インタビュー1848-い の音声記録
対象: SCP-1848-JP-2-A
インタビュアー: 松田博士
付記: SCP-1848-JPを100回使用したDクラス職員SCP-1848-JP-2-Aに対し会話および物品の提示による反応・態度の変化を記録。
<録音開始,20██/██/██>
松田博士: おはようございます、SCP-1848-JP-2-A。
SCP-1848-JP-2-A: やあ博士。何だって今日はわざわざ俺にこんな席を用意したんだ?
松田博士: 実験の一環です。いまから君にいくつか質問をしますが、素直に答えてくれることを期待しています。まず、君は比較的真面目な性格で、我々に協力的な人間だと聞いています。確かですか?
SCP-1848-JP-2-A: ん?ああ、まあそうだな。でもただ人に言われたようにやってるだけさ。
松田博士: では次。君は財団に来る以前、どこの政党を支持していたのですか?
SCP-1848-JP-2-A: なんでそんなことを聞くんだ? 大統領選挙に立候補でもする気か? ██党だよ。
松田博士: 民主主義政党につく一般的な政党名ですね。次に…ああそうだ、なにかフルーツでも食べませんか。まだ聞きたいことは沢山あるし、喉は乾く前に潤したほうがいい。イチゴもありますよ、どうぞ。
SCP-1848-JP-2-A: (約2秒間の沈黙)すまないが博士、俺はイチゴが嫌いなんだ。
松田博士: プロフィールには好物の一つに上がってたと記憶していたのですが。
SCP-1848-JP-2-A: ここで生活しているうちに嫌いになったんだ。
松田博士: そうですか。じゃあリンゴはどうですか?
SCP-1848-JP-2-A: (約3秒間の沈黙)皮をむいてくれ。果物ナイフはないのか?
松田博士: 残念ながら忘れてきてしまいました。
SCP-1848-JP-2-A: (少しイラついたように)なら結構だ。そいつを今すぐどこかにやってくれ。
松田博士: そうですか。そうだ聞いてくれませんか、この前新しい服を買ったのですが実は今日が着るのが初めてでしてね。
(布類が擦れる音)
松田博士: どう思いますか?
SCP-1848-JP-2-A: (焦ったように)博士!ふざけてるのか!?俺の前でそんなふざけたTシャツを着るのはやめろ!
松田博士: 取り乱さないでください。これも実験内容のひとつです。なにか心が落ち着くものでも…本はどうでしょう?いくつか持って来たのですが君はどれが好きか答えてください。
(松田博士が、ランダムなジャンルの五冊の書籍のタイトルを順に読み上げる。SCP-1848-JP-2-Aは始めの四冊には特に反応を示さなかったが、五冊目に「共産███」を読み上げると、SCP-1848-JP-2-Aは明らかな嫌悪を含んだ声で読み上げの中止を求める。)
SCP-1848-JP-2-A: …博士さんよお。俺からも一つ聞いていいか?
松田博士: 許可します。
SCP-1848-JP-2-A: まさかあんた、"共産主義"ってもんを信じていないだろうな?
松田博士: (約10秒間の沈黙)"平等"というのはいいことだ。恵まれても恵まれていなくても皆"等しく"財が配当される。これまで虐げられてきた労働者の苦しみが"解放"されるのだ。"共産主義社会"は"理想的な世界"だ。君もそう思わんかね?
(何か金属類の物体が倒れたような激しい音)
(SCP-1848-JP-2-Aの怒号とそれを静止する声)
<録音中止>
追記:インタビュー1847-い中止後、SCP-1848-JP-2-Aは待機していた職員4人に取り押さえられ部屋を退出しました。
SCP-1848-JP-2-Aは隔離施設に一時収容後、Dクラス記憶処理を完了しています。
[以下、連行中にSCP-1848-JP-2-Aが上げた叫び声の記録より抜粋]
「そこのクソいかれ博士は[削除済み]だ!そいつを殺せ!」
「やっぱりあのポンコツカメラの言う通りだった![削除済み]はいつでもどこにでもいやがるんだ!」
「全世界の悪め!俺を弄びやがって!」
「離せ!俺はこの世の[削除済み]を全て排除しなきゃならねえんだ!」
インタビュー1848-ろの映像記録
対象:SCP-1848-JP-2-B
インタビュアー: 松田博士
付記:SCP-1848-JPを127回使用したDクラス職員SCP-1848-JP-2-Bに対しインタビューを行った。SCP-1848-JP-2-Bの挙動の観察が目的の為、ビデオカメラでの記録となる。
[以下インタビュー記録の抜粋]
SCP-1848-JP-2-B: (震えながらしきりに部屋を見まわしている)僕はどうしてここに呼ばれた?ここは本当にあなたと僕の二人きりか?のぞき穴は?監視カメラは?ちゃんと調べたか?
松田博士: 二人きりだとも。なんだって君はそんなにおびえているのですか?
SCP-1848-JP-2-B: 知らないのか?博士…[削除済み]の存在を。
松田博士: その[削除済み]の存在について教えてくれませんか?
SCP-1848-JP-2-B: あいつらは危険だ。あいつらの考えに染まると国を一つ腐らせちまうんだ。そこの国民は、たとえ飢えても、危険な労働を強いられても、文句ひとつ言わない。それどころか、[削除済み]と、最も[削除済み]く染まった国の民は決して、決して悪態をつかないし、ついちゃいけないんだ。
松田博士: ここが監視されていると思っているのですか?
SCP-1848-JP-2-B: 「絶対ない」なんて絶対ないんだよ、博士。あいつらはどこにでもいるんだ。きっとこれからも増えるだろう。おしえてもらったんだ。なあ、なぜ財団はあいつらを収容しないんだ?俺はこれ以上[削除済み]が悲劇を起こしてはいけないと思うんだよ。[削除済み]を、[削除済み]を排除しないと。
松田博士: やはり随分と影響を受けているね…そろそろ切り上げましょう。最後に一つだけ聞きたいのですが、君は、これを知っていますか?
(縦0.5m、横1mの長方形の赤く染められた布に██と█のシルエットが描かれた旗を広げて見せる)
SCP-1848-JP-2-B: (悲鳴)今すぐそれを燃やしてくれ!
終了報告書: インタビュー記録の内容から推測するに、SCP-1848-2はSCP-1848JPの使用回数を重ねるごとにSCP-1848-JPより何らかの形(おそらく脳内に直接語りかけられる、あるいはそうされたように思い込まされる)でSCP-1848-JP-2を共産主義恐怖症および反共産主義者へと変貌させていることが予想できます。
今後のSCP-1848-JPの実験を行うにあたり、SCP-1848-JP-2の精神状態の変化を中心とした経過観察を怠らないようにしてください。
心外だな、私は共産主義なんか一度たりとも信じたことはないよ。 - 松田博士