仮面の裏

SCP

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アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 全国の郵便局に勤務するフィールドエージェントの管轄内で、新たなSCP-XXX-JPの出現が確認された場合、回収部隊XXX-β(“ヒポクラテスのおつかい”)が現場へ急行し、肉眼でSCP-XXX-JPを視認しないよう注意しながら回収してください。SCP-XXX-JP-Aが確認された場合は、影響下に置かれた全個体を特定・確保し、クラスA記憶処理を施した上で、適当なカバーストーリーを流布してください。回収したSCP-XXX-JPはサイト-8119の標準収容ロッカーに保管してください。

説明: SCP-XXX-JPは、日本国内に存在する郵便受けの内部に、不定期に出現するリーフレットです。その内容は出現月によって多少の差異が認められますが、全ての場合において「頭部遷移」と「頭詰ずづまり」という架空の現象についての記述がなされています。加えて、発行元として「独立行政法人████会」、執筆者として「████会会長 活越 ███」なる人物の名が付記されています。該当する独立行政法人、および活越 ███氏の実在は確認されていません。

SCP-XXX-JPを肉眼で視認した人物は、SCP-XXX-JP-Aに指定されます。複製物や文字のみの書き起こしを視認した場合は、後述の異常性は発現しません。SCP-XXX-JP-AはSCP-XXX-JPに記載された「頭とは一年に一度、寝ている間に生え変わる器官である」というミームの影響下に置かれ、それを信憑性の高い情報だとして周囲に喧伝し始めます。さらに精神汚染が進行すると、当該ミームを信じていない人間に対し極度に攻撃的な態度を取り始めます。そして最終的に、SCP-XXX-JP-Aはそのような人間を殺害し、もれなくその首を切断します1。この精神汚染にはクラスA記憶処理が有効です。

SCP-XXX-JPは2007年に██県で起きた医師一家連続殺人事件において発見されました。一家の長男であった茂呂田 ██(のちにSCP-XXX-JP-A-1に指定)は、自邸の地下室で両親、1人の弟、2人の妹、加えて身元不明の男女6人を合わせた計11人を殺害し、全員の首を切断していました。事件自体は報道されたものの、カバーストーリー「解体欲求」の適用によってSCP-XXX-JPの存在、及びSCP-XXX-JP-A-1の真の動機については秘匿されました。現在までに██枚のSCP-XXX-JPが回収されています。

補遺01: SCP-XXX-JPに記載されている電話番号に発信すると、どの時間帯にも若い日本人女性(SCP-XXX-JP-B)が電話口に出ることが確認されています。しかしSCP-XXX-JP-Bの発言は████会や活越 ███氏に対する称賛に終始しており、正常な意思疎通は不可能です。そのため、これまでにSCP-XXX-JP-Bから有益な情報は引き出せていません。

補遺02: SCP-XXX-JPに記載されている住所が東京都内の廃ビル「████ ██」のものだと特定されました。これを受けて、機動部隊が当該ビルに突入しましたが、発見されたのはSCP-XXX-JP-Cと1枚のメモのみでした。
SCP-XXX-JP-Cは、身元不明の日本人女性(SCP-XXX-JP-B)の頭部と背骨、加えて市販の固定電話やコンピュータ等から構成される、高さ2mの生体機械装置です。頭部が受話器の隣に配置されており、脊髄には幾重にも渡って電話線が接続されています。生体部分は一切の腐敗兆候を示しておらず、SCP-XXX-JP-Bとはその場での会話も可能でしたが、発言内容は電話口でのそれと同じでした。現在SCP-XXX-JP-BとSCP-XXX-JP-Cはサイト-8322で収容中です。
以下は回収されたメモの内容です。

古いほうにも、こんなに良い働き口があったとは。是非とも来月の定例会で発表しよう。これは日本の雇用体系に革命を起こすに違いない。この技術で過労死や労働災害を減らせれば、日本は会長の夢見る健康大国へとまた一歩、歩を進めるだろう。全てはこの国に活を取り戻すために。

