SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス:Euclid Keter
特別収容プロトコル:SCP-XXX-JPは、その特性から財団の管理下で収容することは困難です。SCP-XXX-JP-A実体の発見報告またはSCP-XXX-JPの発生事案が報告された場合は速やかに機動部隊ほ-2(忍者狸)を派遣し、地元警察と連携の上カバーストーリー交通事故による通行規制を流布し、報告地点から周囲■■Kmの道路上への一般人の侵入を阻止してください。
SCP-XXX-JP発生時は機動部隊員でSCP-XXX-JP-Aの追跡をし、SCP-XXX-JP-B実体群が出現した場合は速やかに回収後サイト8119の低危険度物品収容ロッカーに保管してください。SCP-XXX-JP-Bを用いた実験は、レベル3以上のセキュリティークリアランスを持つ職員1名以上の承認を得た上でDクラス職員を用いて行ってください。なおSCP-XXX-JP-Bの内容物を完全に消費する行為は物品の異常性を消失させる結果になる事に留意してください。SCP-XXX-JP-Aの捕獲作戦は、現在成功していません。
SCP-XXX-JP-AからSCP-XXX-JP-Cの出現が確認された場合、速やかにサイト8119の北本博士に連絡をしてください。SCP-XXX-JP-Cに対する実験は重大な人的資源の損失かつSCP-XXX-JP個体数の増加が危惧されるため、現在無期限に凍結されています。(詳細はインシデント3を参照)
説明:SCP-XXX-JPは未知の手段で日本国内の高速道路に出現する車両実体(以下SCP-XXX-JP-Aと呼称)と、その実態から出現する異常性を持つ物品群(以下SCP-XXX-JP-Bと呼称)です。SCP-XXX-JP-Bは現在SCP-XXX-JP-B-1からSCP-XXX-JP-B-7までがサイト8119の低危険度物品収容ロッカーに収容されています。SCP-XXX-JP-Aはおよそ時速■■Kmで走行する、白い車体に懐古酒造と黒字でペイントされたトヨタダイナKK-XZU341です。車両のナンバープレートは出現地域に沿ったプレートが装備されていますが、車両本体は出現時に付いた傷がその後も確認できたため同一車両であると思われます。(詳細はインシデント1を参照)
追記:インシデント3事案発生以降、同様の車体で赤字のペイントを持つ実体も確認されています。
SCP-XXX-JP-Aはその荷台に一般的に貨物の移送時に使用されるグリーンシートを被せており、シートのふくらみは貨物の移送中であることを示しているにも関わらず肉眼・録画・クラスA霊的実体観測装置その他如何なる方法を用いてもシートの中身を観測する試みは失敗していますが、時折SCP-XXX-JP-Aの荷台から滑り落ちる様に出現する物品は非異常性の物品と同様に観測・接触することが出来ます。またSCP-XXX-JP-Aを構成する物質は通常のトヨタダイナKK-XZU341と同様のものであるにも関わらず強力な破壊耐性を持っており、その特性から意図的に破壊・損傷を与える試みは現在まで失敗しています。
SCP-XXX-JP-BはSCP-XXX-JP-Aの荷台から時折滑り落ちる様に出現するガラス瓶です。瓶の形状は内容物の液体に沿ったものが選ばれています。瓶自体を構成する物質もSCP-XXX-JP-A同様非異常性の組成を示すにも関わらず強力な破壊耐性を持ちますが、内容物が完全に消費された段階でその特性を失います。内容物の多くは通常の酒類と同様の性質を示しており、消費した際も通常の飲酒と同様の反応を示しますが、摂取した量に応じて特定の幻覚・幻聴を体験し、その後軽度の精神汚染の兆候を示すようになります。(詳細は実験ログ1~6を参照)この精神汚染の種類は様々ですが、いずれの場合もクラスA記憶処理剤の投与で完全に回復します。稀にあらゆる記憶処理を受け付けない場合があるので、実験の非検体は必ずDクラス職員を用いるようにしてください。
