アイテム番号: SCP-1927-JP
オブジェクトクラス: Euclid(暫定)
特別収容プロトコル: SCP-1927-JPはサイト-8100の大型生物収用室に収用されていると思われます。SCP-1927-JPの異常性を完全に収容する手段は今もって不明です。場合によってはOCのKeterへの変更が行われるべきです。
なお、アサギ氏については現在のところ六畳の一般的な居室が与えられています。
説明: SCP-1927-JPの存在はどのような手段でも知覚できません。SCP-1927-JPの収用以後、収用室内にSCP-1927-JP及びその痕跡等を観測する試みは、その全てが失敗に終わっています。ただし、収用時にはこのような異常性性質はなかった、あるいは使用されていなかったと収用に参加したエージェントによって報告されています。
アサギ氏は14歳の日本人男性であり、SCP-1927-JP収用の際にSCP-1927-JPの関係者として財団に保護されました。アサギ氏はSCP-1927-JP(本人は”紫炎の暗黒竜ヴァーザレク・アドミア”と呼称)の姿を確認でき、それはアサギ氏が創作した架空の生物に酷似している小型の黒い竜で、紫色の炎を吐くと主張しています。アサギ氏の異常性の有無は現在のところ不明です。
付録:実験記録
膨大な実験数に反して得られた結果はほとんどないため、得られた結果のみ記載します。
- 直接的・間接的、五感のいずれか、生物種及び性別や文化の差違、またSCP-1927-JPとの物理的な距離や、映像記録と確認の間の時間の差等を問わず、SCP-1927-JPの存在を知覚することは、現時点では不可能である。
- SCP-1927-JPの収用を行ったエージェント達は当初自分たちが収用した異常存在についてアサギ氏と同様の描写を行ったが、彼らもSCP-1927-JPの存在を確認することはできなかった。
インタビュー記録(2019/8/6):
研究員: どうも。本日はよろしくお願いします。
アサギ氏: おう。よろしくな。
研究員: [SCP-1927-JPの収用室の監視カメラの映像をアサギ氏に見せる]この部屋に何か見えますか?
アサギ氏: ん? ヴァーザレクだな。元気そうで何よりだ。
研究員: それは何ですか?
アサギ氏: 俺の使い魔にして、親友さ。どんな剣も通さない黒い鱗が特徴の竜の一種。そしてヤツが吹く紫色の炎を受けて立っていた者はいない。だからよく怖がられるけど、本当は優しくていいやつなんだ。
研究員: ああ、はい。すると、貴方はこの部屋に、そのような竜がいると言うのですか?
アサギ氏: いると言うのですか? っていうか、いるじゃん。見えないの?
研究員: 残念ながら。
アサギ氏: そっか。まあ、俺みたいな、あいつに選ばれし者にしか見えないのかもな。
補遺1: 改めて、監視カメラ映像の確認、またDクラス職員を用い、SCP-1927-JPの収用室が直接確認されましたが、アサギ氏の言うような竜はもちろん、何の異常存在も確認されませんでした。
追記(2019/8/22)
以下は、最新のインタビュー記録のうち、特に重要な部分を抜粋し、仮掲載したものです。
インタビュー記録(2019/8/22)(一部抜粋):
研究員: うーん……やはり、私たちにはSCP-1927-JPの姿はまったく確認できません。
アサギ氏: いるってば。ヴァーザレクが。紫炎の暗黒竜ヴァーザレク・アドミアがいるんだって。SCPなんとかじゃなくてさ。
研究員: 紫炎の暗黒竜ヴァーザレク・アドミアが、ねぇ……
[研究員が傍らにあったパソコンに写るSCP-1927-JPの収用室の映像をちらりと見る]
研究員: あっ!? いる!?
補遺2: SCP-1927-JPの異常性を確定させるためのさらなる実験が計画中です。
アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは現在、相模湾(北緯35度06分 東経139度30分)地下23km兵庫県淡路市(北緯34度35分54秒、東経135度2分6秒)地下16kmに、SCP-XXX-JPの頭部を覆うように建設された特殊収容室に収容されています。サイト-8222、8223日本支部の全職員は、必ず半年に一度以上この報告書を閲覧し、SCP-XXX-JPの存在を認識し続けてください。これは特殊管制室XXX(”鯰すくい”)によって監査されます。また、特殊情報部隊28(”備忘録”)によって、事象SCP-XXX-JP群、特に直近の数件についての情報は、一般向けに編集された上で、ネット、テレビ、新聞等各種メディアで定期的に発信されます。
説明: SCP-XXX-JPは現在全長約4kmのナマズ(Silurus asotus)に見える生物です。異常な巨体以外に外見上でナマズと異なる点はありません。ただしSCP-XXX-JPが体表に分泌する特殊な粘液はあらゆる物理的刺激を大きく軽減することができ、これによってSCP-XXX-JPは圧力等の影響を軽減し、現在存在しているような地下深くでも問題なく生存することが可能です。またSCP-XXX-JPは体内でのエネルギーの受け渡しにATPを用いず、呼吸も行いません。既存の生物にない特徴を持っていながら、外見が我々の知るナマズに酷似している理由は不明です。
旧蒐集院の調査によって、SCP-XXX-JPは日本国土上に定住しているヒトのSCP-XXX-JPに関する記憶を”食べ”、栄養としていることが解っています。
SCP-XXX-JPは通常時はほぼ目立った行動をしませんが、日本国土上に定住するヒトのSCP-XXX-JPに関する記憶が枯渇し始めると活性化し、事象SCP-XXX-JPを発生させます。
事象SCP-XXX-JP
事象SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JPの引き起こす地震です。SCP-XXX-JPが旧蒐集院に発見されてから現在までに8回発生しています。
事象SCP-XXX-JPは3つの段階を経て進行します。
段階 |
説明 |
深度1 |
SCP-XXX-JPが日本領域内のある程度ランダムな場所に転移し、M7.0以上の巨大地震を発生させる。 |
深度2 |
震央地付近に様々な精神異常を発生させる。 |
深度3 |
日本領域全域に様々な精神異常を発生させる。 |
事象SCP-XXX-JPはSCP-XXX-JPの餌となるSCP-XXX-JPに対する記憶を作り出す目的で起こされます。より多くの事象SCP-XXX-JPの情報を日本国民が知ることで早期収束、あるいは防止が可能と考えられます。
発生日 |
発生地 |
規模(M:深度) |
被害 |
説明 |
1454/12/12? |
東北太平洋沖 |
Mw8.4:深度3? |
不明 |
一般に享徳地震として知られる。津波による甚大な被害が発生したとされる。深度3への進行により享徳の乱が発生したと考えられる。詳細資料なし。 |
1510/9/11 |
大阪北部 |
M7.0?:深度3 |
百数十人死亡 |
一般に永正地震のひとつとして知られる。深度3への進行により、実際には存在しなかった複数の地震を日本国民は存在したものと認識した。詳細資料なし。 |
1611/12/2 |
三陸沖 |
M9.0以上:深度3 |
死者行方不明者1万人強 |
一般に慶長三陸地震として知られる。深度3への進行で反キリスト教感情が異常に高まり、江戸幕府による禁教令の発布、各地でのキリシタン大名の謀殺が発生した。 |
1703/12/31 |
南関東付近 |
M8.1~8.2:深度3 |
死者6.7千人、全壊家屋2.8万棟 |
一般に元録地震として知られる。特に著しい社会不安を引き起こした。宝栄の大噴火との関係性は不明。 |
1771/4/24 |
八重山列島付近 |
M7.6:深度2 |
死者1.2万人 |
一般に八重山地震(明和の大津波)として知られる。八重山列島付近の住民に拒食症を引き起こし、明治時代初めには被害地域の人口は事象発生以前の1/6程度まで低減した。旧蒐集院の流布した”人魚伝説”により、深度2で事象が終了した。 |
1854/12/24 |
南海道沖 |
M8.4:深度1 |
死者行方不明者数千人 |
一般に安政南海地震として知られる。旧蒐集院による複数の一般への情報公開や伝説創作により、深度1で事象が終了した。 |
1923/9/1 |
相模湾(北緯35度06分 東経139度30分) |
M7.9~8.1:深度3 |
死者行方不明者10万人以上、被害総額45億円。加えて旧蒐集院に大打撃。 |
事象SCP-XXX-JP/1923/9/1参照。 |
1995/1/17 |
兵庫県(北緯34度35分54秒 東経135度2分6秒) |
M7.3:深度1 |
死者行方不明者6437人、被害総額約10兆円 |
一般に阪神淡路大震災として知られる。財団や一般メディアによる情報流布によって、深度1で事象は終了した。 |
事象SCP-XXX-JP/1923/9/1
事象SCP-XXX-JP/1923/9/1は、一般に関東地震として知られる地震であり、事象SCP-XXX-JPで最も大きな被害が出た事案です。当時東京に本部を置いていた蒐集院及びSCP-XXX-JP対策チームが壊滅したことで、事象SCP-XXX-JPへの対応が遅れたことが主な原因です。深度3への進行により発生した精神異常によって、在日中国人/朝鮮人また一部の日本人集団が数千人規模で民間人に殺害されました。
財団、蒐集院、財団によって限定的に情報を開示された大日本帝国政府の三者共同で、当時の内大臣後藤新平を代表とし発足した帝都復興院が事後対応にあたりました。事態収集後、政府関係者にはBクラス記憶処理が施されました。
捕遺: 旧蒐集院や財団による対策も空しく、約七十年周期で事象SCP-XXX-JPが発生し続けているのは、事象SCP-XXX-JPを実際に経験した世代の人々が、寿命によって死亡するためと考えられています。メディアを用いて事象SCP-XXX-JP非経験世代へ事象SCP-XXX-JPの記憶を定着させる試みは続けられていますが、現在のところ目立った成果はなく、このまま進行した場合、2070年前後に再度事象SCP-XXX-JPが発生すると考えられます。新たな対策は随時協議されます。
あの地震を忘れるな。ただそれだけでいい。それだけでいいんだ。──特殊管制室XXX室長 財前智則博士