砂糖泥棒

「やーおはよう、明けましておめでとう」
「おお、お前か。こっち入っておいで」
「じゃあ、遠慮なく。あれ、また悪いことしたのかお前」
「何だ? 新年早々人聞きの悪い」
「いや、つい一ヶ月前まで、お前の部屋、家具一つなかったじゃないか」
「あー、お前、お金借りにうちまで来てたな」
「ほら、このテレビとか……」
「おい、やめろ、触るな」
「何だ? テレビ嫌いなのに買ったのか? 」
「ほらよく見てみろ」
「うん? よく見たら何だこれ? 」
「実はな、全部砂糖でできているんだ」
「砂糖ってあの砂糖か? 」
「他に何の砂糖があるんだよ」
「えー! 凄いなお前! 」
「大声出すなよ」
「飴職人にでもなるのか? わかった、神社の屋台に出すつもりだろう」
「こんなバカでかい砂糖の塊、俺が作れるか」
「何だよ、つまらない。てか、この部屋の家具、殆ど砂糖でできてないか? 」
「ああ、まあな」
「それで、どうしたんだよこれ、自分でこしらえたわけじゃないのなら」
「ああ、盗んだんだよ」
「やっぱり悪いことしてるじゃないか」
「いいから聞けよ、このアパートの隣にがあるだろ」
「ああ、甘ったるい匂いのするあの家か。てか、あそこの家主、夜な夜なこんなのこしらえてたのかよ」
「俺も忍び込んで度肝を抜かれたね。あの家何もないんだぞ。それでな、家具とか全部砂糖で出来てるんだ」
「へー気持ち悪いな、貧乏だから気分だけでもって、そんな感じかね」
「あんな技術あればテレビにでもなんでも出られるだろうに、もったいない。しかし、いい出来だろ。これ、多分すごい価値だぞ。崩れないように持ってくの凄い苦労したからな」
「……お前、アホじゃないのか?」
「お前の分はないぞ」
「要らないよそんなの。しかし、どれも凄い出来だな……。じゃあこの花瓶も砂糖か? 」
「ああ」
「まさか、この掛け軸も? 」
「ああ、砂糖だ」
「じゃあ、この下の鏡餅も砂糖か? 」
「いや、それはサトウだ」