「コールセンター」統括管理官:██

Tale

201█/11/18/21:32 [編集済]高速道路上……
「ねえ、まだー?」

「もう少し待っててね、ミホ」

「早くおばあちゃんに会いたいよー」

「ははは、会うのは久しぶりだもんな。ミホが駄々をこねるのも仕方ない」

「ねえあなた、それよりこの渋滞何とかならないの?」

「うーん、ニュースだとこの途中の█████ランドで通り魔があったらしくてさ、犯人がまだ捕まってないから園内を封鎖してて、そのせいで渋滞が起きてるみたいなんだ」

「まあ、あんなところで通り魔だなんて、怖いわ…」

「ねえ、おばあちゃんちいつになったら着くのー?」

「この時間だともう今日中には着けないな…」

「それは残念ねえ…ミホ、おばあちゃんちはまた明日ね」

「ええー!? やだやだ!」


2█年後……
20██/11/19/08:27 サイト-81██内 研究室928-B……

今日も目覚めは硬い机の上だった。これで徹夜は3週連続になる。

彼女にとって、ここ最近はずっと同じような毎日の繰り返しだった。遅くに目覚め、カフェテリアで早めに朝食をとり、9:00からは日が暮れるまで「あいつ」の経過を観察する。19:00からは「あいつ」についての書類整理とレポートの作成。そしてあっという間に日付が変われば、たいていは書類を読み進める内に寝てしまい、気付くと朝。そんな日が続いていた。

「お、やっと起きましたな、三木博士」
有希が声をかけてきた。
「その呼び方はやめてって…」
「ごめんごめん。それよりあんた、髪型とメイクが雪崩に遭ったみたいだよ」
臼上有希は私の研究仲間で、少々はしゃぎ過ぎるところがあるものの研究熱心な一科学者であり、私が「あいつ」の担当に異動してからは同じ研究室で共に「あいつ」について研究している。
「余計なお世話よ。メイクは仕方ないじゃない。休む時間が食事の時間くらいしかないんだから」
「だよねー。それより朝食食べてないでしょ。あたしもなんだけどさ、いっしょに食べに行かない?」

有希とカフェテリアに向かう途中、職員と肩がぶつかった。
「うっ…すみません!」
「ああいえいえ、僕は大丈夫です。あなたこそ怪我はないですか?」
「あっ、私は大丈夫です」
「あとこれ、落としましたよ」
相手の男が私の身分証明パスを差し出してきた。
「ありがとうございます」
「いえいえ。 …ミキ・アッカ―マンさん? あなた、あのアイワークス論文のアッカ―マン博士なんですか?」
「いやっ、その、何でもないんで、色々すみませんでした」
男からふんだくるようにパスを取り、そそくさとその場を立ち去る。
「ミホ、いくらなんでもあんな対応ないと思うけど…」
「どうしても三木って呼ばれるのは嫌なの。それに、私の書いた論文がすこし有名になったからって皆騒ぎ過ぎなのよ」

三木・アッカ―マン博士は自分について書かれた文書媒体において自分の名字が「三木」に書き換わってしまう、という現実改変能力を持っている。本名はミホなのだが、文書に著すとすべて「三木」に置き換わってしまうのだ。しかしそれ以上の能力はないため、財団にもさして注目されていなかった。自分では、幼い頃に字の汚さから「ミホ」と書くと初対面の人間に「三木」と思われてしまうのが子供心にもキツかったことが能力発現のきっかけだと考えていた。
しかし、3か月前に私が「あいつ」の担当に異動してから、周りの人間は皆その名字を面白がるようになった。理由は言わぬが花というものだ。これだけならまだよかったのだが、彼女は「あいつ」に対してあるトラウマを抱えていた。

「私、████が嫌いじゃない?」
「ああ、ミホ前そんなこと言ってたね。でも、だからって三木って呼ばれるのがそこまで気になる?」