SCP-XXX-JP-CはSCP-XXX-JP-A実体の運転手とみられる非異常性の人型実体で、無地の白い作業着を着用した40代程度とみられるモンゴロイド系の男性です。SCP-XXX-JP-C自らを思い出の案内人と呼称しており、酩酊街との関連が示唆されています。(詳細はインタビューログ1を参照)
追記:確認はされていませんが、北本博士が新たなSCP-XXX-JP-Cとなった可能性があるので、確認した場合は速やかに木崎研究員まで報告を上げてください。
発見経緯:SCP-XXX-JPは兵庫県■■市にある■■高速道路を走行中の一般車両から、前方のトラックから落下物があり、高速道路内に残留している可能性が高いので撤去して欲しいという通報があり、回収に向かった現地のエージェントが無傷の酒瓶を発見した事でその異常性が発見されました。その後各地の高速道路を調査したところ無人の高速道路に突如出現し、一定距離を走行後消失する不審な車両が確認され、車両から前述と同様の性質を示す酒瓶が出現した事でアノマリーに分類されました。
実験記録:以下は出現したSCP-XXX-JP-Bに対する実験記録です。
実験ログ1
対象:SCP-XXX-JP-B-1(「秋の日の別れ」とラベリングされたアルコール度数40.0%のジンに属する蒸留酒)
実験方法:非検体D-14415にSCP-XXX-JP-B-1内容物100mlを接種させる。
結果:接種後D-14415は約3分間硬直。その後は通常の酒気帯び状態に移行。実験後のインタビューで硬直中は幼年期の夏休みに捕獲し飼っていたカブトムシが秋になり死亡し、その亡骸を近くの公園に埋めに行ったことを思い出していたと証言。実験から24時間経過後、軽度の鬱症状と小型の生物(特に昆虫類)に対する忌避感の減少が確認された。Aクラス記憶処理剤の投与でこれらの精神兆候は見られなくなったが実験による記憶自体は鮮明に記憶した状態が続いた。
所見:瓶にラベリングされた文言と関連のある記憶が想起される類いのオブジェクトであると考えられる。次回は別のDクラス職員に同じものを接種させてみよう。——北本博士
実験ログ2
対象:SCP-XXX-JP-B-1(実験ログ1のものと同様)
実験方法:非検体D-14416にSCP-XXX-JP-B-1内容物100mlを接種させる。
結果:実験ログ1と同様
所見:想起される記憶は非検体に寄らないようだ。という事は誰かの記憶を追体験しているという事になるが、記憶の主人公は非検体自身であるので、誤った記憶を植え付ける類いのオブジェクトであるようだ。——北本博士
実験ログ3
対象SCP-XXX-JP-B-2(「いつか消える苦味」とラベリングされたアルコール度数23.5%のカンパリに属するハーブ酒)
実験方法:非検体D-14415とD-14416にそれぞれ100mlずつ接種させる。
結果:両者とも約3分間の硬直の後通常の酒気帯び状態に移行。実験後のインタビューで硬直中は幼い頃によく遊んだ従姉妹に恋心を抱いていた事を思い出していたと証言。実験から24時間経過後、心拍数の上昇と精神状態の向上を確認。
補遺:D-14415の身辺調査を行ったところ、D-14415には従姉妹と呼べる血縁関係を持つ人物は存在していなかった。
所見:存在しない記憶を植え付けるだけで、存在しない人物を出現させるまでの効果はないようだ。——北本博士
実験ログ4
対象:SCP-XXX-JP-B-3(「大後悔時代」とラベリングされたアルコール度数25.0%の麦焼酎に分類される蒸留酒)
実験方法:非検体D-14415とD-14416にそれぞれ100mlずつ接種させる。
結果:両者とも約3分間の硬直の後通常の酒気帯び状態に移行。実験後のインタビューで硬直中は大学生の頃試験前の時期に友人と海に行き、気温が低い中飛び込んだ所体調を崩し試験で失敗した事を思い出していたと証言。実験から24時間経過後、軽度の鬱症状と若干の思考能力の向上を確認。
所見:今のところどのSCP-XXX-JP-Bも深刻な結果にはなっていないようだが、これが誰か特定の個人の記憶なのか不特定多数の人物の記憶から抜粋されているのかは調査に値するだろう。——北本博士
実験ログ5
対象:SCP-XXX-JP-B-4(「星雲」とラベリングされたアルコール度数15.0%の日本酒に分類される醸造酒)
