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アイテム番号: SCP-XXX-JP[愛犬と一つ屋根の下]

オブジェクトクラス: Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは緩衝材で覆った状態で非生物保管ロッカーに収納します。SCP-XXX-JPを使用する実験において、SCP-XXX-JPの設置する職員は事前に精神チェックを行い『イヌ』の概念に対して問題がないか確認してください。また実験の際の不法侵入役はDクラス職員のみに充てられます。

説明: SCP-XXX-JPの見た目は30型の丸形蛍光灯と変わりありません。SCP-XXX-JPは屋内の蛍光灯ランプホルダーに設置することで活性化します。活性化したSCP-XXX-JPは通電の有無に関わらず部屋に人物が入ると自動点灯し、室内にSCP-XXX-JP-1が出現するようになります。SCP-XXX-JP-1は全体が黒色で構成されたイエイヌ(学: Canis lupus familiaris)もしくは『イヌ』と総称される姿を有します。SCP-XXX-JP-1は発声を行いますが、物理的な接触は不可能です。

SCP-XXX-JP-1の容姿は、設置者(以下、対象と記述する)にとって関心が高い個体を基準にすると思われます。SCP-XXX-JP-1は対象及び室内に招き入れられた人物に対して好意的に接しますが、不法侵入者に対しては敵対的な行動を取ります。SCP-XXX-JP-1は物理的な攻撃を行うことはできませんが、発生や行動によって不法侵入者に精神的な影響を及ぼします。これにより不法侵入者が撤退もしくは無力化されるまで、SCP-XXX-JP-1の行動は継続されます。

SCP-XXX-JPは蛍光灯ランプホルダーが取り外されるまで、SCP-XXX-JP-1は変化しません。SCP-XXX-JPを取り外し別の人物が設置することでSCP-XXX-JP-1の容姿は別の設置した人物に依存して変化します。

発見経緯: SCP-XXX-JPは静岡県██市にあるアパートで、201█年5月15日にSCP-XXX-JPを発見する起因となった事件が発生し、オブジェクトの存在が判明しました。SCP-XXX-JPが設置された部屋に進入した空き巣がSCP-XXX-JP-1によって無力化され、部屋の住居者である永見██氏2が空き巣を発見し警察に通報。警察の事情聴取によってSCP-XXX-JP-1の存在が明らかとなり、財団は永見██氏にインタビューを行いました。

対象: 永見██氏

インタビュアー: 水橋博士

<録音開始>

水橋博士: 初めまして、永見さん。今回はインタビューに応じて頂き感謝致します。

永見██: ん、よろしく。でもアタシ、別に忙しい身じゃないから感謝なんていいわよ。でもこれって、事件と関係あるの?

水橋博士: えぇ、多少は。その……貴方の部屋にいる、あの黒い物体の正体についてお聞きしたいと申しまして。

永見██: あぁアレね。カワイイもんでしょ。泥棒も退治してくれるって言ってたけど、本当だったみたいね。

水橋博士: 言っていたとは、誰がでしょうか?

永見██: あの蛍光灯をくれた人よ。あぁ、ちゃんと1から説明するわ。アレは蛍光灯のお蔭で出てくるのよ。くれた人がそう言ってたわ。私にピッタリの番犬が出てくれるってね。

水橋博士: 蛍光灯、それが本体ですか。その蛍光灯をくれた人に関して、どんな方なのか詳しくお聞かせください。宜しければ、その時の状況なども。

永見██: えぇ。でもあんまり覚えてないわね……もう1年も前だし。あの人とは、バーで1人で飲んでた時に出会ったのよ。男の人で、40代くらいかしら。話をしててちょっと頭の良さそうな感じがしたわね。でもどんな話をしたっけ……よく覚えてない。ただ、その当時ね、数日前に私の犬が亡くなったのよ。そのことを話したら、またこの店で会いましょうって。それで明後日にまた会って、大きな箱の入った袋を私に渡してくれたわ。

水橋博士: それが……その蛍光灯ですか?

永見██: (小さく頷く)お店でよく売ってるような、普通の箱に入ってたわ。でもその人は、貴方にとって一番の番犬が現れる特別な蛍光灯って、そう言ってたわ。最初はあんま信じてなかったけどあの通り、死んだ筈の彼が出てきたのよ。触れられないけど、体つきや仕草、鳴き声も何1つ変わらずね。

水橋博士: その蛍光灯をくれた方について、名前などはご存知ですか?

永見██: さぁ、そういえば名刺も貰わなかったわね。あぁそういえば、自分は特別な場所にいる動物をここに出現させる実験をしている。これはその副産物って、そんなこと言ってたわ。よく分かんないけど、こんなのを作るんだから相当凄い人だったのかも。

水橋博士: ありがとうございます。ではあの黒い物体……番犬について。あれは貴方が飼っていた犬と仰いましたが、詳しく教えて頂いても宜しいでしょうか?

永見██: えぇ、出会いから話す?

水橋博士: はい、情報は多ければ多いほど助かります。

(永見氏は少し腰を浮かし、椅子を少し前に移動させた)

永見██: 名前はたっくんって言うの。たっくんとは、そうね、ペットを可愛がる仕事をしてるんだけど、そのお店で出会ったわ。ほら私って、こう見えても扱い上手いからさ、けっこう好かれるのよ。その中でもたっくんは特にそうね。見掛けたらすぐ私のところに来てくれて、特にゾッコンだったみたいね。で、たっくんは特別に家に連れてこようかなって、そう思ったのよ。

水橋博士: 家で飼うようにしたということですか?

永見██: ん、まぁそんな感じ。たっくんはね、私に色々と元気をくれたわ。お蔭で家に帰るのが楽しみになってさ。いつもは仕事で他のペットたちと遊んで元気を貰ってたけど、たっくんと住んでからだんだんシフト減らして、結局辞めちゃったわね。

水橋博士: たっくんとはそれからも、一緒に暮らしてたわけですね。

永見██: うん。(俯き、視線を落とす)でもある時ね……亡くなったのよ。車に撥ねられて。

(4秒間沈黙)

永見██: もう遊べないんだな、あの鳴き声も聞けないんだなって思ったら、なんか、空っぽな気分になっちゃったのよね。何を考えても、頭にたっくんがちらついて。その度に、もういないんだなって思い知らされちゃって。あんまり意識してなかったけど、とっても好きだったんだなって、たっくんのことを、私は。

水橋博士: そしてその蛍光灯のお蔭で、再会できたわけですね。

永見██: (顔を上げる)今の科学ってすごいわよね。またたっくんと会えるようになってから、暗い気持ちなんて吹き飛んじゃった。たっくんといるのがこんなにも素敵なんだなって、改めて教えてくれたあの人に感謝したいわ。

水橋博士: あの、永見さん……1つ伺います。あの蛍光灯を手放すことは、考えているでしょうか?

永見██: それって、貴方たちが引き取るってこと?

水橋博士: (大きく息を吐く)大変申し上げにくいですが、そういうことです。その蛍光灯、使っている間に何か危険なことが起こる可能性もあります。

(8秒間沈黙)

水橋博士: 永見さんのお気持ちは察しています。しかし我々も……。

永見██: まぁ、そうね。別にいいわよ。

水橋博士: 本当ですか?

永見██: 確かにたっくんと別れるのは辛いけどね。でもあれは、たっくんじゃないもの。そっくりだけど、本物じゃない。いつかは死んだこと、受け入れなくちゃなって思ってた。でも私ももう昔の私じゃない。なくなっても、今の私なら立ち直れる。仕事にも復帰したいしね。うん、今まで元気をいっぱい貰ってきたもの。もう大丈夫よ。

<録音終了>

終了報告書: SCP-XXX-JPを受け取った後、永見氏にSCP-XXX-JPに関する記憶処理を行いました。また永見氏の部屋に侵入した容疑者の証言によると、SCP-XXX-JP-1は犬の顔を模したマスクを着用した男性と思われ、ゴムを擦り合わせるような音に対して猛烈な不快感を覚えて動けなくなったと証言しています。永見氏の知り合いの調査を行ったところ、SCP-XXX-JP-1は事件より1年前に交通事故で死亡した田畑██氏3がモデルであると思われます。