- SCP-931-JP 野山の幻楽団
- SCP-XXX-JP シノビウタ
- SCP-657-JP 借腹
- SCP-538-JP カドケシ
- SCP-722-JP 戸建て蜘蛛
- SCP-847-JP 蛆沸き沼
- 後で再利用したいもの
アイテム番号: SCP-931-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-931-JPは現在、専用の防音加工が施された、危険生物収容室に収容されています。SCP-931-JPの収容室は二重構造になっており、SCP-931-JPが収容されている第一収容室は、遮音材を用いた厚さ1mの壁に囲われています。内部には等間隔で吸音材としてグラスウールを使用した柱が建てられています。第一収容室の外側に作られた第二収容室には騒音計が等間隔で配置され、内部からの音漏れが無いかを24時間計測しています。
SCP-931-JPの担当職員は、防音対策を徹底することが求められます。勤務中は防音性ヘッドギアを装着し、収容室内にいる間はコミュニケーションには手話を用いて、外部の音を完全に遮断してください。第二収容室では毎日2回、計器の点検を行い、故障が発見された場合は、直ちに交換を行ってください。騒音計によって音漏れが確認された場合、直ちに補修工事が行われます。
SCP-931-JPが新たに発見された場合は機動部隊お-13無音を派遣し、発見された全ての個体を焼却処理してください。都市部に発生し、人間に対して被害が発生した場合はカバーストーリー「カルト組織の無差別テロ」或いは「都市部への猛獣の脱走」を適用し、事態を鎮静化に導いてください。
説明: SCP-931-JPは鳴き声で生物に幻覚を見せるスズムシの仲間です。体長は40~45mm、短翅型で一般的なスズムシとは異なり、数匹から数十匹の群れで行動します。寿命は3年と一般の種より長く、冬の間は倒木や家屋の軒下などで冬眠を行います。
SCP-931-JPは、自然音、人工音の区別なく音を覚え、本物と区別がつかないほど精巧に真似ることができます。覚えられる音は3~4種類ほどで主に大きな音や動物の興奮時の鳴き声を好んで覚えます。この能力はSCP-931-JPが通常の種と異なり、羽化後も後翅を脱落させることがないこと、その後翅が大きく、そして細かく歪んだ形で発達しており、前翅と重ねたり、こすり合わせる角度を少しずつずらすことで、実現できていると考えられています。またSCP-931-JPは仲間内で天敵に効果的だった音を教えあうことが確認されており、3年という長い寿命はこのためだと考えられます。
SCP-931-JPは、外敵に襲われた場合、一定のストレスを感じた場合に上記の鳴き声を発します。SCP-931-JPの鳴き声を聞いて、音から連想されるものを思い浮かべた生き物は、まるで実物が目の前にいるかのような幻覚に襲われます。この幻覚の効果は非常に強力で、最悪の場合、身体に一切の外傷がないにも関わらず、幻覚に襲われる症状のみでショック死を引き起こすことが確認されています。
この幻覚によって生じた、実際には存在しない外傷は記憶処理によって対処が可能ですが、本人が腕を切断されるといった重症を負ったと知覚した場合、実際に腕が切断された状態と変わらないスピードで失血性ショックに似た症状を引き起こすため、早急な対処が必要になります。また、記憶処理を行った場合でも一定の確率で重症部位のマヒなどが発生することが確認されています。
録音されたSCP-931-JPの鳴き声は、録音機器の性能が一定のレベルを超えた時点で同様の異常が発生することが確認されており、SCP-931-JPの鳴き声を録音する場合は意図的に性能の低い録音機器を使用することが推奨されます。
SCP-931-JPは199█年に██県██村の村人が、付近の██町に、村が熊に襲われたと助けを求め、その後外傷が一切ないにも関わらず、ショック死したことが財団の目を引き発見されました。当初、死亡した村人の証言から、SCP-931-JPが異常性を持った熊型オブジェクトだと予想されたため、機動部隊な-20山狩りを派遣しましたが、一人を残して部隊は全滅。生き残った隊員の証言から、SCP-931-JPの特異性と効果的な対策が発見され、機動部隊お-13無音により収容にいたりました。
収容後の実験によってSCP-931-JPの特性は人類の他には哺乳類や鳥類などにも有効に働くことが確認されていますが、魚類や昆虫などには十分な効力を発揮しないため、個体数が大きく増加することはありませんでした。このことが199█年までSCP-931-JPが発見されずにいた要因と考えられています。
生存隊員へのインタビュー記録SCP-931-JP - 日付199█/█/█
<記録開始>
█博士: これからインタビューを開始します。体調のほうはどうですか。隊員: あまり優れません…ですが、死んでいった仲間のためにも休んでいる場合ではありません。
█博士: わかりました。それではお願いします。
隊員: はい、私たちは予定されていた時刻に問題無く██村に到着しました。そして村を数分散策して、まずは村人が全員死亡していることを確認しました。こう言っては失礼だと思いますが、死後に虫や獣に漁られたと思われる傷を除けば、全てが外傷の無い綺麗な死体でした、本当に死んでいるか疑問に思うほどに。ただ、外傷に比べて死体の表情は壮絶で、揃って拷問でも受けたのかと思うほどでした。
█博士: なるほど、██町に逃げ込んだ村人のような有様だったということですか?
隊員: はい、その通りです。しかし、それ以上の発見は何もなかったため、緊張もほぐれて一息ついていたところでした。自分たちが拠点としていた家屋で一人の隊員が、おそらく老朽化していた部分の床板を踏み抜いてしまったんです。その瞬間、その隊員の近くから、獣のうなり声が聞こえ始めたんです。私も、おそらく部隊の仲間も話に聞いていた熊型のオブジェクトが現れたと確信して周囲を見渡しました。すると私たちの目の前に、まるで最初からそこにいたかのように熊の群れが現れたんです。おそらくヒグマだったかと。
█博士: 続けてください。
隊員: 私たちは陣形を組み、すぐに銃撃を開始しました。しかし、床板を踏み抜いた隊員は、残念ながら次の瞬間には熊の群れに囲まれて…幸いにも銃撃に対して耐性のないオブジェクトだったようで、一人が犠牲になっている間に、何頭かを無力化し、その上で家屋から脱出し、██村の広場とでもいうべき場所まで後退することに成功したんです。
█博士: なるほど、銃撃で無力化できるオブジェクトだったと、それなら例えステルス能力による奇襲を考えても、生存人数はもう少し上であるはずです。そのあと何があったんですか?
隊員: はい、突然四方八方から銃声が聞こえました。陣形を組んで戦闘をしていたので仲間の銃撃で無いことは明らかでした。そして私たちを包囲するように大量の浮遊する銃が現れたんです。今考えればおそらく私たちの物と同一の規格の物だったと思います。
█博士: 熊型のオブジェクトばかりでなく、今度は銃型のオブジェクトまで出現したと。
隊員: はい、そのタイミングで隊長は部隊の生存が絶望的だと悟ったのだと思います。即座に情報保持命令を下し、一番機動力のある自分を部隊の全員が盾になって逃がしました。
█博士: そして回収班によって回収され、現在に至ると。
隊員: はい、自分の話しはこれで全てです。それと博士、最後に一つよろしいでしょうか。
█博士: どうしました?
