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異常性発現前のSCP-XXX-JP

アイテム番号: SCP-XXX-JP

オブジェクトクラス: Euclid Safe

特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは現在、低脅威度物品収容ロッカーに保管されています。SCP-XXX-JPの活性化が再度確認された場合には、十分な防音対策を行った収容チームで対応し、特別収容プロトコルをEuclid時のものに差し戻してください。SCP-XXX-JP-1が録音された記録媒体はEuclid時と同様に保管します。

説明: SCP-XXX-JPは、以前サイト-81██において使用されていた財団フロント企業製の天井スピーカーです。同型の機器と比較して外見に目立った差異は存在しません。非活性化時には通常のスピーカーと同様に使用することが可能です。しかし、活性化時には如何なる信号も受け付けなくなり、電力の供給を必要としなくなります。

SCP-XXX-JPは、財団名簿において、サイト-81██に所属している職員、もしくはサイト-81██に3ヶ月以上所属していた職員(対象職員と指定)が死亡しておよそ3~5日後に活性化します。活性化時には、SCP-XXX-JPは「[活性化対象職員の死亡日時]没、[活性化対象職員の氏名]に捧ぐ」という男性による音声の後に、モーリス・ラヴェル作曲のピアノ組曲、"Le Tombeau de Couperin(邦題: クープランの墓)"の内1曲1を放送します。この一連の放送をSCP-XXX-JP-1と指定します。

SCP-XXX-JP-1の楽曲部を耳にした人物は、演奏時間内において限定的な幻視を体験します。その内容はSCP-XXX-JP-1の冒頭で触れられた対象職員に関するものであり、通常の場合は財団における貢献などに関する内容を対象職員の主観視点で複数体験することになります。この際、0916事件(通称"嘆きの水曜日"事件)に関連する功績についての幻視が特に報告されることは特筆すべき点です。多くの場合はこの時点で、被験者は対象職員に対して好意的な反応を示します。なお、SCP-XXX-JP-1の異常性は、録音したものにも発生することが明らかとなっています。

演奏が終盤に近付いてくると、幻視は対象職員の死亡直前のものに変化します。この際、被験者は著しいストレスを感じ、場合によってはストレス性障害を発症する事例も存在します。また、対象職員が死亡時に認識災害やミーム汚染に感染していた場合には、被験者もそれらに感染する可能性が生じます。

SCP-XXX-JP-1が終了すると、被験者は他者による思考の想起を体験します。これは対象職員との思考の同調現象が発生しているものと考えられています。実験により対象職員との思考の同調現象である説は疑問視されています。この思考が何故想起されるのかに関しては、現時点では判明していません。また、被験者がストレス性障害の発症やミーム汚染等への感染を引き起こしていない場合、被験者は対象職員に対して自身の文化圏における様式で哀悼の意を捧げます。この行動に関しては、実験により強制力は弱いことが判明しています。

SCP-XXX-JPは、0916事件の後、復興作業中のサイト-81██において突如として異常性を発現させました。この事案(後に事案XXX-01と指定)により職員██名が異常性に曝露し、██名がストレス性障害を発症、██名がSCP-███-JPのものと考えられるミーム汚染に感染しました。緊急対策チームにより一時的に防音設備の備わった部屋に隔離され、幾度かの実験の後に現在の特別収容プロトコルが構築されました。この事案においてSCP-XXX-JPの██時間に渡る連続的な活性化が確認されており、これによりSCP-XXX-JPの活性化時間の上限は存在しないものと推測されています。

補遺1: SCP-XXX-JP-1の冒頭部の音声の声紋鑑定を行ったところ、およそ98%の確率で元サイト-81██管理官である近衛 ██のものであることが判明したため、SCP-XXX-JPと近衛 ██の間に何らかの関連性があると結論付けられました。しかし、事件以前にサイト-81██に所属していたエージェント・七尾の他多数の職員により、この結論に対し異議が申し立てられました。以下の記録は提出された異議の一部です。

エージェント・七尾による異議

私、エージェント・七尾はこの度のSCP-XXX-JPの音声鑑定を理由とする結論に対し異議を申し立てます。異議の根拠となるのは、近衛元管理官の勤務態度です。彼は生前、財団の業務に対し冷徹に取り組んでいました。財団を第一に考えている、といいますか、ともかく無用に心を動かすことのない人物でした。

まず、例の事件以前の話になりますが、SCP-███-JPの収容違反時、研究員が3名にエージェントが2名、そして収容チームのメンバーが2名、死亡しました。私は近衛元管理官にその旨を報告する任務を担当したのですが、彼の反応は「死者が少なく抑えられて大変によろしい」というものでした。

次に、近衛元管理官の担当していたオブジェクトについてです。彼はSCP-███-JP、SCP-███-JPそしてSCP-███-JPの担当をしていました。これらのアノマリーは全て収容プロトコルに人間の犠牲が必要となるものです。そしてその収容プロトコルは近衛元管理官が策定していました。

また、大隅博士の件もです。彼は近衛元管理官が管理官になる前の同僚で、親しい仲であったと博士本人から聞いたことがあります。ただ、大隅博士は担当オブジェクトが発現した未確認の異常性に曝露したことで自身も異常存在となり、現在は収容対象です。私はこの件について近衛元管理官本人に尋ねる機会があったのですが、その際の反応も実に冷淡で、「収容以外に何がある。下らないことを訊くものではない」とおっしゃられました。他にも具体例はありますが、冗長になるため割愛させていただきます。

ともかく、前述したように近衛元管理官は、人の死や不幸に対しても極めて冷静に、冷淡に対応できる人物です。何らかの異常存在が彼の声を真似ているのではないでしょうか?

