと移送、収容されました。SCP-XXX-JPが発見された道路は付近での国道の開通、道路自体の劣化などが原因で現在は使用されておらず、道路の調査を行ったところ、不自然な劣化が確認されたことから、過去にもSCP-XXX-JP-1が発生していたと考えられています。SCP-XXX-JPを目撃したと思われる人物には全員Aクラス記憶処理が施され、道路及びその周囲の土地にはカバーストーリー「道路一部崩落」が施行されました。
補遺:2███/3/21現在のSCP-XXX-JP-1はSCP-XXX-JPの精神が定期的に実施されるインタビューによって回復しているため、SCP-XXX-JPにのみ知覚できる範囲まで縮小していますが、収容当初のSCP-XXX-JPはインタビューにほとんど応じないほど我々に関心が無く、SCP-XXX-JP自身の曖昧な思想や度重なるSCP-XXX-JP-1の発生に伴い精神状態も不安定でした。収容当初のSCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-1については、下記の記録及び過去の報告書の一部抜粋を参照してください。
インタビュー記録: SCP-XXX-JP5
対象:SCP-XXX-JP
録音開始日時(████/7/17)
██博士: こんにちは、SCP-XXX-JP。インタビューに応じていただけないでしょうか?
SCP-XXX-JP: また来たの?僕は忙しいんだ、放っておいてよ、いいかい、言っておくけど、僕のやってることの方が、いんたびゅー?なんかよりずっと大事なことなんだ!
██博士: あなたがやっているインタビューよりも大事なこととは、どのようなことなのでしょうか?
SCP-XXX-JP: だから邪魔しないでって…(この発言の直後、SCP-XXX-JPの発声方向が変化し、インタビューを行っていた██博士の方を向きました)僕より白くて、太くて、大きい…だからなんだ!僕の方が根性があるに決まってる!負けない、負けるもんか!
(この発言以降、SCP-XXX-JPが██博士の接触に応じなくなったので██博士から記録の終了が言い渡されました)
録音終了
インタビュー記録: SCP-XXX-JP6
対象:SCP-XXX-JP
録音開始日時(████/7/19)
██博士: こんにちは、SCP-XXX-JP。
SCP-XXX-JP: だめだ、何度踏ん張っても大きくならない
██博士: もしかしてあなたは、自発的に成長しようとしているのですか?
SCP-XXX-JP: 気づいてたのか…何さ、今に大きくなってやる!
██博士: 大きくなることが、あなたが先日やっていたことに繋がるのですか?
SCP-XXX-JP: それはわからないけど。
██博士: わからないのに、どうして大きくなりたいのですか?
(1分34秒の沈黙)
SCP-XXX-JP: わからないけど、根性の為になる気がして。
██博士: だから大きくなろうとして、より根性のある自分になりたかったと?
SCP-XXX-JP: うん
██博士: ではあなたの思う根性とは何ですか?
SCP-XXX-JP: わからない、でも、この言葉があるから、今の僕があるんだ。わからなくても頑張らなくちゃいけない。
██博士: 私と根性について考えてみませんか?
SCP-XXX-JP: だめ、これは僕自身のことだから、僕だけが頑張らなくちゃ。
██博士: ではこうしましょう。私は私、あなたはあなたでそれぞれのことに取り組む、互いはそれについて協力し合うというのは?
SCP-XXX-JP: 博士は何をするの?もしかして今より大きくなるつもり?
██博士: いいえ、またこれまでのようにあなたにインタビューをするだけです。
SCP-XXX-JP: わかった、でも僕の邪魔はしないでね、後今より大きなったらだめだからね!今より白くも太くもなったらだめだからね!
██博士: 可能な限り善処します。
録音終了
終了報告書: その後SCP-XXX-JPに接触したところ問題なくインタビューに応じており、我々に対して友好的といえる状態になりました。
インタビュー記録: SCP-XXX-JP██
対象:SCP-XXX-JP
インタビュアー:██博士
録音開始 日時(████/7/21)
██博士: こんにちは、SCP-XXX-JP。これからいくつか質問をさせていただきます、よろしいですか?
SCP-XXX-JP: わかった!根性で答えよう。
██博士: あなたには私達の姿がわかりますか?あなたは今どのような場所にいますか?
SCP-XXX-JP: 白くて、黒くて、それからなんて言ったらいいのかなぁ(2分に渡りうなだれる)。
██博士: もう結構です。あなたの思考に関することですが、いつからそのような考えを持つようになったのでしょうか?
SCP-XXX-JP: いつからも何も、僕には最初から高く、それでいて太い根性があった、それだけさ!
██博士: 質問を変えましょう、あなたが、根性や、負けないといった単語を使うようになったのはいつ、どんなきっかけがあってのことなのでしょう?
SCP-XXX-JP: 昔博士に似たやつらに会って!みーんな「根性があるなぁ~」とかそれに似た言葉をたくさん使ってて、そのときから自分には根性があるのかぁ、って考えるようになった。…後「負け知らずだなぁ」とか「タフ」とかすごくかっこいいことばかり言っててそれから(██博士の判断で、ここで回答を終了とみなされ別の質問がされました)
██博士: もう結構です、インタビューを続けます。あなたはSCP-XXX-JP-1についてどのような考えを持っていますか?
SCP-XXX-JP: それって、僕の周りで起こってることだっけ?全然何も思ってないかな、確かに不思議なことは沢山起きたけど、あれくらいじゃあ僕の根性は折れないからね!
██博士: 確かに、あなたの物理的な耐久面に問題はないかもしれません、ですがそれ以外のあなたを構成するものはどうでしょう?我々には、あなたを守るために、可能な限りのサポートを行う準備もできています。
SCP-XXX-JP: 心配してくれてありがとう博士、でも僕は平気、だって僕にはとびきり根性があるから!博士なんかいなくたって、前も今も問題なかったし、僕が折れることなんて、絶対にありえない、自信をもって言える!