隊員: こんなことを言うのは失礼だとわかっています。ですが、どうかオブジェクトの異常性を明らかにして、安全な収容方法を確立してください。
█博士: 無論です。あなた方の勇気ある行動を無駄にはしません。
隊員: ありがとうございます。
<記録終了>
彼のインタビューを精査してみると、いくつか気になる点があります。まずは熊型オブジェクトと銃型オブジェクトの出現タイミングが共通している点です。隊員の発言によればどちらも音が聞こえた後に実態が出現しています。この二種が別々のオブジェクトで無い限り、ある仮説がたてられます。それは今回のオブジェクトの出現の条件が音を聞いて、その物体を連想したからではないかということです。
そして、彼が一切の負傷無く帰還した点です。いくら隊員を盾にしたところで包囲された状態の銃撃から無傷で生還することは不可能に近いでしょう。彼は音こそ聴いて、銃を連想してしまいましたが、仲間を盾にしたことで自分が傷つくことは連想しなかった。それが彼が生還できた理由ではないかと私は考えます。
以上のことから収容のために次回からは完全な防音を施した機動部隊を使用することを提案します。根拠としてあと一言だけ付け加えさせていただくなら、彼の知識が不足していたため、そのような実体化の形を取ったのでしょう。持ち込まれでもしない限り本州に、それも大量のヒグマはいないはずです。
インタビューの内容と█博士の進言を基に機動部隊が編成され、四度の調査を経てSCP-931-JPを発見、収容に成功しました。
実験記録SCP-931-JP-1 - 日付199█/█/█
対象: D-48952
実施方法: 低品質のボイスレコーダーを持たせたD-48952をSCP-931-JPの収容室に送り込み、SCP-931-JPにストレスを与え、能力のさらなる解明につとめる。
結果: D-48952はアナフィラキシーショックに似た症状によって死亡しているのが発見されました。回収されたボイスレコーダーからは天井を埋め尽くすほどのスズメバチが現れたと悲鳴交じりのD-48952の声と共に蜂のものと思われる羽音が録音されていました。後日、音声を解析したところ、羽音はミツバチのものと判明しました。
分析: 彼は不幸なことにミツバチの羽音からスズメバチを連想してしまったために、妄想の中で襲われ、アナフィラキシーショックを起こしたものと考えられます。SCP-931-JPの特性は聴いた音声そのものでは無く、音声を聴いたものが何を連想するかが重要なようです。
実験記録SCP-931-JP-2 - 日付199█/█/██
対象: D-46570
実施方法: 軽度の学習障害をもつDクラス職員を収容室に送り込み、同一条件で実験結果に変化が起こるか観察する。
結果: D-46570は定められた時刻に収容室から無傷の状態で脱出しました。実験後のインタビューでは、いくつか耳障りな音が聞こえたが、その場には鈴虫しかいなかったため、特に気にしなかったと話しています。
分析: 今回の実験において彼のずぶとさが彼自身を救う大きなきっかけになったようです。SCP-931-JPの鳴き声を聞いても連想さえしなければ特異性の発生にはいたらないことがわかりました。
実験記録SCP-931-JP-3 - 日付199█/█/██
対象: D-46842
実施方法: SCP-931-JPが他にどのような音を覚えているかを同一条件で調査する、D-46842には事前に、部屋の中にはスズムシの他にミツバチとクマを収容していると伝えている。
結果: D-46842は収容室内で死亡しているのが発見されました。ボイスレコーダーには前述の音の他に、大きな爆発音が録音されており、これが原因と考えられます。
分析: 爆発音の再現すら可能であることが判明しました。しかし、人間以外の多くの生物にとって爆発音というものは驚き、警戒することはあるにせよ、慣れてしまえば効果は無くなる物のはずです。SCP-931-JPがいつの時代から存在していたかはわかりませんが、この結果にはどこか違和感を感じます。
追記SCP-931-JP - 日付199█/██/█
実験を繰り返すに連れて、SCP-931-JPが記憶できる音声は3種類、優秀な個体でも4種類が限界であることが判明しました。そして、天敵になりうる生物に効果的だった音を優先し、それ以外を忘れていくことも判明しました。
だからこそ私は実験SCP-931-JP-3に違和感を感じたのでしょう。██村で起こった事件以前には、人間は仮想の天敵として、存在しえなかったはずなのです。だというのに、SCP-931-JPは機動部隊に熊の音声が効果が無いと理解するや、まるで最初から覚えていたように銃声を発してみせました。
それに加え、██県██村付近は鉱石の産出地域でも無ければ、石材の加工地域でもありません。SCP-931-JPが自然に爆発物の音を記憶することができる可能性は低いはずです。以上のことから、SCP-931-JPは、人間の手によって創られた、もしくは学習された生物であり、都市に放ち、多くの住民を殺害するための生物兵器ではないかと私は予想します。
上記の理由から早急にSCP-931-JP収容地域一帯の調査を提案します。█博士
調査報告SCP-931-JP - 日付200█/█/█
█博士の進言を受けてSCP-931-JP収容地域一帯を調査していたエージェントによって自然発生した洞窟内部に隠された地下施設が発見されました。
内部からは大量の人骨とSCP-931-JPと思われる死骸がいくつか、そしてダイナマイトと1,900年代製の歩兵銃が発見されました。人骨の大多数は大型の檻に閉じ込められており、身に着けていた物も麻布程度で人体実験に用いられた形跡が見受けられます。残りの人骨は大日本帝国陸軍の軍服を纏っていた形跡があることから、この施設は大日本帝国陸軍特別医療部隊の実験場であり、何らかの事故によって内部の人間が全滅し、その後にSCP-931-JPが脱走したものと考えられます。
そのため、現在収容されているSCP-931-JPを除いて、未収容のSCP-931-JPの個体数は少ないこと、SCP-931-JPを用いた大都市へのテロ活動などの確率は極めて低いものと予想されます。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPの担当に割り当てられた職員は、防音装備の上、サーモグラフィーなどの機器を用いて、SCP-XXX-JP-1の捜索を行ってください。また、SCP-XXX-JP-1と面会した可能性のある人間に対しては、速やかな記憶処理を行ってください。SCP-XXX-JPの拡大対策として、定期的にテレビ、インターネット、書籍などの情報媒体を通して、統制情報「実録、忍者の真実」をその都度、形を変えて発信することが望まれます。
説明: SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JP-1によって伝授される、17~17.5kHz1 で歌うことで、歌唱者に異常性を与える抒情歌です。
SCP-XXX-JPが与える異常性は、大きく分けて二つに分類されます。第一の異常性は、歌唱者が発した歌声を耳にした生物に対して発揮されます。曝露者は歌声以外の五感による歌い手の感知が一切不能になります。この不可視の状態は歌唱者の衣類や所持品にも適用され、歌唱者の肌に直接触れているもの、歌唱者の3cm以内に存在する、おおよそ30cm未満であるか、10kg未満のものであることのいずれかの条件を達成した所持品も同様に不可視化することが、後述の事案SCP-XXX-JPから判明しています。
SCP-XXX-JPによる、不可視の状態は、歌声を聞かないことで対策が可能ですが、SCP-XXX-JPが歌唱される状況が、異常性を発揮する周波数である、17~17.5kHzであることが大半を占めるため、事前に気づくことが出来る人間は限られます。また、SCP-XXX-JPの異常性は録音や、機械類を通した歌声でも発揮され、歌い手を不可視の状態へと移行させます。
後述の事案によって、行われた、調査によって、歌唱者はサーモグラフィー等の機器には検知されていること、音声を除いた監視カメラなどの映像には歌唱者が表示されていることなどから、SCP-XXX-JPの第一の異常性は生物に対する認識の妨害であると予測されています。
SCP-XXX-JPの第二の異常性は、歌い手によって歌われた、SCP-XXX-JPが物体に反響し、さらに歌い手に反響することで発揮されます。歌い手が反響した物体に対して、自重を除いた、20J以上の運動エネルギーを加えた、もしくは加わった場合、歌い手の身体と物体が粒子レベルで同一化します。
この同一化は運動エネルギーが加わった範囲によって変化し、腕の一部にエネルギーが加わった場合は腕の一部が、全身にエネルギーが加わるのであれば全身が同一化し、対象は物体を通り抜けることが可能になります。物体への運動エネルギーの発生が終了した瞬間に同一化現象も収束し、歌唱者の身体は元に戻ります。
SCP-XXX-JP-1は、全身黒色で体長55cm程のハシブトガラスに酷似する鳥類です。SCP-XXX-JP-1は常に日本全国をSCP-XXX-JPを歌唱しながら、不規則に飛び回っており、その歌声に気づき、問いかけた人間に対して、姿を現し人語で積極的にコミュニケーションを取ろうとします。SCP-XXX-JP-1の姿を目撃した人間は一様に黒色の大きな雀であったと回答しているため、SCP-XXX-JP-1自身にも目撃者の認識を汚染する異常性があると予想されます。
SCP-XXX-JP-1に問いかけた人間が、会話に応じた場合、SCP-XXX-JP-1は、自分の歌に気づいた人間には、忍者になる才能があること、このまま自分の下で教えを乞えば、自由自在に姿を消せる忍者になれるということ、ただし、一人前になるまで誰にも会えなくなり、もちろん両親とも長い間会えなくなるといった内容を話します。
SCP-XXX-JPの特性上、歌声に気づくことが出来る人間の大半は20代未満の人間であるため、多くの場合、上記の制約を理由にこの申し出を断りますが、この問いかけに応じた場合、会話をしていた人間は、翌日までに必ず、失踪します。失踪した人間は現在に至るまで、一度も発見されていません。問いかけに応じなかった場合、会話の礼をして、そのまま飛び立ち姿を晦まします。
SCP-XXX-JPの存在を財団が認知したのは、19██年に起こった、サイト-████への侵入事件です。当時、サイト-████に所属する、セキュリティクリアランス3以上の人間のみで行われていた会議の中に、突如として、近隣の町で、数日前から行方不明になっていた、少年が出現し、一般人に会議の内容が流出するという事態が起こりました。
少年の出現まで警備員が誰一人、少年に気づかなかったことや監視機材にも一切の反応が起こらなかったことで、出現当初は新たな収容オブジェクトの可能性を考慮して、少年をサイト-████内で保護していましたが、後に行われたインタビューによって、少年がSCP-XXX-JPの異常性を一人では発揮できなかったことに加え、SCP-XXX-JP及びSCP-XXX-JP-1の存在が判明したため、記憶処理の後、カバーストーリー「迷子の発見」を流布し、少年を解放しました。
インタビュー記録XXX-JP - 日付19██/█/█
<記録開始>
██博士: それじゃあ、██君が見たことを話してくれるかい。少年: わかった、えっと、スズメさんに会ったときのことだよね。
██博士: ああ、そのときの話を聞かせてほしいんだ。
少年: スズメさんに会った日は、いつもの時間にお布団に入って寝ようとしてたんだけど、そのときに外のほうからお歌が聞こえてきたんだ。
██博士: 歌?██君が知っている歌だったのかい。
少年: ううん、しんがり~とか、おおみや~とか聞いたことない言葉ばっかり使ったお歌だった。
██博士: なるほど、それからどうしたんだい。
少年: うん、窓を開いてだれかいるの?って聞いてみた。そしたら、僕の歌が聞こえるのかいって電線の上にスズメさんが出てきたんだ。
██博士: 出てきた?最初からいたんじゃなくて?
少年: うん、手品みたいにぱって出てきた。それでね、スズメさんが、僕の歌が聞こえる子は才能がある。君が望むなら、君のことを忍者にしてあげるっていったの。
██博士: じゃあ、君は忍者になるための修行か何かでここに来たのかい?
少年: ううん、忍者になるには、スズメさんと一緒にいかなきゃいけなくて、忍者になれるまで、誰とも会えなくなるよって言われたから、ごめんねしたの。
██博士: それなら、君はどうしてここに来たんだい?
少年: 僕がスズメさんに忍者にはなれないけど、忍者を知りたいってわがままを言ったんだ。そしたらスズメさんが、それなら特別に君が行きたい場所、あんまり遠いと駄目だけど、日本の中ならどんな場所にでも連れてってあげるって話してくれたんだ。
██博士: 君はどこに行きたいって答えたんだい?
少年: 笑わない?
██博士: もちろん。
少年: ちょっと前にお父さんに見せてもらった、スパイってお仕事の人が出てくる映画がとっても面白くて、だから秘密結社に行きたいってスズメさんに話したの。
██博士: なるほど、それで君はここに来たわけだね。それじゃあ、一つ質問なんだけど、ここの施設って塀も高いし、入り口には人が立っていたよね、その人に気づかれずにどうやって入ったんだい?
少年: えっと、スズメさんの真似をして一緒にお歌を歌ったの、そしたらね、誰からも見えなくなるし、少し力を入れれば壁も通れたの、それでここを見て回った後に、ありがとうって言って、スズメさんとお別れしたの
██博士: 対象の不可視化に、対象、物体お互いに損傷を与えない貫通現象だと。そ、それじゃあ██君、お歌を歌っているときに、壁を通り抜ける時や、地面に何か変な感じは無かったかい?
少年: うーんとね、みんなゼリーみたいだった。
██博士: ゼリーみたい?
少年: うん、プルプルしてて、すぐ壊れちゃいそうな感じだった。それでね、歩くときは、抜き足、差し足、忍び足だよってスズメさんに言われたよ。
██博士: なるほど、それじゃあ、最後の質問になるけど、██君が言ってる、スズメさんって言うのは、私からすると色も大きさもカラスだと思うのだけど、本当にスズメさんだったのかい?
少年: うん、カラスに似てたけど絶対スズメさんだった。
██博士: ██君、今日はありがとう。後でもう一度、今日の話を聞きに来るかもしれないけどいいかい?
少年: うん、大丈夫。
<記録終了>
20██年、日本滞在中に失踪し、現在も失踪中である、当時█才のアメリカ人少年が残した、日記の抜粋です。
「パパとママへ、昨日の夜、いつもみたいにベッドに入ろうとしたら、不思議な歌が聞こえてきたんだ。もっとよく聞こうと窓を開けて、音の聞こえるほうを眺めていたら、僕の歌が聞こえるのかいって、いつの間にか、電線の上に一匹の鳥が止まっていたんだ。それで、その鳥が自分は忍者を育てている先生で、自分の弟子になれば、いつか必ず忍者になれるって、話してくれたんだ。パパとママは、僕がいつも、将来、忍者ヒーローになりたいって言っても笑わずに応援してくれたよね。だから立派な忍者になるために先生の下で修行してきます。次に会うときはパパやママ、友達みんなを守れる正義の味方になって帰ってくるよ。」
この日記の抜粋とSCP-XXX-JP-1の関与が疑われる、日本国内の外国人児童の失踪件数の増加が論点となり、現在の諸外国に対する、忍者のイメージを改めぬ限り、今後も失踪事件が起こり続けると結論付けられました。そのため実際の忍者は黒装束を着込んだ暗殺者などではなく、伝令役に過ぎなかったなどといった情報を盛り込んだ、対外国人向け統制情報「実録、忍者の真実」を情報メディアに定期的に発信する、現在の収容プロトコルが作成されました。
SCP-657-JP |
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アイテム番号: SCP-657-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-657-JPの生息地であるサイト-8157は、天然記念物の保護区という名目で財団の管理下におかれています。SCP-657-JP、SCP-657-JP-1の脱走を防ぐために、サイト-8157は周囲を地下1m、地上3mのコンクリート製の壁で覆われ、上部には屋根が張り巡らせてあります。また、サイト内に元々あった川は埋められ、人工の水場が作られています。
SCP-657-JPの収容担当スタッフは女性、または生殖機能を喪失した男性スタッフに限定されます。サイト-8157には警備員を常駐させ、付近に観光客が迷い込まないように監視をしてください。観光客が迷い込んでしまった際には立ち入り禁止区域であることを伝え、本来の観光コースまで誘導してください。また付近に迷い込んでしまった観光客に男性が含まれる場合、感染症の検査を名目SCP-657-JP-1に変化していないかを財団が管理している病院で調べてください。検査の結果、SCP-657-JP-1に変化していた男性がいた場合、同行者全員に記憶処理を行い、カバーストーリー「末期の精巣癌」を流布して入院させた後、精巣摘出手術を行って解放してください。
サイト-8157外でSCP-657-JPやSCP-657-JP-1に変化した人間以外の生物を発見した場合は速やかに焼却処分を行い、付近を封鎖した後に、職員によって新たなSCP-657-JPが発生していないか捜索を行ってください。
説明: SCP-657-JPは██県██山麓の███森にのみ生息するトビズムカデの亜種です。SCP-657-JPは生命の危機に瀕した際、顎肢から毒を分泌し、襲い掛かります。
SCP-657-JPの毒に侵された昆虫、植物以外の生物の雄はSCP-657-JP-1に指定されます。SCP-657-JP-1の精巣から生成される精子はSCP-657-JPのDNAと同一のものになります。SCP-657-JP-1と交配を行った雌はSCP-657-JP-2に指定され、SCP-657-JP-2から生まれるSCP-657-JPは本来、生まれてくるはずの子供と同等のサイズのSCP-657-JPになります。
SCP-657-JPはSCP-657-JPは200█年█月█日に██県、██市の産婦人科からの「妊婦が巨大なムカデを生んだ」という同市の警察署への通報が財団の目を引き、付近の職員が調査に向かったところ、看護師の機転により劇薬で死亡した全長1mの個体が発見されました。この事件で妊婦と妊婦の夫に身体検査を実施したところ、夫の精子のDNAが変質し、トビズムカデのものと90%一致していたため、インタビューを行いました。インタビューの結果、彼は一年ほど前にバードウォッチングで██山地を訪れ、その帰りに麓の森で道に迷った際に、ムカデに足を噛まれたと証言しており、妻との性交渉は後日に行ったと話しています。このインタビューの後、綿密な検査の上で他に異常性が見られなかったため、夫婦と産婦人科の職員に対し記憶処理を施した上で、カバーストーリー「流産」「末期の精巣癌」を流布し、男性の精巣の全摘出手術を行って解放しました。
財団は前述のインタビューを元に██山地の███森一帯に、女性のみで編成された機動部隊と-8"森華"を派遣し、一年間調査を行ったところ、███森を中心に半径██キロメートルの昆虫と植物以外の生物の雄の七割が、SCP-657-JP-1へと変化しており、発見されたSCP-657-JP数は█████匹に上り、そこから予想される総数は少なく見積もって██████匹に上ると考えられます。調査後、財団はこの一帯を封鎖し、現在の収容プロトコルを確立、発見されたSCP-657-JPとSCP-657-JP-1は研究サンプルとして数匹を確保し、残りは焼却処分が行われました。
実験記録657-JP-1 - 日付200█/██/20
対象: SCP-657-JP
実施方法: SCP-657-JPが生物をどのようにSCP-657-JP-1に変化させるのかを確かめる。
SCP-657-JPと雄のマウスをプラスチックケースの中に入れて観察を開始。結果:実験開始から8分後にマウスがSCP-657-JPに捕食目的で襲い掛かり、
それに応戦する形でSCP-657-JPが顎肢から毒を分泌してマウスの首に毒を
注入した。その後SCP-657-JPはマウスに捕食された。
実験後の検査でマウスがSCP-657-JP-1に変化していることが確認された。分析: SCP-657-JPがマウスに襲われるまで、マウスに興味は示さなかった。
SCP-657-JPは生命の危機に瀕したときのみ毒を使うのではないだろうか。
実験記録657-JP-2 - 日付200█/██/31
対象: SCP-657-JP-1
実施方法: 一度に複数の子供を生む生物の卵子が全てSCP-657-JPに変化するのか確かめる。
実験記録SCP-657-JP-1でSCP-657-JP-1に変化したマウスを使って雌のマウスをSCP-657-JP-2に変化させる。結果: SCP-657-JP-2の5つの受精卵から5匹のSCP-657-JPが生まれた。
分析: この実験で一度SCP-657-JP-1に変化してしまった生物は二度と子孫を残せなくなることが判明した。
実験記録657-JP-3 - 日付200█/█/10
対象: SCP-657-JP
実施方法: SCP-657-JPの耐久実験
圧迫、熱、冷却、劇薬に対する耐性を確かめる。結果: 全ての実験でSCP-657-JPは同サイズのトビズムカデ程度の耐久力しか持たないことが確認され、
遺伝子情報を除いて体組織、体構造では通常のトビズムカデとなんら変わりないことが判明しました。分析: この実験結果から、もしもSCP-657-JPが脱走した場合でも、数匹の脱走であれば、女性職員の力で十分に駆除が可能なことが判明した。また、SCP-657-JPの異常性が生物としての進化の結果である可能性が高まった。
実験記録657-JP-4 - 日付200█/█/15
対象: SCP-657-JP-1に変化した雄のフナとフナの卵
実施方法: SCP-657-JP-1の精子が体外受精にも効果があるかを確かめる。
結果: 全ての卵からSCP657-JPが生まれた。
分析: 卵生や胎生、体外受精によって結果が異なることは無いようだ。受精が成功した時点で卵子の中身がSCP-657-JPに変わるらしい。
実験記録657-JP-5 - 日付200█/█/24
対象: SCP-657-JP-1に変化した雄のフナとサケの卵
実施方法: SCP-657-JPの異常性が別種による交配の場合でも、発生するかを確かめる。
結果: 全ての卵からSCP657-JPが生まれた。
分析: 恐れていた結果が出てしまった。受精する。この結果さえあればSCP-657-JPはどんな種、どんな生き物との交雑でも生まれてくる。SCP-657-JPを絶対に水場には近づけるな。水中の生き物が一匹でもSCP-657-JP-1に変化したら、取り返しがつかなくなる。精子が水の流れに乗って、様々な生き物の腹を借りながら、世界中に拡散することになりかねん。そうなってしまったら、おしまいだ。百年もすれば地球は昆虫と植物の星に生まれ変わるだろう。
補遺: 現在、実験によって判明したSCP-657-JPの危険性を考慮して、実験用のサンプルを回収後、サイト-8157内の残りのSCP-657-JPとSCP-657-JP-1を焼却処理するべきか担当職員内で審議中です。
アイテム番号: SCP-538-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-538-JPは財団所有の4重のパスワードでロックされた、地下保管庫に収容されています。保管庫内部は球体型で中央の楕円型のプラスチックケースにSCP-538-JPが収容されています。
説明: SCP-538-JPは、異常な性質を持つ、製作者不明の消しゴムです。SCP-538-JPの特異性は、物理的、もしくは概念的にカドと認識されるものをもつ対象に、通常の消しゴムと同様に使用者が手に持ち、こすり合わせるように使用することで発揮されます。SCP-538-JPを上記の物体に使用した場合、物体の持つカドは消失、もしくは、丸みを帯びた形に加工されることで無くなります。対象が複数のカドを持っていた場合は、ランダムに効果の対象の数と規模が決定されることが実験によって判明しています。この際、使用者には何の影響も起こらないことが実験で判明しています。またいくら使用してもSCP-538-JPの体積に変化は起こりません。SCP-538-JPは200█年に店内の物体に角が無い駄菓子屋がある、という噂を聞きつけたエージェントによって発見されました。駄菓子屋とSCP-538-JPの関係性を確かめるために店主に対してインタビューを行ったところ有益な情報が得られたため、記憶処理を施した後、カバーストーリー、「店主の趣味」を地域一体に流布し、解放しました。
インタビュー記録538-JP - 日付200█/█/█
<記録開始>
江ノ島博士 これからインタビューをはじめたいと思います。よろしくお願いします。駄菓子屋店主 ああ、よろしく頼むよ。
江ノ島博士 それでは、まず始めに██さんが、この異常な性質を持つ消しゴムを入手した経緯を説明していただけますか?
駄菓子屋店主 もらったんだ。
江ノ島博士 もらった?一体誰に?
駄菓子屋店主 2、3年前からうちを贔屓にしてくれている客からもらったんだよ。その男とは店で軽い雑談を続けるうちに、意気投合して、俺の妻が昔、高所の品出しの作業中に落下して、助かるはずの高さだったのに運悪く棚の角に頭をぶつけてしまって死んでしまったことを話したんだ。
江ノ島博士 それは、ご愁傷様です。
駄菓子屋店主 そして、俺はそのことを今でも後悔しているし、物のカドなんて二度と見たくないんだと男に話したんだ。すると、男はそうだったのか、それなら力になれるかもしれない、と言うと次の日にあの消しゴムを俺にくれたんだ。それっきり男は現れなくなった。
江ノ島博士 あなたが望んだから、男が答えたというわけですか。
駄菓子屋店主 ああ、あとはあなた方の知る通りさ、俺は目に入るもののカドを片っ端から消していった。それだけさ。
江ノ島博士 ありがとうございます。これでインタビューを終了します。
実験記録538-JP-1 - 日付200█/█/█
対象: A4用紙にコピーした記号の四角
実施方法: 四角の記号に触れないよう、A4用紙にSCP-538-JPを使用し、その変化を観察する。
結果: 四角のカドが加工されて、円形となりました。
分析: おおよそ予想通り綺麗にカドのみを削っていったな、注目すべきは四角には一切触れていなかったのに四角が加工された点だ。
実験記録538-JP-2 - 日付200█/█/█
対象: A4用紙にコピーした漢字の「日」
実施方法: 漢字の「日」に触れないよう、A4用紙にSCP-XXX-JPを使用し、その変化を観察する。
結果: A4用紙が楕円に変形し、漢字の「日」も直線の引かれた楕円に変形しました。
分析: 実験記録538-JP-1の実験結果も鑑みた結果、対象が複数のカドを持っていた場合、消失、加工されるカドの数はランダムに決定されるらしいな。
実験記録538-JP-3 - 日付200█/█/█
対象: ミニサボテン
実施方法: ミニサボテンの棘に押し付ける形でSCP-538-JPを使用し、その変化を観察する。
結果: ミニサボテンの細胞壁が全て円形に変形し、形状を保てなくなったミニサボテンはゲル状に崩れました。
分析: 棘をカドとして消失させるものかと思ったが、なるほどそっちもカドと認識するのか。
実験記録538-JP-4 - 日付200█/█/█
対象: D-63872
実施方法: D-63872の頬に押し付ける形でSCP-538-JPを使用し、その変化を観察する。
結果: D-63872の本名が█角 ██から、█ ██に改変されました。この変化は戸籍から健康保険証にいたるまで全ての情報に起こっています。
分析: SCP-538-JPの能力が名前という情報にも及ぶことがわかったのは大きな収穫だろう。
実験記録538-JP-5 - 日付200█/█/█
対象: D-63872
実施方法: 前回と同じ条件でD-63872に対してSCP-538-JPを使用し、その変化を観察する。
結果: 実験後、職員への接し方や生活態度に大きな改善が見られました。
分析: どうやらSCP-538-JPの能力によって角の立たない、丸い性格に改変したらしい。SCP-538-JPの特性は性格という概念にすら影響する上、日本語に対する理解も感じられる。今後、他の言語に対する理解もあるかどうか実験してみるべきだろう。
実験記録538-JP-6 - 日付200█/█/█
対象: D-63872
実施方法: 前回と同じ条件でD-63872に三度SCP-538-JPを使用し、その変化を観察する。
結果: 体内のカルシウム同士の接合部に変化が起こり、[編集済]
分析: 人間が体内のカドを失うとこうなるのか、これ以上人間を使った実験は不要だな。
実験記録538-JP-7 - 日付200█/█/█
対象: 財団所有の廃病院の曲がりカド
実施方法: 廃病院の曲がり角に対してSCP-538-JPを使用し、その変化を観察する。
結果: 重要な柱と建造物の外壁を除く、病院内部の全ての壁が消失しました。
分析: 曲がり角を消失させるために、屋内全てを一部屋にまとめるとはな。念のため、実験場所を移しておいて正解だった。
補遺: SCP-538-JPにはまだ隠された特性があるかもしれない。製作者と思われる、店主に接触した男のすみやかな確保を最優先事項とする。
インタビュー終了直前 駄菓子屋店主からSCP-538-JPに関する、有益な証言を得られました。
駄菓子屋店主 あー、ちょっと待ってもらってもいいか。
江ノ島博士 どうかしましたか。
駄菓子屋店主 そういえば、あの男に床や地面にだけは何があっても使うなって言われてたことを思い出してな。あんたらにも伝えておいたほうがいいことだろ。
江ノ島博士 なるほど、そうか。ありがとうございます。以降の実験の参考にさせていただきます。
<記録終了>
SCP-XXX-JP-1 |
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アイテム番号: SCP-722-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-722-JP-1が発見された場合はカバーストーリー「爆破テロ予告」によって1km四方のエリアを封鎖し、直ちに財団職員を配置してください。その後、爆薬を括りつけたDクラス職員をSCP-722-JP-1に向かわせ、SCP-722-JPに襲われたことが確認され次第、爆薬を起爆させ、無力化してください。作戦終了後に発見されたSCP-722-JP-1は周囲の壁ごと破壊し、元の壁に戻すことで、再度利用されることをを防いでください。なお、この作業はSCP-722-JPの被害を防ぐために必ず二人以上の作業員で作業してください。SCP-722-JPが原因で建造物の倒壊事故が発生した場合、カバーストーリー「経年劣化による痛ましい事故」によって、事態を収束に導いてください。
説明: SCP-722-JPは人間を捕食することに特化したトタテグモの仲間です。SCP-722-JPは普段は土中を掘り進めながら生活しており、この過程で毒腺から分泌される毒液により、主にカルシウムや鉄などを液体に変化させ、それを消化吸収し、栄養の一部としています。この生態により、SCP-722-JPはコンクリートが埋め込まれた現代の土中なども自由に掘り進めることができます。またキチン質の外骨格に加えて節足動物にはありえないカルシウムで構成された内骨格も有しており、全長1m~2mという規格外の大きさを実現しています。SCP-722-JPの最大の特徴は、土中で入手することが難しいタンパク質の確保のために、巣穴の入り口に日本社会で広く用いられる開き戸に良く似た扉(以後SCP-722-JP-1と呼称)を作ることです。
SCP-722-JP-1の多くは、地下鉄やトンネルなどの横壁が地面と接しており、時間帯によって利用者の数が大きく増減する場所に制作されます。SCP-722-JPは地面に伝わる振動の数からSCP-722-JP-1作りに適した場所を見つけ、物音が完全に消え去ったことを確認するとSCP-722-JPは穴を壁の裏側まで掘り進め、SCP-722-JP-1を扉として機能するように壁をくり貫き始めます。そしてその作業が終わるとSCP-722-JP-1を開き、その外側を足に生えた細かい毛で磨き始め、光沢をつけます。最後に食道の直下に蓄えられている分泌液で液体化させた鉄を取っ手として球状や棒状に再加工し、取り付けることでSCP-722-JP-1は完成します。
完成後はSCP-722-JP-1の半径3m以内に獲物が入ってくる、SCP-722-JP-1の半径50m以内から獲物以外の物音が聞こえないという二つの条件がそろうまでSCP-722-JPは巣穴の中で待機を続け、条件が揃った瞬間にSCP-722-JP-1から飛び出し、獲物を巣穴の中に引きずり込み捕食します。この捕食行動によってSCP-722-JP-1は開かれますが、SCP-722-JP-1は全て、外開きとして機能する形になっているため、内側がSCP-722-JPの脚の一本と糸で繋がれていることで、巣穴に戻った瞬間に閉じられます。SCP-722-JP-1はSCP-722-JPの捕食時以外は開かれることはありません。使用中のSCP-722-JP-1以外はSCP-722-JPの糸によって内側から押さえつけられているため、人間の力でSCP-722-JP-1を開くことは適わず、重機による強引な開放や隣接する壁の破壊などは全てSCP-722-JPの巣穴の奥への逃亡という結果に終わりました。またSCP-722-JP-1内部への侵入に成功した場合もSCP-722-JPにより巣穴の天井を崩され、調査不能という結果に終わります。これまでのSCP-722-JPの生態から、事前に機動部隊を待機させる案が発案され、実行に移されましたが、機動部隊の呼吸音や衣擦れの音を察知され、失敗に終わっています。
財団がSCP-722-JPの存在を初めて確認したのは、200█年月██日、██県の█市の学校を中心に広がっていた、██トンネルの開かずの扉の怪談を調査していたときです。この怪談の実態の調査に向かっていた調査員が失踪、トンネル内にカメラを設置し、Dクラスを用いて再度調査をしたところSCP-722-JP-1に引き込まれるDクラスとSCP-722-JPをカメラが撮影したため発見されました。SCP-722-JPは初期段階では実験のために捕獲作戦が取られていましたが、獲物が一人にならないと顔を出さない慎重さと逃亡能力の高さから、生きたままのサンプルの入手は困難と結論付けられたことに加え、その生態ゆえに、トンネルや建物の基礎を食い荒らし、倒壊事故へと発展させるため、実験結果を元に現在の無力化作戦が取られています。20██年現在、発見されたSCP-722-JP-1は本州で██ヶ所に上り、そこから予想されるSCP-722-JPの総数は最低でも████匹と考えられます。
実験記録722-JP-1 - 日付200█/█/█
対象: 柴犬
実施方法: SCP-722-JPが人類以外を捕食対象とみなすのかの実験、柴犬をトンネル内に向かわせ様子を見る。
結果: SCP-722-JPは柴犬に興味を示しませんでした。
分析: SCP-722-JPは対象の出す物音によって獲物かどうかを見極めているのかもしれない、次の実験ではもっと人間の体重に近い動物を使用するべきだ。
実験記録722-JP-2 - 日付200█/█/█
対象: ニホンジカ
実施方法: SCP-722-JPが人類以外を捕食対象とみなすのかの実験、ニホンジカをトンネル内に追い込み様子を見る。
結果: SCP-722-JPはニホンジカに興味を示しませんでした。
分析: 対象の体重は関係ないようだ、SCP-722-JPは何らかの方法によって捕食対象を判別しているらしい。
実験記録722-JP-3 - 日付200█/█/█
対象: チンパンジー
実施方法: SCP-722-JPが人類の近縁種を捕食対象とみなすかの実験、チンパンジーをトンネル内に追い込み様子を見る。
結果: SCP-722-JPはチンパンジーに興味を示しませんでした。
分析: あくまで標的は人間らしい。彼らの進化は人類を捕食するという一点において最善の選択をしてきたようだ。今後の実験はSCP-722-JPの無力化に重点を置くことにする。
実験記録722-JP-4 - 日付200█/█/█
対象: D-42351
実施方法: D-42351にカメラ付発信機と自動小銃を持たせ、SCP-722-JPの戦闘能力とSCP-722-JP内部の規模を記録する。
結果: 自動小銃はSCP-722-JPの外骨格を傷つけることは出来ず、D-42351は捕食されました。また最終的にGPSはSCP-722-JP-1から██km先を指し、カメラには█匹のSCP-722-JPが写し出されました。
分析: 自動小銃程度では歯が立たないようだ。SCP-722-JPは獲物が一人きりにならないと顔を出さない、しかし人一人の力ではSCP-722-JPの瞬発力と防御力の前ではなす術がないだろう。人間一人でSCP-722-JPを無力化する方法はないだろうか。そして今回の映像でSCP-722-JPは一つの巣穴を複数の固体で使用している可能性が高まった。SCP-722-JPを無力化すると共にSCP-722-JP-1も無力化する方法を考えなければいけない。
実験記録722-JP-5 - 日付200█/█/█
対象: D-62378
実施方法: D-62378には中身を知らせず爆薬の入ったリュックを持たせ、SCP-722-JPの無力化を図る。
結果: SCP-722-JPの無力化に成功しました。しかし、同時に巣穴内部の天井を別固体に崩されたことによって、内部の調査にはいたりませんでした。
分析: 無力化には成功した。しかし一匹のSCP-722-JPを無力化するのに毎回Dクラス職員を消費するわけにはいかないだろう。もっと効率的な無力化の方法を探すこととする。また別固体によるSCP-722-JP-1の再利用を防ぐために、SCP-722-JP-1を溶接し、扉としての機能を無くすべきだ。
収容以前に撮影されたSCP-XXX-JP |
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アイテム番号: SCP-847-JP
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-847-JPは、新たに水質調査の名目で収容サイトを建造し、その内部で管理されます。収容サイト内では防護服を着用し、入室、退室の際は熱風と薬品による、殺菌消毒が行われます。SCP-847-JPが新たに発生した場合は、付近一帯を封鎖し、生態系の調査の名目で、SCP-847-JPに寄生された生物がいないか、捜索を行ってください。この調査によって発見された宿主は、人間を除いて全て焼却処分を行ってください。人間の場合は、確保の後、財団の管理下にある病院でSCP-847-JP-1を摘出し、本人と家族にカバーストーリー「感染症による消化器不良」を流布し、解放してください。
説明: SCP-847-JPはSCP-847-JP-1の生息する水場の総称です。SCP-847-JP-1は分類上はニクバエの仲間と考えられる蛆虫です。SCP-847-JPは成虫の姿に変わることは無く、その一生を蛆虫の姿で過ごします。また、一般的な蛆虫とは異なり、雑食性で区別無く、有機物を栄養素として消化、吸収することが出来ます。全長は0.1~1mmと小さく、注意して観察を行わない限り、肉眼で捉えることは困難です。SCP-847-JP-1の環境適応能力は高く、湖沼、ため池、用水路など、水の流れの無い、または非常にゆるい淡水域ならどこにでも適応し、繁殖することが可能です。
SCP-847-JP-1の最大の特徴は、生息域の拡大方法にあります。SCP-847-JP-1は、昆虫と水棲生物を除く、あらゆる生物に寄生することができます。主だった寄生ルートは、SCP-847-JPを飲料水として利用することですが、すでにSCP-847-JP-1に寄生されている生物を捕食した場合なども、同様に寄生されます。
SCP-847-JP-1は宿主に寄生した日数に比例して、その影響深度を高めていきます。SCP-847-JP-1の影響深度の目安は以下のとおりです。
寄生初期 |
生物の体内への侵入に成功したSCP-847-JP-1は特殊な酵素を体内から分泌しながら、胃まで降下します。この酵素は宿主の消化能力を弱める効果と麻酔効果があり、宿主は常に原因不明の空腹と喉の渇きに苦しむようになります。また前述の麻酔効果によって腹部の感覚が無くなり、飲食を行うことでの満腹感や膨満感といった感覚は一切感じません。この二つの効果によって、宿主は空腹感を少しでも紛らわせようと、大量の飲食を行うようになります。 |
寄生中期 |
SCP-847-JPは宿主の体内に残った飲食物を利用して、個体数を大幅に増加させます。そして増加した数に比例して、分泌される酵素の量も増加するため、宿主の消化能力は限界寸前まで弱まり、収まらない空腹感から非常に攻撃的になり、周囲の有機物をなんでも口に運ぶようになります。また、宿主の外見は、肥大化した腹部を除き、やせ細ったものへと変わっていきます。 |
寄生後期 |
SCP-847-JP-1から分泌される酵素の量がさらに増加し、この期間中、宿主は水分補給が全く出来なくなります。その結果、宿主は水場を求めてさまよい続けます。そして水場を発見すると、濁度が高い泥水であろうと一心不乱に水分補給を続けます。 |
寄生終期 |
寄生終期は後期から20時間以内に発生します。大量の水分が宿主の体内に入ってくることを確認したSCP-847-JP-1は、宿主の気管の入り口付近に卵を産みつけ、一斉に酵素の分泌を停止します。これにより、宿主の胃も本来の機能を取り戻し、その反動によって強い嘔吐感に襲われた結果、気管に産み付けられた卵を残して、胃の内容物と共にSCP-847-JP-1も体外に排出されます。産み落とされた卵は、一週間ほどで孵化しサイクルは寄生初期まで戻るため、宿主がSCP-847-JP-1から逃れる術は、寄生終期終了後の期間における外科手術を除いてありません。 |
SCP-847-JPは1███年に、蒐集院が財団に吸収された際に、その存在が認知されました。管理移行以前に蒐集院からの依頼で、収容に携わっていた、██氏へインタビューを行ったところ、SCP-847-JPに関する知識や効率的な収容方法を説明されたため、財団への管理の移行後に本人の希望通り、記憶処理の後、肉親の下に転居させました。
インタビュー記録-SCP-847-JP - 日付1███/█/█
<記録開始>
██博士 これからインタビューをはじめたいと思います。よろしくお願いします。██氏 わしに、そんな堅苦しくする必要は無いぞ。
██博士 いえ、申し訳ありませんが規則ですので、それでは、まず始めに██さんが、この沼を管理していた理由をお聞かせ願えませんか?
██氏 それは、わしの家が代々、蒐集院から沼の管理を任された、管理人の家系だったからじゃな。
██博士 沼を管理ですか、具体的にはどのようなことを?
██氏 あの沼の水が枯れんように、そしてどっかの水場と繋がらんように見張るのが主な仕事じゃな、ああ、それと沼の水を持ち出そうとした人間と、鬼になっちまった奴の後始末も仕事じゃ。
██博士 沼を見張ることは理解できましたが、後始末とは一体どういうことですか?
██氏 沼の水を回収して、少し時間が経った後に、あんたみたいな、見た目でお偉いさんだとわかる奴が話を聞きにきたっちゅうことは、もう見たんじゃろ、鬼を、あの飢えた餓鬼の姿を。
██博士 失礼しました。その通りです。
██氏 いいや、気にし取らんよ、あの鬼たちは、ほっとくと、どんどん仲間が生まれる沼を増やす。蒐集院が管理を始める前は、話を聞きつけた、どこかの国の殿様が、こっそり隣の国の井戸という井戸に沼の水を放り込んで、一国全てが鬼になっちまって周りの国が総出で焼き討ちをしたなんて逸話もあるくらいじゃからな。誰かが手を汚さんと、もっとひどいことになる。
██博士 なるほど、理解できました。それでは、なぜそこまで危険なものだとわかっていながら、蒐集院はこの沼を埋めたりしなかったのですか?
██氏 ご先祖様の話だと、呪物を作っていたそうじゃ。
██博士 どういうことですか?
██氏 蒐集院のお偉いさんは、苦しみぬいた人間の死体がいい呪物に変わるとか言うて、罪人たちに水を飲ませ、その後はまとめて牢屋に放り込む。3日3晩も待てば…まったく、獣すら代を重ねて学び、この沼には滅多に近づかんようになったというのにのう、どちらが鬼か、わかったもんじゃないわい。
██博士 そのようなことが、秘密裏に。
██氏 狂っているじゃろ。まぁ、そんな鬼共の落とす金のおかげで、この付近は飢えずに済んだのじゃから、皮肉よな。
██博士 ありがとうございます。██さんの知識が収容の際に大きく役立ちました。後のことはこちらでおまかせください。
██氏 すまない。
██博士 どうしたのですか?
██氏 全てをお前さんたちに押し付け、逃げ出すようなもんじゃ。
██博士 あなたがいなければ、この国は滅んでいたかも知れません。人知れず、人を守り続けていたあなたを私は尊敬します。
██氏 ありがとうよ。
<記録終了>
SCP-1000-JP、画像は収容違反を避けるため一部デザインが変更されています。 |
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アイテム番号: SCP-1000-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-1000-JPは山折りにされ、SCP-1000-JPが印刷された用紙及びSCP-1000-JPが保存されたUSBデータは収容ロッカーに収容されます。未収容のSCP-1000-JPが発見された場合は、焼却処分してください。SCP-1000-JPが発見された、もしくは所持の疑いのある企業、団体にはカバーストーリー「監査」を用いて、エージェントを派遣し、SCP-1000-JPおよび、SCP-1000-JP-1、SCP-1000-JP-2と思われる人物を拘束し、記憶処理の後、解放してください。
説明:
SCP-1000-JPは、特定の条件化で人類に催眠効果をもたらす、ハニカム構造のデザインが図示された紙です。SCP-1000-JPの催眠効果は企業または組織、団体に加入し、業務、活動、運動などに100時間以上携わった人間に発揮されます。前述の条件に当てはまった人間が、所属している企業の上位にあたる人間にSCP-1000-JPを閲覧という形で、使用されることで催眠効果が発生し、このときSCP-1000-JPを使用した人間がSCP-1000-JP-1、閲覧した人間が、SCP-1000-JP-2にそれぞれ指定されます。
SCP-1000-JP-2に変化した人間は、一貫して、業務内の決められたノルマや目標の達成を目指し、全力で行動するようになります。また、自らが認識している範囲の雇用主やSCP-1000-JP-1を含む上司に対しての批判的な意見や行動は一切無くなり、思考も愛社精神に満ち溢れたものとなり、企業に対する不満や愚痴を漏らす人間に対しては、批判的な意見をぶつけ、時には暴力を振るってでも、その考えを改めさせようとします。
SCP-1000-JP-2は、業務内容に関わる命令、発言に対しては可能な限り自らの通常業務と並行しながらの遂行を目指すようになり、勤務時間内に達成が難しい場合は、勤務時間外も率先して業務に携わるようになり、指定された仕事量によっては最低限の睡眠時間や食事時間を除く、全ての時間を業務に費やすようになり、生活スタイルも企業と自宅の往復、または泊り込みなどに変化します。
SCP-1000-JP-2が、本来の人間性を取り戻す方法は記憶処理、またはSCP-1000-JP-1によって指定された、合図の他にありません。また、SCP-1000-JP-2が人間性を取り戻した場合も、変化していた時の記憶は有しておらず、気がついたら時間が過ぎていた、という認識しか持ち合わせていません。またこの期間内のことは業務に精力的に取り組んでいたという実感と、達成感のみが感覚として残されており、SCP-1000-JP-2への変化前と比べても、業務や企業に対する感情は好意的になり、SCP-1000-JP-2に変化していた期間と同様に企業に貢献しようと考えるため、根本的な解決にはなりません。
SCP-1000-JPは、19██年に██企業に所属する社員が1ヶ月という短い期間の間に事故死や過労死によって██名もの死者を出していることを不審に思ったエージェントによって、発見されました。SCP-1000-JPを所持していた、██企業の代表取締役も同時に拘束し、インタビューを行ったところ、蟻塚と名乗るセールスマンから購入したこと、怪しい取引だったため、取引の内容をテープレコーダーに録音していたことを証言したため、記憶処理の後に解放しました。
インタビュー記録-SCP-1000-JP
音声は前述の代表取締役のものと蟻塚と名乗るセールスマンのものと考えられる。
<再生開始>
代表取締役 「どうも、蟻塚さん、お世話になっております。」
蟻塚 「どーも、どーも、ご無沙汰でしたわ。んで、使い心地はどないでした。」
代表取締役 「おかげさまで、我が社の内部事情を把握した社員に、労基に訴えるといわれたときは、手を汚す羽目になると思っていましたが、蟻塚さんのおかげで、助かりました。」
蟻塚 「ははは、そりゃ良かったですわ。私としても自分の商品で満足してくれることが一番嬉しいですからな。」
代表取締役 「それは、そうと、本日はどうしていらっしゃったのですか、まさか口止め料を。」
蟻塚 「ちゃいますわ。最近あんさんの会社で死人がぎょうさん出とる聞きましてな、いくら女王蜂になったからって、使い潰すだけじゃ、あんさんの立場が危なくなるだけやって、助言をしにきただけですわ。」
代表取締役 「心配はいりませんよ、部下の暴走として、遺族にはしっかり説明を行いますし、私が何かしたという証拠は一切ないのですから、捕まることはありませんよ。」
蟻塚 「警察には無理やろうけどな、世の中にはそういうこと専門の裏組織ってのがいるんですわ、そっちのワンコにそろそろ嗅ぎ付けられるかなと思っとるんです。」
代表取締役 「そんな、それじゃあ、もし、嗅ぎ付けられたりしたら。」
蟻塚 「せやから、働きバチを大切にっちゅうわけですわ。それに、調査に乗り出されたとしても、商品は燃やす。ハチは正気に戻すを心がけていれば、何の心配も無いですやろ。」
代表取締役 「ああ、その通りでした。しかし、蟻塚さんのおっしゃる、その組織は何のためにそんなことを。」
蟻塚 「それが、なんと、一般人を無償で守るためなんやで。そんなけったいな理由のために、あんさんの頭で想像できる魑魅魍魎、都市伝説って爆弾をいくつも腹の中に蓄えてるんや。笑えるやろ。」
代表取締役 「私のような商人には、一生わからない感覚ですね。」
蟻塚 「せやろ、しかも、わいの商品をどうやって全部集めるつもりなんやろうな、いまや、わいの商品は、あの政治家も、カルトの教主の汚いオッサンも、有名な自動車会社の社長も、みーんな使っとる。相手さんが必死こいて、守ろうとしている、可愛い、可愛い、一般人によって足を引っ張られ続けるわけや。どや、皮肉めいてごっつおもろいやろ。」
代表取締役 「私は、本当にあなたが、恐ろしいですよ。」
蟻塚 「舐められたら、こんな商売終わりやからな、それくらいでちょうどええんですわ。それにしてもわいが作る、新しい日本社会は、なんて呼ばれるようになるんやろうな。レッド企業やろか、暗黒会社やろうか、今から楽しみですわ。」
この後、SCP-1000-JPには関係のない話が続くため割愛
<再生終了>
実験記録1000-JP-1 - 日付19██/█/31
対象: D-16752
実施方法: D-16752に100時間、財団保有のパン工場で働いてもらい。上司と認識されている。██博士の手で、SCP-1000-JPを使用する。
結果: D-16752はSCP-1000JP-2に変化し、過労で失神するまで、2█時間業務を継続しました。
分析: SCP-1000-JP-2に変化した人間は、命令があれば限界まで、仕事に従事し続けるようです。
実験記録1000-JP-2 - 日付19██/█/15
対象: D-16752 D-14382
実施方法: SCP-1000-JP-2に変化した、D-16752に対して、D-14382が命令を下す。
結果: D-16752が命令した、限界まで働けという命令を無視して、規定の時間内に業務を終了しました。
分析: SCP-1000-JP-2が従うのは、あくまで自分より上位の人間の命令だけのようです。
実験記録1000-JP-3 - 日付19██/█/21
対象: D-16752 D-14382
実施方法: SCP-1000-JP-2に変化した、D-16752に対して、D-14382が昇格したことを伝え、再度、命令を下す。
結果: D-16752は限界まで働けという、命令を実行し、失神するまで働きました。
分析: 予想通り、自分より立場が上になった者の命令には従うようです。
実験記録1000-JP-3 - 日付19██/█/23
対象: D-16752
実施方法: SCP-1000-JP-2に変化した、D-16752に対して、機密情報と伝え、価値のない情報を渡し、エージェント複数名で拷問を行う。
結果: D-16752は情報を話しませんでした。
分析: 外的要因によってSCP-1000-JPの催眠効果を打ち消すことは、不可能のようです。そして今回の結果で、SCP-1000-JP-2に変化した人間は、工作員などに転用できる可能性が生まれました。
O5権限を受け付けました。財団最重要機密へのアクセスを許可します。
君がこれを読んでいるということは、君自身が財団にとって必要な人材であるということだ。誇ってくれてかまわない。
まず、知っていてほしいのがSCP-1000-JPというのは全て、現在、財団によって収容されているということだ。
そしてその上で、君が長年、財団に所属していて、ふと、こんなことを疑問に思ったことはないだろうか。なぜ、財団は今まで一般社会に痕跡を残さずに、活動を続けられたのだろうかと、なぜ、綻びを残さず、漏洩もせず、この規模の団体が活動を続けられたのかということを。それを疑問視したのは、一度や二度では無いだろう。そしてここにアクセスできるほどの君だ。すぐに気づいただろう。このSCPの特性と財団の関連性を。
私たちが、活動を始めた当初は、情報漏洩の危険性も、財団の規模も今ほどでは無かった。しかし時の流れとともに電子の世界が生まれ、数々の悪意が生まれ、収容対象は増え続けた。そんな中で、財団を無理やりにでも一枚岩に押しとどめるために作られたのが、財団管理システム、「統制社会」だ。
これが、財団が今まで収容を続けられた真実だ。収容する人間自身が、SCPによって収容されていることを知って、君自身も少なからず、我々を軽蔑していることだろう。だが、職員に自由行動を許せば、今後、記事に記載されていたインタビューのような事態が財団職員によって引き起こされかねない。この機密に触れている君は真に財団職員だ。必ず、収容に協力してくれることだろう。
人が人であり続ける限り、必ず活動には不和が生じる。世界を守るためならば、我々は喜んで女王蜂となろう。
確保、収容、保護。