提出された異議により、記録されたSCP-XXX-JP-1の内容と併せて鑑定の結果に対する再検討が行われました。記録されたSCP-XXX-JP-1については以下を参照してください。

SCP-XXX-JP-1記録簿の一部

対象職員: 門川博士(SCL3)
死亡日時: 20██/10/12
死因: 胃癌
楽曲: "Rigaudon"
詳細: 録音媒体の異常性を確かめる実験に用いられた例。被験者となったD-XXX-03は幻視した内容として、門川博士が収容に貢献したSCP-███-JPの収容計画の立案時の光景や、他の研究員を気遣う姿、0916事件後のサイト復興及び事件時の状況を踏まえた更に効果的な収容環境の確立などに言及した。死亡時の幻視は病室の天井を見ていただけとしたが、被験者は進行していたプロジェクトが達成させられないことに対する無念を想起したと証言し、対象職員との思考の同調現象が発生するものと考えられた。

対象職員: エージェント・宇佐美(SCL2)
死亡日時: 20██/10/27
死因: 不明 溺死
楽曲: "Fugue"
詳細: 行方不明となっていた対象職員を対象とする例。被験者となったD-XXX-03は幻視した内容として、対象職員によるSCP-███-JPに関する情報の発見や、新人エージェントへの大型収容違反時の対応に関する効果的な教育の考案、0916事件時に同僚と協力してSCP-███-JPの再収容に取り組み、同僚を失いながらもそれを成功させたこと等に言及した。死亡時の幻視は休暇中に1人赴いた池において船から転落して落水し沈んでいったという内容で、被験者は「財団エージェントとしてこのような死に様は余りにも酷い」という思考の想起を証言した。また、幻視の内容から推測される現場を調査したところエージェント・宇佐美の死体が発見された。
特筆事項: この例により、対象職員が財団によって死亡が確認されていない場合でもSCP-XXX-JP-1が発生することが判明。同時期にSCP-XXX-JPを有効活用する案が提出されたものの、却下。

対象職員: D-████(本名: 岩本 ██)
死亡日時: 20██/11/19
死因: 実験███-05におけるSCP-███-JPへの曝露
楽曲: "Toccata"
詳細: Dクラス職員がSCP-XXX-JP-1の対象となった初の例。この例までサイト-81██所属のDクラス職員の死亡ではSCP-XXX-JPは活性化していなかった。SCP-XXX-JP-1冒頭の発言は「20██/09/26没、D-████、本名岩本██に捧ぐ」であった。被験者となったD-XXX-03は幻視した内容として、逮捕前の親孝行やDクラス職員同士の争いの仲裁、0916事件時にパニック状態に陥ったDクラス職員の集団を律したこと、それによる効率的なDクラス職員管理法の作成への間接的な貢献などに言及した。死亡時の幻視が開始するとD-XXX-03は悲鳴の後に嘔吐。幻視の内容は実験███-05と変わらないことが確認されたが、被験者は「Dクラスとしては模範的な人物であったのに少しばかり残念だ」という思考を想起したと証言した。これにより被験者の想起した思考は、対象職員との思考の同調現象の結果ではない可能性が浮上した。

対象職員: 金町研究員(SCL2)
死亡日時: 20██/11/25
死因: 収容違反によるSCP-███-JPへの曝露
楽曲: "Prelude"
詳細: SCP-XXX-JPの異常性発現後、初の小規模収容違反による死亡者を対象とする例。被験者となったD-XXX-04は幻視した内容として、SCP-███-JPの特別収容プロトコル改善への貢献や、0916事件時にSCP-███-JPの異常な活性化にいち早く気付き対処した点、事件時には収容違反していなかった多くの異常存在の収容手順を改めて見直した点などに言及した。死亡時の幻視は収容違反時のものと相違点はなく、被験者は「極めて優秀な人材だったが、それを抜きにしたとしても死ぬには余りにも惜しい人物であった」という思考を想起したと証言した。
特筆事項: 担当研究員の1人である樽木博士が想起された思考が感傷的なものになりつつあると指摘した。

これまでに発生したSCP-XXX-JP-1実例から、SCP-XXX-JP-1によって想起される思考は対象職員ではなく第三者によるものであると推測されています。

及び楢木博士による指摘から、

詳細な調査が進められています。

補遺2: 20██/06/08、サイト-81██に所属していたエージェント・原城の死亡が確認されましたが、10日以上経過してもSCP-XXX-JPは活性化しませんでした。SCP-XXX-JPの無力化が疑われましたが、その後槇下研究員の死亡時にSCP-XXX-JPの活性化が確認されています。調査の結果、エージェント・原城が0916事件以降に財団エージェントとして採用されたことが原因ではないかと推測2されており、現在SCP-XXX-JPの活性化条件の再定義が検討中です。