██博士: わかりました。本日のインタビューを終了します。
録音終了
発生記録:SCP-XXX-JP-1
18: 発生日2███/8/17
発生内容: SCP-XXX-JP上空1mより毎秒約████mlの酸性雨が発生し、SCP-XXX-JPに接触してから5分後にすべて消滅しました、またSCP-XXX-JP-1の発生時にSCP-XXX-JPが何かの言葉を発声したと思われていますが、SCP-XXX-JP-1の発生によりSCP-XXX-JPの発話能力になんらかの妨害を受けたと思われるため、内容を聞き取ることができませんでした。
付記: 今回のSCP-XXX-JP-1の発生について、「雨はいいよね!恵みの雨!…よくわからないけど」とコメントしています。
34: 発生日2███/9/20
発生内容: SCP-XXX-JPの周囲2mで約████℃、風速███mの熱風が発生し、それらは発生から18分後に消滅しました。SCP-XXX-JPはふんばるような声を発し、その合間には「負けない」等の言葉を発していました。
付記: 今回のSCP-XXX-JP-1の発生について、SCP-XXX-JPは「熱かった、けどうん、大丈夫大丈夫!」とコメントしています。
49: 発生日2███/9/20
発生内容: SCP-XXX-JPの周囲3m内にアブラムシと思われる実体が発生し、発生から17分後すべてのSCP-XXX-JP-1が消滅しました。(発生したSCP-XXX-JP-1の数は不明ですが目視で数えたところ少なくとも███匹の出現を確認、またSCP-XXX-JPの周囲3m外にSCP-XXX-JP-1を移動させる試みが失敗したため、正確な種類も不明です)
付記: 今回のSCP-XXX-JP-1の発生についてSCP-XXX-JPは「疲れた」とコメントしています。
65: 発生日2███/1/16
発生内容: SCP-XXX-JPの周囲4.5mのみ気温が50℃まで上昇し同時にミンミンゼミ(Hyalessa maculaticollis)の鳴き声が発生し、それらは発生から30分後に消滅しました。
付記: 今回のSCP-XXX-JP-1の発生についてSCP-XXX-JPは「熱かった」とコメントしており、その直後SCP-XXX-JPからインタビューの中止が提案され、インタビューは中止されました。
2███/2/26追記:収容セル内でこちらから接触していないのにも関わらず発話を行っているSCP-XXX-JPが発見されました、SCP-XXX-JPはこちらに気づくまで人間の泣き声に似た声を発していましたが、この発話の意図は不明です。これを受けSCP-XXX-JPへ行われるインタビューは無期限に停止されました。
以下は、インタビュー停止期間及びその直前に発生したSCP-XXX-JP-1の発生記録です。
85: 発生日2███/2/26
発生内容: SCP-XXX-JPの周囲5mから数多くの人間のものと思われる声が発生。それらは日本語で口論および人格への誹謗中傷にあたる内容の単語を発し続けました。発生から30分後、SCP-XXX-JP-1は消滅しましたが、その後のインタビューにSCP-XXX-JPは非協力的になり、こちらから接触をしても反応を示さなくなりました。
付記: 音声の解析を行った所、口論、誹謗中傷の内容は、すべてSCP-XXX-JP-1に対してのもので、音の発生地点、方向などからSCP-XXX-JPに向けられたものは確認されませんでした。██博士
86: 発生日2███/2/27
発生内容: SCP-XXX-JPの周囲6mに全長███cmの人型実体が発生、収容コンテナ内に未知の方法で進入しSCP-XXX-JPに対して罵倒及び暴行を消滅するまでの40分間の間行いました、実体の特徴は██博士と酷似していました。
2███/2/28追記:SCP-XXX-JPがこちらから接触を行いました。以下は行われた██博士との会話内容を文章に起こしたものです。
SCP-XXX-JP: ねぇ博士?
██博士: なんですか?SCP-XXX-JP?
SCP-XXX-JP: 最近からここに来なくなったのはどうして?
██博士: あなたへのインタビューを定期的に行うのは、不適切であると判断したからです。
SCP-XXX-JP: 博士は僕と話すのイヤ?
██博士: いいえ、そのようなことは断じてあり得ません。
SCP-XXX-JP: そっか、博士は優しいんだね。僕なんかよりずっと。
██博士: SCP-XXX-JP、あなたは…その、悩んでいるのですか?
SCP-XXX-JP: 悩んではいない、ただすごく悲しい気持ちになっただけ。
██博士: あなたが悲しんでいる理由を、その…私ではだめですね、すぐにカウンセラーを。
SCP-XXX-JP: いいんだ博士、博士以外のやつとは話したくない。
██博士: 私では、あなたを壊してしまうかもしれない、それでも私との対話に応じるのですか?
SCP-XXX-JP: うん。博士?前にも言ったよね?僕には根性があるって、その根性も、今はどうかわからないけど、これだけは言える、博士じゃ、僕を壊せない。
(2分間の沈黙)
██博士: では、あなたが悲しい気持ちになったことに関する話を、聞かせてください。
SCP-XXX-JP: 元々、僕の周りで色々起こるとき、それはつらい時が多かったんだ。雨で全身焼けるように痛かったり、ひどく熱かった時もあって、口ではああ言っていたけど本当はすごくつらかった、前までは頑張っていたけど、あの時そう、僕の周りで何かが喧嘩していた時には、もう限界だった。
██博士: 申し訳ありません、すべては私が判断を誤ったのが原因です。
SCP-XXX-JP: 謝らないで博士、博士は僕のこと、何度も助けてくれたじゃないか。博士とお話ししてるとき、その時だけは、僕は根性のある自分でいられた、博士の言葉は、今でも僕の中でこだましてて、博士が僕と話してくれてなかったら、僕はとっくに壊れちゃってたと思うし、こうして博士とまた話そうって、思わなかったと思う。それに博士、僕は周りで起こっているあれを、嫌いにはなれない気もするんだ。
██博士: どういうことですか?
SCP-XXX-JP: あの後いつも、本当かどうかわからないけど、雨や風が、僕に謝っているような気がする、ひどいことされてるのに、雨や風がそんなこと言ってるかわからないのにそう思えてくる、あれに悪気はないんじゃないかって、きっと僕を傷つけるためにやってるんじゃないって。…僕ばかり沢山話しちゃったね。
██博士: こちらは問題ありません。
SCP-XXX-JP: じゃあ今度は僕も質問しようかな
██博士: 答えられる範囲でお答えします。
SCP-XXX-JP: じゃあさ、博士は、根性があるってどんなことだと思う?
██博士: それは…
SCP-XXX-JP: 博士の思った通りに答えてほしいんだ。僕はただ、根性のある僕になりたいだけ、そのためにどうすればいいかもわかっている。だから答えて欲しいな。
██博士: そこまでわかっているのなら、あなた自身もう結論が出ているのではないですか?
SCP-XXX-JP: それもそうなんだけどさ、理由が欲しいというか、本当に僕の根性についての考えがが正しいのか、確かめてみたいんだ。
██博士: わかりました……根性とは、そのものの性質を一貫させる強い性質、であると考えます。
SCP-XXX-JP: 強い性質、それを自身がわかっていないと、根性があるとは言えないのかな。
██博士: 少なくとも、それを維持するには、必要なことなのだと思います。
SCP-XXX-JP: そっか、そうなんだね。わかった!わかったよ博士!
SCP-XXX-JP: うん、ただ、今の僕だと、ずっと根性がある僕にはなれない、根性がある僕になるには、それを目指さなきゃいけないと思う、そして、博士と一緒じゃないとなれないこともわかった。
██博士: 私とですか?
SCP-XXX-JP: その、僕には博士が必要というか、なんというか。前にひどいこと言っちゃったの謝りたいというか。これからも僕と話してほしいというか…(不明瞭な声)
██博士: あなたがよろしければ、定期インタビューは再開されます。
SCP-XXX-JP: 本当に?やったー!(2分程、SCP-XXX-JPははしゃぐような声を発し続けました)
██博士: では、明日から定期インタビューを再開させるとしましょう。今日はこの辺りで終わります。
SCP-XXX-JP: やっと目指すものがわかった、これから頑張らなくちゃ、博士もいっぱい聞きたいことがあるんだから、覚えておいてよ!
██博士: 可能な限り善処します。
記録終了
終了報告書: インタビュー終了直後、「合格」と彫られた判子型のSCP-XXX-JP-1が発生し、SCP-XXX-JPに対し朱色の液体を用いて判が押された後、押された文字を含めすべてのSCP-XXX-JP-1が消滅しました。SCP-XXX-JP-1の発生中、SCP-XXX-JPは終始困惑した様子でした。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: セーフ
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-████にある標準収容房内に収容されています。実験を行う際はDクラス職員を用いて行ってください。また実験を除き、SCP-XXX-JPに関する文章を英語で表現することは禁止されています。万が一表現されてしまった場合には、直ちにBクラス記憶処理を実行し、英語が記されている媒体は処分してください。
説明: SCP-XXX-JPはオスのカマス(Sphyraena)の死骸です。収容から█年経過していますが、SCP-XXX-JPの腐食による劣化は無く、また未知の方法によって破壊が不可能であることが判明しています。
SCP-XXX-JPには、定期的に2種類の生物の死骸が出現します。出現する生物の死骸の内1種類は、SCP-XXX-JPを呑み込む形で出現します。それに伴い出現する生物の体長はSCP-XXX-JPよりも大きい場合がほとんどです。また出現した生物内にはSCP-XXX-JPを除くすべての生物またはその死骸が存在しません。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8118内の生体収容房に現在28匹が収容されています。財団監視下にないSCP-XXX-JPを発見した場合は即座に確保し、SCP-XXX-JP-1の発生を阻止してください。SCP-XXX-JP-1は同じくサイト-8118内にある飛行場の専用ハンガー内に現在3機が収容されています。SCP-XXX-JP-1のすべてに「SCP-XXX-JP-1-(該当番号)」というロゴが印刷され、同飛行場にある機体と区別されます。SCP-XXX-JP-1の飛行を伴う実験は必ず医療班と消火班を着陸予定の地点に配備し、航空機の操縦経験のある職員を3名以上搭乗させてください。
説明: SCP-XXX-JPはオスのウチワヤンマ(Sinictinogomphus clavatus)です。すべての個体の外見に異常はありませんが、従来のウチワヤンマより長期にわたって生存しています。また安定した飛行を行うことができず、度々収容房の壁や床に衝突しています。これはSCP-XXX-JPが左右または両方の羽の羽ばたきを断続的に停止させているためですが、このような行動を行う理由は不明です。なおこの行動によってSCP-XXX-JPが負傷した事例はありません。
SCP-XXX-JPは従来の習性の代わりに、全長25m以上の旅客機を対象に交尾を行う習性があります。対象となる旅客機の垂直尾翼後方に位置する部分にSCP-XXX-JPの交接器を約2分間付着させることによって交尾は完了します。交尾の最中、旅客機内にいる男性は全員旅客機の半径8mの地点へ一斉に転移します。また交尾後のSCP-XXX-JPは、旅客機に搭乗していた人間が再び搭乗する際、複数の人物に対して威嚇を行い、交尾を行った機体の周囲を飛行し続ける習性も確認されています。
SCP-XXX-JPの精子が付着した全長25mの旅客機は付着してから約8分後、半径200m以内にSCP-XXX-JP-1の幼体を一機出現させます。この異常性は精子が付着した時点で、旅客機内に男性がいない場合にのみ約88%の確率で発現します。一度SCP-XXX-JP-1を出現させた旅客機が再びSCP-XXX-JP-1を出現させることはありません。
SCP-XXX-JP-1の幼体は、自身を出現させた旅客機の外見に部分的に類似している実体です、外見、構造はわずかな色の違いやロゴの有無13を除いてSCP-XXX-JP-1を出現させた旅客機と類似していますが、主翼、尾翼、降着装置が無く、機体中央から6m程のウチワトンボのものに似た節足動物の足が左右に3本ずつ生えています。足を動かすことは可能ですが、足を使った歩行は行えず、SCP-XXX-JP-1自身も積極的に行動しないことが判明しています。SCP-XXX-JP-1はその後、約8日間かけてSCP-XXX-JP-1の成体へと変化し、その際主翼、尾翼、降着装置の部分が形成され、節足動物の足は生え変わる形で外れます。
SCP-XXX-JP-1の成体は自身を出現させた旅客機の姿に酷似している実体です。幼体に比べ、自立行動することはなくなりますが、代わりに適切な燃料を用いることで通常通り飛行することが可能です。すべての事例において両部エンジンの断続的停止、搭乗した職員の失神等、機体の損傷及び職員の負傷を伴わない事故が発生し。緊急着陸を行っています。現在まで事故によるSCP-XXX-JP-1、職員、建物への被害は出ていませんが、事故発生の原因は不明です。
SCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-1の最初の発見地点は沖縄県那覇市に位置する那覇空港です。SCP-XXX-JPは日本トランスオーシャン航空が所有するボーイング737-400の内一機に搭乗していた男性職員が転移及びSCP-XXX-JP-1が出現する姿を当時別オブジェクトの調査にあたっていた財団職員が発見しました、その後、機体を調査したエージェントに対し、攻撃的な反応を示すSCP-XXX-JPを発見し、調査したところ上記の異常性を有していることが発覚しました。SCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-1を目撃したすべての人物に対してBクラス記憶処理が行われ、カバーストーリー「緊急着陸」が流布されました。最初の発見以降、複数のSCP-XXX-JPを発見、収容に成功しています。
補遺: 2015/8/28日、新たに収容した3匹のSCP-XXX-JPを用いて実験を行った結果、その内の1個体が財団の所有するF-22ラプターを対象に交尾を行いました。これはSCP-XXX-JP-1が25m以上の旅客機以外を対象に交尾を行った初めての事例です。交尾後、機体にはSCP-XXX-JPの精子が付着しましたが、SCP-XXX-JP-1は出現しませんでした。上記の事例と実験から、SCP-XXX-JP-1を出現させられる機体は、25m以上の旅客機に限定されることが判明しました。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPはサイト-8118内の耐熱設備が完備された生体収容房に収容されています。後述する期間にSCP-XXX-JPへ長時間接触する場合は、クリアランスレベル3以上の職員への申請と耐熱装備の着用が義務付けられています。
説明: SCP-XXX-JPはメスのコブウシ(Bos taurus)です。体高は約150cmで、体重は約700kgから750kgの間まで変化します。
SCP-XXX-JPの腹部は定期的に肥大化及び縮小を繰り返しています。腹部の肥大化は約10ヵ月かけ徐々に進行し、一定の大きさまで肥大化した腹部はその後約12ヵ月かけ縮小します。腹部が通常の状態まで収縮してから肥大するまでに約2ヵ月ほどの休止期間があること、腹部が縮小している間SCP-XXX-JPの乳房から母乳と思われる液体が分泌されていることから、SCP-XXX-JPの腹部の変化は妊娠との相似が指摘されています。
SCP-XXX-JPは腹部が縮小している状態の時屋内に存在する場合に限り、室内の気温及び湿度を変化させます。通常の場合室温90℃、湿度10%を維持します。ドアや窓など壁に穴がある場合も異常性は発現しますが、SCP-XXX-JPが完全に屋外に出きった時点で異常性は消失します。なおSCP-XXX-JP自身及びその体液は異常性の影響を受けることはありません。
SCP-XXX-JPの乳房から分泌された液体を解析したところ、通常の牛乳の他、砂糖、コーヒー豆、蜂蜜、未知の植物由来の成分が検出されました。それ以外に異常が確認されなかったためDクラス職員を用いて試飲実験を行いましたが、問題は発生しませんでした。味についてDクラス職員は「甘さ控えめで、濃厚な味だった」と証言しています。現在SCP-XXX-JPの健康状態の維持のため、定期的な搾乳の実施及び絞った母乳の処理について審議されています。
SCP-XXX-JPの発見地点は、インド、タミル・ナードゥ州、チェンナイ市に位置するヒンドゥー教寺院の█████████寺院です。SCP-XXX-JPは「アムリタ14を分泌する聖牛」として、寺院関係者や周辺住民の信仰の対象になっていました。フィールドエージェントが寺院関係者から聴取を行ったところ、参拝に訪れた女性から寄進されたと証言されました。詳細は以下を参照して下さい。
インタビューログSCP-XXX-JP-██: 日付201█/█/██
インタビュアー: エージェント・シルディ(諜報局南インド支部所属、フィールドエージェント)
対象: ムクンダ・マハルシ氏(██████財閥所属、█████████寺院運営責任者)
[前略]
エージェント・シルディ: それではグル15、あの聖牛を寄進したという女性について、もう少し詳しくお教え頂けますか?
マハルシ氏: ふむ、確か先月のマハー・シヴァラートリー16の最中のことであったか。かの聖牛を連れて、参拝に参られたのだ。大層美しく、また高貴そうなご婦人であった。こう、肌が金色に輝いて見える程でな……おっと、いかん。ご婦人に惑わされるとは、我も修行が足りぬ。
エージェント・シルディ: ご主人のことや、何処にお住まいなのか等はお訊きになりませんでしたか?
マハルシ氏: 寄進に参られた方に、ご素性を問い詰めるようなことはせぬよ。夫の代理で来たとおっしゃったので、既婚者には違いないはず。ああ、そう言えば、弟子が写真を撮らせて頂いていたな。後ほど持ってこさせよう。
エージェント・シルディ: ありがとうございます。その女性は、聖牛については何と説明を?
マハルシ氏: 夫からの寄進の品としか。参拝を終えると……何といったかな、あの、やたらと細長い異国の車。
エージェント・シルディ: リムジンですか?
マハルシ氏: うむ、それだ。立派なリムジンが、いつの間にか寺院の前に停まっていてな。あんたのようなスーツの男前たちに迎えられて、颯爽と帰っていかれた。さて、何処のマハーラーニー17であったものか。
エージェント・シルディ: 失礼、車両はそのリムジンだけでしたか?
マハルシ氏: そのようだったが、何か?
エージェント・シルディ: いえ、その女性は、どうやって聖牛を運んできたのだろうかと思いまして。まさか、リムジンに載せてきた訳でもないでしょうし。
マハルシ氏: なるほど、自ら引いてきたにしてはいささか妙だが。まあ、この国では何だって起こりうる。[笑って]何せ、ブラフマー18のお造りになった国だからな。
[後略]
インタビュー以降、寺院関係者や周辺住民には記憶処理が施され、カバーストーリー「信仰による錯覚」が展開されました。SCP-XXX-JPを寄進した女性は特定できていませんが、彼女が寺院に現れた直後、周辺住民の間で「空を飛ぶ巨大な虎を見た」という噂が流布していたことが確認されており、関係性について調査中です。
事案SCP-XXX-JP-1: 201█/█/██、研究班がSCP-XXX-JPの子宮部に対して超音波検査を実施した結果、腹部が肥大化している間子宮内で人型の実体が生成されていることが判明しました。全長は約30cmで、額に眼球に似た器官が存在する様子が確認されましたが、臍帯はつながっていませんでした。
生成が完了した直後、人型実体は溶けるようにして子宮内から消失しました。これを受け研究班はSCP-XXX-JPの帝王切開手術及び内臓組織の本格的調査を実施しましたが、麻酔を投与した時点でSCP-XXX-JPの腹部が急速な縮小を開始しました。子宮が開ききる前にSCP-XXX-JPの腹部は通常の大きさまで戻り、子宮内に異常は確認されませんでした。以降の切開を必要とする調査は、SCP-XXX-JPの状態が確立するまで保留されています。
事案SCP-XXX-JP-2: 201█/█/██、SCP-XXX-JPの牛乳状分泌物を試飲したDクラス職員が、不思議な夢を見るようになったという報告がありました。内容についてDクラス職員は「空から降り注ぐ熱線が都市を焼き尽くす光景」「白い津波が押し寄せてくる光景」「白い海から複数の腕を持つ巨人が現れる光景」等と述べており、現在阿久津博士(専門・夢や睡眠に関するオブジェクトの研究および調査)と鶴澤博士(専門・インド神話他宗教に関するオブジェクトの研究及び調査)を中心とするチームが分析中です。
事案SCP-XXX-JP-1および2から、SCP-XXX-JPは未知の異常性を備えている可能性が高いと判断され、オブジェクトクラスEuclidへの再分類が検討されています。音楽療法士楽団定期演奏会は、サイト-81██に所属する財団のエージェント及び財団管轄の医療施設職員で構成、開催される演奏会です。████で開催され、稀に演奏会を利用してカバーストーリーの流布及びオブジェクトの確保を行う場合があります。楽団のメンバーは全員音楽療法士の資格を取得しており、普段はその資格を利用して、エージェントは調査活動、その他は財団管轄の医療施設での勤務にそれぞれあたっています。
演奏会の内容は主にピアノ、ギター、木管楽器、金管楽器、パーカッションを中心に行われ、曲目等は参加できる職員の数や経験のある楽器の種類等によって変化します。またその演奏は「情景が見えてくる」と評されており
の観客動員は開催される市町村以外からも来る場合もあり、一定の知名度を得ています。なおギター以外の弦楽器を必要とする曲目は参加可能人数と楽器経験者が少ないことから、これまでに一度も行われていません。
氏名: 横谷 健仁(Yokoya kenji)
主な業務内容: SCPオブジェクトの確保、収容。財団管轄の医療施設での医療活動。タイプライター
来歴: ████/██/██生まれ、男性。(40代)埼玉県出身。身長173cm、体重69kg。████大学卒業後、地元の介護施設に勤務、そこでSCP-████に遭遇、影響を受け財団にて事情聴取を行う、その後SCP-████の影響縮小に貢献していたことが判明、以降正式に財団エージェントとして雇用。(推薦者エージェント████)現在は████総合病院に潜伏、調査を実施中。音楽療法士楽団で指揮者を担当している。
人物: 横谷 健仁は中肉中背の男性であり、真面目な性格をしています。████大学の医学部を専攻し、医学、薬学、臨床心理学の知識を有しています。学生時代吹奏楽部で活動をし、████年に学会認定音楽療法士の資格を取得しました。ピアノ、ギター、バンジョー、サックスの経験がありますが、本人はタイプライターの演奏が最も得意であると証言しています。彼のオフィスにはPCと別に推定4台のタイプライターが設置されており、紙の資料を作成する際はそのいずれかを愛用しています。なおこれまでに定期演奏会の演目でルロイ・アンダーソン作曲「タイプライター」並びにタイプライターを使用する楽曲を演奏したことはありません。
氏名: 雲晴 尚(kumohare nao)
主な業務内容: Anomalousアイテム・SCPオブジェクトの調査、回収、ドラムロール 、
来歴: ████/██/██生まれ、(20代)女性、北海道出身。身長164cm、体重[編集済み]kg19。ブリチャード大学卒業後、財団に雇用。音楽療法士楽団で幽霊パーカッションを担当している。
人物: 雲晴 尚は中性的な顔立ちをした日本人女性です。ブリチャード大学で医学部を専攻し、医学、薬学、臨床心理学、犯罪心理学についての知識を有しています。また同大学の吹奏楽部でパーカッションを担当した経験を持ち、 ████コンクールで審査員特別賞を受賞しています。その他にピアノ、ギター、声楽、ハーモニカの経験があります。他の職員からは「自由人」と評され、任務以外での旅行も頻繁に行っています。また中性的な口調をしており、音楽療法士としての経験を活かし、独自に職員からの相談を受ける場合があります。
SCPs
SCP | Rating | Comments | Created | Last Comment |
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Tales
Tale | Rating | Comments | Created | Last Comment |
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Others
Others | Rating | Comments | Created | Last Comment |
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SCP-musicalise-JP | 0 | 0 | 20 Feb 2017 17:05 |
番号 | 列2 |
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//ja.scp-wiki.net/scp-1189-jp | 組曲「虫」より「トンボ」 |
//ja.scp-wiki.net/scp-645-jp | 白磁の月の輝宮夜 |
以下、記事の裏話(ネタバレ注意)
某日、知り合いの牧場にて。
カップル彼女「わー、牛だー!」
カップル彼氏「へー、意外とでかいんだな。」
知覚にいた私「(´▽`)(おやおや微笑ましいこと)」
彼女「あれ(ホルスタイン種を指さす)が牛乳出す牛でー。あれ(ジャージー種20を指さす)がコーヒー牛乳を出す牛だっけ?」
私「( ゚д゚ )」
これが発端。ありがとうカップル
この内容を元に後半にホラーな展開を持って行って投稿した結果見事に撃沈、色々沈んでいたところにykamikuraさんが共著のお誘いをいただき、投稿できました。ほぼkamikuraさんのおかげ展開としての起伏の中にインド神話の世界観を織り込んでいただいたことで、SCPをどう作るのかとても参考になった作品でした。ykamikuraさんには感謝してもしきれないくらいです。
残存記事二作目
トンボのSCPを書こうと曲を聴きながら考えていたら、連想ゲームの容量で出来上がっていった作品。自然と短くシュールな雰囲気に落ち着いて行き。同時に今のスタイルを作るきっかけになった作品でした。元になった曲との雰囲気との近づけも概ね成功し、自分でも気に入っている作品です。バックストーリーをろくにつけられなかったのが悔やまれますが・・・。元になった曲は組曲の一部なので、いつかは全部制覇できたらなと考えております。
著者ページ作成権利がかかった三作目。8月に作成を開始し、どうせ月関連のオブジェクトだから十五夜に合わせて投稿しようと思い立ち、二か月ほど温めていた作品。かぐや姫の世界観の一つの答えとして六道を織り込んだ作品で。その二つをいかに陳腐にせず融合させるかという点ではかなり苦労しました。一方でかぐや姫を見直し、仏教関連の資料を見ることも多く、大変だった半面書いていて楽しいものでもありました。少しずつ内容を調整してより面白くしていく所存です。月を見たら、同時にこのオブジェクトを思い出して欲しいなーなんて。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは現在未収容です。SCP-XXX-JPの出現が観測された場合は、財団所有の人工衛星を用いて動向を調査してください。SCP-XXX-JPの撮影に成功した場合はその場で映像及び写真のバックアップを取った後、実験に使用してください。主な調査活動はサイト-8118及び月面仮設サイト-3が行っています。
2016/7/10追記: 現在、SCP-XXX-JPが接触したと思われる座標の有人探査は無期限に凍結されています。これに伴い民間の有人探査も規制されます。規制の際には随時カバーストーリーの作成、流布を行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは外宇宙に出現する木造の船舶であると推測されています。後述する異常性の影響で、詳細な外見情報は不明ですが、全長は約80m程であると推測されています。調査のためこれまでにSCP-XXX-JPへ接近、接触する試みが行われてきましたが、約6000km附近まで接近した時点で、SCP-XXX-JPがその場から消失する形で失敗しています。また宇宙空間にSCP-XXX-JPが出現、消失する際に極短時間の時空間異常が発生します。この時空間異常は微弱な発光現象として観測されますが、現時点でこの発光現象に伴う物理的な被害は確認されていません。後の調査でSCP-XXX-JPが出現、消失する際、同時に月面でも微弱な発光現象が発生する21ことが判明しました。月面で発生した発光現象はSCP-XXX-JPが出現、消失する際に発生するものと外見上同一であり、SCP-XXX-JPの出現が月面の周囲で頻発していることから、SCP-XXX-JPと月面に何らかの関連性があるとし、月面仮設サイト-3が建設されました。SCP-XXX-JPの移動経路等に共通点は発見されていませんが、最大で████光年以上の移動を行った事例が記録されています。
