KowaretaRobotの工作室

書きかけ

 

 「お届けものです。██さんでよろしいでしょうか?」
 「はい、そうです。」
 「では、こちらにハンコかサインをお願いいたします。」
 
 


 
 

 息子が失踪してから数か月間、私は失意と後悔の念にかられていた。
 あの時強く言わなければ。あの時助けていれば。あの時止めることが出来ていれば。
 今更そのようなことを思っていても、息子が帰ってくるわけでもない。完全に後出しになってしまった答えであるというのに、まだ私は後悔をしてため息を吐いている。夫はそれを知ってか知らずか、失踪して一か月経った頃から息子の話を口に出そうとしない。私がさめざめと泣いているのを疎ましく思ったのかもしれない。

 息子は俗に言う不良だった。反抗期をこじらせたのか、何かに憧れていたのか、それは私たちには到底分かり得る物ではなかった。単純に私たちの間に会話が足りなかった、と言われてしまえばそれだけなのだけれど。家に帰らないのはよくあることで、私たちもそれに関しては諦めていた。不良行為をすることも、痛い目を見ればいつかやめてくれるのではないかと期待していた。

 そう思っていただけに、息子から来たあの手紙には恐怖せざるを得なかった。

僕は間違っていました。
父さん母さんに迷惑をかけてしまったのは、反省しきりです。
だからきっと、僕は勝ってみせます。
この世の全ての悪に。
それではさようなら。僕は正しいことを成してきます。

 書いている文字が息子の書いたものとは思えなかった。いや、このお世辞にも綺麗とは言えないクセのある字は完全に息子のもので、封筒に書いていた名前も間違えようのない息子のもの。だから、本当に本物のはずなのに。
 どうしてか怖かった。
 
 この手紙から数ヶ月経った今でも息子は帰ってこない。捜索願を出しても進展は見られない。諦めろ、と声をかけてくる周りの方が正しいのかもしれない。これからはもっと気丈に生きていくべきなのかもしれない。分かってはいるけれど、今の私はどうしようも無かった。
 
 また涙が零れそうになるのをぐっとこらえながら、先ほど届いた荷物を見る。
 綺麗な木の箱で、送ってくれたのは――
 
 
 


 
 少し眠っていたようだ。
 あんなにさめざめと泣いていた私を心配して、夫がセラピーに連れ出してくれたことを思い出す。どうして眠ったのか思い出せないけれど、きっと先生に話すときに泣き疲れてしまったのだろう。それほどまでに息子の死がストレスになっていたのかもしれない。
 私が目覚めたことに気づいたのか、セラピーの先生がやって来た。

 「ああ、先生。ありがとうございました。私、なんだか乗り越えられそうです。」