補遺3: 20██/08/12、エージェント・七尾の他多数の職員により提出された、SCP-XXX-JP-1の冒頭部の音声の声紋鑑定によるSCP-XXX-JPと元サイト-81██管理官近衛 ██との関連性に関する異議に対し、当時研究職を兼ねていた近衛元管理官の下で研究補佐として5年ほど勤務していた三潴博士より反論が提出されました。以下に三潴博士の反論を掲載します。

三潴博士による反論

私、三潴██はエージェント・七尾他多数の職員による異議申し立てに対し反論を行います。反論の根拠となるのは、0916事件前及び当時における近衛元管理官の行動です。結論から述べますが、彼は財団を第一に考えていた人物ではありません。彼は、財団を第一に考えようとしていた人物です。

まず、エージェント・七尾他数名の職員が指摘した収容違反における死者への反応です。近衛元管理官は報告者の退出後、すぐに上層部に対し"追悼式の開催"に関する許可願の書類を作成していました。私が記憶している限りではその許可が出たことはありませんでしたが、返答を受け取った近衛元管理官が深い嘆息と共に黙祷をしていた姿は強く印象に残っています。

近衛元管理官が担当していたオブジェクト、そしてその収容プロトコルについても、彼は日々そのプロトコルの改善について取り組んでいました。実験によって判明する事実を元に、なるべく人間の犠牲が出ないようなプロトコルにできないかと努力をしていました。彼はよくメモ書きを残していましたので、遺品を調べればそのことは分かるはずです。

次に大隅博士の件ですが、彼は当初「自分が研究を請け負いたい」旨を一度だけ語ったことがあります。また、それと同時に「自分は不適切である」とも。その理由を尋ねたところ、「研究対象に必要以上に入れ込むことは財団職員としてあってはならないことだ」と小さく口にしました。それ以降近衛元管理官は大隅博士について語ることはありませんでした。

また、0916事件に際しても、近衛元管理官は最期までサイトに残り、結果SCP-███-JPへの曝露により命を落としています。複数のオブジェクトの収容違反が発覚した時点で、近衛元管理官は他サイトへの連絡、即応部隊の要請、危険区画の封鎖を済ませていました。間違いなく管理官としての義務は果たしており、その時点で彼はサイト-81██より脱するべきだったのです。私は脱出を提案しましたが、彼は拒否しました。曰く、「まだ職員の完全な避難が完了していない。人的被害は少なく抑えなければならない。君も早く逃げることだ」と。私の覚えている最後の姿は、逃げ遅れている研究員に館内スピーカーを通じて的確な避難経路を指示する姿でした。

少なくとも、SCP-XXX-JPに関係していない理由としては、エージェント・七尾らの根拠は不十分です。彼は冷静でしたが、決して彼らの考えているほどに冷淡ではありませんでした。以上を異議に対する反論と致します。

サイト-81██に配備されていた監視カメラの映像記録の調査の結果、三潴博士の言及した0916事件における近衛 ██の行動は事実であることが確認されました。加えて、サイト-81██から上層部宛の"追悼式開催"に関する許可願やプロトコルの改訂案を綴った手帳の存在も確認されています。

また、異議やそれに対する反論を考慮した再調査により、事案XXX-01において近衛 ██を対象とするSCP-XXX-JP-1の発生は確認されていなかったことが判明しました。これにより20██/██/██現在、近衛 ██がSCP-XXX-JPに関係しているとして、詳しい調査が行われています。

補遺4: 20██/12/21、三潴博士3の死亡によるSCP-XXX-JP-1の発生後、SCP-XXX-JPより近衛 ██のものと見られる音声で、その時点までにSCP-XXX-JP-1の発生が確認された計███名分の対象職員の名前が言い連ねられました。その後近衛 ██のものと見られる音声は「以上███名、束の間の時を重ねながらも、不朽にして連綿たる礎となったもの達へ。これにてサイト-81██追悼式を終了する。皆、今まで本当にご苦労だった」と発言し、10秒後に近衛 ██を対象とするSCP-XXX-JP-1と見られる放送が発生しました。

通常のSCP-XXX-JP-1との相違点として、冒頭の発言の音声が不明な大人数の人間の音声に変化しており、その内容は「20██/12/21、長きに亘る務めを終えた元サイト-81██管理官近衛 ██に捧ぐ」となっていました。また、楽曲部においても"Le Tombeau de Couperin"を構成する全6曲が流された他、幻視も発生しませんでした。

この事案(事案XXX-02と指定)の発生後、現在まで10年に亘ってSCP-XXX-JPの活性化は確認されていません。この結果に鑑みてSCP-XXX-JPは無力化されたものと判定され、特別収容プロトコルの改訂とオブジェクトクラスの再分類4が行われました。

画像: CC-BY 2.0 撮影者: Chris Baranski
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