SCP-XXX-JPを撮影、録画した媒体の画像解析を行った場合、媒体に映るSCP-XXX-JPの外見が変化します。ほとんどの場合SCP-XXX-JPは陶器製の皿に類似した外見に変化しますが、装飾の有無やデザイン、皿の大きさ等の詳細な変化は写真や映像によって変化します。外見が変化する詳細な基準は不明ですが、至近距離まで画像を拡大、画質の向上を行うことで優先的に変化していることから、SCP-XXX-JPの詳細な外見が判別可能になるまでの解析を行うことで外見が変化すると推察されています。現時点で外見が変化したSCP-XXX-JPの画像を復元する試みは成功していませんが、単体の画像毎に変化が生じるため、同一の画像を複製することで、疑似的な外見変化の対策を行うことが可能です。
蒐集院が作成した資料によると、平安時代前期にSCP-XXX-JPと思われるオブジェクトの情報が記載されていたことが判明しました。資料でSCP-XXX-JPは約80m程の木製の船舶として記載されており、雲に類似した物質を発生させていたこと、複数の人型の実体が乗船していたこと等、SCP-XXX-JPに関する情報が記載されていました。現時点で判明している情報と蒐集院が発見したオブジェクトとの差異は確認されていませんが、資料の信憑性が低いため、SCP-XXX-JPの説明欄の更新は保留されています。信憑性が低いと判断されている理由として、当時蒐集院が行った隠蔽工作、中でも流布されたカバーストーリーと情報が混同されていること等が挙げられています。現在財団はさらなる資料の捜索及び調査を行っています。資料の詳細は補遺3を参照してください。
補遺1: 2008/2/15、月面仮設サイト-3の職員がケプラークレーター内で人型実体を1体発見しました。実体は仰向けの状態で発見され、活動の兆候が確認されなかったため回収、調査されました。実体は人間の女性に類似した外見をしており、発見当初はそれぞれ櫛を模していると見られる装飾品22、単衣と思われる衣服、蒐集院が保有していた文献に記載されていた「羽衣」に類似した衣服を身に着けていました。実体に目立った外傷はなく、十分な防護措置が施されていなかったにも関わらず、劣化及びその兆候も確認されませんでした。また上記に付随して実体は腐敗の痕跡は確認されませんでしたが、アンモニア臭に酷似した刺激臭を発していました。なお実体の構成要素は所持していた物品、刺激臭を含め、すべて既存のものと一致しませんでした。
事案XXX-JP-1: 2008/2/16、月面サイト-3の安置室にて保管されていた人型実体が消失しました。サイト内の監視機器には、陶器製の皿に類似した実体が画面の9割を占める割合で記録されていました。出現から5分後、皿が消失し、再び安置室が映し出された際、死体はその場から消失していました。当時内部に存在した物品を使用した場合でも安置室を内部から解放することは不可能であり、安置室に脱出の痕跡は確認されませんでした。また当時就寝していた2名の職員が類似した内容の夢を見ていたことが判明しました。夢を見た職員2名は、当時人型実体の回収を担当した職員であることが共通していますが、夢を見た原因については不明です。現在財団は捜索範囲を拡大して調査をおこなっていますが、実体の発見には至っていません。以下は、類似した内容の夢を見た職員へのインタビュー記録です。
インタビュー記録XXX-JP-1:
対象: エージェント・ハリー
インタビュアー: 葵博士
記録開始
葵博士: エージェント・ハリー、昨夜見た夢について教えてくれ。
エージェント・ハリー: そうですね、気が付くと草原みたいな場所にいました。そこで男性…の姿をした人に接触しました。
葵博士: 男性か。詳細な外見を。
エージェント・ハリー: 耳が少し長かったり、宝髻をつけてました。後はそうですね。とにかく偉くきれいな服を着ていました。
葵博士: なるほど、続けてくれ。
エージェント・ハリー: そうしたらその男性が自分の方に近づいてきて、僕に何か言たところで目が覚めました。
葵博士: 何か、とは?
エージェント・ハリー: はい、なんと言っていたか、確か
エージェント・ハリー: 汝らの行いたるは、己が使命に反するものなり。だったはずです。
葵博士: その言葉に心当たりは?
エージェント・ハリー: ありません。
後略
終了報告書: その後、夢を見たもう一人のエージェントにもインタビューを行ったところ、声をかけたのが女性であったことを除いて同様の供述をしました。夢で見た女性は回収された人型実体と服装、装飾、顔の作り等の詳細な差異を除いて類似していたと供述しました。
補遺2: 2009/11/30、日本時間午前1時9分に出現したSCP-XXX-JPが金星に接近、物理接触を行いました。接触から13秒後、SCP-XXX-JPはその場から消失しました。 これを受け財団はSCP-XXX-JPが接触したと予測される座標の探査を目的とした探査作戦XXX-JP-1の実行が決定しました。
事案XXX-JP-2: 2010/1/2、探査作戦XXX-JP-1にて初期探査を担当していた衛星ステーション-5内で火災が発生しました。火災は座標25Cから約800万km離れた地点で発生しました。火元は衛星ステーション内に保管されていた食料であることが判明していますが、すべての容器が防火性に優れているにも関わらず炎上しました。また発火した火は23分間に渡って炎上し続けましたが、炎上中衛星ステーション-5内の酸素飽和度及び気圧は変化しませんでした。なお炎上中衛星ステーション内の消火システム及び職員による消火活動が行われましたが、消火には至らず、自然鎮火しました。これを受け探査作戦XXX-JPは中止され、衛星ステーション-5内での事後処理が行われました。乗員にケガはなく、内部も火災による大きな損傷は確認されませんでした。特筆すべき点として火災が発生していた間、乗員全員が、強い空腹感を訴えていました。
補遺3: 2015/█/██、日本時間午前4時30分に出現したSCP-XXX-JPが火星に接近、物理接触を行いました。接触後20秒でSCP-XXX-JPはその場から消失しました。探査作戦XXX-JP-1実行の際に発生した火災の再発が懸念されましたが、初期探査の結果、火災は発生せず予定通り座標に着陸できたことから、探査作戦XXX-JP-2が火星にて実行されました。以下は探査作戦XXX-JP-2の実行中に行われた通信のログ及び記録の抜粋です。
通信ログXXX-JP-A
2016/6/27
付記: このログは調査報告として仮設基地とサイト-8118にある通信部との通話記録です。
記録開始
██隊長: こちらは探査作戦XXX-JP-2遠征隊隊長、██。
黒沢司令官: こちら司令室黒沢。1日目の報告を頼む。
██隊長: まず、座標S19にてSCP-XXX-JPによるものと推測される痕跡を発見しました。
黒沢司令官: 詳細なデータを。
██隊長: 資料にあった通り、全長81.2mの木造船の船底痕に見えます。船の構造は[エージェント・西垣と小声で会話を行う]恐らく屋形船、周囲の地形に変化はありません。ある程度減速し、着陸したと判断できます。
黒沢司令官: なるほど。見たところ蒐集院の文献と一致するな。
██隊長: そしてもう一つ、2つに割れた岩石を発見しましたが…画像を転送します。
黒沢司令官: [画像を確認]これは、人か?
██隊長: 全長は約10cm程と小さいですが、内部に人型の空洞が見受けられました。現時点でそのような実体とは遭遇していません。岩石は調査したところ通常の玄武岩と一致。最大の直径は約18cmです。
黒沢司令官: その岩は今どうなっている?
██隊長: 現在は第2格納庫内に、シートをかけて保管してあります。報告は以上です。
黒沢司令官: ご苦労。こっちでは上記2点の解析を行う、そちらも細心の注意を払って任務にあたってくれ。
██隊長: 了解しました。通信を終わります。
通信ログXXX-JP-B
2016/7/5
記録開始
██隊長 こちらは探査作戦XXX-JP-2遠征隊隊長、██。
黒沢司令官: こちらは司令室黒沢。8日目の報告を頼む。
██隊長 2つほど問題が発生しました。1つは我々が保管していた岩が、何者かによって破壊されていました。
黒沢司令官: 岩って言うと、例の空洞があったものか。何者かによってとはどういうことだ?何か痕跡があったのか?
██隊長: はい。岩の破片には刀傷のようなものが散見され、おそらくはそれで破壊したのだと思います。また岩にあった刀傷と同じものが仮設基地内でも発見されています。
黒沢司令官: 被害状況は?
██隊長: 岩の他に、仮設基地内の壁や床等が被害にあっています。
黒沢司令官: 隊員の誰かがやった可能性は?
██隊長: 仮設基地内に刀のようなものは発見されませんでした。その可能性は…破壊された時刻が不明なので、判断できかねます。これも私の管理体制が杜撰だった故の惨事、申し訳ありません。
黒沢司令官: いや、異常存在の行動を計算に入れていなかった私の責任でもある。ひとまずは監視カメラ等で管理体制を強化する。報告を続けてくれ。
██隊長: もう1つはエージェント・三谷のことでして。
黒沢司令官: 君の顔の傷はエージェント・三谷がつけたのか。
██隊長 はい。塩村医師の診断の結果、一時的なパニック障害とのことでした。現在は精神安定剤の服用により落ち着いています。
黒沢司令官: エージェント・三谷か、彼は宇宙空間での任務を多くこなしていたはず。そんな彼が環境に耐えられなくなったというのも考えにくいな。三谷への事情聴取の方はどうなっている?
██隊長: もう間もなく終了するそうです。どうやら何か見たり聞いたりと異常があったわけではなく、本人自身の劣等感による行動だったと供述しています。
黒沢司令官: 劣等感か。ふむ、やはり不自然な動機とも取れるな。
██隊長: 私の管理不足が原因かもしれません。本当に申し訳ありません。
黒沢司令官: 少し落ち着こう…██君、先ほどから君も少し様子がおかしいぞ。そんなに何度も謝るような人間でもなかったはずだが。
██隊長: すみません。取り乱してしまいました。それで塩村医師からの休務申請はどうなったでしょうか?
黒沢司令官: [診療記録XXX-JP-1を確認]なるほど。██隊長、塩村医師やエージェント・三谷を除く他の隊員の様子はどうだった?
██隊長: 様子ですか?そういえば少し不機嫌そうだった覚えがありますが。
黒沢司令官: やはり、何か精神に影響を受けている可能性があるな。報告は以上か?
██隊長: はい、以上になります。
黒沢司令官: ご苦労。今後の指示を伝える。遠征隊は、遠征艇フォボスに乗り、衛星ステーション-8と合流してくれ。仮設基地は保存処置を施し放棄、合流後遠征隊全員のメディカルチェック及び再編成の準備に入る。それからエージェント・三谷、塩村医師、そして██隊長は薬剤によって休眠された状態で遠征艇に乗ってもらう。
██隊長: なぜそのような措置を?私の指揮がいけなかったのでしょうか?
黒沢司令官: そうではない、だが隊員の様子がおかしいのは明らかであり、それが最も顕著に出ているのは上記の3名であると判断できる。現状より危険な状況になるのを防ぐためだ。わかってくれ。
██隊長 了解、しました。
黒沢司令官: といっても遠征艇に乗る準備は引き続き君が指揮を取ってくれ。全員の乗船が確認したら、眠った君に代わり、██博士に指揮を取ってもらう。私からは以上だ、そちらが何もなければ██博士に代わってくれ。
診療記録-XXX-JP
対象: 三谷一真
担当医師: 塩村一
付記: この記録は通常の治療行為に加え、カウンセリング及び対象への事情聴取を平行して行われた。対象は████23に対して暴行未遂を行った。取り押さえられてから10分程で行動を停止し、精神安定剤の投与及び服用に応じた。服用後効果が出るまで、そして効果が切れる前後のタイミングで自身の手をかきむしる等の自傷行為を行っている。
記録開始:
担当医師: 落ちついたかな。三谷君。
対象: はい、ご迷惑をおかけしました。
担当医師: まぁ大したケガがなくてよかったよ。それでさ、もし三谷君が良ければ、なぜ██さんに殴りかかろうとしたのか、教えてもらえるかな?
対象: ██隊長とは、財団で働くようになってすぐにあった先輩で、結構よく会ってたんですけど。
担当医師: ██さんもよく話してたね。
対象: でも、俺とちょっとしか年が違わないのに、██隊長はメキメキ昇格していって。今回の任務でも隊長を任されるようになって。劣等感ですかね。感じるようになってたんですよ。
担当医師: 君は確か5年前のミッションで、ここより遠い地点でのミッションに参加したそうじゃないか。しかも緊急時には機転を利かせ、被害を縮小させたとか。役職はどうであれ、僕は三谷君も十分すごいと思うけどね。
対象: そんなんじゃダメなんです。もっともっと働いて、██さんを超えないと、でも俺どうしていいかわからなくて、全部ぶっ壊したくなってそれで[自身の両腕をかきむしりだす]
担当医師: 君、人の好意は素直に受け取っておくものだ。そんな言い方はないだろう。…いや、何でもない、落ちつこう。君も腕から血が出ている。
対象: すみません。
担当医師: いやいいんだ、僕も頭に血が昇っていた。コーヒー飲むかい?
対象: ありがとうございます。
担当医師: 劣等感か。普段から貯めこむような気質だったのかな。
対象: 自分ではそんなことはないと思いますが。
担当医師: 特別何か変わったことが起きたわけではないんだよね?
対象: もちろんです。
担当医師: なるほど[記録を取る] まぁひとまずは休息をとることだね。我慢できなくなりそうなら軽い運動を、だがそれも決してやりすぎないように、何かあったらまたここに来るといい、睡眠薬の処方でも相談事でも、僕で良ければ対応しよう。
対象: ありがとうございます。お世話になりました。
担当医師: そのセリフは、任務に復帰してから言ってくれ。
記録終了
長谷川研究員に話を聞いてみたが、対人関係は良好。愚痴を言い合ったりしていたことから、ストレスをため込みすぎる傾向もない。何より仮設基地に来た最初の頃は特に異常もなかった。SCP-XXX-JPの影響かは不明だが、薬も効果があることがわかったので今後の経過観察次第で、早ければ2日後の復帰を視野に入れて治療を行う。妙に気持ちが抑えられずに思わず彼にあたってしまった、何という失態だ、これでは医師失格ではないか
塩村一
映像記録XXX-JP-C
2016/7/6
記録開始
██博士: 全員の乗船を確認、遠征艇フォボスはこれより衛星ステーション-8と合流する。
黒沢司令官: 確認した。
[エージェント・三谷と思われる罵声と、殴打音が記録される]
黒沢司令官: 今の音はなんだ、██博士、状況を報告しろ!
