Mth02のスナーボックス

俺は色々あって「財団」の施設に連れていかれた。

「では、この地球儀にこの赤ペンで既に書いてある白い点の上に点を書いてください。」

白衣を着た男はそう言うと、俺に赤ペンを渡してきた。
白い点はソウルの位置と同じ位置にあった。
「わかりました。」
そう言って赤ペンで白い点の上に赤い点を書いた。
すると、地球儀は赤い光を出した。そこから俺の記憶は途絶えた。
目を覚ましたとき、何と30年間俺は気絶していたようだ。そうなると俺は今90才ということになる。

不安だ。やっぱり30年気絶していたからなのか判らないが、人々がみんな薄くて小さい光を放っている"スマートフォン"や"タブレット"を使っている。そしてなぜか自分も使い方がわかる。使ったことなんかないのに。

「では、金銭援助はしますので6ヶ月間ソウルで生活してみてください。」
30年前のとは別の男はそう言うと俺をアパートに案内した。

しかし不思議だった。30年前は右利きより左利きの方が多かったし、公衆電話なんて携帯電話の普及で消滅した。
他にも色々おかしいことがあったんだよ。だからそういったことをあの男に言ってみたんだ。

「いやいや、左利きの方が少数派ですよ。」
「そもそも、一定鎮駅や統一駅なんて韓国中探し回ってもありませんよ。」
「公衆電話は30年より前に消えたんですか!?」
「マールブルグ菌ってなんですか?それってウイルスの間違いでは?」

そんな感じで金を渡しに着た男にはこんな感じで驚かれた。

まさか、こんな感じで自分の意見を否定されるとは思わなかった。
そんなことを言われても尚、やっぱりこの世界はおかしいんじゃないかと思い続けてきた。
なにせ、隣の部屋の若い奴が"入営忌避罪1"で逮捕されていったんだ。この国は良心的兵役拒否も違法になったのか、って思ったさ。

もう何が何だかわからない。
何で朝鮮どぶろくをマッコリと、甘酒をタンスルと言うんだ?日本のものとは別だと示すためか。
何で一定鎮駅と統一駅が存在しないんだ?廃止されたのか。
何で良心的兵役拒否が違法なんだ?戦争の準備か。

そう心の中で納得させて、残りの4ヶ月をすごした。

しかし、俺は再び「財団」に連れていかれた。どうやら、俺が熱中症でぶっ倒れてたところを金を渡しに来た「財団」の男が見つけたらしい。そして俺は点滴を受けることになった。点滴をしているはずなのにやけに意識が朦朧としてくる。手遅れだったのかもしれない。
 
ああ、俺も死ぬのか…。
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 


俺は今老人ホームで生活している。
昔なんかと比べたら今の方がずっと楽だ。
しかし、思い出しても思い出せない3ヶ月間の記憶はどうなったのだろうか。
腕の注射痕を見つめながら俺は考えた。