SCP-XXX-JP

アイテム番号:SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス:Safe Euclid

特別収容プロトコル:サイト-██にて10m×10m×10mの収容室を設置し、出入口に武装警備員2名を両脇に配置し、出入口の真上に設置した動体センサー、および収容室内部に設置された監視カメラによる監視を常時行ってください。なお、収容室の壁、および出入り口の扉には窓を設置しないでください。
いかなる異常もエリア担当員に報告され、何らかの理由で収容室が崩壊する危険性がある場合は周辺エリアの完全な封鎖、および電力供給の遮断が要請されます。
SCP-XXX-JPを用いた実験は一時的に中止されています。さらなる実験を希望する場合は、追って通達がなされるまで待機するようにしてください。
現在、SCP-XXX-JPを用いた実験は全て禁止されています(実験XXX-JP-甲を参照)。

説明:SCP-XXX-JPは一見直径3m(発見当時)ほどの岩です(カメラ等の機器を通じて視認した場合のみ)。見た目にこれといった異常は無く、ごく普通の岩のように見えます。

SCP-XXX-JPの特異性は成人済みのヒト(以下、SCP-XXX-JP-1と呼称)がSCP-XXX-JPを目視で視認した場合に発現します。

SCP-XXX-JP-1が「直接」(カメラなどの機器を通した場合は影響されません)SCP-XXX-JPを視認した場合、周囲の物事への関心を失い、無意識にSCP-XXX-JPに向けて移動し始めます。周囲の人間が声を掛けた場合は、SCP-XXX-JPがある位置に「5歳ほどの男の子(後にSCP-XXX-JP-αと呼称、インタビュー記録を参照)が座り込んでいて、泣いている」という趣旨の発言をし、「保護しなければならない」という衝動に囚われます。通常、周囲からの言葉による制止で我に返り、関心をほとんど失いますが、SCP-XXX-JP-1が過去に配偶者との子を持っていた場合は特に顕著であり、武力を伴った極めて強い制止でない限り、これを阻止することは不可能です。

SCP-XXX-JP-1がSCP-XXX-JPの周囲半径5m以内まで接近した場合、直ちにSCP-XXX-JP内部から出現した直径30cm、長さ6mほどの鋭利な器官によって刺殺されます。殺害は視認が困難なほど高速です。この器官はSCP-XXX-JP内に複数存在することが判明しており、SCP-XXX-JPがどのようにしてこの器官を体内に収納しているか、または接近された場合のみ具現化しているのかは不明です。

SCP-XXX-JPによって殺害された生物は10分ほどで体内の体液を搾取され「ミイラ化」します(実験XXX-JP-甲を参照)。

SCP-XXX-JPは19██/██/██に広島県██市の一軒家にて発見されました。近隣の市民による警察への「向かいの家の男の子が大きな針で家族を殺している」という通報により発見されました。財団職員が介入したのはその数分後で、エージェントが現場へ急行、数時間後にオブジェクトを確保(その際財団の職員、および市民を含む██名がSCP-XXX-JPの認識災害に曝露、内█名が死亡)、近隣の住民にAクラス記憶処理を施し、カバーストーリー「土砂災害」および「一家心中」を流布しました。その家の子供部屋では2名の男女がミイラ化しており、DNAを採取することが不可能であった為、身元の確認は出来ませんでしたが、この部屋には両親、息子、そしてその妹が住んでおり、両親は未だ連絡が取れていません。両親は息子には愛情を注ぐ一方、妹には日常的な虐待、ネグレクトが行われていたことが判明しています。

インタビュー記録19██/██/██

対象:D-5841。収容初期の実験においてSCP-XXX-JPの認識災害に曝露し、マイクを通じた職員の制止により犠牲を免れた。

インタビュアー:葛盛博士

<録音開始>

葛盛博士: 「えー、まず君が言うところの男の子を見たときにどんな事を思った、または感じたのかを説明してくれるかな。」

D-5841: 「はい。あの子を見た時、とても…可哀想?に思えたんです。上手く説明できないのですが、「守らなければならない」という使命感がどこからか湧き上がってきて、居ても立っても居られなくなりました。」

葛盛博士: 「生憎、カメラで見ている我々からはただの岩にしか見えないし、あの男の子はSCP-XXX-JP自身がはなから利用するために生み出した物だとも考えている。あれは間違いなくヒトの子供だったのか?しっかりと顔は見えたのか?」

D-5841: 「ええと、そこまでは…はっきりと覚えていない、というよりも、あの時はそんなことどうでもよくて、とにかく守ってあげたいという一心でした。あれはただの岩だと言われても、私にははっきり人間に見えたんです。あれが演技だとは思いません。だって…あれほど寂しそうで、悲しそうにしている子供を、私は見たことがないんです。私が言うのもなんですが、あれは本物です。罠だとか、血を吸い取る為だとは思えません。私はあの子が私たちをおびき寄せているというよりも、貴方達が仰るあの岩があの子を餌として利用しているように感じました。」
<D-5841が噎び泣く、数分後保安職員によって部屋から退出>
<録音終了>

20██/██/██:_実験XXX-JP-甲
担当者:圓福寺博士、麻倉助手、エージェント・███
実験内容:D-████をSCP-XXX-JPの周囲5mまで接近させ、事前に訓練を受けたエージェント・███によって操作された遠隔操作式███を搭載した無人地上車両による器官の採取、およびその調査を試みる。
結果:D-████は刺殺され、合計で2本の器官が露出した。器官は2本とも無人地上車両の遠隔操作式███によってSCP-XXX-JPから1mの地点で切断され、切断された部分からは合計███mLの血液、███、██を含んだD-████の体液が漏出した。
器官を調査した結果、███本の消化器官を伴った触手、そしてそれらと器官内部で連結された維管束と思しき管が発見された。また、器官本体の83%は███によって構成されていた(残りはさらなる調査前に器官が蒸発してしまったため不明)。

補遺:再測定により、発見当時と比較してSCP-XXX-JPの半径が███cmほど増加していることが分かりました。圓福寺博士はこれ以上のSCP-XXX-JPに関する実験の禁止を進言。O5-██に承認され、同時にEuclidへのオブジェクトクラス引き上げが行われました。

「これ以上の実験を強行することは財団の理念に反する。このまま無闇矢鱈と奴に餌をやっていれば、いずれ安定した永続的な収容が見込めなくなるのは明白だ。これ以上は『好奇心』という言い訳では済まされない。」
圓福寺博士のメモより。麻倉助手に向けられたものであったと考えられる。


██/██
1ヶ月ほど前、警備員の方々から「近頃頻繁に収容室の中から子供、そして大人の声が聞こえる」という報告がありました。監視カメラの記録を参照すると、確かに声が聞こえました。ただの笑い声、泣き声などではなく、起床の挨拶から就寝の挨拶まで、ほぼ毎日収容室に家庭があるような様子でした。過去1週間は生活音さえ聞こえます。上には無断でD-1371を収容室に入れてみると、「家族が机を囲んで生活している」と述べ、そのまま走り寄って行きました。制止は間に合わず、彼は殺されました。しかし来週には、声の主が1人増えていたのです。
降格された今となってはあれをもう一度確かめることも、この肉眼で見ることも叶いませんが、もう一度チャンスが巡ってきたのなら、あの輪に加わりたい。この殺風景ではなく、家族団欒の楽園で過ごしたい。そう思うことは罪でしょうか?

-麻倉助手の日記より。麻倉助手はこの日記を書いた1ヶ月後に自室で首を吊り、自殺しました。この日記の真偽を確かめることは「全ての実験の禁止」という名目上、認められません。

肝心なことを書き忘れるところでした。「家族」の中に男の子は居なかったようです。

ー紙片に殴り書きされていたメモ。