██博士: 眠っていた3人が目を覚まして暴れています。覚醒予定より█時間以上早いです。
[操縦室のドアが開く音が記録される、その後██博士の短いうめき声が記録されて以降、操縦室内で多数の殴打音、奇声等が観測される]
黒沢司令官: 遠征艇、応答せよ!聞こえているかどうかわからんが、全員保身と合流を最優先に行動せよ。モニター、遠征艇の軌道はどうなっている?
司令室オペレーター: 予定より若干軌道から外れていますが、自動操縦は問題なく作動しています。このままいけば合流できます。
[以降、██分に渡って乱闘と思われる音声が記録されました]
エージェント・ウォリック: 司令室、応答を。
黒沢司令官: その声はウォリックか、状況の報告しろ!何があった。
エージェント・ウォリック: 眠っていた3人が目を覚まし、私含めた隊員に攻撃を行いました。
黒沢司令官: 全員無事なのか?
エージェントウォリック: 少なくとも私はなんとか、他の方は不明ですが、現在乱闘は起きていません。
黒沢司令官: わかった、間もなく衛星ステーション-8と合流する。ウォリック、君が操縦してくれ。
エージェント・ウォリック: 了解。
事後報告 遠征艇フォボスはその後衛星ステーション-8との合流に成功しました。乗船していた遠征隊員は1名軽傷、3名重症、2名が死亡しました、軽傷だったエージェント・ウォリックによると、休眠状態のエージェント・三谷、塩村医師、██隊長にが突然暴れ出し、自身を含めた隊員に攻撃したと供述しました。休眠状態にあった三名の職員が攻撃を行った理由は不明です。またエージェント・ウォリック自身もこれ以降の記憶が曖昧で詳細な証言を聞くことができませんでした。探査作戦XXX-JP-2は一時中断され、現在は負傷した隊員の治療及び調査を行っています。
補遺4: 以下は、SCP-XXX-JPと思われるオブジェクトに関する記載がされた、蒐集院の資料を現代語訳したものです。
輝宮夜舟
蒐集物覚書帳目録第六四五番
元慶九年発見(八月十五日に多数の研儀官が発見。その後蒐集に失敗し、その場から消失した。以降目撃されず。)輝宮夜舟は縦二十七丈、横九丈ほどの御座船の姿をしている。姿形は新しく、舟の構造も不審な点はないように見える。船内には畳四十畳程の屋形があり、茅葺屋根に千木、鰹木を上せる。これも外見上普通に見えるが、御簾の向こうにある室内を見ることはできなかった。これは輝宮夜舟の有する幻惑作用が理由であると思われるが、詳しいことは不明である。
輝宮夜には推定八名以上の男女の姿に似たものが乗船している。その姿は異様なまでに整っており、目撃した同士一同も口を揃えて「美しい」と呼称するほどである。衣服も上物を身に着けており、女の姿をするものは全員羽衣を所有している。そのものの中には、神通力を使うものもいる。今回で確認された術は、乗ることのできる雲を生み出し、それに乗る術。対象の心を惑わせ、戦意を喪失させる術。である。また上記の術は特定の個体が用いていたが、複数の存在が浮遊しながら移動していた。各個体がどのような術を使用できるか詳しいことは不明である。
八月十五日、丑の刻に出現した輝宮夜舟は大和国梶原町にある讃岐造邸に接近し、着陸した。その後乗船していたものが讃岐造になよ竹のかぐや姫を出すよう命令した。それから間もなく、蒐集院研儀官九名と暮石中納言率いる武士二十三名が到着し、輝宮夜舟の蒐集に取り掛かったが、前述した術により蒐集に失敗した、かぐや姫は輝宮夜舟に乗船し、十七丈ほど上に飛行し、輝宮夜舟は消失した。
術式展開儀式実行建白書: 元慶九年九月壱日
内容: 輝宮夜舟の確保、蒐集のため、心眼之式第弐型の展開、蒐集院研儀官 海鴉
却下。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘
術式展開儀式実行建白書:元慶九年九月参日
内容: 輝宮夜舟の迎え撃つべく、召喚式第八型「飛藤」の使用及び八幡龍砲の儀3の実行。蒐集院研儀官 須藤
却下。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘
術式展開儀式実行建白書:元慶九年九月六日
輝宮夜舟の影響縮小のため、救抜焔口陀羅尼経に基づく施餓鬼法の実行。蒐集院研儀官 雅牡丹
承認、禁忌に触れぬよう、尽力すること。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘
追伸
輝宮夜舟の蒐集に参加した暮石中納言の配下の武士。東出晴彦というものが、八月十六日の夜。天のお告げを聞いたとして、その調査に向かった。そのものが言うには、夢の中に天の使いが姿を現し、草原の中自身に対し「我々はお前たちが先日行った行為を咎める気はまだない。しかしこれ以上我々に干渉する場合は、それなりの制裁を下すことになる。お前たちが我らの邪魔をしない限り、互いに損はない。励み、憂い、精進せよ」と告げたという。夢に出てきた天の使いなるものは、輝宮夜舟に乗っていたものの外見と類似していたという。これまでに輝宮夜の発見には至っておらず、妖術を行使する多数の存在が確認されていることから。輝宮夜の蒐集は中止することを提案する。蒐集院研儀官 雅牡丹
蒐集院研儀官 雅牡丹の研究の結果24輝宮夜を天部の神々が送りし衆生であると判断し、通達を行うこととする。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘
通達: 元慶九年九月十日日
輝宮夜舟の蒐集、及びそれに類似する行為を禁止する。輝宮夜舟は人智を超えた術の多くを行使しており、我々が蒐集する対象に他ならない、しかしあれは我々の手に余る。現に我々はそれの蒐集に失敗し、野放しにすることを余儀なくされている。不明なことが多い中、これ以上輝宮夜の蒐集を行うことは多くの同士を失い、我々の責務を果たせなくなることに繋がると、協議の結果判断された。だが我々蒐集院十三支令研儀官一同は、あれがこちらから干渉しない限り、安全であるという確信がある。これは多くの資料を吟味して得たものである。万が一輝宮夜舟がまたこちらに干渉してきた場合は、事態の隠蔽に尽力するように。恐れることはない同士諸君。我々は輝宮夜舟の本質を既に理解している。あれは人が既にたどりついている、世界の真実の一つである。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘
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