実験方法:非検体D-14415とD-14416にそれぞれ150mlずる接種させる。これによってSCP-XXX-JP-B-4内容物を全て消費した。
結果:両者とも約3分間の硬直の後通常の酒気帯び状態に移行。実験後のインタビューで硬直中は小学生の頃家族と旅行へ行き、プラネタリウムを鑑賞した事を思い出していたと証言。実験から24時間経過後、天体に関する知識量の増加を確認。精神状態に特筆すべき変化の兆候は見られなかった。内容物を完全に消費しきったSCP-XXX-JP-B-4は非破壊耐性を消失し、通常のガラス瓶と同様に破壊されるようになった。
所見:SCP-XXX-JP-B群は内容物を消費し尽すと異常性は消失するようだ。今後の実験では留意しておこう。また記憶はそのまま知識量としても蓄積されている事にも留意すべきだろう。今後の実験時に他のSCPの収容違反が起きかねない知識を持つSCP-XXX-JP-Bが存在しないとも限らない。——北本博士
実験ログ6
対象:SCP-XXX-JP-B-5(「月の盃」とラベリングされたアルコール度数20.0%の不明な液体。組成は人由来の成分が醸造されたものである事を示している。)
実験方法:非検体D-14415と非検体D-14416にそれぞれ100mlずつ接種させる。
結果:[削除済み]
所見:非検体の反応を見るに恐らくこの記憶は[削除済み]——北本博士
第6回実験の終了後、山口県■■市にある■■高速道路の下り線にてSCP-XXX-JP-A実体の発生を確認。財団の追跡調査の途中、SCP-XXX-JP-Aが単体事故を起こす事案が発生しました。(インシデント1事案)
インシデント1
20■■年■■月■■日、山口県■■市にある■■高速道路の下り線にてSCP-XXX-JP-A実体の発生を確認。特別収容プロトコルに従い機動部隊ほ-2(忍者狸)を派遣する際、当オブジェクトの研究主任である北本博士からの同行申請があり、数名のエージェントと共に追跡作戦に同行した。当初発生したSCP-XXX-JP-Aは通常通りに走行していましたが、突風に煽られ高速道路の防音壁面に軽度の衝突をした。その後SCP-XXX-JP-Aは一時停車し、内部からSCP-XXX-JP-Cが出現。以下はその際のインタビュー記録である。
インタビュー記録
対象:SCP-XXX-JP-C
インタビュアー:北本博士
注記:本記録は正式な聞き取りの申請の元で行われた物ではなく、突発的事故によって行われる事となったものである。
記録開始
事故後、SCP-XXX-JP-Aから不明な人型実体(以下SCP-XXX-JP-C)が降り立ち、SCP-XXX-JP-Aの車体を観察している。北本博士がSCP-XXX-JP-Cに近付き声をかける。
北本博士:大丈夫ですか?
SCP-XXX-JP-C:あぁ、ちょっと風に煽られちゃったみたいでね。ここ暫くはあんまり他の車が居なかったから油断しちまったよ。
北本博士:車は動きそうですか?
SCP-XXX-JP-C:あぁ、ちょっと壁をこすった程度だからな、問題ねぇと思うよ。
ここでSCP-XXX-JP-Cは車体から北本博士に視線を移す。
SCP-XXX-JP-C:それよりお嬢ちゃん、こんなところで立ち往生してる方がよっぽど危ねぇからさっさと車に戻りな、あんがとな。
北本博士:その事については心配いりません。現在この路線は通行規制をしているので。
SCP-XXX-JP-Cは少し驚いたような表情をしているが、言葉は発さない。
北本博士:それよりも、あなたに少しお伺いしたい事があるのですが、よろしいですか?
SCP-XXX-JP-Cは困ったような表情を作っている。
SCP-XXX-JP-C:いやぁ、折角のお誘いで申し訳ないんだが、俺は配達の途中でな。
そう言うとSCP-XXX-JP-Cは車両に乗り込もうとするそぶりを見せる。機動部隊とエージェントがSCP-XXX-JP-Cの捕獲を試みようとするも、全ての試みはSCP-XXX-JP-Cの身体をすり抜けるという形で失敗する。
SCP-XXX-JP-Cは車両に乗り込みそのまま発進してしまう。
記録終了
補遺: