mochiduki_1
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アイテム番号: SCP-XXX-JP [ハラノちゃんのひと時の恋]

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JP-Aと該当する商品が販売されていた場合は、該当商品を回収しカバーストーリー『異物混入』を流布して発売を中止させてください。回収した商品、及び財団の管轄内で作成されたSCP-XXX-JP-Aは一時的に保管し、表面に腐敗が見られた時点で焼却処分を行ってください。

SCP-XXX-JP-Bの管理担当に志願したセキュリティクリアランス1以上の職員1は、SCP-XXX-JP-Bの消失が確認されるまで一般人として接しながら保護します。また管理担当の職員は、SCP-XXX-JP-Bに関する定期的なインタビューが行われます。SCP-XXX-JP-Bの消失が確認された場合は、予め管理担当に志願した別の職員によって引き継いでください。現在のSCP-XXX-JP-Bは、管理担当者であるエージェント・春日井によって恒久的に保護されています。

説明: SCP-XXX-JP-Aは日本国内でドギーコープ株式会社から201█年5月に販売されていたくるみ入り食パンです。1袋につき山型の食パンが2枚入れられた状態で販売されており、食パンの表面には会社を示すものと思しきロゴマークが印刷されています。また、SCP-XXX-JP-Aと同様のロゴマークを食パンに印刷することで、その食パンもSCP-XXX-JP-Aと同様の異常性を有します。

SCP-XXX-JP-Aの異常性は、人間の男性が摂食することで発現します。SCP-XXX-JP-Aを摂食した対象には数時間以内に、SCP-XXX-JP-Bと1回目の遭遇イベントが発生します。この最初の遭遇イベントにおいてSCP-XXX-JP-Bは異常性を有していませんが、対象がSCP-XXX-JP-Bを見失うことで消失すると思われます。対象と2回目以降の遭遇イベントでは、SCP-XXX-JP-Bが対象と遭遇する際に最も適した状態の過去改変が発生します。対象が会社員だった場合は主に、SCP-XXX-JP-Bは対象と同じ職場に入職するのに適した記憶、情報の改ざんが行われます。また2回目の遭遇イベント以降、SCP-XXX-JP-Bは自身を役職に沿った人間の女性として対象以外に認識災害を発生させます。

SCP-XXX-JP-Bの正体は、めすのニホンジカ(学: Cervus nippon)です。SCP-XXX-JP-Bの身体の動作はニホンジカに基づきますが、人間の女性に沿った行動パターンを行います。SCP-XXX-JP-Bは対象に対して好意を抱いており、そのアピールを頻繁に行います。SCP-XXX-JP-Bは写真や動画、文書などのメディアではニホンジカとして投影されますが、SCP-XXX-JP-Bが出現している間はメディアを介しても対象以外はSCP-XXX-JP-Bを人間の女性として認識します。

SCP-XXX-JP-Bは、対象がSCP-XXX-JP-Aを摂食してから5~7日後に消失します。この期間は対象がSCP-XXX-JP-Aを摂食しても延長することはありません。SCP-XXX-JP-Bが消失すると認識災害に陥っていた人物が保有するSCP-XXX-JP-Bに関する記憶に変化は起こりませんが、SCP-XXX-JP-Bが記録されたメディアではSCP-XXX-JP-Bをニホンジカとして認識することが可能になります。

また、SCP-XXX-JP-Bの出現中に対象とは別の人物がSCP-XXX-JP-Aを摂食しても、新たなSCP-XXX-JP-Bが出現することはありません。これにより、SCP-XXX-JP-Bの個体は1体のみ存在していると推測されます。

補遺: 201█年8月24日、管理担当者に志願した春日井博士の元でSCP-XXX-JP-Bは出現しました。しかし1回目の遭遇イベントから7日以上経過してもSCP-XXX-JP-Bは消失することはなく、現在も原野博士5として春日井博士と共にパートナーとして低危険物のオブジェクトの研究を行っています。現在は春日井博士に対して7日間おきに1回の定期的なインタビューが行われています。

インタビュー記録[Dr.春日井]037 - 201█/5/14

対象: 春日井博士

インタビュアー: 浅井研究員

<録音開始>

浅井研究員: 今日でSCP-XXX-JP-Bの管理担当になってから37回目のインタビューになります。春日井さん、今日も宜しくお願いします。

春日井博士: あぁ、よろしく。

浅井研究員: 単純計算で、あれから実に37週もSCP-XXX-JP-Bが消失せずに存在し続けてることになりますが……あれから彼女との関係は、何か変化はございますか?

春日井博士: いいや、いつも通りだよ。あんた達には彼女がどう写ってるのか、私には分からないがな。

浅井研究員: そうですね、我々の方ではいつものように……ニホンジカとしてではなく、原野博士として……貴方と仲睦まじく……そういう関係であると、見て取れます。

春日井博士: そうか、それなら良かったよ。実際に私も彼女とは上手くいってるからな。

(浅井研究員は左手で顎を押さえ、視線を落とす。)

浅井研究員: ……つかぬことを聞きますが、分かるものなんですか?

春日井博士: それはつまり、彼女が私をどう思ってるか、のことか?

(浅井研究員は黙りながら頷くと、エージェント春日井は小さく笑ってから頷いた。)

春日井博士: 私たちは愛し合ってるんだ。当然だろう。

浅井研究員: しかし貴方から見れば原野さんは……いえ、この話は止めておきましょう。

春日井博士: 浅井くん、相手の姿がどうであろうと関係ないさ。あの子は私のことを必死に求めてる。それに応えてやらなきゃ、男じゃないよ。それに君たちは、彼女がどうしてここまで長く存在していられるかを知る、その為にこうして定期的にインタビューを行っているのだろう。私だって、その為に彼女を日々観察しているよ。

浅井研究員: えぇ……それは重々承知しています。実際に春日井さんの証言のお蔭でSCP-XXX-JPについての研究が進んでいて助かっていますからね。

(春日井博士は小さくため息をすると、テーブルに肘をつく。)

春日井博士: 彼女がどうして私の前から消えずにずっといるのか……それは前々から言ってる通り、俺が彼女の期待に応えてるからだよ。確かに俺とあの子は言葉は通じない。だけども、目を見れば分かる。あの子は、人と恋がしたかったんだ。しかし今までの管理担当の職員も含め、みんなは彼女の期待にははっきりと応えなかった。彼女は相手が迷惑だと感じたから、自ら姿を消すんだ。引き際を分かってる女性だよ。でも誰とも上手くいかなかった。だから私は、彼女の熱い想いを受け止める役を買って出たんだ。

浅井研究員: しかし人間の男性と恋がしたいなら、人間として見せる認識災害は対象にも掛けるべきなのでは……。

春日井博士: そりゃあきっとアレさ、ありのままの自分を見てほしいとか、そういうのだろう。

浅井研究員: なるほど……この1週間もSCP-XXX-JP-Bは特に問題を起こしていないようですし、春日井さんからの報告は以上になりますかね。

春日井博士: あぁそれなんだが、ひとつ相談してもいいか?

浅井研究員: はい?なんでしょうか。

春日井博士: 最近の彼女、ちょっと様子がおかしくてな。体調が悪いというか……。

(浅井研究員は胸ポケットからペンを取り出し、メモ用紙に手を添える。)

春日井博士: 寝付けはいつも通りに見えるんだが、いつも眠そうにしているんだ。それに前までそんなことはなかったのに、すぐに疲れを感じて吐くことも増えてる。

浅井研究員: ……もしかしてですが、人間としての行動に限界を感じてる、というのがあるのかもしれないですね。実際はSCP-XXX-JP-Bにとっては相当負担なのでは。

春日井博士: 私も、そんな気はしていたが……やはり、そうなんだろうか……。

(春日井博士は頭を抱え、俯いて黙り込む。)

浅井研究員: ……年の為に、インタビューが終わった後にSCP-XXX-JP-Bの身体検査をした方が宜しいですね。もしかしたら、他の原因があるのかもしれませんよ。他に変わった様子はありますか?

エージェント・春日井: それなら……みかんを置いていないとなんだかすぐぐずるようになったな。なんか、すっぱいものを食べたがるみたいだ。

浅井研究員: はぁ……なんだかまるで、妊娠の際の傾向に似ていますね。

<録音終了>

終了報告書: インタビュー終了後、エージェント・原野の健康診断を行った所、妊娠しているのが発覚しました。SCP-XXX-JP-Bが通常のニホンジカであれば妊娠期間は人間よりも若干早い為、正確な値は不明ですが、妊娠から3ヶ月は経過していると思われます。